2010年1月アーカイブ

スランプのターン

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久々にスランプな二礼です、こんばんは。

多分風邪ひいてるせいだと思いますが、木曜日辺りから完全なスランプに陥ってしまいました…orz
ヤバイ。小説を書く事が全然楽しくない!!
ちょっと書いては止まり、また書いては止まりって感じで、全く集中出来ないんですよ。
こんなに酷いスランプ状態に陥るのも久々なので、正直戸惑っていますw
今週中に何とか城誕企画を終わらせてしまいたかったので頑張って書き上げましたが、実はあの最終話…あれだけなのに3日かかっています(´∀`;
もうね…体調崩すとすぐこれだ…;
あと生活環境変わったせいでやっぱりストレス掛かっていたらしく、それもスランプの原因の一つみたいですね~。
はぅん…。参ったなぁ…w
まぁ、あんま思い詰めないでのんびりやりますw


城之内誕生日企画の『Lost World』に1月30日23時45分をUPしました。
一応コレでラストです~。
当初の予定通り、ハッピーエンドで終わる事が出来てホッとしています(*´д`*)

この最終話で城之内と海馬は無事結ばれる事が出来た訳ですが、今回の城誕企画はなるべく綺麗にスッキリと終わらせたかったので、エロのターンは敢えて省かせて頂きました。
うん、何かこう…初々しい城海の感じを出したかったので、朝チュンにさせて貰いました(´∀`;
てかウチのサイト始まって以来じゃないのかな、朝チュンなんてwww
………。
……。
…。
ヤベーw マジで超初々しい!!wwwww
こう考えると本当に爽やか(?)に感じられるから不思議ですw

という訳で、コレにて本編は終了………

な の で す が !!

せっかくなので、おまけでエロも書きますw(結局書くんかい!というツッコミは受け付けませんw)
来週中のどこかでUP出来ればいいかなぁ~。
多分初エッチの内容をご紹介…みたいなそんな感じで書こうと思っていますw
うん、やっぱ書きたいもの~v
エロ神様の申し子としてはSA☆


以下は拍手のお返事でございまする(´―`)


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~v

城誕企画の『Lost World』と日記の感想をどうもありがとうでした~。
城之内の『良く出来た恋人』っぷりを褒めて頂けて嬉しいですv
せっかくの城誕企画なのでね。いくら海馬が主人公でも、やっぱり主役は城之内な訳ですよ。
なので城之内君にはとことんいい男になって貰いました(´∀`)
『無限の黄昏 幽玄の月』の城之内のヘタレっぷりが半端無いので、たしかにあっちと比べるとこっちの城之内は格好良いですよねw
その内あっちの城之内にも格好良くなって貰う予定ではありますが、こういうギャップもまた面白いところではありますよね~!
出演させるキャラクターは同じでも、作品によってその価値は全然違って来ちゃいますからね。
こういう部分も小説を書いていて楽しいなぁ~と思うところであります(*'-')

ちなみに今回は海馬視点のお話なので、実際に海馬が意識を失っている間の描写はありませんが、あの城之内君が一生懸命看病している様は想像するだけで萌えてしまいます…w
汗びっしょりでぐったりしている海馬の身体を、せっせと拭いてあげる城之内君…(*´д`*)
格好いいですねぇ~!
もしかしたらRosebank様の仰る通り、シモのお世話とかもしてたかもしれませんねw(お医者さんに導尿されてた可能性の方が高いと思いますが…w)
何はともあれ、城之内と海馬が幸せ一杯な城誕企画を書けて、本当に良かったと思っていますv
お初エロは、もう少々お待ち下さいませw

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

1月30日23時45分

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 1月30日23時45分


 約束した土曜日の日が暮れた頃、バイトを終えた城之内は邸に遣って来た。当初はオレと城之内とモクバの三人での食事の筈だったのだが、予定が一週間ずれたせいでモクバは参加出来なかった。通っている小学校のスキー合宿に参加する為、金曜日の夜から出掛けてしまっていたのだ。

「城之内と仲直り出来て良かったね、兄サマ。せっかくだから二人でゆっくりするのがいいぜぃ」

 ビシッと親指を立ててそう言う弟は、一体オレ達の関係をどこまで把握しているのか分からない。少なくても自分がモクバと同じ年の頃はこんな知識は無かった筈なのだが、近頃の子はませているというか…モクバはオレと違って聡い子なので、もしかしたら全て把握済みなのかもしれないと思う。
 その事を思い出して少々赤面していると、城之内に「お前、また熱上がって来たんじゃないか…?」と心配され、慌てて首を横に振って否定した。
 体調はもう全く問題無いのだ。熱はすっかり下がったし、喉ももう痛くない。ただ少し…いや酷く緊張しているだけだ。



 海馬家専属のシェフが腕を振ったご馳走やケーキを二人で食べ、お互いに早めに風呂に入った後はオレの部屋で雑談する。ソファーに二人で並んで腰掛けて、たわいもない話を心から楽しんだ。
 静かで優しい時間が流れている。心から幸せだと思える一時。けれど勿論このままで終わらすつもりは無い。
 オレは今晩、唇も…肌も…オレの全てを許す事を城之内に言うつもりだった。だがどうしてもその糸口が掴めない。言い出す切っ掛けが無い。
 城之内の話に微笑みを返し曖昧に頷きながらも、オレは内心焦っていた。何とか勇気を出して言い出そうとしても、どうしても途中で言い淀んでしまう。貴重な時間はどんどんと過ぎていくというのに…。
 そうこうしている内に、時計の針は二十三時を回ってしまっていた。

「もうこんな時間か…。そろそろ寝ないとな」

 大きなあくびをし、眠そうに時計を見上げた城之内の言葉に心臓が高鳴った。

「客室どこ? オレの部屋、用意してあんだろ?」

 遠回しに遠慮しているかのような城之内の言葉。向こうも切っ掛けを探ってはいるが、どうしても上手く行かないのが手に取るように分かった。
 伺うような視線の城之内に、オレは意を決した。コクリと喉を鳴らし、フルフルと首を横に振ってみせる。

「客室は…用意していない。今夜はこの部屋に泊まれ」
「こ、この部屋って…。えーっと…、それは簡易ベッドかなんか用意してあるって事?」

 オレの言葉に城之内の頬がピクリと痙攣した。珍しく奴が心から焦っているのが、手に取るように分かる。

「何故わざわざそんな事をせねばならんのだ。オレと同じベッドで眠れば良かろう」

 だから敢えて冷静さを装って、普段通りの口調で城之内を誘った。今ここで怖じ気づいてしまったら、もう二度とこんな風に大胆には誘えないだろう。変な話だが、そういう自信がある。
 という事は、これは最初で最後のチャンスなのだ。オレがこの先も城之内を愛していけるかどうか…今まさにここで試されているに違いない。

「は………? 同じベッドで…?」

 そんなオレの決意を汲み取れない城之内は、案の定心底焦ったように顔を引き攣らせていた。

「そうだ」
「二人で一緒に…?」
「そうだと言っている。何だ、そんな驚いた顔をして。オレは今、そんなに変な事を言ったのか」
「いや…。そういう訳じゃねーけどさぁ…」
「そういう訳じゃないのなら、何なのだ」
「………。あのさぁ…海馬」
「何だ?」
「お前、それどういう意味で言ってるか、ちゃんと分かってる?」
「どういう意味とは?」
「オレ達はただの友達じゃないんだぜ? 恋人なんだよ」
「あぁ、そうだな」
「恋人が一緒に寝るという事がどういう事か…その意味を分かってるのかって訊いてるんだ」
「分かっているつもりだが…何か?」

 言外に性行為を示唆するような曖昧な会話に、つい恥ずかしくなって顔が熱くなる。けれど自分の意志を曲げるつもりは全く無かった。
 困ったように見詰めて来る城之内の視線を真っ直ぐに見返し、オレは自分に『覚悟』がある事を伝えようとする。
 城之内がオレに配慮している事は感じていた。だがそれでも、自分の決意を譲る事なんて出来ない。城之内がオレを好きでいてくれるのと同じくらい、オレだって城之内の事が好きだったのだ。

「城之内…。オレはお前から告白されるまで、男に対してこんな気持ちを抱く日が来るなんて想像した事も無かった」

 城之内…。お前の事が好きだからこそ、今こそオレの本音を伝えよう。
 そんな強い気持ちを抱きつつ、オレは城之内に対して口を開く。

「確かに…最初はお前からの気持ちの方が強かったとは思う。だが今は、オレの気持ちもお前と同等になっていると思うのだ」
「海馬…?」
「オレはもう覚悟を決めたんだ、城之内。お前に愛される事…そしてお前を愛する事。お前に全てを許す覚悟をしたんだ」
「っ………!!」
「お前が何を欲しがっているのかも…もう知っている。オレが間違っていなければ…こういう事なんだろう?」

 そう言って、隣に座っていた城之内の首に腕を絡め、そっとその身体を抱き締めた。途端に感じる高い熱。風呂上がりの薄いパジャマ越しに、城之内の熱がじんわりと伝わってくる。
 その熱をもっと味わいたくて身体をすり寄せれば、城之内の腕が背に回って強く抱き締めて来た。痛い程に抱き寄せられ、そして耳元で囁かれる。それは今まで聞いたことがないくらい、低く震える声だった。

「うん、まぁ…確かにオレが望んでいるのはこういう事なんだけどね。でもお前は本当にいいのか? 後戻りは出来ないぜ?」
「構わん。オレが望んでいるのもこういう事だ」
「てかさ、オレはお前を抱くつもりなんだけど…。それはつまり、お前が女役になるって事なんだけどさ…。それでもいいのか?」
「いい」
「いいって…そんな簡単に即答するような問題じゃないだろ。女役がどういう立場か知ってるのか?」
「知っている」
「男が男に抱かれるってどういう事か…本当に分かっているのか? どこを使うのかとか、ちゃんと知ってる?」
「どこ…?」
「ここだよ。お尻の穴」

 首を傾げたオレを見て嘆息しながら、城之内は背中を支えていた手を下ろしてオレの腰を撫で回した。そしてパジャマの上から尻の割れ目をつっとなぞる。
 途端にゾクゾクと背筋を走った感覚に、ブルリと身体を震わせた。それでも…何故か城之内から離れようとは思わなかった。目をギュッと瞑りながらも、更に強く城之内の身体を抱き締める。城之内がパジャマ代わりに来ているスウェットの生地を、緊張で汗ばんできた手でしっかりと握りしめた。

「分かるだろ? ここにオレのを挿れるんだ。怖くないの?」
「っ………」

 布地の上からオレの尻の割れ目をなぞりながら、城之内はハァ…と熱い息を吐き出した。心なしか、身体に力が入っているような気がする。

「怖くない筈…無いよな」

 城之内のその言葉に思わずビクリと反応してしまった。その震えが伝わった城之内はまるでオレを労るように、抱き締める腕の力を抜く。
 確かに…怖いとは思う。その手の知識が圧倒的に足りないオレは、自分が今からどんな事をされるのか全く理解していない。想像する事も出来ないような事が待ち受けている事実に、心が恐怖を感じているのは確かだった。
 けれど今のオレにとっては、後から後悔する事の方が怖いと感じていたのだ。
 もうあの冷たい世界には帰りたくない…っ!

「怖い…」

 思っている事を素直に伝える。「やっぱり」という感じの表情をした城之内に、だがオレは首を振ってみせた。

「だが…止めようとは思わない。後悔だけはしたくないのだ」
「海馬…?」
「お前が好きだから…後悔したく無い。分かるか…城之内。オレはお前が好きなんだ」

 未知の恐怖に身体が震える。それでも真っ直ぐに琥珀の瞳を見詰め続けた。城之内はそんなオレの視線を真っ向から受けて微動だにしない。だが暫くして…抱き締めていたオレを引き寄せて唇を合わせられた。
 十日前のあの時と同じように、ぬるりと入り込む熱い舌。クチュクチュとやらしい水音を起てながら、それはオレの口内で縦横無尽に暴れ回る。

「んぅっ………!!」

 息も吐かせぬような激しいキスに、それでもオレは抵抗しなかった。どうやって応えたら良いか分からない。ただ城之内の舌に促されるままに、触れた舌を夢中で絡めた。
 暫くして、ようやっと城之内がオレから離れた時には、お互いに顔を真っ赤にしていた。舌と舌の先がトロリとした唾液の糸で繋がっている。それを指先で拭いながら、城之内は真剣な顔をしてオレの事を見詰めて来た。

「本当に…いいの?」

 城之内の言葉は震えている。息も上がって二人分の呼吸音がやけに煩く聞こえるような気がする。オレも自分口元を袖口で拭いながら、コクリと一つ頷いた。

「しつこいぞ。良いと言っている」
「多分…滅茶苦茶痛いぜ?」
「そんなもの…最初から覚悟してる」
「なるべく優しくするつもりだけど…。でもオレも男を抱くのは初めてだから、気持ち良くはなれないかもしれない」
「それでも良い」
「でも…」
「城之内!! オレが良いって言っているんだ!! 早くしろ!!」

 まだしつこく何かを言いかける城之内の言葉を無理矢理遮って、オレは大声を出して会話を無理矢理終わらせた。多少強引だとは思ったが、これ以上うだうだされたら此方の方の覚悟が崩れそうな予感がしたのだ。

「ベ…ベッドに行くぞ!!」

 恥ずかし紛れに大声で言い放ってその場ですっくと立ち上がったら、城之内は一瞬キョトンとした表情でオレの事を見上げていた。何度かパチパチと瞬きをしていたのだが、数秒後には「うん」と頷いて嬉しそうに笑って立ち上がる。そして緊張で硬くなっているオレの手を引いて、共に寝室まで歩いて行ったのだ。



 数日前には風邪の看病をされていたベッドで、オレはその夜、城之内と一つになった。
 はっきり言えば物凄く痛かったし、苦しかったし、辛かったので、今後暫くはセックスなんて御免だと思う。でもだからと言って後悔しているのかと言うと、そういう事でも無いのだ。
 強く抱かれれば抱かれる程、城之内の優しさが感じられるのだ。身体は辛いが心が幸せで満たされていくのが分かる。時間が経つに連れて感覚が麻痺してきたのか、苦痛の中に快感が入り交じり、気が付いたら泣きながら喘いで城之内にしがみ付いていた。
 前戯から果ては後戯まで何度も射精させられ、最終的には気を失う形で眠りに就いたらしい。

「城之内…?」

 夜明け前、ふと目を覚ました。まだ薄暗い部屋の中、城之内の腕の中で目を開ける。
 身体は辛かった。少し身動きをしただけでも、身体の至る所がギシギシと軋んでいるようだ。それでも幸せだった。後悔なんて微塵も感じなかった。
 規則正しく上下する城之内の胸に頬をすり寄せ、一瞬だけ…あの冷たい世界を思い出す。
 城之内のいない悪夢の世界。あの世界のオレは、あの後記憶を取り戻したのだろうか? 城之内が死んでしまっている事を…思い出してしまったのだろうか? そして城之内にそっくりなゴールデンレトリバーを、愛しい人の代わりに今も抱き締めているのだろうか?
 悲しい…余りにも悲し過ぎる世界。

 そんな悲しい世界は、消え去ってしまえばいい…っ!!

 城之内の温かな熱で再び眠りに落ちそうになりながら、心の中で強くそう思った…。



 それから数日後。オレと城之内は今まで以上に恋人として幸せに暮らしている。
 あの日の朝、城之内の腕の中で強く願ったあの想いが通じたのだろうか。次に目覚めた時には、オレはあの冷たい世界の事を殆ど覚えていなかった。日々少しずつ記憶が薄れ、今も抽象的な感覚しか思い出せない。
 少し残念な気もするが、これで良いんだと思う。あんな悲しい世界は消えるのが一番良いのだ。

「………?」

 スーツの内ポケットに入れてあった携帯が震えて、メールの着信を報せて来た。取り出してフリップを開ければ、液晶画面に『城之内克也』という文字が浮かび上がっている。

『仕事ご苦労さん。今日泊まりに行ってもいい?』

 簡潔で分かりやすいメールに思わず苦笑しつつも、承諾した旨の返信メールを打ち込んで送信する。送信ボタンを押して視線を上げれば、窓ガラスに映った自分の顔が想像以上に幸せそうに微笑んでいるのが目に入った。
 城之内が居る幸せな世界。それがオレの生きる世界だ。

「オレはここにいる。さよならだ」

 頭の片隅で完全に消えていこうとするあの冷たい世界に別れを告げて、オレはメールの送信が終わった携帯のフリップを閉じた。

喉がイガイガさん

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喉がイガイガな二礼です、こんばんは。

具合の悪い社長の話を書いていたら、自分が風邪をひきましたw
一昨日の夕食を食べた後に何だか喉に違和感を覚え、キャベツの炒め物が気管に入って引っ掛かっているのかと思って放置していたのですが、どうやらそうでは無かったらしく…w
昨日の朝起きたら、既にイガイガになっておりました…。
すぐにうがいをしたので幸いそれ以上は酷くなりませんでしたが、まず食べ物が気管に入ったと思った辺りで放置すんなやって感じですよねwww
持病の関係で風邪をひけば長引くって分かってる癖に、学習能力が足りません\(^o^)/
でも処置が早かったお陰で、風邪気味程度で終わりそうなのでホッと一安心しております…w
良かった良かった。
皆様も風邪にはお気を付け下さいませ~!


城之内誕生日企画の『Lost World』に1月25日9時30分をUPしました。
やっと来た幸せターンなので、目一杯ラブラブさせてみました…w
風邪の看病は、ラブラブの基本ですよね~!
城之内君はこれで十分に幸せを感じているみたいですけど、せっかくの御誕生日企画ですからね!!
ここはやっぱり、もっと幸せなプレゼントを差し上げなければなりません!!
という事で、続きをお楽しみに~(*´∀`*)


以下は拍手のお返事になりま~す!!(・∀・)


>るるこ様

初めまして、こんばんは~!!
拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(´∀`)

ストレートな告白にドキドキしておりますw
そんな…好きだなんて…(*ノノ)テレテレ
という冗談はさておき(笑)、ウチの小説を読んで下さって本当にありがとうございます~!!
今週中には『Lost World』の方も終わりそうなので、来週からはまた『無限の黄昏 幽玄の月』の方を再開しようと考えております。
『Lost World』の城海と同じくらい、『無限の黄昏 幽玄の月』の城海も幸せになって欲しいですしね~v
これからも頑張ってハッピーエンドを目指したいと思っています!(`・ω・´)

それではこれで失礼致します。
時間がある時にでも、また遊びに来て下さいね~!
ではでは~(・∀・)ノシ


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございま~す!!(´―`)

城誕企画の『Lost World』と日記の感想をどうもありがとです~!
大泣き海馬に反応して下さって、どうもでした~w
今回の話で一番魅せたい部分だったので、その部分に触れたコメントを頂けて本当に嬉しかったです!

実はかなり前から、二礼は海馬を大泣きさせてみたいと思っておりました。
でも海馬は城之内のように自分の気持ちをストレートに表したりはしませんからね…。
どうやって泣かせようかと、ずーっと悩んでいたんですw
で、つい最近の事なんですけどね。海馬を泣かせるには、とにかく海馬に我慢を強いる事が大前提だって事に気付いたんです。
哀しみや苦しみの中で極限にまで我慢を重ねる事で、その後安心した時に、一気に精神のたがが外れるのでは無いかと…。
そういう訳で、思い付いたそれを今回の話で活かす事にしたんです。
更に今回の海馬は通常状態では無く、熱があり具合が悪かったですからね。
普段以上に心が弱っていたんじゃないかと思うんですよ。
そういう感じで弱っている時に心から安心出来た時、一気に涙腺が崩壊すればいいなぁ…と思って書きました。

結果、思った以上に良い感じで大泣きしてくれたので、これはこれで成功だと思っております(´∀`)

『デュエルターミナル』の話もありがとうでしたw
興味はあるのですが、そろそろ『お姉さん』の域を超えそうな人が一人でスーパーやデパートで遊ぶのは少々勇気が…w
一緒に遊んでくれる人がいれば、また別なんでしょうけどね~www

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

1月25日9時30分

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 1月25日9時30分


 一月二十五日の午前九時半。オレは浮上する意識に従って瞼を開いた。ベッドの上から薄明るい部屋の中をざっと見渡してみると、側に誰かがいる事に気付いた。
 遮光カーテンの隙間からは外の明るい光が漏れ、ベッド脇に座っている人物の姿をシルエット状にしている。じっとその影を見ていると、オレが目覚めた事に気付いた影がゆっくりと動いてオレの頬に掌を当てた。大きくて熱い…そして優しい掌にそっと頬を撫でられ、前髪を掻き上げて額に触れられる。

「うん…良かった。熱も大分下がったみたいだな」
「城之内…?」
「おはよう海馬。よく眠ってたな。気分はどう?」

 ニッコリと微笑まれながらそう尋ねられて、オレは改めて自分の体調を意識した。
 喉は…まだ少し痛い。けれど頭痛はもう無いし、身体も昨夜よりずっと軽い気がする。呼吸も随分と楽になった。

「大分…楽だ」
「そうか。一応熱を計っておこうな」

 そう言って城之内はサイドボードの上に置かれた体温計に手を伸ばした。電源スイッチを入れて、計測部分をオレの耳孔に差し込む。数秒後、ピピピッという電子音が聞こえ、城之内は体温計を手元に戻して浮き出た数字に目を通していた。

「三十七度五分。まだ微熱はあるけど、もう大丈夫そうだな」

 ホッとしたように笑顔を浮かべ、城之内は体温計の電源を切ってサイドボードの上に元通り置いていた。「飯は? 何か食べられる?」という質問にコクリと頷いて答えると、城之内はその場を立ち上がって寝室から出て行ってしまった。そして隣室に置いてある内線を使い誰かと話をすると、また寝室に戻って来る。直接オレの側には戻らず、窓際に寄ると遮光カーテンを大きく開いて満足そうに笑っていた。

「今日も良い天気だな~。流石オレの誕生日!」
「眩しい…」
「そりゃずっと暗い部屋ん中で眠ってたんだから眩しいだろうよ。これくらいは我慢しろ」
「半分カーテン閉めてくれ…」
「嫌だね。後で空気の入れ換えもしなきゃなんないだろうし。だけど、それよりも前に着替えだな」

 そう言って城之内は再び寝室を出て行った。部屋付きの浴室の方から暫くガタゴトと音が聞こえていたが、やがて手に洗面器を持ち、更に腕には何枚かのタオルを下げた状態で戻ってきた。洗面器から湯気が上がっているという事は、あの中身はお湯なのだろう。大股でこちらに近付いて来た城之内は洗面器をサイドボードの上に置くと、持って来たタオルを一枚洗面器の中に放り入れた。
 訝しげにその行動を見ていると、オレの視線に気付いた城之内がこちらを向いてニヤリと笑う。そして「んじゃ、ちょっと失礼」と言い、掛け布団を掴むとそれをあっさり剥いでしまった。

「な、何をする! 寒い!!」
「暖房入ってんだから大丈夫。それよりも汗一杯かいて気持ち悪いだろ? 今拭いてやるからな」
「は………?」

 城之内が放った言葉がよく分からなくてポカンとしてしまう。一瞬感じた寒さも忘れてじっとしていると、城之内の手が無遠慮に伸びてきた。そしてパジャマのボタンを一つずつ外していく。

「な…っ! 何をする…っ!!」

 慌てて胸元を押さえると、今度は城之内が一瞬驚いたような顔をし、次の瞬間にプッと吹き出されてしまった。

「何にもしねーよ。ただ身体拭くだけだから」
「っ………!」
「信用してよ。汗に濡れた服着てると、また身体が冷えて具合悪くなるんだぜ? な?」
「そ…そういう意味で言ったのでは…」
「ん?」
「いや…何でもない」

 まるで子供に言い聞かすような城之内の態度に、ほんの少しだけ悪い事をしたような気になってしまう。
 別に城之内の事を信用していない訳では無いのだ。
 去年の秋から恋人として付き合って来た約三ヶ月。城之内がオレに対して手を出そうとして来た事は、ただの一度も無かった。初めてそれらしい事があったのなんて、それこそこの間の喧嘩の時に無理矢理恋人らしいキスをされた…あの瞬間だけだ。
 自慢じゃ無いがオレはその手の経験が皆無な為、そういう知識に関しては物凄く疎い。世間一般の恋人同士がどのような付き合い方をしているのか、全く分からないのだ。だがそんなオレでも同じ男として『男の欲求』というものがどういうものであるのかくらいは理解出来るし、愛し合う者同士が肌を重ね合う…所謂セックスをするのだという事くらいは知っている。
 城之内がオレの事を『そういう目』で見ている事は知っていた。だからいつか突然襲われるかもしれないと、覚悟をしていたのも確かだ。
 けれど城之内は、オレに対して一度もそういう風に無理強いしてくる事は無かった。それどころか、何よりもオレの気持ちを大切にしようとする心意気が、城之内の行動から窺い知る事が出来る。
 だからそういう意味では、オレは城之内の事を心から信用していたのだ。微熱とは言え、まだ熱があるオレに城之内がそういう行為を強要してくるとは、微塵も思っていない。
 オレが着替えを阻止したのは、そういう意味では無くて…。

「あっちを向いていろ…」
「へ? 何で?」
「着替えくらい…自分でも出来る…」

 ただ…ちょっと…恥ずかしかったのだ…。
 真っ直ぐ注がれる城之内の視線を受け止める事が出来ず、ふいっと横を向きながらそう言う。頬が熱くなっているのが自分でも分かるから、すぐ側で見ている城之内には真っ赤になったオレの顔が見えているのだろう。その証拠に、一拍後に城之内が大笑いを始めた。

「あはっ…あはははははっ!! お前いいなぁ…超可愛い!」
「笑う事は無いだろう…!!」
「いやいや、だってお前…。恥ずかしがるなんて、ホント今更なんだぜ? お前の意識が無い間、オレが何度身体を拭いてやったと思ってんのよ」
「な…何だと…っ!?」
「こんなにデカイ身体をしたお前の看病は、モクバには無理だったしな。身体を拭いたり着替えをさせたり、そういう事してたのはこのオレだったんだぜ?」
「な…な…っ」
「はい。そういう事ですので、大人しくしてて下さい」

 余りの衝撃の事実に二の句が継げないオレを無視して、城之内は慣れた手付きでパジャマを剥いでしまった。ついでとばかりに下着も剥かれ、全裸でベッドの上に転がされる。
 慌てて城之内に背中を向けると、背後でタオルの水気を絞る音と共にクスクスという笑い声が聞こえてきた。
 失礼な態度に一言文句を言ってやりたかったが、何も身に纏っていないこの状況で振り向く勇気は無い。全身を硬くして身体を丸めていると、背中に温かなタオルが押し当てられたのを感じた。そのまま慣れた手付きで身体を拭かれていく。

「ほら、もっとリラックスしてろよ。気持ちいいだろ?」
「無理言うな…」
「何でだよ。身体拭いてるだけじゃん」

 首筋から背中をゴシゴシと拭われ、タオルが離れる気配と共に再び背後で水音が聞こえた。水気を絞る音の後に、また温かいタオルを押し当てられる。今度は首筋から肩の辺りを拭われて、腕を持ち上げられて手首から脇の下までしっかりと拭かれてしまった。
 今城之内がしているのは、ただの病人の看病だ。それは分かっているのだが、どうにも恥ずかしくて仕方が無い。なるべく城之内の視線から避けるように、顔を逸らして目を強く瞑る。
 そんなオレの態度に城之内はクスクスと笑っていたが、ふいに笑い止んで、オレの背中に熱い掌をぴたりと押し付けた。そして背骨に添ってそろそろと撫でられる。

「浮いてるな…」
「………?」
「大分…痩せちまったなぁ…」

 浮いた背骨や肋を優しく撫でられ、深い溜息と共にそう言われた。

「全然食べて無いから仕方無いんだろうけどさ…。ちょっと可哀想なくらい痩せちゃったよな」
「あぁ、そう言えばずっと意識が無かったらしいからな」
「他人事みたいに言うなよ。お前の事なんだぞ」
「分かっている。ちなみにオレが意識を失っている間は、栄養補給は一体どうしていたのだ?」
「点滴だよ。あのお医者さんがずっと点滴しててくれた。肘の内側見てみ。痕がある筈だから」

