城之内×海馬。海馬の一人称。
一応『勇気の証明』の後日談みたいな感じで書いてあります。
設定としては『勇気の証明』の二人ですけど、別にあっちを読まなくても全然大丈夫です。そしてまたマニアックにエロイ…;
二週間にわたる過密スケジュールから漸く解放されて、オレは帰りのリムジンの中で一息つく。
ただでさえ世の中は不況だ何だと騒いでいるというのに、月末調整に合わせたかのような不渡りが発生し、オレとモクバはクレームの対応に追われた。
と言ってもまだ小学生のモクバに無理をさせる訳にはいかないので、必然的にその皺寄せがオレ一人の所に来ていた。
丁度その頃、城之内も友人のバイトの代わりを受け持ったりシフトが重なったりと、忙しい時期に入っていたようだった。
お互いにたまにメールをするくらいで、気付いたら丸々二週間ヤツの顔を見ていない。
だがそれも今日までだ。
オレも城之内も今日を最後に片が付くと知って、この後城之内はオレの屋敷を訪ねる約束になっていた。
腕時計を見るともうすぐ十時になりそうで、この分だと夕食を取った後は久しぶりに二人でゆっくり夜を過ごせると密かに期待する。
ところがオレがそう思った瞬間、携帯にメールの着信音が鳴った。
何故かとても嫌な予感がして携帯を開くとそれは案の定城之内からで、件名には一言『遅れる』と書かれていた。
『海馬、ゴメン! シフトで交代してくれるヤツが急に熱が出たとかで休んじゃって時間延長になっちまった。なるべく急いで帰るけど、そっちに着くの0時過ぎそうなんだよね。悪いけど先に寝てていいから』
書かれた内容に盛大に溜息をついてしまう。
せっかく一緒に夜を過ごせると思ったのに、そうは上手くいかないらしい。
それでも明日は予定も無いし夜中にはちゃんと来るらしいので、少々残念に思いながらもオレは諦める事にした。
屋敷に戻って軽く夕食を食べた後、オレは風呂に入ってさっさとベッドの中に潜り込んだ。
後で来る城之内の為に明るさを落としたヘッドライトだけを付けておく。
その時にちらりと枕元の時計を見遣ると『PM11:15』と表示された文字が見えた。
まだ暫くは来そうにないな…と、オレはくるりと背を向けてベッドの中で丸まった。
二週間も会っていないと流石のオレも寂しく感じてしまう。早く帰って来いと自分の身体を抱き締めると、妙に身体の奥が熱くなっているのに気付いてしまった。
「参ったな…」
思わず口に出して呟いて舌打ちをした。
この二週間ずっと会いたいのを我慢してた上にもうすぐ会えるという想いで、オレの身体はすっかり欲情してしまっているらしかった。
振り返ってもう一度時計を見ると『PM11:20』の文字。
それを確認して先程と同じようにドアに背を向け身体を丸めて、オレは自らのパジャマのズボンに手を掛けた。
多分城之内はまだ帰って来ないだろう。四十分もあれば充分誤魔化す事が出来ると信じて、オレは下着ごと太股の中程までズボンを降ろした。
忙しさにかまけて全然構ってやれなかった自身はすっかり勃ち上がってしまっていて、それに少し恥ずかしいと思いながらもそっと指を絡める。
以前までのオレは、こういう自慰という行為について夢中になる事なんて無かった。
たまに生理現象の一環として抜く事はあったが、こんなに誰かを想って身体が熱くなる程欲情した事なんて皆無だった。
全ては城之内と付き合いだしてから始まったのだ。
城之内の事を想うと途端に身体に熱が生まれて下半身がズンと重くなる。
ヤツがオレに触れる度に生まれる熱を思い出すと、心臓が高鳴って頭の中が熱くなる。
以前は数えるくらいしかしなかったこの行為を、城之内と付き合うようになってからは何度してしまっただろう。
誰も見てはいないのに妙に恥ずかしくて、それでもオレは自分の手の動きを止める事が出来ない。
