2月ももう終わりだというのに、ここ最近はすっかり冬に逆戻りして憂鬱な二礼です。
あの2月半ばの暖かさはどこに行ってしまったんだ!!
しかもずっと雨&曇りのターン。
洗濯物乾かないのでストレス溜まりまくりw
勘弁してくれー!
という訳で、今夜はおでんです。
ゴメンね社長。寒い時にはおでんが食べたくなるんだよ(*'-')
長編『勇気の証明』の続きをUPしました。
漸く核心に近付く事が出来ました。
無駄なシーンが多過ぎるんだよ…。
もっと簡潔に纏めたいのに、二礼の手腕じゃこれで手一杯だ(´∀`;
何かオリキャラとか出しちゃってるけど、今後は多分出てこないと思うので気にしないで下さいw
あと、今回*マーク付けるかどうか迷ったんですけど、描写的にやっぱり付ける事にしました。
この辺の判断って…難しいよねぇ~(´・∀・`)
2009年2月アーカイブ
その夜。海馬は取引先との会談を円滑に進める事が出来て、至極上機嫌で本社に戻って来た。
だが車を降りて歩き出したところで呼び止められた声に、足は止まりせっかく気分も急降下してしまう。
「久し振りだね、瀬人君」
「田崎社長…」
振り返った先にいたのは初老の男。
酷く懐かしく、それでいて余り良い思い出の無い顔だった。
海馬コーポレーションの先代社長、海馬剛三郎がまだ生きていた頃。
養子に入ったばかりの海馬は、日々『教育』と言う名の虐待を受けていた。
まるでペットのように鎖の付いた首輪を付けさせられ、寝る間も無く時には鞭や拳による暴力を受けながらも、海馬は必死に教育を受けた。
それは自分と、そして愛する弟の将来の為。
二度と二人で路頭に迷うことが無いように、弱音も吐かずひたすら耐えてあらゆる学問を無理矢理頭に入れていった。
その『教育』に新たな異変が加わったのは、それからまもなくの事だった。
丁度11歳の誕生日を迎えた翌日の夜の事、養父が新しい『教育』と称して海馬の寝室に押し入って来たのは。
海馬を自分の後継者として公式の場に連れ出すようになって、どうやらその子供らしからぬ美貌が噂になっていることを知った剛三郎は、それを利用しない手はないと考えたのだ。
もちろん剛三郎自身も海馬のその妖しい魅力にとり憑かれていた一人だった為その行動に迷いがあるわけが無く、その日から海馬は想像もしなかった世界へ突き落とされる事になる。
わずか11歳の子供の抵抗など、あって無い様なもの。海馬はただその暴力じみた恐ろしい行為を受け入れるしかなかった。
それから中学に入るまでの一年半はまさに毎日が地獄のようで、養父の重要な取引先や後援者または支持している政治家など相手はとにかく様々だったが、皆一様に共通している点は、全員がまだ幼い海馬の身体を容赦なく蹂躙していったという事だ。
抵抗したり言うことを聞かなかったりすれば、暴力が待っていた。
時には薬を使わされ、無理矢理犯された事も少なくなかったし、人によっては様々な醜悪な道具を使い、まるで玩具のように身体をいたぶられる事もあった。
だが、中には海馬に対して優しくしてくれた人物が居た事も確かである。
決して痛いことも苦しいこともせず、ただせめて幼い海馬が快感だけを感じるようにしてくれていた者達が、記憶の中に何人かいたのを海馬は思い出した。
そして今目の前にいる田崎と言う人物も、そんな人種の一人だった事も。
「お久しぶりです、田崎社長。義父の葬儀以来でしょうか? ご無沙汰しております」
そう言って深く頭を下げると、相手はそれを押し留めた。
「瀬人君、堅苦しい挨拶は無しにしよう。たまたまここを通りかかったら君の姿を見つけてね。久し振りに少し話をしたいと思っただけなんだ」
この田崎という男自体に嫌な思い出は無かった。
彼はいつも自分に優しく接してくれていたから。
むしろ毎日のように与えられる虐待に疲れきった自分をゆっくり休ませてくれた事がよくあったので、その事に関しては感謝すらしている。
ただどうしても当時自分に関わった者達の顔を見ると、あの頃の辛さや苦しさ何より悲しさを思い出して、気持ちが落ち込んでしまうのも事実だった。
「どうだろう? たまには一緒に食事でもしながら話でもしないかね?」
相手の申し出を、海馬は丁寧に断わりを入れる。
「いえ、実は食事はもう済ませてきてしまっているのです。よければうちの社長室へどうぞ。お茶くらいは出しますよ」
当時の思い出を頭の奥深くに押さえ込み何とか笑顔を作ると、海馬は後ろの男を伴い会社内入っていく。
玄関では秘書が待っていて「社長、お客様が…」と言いかけるが、海馬は「応接室で待たせておけ。こちらのお客様の方が重要だ」と言い捨てるとさっさとエレベーターに乗り込んで最上階のボタンを押した。
社長室に共に入り、ディスク前の革張りのソファーに田崎を座らせ、海馬はポットの前に立ちお茶を煎れる。
「田崎社長は確かコーヒーや紅茶より、緑茶の方がお好きなんでしたね」
慣れた手つきでお茶を煎れる海馬に「おぉ、よく覚えているね」と田崎は嬉しそうに笑う。
茶菓子と一緒にテーブルに茶を出すと、海馬は田崎の向かいのソファーに深く座った。
「本当に久し振りだね、瀬人君…。最後に会ったのは一年前の先代社長の葬儀の時だったが、私の中では君はまだまだ幼い子供のままだよ。本当に…大きくなったものだ」
海馬が淹れたお茶を美味そうに啜りながら、田崎は感慨深そうに静かに言う。
その言葉に嫌でも当時の事を思い出して、海馬は細く息を吐いた。
「えぇ本当に。自分でもよくここまで無事に生きてこられたものだと思っていますよ」
「君は…、今でも恨んでいるんだろうね。幼い君の身体を貪ってきた我々を…」
「いえ、田崎社長はお優しかったから、社長個人は特に恨んでなどおりません。養父を始め言葉には出来ない程酷い扱いをしてきた者達に関しては、今でも殺してやりたいと思う事がありますが、だけどそれを実行するほど俺は愚かではありませんので」
腹の前で指を組み、目を瞑って深く息を吐き出す。
「養父が…先代社長の海馬剛三郎が俺に売春の仕事をさせていたのは、11歳の誕生日から中学校に上がるまでのわずか1年半でしたが…。あの1年半の事は実は今でもよく思い出せないのです。ところどころ強烈な印象で残っている部分はありますが、正直好んで思い出したいものではありませんしね」
「本当にすまなかったね…。あの頃の私も、あの海馬剛三郎と提携を結びたくて必死でね。こんな幼い子供にこんな事を…とは思ったが、どうにも君の魅力には勝てなかったんだよ」
「言ったでしょう、田崎社長。あなたは優しかったから、その事であなたが気に病むことは無いんですよ」
田崎は海馬の言葉を聞いて「そうかね? それならいいのだが」と乾いた笑い声を上げた。
「今だから言える事ですが、少しでも抵抗すればすぐに殴られるわ鞭で打たれるわで。鎖や縄で拘束して道具を使ってくる変態もいましたし、酷い時には薬を使われて意識が朦朧としているところを無理矢理とかもありましたから」
昔の事を話していると、どうして脳裏に思い出として甦ってしまう。
泣き叫んでも暴れてもどうにもならないと気付いた時から、海馬は一切の抵抗を止めてしまった。
ただ人形のように豪華なベッドに身を横たえて、自分に覆い被さる男の動きに伴って上下に揺れる天井を見詰めながら、海馬は情事が終わるのをただ静かに待つだけだった。
いつの間にか泣く事も忘れ、男達が施す快感にも慣れてしまい、やがて何も感じなくなっていく。
ただ最後に、自分を犯していた男が身体の最奥で精液を放った時だけは、じわりと生暖かくなるその気色悪さに自分がまた一つ穢されてしまったのだと嫌でも感じさせられて、それだけにはどうしても耐え切れずに海馬は瞳から一筋だけ涙を零した。
見つめていた天井が涙で歪んでいくその光景だけは、やけによく覚えていた。
「君は変わったね」
突然田崎に呼びかけられて、海馬はハッと顔を上げた。
いつの間にか思い出に囚われていたらしい。湯飲みを受け皿に戻しながら、田崎が感心した様に言った。
「昔、君に今のと同じような話をした時。君はまるで表情を変えずに淡々とあの頃の事を話していたものだ。それが今はどうだ…。私は君のそんな顔を知らない。そんな心から傷付いたような辛い顔は」
「申し訳ありません。ご不快にさせましたか?」
「とんでもない。安心した位だよ。今の君はちゃんと人間らしい感情を取り戻したようだね」
心から嬉しそうにそう言われて、海馬は混乱してしまう。
確かに周りの人間からは以前の自分とは随分変わったようだと態度で示された事はあったが、この様にはっきりと言葉で指摘された事は初めてだった。
「そうでしょうか…?」
「そうだよ。あぁそういえば君は今高校生だったか。人生の中で今が一番の青春真っ盛り。誰かに恋でもしたのかな?」
「…っ!? な、何を突然…っ!」」
突然の言葉に海馬が慌てて反論すると、田崎は声を上げて笑い面白そうに話を続けた。
「今の君の顔はね。自分が傷付いたというよりは、他の誰かを傷付けるのを恐れている顔だよ。誰かを大事に思ってなければ出来ない顔だ。それも肉親の愛情では無いね。それとは全然違うものだ。さて、君にそんな顔をさせるのは一体どこの誰だろうね? 会社の人間か、学校の人間か、男か女か。非常に興味があるね」
「…。やはり人生の先輩には勝てませんね…」
「よければ話を聞かせてもらえないかな?」
嬉しそうな顔を向ける相手に海馬はふぅと一つ溜息を吐くと、観念したように口を開いた。
「相手は学校の同級生で、品行も成績も最悪のまさに駄犬のような男です。髪なんか無理矢理金髪に染めてボサボサで、中学時代はかなり荒れていたらしいし、別にたいした奴ではないんですよ」
海馬は脳裏で城之内の姿を思い描く。
「ただ感心するようなところも多くて…。家の生活費も学費も全部自分でアルバイトで稼いできて、そのくせそんな苦労は微塵も見せないで、いつも明るくて眩しくて…」
頭の中の城之内は、いつも明るく笑って皆の輪の中心にいた。
どんなにアル中の父親の事やアルバイトの事などで苦労をしていても、いつだって大したこと無いように笑い飛ばしていた。
海馬はそんな城之内を見るのが嬉しかった。自分の心の中まで明るくなるような気がしたから。
そしてそんな城之内を見るのが辛かった。汚れきった自分には、城之内の放つ光は眩し過ぎたから。
「いい顔をしているね、瀬人君。君は本当にその彼の事が好きなんだね。ところでもうその彼にはもう気持ちを伝えたりはしたのかな?」
田崎の問いに海馬はフルフルと首を横に振る。
「言ってどうするんです? こんな身体で彼を受け入れろと? こんなどこの誰のかも分からない手垢と精液にまみれた身体で彼を求めろとでも?」
自嘲気味に唇を歪ませて海馬は吐き出す。
頭ではこんな愚痴を言うべきでは無いと分かっていても、気持ちがもう止まらなかった。
海馬は震える手で顔を覆った。
「奴には自分の気持ちは絶対に伝えません。奴の気持ちも…受け入れるわけにはいかない。俺にはその資格がない」
田崎はそんな海馬を辛そうに見つめる。
「すまなかった。辛い事を言わせてしまったようだ」
「あ…いえ、大丈夫です。こちらこそ見苦しいところをお見せしました」
手を外して顔を上げる。そこにはもういつもの自信家な海馬の表情しかなかった。
その顔を見て頷いた田崎は、持ってきた鞄から書類を一束取り出す。
「実は今日君に会いに来たのは、こんな湿っぽい話をする為じゃなかったんだよ。ノリとは言えついつまらない話をしてしまったね」
「これは?」
書類を受け取った海馬がざっと目を通すと、それは田崎の会社との提携による新商品の企画書のようだった。
「本当は仕事の話をしたかったんだ。先日我が社で新しいシステムを開発したんだが、どうも自社だけでは役に立ちそうになくてね。そこで瀬人君のところならうまくこいつを使いこなせるんじゃないかと思ったんだが…どうだろうか? 主企画はそちらで構わないから提携して貰えないだろうか?」
「これは…面白い企画ですね。貴社の製品は質が良くて丁寧で信頼してますし、これなら双方にかなりの利益が期待できそうです」
海馬は手にした企画書をパラパラと捲り、満足そうに笑った。
「君にそう言って貰えると嬉しいよ。それでは近日中に詳しい内容をメールで送るから、それでいいかね?」
「構いません。お待ちしております」
久々に手応えのある仕事が出来そうだと海馬が思いを巡らせていると、田崎が急に表情を変え声を潜めてくる。
「そういえば。最近有力な企業に強力なウィルスが送られているのは瀬人君も知っているかな?」
「…えぇ。話だけは」
「海馬コーポレーションも気を付けた方がいい。実にやっかいなウィルスだそうだ。何でも人のトラウマにつけこんでくるとか。それにウィルスにやられた企業の話を聞いていると、私はどうもそれが只の実験的なものにしか思えないんだよ。本攻撃先は他にあるんじゃないかとね」
「本攻撃先…? …っ! ま…さか…」
「あくまでこれは私の推理だ。まだそうと決まったわけじゃないが用心に越した事はないよ」
田崎の忠告に「気をつけます」とだけ答えた海馬は、その後帰社する田崎を玄関ホールまで送り出した。
田崎の乗った黒塗りのリムジンが闇夜に消えたのを見届けると、早々に社長室に戻ってきて深く椅子に座り深い溜息をつく。
短時間に様々な事があったせいか妙に疲れていた。こんな日はさっさと帰ろうと立ち上がると、秘書が慌てて部屋に入って来るのが見えた。
「社長…! お客様がずっとお待ちなのですが」
それを聴いて漸く思い出す。そういえば会社に帰ってきた時に、この秘書はそんな事を言っていた。
「あぁ、そういえばそうだったな。で、その客はどこに? 応接室か?」
面倒臭そうに視線を投げかけると、秘書は慌てて否定した。
「いえ、お客様というのは社長の御学友の方です。確か城之内様とかおっしゃる…」
「っ!? な…んだと…っ!?」
余りの事につい大声を出してしまう。
そして最悪の事を思い出した。
自分は確かこの秘書に、学校関係の者が来たら応接室ではなく社長室、つまりこの部屋付きのプライベートルームに通せと言ってはいなかったか。
慌てて大股でプライベートルームに続くドアの前まで近づくとノックもせずに開け放った。
「っ…! よ…よぉ…!」
弾かれたように座っていた椅子から立ち上がる城之内に、海馬は目の前が真っ暗になるのを感じた。
朝起きたら雪降ってて驚いた二礼です。
ぬるい関東育ちの二礼にはこの寒さは辛過ぎる…;
相棒は「それが何か?」みたいな顔して普通に会社に行きましたが、流石北海道出身者は格が違うZE!
私には真似出来ない…orz
「お前は一度冬の北海道を体験するべきだ!」と相棒にはよく言われますが、勘弁して下さい。
寒いの苦手な上に冷え性なんだよ…;
でも積もらなくて良かった。ホントに良かったw
短編『七年目の桜吹雪』をUPしました。
ボーカロイドの『S/T/E/P T/O Y/O/U』という曲に感銘を受けて、思わずモッサリ書き上げてしまったブツです。
や、だって曲を聴いていたら、海馬を追って旅に出る城之内君が脳内に出てきちゃったんだもの…(´∀`;
某動画サイトを利用出来る方は、是非一度聴いてみて下さい(*'-')
めっさいい曲ですよ~!
