城之内の熱い唇が、オレの肌の上を辿っていく。
時折痛みを感じるほどに強く吸われて、だけどその度に身体の奥がじわじわと熱くなっていくのを感じてしまっていた。
着ていた服を全部脱いでしまった城之内と素肌で触れ合って、それが溜まらなく恥ずかしい。
恥ずかしいのにそれと同時に気持ちいいと感じてしまって、それがまた羞恥心を生んでいく。
きっとオレの顔は今、真っ赤に染まってしまっているだろう。
それを見られたくなくて両手で顔を覆ったら、頭上からクスリと城之内が笑った気配がした。
何か揶揄されると覚悟をしたが、城之内はそれ以上何も言ってはこず、またオレの肌に充血痕をつける作業に戻っていく。
肌を吸われる気恥ずかしさに耐えていると、突然胸の突起に吸い付かれた。
「んぁ…っ!?」
突然身体の奥から湧き上がってきた快感に耐えきれず、変な声を出してしまう。
初めて出した自分の喘ぎ声は嫌になるほど甘く聞こえて、オレは咄嗟に自分の口を掌で押さえつけた。
だけど城之内はそんなオレを無視して、そのまま乳首を舌で舐め回し強く吸い付いてきた。
「ぁ…っ。ふぁ…んっ。っう…っ!」
身体の奥からジンジンとした快感の波が絶えず押し寄せてくる。
城之内の唇はいつの間にかもう片方の乳首に移っていて、最初に嬲られて唾液に塗れた乳首は今は指でコリコリと苛められていた。
「あっ…! んっ…んっ…」
出したくないのに勝手に声が出てしまう。
男なのに乳首を弄られて女みたいに喘いでいるなんて、みっともなくて仕方が無い。
だけど今はそれに耐えるしかない。
城之内を…受け入れると決めたのだから。
「海馬…。乳首…気持ちいい?」
「…っ!! そ…そんな事…聞くな…っ!!」
「でも気持ちいいだろう?」
本当は首を横に振りたかった。
だけど城之内に嘘だけは吐きたくなくて、素直にコクリと頷く。
城之内の掌で唇で舌で、オレの身体はおかしくなっていく。
まるで発熱したかのように身体が熱くなって、快感の波にブルブルと震えるのを止められない。
片手を乳首に残したまま、城之内の唇は少しずつ下へと移動していった。
鳩尾にキスを落とし、浮いた肋骨をペロリと舌で舐められて、臍の穴に唾液に濡れた舌を入れられた。
「はっ…あっ…! っう…!」
どこもかしこも、まるで火がついたように熱い。
だからオレは失念していた。
城之内がそこまで顔を下げているという事は、臍の下にあるオレのペニスを目の当たりにしているだろうという事を。
熱い掌がペニスを握りしめてきて、そこでオレは漸くそれに気付いた。
「やっ…! あぁっ…!」
城之内の掌に包まれたオレのペニスはもうすっかり腹に反り返るほど硬く勃起していて、その事実にオレは愕然としてしまう。
先走りの液が先端からポタポタと流れ出て、それが城之内の手を汚しているのを見て泣きそうになる。
「っふ…! っ…う…。 いや…だぁ…っ」
恥ずかしくて耐えきれなくて、思わず顔を覆っていやいやと首を振ると、その手を優しくどけられた。
「いやって言わないで。オレを否定しないでくれ…海馬」
「だって…、いやだ…っ」
「何がいやなの? こんなに可愛いのに」
「いや…、やっ…。恥ず…か…しい…っ」
「恥ずかしいのがいやなの?」
優しく尋ねられて、オレは何度も頷く。
頭の中がまるで子供に戻ってしまったかのように、単純な思考しか出来ない。酷く混乱してしまって、もう何が何だか分からなかった。
だけどそんなオレに対して、城之内は決して焦ることは無かった。
「大丈夫。恥ずかしいのは悪い事じゃない。これから一杯触ってあげるから。だから海馬も一杯気持ち良くなって。そしたら恥ずかしいのなんて忘れちゃうからさ」
そう言って欲情した男の顔で微笑んだ城之内は、熱い掌でオレのペニスを上下に擦り上げだした。
「っ…! あっ…あぁぁっ!!」
幾筋も流れた先走りの液が、城之内の掌と摩擦してニチャニチャと音を立てる。
それがまた耐えられなくて泣きながら「もう許してくれ」と懇願したけど、城之内は許してはくれなかった。
オレの足の間に屈み込んだ城之内は、そのまま根本を扱きながらオレのペニスの先端を口に含んでしまう。
