僕とアテムのWヴァレンタイン大作戦が終了してから丁度一ヶ月が経っていた。
その一ヶ月の間、城之内君と海馬君の間に何が起こっているのか、僕らは知りようがなかった。
だって彼等が何も教えてくれなかったから。
城之内君は僕と目が合うと気不味そうに目を逸らす事が多くなったし、海馬君は相変わらず仕事が忙しいのか余り学校には出てこなかったけど、それでも時々学校に出てくると居辛そうにそわそわしていた。
それでも僕らはちゃんと目撃していた。
時々彼等の目が合うと、お互いに顔を真っ赤にしちゃってるのを。
「全く…。可愛いぜ二人とも」
「うん。そうだね、もう一人の僕。でも僕らに何の報告も無いって事は、実は余り上手くいってないのかなぁ?」
「そんな事はないぜ相棒! 多分俺達に報告する切っ掛けを探しているんだと思うんだぜ」
「もうちょっと待っててやろうぜ、相棒」と言ってくるアテムに僕は頷く。
そうやって二人で話していると、突然呼び鈴が鳴るのが聞こえた。インターホンを取るとそこから聞こえてきたのは城之内君の声で、僕は急いで玄関を開けに行く。
扉を開けるとそこにいたのは城之内君だけじゃなかった。
「城之内君…と…海馬君?」
城之内君と海馬君、大の男が二人して神妙な顔つきで並んで立っていた。
二人は何か大きなギフトボックスを持っていた。
「あのさ遊戯。コレ…世話になったから…。あの店のクッキーなんだけど…」
「今日はホワイト・デーだからな。フン、貴様には世話になったしコレくらいは受け取って貰わんと」
そのギフトセットは、あの駅前のケーキ屋さんの焼き菓子のセットだった。よく見るとちゃんと熨斗がついていて、そこには城之内君と海馬君の名前が連名で書いてあるのが見える。
「………ぷっ!」
僕はもう可笑しくて可笑しくて仕方が無かった。
海馬君と城之内君が並んで立っている構図とか、二人の微妙な表情とか、場違いに大きいギフトセットだとか、大体どんな顔して二人でコレを買ったんだろうとか。
我慢出来なくて思わず吹き出してしまうと、途端に城之内君は困り顔に、海馬君は怒り顔になってしまった。
「遊戯ぃ~…、笑う事無いじゃねーか…」
「き、貴様! 何を笑っているのだ!!」
「ゴメンゴメン。とりあえず家に入ってよ二人とも。お茶煎れるからさ」
笑うのを極限まで我慢したせいで溢れてきた涙を拭いながら、僕は二人を家に招き入れた。
二人を部屋に落ち着かせたら、熱いお茶を三人分煎れよう。
それから持ってきてくれたクッキーを食べながら、この一ヶ月間君達がどんな風に過ごしてきたのか教えて貰おう。
僕達にはそれを聞く権利があるからねと、僕とアテムは二人でワクワクするのだった。