城之内×海馬
ちょっと切ない系。
ボカロの『S/T/E/P T/O Y/O/U』という曲に触発されて書いてしまいました。
そして青年は旅に出る。
「本当に行くの? 城之内君」
スーツケースにせっせと着慣れた服をしまっているオレに、遊びに来ていた遊戯がそう聞いてきた。
それにオレは「当たり前だろ」と笑顔で答える。
「もう七年も待たせてるんだ。流石にこれ以上は向こうも限界だろうしさ」
そう言ってオレは一旦手を止める。
目を瞑って天井を仰ぎ、あの時のアイツの顔を思い浮かべる。
後にも先にもアイツのあんな泣き顔を見たのは、あの日のあの時だけだった。
「いきなり行ったらびっくりするだろうね」
「そうだなぁ。会って突然罵声浴びせられるのだけは勘弁だけど、アイツならマジでやりそうだから怖い。そんなんなったら、オレ本気で傷付くぜ…」
「あはは。でも…それでも城之内君は行くって決めたんでしょ?」
「勿論。こんな気持ちを抱え続けるくらいだったら、直接会って傷つく方がまだマシだ」
オレが煎れてやったコーヒーを飲みながら優しく笑ってる遊戯に笑顔で答え、オレはスーツケースに服を入れる作業を再開した。
苦い恋をしたと思う。
あの頃のオレ達は、本当に子供だった。
自分の事で手一杯で、相手を受け止められる度量が無かったんだ。
海馬と再会したのは高校二年の終わりだった。
突然アメリカから帰って来たヤツは、何事も無かったかのように再び学生生活に勤しむようになった。
あっという間に春が来てオレ達が三年に進級しても、何故かヤツとはクラスが一緒だった。
まぁ、こういうのを腐れ縁って言うんだろうか? 周りのメンバーもあんまり変わっていなかったけど。
きっと前々から海馬の事は気になってたんだろう。再び身近に感じるようになって、唐突にオレは海馬の事が好きなんだと自覚した。
五月の連休明けにそう本人に告げたら、向こうも同じ気持ちだったらしく、オレ達は目出度く恋人として付き合う事になった。
それから先は、オレも海馬も普通に恋人として楽しんでいたと思う。
一月後には初めてのキスをして、夏休みに入ってセックスをしたのも、極々普通の流れだった。
特に何を意識した訳じゃなくて、恋人同士としての余りに普通の流れに、オレ達は自分達が最高の恋人である事に何の疑問も持たなかった。
ところが海馬が誕生日を迎える秋の終わり頃、その流れは急に方向を変え始めた。
長く続く不況に追い打ちをかけるように海馬コーポレーションにトラブルが続発し、アイツはその対応に追われ学校に来れる状況じゃなくなった。
別に子供じゃないから毎日会えない事に不満があった訳じゃないけど、その内電話やメールでさえも反応しなくなってくる。
海馬が置かれている状況を考えればそれは当然の事なんだけど、オレは何だかそれに少し苛つく毎日が続いた。
そしてそんなオレにも不幸は突如やってくる。
年が明けて暫くした頃、突然親父の体調が悪くなって病院に運ばれる騒ぎがあった。
医師の診断が下った後、親父は即入院となり、オレは担当医に親父の病状と余命を聞かされる事になる。
突然の親父の入院で、オレはちょっとしたパニックに陥った。
保険には入っていたけど、借金もまだ完済していないこの状態での突然の出費に頭を抱える毎日。
幸い高校を卒業した後は就職する予定だったオレは内定も貰っていて、春からの生活費には悩まなくて良さそうだったけど、それでも残り少ない貯金と睨めっこを続けていた。
朝起きたら新聞配達に行って、朝飯を食べたら学校へ行く。学校が終わったら急いで病院に行き、新しいパジャマや下着を渡して汚れたのを代わりに受け取る。その足でバイトに行って夜遅くまで働く。帰って来たら洗濯をしてピンチに干して、遅い夕食を済まし風呂に入って寝る。
ただそれだけの毎日を延々と繰り返した。
そうなってくると流石のオレも疲れて来て、海馬の事を思い出す暇さえ無くなっていった。
オレの頭の中は何時の間にか、これからの生活と金と親父の事ばかりになっていたのだ。
そんなこんなでオレと海馬はついに全く会わなくなった。
そして、あの日を迎える。
あれは卒業式の前日の夕方だった。
その日はたまたまバイトが無く、さっさと病院から家に帰って来ていたオレは家でゆっくりしていた。そこへ突然海馬から『いつもの場所で待っている』とメールが入って、オレは慌てて家を飛び出した。
『いつもの場所』とは、海馬のお気に入りの桜の木の事だ。
海馬とオレの家の丁度中間点にある寂れた小さな公園。遊具なんかも錆付いてしまって、近所の子供達は誰もこの公園には遊びに来ていなかった。
海馬がまだ小さい頃、よくその公園でモクバと一緒に遊んでいたらしいが、その面影は今は無い。
その公園の奥の方、椿や夾竹桃に隠れるようにして一本の桜の木が生えていた。
海馬のお気に入りはこの桜。
実の父が生きていた頃はよく三人でここへ花見に来たものだと、最初に連れて来て貰った時に教えてくれたのを覚えている。
季節は夏の終わりで、桜の木はまだ青い葉を沢山茂らせていた。
「春になったらお前と二人で花見に来たいな」
そう言ったら海馬は優しく微笑んで頷いていた。
自転車を漕いでその公園まで行き、冬でも葉を付けている椿や夾竹桃を間を潜って奥に行くと、葉も何も付けていない桜の木の下にアイツは佇んでいた。
オレが来た事に気付いている癖に、海馬はただ頭上の桜の枝をずっと見つめていた。
三月に入り大分蕾も膨らんできていたが、それでもまだまだ花は開きそうにない固い蕾ばかりだ。それなのに海馬はそれを愛おしそうに見つめている。
やがて視線を落としオレを見た海馬が「城之内」とオレを呼んだ。
その声に導かれるように近付くと、海馬の手に何か細長い筒が握られている事に気付く。
「何ソレ?」
首を傾げて訪ねるオレに、海馬は笑みを浮かべてその筒を見せつけるように言った。
「卒業証書だ」
「卒業証書って…。卒業式は明日なんですけど?」
「明日は式に出られそうにないから、一足先に卒業させて貰った」
「ふーん。また仕事?」
「あぁ。明日からまたアメリカに戻る」
海馬の最後の言葉にオレは驚いて思わず顔を上げる。とんでも無い爆弾を落としてくれた本人は、それでもにこやかな笑みを崩さなかった。そしてその笑顔のまま呟いた。
「城之内…。別れよう…」
その言葉自体には別に驚かなかった。何となく、海馬がそう言うであろう事が予想出来ていたから。
黙ったまま海馬を見つめるオレに、アイツは言葉を続ける。
「オレには…抱えるものが多すぎる。会社の事も弟の事も…。最近は特にそればかりで、気付いたらお前の事などすっかり忘れてしまっていたのだ。そんな自分に焦って、慌てて頭の中で大事なものの整理をしてみても、どうしてもお前は一番最後になってしまう。恋人なのに…好きなのに…お前を大事にする事が出来ない…。それはお前に対してとても失礼な事だと気付いたのだ」
海馬は何時の間にか俯いてしまっていた。その白い頬に涙が幾筋も辿っているのが見える。
「オレが…立場も責任も何も無い只の人間だったなら、間違いなくお前を選んでいただろう。だけど今のオレにはそれが出来ない。お前より大事だと思うものが多すぎて、どうしてもお前を蔑ろにしてしまう。オレはそれが…我慢出来ない。そんな自分が許せない…っ!」
オレが海馬の肩に手をかけると、アイツはゆっくりとその顔を上げた。
その顔を見てオレは驚きを隠せなかった。
三月の夕日に照らされたその顔は、涙で濡れそぼっているにも関わらず眩しいほどの笑顔を浮かべていた。
オレは海馬のこんな綺麗な笑顔を今まで見た事が無い。
間違いなくその顔はオレが今まで見た海馬の顔の中で、一番最高の笑顔だった。
泣きながら微笑む海馬を思いっきり抱き締め、オレも別れを告げる決心をした。
「オレの親父さ…、年明けに倒れて入院したんだ。元からアル中だったから大分肝臓に負担掛かってたらしくて…。肝臓がんで余命一年なんだってよ。転移もしてるからもう手術も無理なんだって。オレは春から社会人になって働いて働いて金稼いで、親父と自分の生活を支えなくちゃなんねぇんだ。だから今のオレにお前は支えられない…。オレも…もうお前とは一緒にいられない」
海馬がオレの言葉にコクリと頷く。
たったそれだけの事で、オレ達の恋人関係は解消された。
「なぁ、海馬…。一つだけいい?」
「何だ?」
「もしオレが今よりずっと大人になって、生活も安定して、心もデカくなって…。お前の全てを受け止められると自信を持って言えるようになったら、お前を迎えに行ってもいいか?」
オレの申し出に海馬は「期待しないで待っていよう」と言ってクスリと笑った。
日が落ちて薄暗くなってきた公園を、オレ達は真逆に歩き始める。公園を出る直前に一度だけ振り返ると、海馬が角を曲がって消えていくのが見えた。
それが七年前にオレが見た、最後の海馬の姿だった…。
次の日の卒業式。オレはずっと体育館の窓から空ばかり見ていた。
今、あの空のどこら辺を海馬が飛んでいるのかと、そればかりが気になって仕方無かった。
四月に入ってオレは働き始めた。慣れない仕事に最初は戸惑っていたけど、持ち前の要領の良さであっという間に場に馴染んだと思う。
会社に行く前に一度だけ、あの桜の木に寄った事がある。
海馬と別れた時はまだ固い蕾だったそれらが、今は一斉に花開かせ美しいピンク色に染まっていた。
ザッと強い風が吹いてピンクの花びらが一斉に散らばる。
オレはそれを海馬と一緒に見たかったと思った。
だけどオレ達の恋はもう終わってしまった。
アイツはアメリカで、オレはこの日本で新しい一歩を歩み出している。
オレは桜吹雪に背を向けて、現実へと踏み出した。
一年目はとにかくがむしゃらに働きまくった。
慣れない仕事に手一杯だったし、会社と親父が入院している病院を往復する毎日で、他の事を考える余裕が無かった。
二年目に親父が死んだ。大分もった方だと思う。
貯めてた金で何とか葬儀を出して遺品整理をし、オレはあの団地を引っ越した。
あんな親父でも思い出は一杯あって、二人で過ごした記憶が詰まっているあの場所に住み続けるのは辛かった。
親父の死亡保険で1DKのマンションを借りて、本格的な一人暮らしを始める。
三年目もとにかく働いた。
仕事をするのは好きだったし身体も丈夫だったから、休むことなく働き続けた。
まだ何となく親父の事が頭の隅に引っかかっていて、それを忘れたかったってのもあるかもしれない。
四年目に漸く心に余裕が生まれてきた。
親父の死もやっと受け止められた。何だかんだ言ってたった一人しかいない父親を失って、オレはやっぱり悲しんでいたらしい。
だがその悲しみも何時の間にか浄化されていた。
そして気付くとふと、アイツの事を思い出すようになってきていた。
五年目に入って、オレはよく海馬を思い出すようになっていた。
仕事している時は忘れているが、一人で食事をしている時、風呂に入っている時、会社からの帰り道など、気がつくとアイツの影を追っている。
そして、その度によく考えてみる。
あの時のアイツの涙、そして笑顔。
あの頃、まだガキだったオレはそれを受け止める事が出来なかった。
でも今ならそれが出来そうな気がしていた。
六年目、オレはついに我慢出来なくなっていた。
本格的に海馬に会いに行きたくて、アメリカに行く為の貯金を始める。
苦手だった英会話も会社の帰りに習って、まだ辿々しいが何とかなる程度にはなった。
毎日毎日を海馬の事を考えて過ごす。
そこまで来て、オレは自分がどれだけ海馬の事を愛していたか気付かされた。
決心は…固まっていた。
そして七年目…。
オレは駅に向かう途中で、あの公園に寄る事にした。
会社の方は今までのオレの真面目な働き具合が評価されて、今日から約半月の長期休暇を貰う事が出来た。
そりゃ七年近く働いて有給を使ったのがたった二回しかないし、それぐらいして貰っても罰は当たらないだろう。
リュックを背負い更に重いスーツケースをゴロゴロと引き吊りながら、オレはあの公園に着いた。
あの寂れた公園は海馬と別れた次の年、リニューアルされて小綺麗な公園に生まれ変わっていた。錆付いていた遊具も新しいものに取り替えられて、最近では近所の子供もよく遊びに来ているそうだ。
古い木も伐採されてあの桜も無くなってしまったかと思ったら、どうやら近所のお母さん達の要望でそれは残ったらしい。
あの頃と変わらない椿と夾竹桃の間を抜けて、あの桜の木の正面に立つ。
今はまだ三月の半ば。あの頃と同じようにまだ蕾は固いが、あと半月もすれば綺麗に花開く事だろう。
七年前、一人で見た桜吹雪。
あれほど悲しく見えた桜は無かった。
半月後、この桜はあの時と変わらない美しいピンク色の花を咲かしているのだろう。
その桜吹雪の下にいるのは、あの時のようにオレ一人なのか。
それとも海馬と二人で見上げているのか。
今のオレにはそれは分からない。
だけど何となくオレは、半月後に海馬と二人でこの桜を眺めている予感がした。
どうか、七年目の桜吹雪がオレ達二人の上に降り注ぎますように…。
そしてオレはお前に会いに行く。
二礼はコンビニでバイトしているのですが、今日300円お預かりを300万円にしてしまって、ちょっとした恥をかいてしまいました。
煙草一箱300万円って、どんだけインフレなのよw
思わずお客さんと顔を見合わせて苦笑してたら、店長に「オ/ー/ド/リ/ーみたいだった」と言われました。
誰が春日だ!!
えーと、昨日は短編(ヘルクリの続き)と、今日は長編の続きをUPしました。
ヘルモスとクリティウスの目の色を最初は、ヘル→赤・クリ→青だと思っていたんですけど、一応確認し直してみたらヘル→黄色(金色)・クリ→紫でした。
UPする前に確認して良かったです。
以下は拍手コメントのお返事になります。
>Rosebank:様
初めまして、二礼しげみと申します。
この度は拍手及びメッセージ、どうもありがとうございました~!
ヘルクリの小説を気に入って頂けたようで何よりですw
実は二礼はこの二人が凄く好きなんですが、探してもこの二人の事を書かれているところが無くてですね…。
そんなら自分でやっちまおう! と一大決心して書いたものがアレです。
続編は…多分その内書くと思います(*'-')
このまま放っておくのも可哀想ですしね~。(でもこの4人が揃うと、シリアスじゃ無くてギャグになりそうな予感がプンプン…w)
その時には是非Rosebank:様の意見も参考にさせて頂きたいと思っております。
それではこれで失礼させて頂きますね。
またいつでも遊びにいらっしゃって下さい(´∀`)
>メイ様
リンク報告ありがとうございます!
こちらからもリンクを貼らせて頂きました(´∀`)
あと、直接メイ様のところからお礼のメールを出しましたので、ご確認下さい(*'-')
ここでは用件だけで失礼させて頂きます。
これからもどうぞ宜しくお願い致します~!
「いつでも遊びに来て」と乃亜とモクバに見送られ外に出ると、辺りはもう真っ暗だった。
「車で自宅まで送ろうか?」と海馬が提案したのだが、遊戯は「大丈夫だよ。僕子供でも女の子でもないんだよー」と頬を膨らまして反論する。
「いや、十分子供みたいだし」とは口が裂けても言えなかったが、遊戯は城之内の思惑に気付いたようにじっと睨み付けてきた。
「ところで海馬君は、これからはちゃんと学校に来れるの?」
睨み付けられた城之内が「悪い悪い」と謝ったのを聞いて気を良くしたのか、遊戯は今度は海馬に向かって質問をする。
自分達の背後で腕を組んで立っていた海馬は、その言葉に幾分表情を緩めた。
「あぁ。しばらくは学業に専念しようと思っている。アメリカに行っていた分のブランクもあるしな。とは言っても社長業を放棄するわけには行かないから、仕事が入ったら急に休んだり早退や遅延したりする事はあるだろうな。まぁ今までと余り変わらんということだ」
海馬の答えに満足したのか、遊戯がにっこりと笑う。
「それでも良かったよ。これからは今まで以上に海馬君と会える様になるんだね。僕やっぱり嬉しいな。これからもよろしくね海馬君」
そう言うと遊戯は「じゃーねー、海馬君城之内君! また明日学校でねー!」と大きく手を振って帰っていった。
「おう! またな遊戯ー!」
城之内は遊戯に手を振り返し、そして隣に立つ海馬を見た。
海馬はちらりとこちらに眼を向けるが、気不味そうにまた視線を外してしまう。
そんな海馬の様子に城之内はニッと笑うと、あえて視線を合わせるように海馬の正面に立つ。
「そういや海馬。俺さ、お前に大事な事言ってなかったの思い出した」
「なんだ?」と表情だけで問うてくる海馬の目の前に立ち、城之内は笑顔を深くして言った。
「海馬、おかえり!」
その言葉を聞いた途端、海馬の顔がまるで泣く一歩手前のようにくしゃりと歪む。
一瞬本当に泣いてしまうのではないかと城之内は慌てたが、結局海馬が泣くことは無かった。
だが顔を俯けてしまいその表情を隠してしまう。
「…う…して…」
「え?」
海馬が何か言ってるのを聞いて、でも良く聞こえなくて、城之内は思わず聞き返してしまう。
「どうして…貴様は…さっきからそんな…平気な顔で笑って…話しかけてくるんだ…っ!」
「どうしてって?」
「三ヶ月前のエジプトのでの事、貴様は忘れた訳ではあるまい!」
「うん。よく覚えてる」
「だったら何故俺に構う? 俺に何を言われたか覚えているんだろう? 俺を憎み…恨みこそすれ、そんな顔で話しかけてくる理由なんて無い筈だ!」
「うーん…。そう言われても…なぁ? 好きだから仕方無いじゃん」
「な…!?」
「俺さ、お前にあんな風に振られちゃったけど、正直お前が帰ってきてくれて、今すっげー嬉しくて仕方ないんだ。本当だぜ? だって好きだからさ」
「お…俺は…ダメだと言っただろう!?」
人差し指で自分の頬を掻きながら安易に答えると、海馬は顔を上げてキッと睨んできた。
よく見るとその青い瞳が熱っぽく潤んでいるのが分かる。
「いやその、ダメって言われてもねぇ。俺はさ、すぐにお前を忘れられるほど諦め良くないしな。つか好きなモンは好きだし? 悪いけどいくらお前でも、他人の気持ちばっかりは変えようが無いぜ?」
最後の方は幾分真剣みを含ませて言い聞かせる。
一瞬激高した表情になった海馬は、だがまた泣きそうな顔に戻っていた。
城之内は思わず海馬の頬に手を伸ばしかけるが、その手は後から伸びてきた海馬の手によってパシンと払われてしまう。
「とにかく…ダメなものはダメだ」
あの時と同じように、海馬はクルリと城之内に背を向けて去っていこうとする。
「海馬…!」
「貴様も早く帰れ! 俺はまだ仕事がある。邪魔をするな!」
そのまま足早にビル内に戻っていく海馬を、城之内は黙って見つめる事しか出来なかった。
それから数日間、暇を見つけては学校帰りやバイト帰りに海馬コーポレーションのビルに寄り、乃亜やモクバと談笑するのが城之内の楽しみになっていた。
遊戯や杏子や本田や御伽はもちろん、あの体験をしていない漠良にも事情を話して一緒に遊びに行ったりもした。
友人達と一緒の時もあったが、バイト帰りなどは一人で遊びに行くこともあった。
乃亜は『外の世界』の話を本当に真剣に聞いてくれる。
城之内の知っている世界など『学校』や『バイト』や『荒れた家庭の事情』等本当に狭い範囲なのに、乃亜はそれでも全く興味が尽きないようだった。
海馬とそっくりな顔でだんだんと自分に懐いてくれるようになった乃亜を見るたび、城之内は嬉しくもあり少し複雑な気持ちになったりもした。
乃亜の顔を見ていると、嫌でも海馬の事を考えてしまう。
『暫く学業に専念する』と言った言葉に嘘は無かったようで、その後海馬はよく学校に来るようにあった。
相変わらず休んだり遅れてきたり、途中で携帯で呼び出されて早退したりと忙しそうだったが、それでも以前よりはずっと学生らしい生活を送っているようだった。
更に言えば昔の海馬が嘘のように、遊戯や他のメンバー達と仲良く(以前と比べての印象であって、通常の感覚で言えば仲が良いとは言えない様な距離だが)過ごしていた。
城之内もそんな海馬を見るのは嬉しかったが、それと同時に海馬が何となく自分を避けているのも気付いてしまう。
自分の胸の中にはずっと海馬が言った言葉が突き刺さっていて、それが余計に城之内を苛立たせていた。
乃亜の嬉しそうな笑顔を見てそれを思い出してしまって、城之内は思わず自らの唇をギリッと噛んでしまう。
無邪気な話し声が突然止まって慌てて顔を上げると、まるでそれを見越したかのように乃亜が笑顔で城之内に告げた。
「あまり心配するなよ城之内。お前が悩んでいるのって瀬人の事だろう? アレも昔のように荒れてはいないから、いつかはちゃんといい方向へ行くさ」
乃亜が自分達の何を知ってそう言っているのかは分からなかったが、その言葉が城之内を勇気付けたのは確かだった。
一ヶ月後、しばらくは学校のテスト期間や集中して入れたバイトのシフトのせいで身動きが取れなかった城之内だったが、その日は久々に時間が出来て海馬コーポレーションに足を向ける事にした。
ただし今日は乃亜に会うつもりはなかった。
この間の乃亜の言葉を聞いて再び海馬と直面して対話する勇気を出した城之内は、いつもの専用通路の方ではなく普通に受付窓口に向かう。
ここ暫く頻繁にKCに姿を現していた城之内はすっかり面が割れているらしく、受付嬢はいつものように屈託の無い笑顔を見せてくれた。
「こんにちは城之内様。本日も乃亜様ですか?」
「あ、いえ、違うんですスミマセン。今日はちょっと海馬本人に用事があって…」
「申し訳ありません。本日社長は外出なさっており今は社におられません。戻られるのは夜になると思いますが…お待ち致しますか?」