 そう言われて自分の腕の内側を見てみると、点滴の痕があるのを確認する事が出来た。その内のいくつかは内出血して青痣になってしまっている。点滴痕をじっと見ていると、その腕を掴まれて温かいタオルで拭われていった。肘の内側を拭く時は、痛みを感じないように力を抜いているのが分かる。
 腕を綺麗にした後はコロリと仰向けに転がされて、今度は胸から腹にかけて拭われていく。ここまで来れば流石のオレも恥ずかしいという気持ちは薄れ、逆に城之内に全てを任せるべく深く息を吐き出して身体の力を抜いた。
 オレが漸く諦めたのを感じたのだろう。城之内もどこか安心したかのように見えた。粗方上半身を綺麗にすると洗面器の中でタオルを濯ぎ、今度は太股から爪先にかけて拭っていく。内股を拭われている時は流石に恥ずかしいと思ったが、敢えて自分の感情に気付かないふりをした。
 城之内もオレが恥ずかしがっている事を察している為、敢えてその事を揶揄したりはしない。それがとても有り難かった。
 ふぅ…と軽く嘆息すると、それに気付いた城之内が「気持ちいいだろ?」と訊いて来る。それに素直にコクリと頷けば、城之内はニコリと笑って…それ以上は何も言わなかった。



「これで良し…と。もう少ししたら食事が来る予定だからな」

 全ての清拭を終え、更に用意してあった新しい下着とパジャマに着替えさせて貰った後、城之内は掛け布団をオレに掛けながら満面の笑顔でそう言った。

「さっき内線で連絡していたのはその為だったのか」
「うん、そうだよ。海馬の目が覚めたから、一時間くらい後に何か食べやすいもの持って来てって頼んでおいたんだ。オレが食べさせてやるからなー」
「いい。自分で食べる」
「またまた、そんなつれない事を」
「自分で食べられると言っているのだ!」

 少し大きな声でそう言い放つと、城之内はひょいっと肩を竦めて苦笑していた。「そんなに怒らなくたっていいじゃんか。目を覚ますと途端にこれなんだから…」とブツクサ言う城之内に、また罪悪感が募る。
 別に…怒った訳では無いのだ。ただ、物を食べさせて貰うという行為が…恥ずかしいと感じただけだった。

「………」
「………」

 それから暫くは、無言の時間が続いた。窓の方に目を向けると、レース地のカーテンがヒラヒラと揺れている。先程城之内が、部屋の空気を入れ換える為に窓を少しだけ開けたのだ。部屋を通り抜ける冬の風は確かに冷たかったが、頭がスッと冷えて心地良いと感じた。
 チラリと城之内の方を覗き見てみると、奴も気持ち良さそうにして揺れるカーテンを見詰めている。こちらの動きに気付いた様子は無かったので、そっと手を伸ばして膝の上に置かれたままだった城之内の手を握った。

「海馬…?」
「城之内…。せっかくの誕生日を台無しにしてしまって…本当に済まなかった」

 手を握られる感触に振り返った城之内の顔を見詰めながら、オレは静かにその名を呼ぶ。そして思ったままを素直に口に出した。
 オレの言葉に城之内は何の返答も返さない。不安な時間が流れていくだけ。ただじっと見詰め返してくる琥珀の視線に耐えかねて、けれど視線を反らす事はせずにギュッと熱い掌を強く握る。
 すると城之内は次の瞬間に破顔して、フルフルと首を横に振った。

「何で? 台無しになんてなってないじゃないか。ちょっと早かったし無理矢理だったけど恋人としてのキスはこの間貰ったし、二十五日もこうして一緒に過ごしているだろ?」
「だが…。お前が求めていたのはこんな誕生日じゃ無かった筈だ」
「まぁ確かにオレが想像していたものとは違ったけどな。でもこういうのも有りなんじゃないか? お前は大変だっただろうけど、オレは結構満足してるんだぜ。今も楽しいしな」
「楽しい…?」
「うん、楽しい。お前の側にいられるだけで楽しいんだよ。それだけで嬉しいって思うんだ」

 側にいられるだけでいい。それだけで嬉しい。
 そう思っているのは自分の方だと…口には出せなかったが強く思った。
 城之内が居ないあの冷たい世界は、こんな些細な幸せさえも求める事が出来ない世界だった。もう二度と戻りたくないあの世界…。ただの夢だと城之内は言うが、オレはそうは思えなかった。
 あの夢はきっと警告だったのだ。自分が城之内に対して何か後悔するような事をしでかした時に、あのような事になるという…警告。どんなに後悔しても、決して後戻り出来ない世界。城之内の居ない世界で生きていかねばならないという…残酷な世界。
 あんな辛い後悔を…オレは二度としたくないと思った。

「今週末の…土曜日から日曜日にかけて、予定を空けて置くから泊まりに来い」
「え………?」

 後悔はしたくない。だから勇気を出す。
 待っているだけではダメなのだ。幸せになりたいと思ったならば…自分から手を伸ばさなければ。

「誕生日パーティーを…やり直す。だから…来て欲しい」

 そう伝えて強く手を握ると、城之内はニッコリと笑って、そしてコクリと強く頷いてくれたのだった。

城之内君、御誕生日おめでとう~♪

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皆様の反応が嬉しかった二礼です、こんばんは。

とりあえず、最初はやっぱりコレでしょう!

城之内君、御誕生日おめでとう~!!

何か微妙に祝ってなさそうな小説書いていますが、本気でお祝いしているんですよ?w
いや、ホントホント。
それにしても城之内君は、見れば見る程いい男だなぁ~v
普段ダメダメでもいざって時に頼りになれる男が、本当のいい男なんだよね!
普段しっかりしていてもいざって時に弱くなる(といいなと勝手に思っている)社長とは、何だかんだ言ってやっぱりベストカップルだと思います!!
御両人、いつまでもお幸せに~!!(*´д`*)
(あれ? いつの間に結婚式に?)


話は変わって、土曜日の日記の件なんですが…。
ぼかして書いたのにも関わらず皆様には即バレだったようで、思わず笑ってしまいました…w
そうそう、そうです!! それです!! その特撮なんですよ~!!
本当にもう社長にそっくりで堪りません!!
三次のイケメンには余り興味が無かったのですが(基本的には二枚目より、二枚目半とか三枚目の方が好きですw)、あのイケメンはイイネ!!
凄く好みです…(*´д`*)ハァハァ
うん、でもアレですよ? 本気嵌りしてる訳じゃないですからね?
あくまで社長にそっくりだから、ついつい気になっちゃってるだけなんですからね?←まだ言うか!
それにしても…。

何でバレたんだろ…?

ちなみに最初は腐女子歴1X年とか書いていたのですが、よく数え直してみたら2X年に突入してました…orz
ひっそり直しておきましたが、正直サバ読んでスマンカッタ!!
(ギリギリ1X年だと思ってたんだよ…; 時が経つのは早いねぇ…;)


城之内誕生日企画の『Lost World』に1月24日23時05分そして1月25日0時00分をUPしました。
長っ!! タイトル長っ!!
今まで付けたタイトルの中で、一番長いんじゃないだろうか…?
………。
センス無ぇな…おいwww
ま…いっかw

んでもって、漸く城之内君誕生日企画っぽくなってきましたね~(´∀`)
うん、まぁ、ぶっちゃけて言えば

夢 落 ち

だったんですよ。
とっくに気付いていた方もいらっしゃったようですけどねw
しょっぱなから海馬が体調を崩していたのは全てこの為だったという、何ともまぁ…酷い話ですw
だけどこれで漸く幸せターンに入ったので、もうちょっとラブラブさせてから終わりたいと思います(*´∀`*)


以下は拍手のお返事になりますです~!(*'-')


>名取様

初めまして、こんばんは~!!
拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(・∀・)

ウチの小説を読んで下さって、本当にありがとうございます!
拙い文章なのですが、そう言って下さるとやる気も出ますし、本当に心から嬉しいと感じますv
社長に対して夢見過ぎとか、城海に対する萌だけで書いてるとか色々ありますが、これからも楽しんで頂ければいいなぁ~と思っています(´∀`)
時間がある時にでも、遊びに来て下さいませねv

ちなみに日記の特撮は、名取様の仰る通り『牙/狼』でございます…w
最近のカラオケは、その曲が主題歌になっているものを歌えば映像が流れますが、やっぱり『牙/狼』もそうでしたか…っ!!
これはますます歌いに行かねばなりませんね!!
ていうかですね、本当にあの白コートは社長にしか見えないんです…w
コートもそうですが、あの茶髪ストレートの面長ショートカットがもう…社長そのものですよね…w
実際に社長が現実にいたら、あんな感じだろうと妄想せざるを得ません!!
それにしても…厄介な物に嵌ってもーた…w

『無限の黄昏 幽玄の月』の方も褒めて頂けて凄く嬉しいです~!
『Lost World』の方が終わったら再開するつもりですので、どうぞ引き続きお楽しみ下さいませ~v

それではこれで失礼致します。
ではでは~(・∀・)ノシ


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~(´∀`)

城誕企画の『Lost World』と日記の感想をどうもありがとです~!
はい、Rosebank様の予想通りの『夢落ち』でございました…w
パラレルワールドとかも考えたのですが、あくまで城之内君の御誕生日企画だったので、軽めにやろうとした結果がコレだったのですw
上記にもありますが、海馬が最初から体調を崩していたのは全てこの為だったのですね~。
なのでわざわざ体温を測らせて「熱が高いんだぞ~」という事を強調してみたり、具合の悪さをしつこい位に書いていたりしてたんです。
Rosebank様は最初から気付いていらっしゃったみたいですけどね(*'-')
今回の話で幸せターンに入ったので、あとはもっとラブラブさせるだけですね~w
もう少々、お付き合い下さいませw

それから日記に関してもコメントどうもでしたv
えぇ…そうですw まさしく『牙/狼』ですw
特撮に関しては周りに特撮ファンが沢山いたのにも関わらず(特に『仮/面/ラ/イ/ダ/ー/ク/ウ/ガ』以降のライダーファンが多いです)、何故か一度も嵌る事はありませんでした。
役者さんが格好良いという事は分かるのですが、どうしても二次元と三次元の間の中途半端な感じっていうんですか?
どことなく漂う違和感が拭えなかったんですよね~。
なので、多分自分は一生特撮には嵌らないだろうと思っていたのですが…。
人生何が起こるか分かりませんねwww まさしく『どうしてこうなった』状態です、今w
ただファンサイトは本当に無くて、特撮好きのリアル腐友の協力があっても探し出せない状況です。
ていうかパチンコが引っかかり過ぎる…w
私はパチンコとかは全くやらない人なので、こんなにパチンコファンがいたのかと、逆にそっちにビックリでしたw
パチ攻略より、萌 え を お く れ !!

あと『遊戯王デュエルターミナル』の情報もありがとうです~。
近所のダ○エーとか、イ△ーヨー●ドーとかで探してみますね~w

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

 1月24日23時05分そして1月25日0時00分


 喉が痛い…。腫れて熱くなっているのが分かる。
 息が苦しい…。呼吸をする度に肺が痛い。
 身体が熱い…。発熱した身体が重くて、まるで自分の身体では無いようだ。

「海馬…っ。海馬…っ!」

 耳元で大きく名前を呼ばれているのが気になって仕方が無い。その声に応えたくて、気怠くて再び沈みそうになる意識を何とか掻き集めて、重い瞼をそろりと開いた。ぼやけた視線の先に金色の頭が見えて、次いで心配そうな顔をしている城之内の顔がクリアになる。今まで見た事も無いような必死な表情だった。

「………?」

 状況が理解出来なくて視線を巡らせてみれば、そこは普段使っているベッドの上だという事が分かる。部屋は暗く外も静かなので、どうやら今は夜らしい。
 もっと良く周りを見ようとゴソリと身体を動かしてみれば、節々が痛んで自由に動けなかった。身体全体が汗でびっしょり濡れていて気持ちが悪い。「はぁ…」と大きく息を吐き出すと、城之内が手を伸ばして来て、汗で重たくなった前髪を掻き上げてくれた。途端に夜の冷気によって額がひやりと冷え、それがとても気持ち良い。

「海馬…っ! 良かった…。漸く目を覚ましてくれたな。大丈夫か?」
「じょー…?」

 如何にもホッとした感じのその言葉に、オレの事を覗き込んでいる城之内の顔をじっと見詰めてみる。
 ふと…心底心配そうにオレを見守るその表情に、あの犬の事を思い出した。痺れて動きにくい手を掛け布団からゆっくりと持ち上げて、荒れた金髪に触れてみる。側頭部の辺りを探って、あの温かい茶色い耳を捜してみるがどこにもない。視線だけで城之内の身体全体を見渡してみても、あのブンブンと左右に振られていた尻尾も消えていた。
 何故急に消えてしまったのか…。理解出来なくて痛む喉から掠れた声を出す。

「お前…耳は…どうし…た…?」
「はい?」
「尻尾も…無くなって…」
「か、海馬? 何言ってんの…?」

 キョトンとした城之内を見詰めながら、触れていた金髪をサワサワと撫でる。荒れた髪が指先に引っかかった。
 おや…? この金髪はこんなに荒れていただろうか…? 確かもっと柔らかかった筈だが…。あぁそう言えば…何故この城之内は人の言葉を喋っているのだろう…?
 色々と疑問に重いながらも、その荒れた感触が気に入って城之内の頭から手を離す事が出来ない。

「おい…」

 やがて暫くして、それまで黙って頭を撫でられていた城之内がしかめっ面をした。不思議そうに頭を撫で続けるオレの手を握って、視線を近付ける。

「海馬…お前…。オレが犬になった夢とか見てたんじゃねーだろうなぁ…」
「ゆ…め…?」
「あんなに酷く魘されていたから、悪夢を見てるんだろうと思って必死に起こしてやったってーのに。ホント…可愛くねぇ奴」
「夢…だと…? オレが…魘されて…いた…?」
「そうだよ。風邪ひいてるってーのに無理して仕事なんかしやがって。あの後高熱でぶっ倒れたってモクバから聞いて、オレがどんだけ心配したか」
「あの…後…?」
「覚えて無いのか? ほら…この間の二十一日の夜だよ。ちょっと喧嘩しただろ…オレ達」

 二十一日…だと? それは一体いつの二十一日の事なのだろう…。
 オレの知っている一月二十一日は、今から一年前の一月二十一日の筈だ。素直になれず…城之内と喧嘩してしまった、あの一月二十一日。あの喧嘩が元で城之内は自分の誕生日に新聞配達のバイトに出掛け、そして事故に遭って死んでしまった…。
 オレはそれを一年後の一月二十二日に知って…、気付いたらそこはもう既に城之内の居ない世界だった。

「次の日、いつまでもお前が起きてこないからさ。心配したモクバが様子を見に行ったら、物凄い高熱を出して意識不明で唸ってたらしいんだ。オレの処にも連絡が来たから直ぐさま駆けつけたんだけど、大変だったんだぜ? お前は目を覚まさないしモクバは心配して泣くしで…って、海馬?」

 城之内が長々と何かを説明していたが、それはオレの耳を素通りしていく。オレの意識は、今別なものに捕われていた。
 冷たい雨。芝生の中にポツンとあった城之内の墓。真っ黒い土。掘っても掘っても城之内は出て来ない。絶望感…そして哀しみ。

「っ………! うっ…!!」

 突如、先程まで忘れていたあの寒さを思い出して身震いをする。同時に眼の奥が熱くなって、涙がボロボロと流れ落ちてきた。震える手で顔を覆い、嗚咽を堪える。
 目の前でオレの顔を見詰めていた城之内は、オレの涙に一瞬ギョッとした表情を見せた。そして慌てたようにオレの肩を掴んでくる。

「海馬…っ。ど、どうした? 大丈夫か? どこか…痛いのか?」

 城之内の問い掛けに何とか首を振る。けれど、オレは今自分がどこにいるのかが分からなかった。
 城之内がいる。目の前にちゃんと存在している。だがこれは果たして何なのだろう。夢なのか…現実なのか…、熱で朦朧とした頭では整理が付かない。

「夢…っ。夢…なのだろう…?」

 肩を掴む掌が痛い。そして熱い。あの冷たい世界の中で、あんなにも望んだ熱が今ここにある。
 それなのにこの熱が夢のように感じられてならなかった。

「本当は…現実では…お前は死んで…っ。犬が…お前に見えて…っ」
「どうした海馬。何言ってるんだ。やっぱり悪い夢を見てたのか…?」
「夢じゃ無い…っ! あれは…現実…っ! お前が死んでからもう一年も経っていて…」
「死んでって…おい。オレは別に死んで無いぜ? 人を勝手に殺すなよ」
「だけど…もう…っ」
「死んで無いったら。オレ、ちゃんと今生きてるだろ? お前は悪い夢を見てただけだよ。ほら、こっちが現実だ」

 自分の目の前にいる城之内がちゃんと存在しているのか、今が夢か現実か、頭が混乱してさっぱり分からない。だが城之内はそんなオレの身体を抱き起こして、強く抱き締めてくれた。
 身体全体に染み渡る城之内の熱…。その熱が至極心地良くて、恐る恐る広い背中に手を回して着古したパーカーの布地を握りしめた。そうすると城之内はますます力を入れて抱き締めて来る。それは全身の骨が軋む痛みを感じる程だった。

「い…痛い………」

 堪らず痛みを訴えると、城之内が耳元でクスリと笑う気配が伝わってくる。

「痛いだろ? だったらこっちが現実だ」
「城之…内…?」
「可哀想に。よっぽど怖い夢を見てたんだな…。熱…高かったからな。そういう時は変な夢に魘されちゃったりするから仕方無い。だけどもう大丈夫だ。こっちが現実だ。もう怖い夢は見ないからな」
「夢…? あれが…?」
「そう、夢だよ。オレの事…分かるだろ? ちゃんと…生きてるだろ?」

 城之内が少し身を離し、緩んだオレの片手を掴んで自分の喉に押し当てた。指先から伝わる確かな体温、そして鼓動。トクン…トクン…と命のリズムが刻まれている。

「生きて…いる…」
「うん」
「本当に…夢…だったのか…?」
「そうだよ」
「お前は…生きている…? 本当に…ここにいる…?」
「あぁ、いるよ。ちゃんとお前の側に…いるよ」

 視線を合わせた城之内が、そう言ってニッコリと微笑んだ。明るくて優しい笑み。あの冷たい世界の中、雨に濡れた黒土の中に消えたと思われた笑み。それが今ここにある…。

「海馬。お前が見てたのはただの夢だ。怖い夢だったんだ」

 そう…。現実の…ものとして、城之内の笑みが確かにそこにあった。

「うっ…! あぁっ…!」

 収まりかけた涙が再び溢れてくる。今度は嗚咽も我慢する事が出来ない。

「ふっ…あっ…! あ…ぅ…あ…っ!!」

 しゃっくり上げて痛む喉から嗚咽を漏らすオレを、城之内は優しく抱き締めてくれた。その途端、またあの熱と…懐かしい匂いに全身が包まれる。
 そうだ…。これは城之内の匂いだ。懐かしくて愛おしい…城之内の…熱と匂い。

「うぁっ…! あ…あぁっ…!! うっ…ふっ…! うあぁ…ぁ…あぁっ―――――っ!!」

 そうだ…これは現実だ…。こっちが現実なのだ…。
 その事実を理解し心から安心した途端、オレはもう我慢が出来なくなってしまった。城之内の肩口に顔を埋め、大声で泣き叫ぶ。

「じょ…の…うちっ…! ひっく…! じょ…うちぃ…っ!! うぁぁっ…!!」
「よしよし、怖かったな。もう大丈夫だから…安心しろよ」

 大声で泣き続けるオレの背中をポンポンと叩きながら、城之内が優しい声で囁いてくれる。大きな掌で何度も背中を撫でられる度に、オレは安心してまた新たな涙が零れてきた。
 途中、オレの大声に驚いたモクバが駆けつけて来たようだったが、城之内が「大丈夫だから」と言って宥めていた。弟の前でこんな醜態を晒す事は酷く恥ずかしい事であったが、それでも止まらない涙を隠すように城之内に肩口に顔を押し付ける。

「大丈夫だよ…海馬。オレが側にいるからな」

 あの冷たい世界でオレがあんなに欲しいと思っていた熱は、ずっと感じていた恐怖心をゆるやかに消していった。そしていつの間にか、冷たい雨と黒い土の悲しい記憶は…オレの中で薄れていったのだ。



 オレが目覚めた事をモクバが報せたのだろう。すぐに掛かり付けの主治医が遣って来て簡単な診察をし、安心したように「もう大丈夫ですよ」という言葉を残して帰って行った。夢の中と同じような状況に、またあの悲しい感覚を思い出して眉を顰める。だが夢と違うのは、視線を巡らしてみればすぐそこに城之内がいるという事だった。今はベッド脇の椅子に座って、微笑みを浮かべてオレの顔を見詰めている。

「良かったな。後はちゃんと食事をして薬を飲んでゆっくり眠れば、体調も元に戻るってさ」

 オレにそう語りかけてくる城之内の声は、先程よりずっと落ち着いていた。その声に小さく嘆息する。
 大泣きした後、冷たい水を飲んで喉を冷やし、医者の診察を受けたオレは随分と落ち着きを取り戻していた。未だ熱は高かったが(ちなみにこの時点で三十八度五分だった。倒れた時は四十度近くあったらしい…)、頭の中もそれなりにクリアになっている。お陰で先程まで混乱状態だった意識も落ち着いて、大分冷静に物事を考える事が出来るようになっていた。そしてオレは思い出したのだ…。
 一月二十一日の夜、城之内と言い争った事を…。

「そう…か…」

 力無く応えるオレの頭を優しく撫でながら、城之内はニコニコとしている。

「うん。もうあんまり無理はするなよ。心配だからさ…」
「心配…? オレの…か…?」
「当たり前だろ。恋人なんだから」
「別れるんじゃ…無かったのか?」
「…え?」
「『消え失せろ』と…そう言った。だからお前はそれに怒って…オレの前から消えたんじゃなかったのか…?」

 オレの言葉に城之内は「あー…」と何かを言い淀みながら、後頭部をガシガシと掻いていた。それは城之内が何かに困った時にする癖だ。
 懐かしい…城之内の癖。これが見られるのも彼が生きているからなのだ…と、何となくそう思う。そしてその事が、至極嬉しいと思った。

「ゴメン。オレもあの時は頭に血が昇っちゃってさ…。本当はあんな事言うつもり無かったんだよ…。その…悪かったな」
「………。いや…もういい…」
「許してくれる?」
「許すも何も…。本当に悪かったのはオレの方だ…」
「いや、オレも悪かったんだよ。オレさ、お前が意識不明の間にモクバから色々聞いたんだ。お前がずっと忙しそうにしてたのは、オレの誕生日を一緒に過ごす為だったって事をな…。そうとも知らずに無責任な事を言って悪かった。体調崩してたのだって、無理して仕事してたからだろ? やっぱオレの所為だよな」
「それは…違う…っ!!」
「海馬…?」
「お前の所為では…無い…! 体調を崩した…のは…自己管理が成っていなかった…からだ…!! 自分で勝手にストレスを溜めて…勝手にお前の所為にして…いたんだ…! お前の所為では無い…っ! 自分の所為なのだ…っ!! っ…! ゲホッ…ゴホッ…!!」

 まだ痛む喉から無理に大声を出したら、喉が引き攣って咳が出た。慌てた城之内に背中を撫でられて、サイドボードの上に置いてあったミネラルウォーターのペットボトルを手渡される。コクリと冷たい水を一口飲んで、水が胃に流れる感触にホッと一息を吐く。

「急に大声出すな…。それで無くてもさっきの大泣きで声帯痛めてんだぞ、お前」
「………。すま…ない…」
「まぁ、別にいいけどね。あとはゆっくり休むだけだし。んじゃ、オレはそろそろ帰るかな?」
「え…?」

 突然の言葉に、オレはベッド脇の椅子から立ち上がる城之内から視線が外せなかった。

「いや、お前も無事に目を覚ましたしさ。これ以上ここにいると、お前の迷惑になるだろ?」
「だ…だが…、こんな夜中に…」
「自転車で来てるから大丈夫。お前はオレの事なんて心配してないで、自分の風邪を治す事に専念してろ。いいな?」
「けれど…っ」

 とっさに掴んだ城之内のパーカーの裾をギュッと強く握りしめながら、ベッドサイドのデジタル時計に視線を走らせた。時刻はあと数分で二十五日に変わろうとしている。

「あ…明日…は…?」

 何となく嫌な予感がして、城之内を引き寄せながらそう尋ねた。引き寄せられるまま素直に近寄って来た城之内は、少し困ったように笑っている。

「明日? そうだなぁ…。明日は午後からまた見舞いに来るよ。仕事なんかしてないで大人しくしてろよ?」
「午後から…? 朝は…どうするのだ…?」
「うーんと…朝は寝てるだろうなぁ…。お前が具合悪くなっちまって、予定が変わっちゃったからな。明日は普通に新聞配達の仕事に行こうと思ってる」

 城之内の台詞を聞いて、全身が凍り付いたように固まってしまった。途端にあの冷たい世界の事を思い出す。

『年が明けて城之内の誕生日間近に兄サマと城之内は喧嘩して…、そして仲直りする前に城之内が不慮の事故で死んじゃったんだろ?』
『でも死んじゃったんだよ! 二十五日の早朝に!! 居眠り運転のトラックに轢かれて…っ!!』
『城之内君…ずっと楽しみにしてたんだ。二十五日はずっと海馬君と過ごすから、その日は新聞配達の仕事も休むんだって。でも君達が喧嘩しちゃって…それで予定も全部パーになっちゃって…。それで城之内君は渋々自分の誕生日だっていうのに、新聞配達の仕事に行ったんだよ』
『トラックの運転手さんは居眠りしてた。だから横断歩道を渡ろうとしている城之内君に気が付かなかった。気が付いた時には…もう…っ』

 モクバと…そして遊戯の声が脳裏に響く。
 あの世界では、城之内は二十五日の早朝に死んだ事になっていた。新聞配達の帰り道、配達所の近くの交差点で居眠り運転のトラックに轢かれて死んでいる。
 大分冷静になった今では、あの冷たい世界はただの夢だったと理解出来ている。高熱による意識の混濁。それが悪夢の正体。
 だけれども…っ。何故かは知らないが、今城之内を帰してはいけないと思った。

「ダメだ…っ」

 城之内の腕を強く掴んで、フルフルと首を振る。

「ダメだ…行くな…っ!!」
「海馬…?」
「どこにも行くな…っ! オレの…側にいろ…っ!! 頼む…城之内!!」

 大声を出して再び咳き込みながら、それでもオレは必死にその腕に縋り付いた。城之内は驚いたような顔をしてオレを見詰めていたが、やがてフッと笑みを零すと、先程と同じように優しく背中を撫でてくれた。そしてフワリと抱き締められる。

「仕方無いな…。お前にそう言われちゃ、オレはどこにも行けねーよ。ちゃんと側にいてやるからもう眠れ…」

 起き上がった身体を再び布団に戻されながら、それでもオレは城之内から視線を外せずにいた。少しでも目を離したら、コイツがどこに消えてしまいそうで…。
 そんなオレの視線に気付いた城之内は少し嬉しそうに笑って、掛け布団の上からオレの胸の辺りをポンポンと軽く叩き始めた。

「具合が悪くなると人恋しくなるっていうか…不安になるのは、お前も一緒なんだな。ちょっと意外だけど、何か安心した」
「ち…違う…。そんなんじゃ…」
「うん、分かってる。大丈夫だよ。具合が悪くて、その所為で怖い夢見て…。少し不安になってるだけだもんな。一晩ぐっすり眠ったら、きっと明日には元のお前に戻ってるよ」
「ここに…いろ…」
「分かってるって。どこにも行かないでちゃんとここにいるから、安心して眠っちゃいな」
「城之内…」
「ん? 何?」

 羽毛布団の温かさと城之内が胸を打つ規則正しいリズムにウトウトと眠くなりながら、視線を向けたデジタル時計の表示が変わったのを確認した。眠る前にどうしてもこれだけは伝えておきたくて、重たくなってきた瞼を無理矢理開き、布団の中から手を伸ばす。その手を熱い掌が掴んでくれたのを確認して、オレは至極幸せな気持ちで口を開いた。

「誕生日…おめでとう…」
「え…? ち、ちょっ…! 海馬…っ!?」

 オレの言葉を聞いて焦る城之内に応える余力はもう残されていない。けれど、沈みゆく意識の中、繋がれた手がキュッと強く握りしめられたのを感じて心から安心した。



 熱はまだ高かった。喉が焼けるように熱く酷く痛んで、頭の芯がボーッとして身体は気怠く重い。
 それでももう、あの城之内が居ない冷たい世界がやって来る事は二度と無かった。

「海馬…。おやすみ…」

 耳元に優しい声が降ってくる。掌に伝わってくる確かな熱にその存在を強く感じながら、オレは安心して眠りに就いた。

どうしてこうなった?