「っ…。ぅっ…ん!」
声を抑えて夢中で自身を擦る。
濡れた水音が掛け布団の中から聞こえて来て、カーッと熱が上がってくるのがいやでも分かった。
「はっ…んっ。あっ…、じょ…ぅち…。じょうの…うち…っ!」
久しぶりに与えられた快感に、それが例え自分の手でものめり込んでしまう。
頭の中では城之内がオレのソレを触っていた。
男臭い笑顔を浮かべて、オレの耳元で愛を囁く。脳内のその言葉に応えるように、オレは城之内の名前を呼びながら少しずつ限界に近付いていく。
もう頭の中はそれで一杯で、だからオレは、背後の寝室に繋がるドアが何時の間にか開けられていた事に全く気付かなかった。
「城之内…っ! あっ…、あはっ…ん! あぅ…、城之内ぃ…っ!」
「何? 呼んだ?」
突然耳元で聞こえて来た声に身体が止まってしまう。
その声は脳内の声ではなく、自分の耳に直接吹き込まれた。
さっきとは別の意味で心臓が高鳴り嫌な汗が流れ落ちる。
恐る恐る後ろを振り返ると、ベッドに半ば乗りかかるように城之内がオレを覗き込んでいた。
「ただいま。何? 自分で慰めてたの?」
城之内の問いかけは、オレの右耳から入って左耳へと素通りしていく。頭の中の血管が破裂しそうにドクドクと脈打っていた。
掛け布団は被ってはいたが、同じ男としてオレのやっていた事に気付かない筈は無い。案の定掛け布団を捲られて、自分のペニスに指を絡めているオレの姿が晒されてしまう。
「やっ…! 嫌だ城之内…っ!」
「何が嫌なの? 続けていいんだぜ」
慌てて身体を隠そうとすると、肩を掴まれてそれを阻止されてしまった。
イク寸前だったオレのペニスはすっかり反り返り先走りの液でグショグショに濡れてしまっていて、それを誤魔化す事はもう出来なかった。
ギュッと両手で握りしめると、それだけの刺激でも感じてしまってペニスに震えが走る。
「ほら、早くイキたいって言ってる。イカせてあげなよ、海馬」
「っ…!!」
「何も我慢しなくていいんだぜ?」
「い…やだ…っ!」
「我が儘言わないで。ちゃんと見ててやるからさ」
恥ずかしくて耐えきれなくて、でも快感には抗えなくて、オレの手は勝手に動いてしまう。
顔も身体も熱くて仕方が無くて、貯まる熱を早く放出したくてたまらなかった。
グチュグチュという音が下半身から響いてきて、それを城之内も聞いているのかと思うと恥ずかしさで死にそうになる。
荒い息が止まらなくて苦し気に呼吸していたら、ベッドがギシッと鳴って城之内が半身を乗り出したのを感じた。
オレに指一本触ってない癖に背後の城之内の息も荒くなっていて、首筋に熱い吐息を感じた。
「あっ…! あぁっ…、んんぅっ…。も…う…っ!!」
イキたいのに城之内の事が気になってイケなくて、オレはもういい加減苦しくなって限界を訴える。
そんなオレの状態に気付いたのだろう。城之内がその顔をオレの耳元に近付け、わざと低い声でボソリと囁いた。
「いいよ。ほら、もうイッて」
「ひっ…! ぁ、ぁ…あぁ…っ! あっ―――!!」
その途端背筋にゾクゾクとした快感が急激に昇ってきて、オレは耐えきれずに達してしまった。
ビクビクと身体を震わせながら自分の手の中に大量の精子を放出する。
それを間近で見ていたのだろう。背後の城之内がゴクリと喉を鳴らす音が聞こえた。
次の瞬間には少々乱暴な動作で太股の途中に引っかかっていたズボンと下着を脱がされてしまう。そのまま俯せにされて、腰だけ高く上げる格好をさせられる。
オレは達したばかりで脱力していて、それに抗う体力が残っておらず、もはや城之内のなすがままだった。
ベッドサイドの引き出しをガサガサと探る音が聞こえる。多分そこに入っているローションを取り出したのだろう。案の定ローションでたっぷり濡らされた手で後孔を探られて、オレは小さく悲鳴を上げた。