受付嬢が手元のスケジュールメモを確認しながら尋ねてくるのに、少し考えて城之内は頷いた。
「はい、待ちます」
「それでは少々お待ち下さい」
受付嬢は城之内にニッコリ笑いかけると、手元の電話機から受話器を取り上げた。
すぐに誰かと話し終えると「唯今秘書の者が参りますので少々お待ち下さい」と頭を下げる。
時間にして1~2分くらいだろうか、時々見かける海馬の秘書のお姉さんがエレベーターから降りてきた。
「城之内様、どうぞこちらへ」
慣れない待遇におどおどしながら通常の方のエレベーターに乗り込む。
最上階に着くと真っ先に社長室に通され、更に社長室内からしか行けないプライベートルームに案内される。
そこは海馬がちょっとした仮眠や休憩につかっているのだろう。まるでホテルの一室のようにソファーや机やベッドなどが置かれているのが目に入った。
「え…!? ちょ…! ココ? いいの!?」
「はい。社長が御自分の御学友の方がいらしたら、応接室ではなくこちらでお待ち頂く様にと伺っております」
海馬の秘書は微笑みながらそう言うと「お飲み物などはそちらの冷蔵庫に入っておりますのでご自由にどうぞ。暖かいものでしたらそちらのポットから。接客の方も特にせず、お客様の自由にさせろとのご命令ですので。では、ごゆっくりどうぞ」とたたみ掛け、深く一礼をして去って行った。
海馬のプライベートルームにポツンと一人残された城之内は、困ったように頭を掻いた。
だが単純な頭のこと、すぐに切り替えて冷蔵庫から炭酸飲料を取り出すと、柔らかなソファーにドサリと座り込んだ。
「ま、考えても仕方ないってね。とりあえず待ってりゃいいんだから」
キャップを開けて中身を一口飲むと、自分の鞄から買ってきた週刊誌を取り出してページをめくる。
時間はまだ一杯ある、焦ることは無い。
城之内はそう自分に言い聞かせていた。
ヘルモス×クリティウス
上の『草原の風に吹かれて』の続きです。
精霊界の夜は静かで美しく、そして何より優しい。
クリティウスは城のテラスから上空に浮かぶ真っ白な月を見上げていた。
今自分達がいるこの古城は、昔まだ精霊界が平和であった頃にティマイオスとヘルモスと自分の三人で共に暮らしていた居城であった。
ドーマの神を倒してこうして精霊界に戻って来てから暫くは、ここに三人で暮らしていたのだ。
ところがつい最近になって突然ヘルモスが巨竜の姿に戻り、そしてこの城から遠く離れた草原や森で一人静かに暮らすようになってしまったのだ。
最初は昼間だけどこか遠くに出掛けていただけだったのだが、その内夜も帰って来なくなってしまうのにそれ程時間はかからなかった。
クリティウスはそんな彼に何度も接触を試みたのだが、いつも肝心なところではぐらかされてしまう。
ヘルモス自身は自分が一人離れて行った理由についてバレていないと思っているのだろうが、クリティウスは何となく気付いてしまっていた。
そして自分もまたその理由について悩み、こうして夜な夜な空を見上げる日々が続いている。
月から視線を外し、遠くに見える黒い森を見つめる。
最近ヘルモスは、あの森の中にある清らかな泉の脇に生える大樹を、気に入りの寝床としているようだった。
ヘルモスが何を恐れて自分から離れていったのか、クリティウスにはもう分かっていた。
ただそんな彼の気遣いを、クリティウスは少し寂しいと思ってしまう。
もし自分の推理が間違っていなければ、今クリティウスが持っている悩みとヘルモスのそれは同じ類のものの筈なのだ。
なのにクリティウスの胸の内にある覚悟は、ヘルモスが選択した答えとは全くの逆だったのだ。
真の姿に戻り性欲を覚え、それから逃げ出したヘルモスと、逆に欲と向き合う事を決めたクリティウス。
しばし目を瞑って何かを考え込んでいたクリティウスだったが、突如瞳を開くとテラスの手摺りを乗り越え空中に飛び出した。
精霊の力を使い夜の冷たい空気を纏いながら、彼はただひたすら前方に見える黒い森を目指して一陣の風のように飛んでいった。
森の空気は草原のと違ってじっとりと重く、それでいてどこか生き物を安心させるような気に満ちている。
森の入り口に降り立ったクリティウスは、月明かりを頼りに森の中をひたすら進み続けた。ヘルモスがいる場所は、自分達にしか感じられない独特の気配で分かっている。精霊界の頂点に立つ存在の強い意志を感じたのであろう。森の木々がまるで生き物のようにヘルモスの居る場所へと小道を造ってくれていた。
「ありがとう。アイツのいる場所を教えてくれたのだな」
そう言ってそっと樹皮を撫でると、風も無いのにさわりと枝葉が音を立てた。
森の木々が導くまま進むと、やがて突然視界が開ける。
そこはまるでそこだけ切り取られたかのような小さな広場で、下草を照らす上空からの月光が眩し過ぎる程だった。サラサラとした水音に視線を下げれば、そこに小さな小川が流れていた。それを辿っていくと、やがて地中から清廉な水を絶えず湧き続ける泉に出会う。そしてその傍らに生える大樹の根元に、探していた人物が眠っているのが見えた。
「ヘルモス…」
小声で名を呼び、音を立てぬようにそっと近付くと、ヘルモスは全く気付く事なく安らかな寝息を立てている。
最近気付いた事だが、昼間起きている時は赤い巨竜の姿でいるヘルモスも、夜眠る時だけは真の姿に戻っているようなのだ。
それはやはりこっちが真の姿なのだという証拠で、安心したり気を抜いたりする時は人型の方が楽なのだ。
クリティウスは月明かりに照らされているその精悍な顔をじっと見つめた。
ヘルモスは大樹に上半身を預けるようにしてすっかり眠り込んでいる。ローブを纏った肩が規則正しく上下しているのを見て、クリティウスは口元に笑みを浮かべた。
そっと側頭部に手を這わすと、サラリと自分のより幾分硬めの髪がクリティウスの白い指の間を通っていった。その感触が気持ち良くて何度も頭を撫でるが、一向に目覚める気配が無いのに気を良くし、今度はその顔に自らの顔を近付けていく。
身体の中で心臓の音が煩い位に響いているのを自覚する。だが今更後に引く事など出来るはずもなく、ヘルモスの唇にそっと自分の唇を押し当てた。
柔らかな唇の感触を直に感じて、たったそれだけの事なのに下半身がズクリと反応してしまう。
元々性に淡泊な精霊としての気質と、おまけに一万年も竜の姿で封印されていた事もあって、クリティウスの身体(多分ヘルモスやティマイオスも同じであろう)は欲情に対して酷く不慣れであった。
夜の冷ややかな空気など全く感じないほど顔がカーッと熱くなってしまう。このままキスを続けていれば、いずれヘルモスが目覚めてしまうだろう事は想像に難くないが、それでもクリティウスはその唇を離す事は出来なかった。
やがて、漸く自らの異変に気付いたヘルモスがゆるりと目を開ける。その金色の瞳に驚き思わず身体を離すと、ヘルモスの方も目を丸くしたまま固まってしまっていた。
「ク…クリティウスッ!? お前何でここにいんの!? ていうか、今何してたのっ!?」
驚きの余り幼い頃の言葉遣いで焦るヘルモスを見て、クリティウスは随分と懐かしいなと別の事を考えていた。
精霊として卓越とした力を身に付けた今では、すっかり大人びた口調で話しているヘルモスだが、精霊界に誕生したばかりの頃はまるで人間の子供のような軽い話し方をしていた。そう言えば彼のマスターもこんな喋り方だったなと感心したように見つめていると、突如その肩を掴まれて揺さぶられる。
「クリティウス、聞いているのか? 何でお前こんな夜中にこんな場所へ来ているのだ。しかもお前さっき…俺に何をした…?」
真っ赤な顔をして焦っているヘルモスに、クリティウスは「フンッ!」と鼻を鳴らすと胸を張って言い放つ。
「私が何をしようがお前には関係ない。ただ私はお前とは違って、自らの欲から逃げずそれを受け入れただけだ」
「よ…欲ってお前…。え? 何? どういう事…?」
「ヘルモス、お前は優しいからな…。どうせ私の為を思って逃げ出したのだろうが、そんな気遣いは最初から入らぬ世話なのだ。大体相手を欲しがっているのが自分だけと思い込んでいるところが気に食わぬ。その相手も同じ事を思っていると、何故考えられぬのだ」
そう言うとクリティウスはヘルモスの右手を掴み、その手を自分のローブの隙間から差し入れた。
最初にヘルモスの指が触れたのは、クリティウスの膝頭。その滑らかな肌にクラリと目眩がしたのも束の間、その手はクリティウスが導くままゆっくりと内股を上がっていく。
やがて足の付け根にある熱い塊に触れた。そっと指を這わすと「はぁ…ぁ…」とクリティウスが熱い吐息を零す。その先端は既に滑る液体によって濡れそぼっていて、彼の欲望の深さを感じさせた。
「んっ………!」
そのままその液体を塗りつけるように肉棒を擦っていると、やがてクリティウスが小さな悲鳴を漏らし身体をブルリと震わせて達する。掌に熱い液体がかかったのを感じローブの裾から手を引き抜くと、その手はクリティウスの欲望によって白く汚れていた。
目の前で起こった事実にヘルモスは暫し呆然としていた。こめかみが痛くなるほどドクドクと強く血液が流れているのを感じる。何とか混乱した頭の中を整理しようとしたその時、突如意識が再び現実に戻される。
何時の間にかクリティウスがヘルモスのローブの裾を割って、その白く細い指をヘルモス自身へと絡ませていたのだ。
「ク、クリティウスッ! やめろ…っ!!」
何とか制止しようと腕を伸ばすが、柔らかい掌で根本から扱き上げられて思わず動きが止まってしまう。
直ぐに先走りの液が溢れてきて、それに塗れた自分の肉棒は、クリティウスに扱かれる度にグチュグチュといやらしい水音をたてた。
快楽に慣れていない身体はあっという間に限界を迎え、クリティウスの手に精液を放ってしまう。
「ふ…ぅ…」
緊張から解き放たれて暫し呆然とし、深く息を付いてゆるりと顔を上げた。目の前には白い月明かりに照らされて、やはり呆然と座り込んでいるクリティウスの姿。そしてその白き手を汚しているものが何かを理解した時、漸くヘルモスは意識をはっきりと覚醒させた。
「クリティウス…ッ! 手を…!」
慌ててクリティウスの腕を掴み泉まで引っ張ってくると、その清らかな水に手を浸す。
小川の流れに沿うように自らの白い欲望が筋となって流れていくのを、ヘルモスは酷く情けない気持ちで見つめていた。そんな気持ちが表情にも表れていたのだろう、何時の間にかクリティウスがヘルモスの顔を覗き込んでいた。
「そんな顔をするな。お前の手とて私ので濡れているではないか」
そう言って自分の手と同じように、ヘルモスの手を泉に浸す。
「ヘルモス…。お前が何を恐れているのか私には分からぬ。一体これの何がいけないのか、私には理解出来ない。好きな相手を欲しいと思うのは、生物としての本能では無いのか…?」
放たれた言葉に驚いて目を向けると、クリティウスは一度ちらりとヘルモスを見遣り、そのまま言葉を続ける。
「欲を持つという事はそんなにいけないの事なのか? そんなに恐れなくてはならぬものなのか? 人間達が普通にやっている事を、同じ姿をした我々がしてはいけないという決まりでもあるのか?」
泉の水にて清められた手を取り上げると、二人のそれはすっかり冷たくなっていた。その冷たい手をヘルモスの両頬に当て、クリティウスはその紫紺の瞳でヘルモスの金色の瞳を覗き込む。そこには欲情している己が映っていたが、その姿に全く嫌悪は感じなかった。
「ヘルモス、私はお前が好きだ…。だから欲など何も怖くはない。この欲が無ければ、お前を手に入れる事も出来ないからな。だから私はこの欲から逃げない。お前も…もう逃げる事を許さない」
強い視線に絡まれて、ヘルモスは身動きする事が出来なかった。そんなヘルモスにクリティウスはゆっくりと顔を近付けていく。白い月明かりの中で二人分の影がやがて一つになった。
そのまま共に抱き合って眠り朝を迎えた二人は、ある重大な問題に直面している事に漸く気付いていた。
「クリティウス…。俺はお前の事を抱きたいと思っているのだが…」
「あぁ。私もお前に抱かれたいと思っている」
「まぁそれはいいとして…。お前、やり方分かるか?」
「お前でも分からないものが、私に分かる訳が無かろうが」
「そうだよなぁ…。俺達は一万年以上もの長き間、欲とは無縁の生活をしてきたからなぁ…。よく考えればやり方なんて知っている訳がないんだよなぁ…」
「一体どうするのだ? 私はこれ以上待たされるのは、もう耐えられそうに無いんだが…」
「だよなぁ。やっぱここは…ねぇ? あの方達に…」
「そうだなぁ…。やはりあの方達に頼るのが一番か…」
その後人間界では、夢の中で自分達のマスターに「交尾の仕方を教えて下さい!」としつこく頼み込んでくる二体の精霊の攻撃に、夜な夜な悩まされる二人の人間がいたようだが、それはまた別の話である。
ヘルモス×クリティウスで短編をUPしました。
昨日の日記でオリジナルキャラも好きだと書きましたが、この二人も凄い好きです(´∀`)
ドーマ編のラストで二人揃って∞攻撃をしたのを見て、「お前等…デキてるな…」と確信したのは二礼の目が腐っているからでしょうか…w
この二人の話を書くのは何か楽しいので、また書くと思います。
そう言えばアメルダも可愛いよね…。
可愛いよアメルダ可愛いよ(*´д`*)
以下、拍手のお返事となっております。
>メイ様
初めまして、二礼しげみと申します。
この度はこんな開設したばかりの何も無いサイトに来て頂いて、本当にありがとうございました(*´д`*)
『上下逆転のススメ』での海馬に萌えて頂けたようで何よりですw
こんな情けない海馬を書いて「海馬はこんなんじゃない!」とお叱りを受けるのは覚悟していたんですけどね…(´∀`;
それと、乃亜をお好きな方がいらっしゃって嬉しいです!
ホントにあの子は可哀想で…涙が出ます。
乃亜を救済したかったという気持ちが私の中にありまして、で、あんな形で出させて頂きました。
長編の方ももう少し続きそうなので、お付き合い頂ければ幸いと思います(*'-')
それではこれにて失礼させて頂きます~。
またいつでもお寄り下さい。お待ちしております(´∀`)
ヘルモス×クリティウス
精霊や竜に関して個人的見解が入っています。
どこまでも広い草原に、一匹の赤い巨竜が眠っていた。
空は青く澄んで、緑の絨毯が爽やかな風に吹かれてサワサワと音を立てる。
その音を子守歌代わりに、赤い巨竜…ヘルモスはウトウトと気持ち良く微睡んでいた。
ふと、草原の向こうから誰かがやってくる気配がするのを感じた。
否、その人物が誰かなんて事は気配で分かる。それでもヘルモスはまだ瞼を閉じたまま敢えて眠りから覚めようとはしなかった。
サクサクと青草を踏んでやってきたその人物は、青と白を基調とした長いローブを身につけ、まるで陽の光のような金髪を風に靡かせながらヘルモスの側へ来る。
「ヘルモス」
赤い竜の肌を撫でながら、その人物…クリティウスは呼びかけた。
「お前はまたそんな竜の姿でいるのか。呪いは解かれたのだから、いい加減人の姿に戻れ」
そう呆れたように言うと、ふー…と深く溜息をつく。
ヘルモスにはクリティウスが何を言いたいのかよく分かっていた。
自分達がマスターに選んだ名も無き王と、その好敵手や親友である人間達と共に邪神であるドーマの神を打ち破り、こうして精霊界に帰って来たのはつい最近の事。
今まで封印されていた一万年という長き時を瞬時に忘れ去るくらい平和なこの場所に、ティマイオス・ヘルモス・クリティウスの三人は心安らかに過ごしていた。
最初は三人共真の姿であるこの人に近い姿で毎日を過ごしていた。
精霊界は至って平和であった為、三人とも鎧を脱ぎ普段着である長いローブを身に纏い、それぞれに緩やかに流れる時を楽しんでいた。
ところが最近になって、ヘルモスだけが元の竜の姿に戻って一人遠く離れて過ごす事が多くなったのだ。
ティマイオスはそんなヘルモスの姿に「彼は彼なりに考えている事があるのだよ」と言って全く気にしていないようだったが、クリティウスは竜の姿に戻ってしまったヘルモスにも、またそれを気にしないティマイオスに対しても不満を募らせていた。
せっかく元の姿に戻れたというのに、仮の竜の姿で居続けるヘルモスが理解出来なかったのである。
「ヘルモス、いい加減にしろ!」
少し苛ついたようにクリティウスが大きな竜の頭を小突く。
「もう起きているんだろう? 私に寝たふりは通用しないぞ!」
耳元で大声で叫ばれて、漸くヘルモスはその瞳を開く。とは言っても身体を動かす事はせず、目の前に立っているクリティウスをちらりと見遣っただけだったが…。
そのヘルモスの態度にクリティウスはまた腹を立て、ビシッと指を突きつけて大声で言い放った。
「貴様、一体どういうつもりなのだ! せっかくマスター達の協力によって呪いを解いて貰ったというのに、何故そのように何時までも竜の姿のままでいるのだ!! 地上にいるマスター達に対して申し訳ないとは思わないのか!! 大体真の姿の方が色々と利便性も高いだろうに、何故好き好んでそのような姿をしている! 私にはお前が理解出来ん!!」
もうずっと説教したいのを我慢していたのだろう。ついにキレてしまったクリティウスは、勢いに乗ってクドクドとヘルモスに説教をし続けていた。それを上手い具合に右から左に聞き流し、ヘルモスは再び瞼を閉じてしまう。
「お…おい、ヘルモス!! 寝るな! まだ話が途中だぞ!!」
慌てたクリティウスがガクガク揺さぶってくるのも無視をして、軽く息を付くとヘルモスはそのまま寝たふりを続行する事にする。そして「コイツは本当に何も分かってない…」と一人溜息を付くのだった。
人と竜の姿の違いは、見た目だけでは無くてその精神にも及ぶ。
竜とはそもそも神聖で高潔な生き物。故に欲というものに縛られない。
食欲は無理に食べなくても生きていける為必要ない。睡眠欲もそれと同様、別に眠らなくても支障が無いので必要が無い。そして性欲。これが一番必要が無いものだ。
そもそも竜は自然界の動物のように交尾によって生まれ出でる生き物ではない。精霊界に漂う特別清く深い空気が収縮し濃度を増して、そしてある日そこに特別神聖な生き物…竜を生み出すのだ。
だから竜という生き物は、他の生物のような欲に捕われる事はない。
自分達は正確には竜では無いのだが(真の姿が人間系なのがその証拠)、仮の姿が竜である為比較的竜に近い生き物だと言える。だから竜の姿になった時、その精神もまた竜同様全ての欲から解き放たれるのだ。
それとは逆に人間の姿になった時、今まで解き放たれていた欲が突如戻って来るのも事実だった。
人間とは全ての生物の中において、一番欲に塗れた生き物である。
生きる為に必要な食欲や睡眠欲等の純真な欲は元より、文明が進むにつれて支配欲や独占欲等の醜い欲も増えてきた。
さすがに高潔な存在である自分達にはそんな欲は存在しないが、人間が言う『三大欲求』とやらは別である。
それ即ち、食欲・睡眠欲・そして性欲。
腹が減れば美味しい料理を食べたいと思う。ただ腹が膨れるだけでは満足出来ないのだ。
そして睡眠欲。夜の帳が降りる頃、ゆっくりと静かな眠りにつく事に安堵を覚えてしまう。
そしてヘルモスが一番恐れているのが性欲だった。
交尾によって子孫を残す事のない自分達にとっては全く意味の無い欲の筈なのに、人間の姿でいるとどうしてもこの性欲を押さえる事が出来ない。
ヘルモスが竜の姿に戻ってしまった理由が、この性欲の存在だった。
気が付くと五月蠅い説教が止んでいた。
不思議に思ったヘルモスがその身体を起こそうとした途端、腹部に何か重みを感じてその動きを止めてしまう。
瞳を開けて見てみると、その重みの正体はクリティウスだった。
いつの間に眠ってしまったのだろうか。ヘルモスの腹部に身体を預けて、優しい風に吹かれながら気持ち良さそうに眠ってしまっている。柔らかい金の髪がサラサラとヘルモスの肌を擽っていた。
それを見て漸くヘルモスは安心したかのように瞳を閉じ、次の瞬間には身体の大きさを変えていた。赤と白を基調としたローブに身に纏ったその姿は、先程散々クリティウスが戻れと言っていた真の姿であった。
燃えるような赤髪を風に吹かせて、己の胸に顔を埋めるようにして眠っているクリティウスを眺める。
すっかり安心したように眠り込んでいる姿を見て、ヘルモスは思わず苦笑してしまった。
「そんな安心したように眠っていると、いつか襲ってやるぞ…? 俺は意外と危険なんだからな」
精霊界に戻ってから暫くして、ヘルモスは気付いてしまった。己がクリティウスを欲している事を。
最初は気付かないふりをした。せっかく精霊界に平和が訪れ、自分達も元の姿に戻る事が出来たのだ。もう少し三人でこの平和を楽しんでいたいと、その事実から目を逸らした。
だが時が経つにつれて、段々と己の心が抑えきれなくなっていくを嫌でも感じてしまうのだ。
クリティウスはそんなヘルモスに全く気付かずいつも無邪気に接して来ていて、そんなクリティウスを見る度己の性欲が爆発しそうになるのに、ヘルモスはついに耐えきれなくなった。
人の姿で居るより、竜の姿になって精神の安定を求めたのはこの為である。
どうらティマイオスはそんなヘルモスに何となく気付いているようで、動向を見守るだけで特に何も言っては来なかった。
ただ少し鈍いところがあるクリティウスは、ヘルモスが何を思って竜の姿に戻ったのか、全く分かっていなかった。
故にこうしてしつこく説教をしに来るのだが、まさか自分が性欲の対象に見られているとは夢にも思っていないだろう。