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何か…今更なものに嵌った二礼です、こんばんは。

二礼は腐女子歴もう2X年になりますが、今まで特撮物に嵌った事はありませんでした。
周りには結構特撮ファンはいたのですが、個人的にあの嘘っぽい感じが少し苦手だったので、嵌るとしたらいつも二次元だったのですね。
歌手やスポーツ選手及びドラマなどの三次元にも嵌った事はありますが、半生と呼ばれている特撮に嵌った事は今まで一度もありませんでした。
ので、勿論これからもそういう日が続くと思われたのですが…。

ど う し て こ う な っ た ?

ここで嵌った特撮のタイトルは明かしませんが、日曜日の朝にお子様達を対象にやっているような特撮ではありません。
今から5年程前に、深夜番組でやっていた大人向けの特撮です。
ニ/コ/ニ/コ/動/画で社長MADから辿って行って、最終的にその特撮に辿り着いた訳なのですが…。
気付いたらヤヴァイくらいに嵌っていました…w
この3日間くらいでTVシリーズの本編も全て観てしまい(全25話)、更にスペシャル編も鑑賞する始末(ただし、こちらは前編のみ。後編は捜索中)。
いや、違うんDA!!
別にそこまで嵌った訳では無いのだよ!!
全てはそう…アレだ!!

主人公が社長にそっくりなのがいけないんDA!!

社長によく似てるから気になってるだけ。知らないけどきっとそう。
今年の秋にやる3D映画なんて観に行かないんだからね!!
…と自分に言い聞かせていますが、これはヤヴァイ傾向だよなぁ…w
しかもファンサイトが全然見付からないのには泣けたwww
マイナーな上に半生ですからね~。やってたとしても地下に潜って見付からないようにしているんでしょうね。
さびちぃ…www

ていうか、そろそろOPがそらで歌えます(´―`)
今度カラオケ行ったら歌ってみよう~w


城之内誕生日企画の『Lost World』に1月23日13時15分をUPしました。
起承転結で言うところの『転』の回になりますね。
あとは『結』に向かって一気に進めるだけです(*'-')
今回の話はちょっと悲しい話だとは思いますが、ここまで来れば読んで下さった方にはそろそろハッピーエンドが見えてきたのではないでしょうか?
ねー? 信じてって言ったでしょう~?w
来週は誕生日企画らしく、一杯ラブラブさせますよ~(´∀`)
やっぱり幸せな城海っていいな。書いてる方も楽しくて仕方ありませんv


以下は拍手のお返事でございまっす!!


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございます~!(´―`)

城誕企画の『Lost World』と日記の感想をありがとでした~v
うふふ…(´m`) Rosebank様の予想の方もどうやら正解に辿り着いたようですね~。
今回のコメントの内容がほぼ全てが正解だったのには、流石に驚きました…w
今年に入ってRosebank様の予想力もますます力を付けられたようですねw
いやはや…参りました(´∀`)
ちなみに私も『海馬の主治医』という立場は、物凄く美味しいと思います!!
医者も美味しいですけど、付き添いの看護師さんとかも結構美味しいと思うのですが…如何ですか?w
主治医が診察の準備している間にパジャマを脱がしたりして用意するのは、きっと看護師の役目だと思うんですよね~。
私も社長のパジャマのボタンを外してみたいです(*´д`*)ハァハァ

それから『遊戯王デュエルターミナル』のエネコンの話には笑わせて貰いましたwww
どう考えてもエネコンMADから派生しているように見えるのは…私の気のせいでしょうか…?w
私は普段ゲーセンとかに行かないので、実際にこのゲームを見た事はありません。
でも存在自体は知っていたので、興味はあるところです!
でもねぇ…。この年になって一人でゲーセンとかには…流石に行けないので…(´∀`;
学生時代はよくゲーセンに一人で出入りして、『ぷよぷよ』とかモクモクとやっていましたwww
お陰で8~12連鎖くらいだったら普通に出来るようになりましたが、暫くやってないのできっと腕も落ちているでしょうね。
久しぶりに古いゲームとかもやってみたいですw

あと日記の方にもコメントどうもです~。
Rosebank様の仰る通り、日曜が埋まるとお出かけとか自由に出来なくなっちゃいますからねぇ…。
今までみたいな長期では考えないで、やっぱり別な仕事を探していこうと思います(*'-')

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

1月23日13時15分

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 1月23日13時15分

 今から数分前、「もうすぐ着くから用意して待っててね」という遊戯からの電話があり、オレは自室で窓の外を眺めながら遊戯が来るのを待っていた。外はあいにくの天気で、冷たい冬の雨がシトシトと降っている。雪にならなかっただけマシだったのかもしれない。
 今朝起きてから遊戯に「墓参りに行く。迎えに来い」という電話をした時、遊戯はオレの体調が良くなった事を素直に喜んでいた。だが実はそこまで良くなった訳では無い。
 喉は相変わらず腫れて痛かったし、まだ熱があって身体も気怠い。面倒臭くて体温を測ってはいなかったが、多分まだ三十八度前後はあるだろう。身体はベッドでの休息を訴えていた。
 それでもオレは、その訴えを無視して出掛ける準備をする。自分が作ったという城之内の墓を、この目で確かめておきたかったのだ。

「今日は雨だよ。病み上がりなんだし、また今度にしたら?」

 そう言って渋るモクバを、もう大丈夫だと言い聞かせる。何故だかは知らないが、今すぐにでも確かめなければならないような気がしていたのだ。
 最初は出掛ける事に反対していたモクバも、やがてオレのしつこさに根負けし、呆れつつも墓参りを承諾してくれた。そして一時間程後に、オレの喪服と白い花だけで作られた花束を持って現れた。

「普段着でも全然良いんだろうけど…。でも、兄サマにとっては初めてのお墓参りだからね。一応ちゃんとした格好をして行った方が良いと思うんだ」

 こうしてオレは黒い細身のスーツに全身を包み、遊戯が来るのをじっと待っていた。ソファーの上にはモクバが持って来てくれた花束が置かれている。
 カサブランカを主軸として、白い薔薇と雛菊と小菊。トルコ桔梗だけほんの少し紫が入っており、全体をかすみ草が覆っている。薄紫のリボンで纏まったそれは、まさしく死者に手向けられる為の花束だった。
 ソファーの下で寝そべっていた城之内がのそりと起き上がり、その花束の匂いをクンクンと嗅いで、そしてまた興味無さそうに伏せてしまう。その一連の動作に、思わずクスリと笑いが零れた。
 どう見ても城之内にしか見えない姿。だがこの城之内の事を、皆はゴールデンレトリバーだと言う。モクバも邸にいる全ての使用人も、皆が皆口を揃えてそう言うのだ。試しに昨日帰る間際の遊戯にも聞いてみたが、アイツも同じような事を言うだけだった。

「何って…確かゴールデンレトリバーって言うんだっけ? よく知らないけど凄く頭の良い犬なんでしょ? 盲導犬とかでよく見かけるもんね」

 そう言って優しく頭を撫でる遊戯に、城之内は嬉しそうに尻尾を振っていた。だが気を良くした遊戯がその首に抱きつこうとしたその時、城之内はヒラリと身を翻して数歩後ろに下がってしまった。そしてオレの側まで寄ってくると、ぺたりと地面に伏せてしまう。
 それを見て遊戯は、苦笑しつつ小さな溜息を吐いた。

「やっぱりダメだね。ジョーは海馬君以外には本当に心を許してくれないみたい」

 少し寂しそうにそんな事を言って、遊戯は帰って行った。試しにその後そっと城之内の首に抱きついてみたが、今度は逃げることなく大人しくしている。それどころか視界の端に入る尻尾が激しく左右に振られているのが見えて、少しだけ驚いた。

「お前は…本当に城之内では…無いのか…?」

 問い掛けても答えは返って来ない。ただ嬉しそうな顔をした城之内に唇をベロリと舐められるだけだった。



 どう見ても犬のような行動…。決して返って来ない言葉。
 それがこの城之内が、ただの犬だという事をオレに教えていた。それなのに、どうしても信じる事が出来ない。目の前の城之内がオレを見詰める瞳の強さが、あの城之内と全く同じだったからだ。
 ドアの外からメイドが遊戯の来訪を告げる。オレは「今行く」と簡潔に伝え、ソファーまで歩み寄ってそこに置かれていた花束を手に取った。

「クゥン…」

 オレの気配に気付いた城之内が小さく鳴いて顔を上げる。心配そうに見詰めてくるその顔に笑みを返し、そっと金色の頭を撫でた。

「お前の…墓参りに行ってくる。すぐ帰ってくるから…」

 オレの言葉に対する城之内の返事は無い。ただ何度か瞬きをし、諦めた様に再びその場に伏せてしまう。城之内のふて腐れたような態度に苦笑し、その頭から手を離して振り返った時だった。
 ふわり…と、何か優しいものが自分の頭に触れたような気がした。慌てて上を見上げても何も無い。ただ…気のせいかもしれないが、頭の中に『早く戻って来い』という城之内の声が聞こえたような気がした。

「城之内…っ!?」

 名前を呼んでみても、それに応える声は勿論無い。絨毯の上に寝そべっていた城之内だけが、また心配そうにオレを見詰めるだけだった。



 迎えに来た遊戯と共にリムジンに乗り込み、十分程で例の墓地に辿り着いた。
 シトシトと降り続ける雨に眉を顰め、オレは花束を小脇に抱えると傘を差して表に出る。反対側のドアから同じように外に出た遊戯の後を追いながら、墓地をぐるりと見渡してみた。
 安い市営墓地とは違う、静かで整えられた環境。一面に芝生が敷かれ、四季の木々や花々がそこかしこに植えてある。通路にはタイルが敷かれ所々に屋根付きの休憩所等もあり、墓地と言うよりは公園のようだ。春や夏にはこの芝生は青々と茂っているのだろう。けれど真冬の今は茶色く変色し、今は冷たい冬の雨に静かに打たれている。
 墓地の入り口にある受付で慣れた手付きでサインをした遊戯は、オレを連れてどんどんと奥に進んでいった。奥に足を踏み入れるに従って、ポツポツと墓石が目に入って来る。和風の墓石より圧倒的に洋風の墓石の方が多い。しかも大きな墓石等は殆どなく、芝生の上に直接石のプレートが嵌め込まれているタイプが多かった。

「城之内君のお墓は一番奥の方だよ」

 少し立ち止まったオレを振り返って、遊戯がそう口を開く。バラバラと傘を叩く雨粒の音に混じって、その声は至極静かにオレの耳に入ってきた。

「海馬君がなるべく静かで景色の良い場所をって事で選んだんだって。結局墓石と場所を選んだだけで、海馬君はその後一度も来る事は無かったみたいだけどね」
「そうか…」
「怖い?」
「………?」
「城之内君のお墓を見るの…怖い?」

 遊戯の言葉に少し考え込む。
 オレは…怖いのだろうか…? だが怖いと言っても、まだ何の実感も湧いていないのだ。今の段階では怖いとも悲しいとも…感じる事は出来ない。

「分からん」
「え…?」
「分からんから…見に行こうと思う」
「………。そっか」

 遊戯はオレの言葉に満足そうに笑い、再び前を向いて歩き出した。その小さな背を追いかけるようにオレも足を踏み出す。
 大きな銀杏の木の横を通り過ぎ、通路の両脇に紫陽花が植えられている小道に入り、最後に何本かの桜の木の間を抜けた時、目の前が一気に開けてオレは目を瞠った。
 一面の芝生。柵の向こうには雨に煙る童実野港が見渡せる。遮る物は何も無い絶景。その芝生の中央に、石のプレートが一枚だけ嵌め込まれていた。
 まるで誰かに呼ばれているような感覚に、そっと足を踏み出す。しゃくり…と、雨に濡れた芝生が音を起てた。
 聞こえる物は何も無い。芝生の上に…そして自分が持つ傘の上に落ちる雨粒の音。通り抜ける風の音。それ以外は何も聞こえない。
 そんな静寂の世界の中…城之内の墓石はそこにあった。『K.Jyounouchi』というネームの下に、城之内の誕生日の日付が刻まれている。年号は…去年のものだ。

「寒いね…。あっちの休憩所に自販機があった筈だから、僕何か温かい物買って来るよ。珈琲でいいよね、海馬君」

 ただ黙って墓石を見続けるオレに配慮したのか、遊戯が明るくそう言ってその場から離れて行った。
 遊戯がいなくなれば、そこは余計に静かな世界になる。雨と風の音以外に何も聞こえない。そう…何も聞こえない。城之内がオレを呼ぶ声も、厭味に応える声も、愛を囁く声も…何も聞こえなかった。
 冬の冷たい雨が芝生に…そしてその下にある土に染み込んでいく。この雨に塗れた土の中に、城之内が眠っているというのだろうか?

「巫山戯るな…」

 寒さのせいか…それとも悲しみからだろうか。悪態を吐くオレの声は震えていた。白く吐き出された息が空中に霧散し、冬の雨の中に消えていく。
 持っていた傘も花束も放り出して、オレはその場に膝を着いた。そして素手で芝生ごと墓石の周りの土を掘り返す。

「巫山戯るな…っ! 巫山戯るな…っ!!」

 馬鹿な事をしているという自覚はあった。けれど止める事が出来ない。
 土を掘り返して、中にいるであろう城之内の横っ面を一発殴ってやりたかった。思いっきり殴れば、きっとオレを取り巻くこの不可思議な状況も少しは変わる事が出来るんじゃないかなんて…有り得もしない事を考える。

「オレは…知らないんだ…っ!! お前が死んだなんて知らないんだ…っ!! 巫山戯てないで出て来い…っ!! 出て来い…城之内!!」

 冷たい雨に全身がびしょ濡れになり、髪の毛の先から滴がポタポタと零れ落ちた。爪の先に詰まる泥が酷く不快だ。それでも掘り続ける。芝生を掻き分け、黒い泥を無心で抉った。

「海馬君!?」

 どれくらい時間が経っていたのだろうか。突然背後で遊戯の叫び声が聞こえた。次いでバシャバシャと水溜まりの上を走る音も聞こえてくる。強く肩を掴まれて、そこから引き剥がされた。

「何やってるんだよ…!! 海馬君…!!」
「何…を…?」

 遊戯に背後から強く抱き締められて、オレは恐る恐る自分の手を持ち上げて見てみた。その手は土に塗れて黒い泥が爪に詰まっている。それを何となく眺めながら、ボソリと脳裏に浮かんだ言葉をそのまま呟いた。

「城之内を…起こそうと…思って…」
「城之内君を起こすって…っ。海馬君、何を言ってるの!」
「一発殴ってやれば…きっと元通りになるんじゃないかと…」
「海馬君どうしちゃったの…って…え? 凄い熱だよ…海馬君!!」
「遊戯…オレは…どうしても…信じられ…ない…」
「海馬君!? 海馬君、しっかりしてよ!!」
「城之内…」

 あぁ…まただ…。また誰かに頭を撫でられている感触がする…。
 遊戯では無い。遊戯の両手は今オレの両肩を掴んで揺さぶっているから。では…誰なのだ? この優しい掌は…一体誰のものなのだろう…。

「城…之…内…」
『海馬…早く戻っておいで…』

 脳裏に至極懐かしい声が響いて、オレはその場で意識を失った。



 目覚めるとそこは自室だった。窓の外はもう既に暗く、寝室の外からモクバと遊戯…それに主治医が話している声が聞こえる。未だ体調が万全では無かったところに冬の冷たい雨に打たれ、風邪を酷く拗らせたのだという話が耳に入ってきた。
 喉が燃えるように熱く、頭がガンガンと痛みを訴えている。身体が怠くまるで石になったかのように重い。

「クゥン…」

 いつの間に側に寄って来ていたのだろうか。城之内がオレのベッドに上半身を乗り上げ、シーツの上に投げ出されたままだった手を温かな舌でベロリと舐めた。

「城之内…」

 掠れた声で名前を呼べば、城之内は素直にオレに擦り寄って来た。そっとその首を抱いて柔らかな金髪に頬ずりする。
 分かっている。これは城之内では無い。これは犬だ。ただの犬なんだ。オレの目が城之内だと錯覚しているに過ぎない。
 名前を呼べば返事をするように一声鳴くものの、何の言葉も話さない。親愛の意味を込めて唇を舐めては来るが、それはあくまでキスでは無い。抱き寄せれば素直に擦り寄って来るものの、決してオレを抱き寄せる事はしない…出来ない。

「城之内…っ」

 あぁ…どうしたらいいのだ…!!
 今…こんなにも…お前に会いたい…っ!!
 それなのに、もう何もかも遅かったと言うのだろうか? もう二度とやり直せないと言うのだろうか?
 お前は一年も前に死んでいて、オレはその間の記憶を失っていて…。
 もう二度とあの時間には戻れないとでも…言うのだろうか!?
 あの明るい笑顔も、優しい言葉も、熱い体温も、全てもうあの冷たい土の中だと…そう言うのだろうか…っ!?

「城之内…っ!」

 寒い…。寒いのだ…城之内。
 お前を失った世界はこんなにも寒く感じるものなのか。
 今はあの熱い手が懐かしい…。城之内のあの掌に触れられたいと…心から望んでいる。
 それなのに…お前はいないのか…っ!

「城之内…っ! 城之内…っ!!」

 温かな身体に顔を埋め、必死で愛しい人の名を呼ぶ。
 たった一言でいい…。この声に応えてくれたら…っ!!

「城之内ぃ――――――っ!!」

 大きな声で叫んだ時だった。

『海馬!!』

 耳元で城之内の声が聞こえたような気がした。何だか異様に焦ったような声に、オレは慌てて辺りを見渡す。勿論寝室内に誰かがいる訳も無い。けれど、再び城之内の声がすぐ側から聞こえる。

『海馬!! 海馬…っ!! 目を覚ませ…っ!!』
「え………?」

 はっきりと聞こえた声に焦って上体を起こす。その途端、何かに強く身体を押されてオレは体勢を崩した。
 熱で自由が効かない身体はそのまま傾いて、ズルリとベッドから落ちていく。

「わん!」
「じょー…っ!?」

 ぐらりと傾く視界の中、オレの身体を突き飛ばした城之内が至極嬉しそうな顔をしてそう鳴いたのを見た。その城之内に対して必死に手を伸ばしてもみても、そいつはもう擦り寄っては来ない。
 ただ心から安心したような顔をして…オレがベッドから落ちていくのを見守っているだけだった。

ニート仮脱出!

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一応ニート脱出な二礼です、こんばんは。

何とかお仕事決まりました…。
ただし日曜日にシフトが入ってしまった事や、日数が少ないなど問題は山盛りです。
あくまで仮決定にして、別のお仕事を引き続き探し続ける事にしました。
だってほら…日曜日休めないのは…オタクにとっては辛いよねぇ…。
イベントとかイベントとかイベントとか、色々あるじゃない?
一応「二月に一回くらいは休みます!」とは伝えてありますが、何か向こうも乗り気じゃなかったのも気になります…w
いや、休むからね。何と言われようが私は休みます。

ちなみに場所は以前の職場より離れてしまいましたが、一応徒歩十分くらいの場所にあるセブンイレブンになります。(以前のセブンは徒歩5分でした)
えぇ、またセブンイレブンです。
多分経験者だって事で採用されたんでしょうけどね…w(あと、閉店したお店も近所だから知ってたみたいですし)

つー訳で無事にお仕事が決まったので、『小春日和』も更新日を変えようと思います。
新しい更新日は、月・水・土の三日間です。あと時々気が向いたら金曜日にも…。
という事ですので、次回の更新日は23日の土曜日になります。
お間違えの無いようにして下さいませ~!


城之内誕生日企画の『Lost World』に1月22日16時48分をUPしました。
はい、何度でも言います。

祝う気満々でございます!!

例え城之内が犬になってても、モクバや遊戯が出しゃばっていても、これは城之内君誕生日企画でございますwww
展開的に凄く欝っぽいですけど、来週中にはさっさと終わらせるつもりなので、欝ゾーンはそんなに長引きません。
大丈夫大丈夫(´∀`)
最後は勿論城海ハッピーエンドですよ~!!
ホントダヨ?


以下は拍手のお返事になりますです~(*'-')


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~(・∀・)

城誕企画の『Lost World』と日記の感想をどうもありがとです~!
自分で書いておいて何ですが…本当に城之内君の台詞がありませんね…w
今回の話でもそうですけど、モクバや遊戯ばっかりが出しゃばって、わんこな城之内君は人間語を喋らせて貰っていません。
こ れ は 酷 い !!
でもほら、真打ちは最後に登場って言いますしね?
城之内君にはラストでビシッと決めて貰えれば、それでいいのです!!
………決めて貰えるのかなぁ…(´∀`;

それから…。
Rosebank様が予想したエンディングの内のどれが正解かは言えませんが、結構お気楽なラストになるかと思います。
今の時点では全く気楽には考えられませんけどね…w
でもこれはあくまで『城之内君誕生日企画』ですので、そこまで重い話では無いんですよ~。
一見重い話に見えますが、多分ラストを読めば私が言っていた意味が分かるかと思いますw

ていうかですね、私自身もRosebank様と同様、死にネタが苦手なのですよ…。
全く読めないとまではいきませんが、それなりの救いが欲しいとは思っています。
以前のジャンルでは結構死にネタ等を書いてはいましたが、どれも救い(主に精神面での)があるようにしていました。
遊戯王ではそこまで本気の死にネタとかはやりたくないので、まぁ…気楽な気持ちで続きを待っていて下さいませw

あとニート発言についてのコメントもありがとでした~w
お陰様で無事ニート脱出です(´∀`)
まぁ…厳密に言えば主婦をやっている時点でニートでは無いんでしょうけどね。
でもお金を稼いでいないという点に置いてはやっぱりニートと一緒なので、こういう書き方をしました。
あ、そうそう。
コメントの時間については別に気になさらなくて大丈夫ですよ~。
早く上げる事もあれば、今回みたいに遅くなる事もありますし、更新時間自体は余り気にしていませんから…w

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

1月22日16時48分

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 1月22日16時48分

 混乱したオレに焦ったモクバによって呼ばれた主治医に処置をされ、オレは今自分のベッドで静かに横になっている。
 薬を飲み、何とか落ち着いて話が出来るようになったのを期に、オレはモクバから全く現実味の無い話を聞き出す事に成功していた。

 一つ。今現在の時間軸は、自分が考えているより一年も時が進んでいるという事。
 二つ。去年の一月二十五日に城之内が不慮の事故で死んでしまっているという事。
 三つ。どうみても城之内にしか見えないこのゴールデンレトリバーはジョーという名前で、城之内が亡くなって暫くしてオレが自分で連れて来たという事。

 どれもこれもが全く身に覚えが無く、ましてや信じる事など出来やしない非ぃ科学的な現象だ。
 それでも信じざるを得なかったのは、それを伝えたモクバの目が決して嘘を吐いておらず、更にオレが知っているモクバより成長していた為だった。最初に感じた違和感は、この成長の為だったと納得する。
 一年の時間が過ぎ去っていた事に関しては、何とか納得する事が出来た。しかしそれ以外の事象については、何一つ理解する事が出来ない。ましてやあの城之内が死んだ等と…どうして信じる事が出来ようか。

「城之…内…」

 昨晩…。そう昨晩だ。オレにとってはまだ一日経っていない。
 つまらない意地を張って城之内を怒らせて、彼に冷たい目をさせてしまった。城之内は呆れたような顔をして、そしてオレに荒々しいキスを一つ残して消えてしまった。
 確かにもう終わりだと思った。別れる事になるのだろうと確信していた。
 だけれども…! あの姿が本当に最後の見納めになるだなんて、一体誰が考えるだろう!!

「城之内…っ!!」

 気怠い身体を敷布の中で丸めて、オレは城之内の名を呼んだ。その名に応える声は無く、代わりに「クゥン…」という犬の鳴き声が耳に入ってくる。
 先程までベッド下の絨毯の上に大人しく伏していた城之内が、両手をベッドに引っ掛けてオレの顔を覗き込んでいた。心配そうな表情やその琥珀色の瞳はまさしく城之内そのもので、その顔を見てじわりと眼の奥が熱くなるのを感じてしまう。耐えられなかった涙が頬を伝っていったのを、温かな舌でベロリと舐め取られた。

「じょ…の…うち…」

 金色の頭に手を置くと、思ったよりも柔らかい毛の質感が伝わってくる。その感触を確かめて、オレは諦めた様に嘆息した。

 あぁ…やはり違うな…。本物の城之内の髪質は、もっと荒くゴワゴワとしていた筈だ。

 飼い犬が亡き恋人に見える現象を、医者はショック症状だと言っていた。
 モクバによると、オレは昨日から高熱を出しずっと寝込んでいたのだそうだ。ちなみに昨晩の体温は三十八度八分。オレが覚えている昨晩の体温は確か三十八度二分だった筈だから、やはりオレの言う『昨日』とモクバの言う『昨日』は違う『昨日』なのだという事だろう。
 オレの記憶が一年飛んでいる事に関しても、医者は高熱によるショック症状だと言い切った。高熱で朦朧とし、辛い想いをして過ごした一年を自主的に忘れてしまおうと脳が勝手に判断したせいだと告げる。「ましてやこの時期ですから…」という言葉からも、この主治医も城之内の事は知っているのだという事を理解した。

「辛かった…一年…」

 オレは全く身に覚えのない言葉を、ポツリと呟いてみる。
 つまらない事で言い争いをし、素直に謝る事も出来ぬまま恋人は事故死し、一時は食べる事も眠る事も出来ずに痩せ細り、やがて恋人にそっくりな犬を連れて来て共に過ごす日々。
 確かに聞いているだけで『辛い一年』だ。
 ただその記憶が無いせいか、その言葉はオレにとっては全く現実味の無いものだった。

「どうやってそれを…信じれば良いというのだ…」

 クンクン鳴きながらオレに擦り寄る城之内の頭をゆっくりと撫でながらそう口に出すのと同時に、私室の扉が開かれた音がする。聞こえる足音は二つ。どちらも子供の様な足音だった。
 多分片方はモクバだろう。ではもう片方は…と考えてた時、寝室の扉がノックされた。

「兄サマ? 起きてる?」

 少し遠慮をしたかのようなモクバの声に、オレは「あぁ」と返事をした。そしてベッド上で上体を起こし、少し乱れたパジャマを整える。もそもそと動くオレを、城之内はただ黙って見詰めていた。

「遊戯が来てるんだよ。学校のプリント持って来てくれたんだって」
「遊戯が…?」
「会える?」
「構わない。入ってくると良い」

 オレの返事と共に寝室の扉が開かれ、そこから遊戯がひょっこりと顔を出した。

「海馬君、具合どう?」

 一年経っているだろうに全く変わり映えのしない姿に苦笑しつつ、オレは手招きをして彼を呼び寄せた。
 モクバの成長が著しかったせいだろうか。何の変わりも無い遊戯にほんの少しだけホッとしたのだ。

「突然ゴメンね。でも今日中に渡しておきたいプリントだったから…」
「構わん。貴様に風邪が移ろうがどうなろうが、オレにとっては関係無いからな」
「酷いなぁ…もう」

 丸い頬を更に丸めて、遊戯はそう言ってむくれていた。けれどその大きな目は決して怒ってはいない。それどころかオレの事を心配しているのが、よく見て取れる。
 オレ達が和やかに話しているのに安心したのだろう。モクバはベッド脇に椅子をしつらえると、そのまま部屋を出て行った。それを見送った遊戯は椅子に座りつつ、自分の学生鞄から一枚のプリントを取り出す。差し出されたそれを何となく受け取り、そして深く溜息を吐いた。
 そこには二年ではなく三年という文字が記されていた。
 オレが知っている自分の学年は二年だ。この事でまた自分の中の一年が飛んでいる事を思い知らされて、せっかく落ち着いて来た頭痛がぶり返しそうに感じる。

「ねぇ…海馬君。一体どこまで時間が巻き戻っちゃったの?」

 何も言う事が出来ず、ただ受け取ったプリントを睨み付けるように眺めていたオレに、遊戯がそう問い掛けてきた。どうやらオレの症状は、もう既にモクバから聞いているらしい。
 話を聞いているなら面倒臭くも無いと、オレはプリントに向けていた視線を上げてベッド脇の遊戯を見詰めた。

「一月二十二日だ」
「え…?」
「今日は一月二十二日だな」
「うん、そうだけど…」
「オレにとっても今日は一月二十二日だ。ただし、一年前の一月二十二日だけどな」
「一年前の…?」

 遊戯が驚きの声をあげる。そして同時に沈痛な表情になったのを見て、オレはその顔を見ていられず静かに目を伏せた。
 何故遊戯がそんな顔をしたのかなんて…よく分かる。
 遊戯は…城之内の親友だった。そしてオレと城之内の関係も知っていた。という事は、ここ一年間のオレの状態も知っているという事だろう。そしてこの一月二十二日という日付がどんな意味を持つのかも…多分良く分かっているのだ。