「ひぃっ…! やっ…やめっ…! 城之内ぃ…っ!!」
ぬるりとした感触に、思わずビクリと腰が浮いてしまう。
熱い粘膜を直に感じて、腰がズンと重くなったように感じた。
「あっ…! うぁっ…あっ…、くぅっ!」
引き剥がそうと城之内の頭に手をやって荒れた金髪を握りしめるけど、先端の敏感な部分に舌先でグリュッと弄られて、その余りの快感に結局自分の股間に頭を押し付けるだけの結果に終わった。
城之内によって急速に高められていく熱に頭は朦朧とし、もはやまともな思考など出来る筈もなく、ただただ無様に喘ぎ続ける。
「んぁっ…! はぁ…あぁんっ!! あっ…っあ―――っ!!」
そんなオレに気付いたように、それまで焦らすような愛撫を施していた城之内が急に追い上げてきて、オレはそれに耐えきれずそのまま奴の口の中に射精してしまった。
頭が真っ白になりびゅくびゅくと吐き出される精液を、城之内は黙って飲み込んでしまう。
「にが…」と呟かれた一言で、オレは城之内が自分の出した精液を飲んでしまったと知って、恥ずかしさの余り再び泣き出してしまった。
「そんな…もん…飲む…な…っ。この…馬鹿が…っ!!」
「何で? 美味かったよ?」
「嘘言うな…っ! あんなもの美味しい訳ないし、貴様だって苦いって言ってたじゃないか…っ!!」
「確かに苦かったけど。でも美味かったぜ? ちゃんとお前の味がしてたしな」
『お前の味』とか言われたのがまたショックで、オレは泣きながら何度もフルフルと首を横に振る。
そんなものを大好きな城之内に味わわれるのが辛くて、オレはいい加減羞恥で死ぬんじゃないかと思いだした。
今日だけで何度恥ずかしいと感じたのだろう。
泣き続けるオレに苦笑しながら、城之内はゆっくりと身を起こす。
一度ベッドを降りて自分の鞄を取りに行き、手に何かを持って戻って来た。
そして再びベッドに戻りオレの足に手をかけて膝を立てると、そのまま左右に割り開く。
「可哀想だとは思うけど…。そういう姿がまた可愛くて、オレも止められそうに無いんだ。だからもう少し我慢…な?」
城之内の手に握られていたのは、小瓶に入ったローションだった。
いつの間にそんなものを…と思っていたら、まるでオレの考えを見透かしたように城之内が微笑む。
「あのさ。何を勘違いしてたか知らないけど、オレだってお前を抱くのを諦めてた訳じゃないんだぜ? お前の恐怖心が消えていつOKが出てもいいように、準備はしてたんだ。だってオレ、待つって言っただろ? お前の事抱けないからって、諦めたり呆れたりするなんて一言も言ってないよな?」
城之内の優しい…けれど余裕の無い笑みを見ながら、オレはただ呆然としていた。
そうだ…。城之内は待っていてくれたのだ。
オレが城之内を受け入れていいと思うまで、ずっと…何も言わず…待っていてくれた。
「すまない…」
思わず謝罪の言葉を口にすると、笑みを浮かべたまま城之内は首を横に振った。
「謝る事なんてない。お前は何も悪くないよ」
「だが…お前を待たせてしまった…」
「待つのも結構楽しかったんだぜ、海馬。それにこれくらい待てる男じゃないと、お前にふさわしくないだろ?」
ははっと軽く笑って、城之内はオレの髪を優しく撫でてくれた。
さらりと前髪を掻き上げられて、チュッと額にキスされる。
次いでこめかみに、頬に、鼻先にキスをされ、最後にそれは唇に辿り着いた。
何度も啄むような軽いキスを繰り返し、最後に深く唇を合せて舌を絡ませる。
くちゅり…と濡れた音が響いてオレはまた顔に血が昇ってしまうが、それでもキスを止めようとは思わなかった。
「ふ………っ」
つーっと唾液の糸を引きながら城之内が離れていく。
それをペロリと舌先で舐め取って、城之内は少し真面目な表情でオレを見詰めた。
「これから先は少し痛いと思うけど…。オレは絶対止めないからな。だからお前も頑張って耐えてくれ」
城之内がこれから何をしようとしているのかは、オレだってよく分かっている。
だから黙って頷いた。
これ以上この男を待たす訳にはいかなかった。
オレだって…待ちたくはなかったから。