ヘルモスにはそれが何よりも苦しかった。
「俺がこうして真の姿に戻るのは、お前が眠っている時だけ…」
小さく呟いて、金の髪をサラリと撫でる。
「でも、いつかお前が俺のこの欲を理解してくれた時…。その時こそ俺は、本当に元に戻れる事が出来るんだけどな…」
ふわりと微笑んで白い額に唇を押しつけるだけのキスをする。
今はこれだけで充分とヘルモスは自分で納得し、クリティウスを抱き締めたまま草原に身体を横たえた。
寝入ってしまったクリティウスが目覚めるまでまだ少し時間がある。それまでは自分もこの姿のままで眠っていようと、ヘルモスはゆっくりと瞼を降ろしたのだった。
二礼はwii版の『どうぶつの森』をやっているんですが、昨日はカーニバルで大変でした…。
あのクソ孔雀め…w
話が分からない人はググ…らなくてもいいです(´∀`)
知っている人は同情して下さいw
長編の続きをUPしました。
こっから先は二礼が独断で解釈したヴァーチャル世界の見解が入りますが、あんま気にしないで下さい(・ω・)
最初この話を書こうと思った時、乃亜を出すかどうか非常に悩みました。
二礼はアニメのオリジナルキャラが結構好きなんですけど、それに否定的な方もいらっしゃいますしね。
でも個人的に乃亜が大好きなんで、書かせて頂きました。
嫌いな方はご容赦を。
「一時はどうなることかと思ったけど、たまたま瀬人とモクバに発見されてね。そのお礼に今は僕がKCのサーバーを守ってるってわけさ。あぁ安心して。もう君らには何もしないよ。僕も心を入れ替えたんだ」
空中で足を組みニコニコと微笑みながら話す乃亜に、城之内と遊戯はポカーンとそれを見つめている。
その様子を海馬は後ろのディスクに座り、秘書が煎れてくれたコーヒーを飲みながら和やかに見ていた。
アメリカで海馬コーポレーション独自のシステムやデータを洗いなおしていた時、その最下部から偶然モクバが乃亜のデータを発見したのだ。
正直海馬にとってはどうでもよかったがモクバにとってはそうではなかったらしく、弟は懸命になってそのデータを修復した。
復元した乃亜は最後の記憶データをきちんと所持していたらしく、自分達に向かって笑顔で謝罪とそして復元してくれた礼を述べ、自分も海馬コーポレーションの為に何かしたいと強く言ってきた。
海馬もモクバも、最初は乃亜をシステムガーディアンになどする気は無かった。
だが、そんな自分達に乃亜が「僕も海馬の人間だった。君達の為に何かがしたいんだ」と強く願い、二人は相談して乃亜に仕事を託すことにしたのだ。
「こうして再び外の世界を眺めて、君達と再会するなんて二度と無いと思っていたよ…」
乃亜は少し寂しそうな笑顔を浮かべて、城之内と遊戯に話しかけている。
「ずっと暗くて冷たくて重い場所にいたんだ。あの爆発に巻き込まれて僕のデータはボロボロに破損してしまって、でも仕方ないと思っていたんだよ。君達にあんなことをしてしまったし、何より本当の僕はとっくに死んでいて、ここにいる僕はただの0と1の集合体だ。だからこのままここで静かに眠っているのが、誰にとっても一番いいことだと思っていたんだ」
そこまで言うと乃亜はモクバを振り返り、今度は明るく笑う。
「だけどモクバが…、僕にもう一度光を見せてくれた。あの時の感動は忘れないよ」
乃亜と視線を合わせて、モクバが照れたように笑い返した。
それを見て、乃亜は今度は海馬のほうにいたずらめいた微笑を向ける。
「僕はその時誓ったんだ。もう二度と同じ過ちはしないと。それからまがりなりにも海馬の人間として、大事な二人の弟達の力になるとね」
「フン」
乃亜の言葉を受けて、海馬が居心地が悪そうにそっぽを向く。
そんな海馬に意外だと感じていると、いつの間にか傍に来ていた木馬が城之内にそっと呟いた。
「本当は乃亜のと一緒に剛三郎のデータの破片も見つけたんだけどさ…。無視しちゃった。だってもう兄サマにあんな思いさせたくないし」
内緒だぜ?とコソリと囁くモクバに、城之内は黙って笑顔で頷いた。
その後乃亜は、海馬コーポレーションの高レベルヴァーチャルシステムについて、二人と真剣に話しているようだった。
「だからね、今までの既存のオンラインゲームとかだとさ。髪型や髪の色、体格とか顔のグラフィックの違いなんかで何パターンか違うキャラが出来るけど、それにも限度があっただろう?」
「うーん、確かに。僕も最近じゃ色んなオンラインゲームやってみたりしてるけど、どんなにオリジナルのキャラ作ってみても、結局他の誰かと被る事はあるよねー」
遊戯が乃亜の言葉にうんうんと頷く。
「だけどさ、君らが僕にヴァーチャル空間に引き込まれたとき、自分達のグラフィックは現実世界と変わりなかっただろ?」
乃亜の発言に城之内が「おー! そういえば」と大きな声を出した。
「そういやアレは凄かったな。だって途中まで自分達がヴァーチャル世界にいるデータ上の存在だってこと、全然気付かなかったもんなぁ」
「だろ? アレがKCの技術の凄いところなんだよ。ヴァーチャル世界に入るために必要なカプセル状のBOXがあったの覚えてる? アレの中で当事者の呼気や髪の毛や皮膚細胞の成分からDNAを割り出して、そのデータを今度は0と1に還元して個人認識記号を作り、最終的にヴァーチャル空間でのグラフィックデータを作り出しているんだ」
乃亜の説明に遊戯は感心したように夢中で聞いているが、城之内の方はそろそろ付いて行けないらしく「うがー!」と喚いて頭を抱えていた。
「着ている服とか髪型とかはスクリーンショットを撮って瞬時に反映出来るようになっている。まぁこの技術の大半を確立したのは瀬人の力なんだけどね。何だかんだ言ったって、我が海馬コーポレーションの総帥は凄いよねぇ」
それを聞いて城之内が海馬の方に振り返る。
一瞬眼が合うが、海馬はつとその視線を避けてしまった。
あの城之内の真っ直ぐな視線を真っ向から受け止めるのは、まだ無理だと海馬は感じていた。
海馬に話し掛けたはいいものの結局言葉が続かず、城之内はその場では何も会話する事ができなくなってしまった。
「あー」とか「うー」とか言っている間に始業のベルが鳴り、仕方なく自分の席に戻る。
海馬が三ヶ月ぶりに復学することは学校側に既に連絡が付いているらしく、教師も特に何も言わず授業を始めてしまう。
城之内は謎の数式が羅列している教科書を開きながら、ずっと三ヶ月ぶりに後ろの席に座っている海馬の事を考えていた。
当たり前だが授業の内容なんて、全く頭に入っては来ない。
(くそ…。海馬と話してぇ…)
何故だかとてもイラだって頭をガシガシと掻き毟る。
城之内の脳裏には、エジプトでのあの日の夜のことがまざまざと甦ってきた。
海馬に好きだと告白して、ものの見事に振られたとこまでは仕方ないと言わざるを得なかったが、その振られ方が納得できるものではなかった。
(汚れてるって何だよ…。意味がわかんねーよ…海馬ぁ…)
『嫌い』とか『気持ち悪い』とかならまだわかる。
海馬に告白しようと決心した時点で、そう言われる事は覚悟の上だった。
だが海馬が言ってきた言葉はそのどちらでもなかった。
頭を抱えて悩んでいる内に数学の授業は終わっていた。
教師が教室を出るのと同時に、遊戯が海馬に駆け寄る。
二人で何か話しているようだったけど、城之内はまだ自分の気持ちに整理がつかず彼に近付くことが出来ないでいた。
海馬と話をしたいのは山々だが、頭の中がゴチャゴチャで何を話していいのか分からないのだ。
やがて海馬と何かを話し終わった遊戯が、机に突っ伏している城之内の元にやってきて嬉しそうに報告する。
「ねぇ城之内君。学校終わったらさ、帰りに一緒に海馬くんの会社に寄らない?」
「はぁ!? KCに?!」
慌てて後ろを振り返ると、何故だか得意そうな顔をした海馬と眼が合ってしまった。
自然な成り行きでそのままの姿勢で海馬に問いかけた。
「なんでお前の会社? 屋敷の方じゃなくて?」
「どうしても貴様らに見せてやりたいものがあってな。安心しろ、悪いものではない」
「はぁ…」
胸の前で腕を組んで得意満面にそういう海馬に、城之内は承諾するしかなかった。
放課後、学校の校門まで海馬を迎えに来た黒塗りのリムジンに一緒に乗って海馬コーポレーションのビルまでやって来てビル内に足を踏み入れる。
と、そこに待っていたのはモクバだった。
「兄サマ、お帰りなさい! あ、遊戯も城之内も久し振りだぜぃ!」
「あ! モクバ君! 久し振りー!」
「お前も久し振りだなー! 元気だったか? モクバ」
嬉しそうに駆け寄ってきたモクバの頭を、城之内はグシャグシャと思いっきり撫で回す。
「やめろよ城之内!」とモクバは何とかその手から逃れると、髪を直しながら海馬に向き直った
「兄サマ。こいつら連れて来たって事は、アレを見せるつもり?」
「あぁ」
「やった! 俺も自慢したかったんだよー! おい早くこっち来いよ!」
海馬の返事を聞いたモクバは遊戯と城之内の手を引いて、奥の通路まで歩いていく。
正面玄関の奥にあったエレベーターホールを素通りしたので、慌てて振り返る。
だけど後ろからついてくる海馬も特に何も言わずに来ている上に、城之内と眼が合うと「いいからさっさと行け」と手で合図をされる。
海馬にそう言われると黙って付いて行くしかない。
二人はモクバに手を引かれるまま、奥の方へと歩いていき、やがて『関係者以外立ち入り禁止』の札が貼ってあるドアを潜った。
すると、表からは分からなかった関係者専用エレベーターホールが現れる。
「ここのエレベーターで地下に降りるんだぜぃ」
「地下~?」
「いいからいいから」
妙に嬉しそうなモクバに城之内と遊戯は一瞬眼を合わせる。
二人して首を傾けて肩を竦めるが、遊戯が「モクバ君がそう言うんだったら、僕らは付いて行くしかないよね?」とにっこり笑って言うのに同意して黙ってエレベーターに乗り込むのを見て、城之内も諦めたようにその後に続いた。
乗り込んだエレベーターは随分下まで一気に下がって行くようだった。
ポーンと軽快な音をたてて地下に到着したエレベーターから外に出る。
見渡すとそこは大きなコンピューターがいくつもある部屋で、俺と遊戯が頭から『?』マークを一杯出しているとそれに気付いたように海馬が腕を組んで偉そうに説明しだした。
「ここは海馬コーポレーションのサーバールームだ」
「サーバーって、海馬コーポーレーションの独自のコンピューターシステムって事?」
「まぁそのようなものだ」
遊戯の質問に海馬が答える。
だが本当に見せたいのはこの部屋じゃないらしいと城之内は感じた。
チラチラと海馬の眼が泳いでいるのが見て取れる。
海馬の視線の先に目を向けると、そこには見慣れたソリッドビジョンシステムが置いてあるのが見えた。
「で? 俺らに見せたいものってアレか?」
指を指して城之内が問いかけると、海馬は嬉しそうに頷いた。
「その通りだ。モクバ、頼むぞ」
「OK兄サマ! おい、よく聞けお前ら。このソリッドビジョンシステムは、KCのバーチャル空間に生きている存在(データ)を特別にこの場で3D化して投影出来るものなんだぜぃ。ちなみにこれの他には社長室と副社長室、あと屋敷の方には俺の部屋と兄様の執務室にあるけど、まぁ一般人はここで我慢してくれよな」
「げっ!! KCのバーチャル世界って…」
城之内はその言葉を聴いて青褪めた。
はっきり言って自分達はバーチャル世界に対して余り良い思い出が無い。
最初はKCのBIG5が企てたDMクエストに始まり、次はバトルシティの途中で遭遇した乃亜とのいざこざだ。
隣を見ると遊戯も冷や汗を流している。
「そう心配すんなって。俺達はただ我が海馬コーポレーションのサーバーの守護者(ガーディアン)を見せたいだけさ」
モクバが「へへへ」と笑って、自分の鼻の下を指でこすった。
そしてそのまま投影機の場所まで行くと、スイッチを入れる。
「アメリカにいる時に、偶然破損してはいるもののまだ生きてるデータを発見してサルベージしたんだ。それを修復して今はKCサーバーの守護者(ガーディアン)になって貰ったんだよ。お前らにも会いたがっていたから、ついでに見せてやろうと思ってな」
モクバが一歩下がって投影機を見つめる。
四隅の投影機が淡く光って中心部分に画像を結び出す。
やがてその中に、忘れたくても忘れられない人物が姿を現した。
「げ…っ!」
「やぁ、遊戯に城之内。二人とも元気そうだね」
思わず身構えてしまった自分達ににこやかな笑顔で挨拶をした人物は、紛れも無いあの『海馬乃亜』だった。
もう一度見返してみたら、拍手ページに名前を入れる欄が抜けてるのを発見(´・∀・`)
もっと時間あるときに見つけなさいよ自分w
今日はもう無理だから、直すの明日以降になっちゃうな…;
多分探せばまだ色々とボロが出てくる予感で一杯ですw
初めから上手くは…いかないねー(´∀`;
エジプトでもう一人の遊戯を冥界に送り出した後、「せっかく皆集まったのだから」と誰かが言い出して、その日の夜は一緒に食事をすることになった。
『皆が集まっているから』というのは只の言い訳で、その本質は相方を失って気落ちしている遊戯を慰める為のものだったのだが。
現にその時点での遊戯の憔悴具合といったら、海馬ですら見ていられない程だったのだ。
飛行機で一旦ルクソールからカイロに戻り、イシュタール姉弟の紹介で現地の有名ホテル内にあるレストランに入り、そこで皆と一緒に夕食をとった。
こんなに大勢で食事を取る事が無かったからだろう。
海馬はモクバが嬉しそうにはしゃいでいたのを覚えている。
食事の最中、他の皆とどんな会話をしたのかは実は余りよく覚えていないが、その雰囲気が不快では無かったこと、むしろ心地良くさえ感じていた事は今でもよく思い出せた。
遊戯は最初ボロボロと泣いていたが、周りのお友達メンバーの慰めに徐々に立ち直って、デザートを食べる頃にはすっかり元気になっていた。
「海馬、ちょっと話があるんだけど…。いいか?」
城之内が海馬にそう話しかけてきたのは、食事も終わり皆がホテルのロビーで談笑していた時だった。
その場で話を聞こうと思ったのだがどうやらそれでは不味いらしく、目線で「外に行こう」と促しているのを感じ取る。
ちらりとモクバの方を見ると弟は遊戯や漠良達と楽しそうに会話していたので、海馬はそれに了承して席を立ち城之内の後に付いて行った。
ホテルの玄関を出ると、街は砂漠の街独特の夜の冷え込みに寒い位だった。
「話とは何だ?」
ぶるりと少し身震いして前に立っている城之内に問いかける。
城之内は肩を竦めて何かを考えているようだったが、突然こちらにクルリと振り返ると真面目な顔をして言った。
「あのさ。あまり茶化さないで真剣に聞いて欲しいんだけど」
その余りに真剣な表情に、海馬も黙って頷く。
その首が縦に振られたのを見て城之内は一つ大きな深呼吸をすると、普段の奴からは考えられないほど大人びた声でこう言い放った。
「俺さ、お前の事が好きなんだ」
瞬間、海馬は自分の心臓が跳ね上がるのを感じた。
余りにも突然過ぎる告白に頭の中が真っ白になってしまって、一瞬何の反応も返せない。
城之内の表情と声からそれがどういう意味での『好き』かは、分かりすぎるほど分かってしまった。
だが、海馬はそれを誤魔化すようにホテルのロビーを指差し城之内に答えた。
「俺とお友達ごっこがしたいのか? お前のお友達だったら、ほらあそこに沢山いるではないか。わざわざ俺と友達になりたいなどという考えは理解出来ないし、俺にはそんな暇も無い。御免被る」
「ち、ちげーよ! 俺はお前と友達になりたいわけじゃねーの!! 俺の言ってる好きはLoveの好きでLikeじゃねーんだよ!!」
必死に城之内が反論する。
そんなのは知っている。よく知っている。
何故なら海馬の『好き』もその『好き』だったからだ。
いつからだったのだろう。
海馬の中で城之内の存在が大きな位置を占めるようになってきたのは。
最初は闇の遊戯の金魚のフンでしかなかった筈だ。
会えば話せば一々突っかかってきて、自分とは決して相容れない本当にウザイ奴だと思っていた。
それがバトルシティで徐々に力を付け、準決勝で当たったマリクとの決闘には海馬もその実力と根性を認めざるを得なかった。
その後復活した城之内に3位決定戦を勝手に持ち込まれしぶしぶ決闘したものの、いいところまで追い詰められてその急成長振りに驚きを隠せず、ドーマの邪神から世界を救った時には、あの三竜の一匹に城之内も選ばれていたのだと知って少なからず驚愕し、更に増した実力に感心する事になる。
直後のKCグランプリでも、その成長振りをまざまざと見せ付けられた。
そこにいた彼はもう闇遊戯の金魚のフンではなく、一人前の決闘者だったのだ。
その頃にはもう城之内の姿が勝手に視界に入って来るのを止められなくなっていた。
あの金の髪に、あの陽気な声に、あの明るい仕草に、自分を押し留めようようとしても城之内に惹かれていくのを止められる筈もなく。
まるで太陽を目の前にしているかのような眩しさに、海馬は自分が恋に落ちていることに漸く気付いた。
だが、だからと言ってどうしようもない。自分も男、相手も男。この思いが届く筈は絶対に無いと思っていた。
まして自分には、決して彼には知られたくない程の凄惨な過去があるのだ。
海馬は自らの心の中で生まれたばかりの恋心を無理矢理消し去ろうと、ここ最近はずっと苦しんできたのだ。
それなのに今、その相手が自分に告白をしている。
正直に言えば心の底から嬉しかった。
だが海馬にはその想いを汲んでやる事は出来ないのだ…。
「なぁ海馬…。別に付き合って欲しいとかそういうんじゃないんだけどさ…。ただ俺の想いを知っていて欲しかったっつーか、何ていうか…。あ…。やっぱり男にこんな事言われるの…、気持ち悪いよなぁ…」
目の前の城之内は少し困った顔をして、頭をガシガシと掻いていた。
そんな城之内に海馬は静かに首を横に振った。
「別に…気持ち悪くは無い」
「え? マジで?」
「俺は人を好きになるのに性別や身分等の壁は全く関係ないと思っている」
「海馬…じゃぁ…!」
「だが…。だからと言って貴様の想いを受け止めるわけにはいかない」
「そ…そうだよな…。はぁ…」
城之内が落胆してガックリと肩を落としたのを見て、海馬は自分の胸がズキリと痛くなるのを感じる。
「お前、俺のこと嫌ってるし。やっぱダメだよなぁ…」
「誤解するな。俺は別にお前の事を嫌っているわけじゃない」
「えっ!? そうなの!?」
「お前がどう思っているか知らないが、俺はもう貴様を一人前の決闘者として認めているし、その人間性も好きだと思っている」
思わず出てしまった「好き」に慌てて口に手を当てるが、その言葉は目の前の城之内にしっかりと届いてしまっていたようだった。
海馬の言葉を聞いて城之内の頬が仄かに染まるのを見て、やはり自分は目の前の男が好きなのだと再認識したが、それでもやはりダメなものはダメなのだ…。
「諦めろ凡骨。俺はダメだ」
眼を剥いた城之内に畳み掛けるように言い放つ。
「俺は汚れている。お前には釣り合わない。他の…お前に釣り合う奴を探せ」
「なっ…!? ほ…他の釣り合う奴って…何だよ! お前じゃなきゃダメなんだよ! 俺はお前が好きだって言ってるのに!! 海馬っ!!」
城之内が海馬の両腕を掴んで身体を揺さぶってくるが、それを無理矢理振り払うと、海馬は城之内と距離をとり背を向けた。
後ろではまだ城之内が何かを叫んで訴えかけていたが、海馬はそれを無視してホテルのロビーに戻っていく。
心臓が…痛かった。
痛くて痛くて、どうにかなりそうだった…。
ような気がします…w
こうして見ると、何だかとってもサイトっぽいね、うん(´∀`人)
本日の言い訳。
『Wヴァレンタイン大作戦』なんですけど、本人はヴァレンタインに合わせたつもり満々でした。
えーと…、果たして今日は二月の何日だったかねぇ…w
城之内×海馬
ちょっとバカっぽい社長を書いてみたかったw
詳しい経緯ははぶくが、何時の間にかオレと城之内は付き合っていて、世間一般で言う恋人同士というものになったらしい。
今夜は城之内が初めて我が屋敷に泊まりに来る予定だ。
オレは早々に風呂を済ませ、今は自らの部屋で城之内が来るのを待っている状態だ。
それにしても…泊まりか…。恋人が泊まりに来るということは…だ、そうアレをするのだ。
アレとはアレだ、セックスだ。一般の情報に疎いオレでも流石にそれは分かる。
問題はオレ達が両方男だという事だが、まぁその辺は何とかなるものなのだろう。………多分。
城之内が「明日泊まりに行ってもいいか?」と言い出したのは、昨日屋敷までオレを送り届けてくれた帰り際だった。
何でも明日から二日ほどバイトの休みが取れたので一緒にゆっくり過ごしたいのだと教えてくれる。
あの城之内でもやっぱり照れていたのだろう。西日に照らされて分かり辛かったが、確かに奴の顔は赤く染まっていた。
オレの方が背が高い為に自然と上目遣いになる目で「ダメか…?」と聞かれた時は、オレの身体の中に何か色々なモノが駆け巡って行った。
突然の申し出だったが城之内にそんな風にして頼まれたら断れる筈がない。
直ぐさまOKを出すと「サンキュー、海馬!」と満面の笑みを向けられ、その笑顔にまた胸が高鳴った。
あの時の城之内は可愛かったな…と思い出に浸っていながら、突如大きな問題が一つ残っているのに気付いてしまう。
先程も言ったがオレ達は男同士。つまりセックスをするとなると必然的にどちらかが女役をせねばならぬのだ。
暫し目を瞑って考える。まぁ…オレの方が背も高いし、この場合は城之内の方が女役だろうな。
そうなると今夜に備えて早速シミュレーションを立てておかないと!