「オレの時間の中では…城之内はまだ生きているんだ…」

 そう呟くと案の定、遊戯は泣きそうな顔をして俯いた。

「でも…海馬君…。城之内君は…死んでしまったんだ…」
「………。そんな事は…知らない」
「でも死んじゃったんだよ! 二十五日の早朝に!! 居眠り運転のトラックに轢かれて…っ!!」
「っ………!!」
「城之内君…ずっと楽しみにしてたんだ。二十五日は海馬君と過ごすから、その日は新聞配達の仕事も休むんだって…。海馬君と一緒にゆっくりするんだって、嬉しそうに話してた。でも君達が喧嘩しちゃって…それで予定も全部パーになっちゃって…。それで城之内君は渋々自分の誕生日だっていうのに、新聞配達の仕事に行ったんだよ」

 遊戯の話す言葉が、何故か外国語のように聞こえた。
 まるでどこか遠くの…全く知らない人間の話のように聞こえる。

「配達所の近くだったんだ。もう全部配り終わって…本当に後は帰るだけの…。最後の大通りの横断歩道を渡ろうとして…でも向こうから運送会社のトラックが赤信号で突っ込んできて…」

 遊戯は話ながらボロボロと泣き出した。膝の上にある手をギュッと握りしめて、ブルブルと震えている。

「トラックの運転手さんは居眠りしてた。だから横断歩道を渡ろうとしている城之内君に気が付かなかった。気が付いた時には…もう…っ」

 耳障りなクラクション。まるで金切り声のようなトラックと自転車両方のブレーキ音。
 ひしゃげた自転車。蜘蛛の巣状に割れたトラックのフロントガラス。道路に散らばったライトの破片。歪んだバンパー。

「っ…うっ…!」

 見えない光景が目に見えるようだった。まるで自分がそこにいるかのように…。

「城之内君は…死んだんだよ…海馬君」

 目を真っ赤に腫らして遊戯がオレにそう言い放つ。
 遊戯の深い悲しみがオレにも伝わってくる。けれどオレはどうしても、それを現実の物として受け止められなかった。そんな悲惨な話を安易に信じる事なんて…出来はしない。
 涙も流さずただ唇を震わせる事しか出来ないオレに、遊戯は静かに口を開いた。

「海馬君は…最初は冷静そうに見えたよ。自分では何も出来ない城之内君のお父さんの代わりに、通夜とかお葬式の手配をしたりとか…。あとお墓を作ってあげたのも海馬君だった」
「墓…だと…? このオレが…城之内の墓を…?」
「そう。最初は郊外の安い市営墓地にって話だったんだけど、海馬君がどうしてもそれを嫌だって言い張って…。ほら…この高級住宅街のある丘の反対側に、静かな墓地があるの…知ってるでしょ? 結構お金持ちの人達ばかり利用してる処」
「あぁ…。あの童実野港が見下ろせる墓地か」
「うん、そう。あそこにさ、海馬君が自分で城之内君のお墓を作ってあげたんだ。和風のお墓じゃなくて、芝生の上に一枚のプレートを埋め込んだ外国風の…」

 遊戯が事細かに城之内の墓について説明してくれるが、オレにとってはサッパリな話だった。何しろそんな墓を作った記憶も無いのだから。
 オレが全く何の反応も出来ないでいる事に、遊戯も気付いてくれたらしい。滲む涙を手の甲で拭いながら、遊戯はニッコリと微笑んだ。

「覚えが無いのも仕方が無いかな…。だって海馬君は城之内君のお墓を作ってあげたっていうのに、自分では決してお参りに行こうとしなかったんだもん。もし皆に内緒でお参りに行ってるんじゃなかったら、僕やモクバ君が知る限り、海馬君はまだ一度も城之内君のお墓に行って無い筈だ」

 涙を完全に止め、遊戯はスッと視線を上げた。そしてシーツの上に投げ出されたままだったオレの手を掴んで、こう言い放つ。

「明日…具合が良くなったら…、城之内君のお墓参りに行ってみる…? 命日には少し早いけど、誰も居ない方がいいでしょ? 僕も一緒に行くから…」

 城之内の墓。全く覚えの無い墓。その墓を見れば少しは現実味も増すのだろうか…。この常に付き纏う違和感も消えるのだろうか…。
 城之内が死んだという事実を未だに納得出来ないながらも、オレはその申し出にコクリと頷く。それを見た遊戯がニコリと笑って「じゃあ、昼過ぎに迎えに来るから」と言ったのを聞きつつ、心の中ではもう別の事を考えていた。

 墓を見れば納得出来るのだろうか…?
 あれからもう一年の年月が過ぎているという事を。
 城之内が既に死んでしまっているという事を。
 本当に…納得出来るのだろうか…?



 その日の夜の時点では、未だ体調は悪かった。
 喉は腫れて痛く、身体は火照ったように熱く気怠い。苦しげに呼吸をしながらそれでも何とか眠りにつこうとすると、意識が落ちる寸前にふと…誰かに頭を撫でられたような気がした。
 大きくて熱い掌に、優しく優しく何度も頭を撫でられる。
 至極懐かしく感じるその感触に、オレは知らず涙を零していた。

「………ょ…う…ち…」

 頭に浮かんだその人物の名前を呼んだところで、意識が眠りに引き摺られた。
 あとはもう何も感じない。あの優しい掌の感触も、いつの間にかどこかに行ってしまっていた…。

ニート(笑)

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すっかりニートな二礼です、こんばんは。

ふふふ…w
時期が悪くて仕事が無いっす!!
ハロワの住民になりそうだ…orz
でも気持ち的に少し落ち着いて来たので、まったり仕事探しをしていこうと思います~。
焦りは禁物とも言いますしね!!(お前はまったりし過ぎだという声もちらほら聞こえますが…w)

という短い見出しで気付かれた方もいらっしゃると思いますが、日記のネタが全く無いんですよ…(´∀`;
ハハハ、困ったね~www
何せ、仕事探し・家事・物書きのローテンションを繰り返しているだけなもので…w
刺激が無くなると一気に呆ける(というか欝になる)と言いますから、そこがちと心配なのです。
流石にこの年で痴呆にはなりたくないぞ…!!

せっかく痴呆という単語が出て来たので、若年性痴呆にかかってしまった社長で妄想。←酷ぇ…w

車椅子に座って、ボーッと外を眺めるだけの社長。
ただ時々、凄くハッキリと喋ったりします。
仕事の事とかデュエルの事とか、とにかく自分が真摯に追い求めて来た事だけをハッキリと。
でも同じ事しか言わない。繰り返し延々と同じ事をずーっと喋ってる。
海馬家に雇われたヘルパーは「はいはい」と言って全く相手にしてくれないんだけど、城之内だけは別で、社長がどんなに同じ事ばかり言っていても黙って聞いてあげてます。
時折「そうだな」とか「お前の言う通りだ」とか相槌を打つと、社長も嬉しそうにニッコリと笑ってくれるのです。
その笑顔が本当に嬉しそうで眩しく見えて、城之内君はどうしても社長を見捨てられない。
それどころかその笑顔に自分も癒されて、これからもずっと社長の側にいる事を決意します。

…どうですか? こういうのも有りじゃないですか? 無いですか…そうですか…(´・∀・`)
これもまた一つの愛の形だと思うんですけどね~w
どうやら最後の最後まで運命を共にする城海ってのが好みらしいです(´―`)


城之内誕生日企画の『Lost World』に1月22日6時17分をUPしました。
さぁ、訳が分からなくなって参りましたwww
何かホント…祝う気あるの? って言いたくなりますよね…。
えぇ、言いたい事は分かりますよ。この展開では城之内君の誕生日を祝っているようには見えませんから。

でも祝っているんです!!

おほほ~♪ 大丈夫ですってばw 二礼を信じなさい(´∀`)
まぁ…安易に信じて後で裏切られても、責任は持てませんが…。クスッ(´m`)←冗談ですw

一応長編となっておりますが、そんなにダラダラ続けるつもりはありません。
あくまで城之内君の誕生日企画なんで、来週中には終わらせるつもりです~!
で、毎回言っておきますけど…ハッピーエンドなんですよ? うん、ホントホント。


以下は拍手のお返事になりまっす!!


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(´∀`)

城誕企画の『Lost World』と日記の感想をどうもありがとです~!
以前にRosebank様がコメントで「死にネタはダメ」と言っていたのを覚えていたので、今回はどうかな~と思っておりましたが、どうやら勇気を出して読んで下さったようですね~w
はい、大丈夫です。いつもの二礼の事なので…(´―`)
途中で辛い展開になっても来週中には終わる程度の長さなので、多分大丈夫かと思います。
ちなみに予想の中に当たりが一個混じっていましたよ~。
城誕企画という事で私自身も気軽に書いているものですので、そんな難しい展開にはしないつもりです。
「何だ~。結局こういう事か~」的なノリで御覧になって頂ければ幸いですv

ちなみにタイトルが日付と時間になっているのは、Rosebank様の仰る通りです。
…と言いましても、上記で書いてある通り実に気軽に書いている作品なので、普段の私の小説ほど重要な意味を持ちません。
城之内の誕生日に近付くにつれて変化する海馬とその周りの状況を、何となく細かく記してみたかったって感じですかね?
とにかく着実に時間が進んでいるという感じを出したかったんです。
このタイトルがまた、書き進むに連れて思った以上に良いアクセントになってくれているので、自分でもかなり気に入っていますw
最後は勿論…あの日付と時間ですよ!!

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

1月22日6時17分

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 1月22日6時17分


 何か小さな子供の様な手に揺り動かされて、オレは眠りの淵からゆっくりと意識を浮上させた。


 前日は結局日付が変わる直前まで残業をし、くたくたに疲れた身体を引き摺るようにして邸に戻って来た。
 何もこんなに働く事は無かったのだ。何故ならもう、無理して働いてまで時間を作る必要が無くなってしまった訳だから…。
 あれだけの言い争いをすれば如何に脳天気な城之内とて、もう二度とオレと関わろうなんて思わないだろう。今頃はきっと、オレに告白した事自体を後悔しているに違いない。そう…あれで終わりだ。オレ達はもう終わってしまったのだ。
 そう考えて…胸がズキリと痛むのに気付いた。
 別れるのが自然だと思っていた。なのに何故こんなにも苦しいのだろう…。

 息が苦しい。喉が熱くて痛い。頭もボーッとして何も考えたくない。

 この苦しさは体調の悪さ故のものだけでは無いのだろう。喉の痛みも腫れているだけのせいでは無い。頭がボーッとするのだって熱が上がっているせいだけでは無い筈だ。
 気を抜くと勝手に零れてくる涙を押し留めて、オレは必死に嗚咽を飲み込んでいた。だから息が苦しかった。嗚咽を飲む喉が痛かった。頭が熱くなってボーッとした。

「城之内…っ」

 オレに対して怒っていた城之内が最後にしてきたあのキス。あれがきっと城之内がしたいと言っていた、恋人としてのキスなのだろう。
 誕生日を待たずして無理矢理押し付けられた恋人のキス。それが持つ意味を、オレはうっすらと理解していた。
 きっとあれは…恋人としての最後のキスだったのだ。城之内はオレを見限った。別れる事を決意して、最後にあのキスを残していったのだ。

「ふっ…ぅ…っ」

 あのキスを思い出して震える唇に指先を当て、オレはまた泣きたくなってしまう。けれど涙と嗚咽を飲み込んで、何とか泣くのを我慢する。泣けないと思った。オレには泣く権利が無いと…そう思った。



 悲しみを忘れようとするように無我夢中で仕事をして真夜中に邸に戻ると、心配そうな顔をしたモクバに出迎えられた。オレを見上げたモクバの表情はみるみる青冷めていき、少し焦ったような声でこう告げてくる。

「兄サマ…。もしかして具合悪いんじゃないの?」

 心底心配そうにしているモクバにゆるやかに首を振って、オレは笑みを浮かべて答えを返した。

「大丈夫だ。お前こそこんな時間まで起きているなんて…。早く寝なさい」
「オレは別に平気だぜぃ。兄サマに心配されるまでもなく、ちゃんと十分に休んでいるから。でも兄サマのその顔色は悪過ぎるよ。熱でもあるんじゃない?」

 そう言ってモクバはオレの手を握ってきて、次の瞬間に「何これ! 熱いよ兄サマ!」と叫んだ。
 慌てたモクバによって早々にリビングに連れて行かれ、メイドが持って来た薬箱から耳で計れるタイプの体温計を取り出してそれで熱を測られる。そして、そこに浮き出た『38.2』の数字に二人揃ってギョッとした。「やっぱり…」とモクバが溜息と共に吐き出して、少し呆れたような目をしてオレを見詰める。

「朝から顔色が悪いと思ってたんだよね。今日はもう早く寝なよ、兄サマ」
「こ…これくらい大丈夫だ」
「だーめ。明日は学校も会社もお休みだね。大体ここで無理しちゃったら、二十五日に城之内の誕生日を祝えなくなっちゃうでしょ?」
「っ………!」

 何気ないモクバの言葉に思わず反応してしまった。オレが一瞬押し黙ったのをモクバは怪訝そうに見詰めていたが、どうやらそれを具合が悪い為の反応だと勘違いしてくれたらしい。手に持った体温計を薬箱にしまいながら、モクバはオレに向かってニッコリと微笑みかけてくれる。

「とにかく今日はもうゆっくり休んで…。体調が悪かったら、仕事もプライベートも上手くいかないんだぜぃ、兄サマ」

 モクバはまだ知らないのだ。オレと城之内が既に別れてしまっている事を。
 だがそれを事細かに説明するのも今の自分にはしんどくて、結局オレは黙って頷くとリビングを後にし、自室へと足を向けたのだった。



 その後は熱も高いという事から仕方無くその日は顔を洗っただけでベッドに突っ伏し、夢も見ない程ぐっすりと眠ってしまった。だがその心地良い眠りを、今誰かが無理矢理破ろうとしている。
 ゆさゆさと揺り動かされる中、浮上する意識に任せて喉をコクリと鳴らしてみる。その途端走った激痛に、自分が未だに体調を崩している事を知った。身体はかなり熱っぽく、関節も痛むような気がする。

 昨日より酷くなっている…。

 頭の片隅でそう思いながらゴロリと寝返りを打った。
 オレを起こそうとしているのが一体誰かは知らないが、今は具合が悪いんだ。もう少し静かに寝かせてくれと願う。

「………?」

 ただそう願った直後、突如違和感に気が付いた。
 ここは間違い無くオレの部屋だ。では誰がオレを起こそうとしているのだ?
 使用人の類で無い事だけは確かだ。この海馬家の使用人は良く仕付けられていて、主人に対してそんな不作法な真似はしない。となるとモクバか…と思い至り、だが弟は決してこんな真似をしない事も思い出した。
 
 何だ…? では一体誰なんだ…?

 全く覚えの無い存在が気になり出した時、背後から聞こえた「ワン!」という鳴き声に漸く安心する。「何だ犬か…」とボンヤリとした意識の中で思い、犬ならば仕方が無いと再び眠りにつこうとして…急激に意識が目覚めた。

 い、犬!?

 具合が悪い為身体が休息を求めているのか、瞼はとても重たい。だが不可思議な現象をこの目でしっかりと確かめなければならないと、オレは眠い目を無理矢理開いて振り返る。そしてそこにいた存在に目を瞠った。

「じ…城之内…っ!?」

 そこにいたのは城之内だった。城之内が満面の笑顔を浮かべ、ハッハッと嬉しそうに息を切らしながらオレの身体に手を掛けている。
 何故こんな時間に城之内がオレの部屋にいるんだと一瞬頭が混乱するが、昨日のいざこざの腹いせにからかいに来たのかと思い至った。巫山戯た真似を…と一瞬腹を立てかけたのだが…。ふと、城之内の頭の上に見慣れない物がくっ付いている事に気付いて首を傾げてしまう。
 何か茶色い毛の付いた大きなものが二つほど、城之内の頭の両脇からダランと垂れていたのだ…。更に視線を下にずらすと、同じような茶色い色をした毛の固まりが城之内の尻の辺りでブンブンと左右に振られている。
 こ…これは…もしかして…いや、もしかしなくても…。

 耳と尻尾なのか!?

 い、いや待て、ちょっと待て。
 耳と尻尾なのは分かったが、どうしてそれが城之内にくっ付いているのかが問題だ。これはあれか? 我が社の新製品の玩具か何かなのだろうか?
 とにかく朝から巫山戯た態度を見せる城之内に苛ついて「一体何のつもりだ…」と凄んでみる。けれど城之内は全く怯む事無く、それどころかオレと目が合うと心底嬉しそうな顔をしながら「わん!」と一声鳴き、ベッドの上に乗り上げてオレに飛びかかってきた。

「なっ…!? 城之内!!」

 半身を起き上がらせていたのだが、飛びかかった城之内によってオレは再びベッドに押し倒されてしまった。何をするつもりだと叫ぼうと思ったその時、押し倒して来た城之内の意外な行動に面食らって思考が止まってしまう。
 何と城之内は、オレの顎や唇をベロベロと舐め回したのだ。
 まるで本物の犬のような行動にオレは完全に混乱して、それでも何とか目の前の身体を引き離そうと奴の頭に手を掛けた。そして垂れ下がった茶色い耳に触れた時、驚いて再び動きを止めてしまう。
 その耳は…温かかった。血が通っているのが感じられる。試しにスリスリと指先で撫でてやると、城之内(と思わしきもの)はクンクンと嬉しそうに鼻を鳴らしながらオレの掌に擦り寄って来た。

「まさか…本物…?」

 自分が触っているものが信じられなくて、試しに千切れんばかりに左右に振られている尻尾を触ってみても、それもやはり紛れも無い本物だった。尾に触れられている城之内は一瞬キョトンとした顔をして自分の背後を確認し、次に視線を戻して首を傾げてオレを見る。だが次の瞬間、また嬉しそうな顔をしてクンクンと鳴きながらオレの身体に擦り寄って来た。

「城…之…内………?」

 どう見ても本物の犬にしか見えない行動に戸惑って、恐る恐るその名を呼んでみる。だが城之内は人間らしい反応を返す事も無く「わん!」と鳴くと、また尻尾を激しく左右に振り出した。
 一体これがどういう事なのか皆目見当も付かず、暫くベッド上で城之内と見詰め合っていると、ふいに自室のドアが開く音がするのに気付いた。そしてパタパタという軽い足音が近付いて来て寝室のドアが開かれる。

「あー! ジョー!! お前また兄サマのベッドに上がり込んで…。シーツが毛だらけになるだろ!!」

 現れたのはモクバだった。
 最愛の我が弟。だが何故か、少しだけ違和感を感じた。その違和感の正体が分からなくて余計に戸惑ってしまう。

「モクバ…?」

 モクバの大声に驚いたのか、城之内はひらりとベッドから飛び降りた。そしてベッド下の毛足の長い絨毯の上でいじけた様に伏せて、上目遣いでモクバの事を見ている。
 そんな城之内とモクバを交互に見ながら、オレは何とか痛む喉から掠れた声で弟の名前を呼んだ。するとそれを聞いたモクバは少し心配そうな顔をしてオレの側までやって来る。

「わ、凄い声。兄サマまだ具合悪いんだね。今日もゆっくり休んでた方がいいよ」
「………」
「そう言えば去年のこの時期もこんな風に風邪をひいていたね。やっぱりあの事が気に掛かっていたからなのかなぁ…」

 モクバが放つ言葉にオレは首を捻った。
 去年? 去年は確か病気らしい病気もせずに、日々仕事と勉学に打ち込んでいた筈なのだが…。モクバは一体何を言っているのだろう。意味が分からない。
 あぁ、そうだ…。意味が分からないと言えば、この城之内の態度も意味が分からない。

「モクバ…」

 オレは意を決してモクバに尋ねてみる事にした。

「これは…何に見える?」

 絨毯の上に伏している城之内を指差してそう尋ねると、モクバは心底不思議そうな顔をしてオレの事を見詰めて来る。そして如何にも「何言ってるの?」と言った感じで口を開いた。

「何って…ゴールデンレトリバーでしょ? 兄サマが連れてきた」
「オレが…? 連れてきた…?」
「そうだよ。去年の冬に城之内が亡くなって、それから暫くして兄サマが自分で連れて来たんじゃんか。城之内にそっくりな犬を見付けたって言ってさ」

 モクバはさも当然のように言い放ったが、オレはモクバのその言葉の中にとんでも無い単語が含まれている事に気付いてしまう。
 去年の…冬…? 城之内が…亡くなって…?

「モ…モクバ…?」

 弟の名を呼んだ声は、自分でもみっともないと思うくらいに震えている。だがオレはどうしても、モクバの言葉を素直に受け止める事が出来なかった。
 今モクバは何を言った? 一体城之内がどうなったと言ったんだ?

「去年とは…いつの事だ…? 去年の今頃は、オレは城之内とは知り合っていなかった筈だが…」
「何を言ってるの兄サマ! いくら城之内が死んだ事が悲しかったからって、アイツの存在を全否定する事無いじゃないか! 恋人だったんでしょう?」
「恋人になったのは去年の秋だ! オレの誕生日の直前の…!!」
「それは一昨年の話だよ! 年が明けて城之内の誕生日間近に兄サマと城之内は喧嘩しちゃって…、仲直りする前に城之内が不慮の事故で死んじゃって…! ちゃんと素直に謝れば良かったって、兄サマ泣いてたじゃんか…!!」
「なっ…? モク…バ…? な…何を言って…」
「それからは本当に気落ちしちゃって、眠りもしなければ食事もしないでどんどん痩せていく兄サマを見て…オレがどれだけ心配したか…! でも暫くして兄サマがジョーを連れて来て、それからは普通に生活出来るようになって、漸く安心してたって言うのに…。どうして今更そんな事言うんだよ!」
「………。知ら…ない」
「え………?」
「オレは…そんな事は…知らないぞ…」
「兄サマ…?」
「オレは…知らない…! そんな事は知らない…!!」
「兄サマどうしたの!? 落ち着いて…!!」
「モクバ…!! オレは知らないんだ…!! 城之内が死んだなんて…そんな事知らないんだ…!! 付き合ったのは去年の秋で…喧嘩したのはつい昨日の事で…っ!! オレは…オレは…!!」
「兄サマしっかりして!!」

 はっきり言って気が狂いそうだった。
 モクバの言う事の何一つ理解する事が出来ない。一体自分の身に何が起きているのかも理解出来ない。ただ腫れた喉の痛みと身体のだるさと…そして絨毯の上からじっと心配そうにオレを見ている城之内の視線だけは強く感じる事が出来る。
 強い強い琥珀色の瞳。どうみても城之内にしか見えないその『犬』は、混乱するオレをただ見守っていた…。

2010年城之内誕生日企画!

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ここは2010年城之内君お誕生日企画のページです!!

城海で海馬の一人称。
お誕生日企画の癖に妙に暗くて痛いお話ですので、喪失・死にネタ等が苦手な方は、十分に注意して御覧になって下さいませ~。
でも祝う気は大いにありますので、最後はきっとハッピーエンドですw

以上にご了承下さった方は、下記の『失われた世界へ…』からどうぞ~!

城之内誕生日企画始動!

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暇な土日に慣れない二礼です、こんばんは。

今まではずっと土曜日にお仕事に行っていたので、何もない土曜日に戸惑っておりますw
や…やる事が無い…っ!!
こんなに時間があるなら小説の一本でも書けばいいと思ったのですが…。

何故か書けない…っ!!

多分生活のリズムが崩れた事によるストレスだとは思いますが、思うような文章が一行も書けずに結局諦めました。
書けない時に無理して書いてもダメだよね、うん。
という訳で、結局意味も無く掃除をしたり凝った料理を作ってみたりして過ごしていました…;
む…無駄だ…www

日曜日になって少し落ち着いて来たので、城之内誕小説などをちょろっと書き足す事が出来ました。
だけど海馬の一人称小説なのに何故か途中から三人称になってて、慌てて修正する始末…(´_ゝ`;
ダメだこりゃ; ちょっと落ち着け私www

何だか全てが空回りだねぇ…。
早く仕事捜そう…w


城之内誕生日企画の『Lost World』に1月21日18時33分をUPしました。
最初は企画ページにぶっ込む予定だったのですが、何だか普通に長くなりそうなので長編小説の方に移動です。
タイトル、そしてオープニングでの城海のやり取りで既に嫌な予感がプンプンしておりますが、お間違えにならないで下さい。

これは城之内君のお誕生日企画です!!

はい! 大丈夫です!!
祝う気バリバリにありますから!!
ただチョット普通の人と祝い方が違うだけだよ(*'-')
いつもの台詞を言わせて貰えば「どうせ二礼の小説」ですので、気楽に御覧下さいませw


以下は拍手のお返事になります~(´―`)


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~(*'-')

日記の感想をどうもありがとです~!
結婚記念日へのコメント、本当にありがとうございました~!
いやいや…お恥ずかしい限りではありますが、そう言って貰えると凄く嬉しいですw
よく考えれば全く血の繋がらない赤の他人が長年連れ添うのって凄い事だと思うんですよね。
ウチなんかはまだ8年ですが、40年とか50年とか一緒に暮らしている老夫婦って、本当に素敵だと思います。
城海もそんな感じでずっと側にいればいいんですけどね~(*´∀`*)
男同士だから入籍は出来ませんけど、自分達の間だけでも『夫婦』としての自覚を持ちつつ、長い刻を共に暮らすのって考えただけでも萌えてしまいますよね!
以前書いた『鎮魂歌』という短編は、そういう未来の可能性を色濃く持っている城海を書いたものでした。
実はあの二人、二礼の中で結構なお気に入りですw
あんな風に至って普通に『夫婦』している城海を、今年はもっと書けたらいいなぁ~って思っています(*'-')

それからお仕事の方にもアドバイスをありがとうございました。
二礼は気持ちの切り替えが少し苦手なのでもう少々時間がかかるかと思いますが、その内別の仕事でも見付けて、新しい生活に馴染んで行こうと思っております。
暫くは予定が全く読めなくて今までのようなキッチリとした更新は出来ないと思いますが、それでも小説を書く事が楽しくて仕方無いのでサイト閉鎖は考えておりません。
まったりでも確実に続けて行こうと思っています(´∀`)
形にしたい萌えは、まだまだ一杯ありますからね~!!