「ゴメン。オレ優しくしてあげられないかもしれない」
城之内の言葉にオレは僅かに頷く事で答えた。
多分溜まっているのはオレだけじゃなくて城之内も同じなのだ。
性急にオレの中を慣らし終えた城之内は、素早く服を脱ぐとオレに覆い被さってきた。
そしてそのままオレの後孔にペニスを宛がうと、一気に貫かれる。
「ぃっ…!! いぁ…っ! くぅ…ああぁ―――っ!!」
二週間ぶりの性交にオレの身体は苦痛を訴える。だけどそれ以上の快感と充足感を感じて、オレはガクガクと痙攣してしまっていた。
精液で濡れた手でシーツを握りしめ、衝撃をやり過ごす。
そしてそれに気付いた城之内が、待ちきれないように腰を動かし始めた。
「あっ…、んぁ…っ! やっ…城之内ぃ…っ!」
「ゴメン…海馬…。気持ち…いい…っ!」
「うっ…! はぁ…っ! んっ…ダメ…っ! あっ…! あぅ…んっ!」
「海馬…。海…馬…っ」
「あっ!? あぁっ!! 城之内!!」
何時の間にか前に回った城之内の手が、達したばかりの敏感なオレのペニスを包み込んだ。そのままこびりついていた精液を塗り付けるように、上下に擦られてしまう。
城之内を銜えている後ろの穴からも、そしてペニスを握られている前からも、耳をふさぎたくなるようなヤラシイ水音が響いていた。
イッたばかりだと言うのに、身体は再び限界を訴えている。
「やぁっ…!! も…イク…、もう…無…理…っ!」
「うん…。海馬…一緒に…」
城之内がオレの奥深くに身を沈めながら、再びあの声でオレの耳元に囁いた。
「…イこう?」
「っ―――――!!! ひあぁ―――っ!!」
「ぅっ…!!」
駆け昇る快感に逆らわずにそれを享受する。背筋を弓形に反らしてオレは再び昇り詰めた。
同時に体内に熱い奔流を感じて、城之内もそのまま達した事を知る。
「ぁ…はぁ…」
力を無くしてベッドの上にガクリと崩れ落ちると、城之内もオレの上に覆い被さったまま共に寝転がった。
暫く二人して荒い息をつきながらじっとしていたが、先に復活した城之内がオレの体内から自身を抜きながら苦笑する。
「お前さ…。久しぶりだってのに、何て刺激的なモン見せんだよ」
「見せたくてしていた訳ではない…。自慰くらいお前だってするだろう?」
「一応ノックしたんだけどなぁ…。お前全く気付いてなかっただろ?」
「………っ」
城之内の台詞にオレは言葉をのむ。
確かにノック音にも気付かずに夢中に快感を貪っていたのはオレだから、言い訳など出来る筈もない。
「軽蔑…したか?」
ちらりと視線を上げて城之内の顔を見上げると、そんなオレに城之内はにっこり笑ってみせた。
「まさか。むしろ惚れ直した」
そう言って抱き締めてくる城之内の背中に手を回す。熱くて汗ばんだその身体はとても心地よかった。
「お前を軽蔑する何て事ねーよ。まだそういうの気になってるのか?」
「そういうのとは?」
「だから、自分の身体の汚れがどうとか…とかさ」
城之内の言葉にオレは「フン」と鼻で笑ってやった。
「心配しなくても、今のオレはもう貴様にどっぷり浸かってしまっている。今更汚れなど片腹痛いわ」
最近気付かされた事実。
オレはもうあの頃の事を何とも思ってはいなかった。
それは全て今目の前に居るこの男のお陰で、オレは漸く自身の黒い記憶から抜け出す事に成功していたのだ。
オレの言葉に城之内が至極嬉しそうに笑った。オレもつられて笑い返して、そしてそっと唇を合わせる。
お互いの吐息を奪うかのように舌を絡めるキスをして、角度を変える為に唇を一度離した隙に城之内が「もう一回いい?」と聞いてきた。
オレはそれに目の前の身体を強くかき抱く事で答え、二人でまたベッドに沈んでいく。
今夜は朝まで眠りにつく事は…出来なさそうだ。