オレは勿論の事、多分城之内も初めての経験だろうし、こんな大事な場面で失敗は許されない。
そうだな。まずはそっと服を脱がしてだな………。
城之内の指がゆっくりとオレのシャツのボタンを外していく。オレはそれを黙って見ている事しか出来ない。
心臓の音が煩い位に鳴り響き、顔が熱くて仕方無かった。
「じ…城之内…っ」
纏っていたシャツを肌蹴られ、ついに恥ずかしさに耐えられなくなって名前を呼ぶと、城之内が欲情に塗れた瞳でこちらを見返してくる。
「ん…何? 恥ずかしくなっちゃった?」
口元に笑みさえ浮かべている城之内は随分と余裕の表情で、一人焦っている自分が情けなく思えてしまう。
「やっぱ…嫌…?」
「ち…違う…っ!」
城之内が心配そうに問うてくるのに、慌てて首を横に振った。
嫌では無いのだ…。確かに未知の領域に踏み込む怖さはあるが、城之内が相手なら構わない。
ただやっぱり…どうしても躊躇してしまう。
「城之内…。オレは…その…、は…初めて…なんだ」
「うん」
「だから…そ…の…」
「海馬」
「や…優しく…してくれ…っ!」
必死で紡ぎ出した言葉に、城之内が優しく微笑んでくれた。
「わかってる。大丈夫だよ。お前は何も心配しなくていいから…。だから全部オレに任せてくれ」
そう言って城之内がオレを抱き締め、ゆっくりと体重をかけてk………。
「って、違う!!」
オレは極々自然に頭に浮かんできた想像を無理矢理追い払った。
非常に危ないところだった。あのまま想像し続けていたら、間違いなくオレが城之内に抱かれていた。
というか、大体今の想像は何だ! このままではオレが女役になってしまうではないか!!
違うだろう? そうじゃないだろう? しっかりしろ海馬瀬人!
オレは自分に言い聞かせながら、もう一度頭の中でシミュレーションを展開する。
そうだな…。男同士のセックスだから、もちろんアレを愛撫するのが一番手っ取り早いか…。一番感じやすい器官だしな。
他の男のモノなど考えるだけで萎えるが、城之内のだったら勿論全然平気だ。
まずはアレを触って快感を与えておいて………。
「そうそう、上手だよ…海馬」
「んんっ…ふっ」
必死で奴のモノをしゃぶっているオレの頭を、城之内が優しく撫でてくれる。
オレの髪を指で梳かしながら、言葉でオレを煽ってきているのだ。
「歯はたてるなよ、痛いからな。もうちょっと喉の奥の方に入れられる? うん…そう。気持ちいい…」
「んくっ…! ふぁ…んんっ…!」
オレの唾液と城之内自身の先走りの液で濡れたソレを、オレは必死になってしゃぶった。城之内に言われたようになるべく喉の奥まで導き入れて、銜えきれない根本は指で強く握って刺激を与える。時折幹を舌で舐める度、ピチャピチャという水音が厭らしく辺りに響いた。
顎が痛くて疲れて来たが、それでもオレは止めようという気はしなかった。
オレの頭上で城之内の息が乱れ、感じてくれているのが分かるから嬉しかったのだ。
息が苦しくて涙目になりながら上目遣いで城之内を覗き見ると、その視線に感じたのか口の中のソレがグンッと大きくなるのを感じる。
荒い息を吐きながら目元を赤くした城之内が、オレを見てニヤッと笑った。
やがて限界が来たのだろう。オレの髪を梳いていた指が止まり、唐突に強く押しつけられる。
「ぁ…海馬…っ! オレもう…イキそ…」
ぐっと強く頭を引き寄せられ、やがて喉奥で熱い液体が弾けたのを感じた。
青臭く苦いそれを無理矢理飲もうとする。くんっと喉を鳴らして飲み込むと、はぁ…と熱い息を吐いた城之内がオレを抱き寄せてまた頭を撫でてくれた。
「飲んでくれたんだ…。ありがと海馬」
口の中にはまだあの味が残っていたが、オレは満足して城之内を抱き返s………。
「って、違うーっ!!!」
オレは先程より大きな声で叫んで、再び浮かんできた想像…というよりもはや妄想の域に入ってきたそれを振り払った。
オレは城之内に抱かれたいんじゃない! オレが城之内を抱きたいんだ!!
なのに先程からオレの頭に勝手に浮かんでくる想像…いや妄想は、困った事にどうにもオレの方を女役にしたいらしい。
ダメだ…、このままじゃダメだ!!
もう途中の行程等どうでもいい!! とっとと最後のシミュレーションだけして、あとはそれに備えればいいのだ!!
オレは少しイラつきながらも、ソファに座り腕を組んで頭の中で妄想を汲み上げた。
そう、要はオレが下にならなきゃいいのだ。あくまで城之内が下でオレは上だ。
城之内が下、オレが上。城之内が下、オレが上…。城之内が下、オレが………。
「ひぁっ!! あっ…あぁっ!!」
下から突き上げられる衝動に、オレは思わず悲鳴を放ってしまう。そんなオレの声を聴いてベッドに横になった城之内は、ニヤリとやらしく微笑んだ。
そしてまた下から強く突き上げられて、オレは新たな悲鳴を上げながら嫌々をする様に首を振った。
オレは今、横になっている城之内に跨る状態で奴のモノを受け入れていた。
倒れそうになる身体を奴の腹部に着いた両手で何とか支え、下にいる城之内に良いように揺さぶられている。
「んっ…っくぁっ…。あぁ…あっ…っぁ…。んあぁぁっ!!」
乗り上げる形の為体重が直接かかり、城之内のソレは奥の奥まで届いてオレを翻弄していた。
「やっ…! も…苦し…い…っ!」
「苦しいだけじゃないだろ…? さっきから随分と気持ち良さそうな顔してるけど?」
「っん…! そ…それは…っ」
「ちゃんと正直に言わないとダメだぜ? ほら、気持ちいいだろ? な?」
オレの腰骨を手でしっかりと支え、再び突き上げてくる城之内にオレはただ鳴く事しか出来ない。
余りの快感に涙が勝手に溢れて、閉じる事を忘れた口からは唾液が零れ落ちた。
「ぅぁっ…! あぁっ…ゃ…ん。気持ち…い…い…っ!」
「海馬…海馬…っ! 大好き…だ…っ!」
「あっ…! オレも…好き…! 大好き…っ!!」
「かい…ば…っ! くっ…!」
「あっ…あっあっ…っ! ぁ…も…ダメ…! も…うイク…っ!!」
「イケよ…海馬…っ!!」
「あぁっ!! ひっ…ぁ…! いやぁっ! や…ぁ…あぁぁぁぁーーーっ!!」
最後にトドメとばかりに強く前立腺を突かれ、その衝撃で頭の中が真っ白になった。身体をビクビクと震わせて城之内の腹の上に白い精液を放つ。
それと同時に自分の体内にも熱いものを感じて、再びブルリと震えてしまった。
「っ…。ふぁ…ぁ」
「海馬…」
力を無くして倒れ込むオレを城之内は優しく抱き留めて、汗に塗れた額に優しくキスをしてくれた。
「ありがとうな…海馬。オレを受け入れてくれて…」
「城之…内…」
「大好きだよ。もう絶対離さないから覚悟しろよな」
そう言って笑顔を見せてくれた城之内は壮絶に格好良くて、それをまともに見れずにオレは思わず奴の胸に顔を埋めてしまう。
「オレも…好きだ…。だからオレもお前を離さな…い…からな…」
「うん」
「城之内…」
「海馬…」
もう一度見つめ合ったオレ達は、どちらからともなくゆっくりと顔を寄せ、そっと唇を合わせt………。
「って、違うって言ってるのにぃぃぃーーーーーーーーーっ!!!!!」
大声で叫び目の前のテーブルに両手を叩き付けて、オレはソファから勢いよく立ち上がった。
ただ座ってただけなのに、オレの身体はすっかり熱を帯び心臓がドクドクと煩く鳴って、おまけに息も荒くなっている。
口元に手を当てて深く溜息をつき、オレは自分自身に「落ち着け…落ち着け…」と言い聞かした。
何で自分の頭で考えている事なのに、オレの命令通りに事が進まないんだ。
このままではオレは本当に、女役として城之内のモノを受け入れる羽目になってしまう…っ!
そう考えたその瞬間ズクリと下半身が反応して、オレはそれを信じられずに思わず自分の下腹部に目を遣ってしまう。
最悪だ…と思った。
オレの身体は間違いなく自分が女役である事に納得し、あまつさえ興奮すらしているのだ。
「う…嘘だ…っ!」
「何が嘘なの?」
「じ…城之内っ…!」
思わず頭を抱えて項垂れた瞬間、突然入り口方面から声がかけられる。
いつの間に来ていたのだろうか。城之内がそこに突っ立っていた。
「さっきから何一人で百面相してんの? 赤くなったと思ったら今度は青くなって、今また赤くなってるぜ?」
オレの動揺を余所にツカツカと近付いて来た城之内は、オレの頬にそっと手を添えて顔を覗き込んできた。
「マジでどうしたんだ? 目もすげー潤んでるし顔も熱い。ていうか、今の海馬メチャクチャ可愛いし。何? もしかして誘ってんの?」
そう言ってニヤリと口元を歪めるその顔は、先程のオレの妄想で見せた顔と同じで、その顔でオレはまた身体の温度を上げてしまった。
そんなオレの身体を半ば抱き抱えるようにして、城之内はオレを隣のベッドルームに連れて行く。
「そんな顔されたらもう我慢出来ねーじゃん。覚悟…出来てるよな? 海馬?」
「ぁ………っ」
ペロリと下唇を舐めてベッドに押し倒してくる城之内に、オレはもう抵抗なんて出来なかった。というより、オレの身体が抵抗する事を拒んだ。
重なってくる熱い身体に両腕を回しながらオレは漸く諦めて、ゆっくり瞳を閉じながら全てを受け入れる覚悟を…した。
このサイトは遊/戯/王の腐向け二次創作の小説サイトです。
原作者様や出版社、アニメやゲーム等の関連企業とは、一切何も関係ございません。
凡骨が左で、社長(若干乙女気味)が右です。
基本『不健全』ですので、そういうのに耐性が無い方は回れ右してお戻り下さい。
「むしろOK!」と言って下さる方のみ、どうぞ下のEnterからお入り下さいませ~!
オンマウスでサイト名等の情報が出ます。
基本フリーリンクですが、一応お知らせ頂けると嬉しいです(´∀`)
バナーはこちらをお使いください。
サイト名:小春日和
管理人:二礼しげみ
URL:http://eruma.mistyhill.org/
バナアド:http://eruma.mistyhill.org/banner.jpg
城海への愛が溢れて止まらず、ついにサイト運営に着手してしまいました…(´∀`;
とりあえずまだ準備する事が山程あるので気は抜けません。
つか、知恵熱出そうwwwww
ちなみにコレ、テスト日記なんですけど、一応言い訳じみた事を書いておく罠。
小説の書き方なんて7年ぶりで、完全に忘れてますよ!www
文章構成って何ソレ? 美味しいの?(*'-')
結構ビビってますw
やっていけんのかね…(´―`;
城之内×海馬
18禁に該当する内容がありますのでご注意を。
「なぁ海馬。お前さ、空飛ぶ夢って見た事ある?」
唐突に城之内に問いかけられて、オレはPCの画面に集中していた視線を上げた。
海馬コーポレーション社長室の重厚なソファにドッカリと腰を落ち着けている城之内は、その視線を受けてニッコリと笑った。そして手元のペットボトルに入ったミネラルウォーターをゴクリと飲み下す。
何故城之内がKCの社長室に我が物顔で居座っているのかとか、備え付けの冷蔵庫から勝手に飲み物を拝借しているとか、そういう疑問はもう持たなくなった。なぜなら奴がこの社長室に自由に出入りするようになったのも随分前からで、最初はその行動に異を唱えていたがやがて面倒臭くなって何も言わなくなった。
「もう少しで終わるから大人しく待っていろ。くだらない質問をするな」
軽い溜息をついて呆れたように返すと、城之内は「いいじゃん! 教えてよ」と全く悪びれることなく近寄ってきた。
城之内がオレに「好きだ」と告白してきたのは半年前。奇しくもオレも奴に興味を持ち始めていたので、何も考えずにその場でOKを出した。
そのせいですっかりオレと慣れ慣れしくなってしまった城之内は、学校や屋敷は元より、最近はこうして会社にも平気でやって来るようになってしまった。
そしてお互いに時間が空いた時はこうして会社まで直接迎えに来て、その後一緒に屋敷に帰り、オレの部屋で一泊するというのが奴の日常になってしまっている。
「で、どうなの?」
すっかり興味津々な顔になった城之内がモニターの向こうから覗き込んでくる。これは無視しても諦めないなと思ったオレは、少し呆れた声で答える事にする。
「何度かある」
その短い答えに城之内の顔がパッと明るくなった。
「やっぱ海馬もあるんだなぁ、そういう夢。なぁ、夢の中じゃどうやって飛んでる? やっぱりほら、鳥みたいに羽ばたいたりとか?」
城之内が両腕をパタパタと動かすのを見て、オレは首を横に振った。そして右手の親指で後ろの窓ガラスを指す。
「そこの窓ガラスを突き破って地面に向かって真っ逆さまに飛んでる夢だ」
「って、おい! それは飛んでるんじゃなくて落ちてる夢だろ!」
オレの答えに城之内が慌てて訂正を入れてくる。
仕方無いじゃないか…と思う。オレ自身もこの夢を見る心当たりがあるにはあるんだ。
義父である海馬剛三郎が死んだのはこの場所だった。
オレに会社を乗っ取られて絶望した奴は、この社長室の窓ガラスをぶち破って地面に向かって飛んだ。そしてそのままこの世とオサラバしたのだ。
その事については別に何も思わないし、自分の見ている夢についても何も感じる事は無い。
そう城之内に告げると、奴は悲しそうな声で反論した。
「寂しいなぁ…。もっと楽しい夢を見ろよ」
「楽しいとは? 大体お前が見ている『空飛ぶ夢』とはどんなものだ? 他人に聞いておいて自分の夢は話さないつもりか」
「いやいや。ちゃんと話すよ。ちょっとお前が見ている夢に愕然としただけ」
そう言って再びソファに戻った城之内は、天井を見上げて目を瞑った。多分自分が見ている夢を反芻しているのだろう。
「グライダーって飛行機、知ってる?」
「滑空機か」
「そう。夢の中のオレはまるでグライダーみたいに高い空を滑っているんだよ。普通空を飛ぶ夢って言ったらさ、鳥みたいに両腕を羽ばたかせるか、天使みたいに背中に生えた羽で飛ぶもんじゃん?」
「そうなのか? 生憎そんな夢は見た事が無いからわからんが」
「相変わらず夢がねぇのなぁ…。まぁそれはいいとして。でさ、オレは別に羽ばたいたりしてないわけ。ただ両手を伸ばして強い風を受けてさ、高い高い空をゆっくり真っ直ぐほぼ水平にスィーッと飛んでんの。それがホントに気持ち良くて最高でさ-」
夢と同じポーズを取っているのだろう。ソファの上で両腕を左右に伸ばして上体を傾けていた。
「海馬。お前もさ、そういう夢見られるようになればいいのに」
ポツリと呟かれた声に「フン」と鼻で笑った。
城之内から告白を受けてから、オレ達は実に不思議な付き合いをしている。
城之内の言う「好き」がただの好意や友情の意味でない事はわかる。現にオレ達はキスもセックスもした。…一度だけ。
唇を触れ合わせるだけの軽いキスならもう何度もしているが、舌を絡まらせるような深いキスやセックス事態は付き合って直ぐに一度しただけで、再び城之内がその行動に移るような事は無かった。
オレ自体は淡泊なのでそれでも構わなかったが、城之内はそういう訳では無いのだろう。時々酷く熱い視線を感じる事がある。
別にそういう行為を拒んでいる訳ではない。向こうがその気ならいつでもディープキスでもセックスでも何でもしてやっても良いと思っている。だが、肝心の城之内が何も仕掛けて来ないのだ。
それについて一度理由を聞いてみた事がある。奴から返ってきた答えは、オレには理解不能なものだった。
「だってお前が求めて来ないんだもん」
オレはそれに首を傾げて反論する。
「確かにオレは自分が淡泊だという自覚はあるが、貴様がやりたかったら別に付き合ってやっても良いのだぞ。オレ達は恋人じゃないのか?」
「恋人だよ。だからオレが一方的に求めたって仕方無いんだ。お前からも求めて来ないと意味がない。だからしない」
「意味がわからん…。したいなら勝手にすればいいのだ」
「オレがそれをヤダって言ってんの。まぁいいさ。時が来ればいずれなー」
そう言って明るく笑う奴が、オレは不思議だった。アイツが我慢の限界にあるのを知っていたからだ。
仕事を終え一緒にリムジンで屋敷まで帰る。先に帰っていたモクバと一緒に夕食を済ませ、その後三人で少し遊ぶ。時間がくれば城之内と一緒にオレの自室に戻り、別々に風呂に入る事になっていた。一応客である城之内が先に風呂に入り、出てきたら入れ替わりでオレが入る。
いつもと同じ行動パターンだった。
その後はパジャマに着替えてベッドに入って一緒に眠る。
そう…眠るだけなのだ。
城之内はギュッとオレを背中から抱き締め、首筋に顔を埋めて深く息を吐き出した。
「おやすみー海馬」
「あぁ、おやすみ城之内」
寝る前の挨拶を交わすと、いくらもしない内に背後から安らかな寝息が聞こえてくる。
寝付きだけは本当に早い…と感心しながらも、オレはやはり気になっていた。
城之内が泊まりに来ている時、一度だけ夜中にハッと目が覚めてしまった事がある。例の社長室から地面に飛ぶ夢を見てしまったからだ。
夢の中のオレは何か恐ろしいものに詰め寄られ逃げ場を無くし、ついに社長室のガラスを突き破って空中に身を投げ出さずを得なかった。
もの凄い勢いで地面が近付いてきて鼻先に硬いコンクリートの地面が触れたと思った瞬間、夢はいつもそこで唐突に覚める。
夢から覚めた瞬間はいつも心臓が早鐘のように激しく鳴り、寝汗で首筋も背中もビッショリだった。
いつもならそこで起き上がってシャワーを浴びに行くのだが、その日は勝手が違った。寝入った時と同じ状態で城之内が背中からオレを抱き締めていたのだ。そしてその城之内の異変に気付くのも直ぐだった。
苦しい程に強く抱き締められ首筋には熱い吐息、そして密着している腰には何か硬いモノが当たっているのがいやでも分かる。
この男はどれだけ必死に我慢しているのだろうか…。時折苦しそうな呻き声も聞こえてきていた。
そんなに苦しむ位なら我慢せずにやってしまえばいいものをと、オレはまるで他人事のように思う。だからといってそんな状態の城之内に声をかける事も出来ずに、オレはまた眠っているふりをしてしまう。
一応同じ男だから、相手に対する欲望というものは理解出来る。そしてその欲望に限って言えば、男としては城之内の方が普通でオレが異常だということも分かっていた。
長く続いた虐待で壊れてしまったオレの心はすっかりその手の普通の感覚を無くしてしまっていて、もう一人の遊戯に心を砕かれ自ら組み直してから少しはマシになったらしいが、それでもまだ普通の感覚は完全には戻りきっていない。モクバや城之内に言わせれば、これでも大分戻って来ているらしいが。
「海馬」
そんなオレに城之内はいつも言い聞かせるように語った。
「ホントに欲しい物は、ちゃんと自分の腕を伸ばして掴み取らなきゃダメだぜ?」
そんな事ならいつもやっているというと、奴は苦笑するばかりだった。
ゆっくりと眠りに落ちていく自分を自覚しながら、頭の別の所では城之内の事を考えていた。
奴の事は本当に好きなのだ。その気持ちに嘘はない。現にキスされた時もセックスをした時も嫌では無かった。それどころか心の底から嬉しいと思った。
なのに何故か自分から求める事が出来ない。
理由は分からないが、自分から手を伸ばす事がどうしても出来ないのだ。
『本当に分からんのか?』
突如自分にかけられた声に驚く。慌てて周りを見渡すと、そこは一面の白い世界。足下はふわふわしていて心許無く、周りの景色が一切見えないのが不安に感じる。よく見れば白い物の正体は何かの煙のようで、その煙幕の向こうに人影が浮いていた。
その影の形には覚えがあった。
それはいつも鏡で見ている自分の姿で、どうやら先程の声はその影が発したようだった。そう言えば聞こえた声は自分の声そのものだった…。
『自分から求められない理由、本当に分からんのかと聞いている』
戸惑っていると再び声がかけられる。
「分かる訳がない…。オレ自身がその事で悩んでいるというのに」
『オレは知っているぞ。お前は本当は怖いのだ』
「怖い…? オレがか…!?」
『そうだ。自分から望んで手を伸ばしたものが、やがて自分から離れていくのが怖いのだ。だから求める事が出来ない』
「もしそうだとしても、それを恐れない人間がいるのか…っ!? 大事なものが自分から離れていくのが怖くない人間がいるというのか…っ!?」
『そうだな。人は皆それを恐れる。だが恐れていてばかりでは何も始まらない。城之内はその恐れを振り切ってお前に近付いて来たではないか』
「そ…それは…」
『それに、現にお前の恐れは城之内を苦しませるばかりだ。お前は恐れを振り切らねばならない。欲しいものは自分の手を伸ばして掴み取れ。そうでなければ…』
「っ…!? あっ…!?」
煙幕の向こうの人物がそう言った瞬間、突然足が地面を突き破って空中に投げ出された。
いつもの夢とは違う、そこは高い高い空の上。見上げると今まで自分が居たのは雲の中だと知れる。
激しい空気抵抗で身体がぶれ、冷たい空気が肌を刺した。視線を下げればもの凄い勢いで地面が近付いてくる。いくつもの雲を突き破り、オレの身体は確実に重力に従って地上へと引っ張られていく。
このままじゃ地面に激突する…っ!!