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

1月21日18時33分

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 1月21日18時33分


 その日は朝から喉が痛かった。頭が内側からガンガンと痛んで、背筋がゾクゾクして寒気を感じていた。やっかいな風邪をひいたと思ったが、それでもやり残した作業があったので無理をして会社に行った。


 オレは海馬コーポレーションの社長だ。風邪だ何だと甘えた事を言って業務をサボる訳にはいかない。ただでさえ正月休みで滞った業務が山程残っているのだ。社長のオレが安易に会社を休む事など許される事では無い。
 そう思って気怠い身体を叱咤して業務に当っているのだが、熱が上がって来たのか、頭がボーッとして一向に作業効率は上がらなかった。心なしかPCのモニタに映るデータも霞んで見える。だがここで全ての作業を中途半端にして帰るのだけは嫌だったので、秘書が煎れてくれた熱い珈琲を飲んで最後まで頑張る事にした。
 ソーサーの上に置かれたカップに手を掛けて、芳ばしい香りを放つ珈琲を一口飲み込む。途端に腫れた喉がズキリと痛んで、オレは顔をしかめた。
 そう言えばそうだった。朝から喉が腫れて唾液を飲み込むのも辛かったのだった。
 仕事をするのに夢中ですっかり忘れていたが、喉の痛みは朝よりずっと酷くなっている。一応額に手を置いてみるが、自分の掌の温度も格段に上がっている為にどの程度の熱が出ているのか全く分からない。ただ体調が極限に悪いというのだけは理解出来た。
 窓の外を見ると、日はとっくに沈んで童実野町は夜の帳に包まれている。今朝の天気予報で今夜は冷え込むとは言っていたが、先程から背筋に走る寒気はそのせいだけでは無いだろう。大体空調設備が完璧なこの社長室で寒気を感じる事からしておかしい。

「はぁー………」

 知らず溜息を吐いた。革張りの椅子に深く腰掛けて、背を預け天井を仰ぐ。
 最悪の体調、進まぬ仕事、時間ばかりが過ぎていく現状。
 全てが自分の思うように進まぬ様にオレは苛々していた。だからその直後、無遠慮な足音を巻き散らかして城之内がここにやって来たのは、まさに運が悪かったとしか言いようがない。

「よぉ、海馬! 相変わらず忙しそうだなー。ご苦労さん!」

 相変わらず忙しそう等と思うのならば、邪魔しに来ないで少しは遠慮して大人しくしていればどうだと言ってやりたかったが、腫れた喉が痛んで大声が出せない。せめてもの抗議に力一杯睨んでやっても、城之内はどこ吹く風とばかりに飄々としている。それどころかズカズカと近付いて来ると、机に両手を突いて乗り出すようにしてオレの顔を見詰めて来た。そしてニッカリと笑うとこんな台詞を吐く。

「それでさー。二十五日どうする? 祝ってくれんだろ? オレの誕生日」

 城之内のその言葉を聞いて、オレは何故己がこんなに必死になって仕事をしているのかという、根本的な理由を思い出した。



 オレが城之内と所謂恋人として付き合うようになったのは、去年の十月の頭からだった。
 城之内から最初に告白されたのは、確か二学期が始まってすぐの事だったと思う。
 それまで険悪な仲だった城之内からの突然の愛の告白。初めはからかわれているものだとばっかり思っていたが、どうやら城之内は至極真剣だったらしい。同じ男同士で、しかも目を合わせれば口論しかして来なかったような相手を、本気で好きだと何度も繰り返し伝えて来た。
 その告白に根負けしたのが十月の頭。そしてオレ達は恋人として付き合う事になった。

 恋人同士として初めて迎えたイベントは、そのすぐ後に来たオレの誕生日だった。城之内を海馬邸に招いて一緒に食事をし、そして初めてキスというものをした。
 ただ唇を押し付け合うだけの簡単なキスを一度だけ。それでもオレにとってそれは、余りにも衝撃的なものだった。
 城之内の荒れてかさついた唇は、決して心地良い感触とは言えない。それなのに、唇に直に伝わってくるその体温の熱さに驚いたのだ。じわりと広がるその熱は、唇からオレの脳内に伝わって全ての思考を麻痺させる。

「本当はもっと恋人らしいキスってのがあるんだけど、それはまた今度な。あんまり急いでもアレだから…」

 キスが終わって暫くボーッとしていたオレの頭をポンポンと撫で、城之内は真っ赤な顔でそう呟いた。
 その日は結局、夜遅くに城之内は帰っていった。その後、クリスマスや正月も同じように過ごしたけれど、未だ恋人らしいキスというものをした事が無い。オレとしては他人と唇を押し付け合っているだけで、恋人としてのキスは果たしていると思っているのだが、城之内はどうやらそうでは無いようだった。
 そして正月明け、城之内は唐突にオレに向かってこう言ったのだった。

「オレさ、そろそろお前と恋人らしいキスがしたいんだ。だから今月の二十五日、予定空けといてくれる? オレの誕生日なんだよ」

 自分の誕生日プレゼントに、オレと恋人らしいキスがしたい。それが城之内の望みだった。
 丁度その時期に自分のスケジュールが立て込んでいるのは知っていた。だが、恋人の誕生日を祝うという事がどれ程大事なのかという事も、今のオレには分かっている。だから二つ返事で了承したのだ。少し無理をすれば二十五日を空ける事は不可能では無いだろうと…そう思って。



 こうしてオレはここ何日か、かなり無茶なスケジュールを必死でこなしていたのだ。だが身体はとっくに限界を迎えていたらしく、案の定、すっかり風邪をひいてしまった。
 喉が腫れて燃えるように痛い。頭がガンガンして、背筋に寒気が走る。それなのに邸でゆっくり休む事も出来ず、こうして出社してディスクに向かっている。
 こんなに辛い思いをして必死に仕事をしているのは一体誰の為だ? 誰のせいで身体を壊してまで忙しく仕事をしていると思っているんだ!
 そう考えたら一気に腹が立ってきた。

「二十五日…だと…?」

 痛む喉から掠れた声を振り絞って言い放つ。

「貴様…この状況を見て分からんのか! 何が誕生日だ!! 下らない事を言ってオレの仕事の邪魔をするな!!」
「な、何だよ…。そんなに怒るなよな。ちょっと聞いてみただけじゃんか」
「ちょっとだと…? そのちょっとの時間がオレにとってどれだけ貴重か分かっているのか!!」
「そ…それは分かってるよ。あ、いや、あんまりよく分かってないけど。でもほら、ここ最近ずーっと忙しそうだったからさ…。てっきりオレとの約束を忘れちゃってるんじゃないかって…ちょっと心配で…」

 城之内のその言葉に、またカチンとした。
 約束を忘れているだと…? 忘れて無いからこんなに忙しい思いをしているのではないか!!
 頭は未だにガンガンと痛みを訴えていて、余計にオレを苛立たせる。何故オレがこんな思いをしなくてはならないのだ。どうしてこんな事に振り回されて、身体を休める事も出来ずに必死にならなければならないのか。

 今オレは、全ての事柄を途轍もなく理不尽だと感じていた。

 怒りからなのかそれとも発熱からなのか、上手く判断出来ないがオレの身体が細かく痙攣しだした。自らの身体に両手を回し、それを何とか押し留める。こうしている間にも、体調がどんどん悪くなっていくのが嫌でも分かってしまった。
 だが、鈍い城之内はそれに気付かないらしい。相変わらずキョトンとした顔をし、どこか心配そうな目付きでオレを見ていた。だがその心配はオレの体調にかかるものではなく、約束が反故にされないかどうかという事に関してかかるものだという事が伝わって来る。

「なぁ…海馬。二十五日…空けて貰えるんだよな?」

 案の定、人の気も知らないでそんな事を言い放つ城之内に、ついにオレは自分の中の何かがプッツリと切れたのを認識した。

「ふ…巫山戯るな…貴様!! 二言目にはまたそれか!! この現状を見てまだそんな事を言えるなど、脳天気にも程があるぞ!! いい加減にしろ!!」
「だ…だからそんなに怒るなって! 心配になっただけなんだよ。オレだってちゃんとお前の事を考えているんだから。もし無理そうなら中止にする事だって考えて…」
「オレの事を考えているだと…? ふん…お優しい事だ。だがオレの本質は全く見えていなかったようだな。貴様はオレの恋人失格だ!!」
「なっ…!? ちょ、ちょっと待って! 何でそんな事になるんだよ!!」
「オレが何故この時期にこんなに忙しく働いているのか、その空っぽな頭で少しは考えてみろ!! 貴様がそれに気付くまでは、オレは貴様には会わない! 二十五日までに答えが出なかったら…それまでだ!!」
「それまでって…。え? どういう事? ま…まさか…。二十五日までに答えを出せなかったら、別れるって事なのか!?」
「貴様がそう受け取ったのならそれでいい」
「お前…!! それでいいって、オレは全然良く無いよ!! オレはお前が好きなんだ!! 別れるなんて絶対に嫌だからな!!」
「例え好きだろうと何だろうと、その相手を理解出来ないような恋人ならオレはいらない。邪魔なだけだ。消え失せろ」

 大声で叫んだ為に、喉の痛みが一気に酷くなった。ズキズキと痛む喉に手を当てて、目の前に立つ城之内を冷ややかに見詰める。
 城之内は信じられないような表情をしていた。暫くは琥珀の瞳をユラユラと揺らして、震える唇で何かを言おうとしている。けれどオレが最後に「消え失せろ」と言った瞬間に、その瞳の色がスッと無くなった。焦っていた表情も急激に青冷めて無表情に近い顔になる。
 そんな変化など今まで見た事が無くて、思わず城之内の事を凝視してしまった。
 何故か「不味い…」と思った。自分が言ってはいけない一言を言ってしまった事に気付く。

「海馬…」

 表情を無くした城之内から発せられたオレの名は、酷く冷たい響きを持ってオレの耳に届いた。
 その声の低さで理解した。
 オレは城之内を本気で怒らせてしまったのだという事に…。

「海馬。いくら腹が立ってたとは言え、相手に消えろって言う事はないだろう…。それは絶対言ってはいけない言葉だ」

 どこまでも低く感情を極力抑えた声で、城之内はオレにそう言った。城之内の言う事は理解出来る。確かにこれは失言だった。
 でもだからと言って、オレが今まで感じていた怒りを消化出来たかというと、そういう事でも無い。そうだ…オレはまだ怒っているのだ。オレの事を好きだという癖に、全くオレ自身を理解しようとしない城之内に怒っていた。

「それで? 貴様はオレにどうして欲しいんだ?」

 敢えて感情を載せないように、こちらも冷たくそう言い放つ。

「謝れよ」
「何をだ」
「さっきの言葉をだ」
「断わる」
「なっ…! お前…っ」
「貴様だって散々オレを怒らすような事を言いまくっていたではないか。謝るならそちらが先だ」
「お前がさっきからオレに対して苛ついていたのは分かってたけどな。でもオレは、自分が何を言ってお前をそんなに怒らせたのか、分かっていないんだ」
「ふん…やはりな。だから貴様は凡骨だと言うのだ。貴様がそれに気付くまでは、オレも謝る気はない」
「おい、待てよ! お前の失言は明確だろ!? ちゃんと謝れってば!!」
「嫌だと言っている。大体謝ったところでどうするのだ。こんな状態で四日後の貴様の誕生日を祝えというのか? 無理だろう」
「海…馬…?」
「いっその事、ここで別れてしまった方がいいのでは無いか? そうすればオレも貴様も楽になる」
「何言ってるんだよ…!」
「どうせ初めから合わなかったのだ。こうなる事は必然だっただろう。むしろ自然か? オレ達が付き合っている事の方が不自然だったのだからな」

 言いたくない言葉が次々とオレの口から漏れ出ていく。止めようとしても止まらない。
 城之内の誕生日を祝ってあげたいと思っていたのは本当だった。初めは戸惑っていた恋人としての付き合いも、今はもうすっかり落ち着いて、むしろその関係を至極気に入っていたのも本当だった。
 なのにどうして、こんな事になってしまったのだろう…。
 目の前に立っている城之内が鋭い視線でこちらを睨み付けている事は感じていた。けれど、その視線を真っ向から受ける勇気は無い。俯いて、まるでもう興味が無いとばかりに視線を反らす。

「………」
「………」

 身体が石になってしまったかのように硬くなっていた。少しでも動いたら負けのような気がする。口内に溜る唾液を飲み込む事さえ出来ない。俯いた先の自分の爪先だけを見詰めて、ただ時が経つのをじっと耐えていた。
 ふと、空気が動いたのを感じた。
 オレのディスクの前に突っ立っていた城之内が動いて、机を回り込んでオレの脇に立つ。

「海馬」

 何となく呼ばれた名前に反応して顔を上げると、両頬をがっしりと熱い掌で掴まれてしまった。そして無理矢理顔を持ち上げられると、荒れた唇を押し付けられる。

「………っ!?」

 驚きの余り何かを言おうとして唇を少し開けたその時、何か温かい物がヌルリと口内に入り込んで来たのを感じた。それはヌメヌメと無遠慮にオレの口内で暴れまくり、逃げる舌を無理矢理絡め取られ強く吸われてしまう。

「んっ…! んぅっ…!!」

 どちらのものとも分からない唾液が口内に溢れ、飲みきれなかったそれが口の端から零れ落ちた。それがとても気持ちが悪くて早く指先で拭いたいのに、オレの手は城之内の胸に縋り付き、安いポロシャツをギュウッと握り締める事しか出来ないでいる。上手く息が出来なくて苦しくて、涙目になって必死に助けを訴えても城之内は止めてくれない。それどころか強く首筋を掴まれて顔を動かす事すら出来なかった。
 やがてどれくらい時間が過ぎたのだろう。オレの唇を舌で舐め取りながら城之内が離れていく気配に、オレは漸く城之内の胸元から手を離す事が出来た。そして自由になった手を振り上げて、反射的に目の前にあった顔を思いっきり打ち据えた。

 パンッ!!

 静かな部屋の中に乾いた音が鳴り響く。
 泣きたく無いのに涙が零れた。身体のあちこちがジンジンと痛みを訴えている。今城之内の頬を打った掌と、腫れた喉と、掴まれた首筋と、頭の中心と、息が出来なかった肺と、そして心が…。
 濡れた唇を手の甲で拭った城之内は、キッときつい視線でオレを見据えた。そして先程までの冷たい声のまま、オレに向かってこう言い放つ。

「消えろなんて事…そんなに簡単に言ったら、絶対後から後悔するんだからな。他の誰かじゃない、自分が後悔するんだ。だけどお前がそう言うんだったら、オレはお望み通り消えてやるよ。お前はそれで満足なんだろ…?」

 最後の方は声が震えていた。そして少し泣きそうな顔をしながら、城之内はクルリと踵を返すとそのまま部屋を出て行く。
 残されたオレは何も考える事が出来ず、ただ椅子に凭れて零れる涙を必死に拭っていた。

『消え失せろ』

 まさか本当にその言葉を後悔するなんて…この時はまだ思わなかったのだ。

嬉しくて寂しい日

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そろそろ気持ちを切り替えなければならない二礼です、こんばんは。

本日1月15日は、二礼にとって大事な出来事が二つありました。

一つ目。
恥ずかしながら本日は8回目の結婚記念日でした…w
そうか…もう丸8年経ってしまったのね…(´∀`;
夫婦と言うよりは親友に近い関係なので、普段は自分らが夫と妻であるという事をすっかり忘れてしまっているのですが、この日だけは流石に特別だと感じます…w
この8年間は、相棒にも私にも色んなトラブルが付き纏って大変だった時期が多々ありました。
でも最近は漸く平和になって、静かな生活を送る事が出来ています。
やっぱりアレですよね。
確かに人生には刺激は必要ですが、普段は平和なのが一番ですwww

私と相棒は付き合って数日後に結婚する事を決めて、半年後には本当に入籍してしまったという、今で言うスピード婚でした。
余りに早い決断にお互いの親には「もうちょっとよく考えて…」とか言われていたのですが、未だに全く後悔しておりません(´―`)
何て言うんだろうなぁ…。
言葉では上手く言い表せませんが、自分達が一緒にいる事が何よりも『自然』だと思ったんです。
親元にいる自分達より、もっとずっと自然だと感じていました。
この感覚は未だにあって、どんなに派手な喧嘩をしても離れようとは微塵も思わないんですよね~。
パズルがピッタリ嵌っているっていう感じかな。

このパズルがピッタリ嵌っている自然な相互関係を、城海にもやって欲しいと思います!!
根底が全く同じな癖に何もかもが正反対で、それなのに城之内も海馬もお互いの側にいる事を『自然』だと思っている城海って素敵だと思いませんか?
そういう城海をこれからも一杯書けたらいいな~って思っています(*´∀`*)
平和で幸せが一番だよね!!

で、二つ目。
実は二礼が働いていたコンビニが、本日で閉店となってしまいました…orz
ここ数日ゴタゴタしていたのはこのせいです。
以前勤めていた会社を辞めて、丁度この時期にバイトを始めたので丸5年働いた事になります。
人間関係にも恵まれ、基本的に客商売が好きなので、仕事をしていて本当に楽しいと思えるような職場でした。
けれどオーナー(いつも二礼が一緒に仕事していた店長(♀)のお父さん)が結構な歳な上に身体を壊してしまって、丁度契約満了を迎えたのを期に閉店する事を決めてしまったんですね。
非常に残念な事ですが、仕方有りません。
昨日は最後のお仕事をきっちりとこなして、今日も少しお手伝いに行って来ました。
棚の商品が殆ど無くなってガランとした店内は本当に寂しくて…、ちょっぴり泣いてしまいました…www
あーもう! マジで寂しいよぉ~!!

つー訳でここ数日は溜息吐きつつがっくりと肩を落としていたのですが、ここで落ち込んでいる暇なぞ無くてですね…。
早速次のお仕事を探さないといけない訳ですよ。
今現在何のお仕事にも就いていない状況ですが、仕事探しや面接の為に忙しい時期が続きそうです。
今までの日記で先の予定が全く読めないと言っていたのはこの為でした。
仕事が決まるまではゆっくりも出来ず、上手い具合に新しく仕事が決まったとしても、今までとは違う生活を送らなければならないでしょうね。
もう暫くは『日・火・水・金』のローテーションでいると思いますが、多分これ…変わります。
仕事次第では週4では無く週3とかになっちゃう可能性も出て来ました。
今はまだ何も決まって無いので何とも言えないのですが、状況が決まり次第お知らせしようと思っています。
サイトの方も暫く落ち着かない日が続きますが、どうぞご了承下さいませ~!!

はぁ~~~………;
環境の変化って…辛いな…;
胃が痛いwwwww


以下は拍手のお返事にでございま~す!!(*´д`*)


>ぽん様

初めまして~こんばんは~!!
拍手とコメント、どうもありがとうございました~(´∀`)

いつもウチの小説を読んで下さっているというコメントを見て、凄く嬉しかったです!
本当にありがとうございますv
何か乙女っぽい海馬とかいじける城之内とか色々出てくるサイトですが、生温かく楽しんで頂ければ良いな~と思っておりますw
(やっぱり普通の人と感覚が違うんですかね…w)

『無限の黄昏 幽玄の月』の感想もありがとです~!
今までも自分に自信の無い城之内を書いた事はありましたが、今回の彼は特に酷いので、書いている私自身もちょっと心配です…w
でもまぁ…どうせ二礼の書く小説ですのでw
私は基本的にハッピーエンド主義なので、不幸な結末にだけはならないと申し上げておきます(´―`)
少なくても手元にあるプロットには、そんな風に書いてありますwww
でもプロットはプロットにしか過ぎないので、どういう風にあの城之内君を立て直すかというのは、曖昧にしか書いて無いんですよね…;
さて…アイツどうしてくれよう…w

ドラ○もんの『正直太郎』は思わず調べてしまいましたwww
これ面白いですね!
海馬にそっくりな人形が、海馬に代わって正直な気持ちをベラベラ喋っちゃうのを想像するだけで笑え…萌えますw

それではこれで失礼致しますね。
ではでは~(・∀・)ノシ


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございます(*´д`*)

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をどうもでした~!
やっぱり海馬が覚醒する瞬間っていいですよね~w
今ままでヤキモキさせていた分、気持ちがスッキリしますv

Rosebank様はもう気付いておられると思いますが、二礼は城海の間を取り持つ第三者の存在というシチュエーションが大好きです。
コメントにも書かれていますが、『勇気の証明』の乃亜とか『真実の証明』の杏子とか王様とか、あとは短編等で時々出てくる表君とかですね。
今回はその役目を海馬の前世である『せと』さんが請け負っていますが、確かにこの状況は凄く贅沢なような気がします…。
閉じられた限りある空間の中に、城之内とセト'sの三人しかいませんからね!
でもこれは読み手から見ての贅沢であって、城之内にとっては全然贅沢でも何でもないんですよねぇ…。
だって城之内には『せと』さんが見えていませんからw

ちなみにこの『せと』さんの本来の役目の半分は、海馬に出会って彼を見守る事でした。
ではもう半分は…?
それはまぁ…後々明らかになると思います(´―`)

『日本ブレイク工業社歌 逆再生ver』も聴いて下さったんですね~w
アレ…本当に面白いですよね!
逆再生の空耳なのに、何故か全部通して意味が繋がっているのが凄いと思うんですよwww
しかも「寒い」とか「冷える」とか「しばれる」とか、妙にハッキリ聞こえるのが凄過ぎる!!
数年前に初めてあのフラッシュを見た時、笑い過ぎて吐きそうになった事がありました(´∀`;
今はもう慣れてそこまで酷く笑ったりしませんが、何度見てもやっぱり吹き出しちゃうんですよね…w
寒い季節になると思い出して、何度も見直したりしちゃいますw
あと途中で急に愛を語るなし!!wwwww

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

お~冷えるっ!!

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急激な寒さにガクブルな二礼です、こんばんは。

いや~、何だか一気に寒くなってきましたね~!
冷え性なのでこの寒さは堪えます…;
今年は暖冬だって言ってたのに、気象庁さんの嘘吐き!!
でもそんな気象庁さん、つい先日「暖冬だって言ってましたけど、やっぱり平年並みでした。ていうか、日本海側とかの大雪とか予想外でした。マジでスミマセン…;」って謝ってましたね…w
う~ん、予想外なら仕方無いな。
許してあげよう!!
でも寒い。マジ寒い。寒さパネェ!!
ただでさえゴタゴタしてんのに、寒さで余計に憂鬱になるわ…!!ヽ(`д´)ノ

こんなに寒いと、日本ブレイク工業の逆再生空耳ヴァージョンが頭に浮かびます…w
まだニ/コ/ニ/コ/動/画も無い時代に初めてあのフラッシュを見た時、嘔吐く程笑ったのがいい思い出ですわw
知らない方は是非一度御覧になって下さいw
(でも、当の日本ブレイク工業は倒産しちゃったんだよな…;)

日本ブレイク工業社歌逆再生Ver
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm21201


長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第十五夜をUPしました。
海馬覚醒するの巻。
他の小説とかでも覚醒する海馬を書いていますが、何度書いてもこの瞬間は気分が良いですw
城之内君と違って海馬は常に悩むタイプですからね~。
そういう人が覚醒する瞬間って、今まで悩んでいた分が一気に本当に弾けたようになるのがいいんですよね!
この弾ける瞬間が本当に気持ちいいwww
書いている方も「わはははは!! やってやったぞ~!!」って気分になりますからw
さーて、これで海馬の方の土台は大凡固まりましたね。
次は城之内君の番だ!


あとお知らせです。
15日の更新は、日記だけにしようと思っています。
小説の方はそろそろ城之内誕の方に手が付けられればいいなぁ~。
短期集中型で来週から再来週にかけて城之内誕をやって、それから長編の方に戻ってくる予定でいます。
ただし予定は未定と言いますから…どうなるか分かりません(´∀`;
こんな大事な時期にキッチリした予定が立てられないとは…orz
辛いのぉ…;


以下は拍手のお返事になりまっす!!(>_<)


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をどうもです~(´∀`)
周りの状況がどれだけ辛かろうと、やっぱり自分の気持ちに気付くというのは大事な一歩になりますよね。
気持ちに気付かないと、その一歩すら踏み出せませんから。
千年間贖罪の神域に閉じ込められて来た城之内は、もう自分からは変化を起こす事が出来ません。
完全に固まってしまっているんですね。
それに対して海馬は、贖罪の神域の外から入ってきた新しい風です。
この状況を変える為には、柔軟な行動が出来る海馬が自らやらなければならない訳ですよ。
そして前回、海馬が気付いた城之内に対しての気持ちは、後々海馬が起こすであろう変化への重要な基本要素となる筈です。
そういう意味では、前回と今回の話はとても重要な回だったのでは無いだろうか…と思っています(*'-')

ちなみに今回の話を読めば分かると思いますが、海馬はせとに対して嫉妬はしていますが、邪険にはしていません。
むしろ親密になって、味方に付けちゃっていますからねぇ…w
セト's…侮れません!!(`・ω・´)
でもこの図式だけみると、城之内がハブられているように見えるのは気のせいでしょうか…w
そう思うとちょっと可哀想になってきますwww
あのイジケっぷりには相変わらず苛々しますけどねーw

城之内誕に関しても、無理しないでまったりやろうと思っています(´―`)
ネタは書いていますが、プロットが上手く纏まらない罠…w
さて、どうしようwww

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

第十五夜

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 千年間、私は疑いもしなかった。
 自分が克也を見守る為にここにいるのだという事を…。
 だがしかし、それは間違いであった。
 私はお前に出会って漸く気付く事が出来たのだ。
 ただの思念の固まりである自分が、何故千年もの長い刻をこの贖罪の神域で過ごして来なければならなかったのかという真実の意味に。
 私は間違っていた。そして漸く本当の答えに辿り着く事が出来た。
 そうだ。これからはお前を見守ろう…。
 私の救いの巫女よ…!!

 




 盆の上に載せられた食事を何とか半分ほど胃に収めると、海馬はもういらないとばかりに盆を枕元に置き、そのまま布団の中に潜り込んで目を閉じた。
 本当は食器くらい片付けたかったのだが、身体は未だ重く気怠さが抜けない。今はとにかくゆっくり眠りたいと、暖かな布団の中でうつらうつらとしていた。眠りに落ちる寸前にカタンと木製の食器が何かにぶつかった音がしたのに気付いて薄目を開けると、枕元に置いてあった筈の盆がどこかに消えているのに気付く。あぁ『家』が片付けてくれたのだな…と眠気で重くなってきた意識の中でそう思い、海馬は特に意識する事も無く再び瞳を閉じて眠りにつく事にした。
 こういう不思議な現象にもすっかり慣れてしまった。この贖罪の神域に来てもうすぐ一月になるが、まるでもう何年もここに住んでいるような感じがする。
 僅か一月足らず。それでも自分は大きく変わってしまったと思う。
 マヨイガの世話になる事も、季節感の全く無い不思議な庭も、贖罪の神域特有の濁った空の色も、贄の巫女として城之内と共に過ごす事も、もうすっかり慣れてしまった。そして何より一番に、城之内に対する気持ちが変わってしまった。
 こんな気持ちに気付きたく無かった…と海馬は思う。けれど、気付いてしまったものはどうしようも無いし、気持ちを後戻りさせる事も出来やしない。それに何より海馬自身が、城之内を好きになった事を後悔していなかったのだ。
 相手が決して自分自身を見てくれない辛い恋だと分かっているというのに…。
 それなのにどうしても後悔する事が出来なかったのだ。


 憎くて愛しい城之内の姿を脳裏に思い描きながら、引き摺られるようにして海馬は眠りへと落ちていく。身も心も疲れ切った細い体躯は、結局その後、半日以上も意識を閉ざしたままだった。


 深い深い眠りから海馬が目覚めた時、部屋の中はまだ暗かった。身体が覚えている感覚で、常日頃起きている時間よりもまだずっと早いとは感じていたが、妙にスッキリと目覚めてしまった為に海馬はそのまま布団から身を起こす事にした。
 ずっと眠っていたせいだろう。昨日はあんなに重くて怠かった身体が、今は嘘みたいに軽く感じる。身体の調子も良いし、モヤモヤとハッキリしなかった脳裏も今は霧が晴れたかのようにクリアになっていた。
 海馬はゆるりと立ち上がるとそのまま部屋を出て行き、浴室へと向かう。途中、居間の壁掛け時計で時間を確認すると、いつも起きる時間より一時間以上も早い時間帯だった。
 浴室に辿り着き、いつものように冷たい水を浴びて身体を清める。身体の中心が熱くなるのを感じ取ると、浴室から出て身体の水気を拭いた。そしてそのまま部屋へと戻り、用意されてあった巫女としての衣装に着替える。
 白い着物に腕を通し、赤い袴を履いて帯を締めた。そして枕元に置きっぱなしになっていた青い組紐の鈴を手に取り、暫く逡巡した後、それをそのまま腰紐に結わえる事にする。チリン…という軽やかな音が、まだ暗い室内に美しく響いた。
 その音に至極満足して、海馬は朝の祈りをする為に神社の本殿へと向かう事にする。まだ暗い道に小さな銀の鈴のチリチリという音が、海馬が歩く度に辺りに響いて消えた。

「気持ちを…切り替えないとな…」

 鈴の音を聞きながら歩いていた海馬は、誰にともなくそう呟いた。
 昨日からの悩みは決して消え去った訳では無い。むしろ海馬の心の中に深く根を張っている。けれどその悩みに捕われ過ぎて、雁字搦めになって身動き出来なくなるのは、何よりも海馬自身が嫌う事だった。
 行動有りきが海馬の理念だった。自分の信じる道を突き進むのが海馬の信条だった。
 だから歩みを止めない事にしたのだ。
 色々と考えなくてはならない事がまだまだ沢山あるのだが、とりあえずは目先の事から片付けようと、海馬は気持ちを切り替える。そしていつものように本殿まで辿り着き、そのまま中に入ろうとしたのだが、ふと人の気配を感じてその動きを止めてしまった。

「っ………」

 別に恐れる事は何も無い。いつものように本殿に入ってしまえばいい事なのだ。
 けれど何故だかそれが出来なかった。本殿の中から覇気というか威圧感というか、近寄りがたい空気が満ちているのがハッキリと感じ取れたからだ。肌がピリピリする感覚に、海馬は身体を硬くする。
 無意識に腰に付けていた鈴を音が鳴らないように握りしめた。そしてなるべく気配を消して、そっと本殿の扉を開いて隙間から中を覗き見てみる。
 本殿の中は灯りが付いていて、中の様子がハッキリと見える。あちこちに視線を走らせ、そしてある一点で視点を留めた。
 祭壇の手前。黒炎刀とせとの頭蓋骨が祀られている前で、城之内が立ち尽くしていた。そして置かれてあったせとの頭蓋骨を大事そうに胸に抱きながら、俯いて肩を震わせている。

「ごめ…ん…。ごめんな…っ」

 まるで泣いているかのような震える声が、海馬の耳に届いて来た。

「オレ…、お前を食った…っ。お前にだけはこんな酷い事をしたくなかったっていうのに…。でも…食っちまった…っ。どうしても…飢餓に勝てなかった。勝つ事が出来なかった…っ。情けないよな…本当に…」

 手に持った頭蓋骨に優しく手を這わしている。自分の顔の辺りまで持ち上げて、時折黄ばんだ骨のそこかしこに唇を押し付けていた。

「お前にあんな顔させて…っ。あんな辛そうな…苦しそうな…顔を…。泣いて…叫んで…。あぁ…どんなにか痛くて苦しかっただろうに…っ。せと…っ!!」

 城之内はせとの頭蓋骨を抱いたまま、その場にガクリと崩れ落ちた。
 灯りが反射して、その様子は覗き見ている海馬にもよく見える。城之内の頬には涙が一筋伝っていた。

「アイツと…、お前を犯したあの食人鬼と同じ事なんてしたくなかったのに…っ。でもコレで、オレもアイツと全く同じになっちまった。お前を犯した。お前を犯して…食っちまった…っ! オレは同じだ…っ! アイツと同じだ…っ!!」

 チリ――――――ン………。

 鈴の音色と共に、海馬の脳裏に千年前の映像が流れ込んでくる。
 城之内の目の前で食人鬼に犯されていたせと。それを目の当たりにしてしまった城之内。
 まるでこの世の終わりを見たかのような顔をしていた。
 驚愕、悲しみ、苦しみ、怒り、恐怖、絶望…。そんな負の感情がごちゃ混ぜになったような、酷い顔色だった。いつも明るかった琥珀の瞳からは光が消え、溢れ出る負の感情以外何も読み取る事が出来ない。
 やがて城之内は、手に持っていた黒炎刀を振り上げた。せとを犯していた食人鬼は有無を言わさず切り捨てられ、支えを失ったせとは地面に投げ出された。
 城之内の異様な様子に慌ててその名を叫ぶも、彼の耳には届かず…。地面に投げ出された恋人に見向きもせず、彼はゆっくりと村へ向かって歩いて行った。右手には血に濡れた黒炎刀を携えて。
 黒炎刀の柄に付けられた赤い組紐の鈴が、城之内が歩く度にチリリチリリと鳴っていた。負のオーラに包まれた城之内と対比するように、軽やかで涼やかな音を鳴らしながら、それは少しずつ遠ざかっていく。
 数刻後には、その黒炎刀が最愛の恋人の命を奪う事になると…この時の城之内は果たして分かっていたのだろうか…?