いつもの夢では全く感じる事のない恐怖に、思わずギュッと目を瞑った。その時…。
「海馬っ!!」
オレの耳に聞こえてきたのは城之内の声だった。
恐る恐る目を開けるといつの間に居たのか、すぐ横に城之内が飛んでいた。空気の抵抗などまるで感じさせぬように、まるで滑るようにオレに近付いてくる。
「海馬…、手を…!」
城之内が手を差し伸べてきた。
「いくらオレでもこれ以上は近付けない…っ! 死にたくなかったら手を伸ばせ…っ!」
「城之…内…!」
城之内の言葉に手を伸ばそうとするが一瞬躊躇してしまう。
本当に自分なんかが手を伸ばしていいのだろうか…? このまま彼の手を取らず地面に激突死して消えてしまった方が、後々お互いに悲しくは無いんじゃなかろうか…?
ありえない思考に捕われていると、隣で飛んでいる城之内が必死の形相で叫んだ。
「海馬っ!! 欲しい物はちゃんと自分の手を伸ばして手に入れろって言っただろ!! オレが好きなんじゃないのか!?」
「………っ。好き…だ。好きだが…」
「じゃあ手を伸ばせ! 手を伸ばしてオレを捕まえろ!! オレが…欲しいんだろ!!」
「…っ! 城之内…っ!!」
城之内の言葉に引っ込みかけた手を伸ばした。
上空の強い風に翻弄されて思うように身体を動かせない。必死に手を伸ばして城之内に近付いたと思っても、すぐに引き剥がされてしまう。
そうこうしている内に、下に見える地面は大分広がってしまっていた。
「頑張れ…っ! 諦めんな…海馬…っ!!」
「くっ…うっ…!!」
身体が燃えるように熱かった。額には汗が浮かんでいるのが分かる。
何度城之内と引き離されようとオレは手を伸ばし続けた。肩や肘が痛くなってきても、少しでも前へ前へと腕を伸ばす。
「海馬…、もう少しだ…っ!」
届け! 届け!! 届け!!!
それだけを願いもうこれ以上は無理だという位腕を伸ばした時、不意に指先が城之内のそれと触れ合った。
その途端力強い手がオレの手を握って、突然グンッとオレの身体が浮上する。驚いて見上げると、城之内がオレの身体ごと上空に浮上しているところだった。
「うまく上昇気流に乗れた。もう大丈夫だ」
天空から指してくる眩しい太陽の光を受けて、城之内は安心したように笑いかけてくる。
「城之内…」
オレも漸く安心して奴の手を強く握り返した。
「………っ!」
突然意識が覚醒して、オレは目を覚ました。
そこで漸く自分が今まで夢を見ていたのだと知る。
詰めていた息を深く吐き出すと、この間と同じように背中から城之内が強く抱き締めてきているのがわかった。この間と違って後ろの城之内は今夜は確実に眠っているのだが、やはりその身体は熱かった。
その熱に気付いた時、オレは自分の身体にも異常が起きている事を知ってしまう。
あんな夢を見たせいだろうか…。オレは間違いなく欲情していた。心臓はドクドクと強く鳴り、頭と下半身に血が集まっているのが感じられる。
そして何よりオレの心が…城之内を求めていた。
そっと身体に回る奴の手を外して城之内の方に向き直る。安らかな寝顔を見つめていると、これから自分がやろうとしてる事に大して躊躇してしまうが、自分の心がその衝動を抑えきれないと訴えていた。
薄く開いた唇にそっと口付ける。最初は触れるだけのそれもやがて我慢出来なくなって、ちろりと舌で上下の唇を舐めてそっと口内に差し込んだ。歯列をなぞるように舌を這わせて、開いた歯の間から覗く城之内の舌に自分のそれを触れ合わせた。
柔らかくて温かいそれを夢中になって舐めていると、突然後頭部を押さえつけられて激しく舌を吸われてしまう。
「っ…!? んっ…! ふっ…んんっ!!」
慌てて逃げようとした舌を絡み取られて甘噛みされる。その途端ゾクゾクとした快感が背筋を走って、オレは身体を震わせた。
何時の間にか目を覚ましていた城之内は、その腕でオレの身体を逃げられないように強く抱き締めてキスを続ける。押し込まれるようにオレの口の中に入ってきた城之内の舌はそのまま口内を蹂躙し、自分の口角から流れる唾液をもろともせずオレを翻弄した。チュクチュクという水音に厭でも欲情が高められて、オレは自分が勃起しているのを感じてしまう。
漸く解放された頃にはオレも城之内もお互いに息が上がって肩を上下させるほどで、城之内は自分の口元を手の甲で拭いながら不思議そうに聞いてきた。
「どうしたの…? 突然」
その質問にオレはただ首を横に振る。
「わからん…。ただ…」
「ただ?」
「夢を見たのだ…。目が覚めたら…お前が欲しかった」
自分が意味不明な事を言っている自覚はあったが、そう説明する他無かった。
驚いたように目を剥く城之内を無視して、オレは纏っていたパジャマのボタンを外し始めた。上着はそのまま肌蹴るに任せ、ズボンは下着ごと脱いでベッド下に放ってしまう。
「え…? 海馬…?」
呆気に取られている城之内のズボンに手をかけて、オレのと同じようにトランクスごと脱がせてしまう。そして緩く立ち上がっている城之内のペニスを何の躊躇もなく口に含んだ。
「うっ…わ…! ちょ、ちょっと…!」
慌てて止めさせようとする城之内の手をパシンと払って、オレは口内のモノに舌を這わせた。
裏筋に舌をピタリと這わせそのままヌルヌルと上下させる。
「っ…! 海…馬っ!」
城之内がちゃんと感じている事に気を良くし、根本を手で握って刺激してやりながら深く飲み込んでやった。亀頭部分が喉奥を刺激して一瞬嘔吐き涙目になるが、上手く当たる場所を変えて舌を絡ませると強く吸い上げた。
奴の手がオレの頭を強く掴むので、仕方無くオレは顔を上げる。そして濡れた唇もそのままに城之内の身体に跨った。
オレの唾液と奴自身の先走りの液で濡れているペニスを支えて自分の後孔に当てる。そのまま腰を降ろそうとした時、その腰を強く捕まれて動きが止まってしまった。
「ちょ、待って! ストップだって海馬!!」
「嫌だ城之内! オレは早く欲しい…っ!」
「嫌だじゃねーよ! わかってるけどそのままじゃ無理だって! お前全然慣らしてないじゃんか…っ!」
城之内がそう言ってオレの後ろの入り口をそっと撫でてくる。
「そんなものはどうでもいい…っ! オレは早くお前が欲しいんだ…っ!!」
「どうでも良くない! 傷ついちまうだろ?」
「裂けようが血が出ようが構わないから…はやく…っ!!」
「お前が構わなくてもオレが構うよ! とにかくほら…オレの指舐めて?」
口元に差し出された城之内の人差し指と中指をオレは暫く見つめ、合点がいったのでそれを口内に招き入れた。唾液を絡みつかせるように指の根本まで丁寧に舐る。城之内も指でオレの唾液をすくうように舌や頬の内側を念入りに擦った。
「まったく…。突然だったから何も用意してないんだよな。ホントはローション使った方がいいんだけど、今日はコレで我慢な?」
ヌルリとオレの口から指を抜き取った城之内は、その濡れた指を後ろに回しオレの後孔に擦りつけた。
暫く馴染ませるように穴の縁を弄っていた指が、唐突に中に入ってくる。
「んっ…! くふっ…!」
それにビクリと身体を揺らすと、下にいる城之内が心配そうにオレの顔を見上げてきた。それに目線で続きを促すと、城之内は指の動きを再開する。
オレの体内を探るように出し入れされる指に、オレは身体を痙攣させて耐えていた。
「ぅ…っ…ん…ふぁ…っ。あぁん…!」
クチュクチュと音がなる程に激しく弄られて、オレはもう声を抑える事が出来なくなっていく。城之内の指がある一点を掠める度に腰が浮くほどの快感を感じる。指なんかでは無く早く城之内自身でそれを感じたかった。
「ぁ…っ! 城之…内…。も…もういい…。早く入れ…て…くれ…!」
オレの必死の懇願に漸く城之内が指を抜いてペニスを当ててくれる。腰を支えてくれてる城之内の誘導に従って、オレはゆっくり腰を下ろしていった。
「っひ…! う…ぁ…あぁ…っ! ん…あっ…!」
約半年ぶりの挿入に身体はやはり抵抗してしまう。それでも体内に城之内の熱を感じるのが嬉しくて、体重をかけてその全てを無理矢理納めきってしまう。
「っ…! ん…んぅ…っ!」
奴の腹筋に手をついて何とか自らの身体を支えていると、ベッドに横になっている城之内が厭らしく笑った。
「腰震えてる。可愛い…」
「う…うるさ…っ」
「褒めてんだよ。もうすっげー可愛い…! オレもう我慢出来なさそうなんだけど、海馬大丈夫?」
男臭い笑顔にオレはもう何も言えず、ただコクリと頷くので精一杯だった。
その後の事はよく覚えていない。
下からガツガツと激しく突き上げてくる城之内に必死に掴まり、あられもない悲鳴をあげて涙と涎で顔をグショグショに濡らして、気付いたらオレは何度も達してしまっていた。
正直何回イカされたか分からない。そして城之内も何度オレの中でイッたのか、今となっては分からなかった。
元々欲情を我慢していた城之内はまだしも、オレ自身もまさかこんなに溜まっているとは思わなかった。
その事をベッドの中でオレを抱き締めている城之内に告げると、「ハハッ」と随分あっさり笑われてしまう。
「そりゃお前、海馬の心の奥底では、ずーっとオレの事を求めてたって事だよ。それに自分が気付かなかっただけだ」
そう言ってオレを強く抱き寄せる。
「ぃっ…!!」
城之内につられて身じろぎをした拍子に下半身が酷く痛んで、オレは思わず顔をしかめてしまった。それに城之内が心配そうに覗き込んでくる。
「大丈夫か? お前まだ二回目だってのに無茶し過ぎ」
「貴様が手加減すれば良かっただけの話だ…っ!」
奴の腕の中からそう言って睨み付けてやると、「あーそうだよなー。ゴメンなー」と全く反省の色が見えない声色で答え、更に強く抱き締めてきた。
今城之内は、背後からでは無く正面からオレを抱き締めている。行為が終わった後のこの状況は恥ずかしくて仕方が無いのだが、城之内は「別にいいじゃん」と何時ものように明るく言ってオレを離そうとはしなかった。
「それにしても…。やっとオレの事求めてくれたな。なぁどうして急にそんな気になったんだ?」
ひどく不思議そうに訪ねてくる城之内に、オレは奴の胸元で溜息をついた。
あの夢の事を話してしまっていいのだろうか…? 言ったとしてもたかが夢に惑わされたと笑われてしまったりしないだろうか…?
オレの心配を余所に城之内は興味津々な顔でオレを見詰めている。
「………。笑わないか…?」
「笑ったりしねーよ」
「夢を…見たんだ…。不思議な夢だった…」
夢の内容を話すと城之内は優しく微笑んで「そっか」と一言呟いただけだった。どうやらそれだけの事でオレの中で何かが変わったのを、城之内はちゃんと感じ取ってくれたらしかった。
「オレは嬉しいよ。お前がちゃんとオレの事求めてくれてたって分かったからな」
城之内の手が優しくオレの頭を撫でる。それが気持ち良くてうっとりと目を瞑った。そして二人で抱き締め合って眠りにつく。
その夜見た夢は最高だった。
城之内に手を引かれて、オレは空を飛んでいた。
高い高い空を滑るように飛んでいく。冷たい空気が身体の横を流れていって、それがとても気持ち良かった。
もう地面に落ちるなんて感じる事は無く、城之内と二人でならどこまでもいけそうな気がしていた。
ふと横を見ると、城之内がこちらを見て微笑んでいる。ギュッとオレの手を強く握りしめ、嬉しそうに言った。
「やっと二人で飛べたな、海馬!」
目が覚めたらこの夢の事を城之内に話してやろう。
多分城之内も同じような事を言うだろうけど。
確信は無いが何となく強く感じる。
これは二人で見ている夢なんだと。
朝が来るまではまだ時間がある。
オレは城之内と共にもう少し、この空の時間を楽しむ事にした。
僕とアテムのWヴァレンタイン大作戦が終了してから丁度一ヶ月が経っていた。
その一ヶ月の間、城之内君と海馬君の間に何が起こっているのか、僕らは知りようがなかった。
だって彼等が何も教えてくれなかったから。
城之内君は僕と目が合うと気不味そうに目を逸らす事が多くなったし、海馬君は相変わらず仕事が忙しいのか余り学校には出てこなかったけど、それでも時々学校に出てくると居辛そうにそわそわしていた。
それでも僕らはちゃんと目撃していた。
時々彼等の目が合うと、お互いに顔を真っ赤にしちゃってるのを。
「全く…。可愛いぜ二人とも」
「うん。そうだね、もう一人の僕。でも僕らに何の報告も無いって事は、実は余り上手くいってないのかなぁ?」
「そんな事はないぜ相棒! 多分俺達に報告する切っ掛けを探しているんだと思うんだぜ」
「もうちょっと待っててやろうぜ、相棒」と言ってくるアテムに僕は頷く。
そうやって二人で話していると、突然呼び鈴が鳴るのが聞こえた。インターホンを取るとそこから聞こえてきたのは城之内君の声で、僕は急いで玄関を開けに行く。
扉を開けるとそこにいたのは城之内君だけじゃなかった。
「城之内君…と…海馬君?」
城之内君と海馬君、大の男が二人して神妙な顔つきで並んで立っていた。
二人は何か大きなギフトボックスを持っていた。
「あのさ遊戯。コレ…世話になったから…。あの店のクッキーなんだけど…」
「今日はホワイト・デーだからな。フン、貴様には世話になったしコレくらいは受け取って貰わんと」
そのギフトセットは、あの駅前のケーキ屋さんの焼き菓子のセットだった。よく見るとちゃんと熨斗がついていて、そこには城之内君と海馬君の名前が連名で書いてあるのが見える。
「………ぷっ!」
僕はもう可笑しくて可笑しくて仕方が無かった。
海馬君と城之内君が並んで立っている構図とか、二人の微妙な表情とか、場違いに大きいギフトセットだとか、大体どんな顔して二人でコレを買ったんだろうとか。
我慢出来なくて思わず吹き出してしまうと、途端に城之内君は困り顔に、海馬君は怒り顔になってしまった。
「遊戯ぃ~…、笑う事無いじゃねーか…」
「き、貴様! 何を笑っているのだ!!」
「ゴメンゴメン。とりあえず家に入ってよ二人とも。お茶煎れるからさ」
笑うのを極限まで我慢したせいで溢れてきた涙を拭いながら、僕は二人を家に招き入れた。
二人を部屋に落ち着かせたら、熱いお茶を三人分煎れよう。
それから持ってきてくれたクッキーを食べながら、この一ヶ月間君達がどんな風に過ごしてきたのか教えて貰おう。
僕達にはそれを聞く権利があるからねと、僕とアテムは二人でワクワクするのだった。
駅前にリムジンを止めて待っていると、突如窓ガラスがコンコンと叩かれる音がした。
スモークがかかった窓ガラスを下げると、そこに闇の遊戯…アテムの姿があった。
「すまないな海馬。今日は掃除当番で遅くなった」
「いや、構わない。オレの方こそ急にすまなかったな」
三ヶ月前、アメリカから帰って来て予期せぬ出来事に遭遇したオレは、時々こうしてアテムに相談事をしていた。
その予期せぬ出来事というのは、恋愛事だった。
今まで誰かを好きになった事のないオレが、突如ある人物に対して恋を自覚したのだ。
別に誰かを好きになったのが問題なのではない。問題はその人物が、あの城之内だという事だったのだ。
最初はこの事実に自分で驚いて何とか収めてしまおうと努力したのだが、結局上手くいかず逆に落ち込む羽目に陥った。
そこでそんなオレの相談役に名乗りを上げてくれたのが、このアテムだった。
アテムがリムジンに乗り込んできたのを確認して運転手に車を出させようとすると、「ちょっと待ってくれ」とアテムがそれを阻止する。
何だ? と目で問いかけると、アテムは悪戯めいた笑みでオレの前に一冊の情報誌を突きつけた。
「なぁ海馬、コレ知ってるか?」
「コレ? たかがタウン情報誌だろう? そういえば最近はこういうのが結構流行になってるらしいが…。で、コレが何だ?」
情報誌を受け取り適当にパラパラとページを捲っていると、あるページでアテムが手で止めに入った。
「ほらコレだぜ海馬。そこに見えているケーキ屋が結構有名みたいなんだぜ?」
言われてよくよく見てみれば、今角の方に見えているケーキ屋が、情報誌に載っているケーキ屋と同じ店なのだという事が分かる。
そこに載っている街の声とやらも良好で、ライターが勝手に付けて居るであろう☆印も三つ星だった。
「相棒もあそこのケーキが好きでよく買ってるんだぜ。俺はクッキーの方が好きだけどな」
「で、このケーキ屋が何だ?」
「何だじゃないぜ、海馬。明日が何の日だか、天下の海馬コーポレーションの社長が知らない訳無いだろう?」
そう言われて思考を張り巡らす。明日は2月14日。世間では聖ヴァレンタイン・デーと呼ばれている日だった。
本来の目的は全然違うはずなのに、お菓子屋の陰謀か、何時の間にかこの日本では好きな相手にチョコレートを送る日となってしまっていた。
「ヴァレンタイン・デーだな。それが?」
「ホントに分かってないのか? 鈍い奴だな。俺はお前に、城之内君にチョコを送れと言ってるんだ」
「な…ななな…何を言ってるんだ!!」
余りに突然の発言に動揺して思わず大声を出してしまうが、アテムには「五月蠅いぜ海馬」と一蹴されてしまう。
「このまま心に秘めていても何の進展も無いと思うぜ? まぁ名前は出さなくていいから、匿名で送ってみればいいんじゃないか?」
「あ…、い、いやしかし…」
「そこのケーキ屋は手作りのチョコレートも売ってるんだぜ。それが結構美味しくて評判らしいから、今ついでに買っていけばいいんじゃないか?」
困惑するオレを余所に、アテムは勝手に話を進めてしまう。
「お前だったらもっと高級なチョコレート売ってる店も知ってるんだろうけど、あんまり高級過ぎると城之内君も気付くだろうから、あそこで丁度いいと思うぜ? そうそう、実は丁度包み紙に最適な紙を相棒が持ってるんだぜ。それを使えば買った店もバレないし、いいんじゃないか?」
何故か自信たっぷりに言い放つアテムに、オレの心も揺らいでしまう。
それを了承と見たのか、アテムはオレを連れてさっさとリムジンを降りると、例のケーキ屋に入ってしまった。
中に入ると正面のショーウィンドウには色とりどりの美しいケーキが並び、その横には手作りのチョコレートのコーナーがあるのが見えた。
覗き込むと様々な形をした一粒代のチョコレートが綺麗に並び、値段も高すぎず安すぎずそこそこのお手軽さなのがわかる。
どれにしようか迷っていると、突如目の前に小さな箱が差し出される。視線を向けるとアテムが自信たっぷりな顔でそれを持っていた。
「海馬、これなんかいいんじゃないか? 丁度いいサイズだと思うぜ」
受け取って見ると、それはミルクやビター、ホワイトなどのトリュフが六粒入った小箱だった。
なるほど確かにこれは丁度いいサイズかもしれんと納得し、早速これを購入する。
その足でアテム…正しくは武藤遊戯の実家である亀のゲーム屋まで行き、家に上がらせて貰う。煎れて貰ったお茶を飲んでいる間に、アテムが何かを持ってきた。
「ほら、これだぜ海馬。綺麗だろう?」
アテムが差し出した包装紙は、白地に青いラインが斜めに入った美しいものだった。さらについでにと持ってきたモノは、青いリボンと銀色のハート型のシール。
「名前は出さなくていいが、やっぱりヒントは必要だと思うぜ? 全く何も感じさせないのもつまらないだろ?」
そう言って片眼を瞑るアテムを苦々しく思いながら、それを受け取って買ってきたチョコレートを包みだした。
皺にならないように綺麗に包み、最後はアテムの言うとおりに青いリボンの地のラインとは逆に斜めがけにする。そして銀色のハート型のシールでしっかりと止めた。
「よし、完璧だぜ! あとはメッセージカードだな!」
そう言って取り出されたのは、縁がほんのり赤くなっているハート型のメッセージカード。アテムはそれをオレに渡して「一言書けよ」と言ってきた。
書けよと言われても書く言葉が思いつかなくて、オレは机の前で固まってしまう。
「書くのはいいが何て書けばいいのだ…?」
訪ねた俺にアテムは親指を上にビッと立て、憎らしい程の笑顔で言った。
「難しい事は何も考える事無いんだぜ! そうだな、ただ一言『I LOVE YOU』って書けばいいんじゃないか?」
「あぁ、なるほど…」
その意見に賛同したオレは早速懐から万年筆を取り出すと、さらりと筆記体で『I LOVE YOU』と書き込んだ。
カードを丁寧にリボンに挟むと、それをアテムに手渡す。
「確かに預かったぜ、海馬! 間違いなく城之内君に渡すからな」
「頼むぞ。いいか、くれぐれもオレの名前は出すな…」
「分かってるぜ、海馬」
どことなく得意そうなアテムに一抹の不安を思えたが、ここはアテムを信頼しようとオレは屋敷に帰る事にした。
次の日のヴァレンタイン・デー当日。
夜十時近くに突然来客があった。メイドに詳しく聞くと「ご学友の武藤遊戯様のようです」と答えが返ってくる。
もしかして昨日託したチョコレートの事で何かあったのではと急いで応接室に行くと、そこに居たのはアテムではなく何時ものノホホンとした武藤遊戯本人であった。
ソファに座り込んで、メイドからお茶とケーキを貰っている。
「わぁ、ザッハトルテだー! 美味しそう」
「今日はヴァレンタイン・デーですから」
にこやかに笑うメイドから、これまた負けじと笑顔を振りまきながら遊戯はケーキにフォークを刺した。一切れ口に入れ、幸せそうに租借している。
オレは奴の向かいのソファに座りメイドが煎れてくれたお茶に口を付ける。
「こんな夜中に何のようだ、遊戯」
痺れを切らして訪ねると、「あ、そうそう。大事な事忘れてた」と遊戯は慌てて持っていたフォークを皿に戻した。
「実はね、ある人から海馬君に渡して欲しいモノがあるって頼まれたんだ。はいコレ」
テーブルの上に出されたそれは、どこからどうみてもヴァレンタインのチョコレートだった。
それを手にとってよく見てみると、何だか既視感を感じる。
「これはヴァレンタイン・チョコレートか。一体誰だ? オレには全く心当たりが無いのだが」
「そんな筈ないよ海馬君。チョコレートをよく見てごらん。ちゃんとヒントが隠されている筈だからね」
そう言うと遊戯は再びケーキに夢中になってしまう。
オレは溜息をつくとその箱をもう一度よく見てみた。
黒地に赤のラインが斜めに入っている綺麗な包み紙。赤いリボンが地のラインとは逆方向に斜めがけにされていて、金色のハート型のシールでしっかりと止められていた。
箱をひっくり返してみて、そこに挟まれたメッセージカードに気付く。取り出してみると縁がほんのり青いハート型のそれに、サインペンか何かで書いたのだろう。太い上に余り上手とは言えない字で『I LOVE YOU』と書かれていた。
と、そこに書かれている字に見覚えがある事に気付く。
三ヶ月前にアメリカから帰って来たオレは、何故かあんなに犬猿の仲でしか無かった城之内と仲良くなっていた。
そのせいで今まで感じた事のない盛大な悩みに見舞われる事になるのだが、今はそれを頭の片隅に追いやる。そして思い出していた。アイツの勉強を手伝ってやる為に時々見せて貰ったノートに書かれていた字。今オレが持っているメッセージカードに書かれている字は、それにそっくりだった。
何かが頭に引っかかっている。
そういえばこの包み紙も、自分が城之内の為に包んだ紙とそっくりではないか?