 そうだ…痛いとは思わなかった。
 ただ熱いと…。首筋に何か熱い物が触れたと…あの時はそう思った。

 思わず自分の首に手をやり、海馬は居たたまれない気持ちになる。
 城之内の気持ちが痛い程分かるからこそ、これ以上の同一視は我慢がならなかった。

「城之内!!」

 扉を大きく開け放って、叫ぶようにその名を呼ぶ。
 ビクリと肩を揺らして心底驚いたように振り向く城之内に、海馬はズカズカと近付いて行った。そして城之内が抱えている頭蓋骨を指差し、それを睨み付けながらはっきりとした声で言い放つ。

「何を混乱しているのか知らないが、オレはソイツでは無い! どんなにそっくりでもオレはせとでは無いのだ!! 一緒にするのは止めろ!!」
「か…海馬…?」
「お前が食ったのはこのオレだ! せとでは無い! この海馬瀬人だ!! 貴様は自分の恋人を食った訳では無いんだ!! しっかりしろ!!」

 ズキリ…と、自分が発した言葉に海馬の胸が酷く痛んだ。だがその痛みを無理矢理押さえ込んで、海馬は尚も言い募る。

「貴様の恋人はもう死んでいる! 千年前に自分で殺した事を忘れたのか!? だがオレは生きている…っ! オレは生きているんだ…城之内!!」

 怒りにまかせて城之内の胸ぐらを掴み、グイッと力任せに引き寄せた。そして近付いた顔に自らも同じように顔を近付け…唇を重ねた。
 体温を失った冷たい唇に熱を押し付けるだけの接吻。色気も何も無い、目を見開いたままの口付け。
 やがて城之内が驚きに目を瞠ったのを確認して、海馬は唐突にその身体から手を離した。支えを失った城之内の身体がドスンと本殿の床に尻餅を付くのを見て、海馬は身を起こしながら「ふん」と小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。

「………っ」

 城之内は本気で驚いたらしく、目を大きく見開いたまま驚愕の表情で海馬の事を見詰めている。ポカンと開いた口からは、何の言葉も出て来なかった。
 その姿を暫く黙って見詰めて、そして海馬は踵を返すとその場から出て行った。


 一度も振り返る事無くズカズカと真っ直ぐ歩き、鳥居の脇に生えている桜の大木まで来て漸く足を止める。未だ暗い早朝の空気の中に、美しいピンク色の花を満開に咲かせているのを見上げて、海馬はその幹に寄りかかった。そして一度だけ、力任せに拳を幹に叩き付ける。

 チリ――――――ン………。

 殴られた衝撃により、桜の木はハラリハラリとピンク色の花びらを幾枚も雪のように地面に落とした。
 未だ真冬のこの季節。不自然に満開になっている桜の花より、雪の方がずっと自然だと感じる。

『桜に八つ当たりをするな…』

 突然背後から掛けられた声に、海馬は驚く事は無かった。いつもの鈴の音が聞こえていたから、彼が来ていたのは知っていたのである。
 殴った幹を見詰めていた身体を返して、海馬は桜の幹に背を預けるように寄り掛かった。そして目の前に立っているせとにふっ…と笑ってみせる。

「おい…。お前に一つ聞きたい事がある」

 せとの瞳を真っ直ぐに見返しそう尋ねると、せとはコクリと一つ頷いて『何なりと』と言い返した。

「今ここにいるお前は、ただの思念の固まりだと…そう言ったな?」
『あぁ…』
「せと本人の魂は、もう疾うに転生しているとも…」
『その通りだ』
「ならば問う。そのせとの転生体とは…このオレか?」

 海馬の問いにせとは答えなかった。静かに瞼を閉じて、桜の花びらが舞う冬の風に吹かれている。
 ただその沈黙が…海馬の疑問を肯定していた。

「そうか…やはりな…」

 同じように桜の花びらが舞う風に身を任せながら、海馬は俯いた。
 何という皮肉だろうか。城之内が愛した魂は今この身の内に内包しているというのに、彼が求めているのはあくまで千年前のせとなのだ。
 とっくに死んでしまっている過去の人物を捜し求め、今を生きている転生体には何の興味も示さない。城之内にとっては、自分など『せと』の身代わりに過ぎないというに…。
 それなのに、こんなにも愛してしまっている。魂が城之内に惹かれてしまうのを止められない。

「馬鹿みたいだ…」

 足元に積もる桜の花びらを眺めながら、ポツリとそう呟いた。余りの虚しさに涙すら出て来ない。
 だがふと…視線の先に白い足が見えて、海馬は顔を上げた。いつの間にかせとが近付いて来ていて、目の前に立っている。そしてニコリと優しく微笑むと、海馬に向かって口を開いた。

『お前まで…過去に捕われるな』

 せとの言葉に海馬は何度か瞬きをして、その顔をじっと見詰めた。

『先程自分でも言っていただろう? 私はとっくの昔に死んでいて、お前は生きているのだ。生きている人間が死んだ人間に負けそうになってどうするのだ…』
「だ…だが…っ!」
『何を恐れている? 確かに魂の働きかけはあったのだろうが、克也を好きになったのは紛れも無いお前自身の心に寄るものだ。私の心に流された訳では無い』
「………けれど…」
『心配するな。お前はお前の信じた道を行けば良い。未来を信じるのだろう? お前にとって、過去は全く必要の無いものの筈だ』
「確かに…。今まではそう思って来たのだが…」
『だったらそれを信じ続ければ良い。何を戸惑う事がある? 未来を掴めるのは生きている人間だけなのだ。死んだ私には決して出来ない。それが出来るのは、生きているお前だけなのだ』
「せと………」
『振り返るな。過去を払拭しろ。そして自分を信じなさい。お前が未来を信じている限り…願いは必ず叶う』

 そう言って、せとは優しげに微笑んだまま海馬に向かって手を伸ばして来た。思念の固まりであるせとの手が海馬に直接触れる事は叶わなかったが、頭や頬を撫でるような動きに海馬は何故かホッと安心する。
 海馬が落ち着いたのを見て、せとも表情を緩めてクスリと笑った。そして何かに気付いたように眼を細める。

『そうか…漸く分かった。私が千年もの長い刻をこの贖罪の神域で過ごして来たのは…お前に出会う為だったのだな。克也を見守る為では無い、お前を見守る為に私はここにいたのだ。その事を漸く…理解した』

 自らの導き出した答えに満足したように、せとはそっと海馬を抱き締めた。
 思念体のせとの身体を直接感じる事は出来なかったが、海馬は何故か優しい熱をそこに感じたような気がする。

「そうだな…。ありがとう…。お前のお陰でオレも漸く気付く事が出来た。もう迷う事はしない。絶対に」

 海馬の言葉にせとも納得したように頷いた。
 桜の花びらに包まれながら、海馬は何があっても城之内を愛し続ける決心をしていたのだった。

お祝いしたいなぁ...(*´∀`*)

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バタバタを通り越して遠い目になってきた二礼です、こんばんは。

いい感じで追い詰められてきました…w
ヤバイ。非常にヤバイ状況だ。
だがここが正念場っつーか、踏ん張り処なのも分かっているので、負けずに頑張りたいです!

そう言えば気が付けば1月ももう半ば。
そろそろ城之内誕の用意もしなければなりませんね~。
一応ネタを温めてはいるのですが、何て言うかこれホントに祝う気がある? っていう内容になっちゃってます…w
いや、祝う気あるよ!! ちゃんとある!!
城之内大好きだもん!!
でも主人公は多分社長…w
うん、無理せず頑張って書きます!


長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第十四夜をUPしました。
城之内君のいじけっぷりが酷くて、書いてて苛々してきました…w
書いてんのは自分だっていうのにな!
でもここまで城之内君を貶めた事無かったので、ちょっと楽しくなってきたのも事実ですw
『Rising sun』でも壊れた城之内君を書くのが凄く楽しかったのですが、今回のはまた違った壊れ方をしていますからねぇ…。
この捻くれ城之内君に対して、どうやって海馬を立ち向かわせるのかってのが、これからの見せ場になると思います。
よーし! 頑張って書くぞ~!!

でも、その前に城之内誕だ…w


以下は拍手のお返事でございま~す!


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました(´∀`)

『素質Ⅸ』の後編と日記の感想をどうもありがとです!
後編の濃ゆいエロを楽しんで貰えたようで良かったですw
クリスマスネタと姫はじめを一緒にやってやろうと思ったら、自分でも考えていた以上に濃くなってしまって、書き終わった時に少々動揺してしましました…w
これだけ濃ゆい内容だと見直しも疲れる…というか、読み返すだけでもお腹一杯になっちゃいますからね(´∀`;
でも、『無限の黄昏 幽玄の月』の方ではまだ暫くエロのターンが無さそうなので、気合いを入れて頑張ってみました!
よし。これで暫くエロを書かなくても欲求不満にならずに済むぞ~!!www

Rosebank様の「FFシリーズを~」というコメントを見て思ったのですが、素質もⅨまで書いちゃったんだなぁ~と改めて自分の変態さ加減に呆れました…w
そろそろネタが無くなると言っている割には、意外と続いたものですw
FFシリーズは今13まで出ていて、FF11に続いてオンラインゲームとして出る事が決まっている14も含めますと、あと5作は書かないといけないっつー事ですね。
………。
……。
…。
ご、5作っ!?
そ…そんなにネタがあるだろうのだろうか…?
アレかな。そろそろ鞭とか縛りとかやらないとダメなんだろうか…(´_ゝ`;
とりあえず今は『無限の黄昏 幽玄の月』と城之内誕の事で頭が一杯なので、素質の新作に関しましては気長に待っていて下さい…w

日記の方の感想もどうもでした~。
引っ越しでは無いのですが、自分の意図しない環境の変化ってやっぱ嫌ですよね~!(>_<)
本格的に落ち着くまでは結構な時間が掛かりそうなので、今からちょっと憂鬱です…w

あ、あと誤字の指摘もありがとうございます。
早速直しておきました~。

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

第十四夜

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 それは…魂の選択。
 確かに抗いきれぬ何かがあったに違いない。
 けれど、それだけでは無い筈だ。
 自分を…信じておくれ。
 これから先の未来は、お前がその手で作り出すんだ。
 お前まで過去に捕われるな。
 そして克也を未来に導いてくれ。
 過去に捕われてそこから抜け出せぬのは…私だけで十分だ。

 




 城之内が海馬の食事を取りに行ってから数刻後。盆に食事を載せて戻って来た城之内は、海馬の泣き顔に一瞬驚いた表情をした。けれど特に何も言わずに、部屋に入ると枕元に盆を置いてニコリと微笑む。

「ほら、腹減っただろ? これ食べて今日はゆっくり寝てな。起きられるか? 手伝ってやるから…」

 だるそうに身体を動かす海馬に気付いて、城之内が手を伸ばして来た。冷たい腕を背に回して、海馬の身体を起こしてくれる。そしてその背を支えたまま、器用に片手で盆を持ち上げて海馬の膝の上に食事を置いた。
 ニコニコと微笑みながら海馬を見詰めている城之内に、海馬は軽く溜息を吐く。けれどそのままでいる訳にもいかず、重い腕を持ち上げて塗り箸を手に取った。そして小鉢に盛りつけられた蕗の煮付けを掬い取ると、小さな口を開けて銜え込む。あっさりとした味付けとサリサリとした食感が好みだと思ったが、余り食欲が無い為、そこまで美味しいとは感じられない。
 盆の上には蕗の他にも、竹の子と若布の若竹煮と、根菜と干し椎茸の汁物、白菜の浅漬け等が載っており、その他に不格好に切り分けられた瑞々しい桃が小鉢に入っていた。上品に盛りつけられている他の料理とは違うデザートに、海馬は桃の小鉢を指差しながら城之内に視線を向ける。

「これは…?」

 一言だけで尋ねると、皆まで言わなくても城之内は海馬の意図に気付いたようだった。眉根を寄せて苦笑しながら、片手で自分の後ろ頭をガシガシと掻く。そして少し照れ臭そうに笑いながら口を開いた。

「それは…オレが切ったんだ。庭で一番熟してた奴をもぎ取って来てな。切るのは余り上手くないけど、味は保証するぜ。まぁ、この家が用意している果実だから、美味いのは当たり前なんだけど」

 ニコニコと笑いながら海馬にそう告げる城之内は、一見するととても人懐こそうに見える。けれど、海馬には隠された裏の表情が見えていた。
 自分の為に犠牲になってくれた贄の巫女に配慮し、少しでも嫌われないようにご機嫌伺いをしているのだ。その証拠に背を支えている腕が、ほんの少しだけ震えている。
 コイツは一体、今まで何人の巫女に対して同じ事を繰り返して来たのだろう…と、海馬は少し悲しくそう思った。

「今までの贄の巫女にも、このような事を?」

 なるべく感情を載せないように淡々とそう聞くと、案の定、城之内はますます困った顔をしてしまう。けれど、その場でハッキリと頷いて答えてくれた。

「うん…まぁ…。身体がだるい時って甘い物が美味しいらしいからさ。何十代か前の贄の巫女が新月明けの朝に果物を欲しがって、オレが持って行ってやった事があったんだ。その時に甘い物を食べると落ち着くって話を聞いて、それ以来他の奴にも持って行くようにしてた。中には甘い物が嫌いだったり、余計な事をするなって怒る奴とかもいたけどな」

 最後の一言に海馬は思わず眉を潜めてしまう。けれど城之内はそれに気付いているのか気付かないのか、ただ「へへへ…」と笑っているだけだった。
 その笑顔を間近で見て、海馬は何だか自分が苛ついている事に気が付いた。
 城之内の笑みは偽物の悲しい笑み。だが、それと同時に彼自身に対してとても卑屈な笑みだった。

 自分は人間では無いから。自分は食人鬼だから。何より自分は大罪人だから。
 そんな自分が本当の意味で好かれる訳はない。
 だったら少しでも嫌われないように…嫌がられないように…。常に笑っていればいい。

 そういう城之内の心が、その笑みには滲み出ている。
 これは元々の性格や好みがあるのだろうが、海馬はそういった卑屈な態度を取られる事が大嫌いだった。何故ならそれは自分のマイナス面に目を背け、真っ向から立ち向かっていない事と同意義だったからである。
 海馬が城之内に心底同情したのは、彼が千年もの長い刻を、自分が犯した罪や幽閉されているという逆境に対して真っ正面から闘っていると信じていたからだ。贄の巫女に媚びへつらうような笑みを浮かべる奴だとは、微塵も思っていなかった。
 確かに城之内を取り巻く状況は過酷だと思うし、それによって彼がひねくれてしまうのも仕方が無いとは思う。現に、多少自信を喪失してしまったが、自分は未だに城之内の事を救いたいと思っているし、彼の力になりたいと願っている。
 けれど当の本人がこれでは、海馬がどれだけ強く願ってもその想いは届かないのだ。
 城之内自身が変わらなければ全く意味が無いのである。

 だけれども、一体どうすればいいと言うのだろう。

 城之内の卑屈な笑みを横目で見ながら、海馬は小さく嘆息した。
 千年という時間はとてつもなく長い。その長い刻の中ですっかり凝り固まってしまった城之内の精神を溶かすのは、決して容易な事ではないだろう。何故ならば、今城之内が信じている価値観を根底から引っ繰り返さなければならないからだ。

 そう…。
 自分には何の価値も無いと思っているその心から、変えていかなければならない。

 それがどれだけ大変かという事も、海馬にはよく分かっていた。だから心が重くなった。自分が酷く不甲斐なく感じた。
 それなのに、そんな海馬の心に全く気付かずに、城之内はニコニコと卑屈な笑みを浮かべ続ける。だから余計に苛々して気分が悪くなっていったのだ。

「あ…。えっと…海馬。これを…」

 海馬の機嫌が急激に悪くなっていったのに、流石の城之内も気付いたようだった。慌てて取り繕うように、城之内は自分の懐に手を忍ばせる。そして何かを掴んで、海馬の目の前で掌を広げてみせた。
 そこにあったのは、青い組紐の付いた小さな銀の鈴。
 無骨な掌の上に転がる鈴を見て、海馬の脳裏に既視感が浮かんだ。

『これを…お前に』

 見届けの巫女からこの鈴を貰ったあの時に、脳裏に浮かんだ映像が思い出される。

『持っていて欲しいんだ。オレ達は男同士だから、どうせ結婚は出来ない。けれどオレが永遠にお前を愛する証として…これをお前にあげよう』
『もう片方はオレが持っている。これでオレ達は対の鈴だ』

 明るい笑顔。心から幸せそうに笑って、城之内はそれをせとに手渡していた。
 今城之内が浮かべているような卑屈な笑みでは無い。幸せを信じ、自分の価値を知っていた頃の、心からの本当の笑みだった。

 あの時の、城之内が浮かべていたあの明るい笑顔は一体どこに消えてしまったというのだろう。城之内自身は今ここに間違い無く存在しているというのに。

 海馬は、城之内のあの笑顔が欲しいと思った。
 それもせとに向けられた千年前の笑顔では無く、まさに今ここで、自分に対して微笑んで欲しいと思った。

 体温を失った冷たい掌から小さな鈴を受け取る。組紐を摘んで少し揺らすと、それはチリン…という軽やかな音を響かせた。
 辺りに響き渡る透き通った音色に、沈んだ心が癒されていくのを海馬は感じた。それまで感じていたモヤモヤする気持ちを払拭するかのように、海馬はまた鈴を振る。するとまたチリンチリンと綺麗な音が鳴り響いた。

「この鈴、どこかに落としてしまっていたのか」
「いや、違う。お前をここに連れて来て身体を綺麗にする時に、オレが腕から外しておいたんだ。守り袋は汚れてたから捨てちまったけどな」
「身体を綺麗に…? そういえば着替えはお前がしてくれたのか?」
「あぁ、うん。だって血まみれのままじゃ気持ち悪いだろ? だからいつもこうやって家に連れて帰って来て、身体を拭いてから着替えさせるんだ。迷惑…だったか?」
「いや、助かった。ありがとう」
「良かった。迷惑だって怒る奴もいるからさ」

 そう言って城之内はまた卑屈な笑みを浮かべるが、鈴の音色のお陰で先程よりは腹が立たない。
 チリリチリリとまるで小鳥の囀りのような音に、海馬は知らず笑みを浮かべていた。

「なぁ…海馬」

 ふと…。暫く鈴を揺らして漏れ出る音を楽しんでいた海馬に、側で見ていた城之内が遠慮がちに呼びかけてきた。その声に城之内の方を向くと、彼は至極真剣な瞳で海馬の顔を見詰めている。
 そして海馬が指先で摘んでいる銀の鈴を指差して、少し震える声で問い掛けた。

「その鈴…。どこで手に入れたんだ…?」

 城之内のその一言で、鈴の音色で穏やかになった筈の自分の心がスッと冷めていくのを海馬は感じていた。まるで暖かな春の日差しの中で微睡んでいたのに、突然氷の張った池に突き落とされたような気分だった。
 海馬の顔色が変わった事に城之内は気付いていない。ただじっと、海馬が答えを返すのを待っていた。

「それを聞いて…どうするつもりだ」

 発せられた自分の声が随分と硬い事に海馬は気付く。
 唇をキュッと強く噛み締め、青い組紐の鈴を掌の中にギュッと握り込んだ。まるで城之内の視線から隠すようだ…と、自分でも少しおかしく感じる。

「別にどうもしないけど…。ただちょっと気になって…」
「これはオレがこちらに来る時に、見届けの巫女様から頂いたものだ」
「うん、それは分かるよ。でもオレが聞きたいのはそういう事じゃなくて」
「ではどういう事だ?」
「つまりお前が…じゃなくて、静香がどうやってそれを手に入れたのかって事が気になったんだ。アイツ何か言ってなかった?」

 珍しく余裕の無い表情で必死にそう問い掛けて来る城之内に対して、海馬は自分がどんどん冷静になっていくのを感じていた。
 ここで見届けの巫女から聞いた話を城之内に伝えるのは簡単だ。だが海馬は、それを素直に伝える気にはならなかった。
 城之内は…せとを見ている。自分と、そしてこの鈴を通して、千年前に自分が殺してしまった最愛の恋人を見ている。捜している。

 チリ――――――ン………。

 そうだ…。忘れていた。
 この男は、千年経っても未だせとの存在に捕われたままだった。
 それが酷く…憎いと思う。

 何も言わずただじっと城之内を睨み付ける海馬に、やがて城之内は諦めた様に深く息を吐き出す。そしてまた困ったような笑みを浮かべながら、「ごめんごめん」と明るく謝罪の言葉を口にした。

「何も聞いてないんならいいんだ。悪かったな、変な事聞いて…」
「去れ…」
「え? 何か言った?」
「一人でゆっくり食事をしたいのだ。もうあっちに行ってくれ」

 金色の髪をガシガシと掻きながらそう謝る城之内に、海馬は横目で睨み付けながら冷たい声でそう伝えた。そんな海馬の様相に城之内は気落ちしたように笑みを収める。「しまった…」という城之内の内心の声が海馬にも伝わって来るようだった。
 それでも何も言わずに睨み続けていると、城之内がまたヘラッと笑って立ち上がった。ただし、先程までの笑みよりもずっと弱々しいものだったが…。

「ご、ごめん。オレ邪魔だったよな。オレなんかが側にいたら安心出来ないし、ゆっくり休めもしないもんな。悪かった。もう行くから…」

 そう言って大股で部屋を出て行き、襖を開けて廊下に出る。そして「ごめんな。本当にごめんな」と何度も謝りつつ、ゆっくりと襖を閉めた。直後に少し急ぎ足で廊下を歩いて行く足音が聞こえ、やがて何も聞こえなくなった。

「………。は…ぁ………」

 静かになった部屋の中で、海馬は深く嘆息した。そして掌をそっと開いて、青い組紐の鈴を眺めてみる。
 掌で転がす度にチリチリと軽やかな音を出す鈴と、膝の上の盆に置いてある不格好に切られた桃を交互に見詰めた。
 本当は、一体誰にこの桃を食べさせたかったのかと…そんな事を思ってしまう。

「お前もだ、せと」

 振り返らず、鈴と桃を見詰めたまま海馬はそう口にした。
 いつの間にか背後で海馬と城之内の様子を見守っていたせとに、海馬は淡々と語りかける。

「一人でゆっくり食事がしたい…と言っただろう? お前だって例外では無い。どこかに行っててくれ」

 海馬の言葉にせとは悲しい表情を浮かべ、だが深く一礼をし、その姿をどこかに隠してしまった。
 完全に静かになった部屋の中で、海馬は酷い自己嫌悪に陥ってしまう。
 分かっていたのだ。これがただの八つ当たりだという事を。
 自分がせとに対してただ嫉妬しているのだという事は、嫌っていう程理解していた。

「何故だ…っ」

 気付いてしまった。気付いてはならない事に気付いてしまった。

「どうして…?」

 同一視される事があんなにも苦しかった。
 自分を通してせとを見詰めている城之内が憎かった。

「救わなければならないのに…っ!」

 余計な感情はいらないのに。自分の使命を果たさなければならないというのに。
 それなのに…こんなにも…。

「城之内…っ!!」

 あの鬼が憎くて…、そして何より愛しいと感じるなんて…!!



 魂が震える…。
 海馬はいつの間にか城之内に恋をしている自分に…気が付いてしまっていた。

何だかバタバタしている二礼です、こんばんは。

前回『ガンバの冒険』の日記を書きましたところ、早速散たんから『ノロイ様ファンサイト』を教えて貰いました…w
ちょw 流石同年代www
話題に付いて来てくれるのは嬉しいんだけど、ファンサイトって…どういう事よw
改めてそのファンサイトを見ていて思ったのですが、やっぱりアレは子供向けアニメじゃないと思います…(´∀`;

だって静止画で見ても怖いんだよ!?