包み紙とリボンとシール、それにメッセージカード。
中を開ければそこに現れたのは、あの店で買ったのと同じ六粒入りのトリュフチョコ…。
「遊戯…貴様…」
全てに気付いたオレが目の前の男を睨むと、遊戯はフォークを銜え至極満足そうに笑った。
「海馬君が気付いたって事は城之内君もそろそろじゃないかな? そう言えばさっき呼び鈴がなってたね」
遊戯がニコニコとそんなとんでもない事を言ってのけたその瞬間に、応接室のドアが思いっきり開かれる。
そして、そこに居たのは激しく息を切らした城之内の姿だった。
「か…海…馬…っ!!」
「………っ!?」
唖然としているオレを無視して、遊戯が暢気に城之内に話しかけた。
「外は寒いって言うのに、城之内君ったら汗ビッショリじゃない。まぁ全速力で自転車漕いできたんだろうけど。それじゃ僕は用が済んだから帰るねー。あとは二人でゆっくりどうぞ~。あ、ケーキご馳走様でした。すっごく美味しかったです。んじゃぁね~」
呆気に取られているオレと城之内をその場に残して、遊戯は上機嫌で扉を閉め出て行った。
今日も何事も無く学校が終わり、オレは遊戯と一緒に駅前を歩いていた。
これから二人でバーガーワールドへ行って、何時も通りオレの愚痴を聞いて貰う為だ。
三ヶ月前、アメリカから帰って来た海馬を見て、オレは海馬に恋している自分に気付いた。
まぁ気付いたからと言ってどうにかなるものでもなく、それどころか男同士だとか犬猿の仲だとか、気付いたら問題が山積みだった。
最初は自分の中で処理しようと藻掻いていたがどうする事も出来ず、結局親友の遊戯に相談するという形に収まったのだ。
ここ最近ずっと付き合ってくれている遊戯には悪いと思ってはいるが、この気持ちは自分自身ではもはやどうする事も出来ず、結局今日も愚痴を吐いてしまうのだ。
路地裏を抜けようとした時、突如それまで黙っていた遊戯が口を開いた。
「ねぇねぇそう言えば、城之内君はコレ知ってるかな?」
足を止めて遊戯がオレに何かを差し出す。それはコンビニや駅前なんかによく無料で置いてあるタウン情報誌だった。
「あぁ…。最近こういうの流行りなんだってなー。で、コレが何?」
「うん、実はね。この情報誌によく載る有名なケーキ屋さんがこの近くにあるんだよ」
不思議に思って訪ねると、遊戯は俺の手から情報誌を一旦取り上げてページをパラパラと捲り、オレの前でその記事を見せた。
そこには直ぐ目の前にあるちょっと小洒落たケーキ屋がピックアップされていた。
「僕もそこのケーキ屋さんのお菓子食べた事あるけど、生菓子も焼き菓子も本当に美味しいんだよ。手作りのチョコレートなんかも売ってるしね」
遊戯にそこまで言われて、オレは漸くこの親友が何を言わんとしているか理解した。
「もしかして…ヴァレンタイン?」
「あったりー!」
確かに暦の上ではあと二日でヴァレンタイン・デーがやって来る。
ようは、遊戯はオレに、海馬にヴァレンタインチョコを渡せと言っているのだ。
「無理だって…。オレからなんて絶対受け取ってくれねーよ…」
「何事もやってみなくちゃ分からないと思うけど?」
「考えてもみろよ。あの海馬だぜ? 無理なモンは無理だってば」
「んじゃ匿名にすればいいんじゃない? 良ければ僕が直接海馬君に届けてあげるけど。もちろん名前は出さないでね」
「え? マジか?」
遊戯の申し出に心が揺れる。
名前を出さないんだったらチョコあげてもいいんじゃないだろうか…。オレからだって知られないのはちょっと寂しいけど、少なくてもこんだけ真剣に海馬の事を想ってくれてるヤツがいるんだって事だけ知って貰えたらそれでいい。
「うん…。よし!」
覚悟を決めて無言で店に足を向けるオレに、遊戯は黙ってついてきた。
「おぉ…すげぇ!!」
ショーウィンドウの中に飾られている色とりどりのケーキに見とれていると、その隣に手作りのチョコレートコーナーがあるのが見えた。
様々な色や形のチョコレートに感心しながらよく見ると、一個一個が結構なお値段なのに気付く。
「げっ…! トリュフ一個が百円以上するのかよ…。結構するなぁ…」
オレの呟きに遊戯が呆れたように答える。
「それでも有名店のチョコレート菓子に比べればお手軽な方だよ。あんまり安すぎても海馬君に失礼じゃない」
「確かにな-。コンビニやスーパーで売ってるチョコレートなんてお話にならないだろうなぁ…」
ウィンドウに顔をくっつけるようにして眺めていると、遊戯が小さな箱を差し出してきた。
「ほら、コレなんか丁度良くない? トリュフチョコの六個入りのヤツ。値段もまぁまぁだから城之内君にも買えるし、海馬君に対しても失礼じゃないよ」
「おぉ、確かに」
遊戯が選んだチョコはミルクやビターやホワイトなど、スタンダードな味のトリュフが六個入ったお手軽なヤツだった。
「ちなみにココのお店で包んで貰ったらお店がバレちゃうから、後でウチに来てオリジナルの包装紙で包み直そうよ。丁度いい事に、僕綺麗な紙やリボン持ってるよ」
遊戯のありがたい申し出にオレは一も二もなく頷いて、早速そのチョコレートを購入すると遊戯の家にお邪魔する事にした。
店を出たその足で遊戯の家に行き、出して貰ったお茶を飲んでる間に、遊戯が何やら手に持って戻って来た。
「ほら、コレなんだけど。結構綺麗でしょ?」
見せて貰った包装紙は黒字に赤いラインが斜めに入ったお洒落なモノで、それと一緒に赤いリボンと金色のハート型のシールまで付いていた。
「名前は匿名だけど、やっぱメッセージ性は重要だと思うんだよね。全くヒントが無いのもツマラナイでしょ?」
「それは確かに…そうだけど…」
「大丈夫。バレちゃったらそれはその時どうにかすればいいんだから。それに海馬君だってまんざらじゃないと思うよ?」
何やら悪戯めいた表情をして片眼を瞑る遊戯に、オレは黙って従うしか無かった。
その後、遊戯に言われた通りに買ってきたチョコレートを例の包装紙で綺麗に包む。リボンを地のラインとは逆に斜めがけにかけて金色のシールでしっかり止めた。
「ふぅ…。コレでいいか」
「はい、あとはコレ」
慣れない作業に額に浮き出た汗を袖で拭うと、遊戯が何か差し出してくる。それは縁がほんのり青くなっているハート型のメッセージカードだった。
頭の上に?マークを浮かべたオレに、遊戯はニコニコと微笑みながらそれを机の上に置いた。
「一応メッセージは付けないと。名前は書かなくていいし、内容もシンプルでいいから」
なるほど、確かにそうだ。メッセージも何も無いチョコレートだと、義理もしくは冷やかしか何かだと思われてしまわれない。
とは言っても何て書いたらいいのか…。
うんうん唸っているオレに遊戯が助け船を出してくれる。
「だからシンプルでいいんだってば。『I LOVE YOU』とだけ書けばいいんじゃないかな?」
「おー! いいなそれ! サンキューな遊戯!」
いいアイデアを貰ったとオレは意気込んで、ペンケースの中から黒のサインペンを出すとそのカードに『I LOVE YOU』と書き込んだ。
それを丁寧に斜めがけしたリボンに挟むと遊戯に渡す。
「んじゃコレを明後日海馬君に渡せばいいんだね」
「おう! 頼むぜ遊戯」
「任せてよ城之内君」
何か遊戯の顔がいつにもましてにこやかで、オレはそれが少し引っかかったが、まぁいいやとその場は後にした。
それから二日後のヴァレンタイン・デー当日の事。
バイトを終えて家で飯を食っていたら突然呼び鈴がなったのに気付いた。
時計を見ると午後の九時。こんな時間にダチは来ないし、ましてや今入院してしまっている親父が帰ってくる筈もない。
誰かと思って覗き窓を見てみると、そこに居たのは遊戯だった。
ただしいつもオレが愚痴ってる遊戯じゃなくて、主にデュエルする時に出てくるもう一人の方の…アテムだった。
そう言えば最近アイツと会って無かったなと思いながらオレはドアを開ける。
「よぅ、城之内君。夜分遅くに失礼するぜ」
右手を挙げ飄々とそう言い放つアテムに、オレは首を傾げた。
「遊戯? お前こんな時間にどうしたんだよ。何か用か?」
「用があるから来たんだぜ。実はある奴から大事なモノを預かっててな、それを城之内君に渡しに来たんだぜ」
そう言って奴が鞄からだしてきたのは、綺麗に包装されたプレゼントらしきものだった。
「え…っ? コレってもしかして…チョコレート!?」
「ヴァレンタイン・デーに渡すモノと言ったらチョコレートと相場が決まってるだろ? んじゃ俺はちゃんと渡したからもう帰るぜ」
人に渡すだけ渡して何も言わないで帰ろうとするアテムを、俺は慌てて引き留めた。
「ちょ、ちょっと待てってアテム! コレ誰からなんだよ!」
「残念ながらそれは言えないんだぜ。そいつとの約束だしな。ただしヒントはあるから、自分で考えてみるといいんだぜ? 城之内君?」
鋭い視線を優しげに細めてアテムは意味ありげに笑う。
「あぁ、ちなみに海馬へのチョコレートは相棒がこれから持って行くって言ってたぞ。だから安心するといいんだぜ?」
そう言ってアテムは今度は本気で帰っていった。というより、これから海馬の所に行くんだろう。
俺は居間に戻って貰ったチョコレートの包みを眺める。よく見るとそれがどこかで見たような気がしたからだ。
白地に青いラインが斜めに入った綺麗な包装紙。青いリボンは地のラインとは逆に斜めがけされて銀色のハート型のシールでしっかり止められていた。
そしてそのリボンに挟まったメッセージカードは縁がほんのり赤色で、万年筆か何かだろうか、神経質そうな細い文字で『I LOVE YOU』とだけ書かれていた。
そこに書かれている文字には覚えがあった。
海馬がアメリカから帰って来てから少し仲良くなったオレは、奴のノートや手帳を見せて貰う機会が何度かあり、そこに書かれている文字を見る度に性格をよく表しているな…と感心していたからだった。
しかもメッセージカードに書かれた『I LOVE YOU』は筆記体で、オレはアイツが英字を書く時筆記体で書くのをよく知っていた。
そういえばアテムはさっき何て言ってた?
ヒントはあるって言って無かったか?
そこまで考えてオレは一昨日の遊戯の言葉を思い出す。
遊戯もメッセージ性が重要だとかヒントだとか言って無かったっけか?
オレが海馬に上げたチョコレートとよく似た包装の仕方、シール、リボンにメッセージカード。
包装紙を破らないように慎重に中を開けると、そこにあったのはあの駅前のケーキ屋の六個入りのトリュフチョコ。
「くそっ…! あいつ等好き勝手やりやがって…!」
口から出るのは悪態だが、オレはもう頬が緩みっぱなしだった。
オレはチョコをひっ掴むと急いで家から飛び出した。駐輪場に止めてあった自転車に飛び乗ると、全速力で漕ぎ出す。
どこへ向かうのかってそんなの…海馬ん家に決まってるじゃないか!
誰に言うでもなく、オレはペダルを漕ぐ足に力を入れた。
ある日の千年パズルの中で、二つの魂によって大会議が開かれていた…。
「相棒…。俺はもう限界なんだぜ…」
はぁ~っと大きな溜息をついて肩を落とすのは、三千年前の大エジプト王朝のファラオであったアテム。
「僕もそろそろ…いい加減にして欲しいと思ってるよ…」
その向かいで呆れた表情を浮かべるのは、現代にてそのファラオの魂に身体を貸している遊戯。
彼等が何をそんなに悩んでいるのかというと、何て事は無い、親友達による恋愛相談であった。
「俺が海馬に城之内君への恋愛相談を受け始めてから早三ヶ月…。ネガティブになる度に、所構わず呼び出して愚痴るのは止めて貰いたいんだぜ…」
「僕もだよ、もう一人の僕。城之内君から海馬君への恋愛相談が始まって三ヶ月…。一人で勝手に盛り上がったり盛り下がったりして、僕もどう対処したらいいかわかんなくなるからいい加減にして欲しいんだよね…」
二人揃ってはぁ~っと大きく息を吐く。
「僕もうそろそろ、あの二人に『君らは両思いなんだ!! さっさとくっついてくれ!!』って思いっきり叫んでやりたいんだけど、やっぱダメかな?」
「流石にそれは不味いんじゃないか、相棒? 城之内君はともかく海馬の反応が怖いぜ」
アテムの答えに遊戯はう~ん…と唸る。
「じゃやっぱり、あの作戦しか無いかな~?」
「そうだな。そろそろだしな」
「準備はバッチリだから、後は僕らが上手く動ければ完璧だね」
「あぁ! 海馬は俺が何とかするから、相棒は城之内君を上手く誘導してくれ!」
「任せてよ、もう一人の僕!!」
二人はお互いに頷き合うと、ビッと親指を立て作戦の成功を誓った。
城之内×海馬
ヴァレンタインに合わせて急遽作成。
王様と表君をまともに書いたのも初めてですw
(まともと言えるのかどうか…;)
「え…? 海…馬…?」
突如教室の後ろのドアから入ってきた人影に、城之内の目は釘付けになった。
城之内が驚くのも無理はなかった。
遥か遠くアメリカの地に渡った筈の男が、突然目の前に現れれば誰だって驚くに決まっている。
海馬はバトルシティ終了後『世界海馬ランド計画』なるものを推進する為に、あのイカれたブルーアイズ型のジェット機に乗り、彼の最愛の弟と共に海を渡って行った。
まぁ紆余曲折あってその後何度も海馬とは会う事になったのだが、最後は結局アメリカに戻っていった筈だった。
なのに…。
「海馬君! 久し振りだね! えーと、三ヶ月ぶり?」
周りのどよめきも何のその。全く意に介さず自分の席に着いた海馬に遊戯が駆け寄る。
「海馬君、アメリカでの仕事はどうしたの? 海馬ランド計画ってまだ終わってないんでしょ?」
遊戯の質問にいつものように鞄から分厚い洋書を取り出した海馬は「あぁ」と短く答える。
城之内も話の続きが気になって二人の傍に歩み寄るが、海馬は近寄ってきた城之内の方をチラリと見ただけでまた遊戯に視線を戻してしまった。
「自分達がしなければならない仕事は全部終わらせてきた。あとは現地のスタッフに任せればいいだけだから、こっちに戻ってきたのだ。向こうには優秀なスタッフが揃っているからな。俺がいなければならない理由も無い」
ふぅんと得意そうに話す海馬に、遊戯は安心したようにホッと息をついた。
「良かった~。僕てっきり海馬君が学校辞めちゃったのかと思ったよ…」
「辞めるなんて俺は一言も言ってはいないぞ。現に俺の机と椅子はまだここに残っているではないか」
「そうだよね。心配して損しちゃったよ」
そう言って笑いかけた遊戯に答えるかのように、海馬はほんの少しだけ唇の両端を上げた。
そんな海馬に城之内は「やっぱりコイツは変わったんだ」と実感した。
初めて海馬と接触した時、城之内は本当にこの男は最悪な野郎だと思った。
遊戯のじいさんを傷つけて無理やり青眼白竜のカードを奪ったり破ったり、遊戯に負けた腹いせに本気で命まで奪いかねないDEATH-Tなる遊園地に招待されたり…。
城之内はその事について本気で頭にきてたし、絶対こんな奴とは相容れないと思っていた。
それがいつからだろう。
海馬が少しずつ変わってきて、そして自分の気持ちもそれに伴うように変わってきたのは。
最初はペガサスの企みによって引き裂かれていた、海馬の弟モクバとの再会を目の前で見た時だった。
飛びついてくる弟の身体を抱きとめた海馬の表情は、普段自分達が眼にすることの無い穏やかな顔をしていて、それがひどく印象深く残った。
それでもまだ高飛車で傲慢で妙に自信過剰な性格は変わっていなかったので、城之内も海馬の言動が一々気に食わなくてその度に突っかかっていたのだが、海馬の中では少しずつ、本当に少しずつ変化が成されていたようだった。
バトルシティの準決勝で『怒り』と『憎しみ』では決して勝つことは出来ないということを闇の遊戯に諭された海馬は、妙にスッキリした顔でアメリカに渡って行き、城之内もそれ以上海馬と接触する事は無いように思えたが、実際はその後も何度か行動を共にする事になる。
何故か精霊界の三匹の竜に遊戯や海馬と共に選ばれ、成り行きで世界を救ってみたりとか、アメリカの海馬ランドで開催されたKCグランプリに参加してみたりとか、アテムを冥界に送り出す場に共に居たりとか。
最初は「どんな腐れ縁だよ」と毒突いていた城之内も、海馬の表情を常に近くで観察する内にゆっくりと、だが確実に海馬が変わっていくのが感じられるようになった。
表向きは変化が無いように見えるが、海馬との関わりが深ければ深いほどその変化は顕著に見られて、弟のモクバも嬉しそうに兄との絆を深めていき、表の遊戯が海馬に懐くようになったのもそのいい証拠だった。
城之内も海馬のその変化を認め、そしてその都度心の中に何かがじわりと染み込んできて…。
気が付いたら海馬の存在は自分の中にしっかりと根を張ってしまっていた。
以前に比べれば随分と穏やかに優しく、それでいて常に未来を見つめて真っ直ぐ道を歩んでいく前向きな姿勢は変わる事はなく。
ぴんと張った真っ直ぐな背筋と、宝石のような澄んだ青い瞳と、強い意志を宿した口元と。
元々海馬に憧れに近い感情を抱いていたせいもあるのだろう。
闇の遊戯の強さにも男として強く憧れていたが、それとは全く違う気持ちだった。
(あぁ…俺、コイツの事が好きなんだなぁ…)
城之内いつの間にか海馬に恋をしている自分に気付いてしまった。
遊戯が本田に呼ばれてその場を離れたのを見て、城之内は足を踏み出し海馬に近付く。
海馬がそれに気付いて、読んでいた洋書から顔を上げた。
「城之内…」
「よぉ、久し振り。最後に会ったのはエジプトだっけ?」
なるべく自然な笑顔を浮かべて話しかけた城之内に、海馬は「そうだな…」と少し複雑そうに微笑んで答えた。
城之内×海馬
城之内側と海馬側が交互に入れ替わります、ごめんなさい(´∀`;
18禁に該当する内容も出てきますのでご注意を。
2011/09/27 日記だけUP
2011/05/12 短編に『情緒不安定』をUP
2011/04/20 短編に『夢物語』をUP
2011/04/14 『光と闇の狭間でシリーズ』にEpisode6をUP
2011/04/07 『子連れ城海シリーズ』短編集に『命日』をUP
2011/01/09 『光と闇の狭間でシリーズ』にEpisode5をUP
2011/01/06 『光と闇の狭間でシリーズ』にEpisode4をUP
2010/12/20 短編に『聖なる夜の優しい奇跡』の後編をUP
2010/12/16 短編に『聖なる夜の優しい奇跡』の中編をUP
2010/12/12 短編に『聖なる夜の優しい奇跡』の前編をUP
2010/12/09 長編『Lesson』に『番外編:I want you』の後編UP
2010/12/05 長編『Lesson』に『番外編:I want you』の中編UP
2010/12/02 長編『Lesson』に『番外編:I want you』の前編UP
2010/11/28 『光と闇の狭間でシリーズ』にEpisode3をUP
2010/11/25 『百合城海シリーズ』に『Quarrel…?』をUP
2010/11/20 『子連れ城海シリーズ』短編集に『そこにある願い』をUP
2010/11/15 『光と闇の狭間でシリーズ』にEpisode2をUP
2010/11/13 短編に『Embrace』をUP
2010/11/11 『百合城海シリーズ』に『Kiss…?』をUP
2010/11/07 『光と闇の狭間でシリーズ』にEpisode1をUP
2010/11/01 『子連れ城海シリーズ』SS集に『秘密のお顔』をUP
2010/10/28 長編『あの夏の日の君へ』に第二十六話UP
2010/10/25 Projectページ に社長誕企画『*Birthday present(2010年瀬人誕小説)』をUP
2010/10/23 長編『あの夏の日の君へ』に第二十五話UP
2010/10/21 長編『あの夏の日の君へ』に第二十四話UP
2010/10/16 長編『あの夏の日の君へ』に第二十三話UP
2010/10/14 長編『あの夏の日の君へ』に第二十二話UP
2010/10/07 お久しぶりです! 日記を更新致しました~!!
2010/09/23 長編『あの夏の日の君へ』に第二十一話UP
2010/09/19 長編『あの夏の日の君へ』に第二十話UP
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2010/09/08 長編『あの夏の日の君へ』に第十七話UP
2010/09/02 長編『あの夏の日の君へ』に第十六話UP
2010/08/28 長編『あの夏の日の君へ』に第十五話UP
2010/08/26 長編『あの夏の日の君へ』に第十四話UP
2010/08/23 長編『あの夏の日の君へ』に第十三話UP
2010/08/19 長編『あの夏の日の君へ』に第十二話UP
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2010/06/24 長編『Rising sun』に番外編:雷鳴の子守歌をUP
2010/06/21 短編『あの夏空へ(後編)』UP
2010/06/19 短編『あの夏空へ(中編)』UP
2010/06/18 短編『あの夏空へ(前編)』UP
2010/06/14 短編『大気になった流星』UP
2010/06/10 短編『Kiss&Kiss』UP
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2010/05/31 長編『Lesson』にLesson9UP
2010/05/29 長編『Lesson』にLesson8UP
2010/05/27 長編『Lesson』にLesson7UP
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2010/05/13 長編『Lesson』にLesson5UP
2010/05/10 長編『Lesson』にLesson4UP
2010/05/07 長編『Lesson』にLesson3UP
2010/05/01 長編『Lesson』にLesson2UP
2010/04/29 長編『Lesson』にLesson1UP
2010/04/26 百合城海シリーズに『Escape…?』 Ver.克美UP
2010/04/24 百合城海シリーズに『Escape…?』Ver.瀬人子UP
2010/04/22 長編『漂う青き水の底で君を想う』に六枚目UP
2010/04/19 長編『漂う青き水の底で君を想う』に五枚目UP
2010/04/17 長編『漂う青き水の底で君を想う』に四枚目UP
2010/04/15 長編『漂う青き水の底で君を想う』に三枚目UP
2010/04/12 長編『漂う青き水の底で君を想う』に二枚目UP
2010/04/09 長編『漂う青き水の底で君を想う』に一枚目UP
2010/04/05 短編『ブランチ』UP
2010/04/03 短編『八年目の桜吹雪』UP
2010/04/01 偽統合サイトオープン
2010/03/27 子連れ城海シリーズ短編集に『Baby panic』UP
2010/03/24 短編『幸せの定義』UP
2010/03/20 長編『無限の黄昏 幽玄の月』に『春宵』(後編)UP
2010/03/17 長編『無限の黄昏 幽玄の月』に『春宵』(前編)UP
2010/03/08 長編『無限の黄昏 幽玄の月』に『第二十八夜』UP
2010/03/06 長編『無限の黄昏 幽玄の月』に『第二十七夜』UP
2010/03/03 長編『無限の黄昏 幽玄の月』に『第二十六夜』UP
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2010/02/15 長編『STEP』に『らすとすてっぷ』UP
2010/02/13 長編『無限の黄昏 幽玄の月』に『第十九夜』UP
2010/02/10 長編『無限の黄昏 幽玄の月』に『第十八夜』UP
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2010/02/08 短編に『誓いの一文』UP
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2010/02/03 2010年城誕企画『Lost World』に『こうしてオレはここにいる』(後編)UP
2010/02/01 2010年城誕企画『Lost World』に『こうしてオレはここにいる』(前編)UP
2010/01/30 2010年城誕企画『Lost World』に『1月30日23時45分』UP
2010/01/27 2010年城誕企画『Lost World』に『1月25日9時30分』UP
2010/01/25 2010年城誕企画『Lost World』に『1月24日23時05分そして1月25日0時00分』UP
2010/01/23 2010年城誕企画『Lost World』に『1月23日13時15分』UP
2010/01/20 2010年城誕企画『Lost World』に『1月22日16時48分』UP
2010/01/19 2010年城誕企画『Lost World』に『1月22日6時17分』UP
2010/01/17 2010年城誕企画『Lost World』に『1月21日18時33分』UP
2010/01/13 長編『無限の黄昏 幽玄の月』に『第十五夜』UP
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2010/01/10 素質シリーズに『素質Ⅸ』(後編)UP
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2010/01/06 長編『無限の黄昏 幽玄の月』に『第十三夜』UP
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2009/12/25 長編『無限の黄昏 幽玄の月』に『第十一夜』UP
2009/12/23 短編『クリスマスな僕ら』UP
2009/12/22 長編『無限の黄昏 幽玄の月』に『第十夜』UP
2009/12/20 長編『無限の黄昏 幽玄の月』に『第九夜』UP
2009/12/18 長編『無限の黄昏 幽玄の月』に『第八夜』UP
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2009/12/01 2009年瀬人誕合同企画をProjectページに移動しました
2009/11/29 長編『無限の黄昏 幽玄の月』に『第一夜』UP
2009/11/27 長編『無限の黄昏 幽玄の月』に『第零夜』UP
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2009/11/20 瀬人誕2009 Act4「愛の楽園で祝福を♯8」UP
2009/11/18 瀬人誕2009 Act4「愛の楽園で祝福を♯7」UP
2009/11/17 瀬人誕2009 Act4「愛の楽園で祝福を♯6」UP
2009/11/15 瀬人誕2009 Act4「愛の楽園で祝福を♯5」UP
2009/11/13 瀬人誕2009 Act4「愛の楽園で祝福を♯4」UP
2009/11/11 瀬人誕2009 Act4「愛の楽園で祝福を♯3」UP
2009/11/10 瀬人誕2009 Act4「愛の楽園で祝福を♯2」UP
2009/11/08 瀬人誕2009 Act4「愛の楽園で祝福を♯1」UP
2009/11/06 瀬人誕2009 Act3「愛の楽園でお戯れ♯7」UP
2009/11/04 瀬人誕2009 Act3「愛の楽園でお戯れ♯6」UP
2009/11/03 素質シリーズに『素質Ⅶ』UP
2009/11/03 瀬人誕2009 Act3「愛の楽園でお戯れ♯5」UP
2009/11/01 子連れ城海シリーズSS集に『Happy Halloween』UP
2009/11/01 瀬人誕2009 Act3「愛の楽園でお戯れ♯4」UP
2009/10/30 短編『果汁クォリティ』UP
2009/10/30 瀬人誕2009 Act3「愛の楽園でお戯れ♯3」UP
2009/10/28 瀬人誕2009 Act3「愛の楽園でお戯れ♯2」UP
2009/10/27 瀬人誕2009 Act3「愛の楽園でお戯れ♯1」UP
2009/10/25 Project に社長誕企画『社長と執事の奮闘録』をUP
2009/10/25 Project に『焦土の足跡』のリンクを貼りました
2009/10/25 瀬人誕2009 Act2「愛の楽園でご接待♯3」UP
2009/10/23 長編『STEP』の『すてっぷえいと』UP
2009/10/23 瀬人誕2009 Act2「愛の楽園でご接待♯2」UP
2009/10/21 瀬人誕2009 Act2「愛の楽園でご接待♯1」UP
2009/10/20 瀬人誕2009 Act1「愛の楽園へご招待」UP
2009/10/18 短編『Friend…?』Ver.瀬人子UP
2009/10/16 短編『Friend…?』Ver.克美(後編)UP
2009/10/14 短編『Friend…?』Ver.克美(前編)UP
2009/10/13 子連れ城海シリーズSS集に『猫の爪痕』UP
2009/10/13 子連れ城海シリーズ短編集に『再熱』(後編)UP
2009/10/11 子連れ城海シリーズ短編集に『再熱』(前編)UP
2009/10/09 長編『STEP』の『すてっぷせぶん』UP
2009/10/07 長編『STEP』の『すてっぷしっくす』UP
2009/10/06 短編『寂しがり屋の黒兎』(後編)UP
2009/10/04 短編『寂しがり屋の黒兎』(中編)UP
2009/10/02 短編『寂しがり屋の黒兎』(前編)UP
2009/09/25 長編『STEP』の『すてっぷふぁいぶ』UP
2009/09/23 短編『上下確定のジジツ』UP
2009/09/22 短編『彼岸の花』UP
2009/09/20 子連れ城海シリーズ短編集に『ただ一つの恋、もう一つの絆(Ver.城之内)』UP
2009/09/18 子連れ城海シリーズ短編集に『ただ一つの恋、もう一つの絆(Ver.海馬)』UP
2009/09/16 短編『冷たい手(Ver.2)』UP
2009/09/15 短編『落陽』UP
2009/09/11 素質シリーズ『素質Ⅵ』(後編)UP
2009/09/09 素質シリーズ『素質Ⅵ』(前編)UP
2009/09/08 短編『恋愛回避不可能症候群』UP
2009/09/06 短編『相互依存症』UP
2009/09/04 短編『眠りの淵の』UP
2009/09/02 短編『ブラックホール』UP
2009/08/30 長編『Rising sun』のAct.12(Ver.海馬)をUP
2009/08/28 長編『Rising sun』のAct.11(Ver.城之内)をUP
2009/08/26 長編『Rising sun』のAct.10(Ver.城之内)をUP
2009/08/23 短編『Why…?』UP
2009/08/21 長編『Rising sun』のAct.9(Ver.海馬)をUP
2009/08/19 長編『Rising sun』のAct.8(Ver.海馬)をUP
2009/08/16 短編『約束の熱』UP
2009/08/14 長編『Rising sun』のAct.7(Ver.城之内)をUP
2009/08/12 長編『Rising sun』のAct.6(Ver.海馬)をUP
2009/08/11 短編『酒の力Ⅱ』後編UP
2009/08/09 短編『酒の力Ⅱ』前編UP
2009/08/07 長編『Rising sun』のAct.5(Ver.海馬)をUP
2009/08/05 長編『Rising sun』のAct.4(Ver.城之内)をUP
2009/08/02 長編『STEP』の『すてっぷふぉー』UP
2009/07/31 長編『Rising sun』のAct.3(Ver.海馬)をUP
2009/07/29 長編『Rising sun』のAct.2(Ver.城之内)をUP
2009/07/28 長編『Rising sun』のAct.0とAct.1(Ver.城之内)をUP
2009/07/26 長編『奇跡の証明』の番外編『二つの恋の物語』その10(完結)をUP
2009/07/24 長編『奇跡の証明』の番外編『二つの恋の物語』その9をUP
2009/07/22 長編『奇跡の証明』の番外編『二つの恋の物語』その8をUP
2009/07/21 短編『ハニー&シュガータイム』UP
2009/07/19 長編『奇跡の証明』の番外編『二つの恋の物語』その7をUP
2009/07/17 長編『奇跡の証明』の番外編『二つの恋の物語』その6をUP
2009/07/15 長編『STEP』の『すてっぷすりー』UP
2009/07/14 短編『鎮魂歌』(後編)UP
2009/07/12 短編『鎮魂歌』(前編)UP
2009/07/10 長編『奇跡の証明』の番外編『二つの恋の物語』その5をUP
2009/07/08 長編『奇跡の証明』の番外編『二つの恋の物語』その4をUP
2009/07/07 短編『貴方とあの人を繋ぐ橋』UP
2009/07/05 Presentページに素敵イラストをUP
2009/07/05 短編『素質Ⅴ』(後編)UP
2009/07/03 短編『素質Ⅴ』(前編)UP
2009/07/01 長編『STEP』の『すてっぷつー』UP
2009/06/30 短編『To you…』UP
2009/06/28 Presentページに素敵イラストをUP
2009/06/28 長編『奇跡の証明』の番外編『二つの恋の物語』その3をUP
2009/06/26 長編『奇跡の証明』の番外編『二つの恋の物語』その2をUP
2009/06/24 長編『奇跡の証明』の番外編『二つの恋の物語』その1をUP
2009/06/23 短編『青春真っ盛りな僕ら』UP
2009/06/21 長編『STEP』の『すてっぷわん』UP
2009/06/19 短編『June bride』(後編)UP
2009/06/17 短編『June bride』(前編)UP
2009/06/16 短編『素質Ⅳ』(後編)UP
2009/06/14 短編『素質Ⅳ』(前編)UP
2009/06/12 長編『奇跡の証明』の『最終話』UP
2009/06/10 長編『奇跡の証明』の『第二十二話』UP
2009/06/09 短編『現金な僕ら』UP
2009/06/07 長編『奇跡の証明』の『第二十一話』UP
2009/06/05 長編『奇跡の証明』の『第二十話』UP
2009/06/03 短編『アンニュイな僕ら』UP
2009/06/02 長編『奇跡の証明』の『第十九話』UP
2009/05/30 長編『奇跡の証明』の『第十八話』UP
2009/05/29 長編『奇跡の証明』の『第十七話』UP
2009/05/27 長編『奇跡の証明』の『第十六話』UP
2009/05/26 短編『言葉の力』(後編)UP
2009/05/24 短編『言葉の力』(中編)UP
2009/05/22 短編『言葉の力』(前編)UP
2009/05/22 長編『奇跡の証明』の『第十五話』UP
2009/05/20 長編『奇跡の証明』の『第十四話』UP
2009/05/19 短編『伝線クォリティ』UP
2009/05/17 長編『奇跡の証明』の『第十三話』UP
2009/05/15 長編『奇跡の証明』の『第十二話』UP
2009/05/13 長編『奇跡の証明』の『第十一話』UP
2009/05/12 短編『Hypnotism』(後編)UP
2009/05/10 短編『Hypnotism』(前編)UP
2009/05/10 長編『奇跡の証明』の『第十話』UP
2009/05/08 長編『奇跡の証明』の『第九話』UP
2009/05/06 長編『奇跡の証明』の『第八話』UP
2009/05/05 短編『月の光に導かれて』UP
2009/05/03 長編『奇跡の証明』の『第七話』UP
2009/05/01 長編『奇跡の証明』の『第六話』UP
2009/04/29 長編『奇跡の証明』の『第五話』UP
2009/04/28 短編『素質Ⅲ』UP
2009/04/26 長編『奇跡の証明』の『第四話』UP
2009/04/24 長編『奇跡の証明』の『第三話』UP
2009/04/22 長編『奇跡の証明』の『第二話』UP
2009/04/21 短編『許される場所』UP
2009/04/19 長編『奇跡の証明』の『設定と考察』と『第一話』UP
2009/04/17 短編『雨の日の卑怯者』UP
2009/04/15 短編『酒の力』UP
2009/04/14 短編『君に伝えたい嘘』UP
2009/04/12 長編『真実の証明』の『返信』と『証明』UP
2009/04/10 長編『真実の証明』の『開花』UP
2009/04/08 長編『真実の証明』の『手紙』UP
2009/04/07 短編『素質Ⅱ』UP
2009/04/05 新しくPresentページをUPしました
2009/04/05 長編『真実の証明』の『慟哭』UP
2009/04/03 長編『真実の証明』の『衝動』UP
2009/04/01 短編『嘘の代償』UP
2009/04/01 長編『真実の証明』の『転機』UP
2009/03/31 長編『真実の証明』の『落涙』UP
2009/03/29 長編『真実の証明』の『覚悟』UP
2009/03/27 長編『真実の証明』の『来訪』UP
2009/03/25 長編『真実の証明』の『契約』UP
2009/03/24 長編『真実の証明』の『焦燥』UP
2009/03/22 長編『真実の証明』の『真実』及び『衝撃』UP
2009/03/20 短編『素質』 UP
2009/03/18 短編『冷たい手』 UP
2009/03/17 短編『夢一夜』 UP
2009/03/16 短編『熱情』 UP
2009/03/13 短編『Last Piece(後編)』 UP
2009/03/12 短編『Last Piece(前編)』 UP
2009/03/11 短編『夢の畔で戯れて(後編)』 UP
2009/03/10 短編『夢の畔で戯れて(前編)』 UP
2009/03/09 長編『勇気の証明』epilogue UP
2009/03/08 長編『勇気の証明』4-⑤UP
2009/03/08 長編『勇気の証明』4-④UP
2009/03/07 長編『勇気の証明』4-③UP
2009/03/06 長編『勇気の証明』4-②UP
2009/03/05 長編『勇気の証明』4-①UP
2009/03/04 長編『勇気の証明』3-④UP
2009/03/03 長編『勇気の証明』3-③UP
2009/03/02 長編『勇気の証明』3-②UP
2009/03/01 長編『勇気の証明』3-①UP
2009/03/01 長編『勇気の証明』2-⑤UP
2009/02/28 長編『勇気の証明』2-④UP
2009/02/27 短編『七年目の桜吹雪』UP
2009/02/26 長編『勇気の証明』2-③UP
2009/02/25 短編『夜の帳に包まれて』UP
2009/02/25 短編『草原の風に吹かれて』UP
2009/02/24 長編『勇気の証明』2-②UP
2009/02/23 長編『勇気の証明』2-①UP
2009/02/22 長編『勇気の証明』1-②UP
2009/02/21 短編『上下逆転のススメ』UP
2009/02/21 サイト開設
2009/02/11 短編『グライダー・イン・ザ・スカイ』UP
2009/02/11 長編『Wヴァレンタイン大作戦』UP
2009/02/11 長編『勇気の証明』1-①UP
2009/02/11 準備開始
小春日和にようこそ!
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詳しいサイト内容はAboutに載せてありますので、そちらをご覧下さい。
(更新予定日は不定期です。こちらをご参考になさって下さいませ~!)
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(再開の目処は立っておりませんが、閉鎖ではありません)