しかも、もう大人になっているっていうのに…w
ついでに一緒にドラゴンボールの話もしていたら、ノロイ様がフリーザにしか思えなくなりました…w
大/塚/周/夫が中/尾/隆/聖になりやがる…www


えー、前回の日記にも書きましたが、暫くバタバタが続きそうです。
実は二礼は、身の回りの大きな環境の変化というものが余り得意ではありません。
自分から選んだ変化なら良いんですが、自分の意図しない変化(特に「変わって欲しく無い」と思っているのに変化せざるを得ないもの)というのが大の苦手です。
今ゴタゴタしているのは、後者の方なんですよ。
なので余計にあたふたして、ウンウン唸ってたりしています…(´_ゝ`;
状況が落ち着くまでは小説が更新出来ず日記だけになってしまったりとか、日記すらも突然休んでしまったりとか、そういうのが色々あると思いますが、どうぞご了承下さいませ。


『素質シリーズ』に素質Ⅸの後編をUPしました。
クリスマスエロネタ&姫はじめネタを一つに纏めたら、とんでも無い事になりました;
本当はもうちょっとあっさり終わる筈だったのですが、書き始めたら止まらなくてですね…w
前編の注意書きに『他のに比べたらきっと普通プレイ』とか書いたんですけど、何だかどこも普通じゃなくなりました…www
ちなみに「もっと奥まで入れて」という台詞も、件の占いに書いてあったものでした。
まさに素質の社長で一本書けと言わんばかりのこの台詞…!!
何度思い出してもニヤニヤ笑いが止まりませんw
あぁ、そうだ。一応お礼言っておこうっと。

ありがとう! エロ神様!!
今年もどうぞ宜しくお願い致します(´∀`)


以下は拍手のお返事になりますです~(*'-')


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(・∀・)

『素質Ⅸ』の前編と日記の感想をありがとうございます~。
エロが無くてスミマセンでした…w
いや、その、上手い具合に切る場所が無くてですね…。
色々考えた結果、あそこで切る事になったんですよ…w
そうしたらエロが無くなってしまった訳です(´・∀・`)
あ、でもでも。その分今回は濃ゆいエロになってますので、それでどうかご容赦下さいませ~w

城之内がパンツ以外のエログッズに余り興味を示さなかったのは、多分Rosebank様のコメント通りだと思います。
ドSの人って、自分自身がパートナーをどうこうするのは大好きな癖に、自分以外の他人にパートナーをどうこうされるのは大嫌いなんですよ。
例えそれがただのグッズに過ぎなくても、城之内は他の人間から海馬に向けられた物を使うのは嫌だったんでしょうね。
(その代わり、自分が用意した物を好き勝手に使う事は大好きですw)
ただ、ヒョウ柄のビキニパンツはそこまで酷いエログッズではありませんでしたし、今まで城之内が考えた事も無いようなものだったので、興味が出て来たので使ってみましたって感じです(´―`)
あくまで興味があっただけであって、気に入った訳ではありません。
その証拠に、後編で城之内は使い終わったパンツをさっさとゴミ箱に捨てちゃっていますよね?
自分が海馬にプレゼントしたバイブなんて、綺麗にリボンがけまでして引き出しに入れておいた癖に…w
つまりは『そういう』事なんですw

日記の件ではご心配をお掛けしてスミマセンでした。
状況が全く読めないので、突然お休みを頂く事もあるかもしれません。
そういう時は「まだ落ち着かないのか。仕方無いな」と、生温かい目で見守って下さいませ(´∀`;

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

*素質Ⅸ(後編)

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後編です…。
うん…あの…。
姫はじめだからって詰め込み過ぎましたね…w

 




 受け取ったヒョウ柄パンツを一旦ソファの端に置いて、海馬はバスローブの中に手を差し入れて今まで履いていた下着を下ろし始めた。スラリとした長い足から抜き去ったそれはグレーのボクサーブリーフ。海馬がオレとセックスをする時に、好んで身に着ける下着だ。
 このグレーって色は、水に濡れたりするとその部分がハッキリと分かる色だった。
 恥ずかしい言葉で海馬を追い詰めて、下着の上から掌でまさぐると、海馬はすぐにペニスを勃起させて先走りの液を垂らし始める。じわりと下着に滲む染みにニヤニヤしながらオレが揶揄すると、海馬は耳の先まで真っ赤にして顔を背けるんだ。あんまりしつこくすると怒り出すけど、本気で嫌がっている訳じゃ無い。
 だってそうだろ? 本当に嫌だったら二度と身に着けない筈だ。ところが海馬は嫌がるどころか、セックスの度にわざわざグレーの下着を選んで着て来る。つまりオレが揶揄する事も、一種の羞恥プレイとして楽しんでいるって事だった。

 本当にもう…何て言うかねぇ…。
 そのドM根性にはオレも感心してしまう。

 そんな事を思いつつじーっと海馬の行動を見守っていると、それに気付いた海馬がパッと頬を紅色に染めてオレを睨んで来た。

「な…何なのだ…」
「ん?」
「そんなに見詰めるな」
「あれ? やっぱ恥ずかしい?」
「からかうな! あっちを向いていろ!」

 海馬は丁度グレーのボクサーブリーフの代わりにヒョウ柄パンツを手に取って、それに足を通そうとしていたところだった。もう少し足を上げればバスローブの中身が見えたのになぁ…と残念に思いつつ、オレは「はいはい」と軽く返事をしてソファーまで歩いて行った。そしてそこにどっかりと腰を下ろすと、海馬の方から視線を背ける。
 恥ずかしいの好きな癖に…素直じゃないんだからなぁ…。
 背後からゴソゴソと聞こえる着替えの音に、オレはニヤニヤしながらそんな事を考えていた。
 やがてピチッという薄い布地が肌に張り付く音と共に「履けたぞ」という海馬の声が聞こえてきた。振り返ると顔を赤らめて、実に恥ずかしそうに突っ立っている。履けたと言ってもバスローブを羽織っているから、下半身は隠れたままだ。手をチョイチョイ動かして海馬を呼ぶと素直にこっちまで歩いて来たので、オレはソファーに座ったまま海馬の腰を掴んで目の前に立たせてやった。

「ちゃんと履けた?」

 そう聞いてやると、海馬は無言でコクリと頷く。「んじゃ見せて?」となるべく無邪気にお願いしてみたら、海馬はまた少し顔を赤らめながらも自分でバスローブの合わせを左右に開いてくれた。バスローブの奥からオレの目の前に晒されたそれに、思わずゴクリと喉が鳴る。

「うわぉ。すげぇ…」

 意識した訳じゃないけど、自然に感嘆の声が漏れた。
 薄い布地のピッタリしたビキニパンツは、海馬の性器をもろに目立たせている。まだ全然勃起してないっていうのに、ふっくらとした膨らみがいやらしい。目が離せなくてじーっとそれを見詰めていると、ヒョウ柄の布地に包まれたそれがピクリと動いて少し大きくなった。

「あ…余りじっと見るな…」
「恥ずかしいんだ。見られるの好きな癖に」
「っ………!!」
「可愛がってあげるから、もうちょっとこっちにおいで。オレの足跨いで…そう…」

 真っ赤な顔でオレにそう言う海馬に、だけどオレは逆に海馬がもっと恥ずかしくなるようにからかってやる。そうされるのを海馬が望んでいるって知ってるからな。
 案の定、すっかりやる気になった海馬は、オレの言うとおりに身体を前に進めて来た。
 よしよし、素直で良い子だね。ご褒美に一杯可愛がってあげよう。

「そのまま前開いてろよ」

 そう言うと海馬はコクリと頷いて、今まで以上に見易いようにバスローブの裾を広げてくれる。それに満足して、オレは海馬の白い足に両手を這わせた。脛から膝頭を辿ってしなやかな筋肉の付いた太股をサワサワと撫でる。そしてそのまま掌を背後に回して、尻に辿り着いた。
 海馬が今履いているビキニパンツは、背後がTバックになっているタイプのものだった。つまり臀部を包む布地は殆ど無く、今海馬の尻は剥き出しの状態だ。
 滑らかな肌を楽しむように尻を撫で、指を使ってワシワシと揉む。女性みたいに柔らかくは無いけど、この弾力もかなり癖になるんだよな。

「っ…。んっ…」

 尻を揉む度に海馬が小さく声を出してピクピクと反応する。同時に目の前のペニスも震えて反応しているのを見て取って、オレは顔を近付けて布地の上からそれを咥えた。歯を立てずに唇だけで、あむあむと食んでやる。

「んっ…! あ…あっ…」

 まだ柔らかいペニスをはぐはぐしていると、段々とそれが硬くなって大きくなってきた。弾力が出て来たペニスを唇だけで挟んで下着の上から舌でザリザリ舐めると、薄い布地はあっという間にびしょ濡れになってしまう。ヒョウ柄のビキニパンツは既にテントを張り、薄い布地はパンパンだ。更に先端から滲み出てきた先走りの液によって、ペニスを覆っている部分の布地はぬるぬるになっていった。

「やーらしい。パンツこんなに濡らしてさ」

 ぬるつく先端に舌を当てながら、海馬の事を見上げてやる。ついでにニヤッと笑ってそう揶揄すると、海馬は真っ赤な顔で瞳を潤ませながらブルブルと身体を震わせていた。バスローブの合わせを左右に開いている手も震えているし、足もガクガクだ。
 海馬がそろそろ限界なのを知りながら、オレはそれでも下着の上から焦らすような愛撫を続けた。ペニスを食む度にバスローブの裾を持っている手が下がってくるのに気付いて、オレはその手をもう一度上に持ち上げてやる。

「ほら、ちゃんと開いてろよ。落としたら後でお仕置きだからな」
「うっ…あぅ…!」

 真っ赤な顔をしてついに涙をポロポロと零しながらも、海馬はバスローブの裾をギュッと握りしめて合わせを左右に開いた。それに「うん、良い子」と囁いて、オレはまたペニスを食む作業に戻る。

「やっ…! あ…んっ。もう…っ」

 唇だけで挟み込み、時折布地の上から舌で舐めるだけというもどかしい愛撫に、海馬の腰がゆらゆらと揺れ始めた。完全勃起したペニスをオレにグイグイと押し付け始める。
 だけどオレは決して焦らずに、下着の上からじっくりとそれを嬲ってやった。
 直接的な刺激は与えない。優しいだけの、ちょっと残酷な愛撫。

「あっ…! うぅっ…! あぁぁ…っ!! も…ダメだ…っ!! ぅあ――――っ!!」

 海馬の足と腰がガクガクと激しく震えて、そして身体がカクンと前のめりになった。傾く身体を支える為に両方の手がオレの肩を強く掴む。その途端、オレの頭の上にバスローブのタオル地がパサリと落ち、同時に咥えていたペニスがブルリと震えたのを唇で感じた。先端部分を包んでいた布地に、じわりと生温かい液体が染み込んでいくのが分かる。

「あ、お前…。勝手にイッたな…」

 少し睨み付けてそう言うと、海馬はまるで親に怒られた小さな子供の様な顔をして萎縮していた。

「しかも手ぇ離しやがって…。ちゃんと開けてろって言っただろ?」
「す…すま…ない…っ」
「謝ってもダメ。お仕置きします」

 ニヤリと笑ってそう告げてやると、海馬は困惑した表情をしながら顔を真っ赤に染めていた。そしてほんの少しだけ…口角を上げて笑ったのをオレは見逃さない。
 そのお仕置きを待っていた…という海馬の心の声が聞こえてくるようだった。
 全く…。オレに気付かれないとでも思ってたのかねぇ? 本当に困った変態だよ、お前は。



 下半身がガクガクになって全く力が入らない海馬の身体を支えるようにして、オレ達は寝室までやってきた。羽織っていたバスローブを毟るように脱がせて、そのままベッドに細い身体を転がしてやる。細身の身体がベッドのスプリングに軽く弾むのを横目で見て、オレはそのまま海馬の上にのし掛かった。
 青い瞳を潤ませてこちらを見てくる海馬にニヤッと笑ってやって、細い顎を掴まえて唇を合わせる。最初から薄く開いている唇の隙間から舌を差し込むと、まるでそれを待っていたかのように熱い舌が絡まってきた。
 チュクチュクと濡れた音を起てながら海馬の口中をまさぐって、息苦しくなってきた頃に顔を離す。トロリとした唾液が、オレ達の舌先から細長く繋がった。

「城之内…」

 何か言いたげな海馬を無視して、オレはそのまま細い首筋に唇を当てた。Yシャツの襟に隠れるギリギリの辺りを狙って強く吸い付きながら、平らな胸に掌を這わせる。引っかかった尖りに指先を載せて、キュッと少し強めに摘み上げた。

「うっ…! はぁっ…」

 微かに痛がる素振りを見せながらも、海馬は熱い吐息を吐き出した。オレはその反応に至極満足して、首筋を吸っていた唇を胸に移動させる。そして摘まれて真っ赤になった乳首を咥えて、わざと濡れた音を起てながらチュウチュウ吸ってやった。

「あっ…。ふぅ…ぅ…っ」

 オレが強く吸い付く度にビクビクと身体を揺らし、海馬は震える手でオレの髪を掴んできた。ギュウッと力を入れて掴まれると流石に痛くて、オレは一旦胸から唇を離して海馬の顔を覗き込む。
 快感で顔を真っ赤にして青い瞳を潤ませた海馬は、少し戸惑ったような表情でオレの顔を見返してきた。

「す、少し待て…っ」
「何だよ…。てか、あんま髪掴むなよな。痛いだろ」
「じょ…城之内…っ」
「何?」
「灯りは…消さないのか?」
「ん…?」

 海馬の言葉にオレはちらっと天井を見上げた。リビングから移ってきてそのままベッドに転がったから、いつもは落とす筈の照明が明るく部屋を照らしている。
 本当はここで一旦ベッドから離れて灯りを落としても良かったんだけど、今日のオレはこのまま海馬を抱くことに決めていた。だってほら…、お仕置きだし。

「灯りは消さないぜ。今日は明るいまんまヤルつもりだからな」
「そ、そんな…っ」
「お仕置きだって言っただろ? それにお前だってじっくり見られながらヤルの好きな癖に」
「それ…は…」
「はいはい。お喋りタイムはこれで終了。パンツ脱がすから大人しくしてろよ」

 そう言ってオレは身体を起こすと、海馬の身体にピッタリ張り付いたヒョウ柄のビキニパンツに手を掛けた。わざとそろそろと焦らすように下着を下ろしていくと、精液でドロドロになったペニスが煌々とした灯りの元に露わになる。ニチャッ…という粘ついた音が凄く卑猥だ。
 その音は海馬にも聞こえていたらしく、いつの間にか海馬は真っ赤な顔を両腕で覆うように隠していた。

 ていうか…今更だよな? こんな事なんか大した事ない位の恥ずかしい事、もっと一杯してるっていうのに…。

 でもオレは気付いていた。
 オレがドSとして目覚めていくのと比例して、海馬のドM度もどんどん上がっていっているんだ。
 以前の海馬は、オレをドSとして目覚めさせる為に必死だった。変態プレイを唆して自分も夢中でそれにハマって、恥ずかしさなんて二の次だったんだ。でもいざオレがドSとして目覚めてしまうと、今度は自分のドMっぷりに目を向ける事が出来るようになっていった。
 ドSになったオレから意図しないプレイを強要される。自分が想像していた以上の羞恥プレイがそこにはある。
 だから海馬は、どんどん恥ずかしがり屋になっていった。以前の海馬からは考えられない程に、羞恥プレイに対して弱くなっている。けれど海馬はそういうプレイが気持ち良いって事もよく知ってるし、オレもそんな海馬が可愛くて可愛くて、とてもじゃないけど止められない。

「凄ぇな海馬。ここ…ドロドロだぜ」

 海馬が恥ずかしくて堪らなくなるのを分かっていて、わざと追い詰めるような言葉を吐いた。案の定、海馬はますます顔を赤くして羞恥でブルリと身体全体を震わす。プルプルと震える足先からヒョウ柄パンツを抜き去って、オレはそれを手に持った。

「こんなに濡れてちゃ気持ち悪いだろ? 今拭いてやるからな」
「拭いて…? って…お前! 一体何するつもりだ…っ!」

 オレの言葉に腕の隙間からチラリと視線を走らせた海馬は、オレが手に持っていたヒョウ柄のビキニパンツを見て、慌てたように身体を起こした。そんな海馬に特に慌てる事も無く、オレは片手で押さえ付けて再びベッドに寝転がす。
 柔らかい羽根枕に頭を載せた海馬が心配そうに見上げてくるのにニヤリと笑って、オレは持っていたパンツを裏返して、わざと濡れた裏面で海馬のペニスを包み込んだ。布地に纏わり付いた精液と、海馬のペニスに纏わり付いた精液が、ぬるりと滑ってグチュリと卑猥な音を起てる。

「ふぁっ…!?」

 ペニスを掌で握っているオレでさえ異様な感覚だって思った。握られている海馬なんてもっと堪らない感覚だったんだろう。ゾワリと肌を粟立てて、焦ったように目を大きく開いて声を裏返させていた。

「おー! 凄いな海馬、超ぬるぬるー! 拭けば拭く程、どんどん濡れてくるんだけど」
「あ…当たり前…だ…馬鹿っ!! もう…やめろ…っ!! っ…くぅ…っ!」
「嫌でーす。こんなに気持ち良さそうなのに、やめちゃっていいの?」
「やっ…! 気持ち…悪い…っ!!」
「またまた…嘘ばっかり。じゃぁどうしてこんなに派手に勃起してんだよ」
「っ…! んっ…あ…あぁっ…!」
「ほら、こんなに喘いでいるのに…。実はもうイキそうなんじゃないの?」

 握っているペニスはもうガッチガチに硬くなっていて、ビクビクと走る震えがこっちにまで伝わってくる。海馬は片手でシーツをギュッと掴み、もう片方の手でオレの肩に爪を立てていた。涙をボロボロと零しながら激しく首を左右に振って、甘い声で絶え間なく喘いでいる。
 海馬の股間はもうドロドロのグチャグチャだ。薄い布地のビキニパンツもグチョグチョに濡れていて、最早原型を留めていない。

「うぁ…! あっ…も…もう…っ!! あぁっ…イッ…ク…! いっ…ひぁっ…あっ…あぁっ―――――!!」

 やがて限界を迎えた海馬がビクビクと激しく痙攣して、反り返って身体を硬直させた。掌の中に生温かい粘液が大量に溢れてくる。一度イッてもまだ軽く絶頂が続いているらしかったので、手の中のペニスを軽く上下に扱いてやった。その度に海馬はピクピクと痙攣し、ペニスの先端からピュルピュルと白い精液を飛ばして果てる。
 海馬が射精をする様はいつだって凄まじいんだけど、二週間ぶりに見る痴態は予想以上のものだった。ましてや今日は明るい中でしているため、海馬の全てを細部まで観察する事が出来る。
 二度目の射精を全て終えて、ベッドの上でグッタリと横たわっている海馬から、オレは目を離す事が出来なかった。思わずゴクリと喉を鳴らすと、未だ荒い呼吸を繰り返している海馬が薄目を開けてこちらを見る。

 目の周りをほんのり紅く染めて潤んだ青い瞳で見つめてくる海馬は、もう最高に色っぽかった。

 そんな色っぽい姿態を見せられて、オレの息子もそろそろ限界だと訴えかけてくる。オレは持っていたびちょびちょのヒョウ柄パンツをベッド下のゴミ箱に投げ入れると、力を無くしてだらりと伸ばされた海馬の足を担ぎ上げた。
 濡れたパンツと先程の射精のせいでオレの手はドロドロに濡れていたから、そのまま背後に手を伸ばして海馬の後孔に指を触れさせた。ぬるっと滑る感触にちらりとそこを見詰めると、拭いきれなかった精液が既にそこまで垂れていたらしい。
 前も後ろもグチョグチョに濡れまくった海馬の下半身が、明るい電気の下で露わになっている。狭い後孔に指を押し込んで体内を慣らしながら、オレは余りの興奮に自分の呼吸がおかしくなっている事に気付いた。ハァハァという短い呼吸しか出来なくて、息苦しさを覚える。
 海馬の体内はもう蕩けそうなくらいに熱くて、強く柔らかくオレの指を締め付けてきて、その度に下腹部がギリギリと痛くなった。
 はっきり言って…もう限界だった。

「な…なぁ…海馬。もう…いい? オレ…限界…なんだ…けど…」

 舌先まで痺れて言葉が上手く出て来ない。
 それでも何とか意志を伝えると、海馬が同じくらい切羽詰まった表情でコクリと頷いた。
 良かった…。限界だったのは、向こうも変わらなかったようだ。



 「ひっ…! んぁ…あぁぁっ!! やぁっ…城之…内ぃ…っ!!」

 寝室に海馬の悲鳴が木霊する。
 海馬はオレの肩に腕を回して、凄い力でしがみついてきた。まるで逃がさないとでも言うように長い足をオレの腰に纏わり付かせて、ボロボロと泣きながら高い声で喘いでいる。キリキリと背中の皮膚に爪を立ててくるのを感じながら、オレは夢中で腰を振っていた。
 一旦奥深くまで挿入して、今度はギリギリまで引き抜く。後は焦らすように浅いところで抜き差ししていると、案の定焦れた海馬が自ら腰を振って押し付けて来た。クイクイと揺れる腰が堪らなくエロい。

「やっ…! 嫌だ…もう…っ!!」
「ん…? 何…?」
「もう…焦らすな…っ!! も…もっと…!! もっと奥まで…挿れて…くれぇ…っ!!」

 眉根を寄せて快感に咽び泣きながら、海馬はオレの耳元でそう叫んだ。途端にオレの下腹部がズキリと痛みを訴える。

 くっそ…! 何て事言いやがる。勃起し過ぎて痛いだろ…っ!!

 計算してんのか天然なのか知らないけど、今の台詞は強烈だった。頭に血が昇り過ぎて視界が真っ赤に染まる。
 そこまで言われちゃオレだって遠慮する必要も無いから、あとはガンガンに腰を振って海馬の体内を強く抉った。オレの動きに揺さぶられる海馬が、奥を突かれる度に「あんっ! あぁんっ!!」と甲高い声で喘ぐ。

「ひあぁっ…!! 気持ち…いい…っ!! ぅくっ…! じょ…の…うちぃ…!! 気持ちいい…よぉ…っ!!」
「あぁ…オレも気持ちいいぜ…。お前…やっぱ最高だ…っ!」
「ひっ…ぐっ…!! あっ…! ま…また…イク…っ!! イッちゃ…っ!!」
「いいよ。何度でもイケよ…。気の済むまで相手してやるから…」
「あぅ…っ!! も…っ!! あぁぁっ!! また…アレが…っ!!」
「お? ドライ? いいね。今夜はそのまま朝までヤッてやろうか?」
「やっ! ダメ…ダメ…!! だ…だって…アレは…死ぬ…っ!! んあぁっ!!」
「大丈夫。死にゃしねーよ。ほら…イキたいんだろ? イケよ」
「うっ…あっ…ふあぁぁっ!? あっあっ…あぁぁぁっ――――――――――っ!?」

 案の定ドライでイッた海馬は、大きく背を反らせてビクリビクリと激しく痙攣し、見開いた瞳から涙をボロボロと零していた。その拍子にオレのペニスもキュウキュウに締め付けられたけど、何とかイクのは我慢してそのままグリグリと中身を抉り続けてやる。
 この間は遠慮してすぐに射精させてやったけど、今日はそこまで甘くしてやらない。体力があろうが無かろうが、朝までヤルって決めたんだ。
 一応お仕置きプレイって事になってるけど、そんなのは建前に過ぎない。だって本当は、ただ単に海馬を死ぬ程抱きたかったってだけなんだからな。
 十代後半の性欲を舐めんなよ。この二週間の間に溜まりに溜まった欲情を、今夜全部発散してやる!!

「海馬…。覚悟しろよ? 今夜は寝かせてやらねーからな…」

 ベロリと舌舐めずりをしながらそう言ったけど、ドライ状態で半狂乱の海馬に伝わったかどうかは分からない。
 まぁ…別に伝わって無くてもいいんだけどな。
 そう思い直してオレは暴れる海馬を押さえつけると、また奥深くまで犯す事に夢中になった。


 結局その後も散々無茶なセックスをして、気が付いたら東の空が明るくなっていた…。
 オレも海馬も、もう何度イッたか分からない。オレはまだ体力があるからいい方だけどさ。海馬なんて最後の方は喘ぐ気力も無く、微かに呻きながらオレの動きに合わせて揺さぶられるだけだった。
 本当にコイツ、体力無いんだよなぁ…。瞬発力は半端無い癖に。
 でも、だからといって本気で嫌がってるって訳でも無いのが、ドMの海馬君らしいところで…。ぐったり疲れ果てながらも体内はトロトロに熱くて、絞るように柔らかくオレを締め付けてくる。奥を突く度に顔を赤くして「あっ…あっ…」と短く喘ぎ、そのまま最奥で射精するとブルリと身体を震わせてオレにしがみついてきた。で、極めつけは「もっと…」と至極色っぽい声でオレの耳元に囁くんだ。
 そんな事されれば、流石にいい加減止めようと思っていたオレも止められなくなってくる。

 つまり、この状況はオレのせいだけじゃ無いって事だ。

 全ての体力を使い果たした海馬は、今はオレの隣でぐっすりと眠っている。ちょっとやそっとじゃ起きないくらいの深い眠りだ。
 汗でしっとり濡れた栗色の髪を優しく撫でて、細い身体を抱き寄せた。眠っている為にいつもより温かいその身体に安心して、オレも先程から襲って来ている眠気に意識を委ねる事にする。

 何て言うか…凄まじい姫はじめだったな…。

 そんな事を考えつつ眠りに落ちる瞬間、オレは大事なことを海馬に伝え損なっている事に気が付いた。
 しまったと思ったけど、時既に遅し。オレの意識は吸い込まれるように闇に落ちていく。
 仕方が無いな…。次に目覚めた時にはちゃんと言おう。

「明けましておめでとう! 今年もよろしくな!!」

 ってな。

見上げると人は巨大であった

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昔懐かしいアニメを思い出してしまった二礼です、こんばんは。

先刻散たんと、一つの事例に対して(小説なり表現なり、とにかく色々)人によって物の見方が全然違う事があるという事を話していて、ふと昔見たアニメを思い出しました。
『ガンバの冒険』ていう一応子供向けのアニメなんですけど(知らない人はググってくれw)、視点を変えるとこんなにも印象が変わるのかという良い事例のアニメだと思います。
一応って書いたのは、今思い出しても余り子供向けじゃないような気がするからです…w(理由は後述w)

主人公はネズミです。
なので視点もネズミです。
人間も出て来ますが、靴を履いた足だけとか、ネズミを掴む手だけしか出て来ません。顔とかは絶対出て来ないんです。
これだけでも如何にネズミが小さい存在か、そして人間が馬鹿デカイ存在か分かりますよね?
アニメを見ている私達は人間ですが、ネズミ視点で物を見せられると大きな人間が途端に怖くなるんですよ。
そしてこのネズミ達の敵が、イタチの軍団です。
ネズミである主人公達を食らおうと、常に狙っています。
人間から見れば、イタチなんて小さな存在ですよね。むしろちょっと可愛いと感じます。
けれどそれをネズミ視点から見た場合、イタチの存在はとんでも無い程の恐怖の対象なんですよ。
このイタチ軍団のボスが『ノロイ』という名前の、アルビノの巨大白イタチなんです。
巨大と言っても、人間から見ればただの小動物に過ぎませんが…w
でもこのノロイがとんでも無く怖かった…www
真っ暗な夜空をバックにドーンと立ち塞がる白イタチ。真っ赤な目を吊上げて、口もバックリ裂けています。
ネズミ視点でそれを見上げる恐怖、そして絶望感。
当時このアニメを見ていた子供達は、皆余りの恐怖に「ノロイ怖い…; ノロイ怖い…;」とTVの前でガクブルしていたものでした…w

ちなみに、当時感じていた恐怖は大人になった今でも変わる事無く、同年代の人と話すと皆一様に「ノロイ怖過ぎ!!」と反応してくれますwww
大人になってまで消えない恐怖。はっきり言ってトラウマですよ!!www
だから上記で『一応』と書いたんです。
今見ても、きっと子供向けアニメとは思えないだろうなぁ…w

という昔懐かしいアニメを思い出しつつ、視点を変えると一つの事例が全く違う物になるんだなぁ~という事を改めて感じました。
こういうのって凄く面白いと思うんですよ。
海馬と城之内とで一つの事柄を視点を変えつつ進める小説とか、いつかやってみたいなぁ~と思います。
でもちょっと大変そうだ…w


あーそうそう。
実はこれからチョット忙しくなりそうなんですよ…。
何て言うか暫くゴタゴタが続くので、先の予定が全く読めないんです。
なので、今までみたいに定期的に更新する事が出来なくなるかもしれません。
もしかしたら突然お休みを頂く事もあるかと思いますが、その辺りはどうぞご了承下さいませ。
落ち着いたら内訳もお話出来るかと思います。


『素質シリーズ』に素質Ⅸの前編をUPしました。
以前から温めていたクリスマスエロネタです。
エロと言いつつ、珍しくまだ何もしてませんけどね~(´―`)(本当に珍しい!!www)
この話は、以前散たんと話していた社長の占いから考えついたものでした。
何かほら、変な占いあったでしょ?
社長が絶倫だとか変態だとかナルシストだとかMだとかの奴…w
実はあの時の散たんとこの日記には載っていませんでしたが、社長のセックスアイテムに『ヒョウ柄のパンツ』って書いてある占いもあったんですよね…(´∀`;
社長にヒョウ柄のパンツってどうよ!! って最初は思ったんですけど、結局私はほら…エロ神様の申し子なものですから…w
困った事に書かずにはいられなかったんだねぇ…;
そういう訳で正月明けにクリスマスネタでございます。
まぁ、小説内でも正月明けの姫はじめだから別にいいよね?(´∀`)


以下は拍手のお返事でございま~すv


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~(*'-')

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をどうもありがとうございます!
コメントの「二人の幸せはこれからだ!エンド」に笑ってしまいましたw
何かジャンプの打ち切りコメントみたいだ…w

海馬の人間っぽいところを褒めて頂けて良かったです~。
一見海馬は凄く完璧っぽい人間なんですけど、私は本当に何でもかんでも完璧な人間はいないと思っています。
むしろ完璧そうに見える人間が実は弱かったりするギャップに堪らなく萌えたりするので、ついつい海馬を弱くしてしまうんですよね~w
逆に一見ダメ男に見える城之内をいい男に書きたがるのも、私のギャップ萌えのせいなんです。
でも、今回の城海はいつもの私の城海とは全く逆ですね。
つまり逆の逆。

強そうに見える→実は弱い→弱いけど実は強い…という海馬と
弱そうに見える→実は強い→強いけど実は弱い…という城之内

って感じかな。
それでも『Rising sun』の時に、弱くて強い海馬と強くて弱い城之内の組み合わせはやっているので、余り新鮮味はありませんけどね…w
これから内面に食い込んだ展開になっていくので、私も気合いを入れて頑張ろうと思っています!

それからアンコウ鍋!!
いいですね~! 凄く身体が温まりそうです!!
実はアンコウ鍋食べた事無いので、一度食べてみたいなって思っているんですよ…(´¬`)
美味しそうだなぁ…v

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

素質Ⅸ(前編)

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城之内×海馬。城之内の一人称。
素質でのクリスマスネタ&実は社長が絶倫だという占いを活かして書いてみました…w
でも多分、他のに比べたらきっと普通プレイです。
いや、ホントに(*'-')
(珍しくまだ本番を書いていないので、*マーク抜きですw)

 




 オレの恋人は年末年始が超忙しい。
 玩具・ゲーム産業では大手企業の海馬コーポレーションの事だから、年末年始はまさに稼ぎ時だ。クリスマス商戦から始まって、年明けのお年玉商戦まで全く気が抜けない日々。社員は当然の事ながら、社長なんて地位に就いてりゃ、そりゃピリピリと胃が痛くなるような毎日が続くだろう。
 だからオレ達は、普通の恋人同士みたいにクリスマスの夜を二人きりでロマンチックな気分で迎えたりとか、お正月休みをゆっくり過ごしたりだとか、そういうのが全く出来ない。
 一般人のオレとしては、せっかくのイベントにイチャイチャ出来ないのは確かに不満だった。だけど海馬が自分の夢にどれだけ本気かって事もよく知っているから、余り煩くは言えないんだ。仕事してる時の海馬の目はとにかく真剣で、そういう海馬もまた大好きだったからさ。
 だから、年明け最初の土曜日の朝に海馬から『明日の日曜日は休めそうだから、今夜は泊まりに来い』ってメールを貰った時は、天にも昇る程嬉しかった。
 約二週間ぶりの逢瀬。最後にセックスをしたのがいつだったか、ちょっとよく思い出せそうにない。
 ていうかこれって、年明け一発目のセックスって事じゃない? てことは姫はじめって奴? いや、まだセックス出来るって決まった訳じゃ無いけどさ。でも、海馬がそういう風に誘ってくる時って大概向こうもヤりたがっている時だから、まず間違い無くする事になるんだろうな。
 なんて事を考えつつ、にやつきながらオレは海馬邸に泊まりに行く事にした。


 久しぶりに海馬とモクバと三人で夕食を済ませて、その後はゲームをしたりして遊びまくった。年末年始が忙しいのは海馬だけじゃなくて副社長であるモクバも同じだったから、その労をねぎらう意味でも一緒に遊んでやりたかったんだ。
 でもやっぱり疲れていたんだろうな。二時間ちょっとも遊ぶとあくびの数が増えてきて、モクバは眠そうに目を擦り始めた。「眠いのか?」と聞けば素直にコクリと頷くから、海馬と二人で部屋まで送ってやった。
 ニコリと微笑みつつ「おやすみなさい」と言うモクバの言葉と共にパタンと閉まるドアを二人で眺めて、そしてふいに見詰めあった。視線が合った途端に海馬の青い眼が細められて、ニヤリって感じで笑みを浮かべる。

 あぁ…そうだな。子供の遊びはもう終わり。
 これからは…大人の時間だ。

 なーんて思いながらオレも同じようにニヤッて笑って、海馬の細腰に手を回しつつ私室まで歩いて行く。で、ドアを開けてキスでもしながら雪崩れ込むようにベッドに…なんて考えていたら、リビングの隅っこに山盛りになっているプレゼントの箱に驚いて、それどころじゃなくなってしまった。
 何だ…この箱の山。しかもどう見てもこのラッピングは、クリスマス用のものばかりなんだけど…。

「海馬…」
「何だ」
「何これ?」
「見たままだが」
「クリスマスプレゼント?」
「そうだが?」
「何で正月も終わったってーのに、こんな場所に積んであるの?」
「一つ、開ける暇が無かった。二つ、どうせ下らない物だから捨てる予定だった。以上」
「はぁ…。開ける暇が無かったってのは分かるけど、下らない物だって分かるのは何でだ?」

 何気なく、本当に何気なくそう尋ねると、海馬はオレの顔を見てふぅ…と深く息を吐き出した。そしてオレの側から離れるとプレゼントの山まで歩いて行く。一番上に積んであった小さな箱を手に取り、それにチラリと視線を向けると、またわざとらしく溜息を吐く。

「ここにあるプレゼントは、取引先の企業の偉い奴からかKCと業務連携したり、またはこれからそういう繋がりを持ちたい奴らからの贈り物ばかりだ。下らない物だとは言ったが、多分殆どはまともな物だと思う。だが、オレを所謂『そういう目』で見ている奴らの分も含まれているからな。中にはとんでも無い物も混じっていたりする訳だ。プレゼントの中身を一々確認していて、『そういう』物が出てくると途端に嫌気が差すのでな。だったら最初から全部開けない方がマシだろう?」
「うん…。まぁ…確かに」
「だからと言って即捨てするのも気分が悪い。だから今までは頃合いを見て、落ち着いた頃に纏めて捨てていたのだ」

 海馬の言葉にオレが「なるほどね」と答えるのと同時に、海馬は持っていたプレゼントの箱を元の山の中にポイッと投げ捨てた。小さな箱がコロコロと山肌を落ちていき、壁に当って動きを止める。
 自分が今まで持っていたプレゼントの箱が他の箱に埋もれて見えなくなったのを確認して、海馬は「フン」と鼻を鳴らした。そしてシャツのボタンを外しながら浴室へと向かって行く。
 あぁ、風呂に入るんだなぁ…と何となく考えて、そしてもう一度目の前に広がるクリスマスプレゼントの山に目を向けた。

「なぁ、海馬ー」

 振り返りつつそう名前を呼ぶと、海馬は浴室へ続く扉のノブに手を掛けたところだった。一旦動きを止めて「何だ?」と首を傾げてくる。

「お前、今から風呂入るんだろ?」
「そうだが」
「どうせ長風呂になるんだし、その間暇だからさー。このプレゼントの中身、確かめてみてもいい?」
「………。はぁ?」
「いや、お前の話聞いて何か気になってよ。大企業のお偉いさんとかがさ、自分よりずっと年下の学生社長に一体何を贈るのかってやっぱ興味あるじゃん」
「あるじゃん…と言われても、オレは別に何の興味も無いが…」 
「お前が無くてもオレはあるの。なぁ…開けてもいい?」

 オレがしつこく「なぁ、なぁ」と言っていると、海馬は諦めた様に小さな溜息を吐いた。そして「好きにしろ」と言い残して、浴室へと消えていく。
 ちょっと呆れてたみたいだけど、好きにしろって言われてるなら好きにしていいよなって事で、オレはプレゼントの山に手を伸ばして最初に手にした箱の包み紙を嬉々として剥がし始めた。



 どうせ捨てるつもりのもんだから、別に丁寧に剥かなくてもいいだろうって事で、オレはビリビリと好き勝手に包装紙を破いていく。
 そうしたら出てくる出てくる…。物の価値がイマイチよく分かっていないオレの目にも「高級品だろう!」と理解出来るようなものがわんさかと出て来た。

 海馬に似合いそうな細身のスーツ(上下)。
 本皮のコート。
 ブランド物のバッグ。
 どう見てもガラスじゃなくて本物のダイヤモンドが付いた、ネクタイピンとカフスボタンのセット。
 超有名メーカーの腕時計。
 一本ン十万もするような洋酒とかワイン。(海馬は未成年なんだけどな…)
 滅茶苦茶格好いいシルバーのジッポライター。(煙草は吸わないっていうか、だから海馬は未成年なんだってば…)
 指輪、ネックレス、ブレスレットなどの宝石類。等々…。

 貧乏人のオレから見れば「流石」としか言いようの無いものが次々と出て来た。その殆どは趣味の良い物で占められていたけど、ただ時々、どうにも首を捻りたくなるような物も出てくる。

 鋲の付いた革パンツ。
 鎖付の首輪。
 何故か宝石の付いた手錠。
 SM用の鞭。
 高いヒールのブーツ。
 中身が何だか分からない怪しい飲み薬。
 様々な味や匂いのローションのセット。
 このオレも見た事が無いような凄まじい大人の玩具。
 おまけに面白コンドームの数々…。

 海馬が「下らない」と言った物も、綺麗に包装されたプレゼントの箱から沢山出て来た。
 そうか…そういう事か。こりゃ確かにプレゼントを開ける意欲も失われるってもんだな。でも、こんなもん贈ってどうするつもりだったんだろうなぁ…。いや、下心丸見えってのは分かるんだけどさ。
 例えばこのSM用の鞭にしても、海馬に使いたいのか、それとも海馬に使って欲しいのかがよく分からない。興味があって一緒に付いていたカードを読んでみたけど、海馬に対する熱烈な愛の言葉が気持ちの悪い程にビッシリと書かれていて、一行目を通しただけで読む気が失せてしまった。他のプレゼントにもカードは付いていたけど、どうせ似たり寄ったりだと思い、読むのを止める。

 ていうかこれって、海馬の欲求が外に漏れ出してるって事はないよな…?
 そうだったら、ちょっと複雑だ。

 確かにオレは立派なSとして目覚めちまったけど、海馬を鞭打つような事はしたくないんだよ。打たれるのも痛くて嫌だし(大体オレSだから、打たれる方にはならない)、いくらドMだからって海馬を打つのも嫌だ。
 海馬がこの海馬家に養子になったばかりの頃、どれだけ凄まじい虐待を受けていたか、今のオレはもう知っている。そのせいもあるし、もう二度と海馬にそんな痛い目に合って欲しくも無い。
 どうせヤルんだったら、やっぱり気持ちいいプレイの方がいいじゃんな。鞭に打たれて痛がっている海馬より、「気持ち良過ぎておかしくなるぅ~!! あんっあんっ! もうらめぇ~っ!!」って悶えている海馬の方がずっと興奮する。

 ………まぁ、海馬は「らめぇ」なんて言ってくれないけどさ。
 言って欲しいけど。

 あ、ヤベェ。想像したらちょっと勃ってきちゃった。
 何はともあれ、こんな気持ちの悪い変態に海馬をどうこうさせるつもりは無い。「残念でした。海馬はオレの恋人なんだからな」なんて呟きながら、オレは次のプレゼントに手を掛ける。
 オレの手が掴んだプレゼントは、随分と軽い紙袋だった。赤と緑のいかにもクリスマスカラーの包装紙に、金色のリボンが光っている。巻き付けられたそれを無造作に解いて、紙袋をガサガサと開けてみた。そして中から出て来たその物体に、オレは思わず「ひゅう♪」と口笛を吹いてしまう。
 出て来たのは如何にも下らないプレゼント。だけどちょっとだけ、魅惑的なプレゼントだった。


 数刻後。パタンとドアが閉じる音がしてオレは振り返った。そこにはバスローブを羽織った海馬が、スッキリした顔で髪の毛をタオルで拭いている。
 オレの方をチラリと見遣り、そのままツカツカと部屋付きの冷蔵庫に近付いて行って、その中からミネラルウォーターのペットボトルを取り出した。キャップを捻って口を付けながら、ゴクリと喉を鳴らして水を飲む。
 嚥下する度に上下する喉仏が色っぽいなぁ…なんてニヤニヤしながら見ていたら、一旦ペットボトルから口を離した海馬にキッと睨まれた。

「何だ…。にやつきおって…」
「別に」
「プレゼントの物色は終わったのか?」
「ある程度はな。マジで下らない物が多かった」
「そうだろう。だからオレは嫌なのだ」
「だろうな。確かにあんなの見ちゃうとゲンナリするよな。でも、ちょっと良い物も発見したぜ」
「先程からニヤニヤしているのはそのせいか…」
「うん!」
「元気に答えるな。それで? 一体何を発見したというのだ?」
「ん? あぁ、コレだよコレ」

 そう答えて、オレは先程発見したプレゼントをピラリと取り出した。
 ヒョウ柄の薄い布地。端と端に人差し指を差し込んで、海馬の目の前でピローンと広げて見せる。

「ほら、コレ! すげぇだろ!!」

 オレが取りだした物体を、海馬は眉根を寄せて睨み付けるように見詰めていた。
 最初は如何にも下らない物を見るような目付きだったんだけど、オレがにやつきながら黙って海馬の反応を見ていたら、海馬もオレが何を言いたいのか分かったんだろうな。次の瞬間には顔を真っ赤にしてた。

「で? どうする?」
「どうする…とは?」

 分かっている癖にシラを切る海馬にクスリと笑って、オレはなるべく甘えるような声を出しながら手に持ったソレを差し出した。

「履いてみない? って言ってるんだけど」

 そう言うと海馬はますます顔を赤くしてしまう。けれど数秒後、「ふむ…」と小さく唸りながらそろりと手を伸ばして、オレからソレを受け取った。
 薄い布地でヒョウ柄の、如何にもって感じな際どいラインの…ビキニパンツを。

お鍋三昧!!

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連続お鍋な二礼です、こんばんは。

お正月明けの4日の夕刻、二礼はお買い物に行きました。
大寒波の到来で雪こそありませんが、関東も厳しい寒さに襲われていました。
いい加減お節に飽きた正月明け、厳しい寒さ、休み明けで凝った料理は作りたくない。むしろ面倒臭い。
世の中の主婦は皆、考える事が一緒のようです。
お鍋にしようと思っていたのですが…具材が殆ど残っていませんでした…www
いや、あるにはあるんです。完全に売り切れではありません。
白菜だったら1/4切りとか、葱だったら三本セットとか、春菊だったら一房とか、エノキだったら一株サイズのとか…。
つまり大家族用(4~5人分)な訳ですよw
ウチは二人家族なんて、そんなに沢山の材料は要りません。
無駄に多く買っても腐らせてしまうだけなので、普段は少量パックを活用しています。
白菜は1/8切り、葱は一本だけ、春菊は1/2房、エノキも半分のサイズ…とかね。
ところがこの少量パックが悉く無い…っ!!
諦めて別の料理にする事も出来ましたが、こんだけ寒いとやっぱりお鍋が食べたいよね!! …という事で、仕方無くデカイサイズのをごっそり買って来る事になりました…。
結果、連続お鍋ですwww
いや、いいんだよ別に。お鍋美味しいし。野菜一杯でヘルシーだしね。
でもね…やっぱ飽きるのよね…(´∀`;
材料はあと一回分あるので、今日お鍋をしたらやっと他の料理が作れますwww
そうだなぁ…。
明日はおでんにしよう!!(結局鍋物かyp!!)


長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第十三夜をUPしました。
後半に入っても社長の試練は続きます。
むしろここからが本番なんじゃなかろうか…。
城之内を救う社長という図は『Rising sun』でもやりましたが、あの時以上に難しい展開になっていて、書く方もかなり気を遣ってやっています。
『Rising sun』の社長は最初から最後まで決心が揺れなかったからなぁ…。
今回はテーマがより重いだけに、社長には更に頑張って貰わなくてはならないようです。
頑張れ社長!!
いや、頑張るのは私だけどさ…w



以下は拍手のお返事になります(*'-')


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました!(´∀`)

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をどうもです~!
前回の話でちらっと書いたのですが、贄の巫女達は結構城之内に対して不満を持っていました。
Rosebankの仰る通り、城之内本家から贄の巫女になった者達はほぼ全員、三大分家から贄の巫女達になった者達も多くが納得していませんでした。
あの悲劇があったから三大分家が生まれて自分達も存在出来る…というよりは、あの悲劇さえ無かったら自分達はこんな辛い想いをする事も無かったという思いの方が強かったようです。
ただ刻が経つに連れて「こんなに長い間一人で閉じ込められて可哀想…」と思う巫女達が少しずつ増えていきました。
そういう思いがやがて、漠良の叔母や海馬に引き継がれていった訳なんです(*'-')

城之内のイジケっぷりが半端無いのも、上記の経緯があるからなんですよね。
今回の話でも書きましたが、城之内は贄の巫女達が苦しむのは自分のせいだという事をよく分かっています。
他人を苦しますだけの存在の自分に、何の価値も見出せていない状況なんですよ。
ここら辺を海馬がどう打開してくれるのかという処が、最大の難関であり見せ場なんですよね~!!
『Rising sun』の時とは違って、今回は海馬も少し自信を失っているようですが…w
まぁ…ウチの海馬さんなんで、何とかなるでしょうw

あと、救いの巫女の預言に関しては、実は城之内もかなり初期の頃から知っています。
あの罵声台詞の中に「救いなんか訪れるものか~」って台詞もありますよね。
知ってはいますが、信じてはいないんですよ。
何せ自分に価値を見出せていませんから…w
そんな城之内と海馬とせとの三角関係も、早く何とかしたいところです(´―`)
後半に入ったはいいですけど、課題は盛り沢山だなぁ…www

お雑煮情報もありがとでした~!
具沢山の澄まし汁で鶏肉が入っているのは一緒ですね!
イクラは入れる方が少ないと思いますwww
本当に一部の地域だけなんですよね…w(東北の太平洋沿岸部。特にリアス式海岸に面している辺り)
こっちでは基本的に四角餅ですが、丸餅も大好きですv
形が可愛いし、四角餅より弾力があるような気がするんですよね~。

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

第十三夜

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 理想は現実とは違う。
 理想はあくまで理想に過ぎない。
 迷う事もあるだろう。苦しむ事もあるだろう。道を見失う事もあるだろう。
 けれど忘れないで欲しい…。
 お前は間違い無く救いの巫女なのだ。
 お前が諦めない限り、道は必ず救いへと続いているのだから…。

 




 淀んだ意識が少しずつクリアになってきて、海馬は自分が目覚めようとしている事を知った。気を抜くとすぐに沈みそうになる意識を無理矢理上昇させると、自分の顎の辺りを何かがザリザリと舐めている気配に気付く。瞼は未だ重かったが、それでも何とか目を開けてソレを確認すると、視線の先にいたのはいつぞやの茶寅縞の猫だった。
 海馬の胸元に座り込んで、温かい舌で海馬の細い顎を丁寧に舐めている。

「ふふっ…。こら…くすぐったいぞ…」

 微かな痛みを伴うくすぐったさに、海馬は布団から腕を出して柔らかな猫の毛並みをそっと撫でた。途端に「みゃぁ」と可愛らしく鳴いた猫の喉からゴロゴロという音が響いてくる。喉元を撫でると、微かな振動が伝わってきた。

「どこから来たのだ…。勝手に家の中にまで入ってきおって…」

 クスリと微笑みながら視線を巡らすと、障子戸が少し開いているのが目に入ってくる。丁度猫一匹入れる程度の隙間から、庭の景色が少しだけ見えていた。
 外は相変わらず薄暗かったが、それでもすっかり明るくなっているのを見て、海馬は慌てて起き上がった。海馬の身体の上に丸まっていた猫が体勢を崩しつつも、滑らかな動きで畳の上に飛び移る。
 少し不満げな顔をして海馬の顔を見上げる猫に苦笑しつつ、布団から這い出て立ち上がろうとした。けれどその途端、激しい目眩を感じて片膝を付いてしまう。

「っ………! なん…だ…?」

 グラグラと回る視界に混乱しつつも、掌を額に当てて目眩が収まるのを待った。そしてある程度視界がしっかりしてきたのを確認し、今度は慎重にゆっくりと立ち上がる。
 上手く力が入らず覚束ない足元に注意しつつ、障子戸までそろそろと歩いて行った。そして少しだけ開かれた障子戸に手を掛けて、スラリと横に開いてみる。
 目に入って来たのは、いつもと全く変わらないマヨイガの庭の風景。様々な花の香りが風に乗り、ふわりと漂って海馬の身体を包んで溶けた。
 いつもは夜が明ける前に起床する為に、朝の庭の風景をこんなにゆっくり眺めた事は無い。贖罪の神域特有の濁った空に、それでも高く上った太陽がボンヤリと辺りを照らしている。
 寝坊して朝の祈りをさぼってしまった事が頭に浮かび、せめて着替えをして今からでも本殿へ行こうと振り返ろうとして…。だが海馬は、ある事に気付いて身動きする事が出来なかった。

 目が…見える…?

 そうだ…。確か自分は昨夜の新月のお勤めで、城之内に目玉を食われた筈だった。冬の青空がもう一度見たかったと、残念に思っていた事を思い出す。
 けれど今自分の目は、確かに庭の風景を捉えていた。震える手を顔にやり瞼の上からそこを探る。丸い感触は確かに自分の眼球がそこに有る事を示している。
 縁側の端の方に手水鉢があった事を思い出して、海馬はそろりそろりとその場所へ近付いていった。そして縁側に屈み込み、恐る恐る水をたたえた手水鉢を覗き込んでみる。水面に浮く落ち葉の隙間から、ゆらりと揺らめく自分の顔が見えた。
 そこに映っているのは、間違い無く自分の顔。傷一つ無く、青い両目もそのままそこにある。そっと指先で探ってみても、それは間違い無く自分の両目だった。

「目が…ある…」

 そう小さく呟いて、海馬は突如思い出したかのように自分の身体に目を向けた。
 身に纏っているのはいつもの白絹の単衣。どこも血で汚れたような痕は無い。さらに襟を肌蹴て自分の胸や腹部を確認してみても、どこにも傷付いた痕は見付からなかった。それどころか身体全体を綺麗に拭われたらしく、血がこびり付いたような形跡も無い。

「………」

 乱れた単衣を丁寧に直しながら、海馬は暫くそこから動けなかった。
 そうだ…。どうして忘れていたのか。
 新月の晩に食われた贄の巫女は、黒龍神の力により自らの生命力を高め、どんなに酷い傷でも一晩で治ってしまうという事に…。
 けれど、まさかここまでとは思っていなかった。完全に失ったものまで再生するとは、考えもしていなかったのだ。

「なるほど…。これなら合点がいくな」

 生命力を使い果たした贄の巫女は、僅か十年で死んでしまう。
 ここまでの凄まじい快復力では、確かに十年ぽっちしか持たないだろう。
 そう、自らの出した答えに満足した海馬は、もう一度立ち上がろうとした。さっさと部屋の中に戻って水浴びをし、着替えをして本殿に朝の祈りに行こうとしたのだ。
 けれど途端に襲った目眩に耐えきれず、ぐらりと身体を傾けさせた。何とか踏み止まろうとしても、何故だか身体が酷く重くて言う事を聞かない。それどころか受け身を取る事すら出来そうに無く、海馬は来るべき衝撃に備えて強く目を瞑った…のだったが。

「海馬っ!!」

 頭上から焦ったような叫び声が聞こえて、次の瞬間、海馬は逞しい腕に抱かれていた。自分の身体を抱き留めた冷たい腕と、濁った空を背景に視界に入ってきた金の髪と、そして酷く心配そうにしている表情に、海馬は何度か瞬きをしてその名を呼ぶ。

「城之内…?」

 名前を呼ばれた鬼はホッと安心したように息を吐き、そして少し真面目な顔をして海馬の顔を見詰めてきた。

「何やってんだお前…。大人しく寝てなきゃダメだろう?」
「あ…いや。もうこんなに日が高くなっているし、朝の祈りに行こうかと…」
「真面目なのも結構だけど、今日一日は動くのは無理だぜ。てめぇの生命力使って、あんだけ酷い傷を治しきったんだからな。身体…重く感じるし、何より自由に動かないだろ?」
「そ…そうだが…。何故…だ…?」
「傷は治るが、流石に無事ではいられないって事だ。使っちまった生命力の回復にはほぼ丸一日かかるから、今日は大人しく寝てた方がいい。おまけに酷い貧血になっている」
「貧血?」
「そう、貧血。身体ん中の血が足りなくなるのって、貧血って言うんだろ? オレはそう聞いたけど…」
「あぁ…まぁそうだが…」
「傷は治っても身体の血液が復活するまでは少し時間がかかるから、無理しない方がいいぜ。な?」

 言い含められるように同意を求められて、海馬はその場でコクリと頷くしか無かった。現に身体は酷く重く感じ、今は横になってゆっくり休みたいと感じる。
 海馬が素直に頷いたのを見て、城之内は満足そうに笑ってみせた。そして海馬の身体を支えたまま、部屋の中へと戻って行く。中央に敷かれている布団に海馬の身体を横たえると、丁寧な手付きで掛け布団を被せてくれた。

「大人しく寝てろよ。今食事持って来てやるからな」

 そう言って城之内が立ち上がった時、いつの間にか部屋の隅に居た猫がフーッと毛を逆立てて唸るのが聞こえた。
 猫が威嚇しているのは海馬では無い。目線の先は城之内だ。

「何だ。猫を連れ込んでいたのか?」
「オレではない。勝手に入って来たのだ」
「そうか。よしよし、オレは何もしないぜ? ほら…チッチッ」

 城之内は姿勢を低くし、舌を軽く打ち鳴らしながら猫に近付いていった。そろそろと手を伸ばして猫に触れようとする。
 海馬の目から見ても、それは猫を警戒させないような気を遣った動きだった。けれど本能に敏感な猫がそんな城之内に騙される筈も無く…。
 あともう少しで触れるという段階になった時、突然物凄い速さで猫が手を出し、城之内の手の甲に三本のハッキリとした爪痕を付けた。そしてそのまま全速力で障子戸の隙間から逃げ出し、ガサガサという生け垣の音と共にどこかに消えてしまった。
 余りに突然の出来事に思わず上半身を起き上がらせて猫が去った方を見ていると、ふぅ…と軽い溜息が漏れる音が聞こえてきた。海馬が庭に向けていた視線を戻すと、城之内が再び立ち上がりながら少し寂しそうに手の甲の傷を見ているのが目に入ってくる。じわりと滲んでくる血を舌でペロリと舐め取って、へへへ…と困ったように笑っていた。

「久しぶりに触ってみたかったんだけどなぁ…。やっぱりダメだったか」

 全てを諦めきった寂しい笑顔。
 そんな城之内の顔を見て、海馬はふと…先程まで見ていた夢を思い出した。
 激しい罵声を浴びせられながら、何一つ言い訳しなかった城之内。救いも奇跡も、何一つ信じられない城之内。今彼が抱えているのは、絶望という諦めの心…それだけだった。
 あれだけ酷く罵られながら、城之内はそれでも笑っているのだ。でもきっとそれは、心からの笑みでは無い。何故ならそれは…。

「海馬?」

 突如名を呼ばれて、海馬は声のする方に振り返った。すると心配そうな顔をした城之内が、じっとこちらを覗き込んでいる。

「大丈夫か?」
「あ…あぁ…」
「もしかして少し熱があるのか…? たまに居るんだよ。慣れない内は熱を出して寝込む奴が…」

 そう言いながら城之内は海馬の顔に手を伸ばしてきた。きっと額か頬を触って、海馬の熱を確かめようとしただけだったのだろう…。
 それなのに伸びてきた指先を見て、海馬は昨夜自分が見た最後の光景を思い出してしまった。
 闇に光る長い爪。それがどんどん近付いて来て自分の視界を遮り、そして…。

「ゃ………っ!!」

 思わず伸びてきた手を、パシンと打ち落としてしまう。
 一瞬後にはハッと気付き、慌てて城之内の顔を見上げた。
 その時、自分が一体どんな顔をして城之内を見詰めていたのか、海馬には分からない。けれど城之内は特に驚く事も無く、またニコリと笑うとその場から立ち上がって廊下に続く襖を開けた。

「す…すまん…っ!!」

 部屋を出て行こうとしている城之内に慌ててそう謝ると、振り返った城之内は苦笑しながら首を横に振るだけだった。

「別に謝る必要なんて無いぜ。一度でもアレを体験すると、オレの事が怖くなるのは当然だからな」
「だ…だが…っ」
「気にすんなって。皆そうなんだ。お前だけじゃ無いんだからさ」

 そう言って城之内はヒラヒラと手を振ると、「んじゃ、飯持ってくるからな」と海馬に伝え、そのまま部屋を出て行ってしまう。
 後に残された海馬は、酷く遣り切れない気持ちになっていた。掛け布団をギュッと強く掴み、肩を落として項垂れる。
 そうだ…。城之内のあの笑みは…、贄の巫女に対しての遠慮の笑みなのだ…。
 自分の為に犠牲になってくれる贄の巫女に、少しでも安心して貰おうと、少しでも心穏やかに過ごせるようにと、少しでも波風立たないように付合おうと、そういう気遣いの笑みなのだ。
 だがそれは、とても悲しい事だ…と海馬は思った。
 本心からの笑みでは無い。一歩引いた場所からの…偽物の笑み。

「ぅっ………っ!!」

 情けなくて涙が出てくる。
 彼の本心からの笑みを見たいと思った。それなのに…そう思っている自分こそが、城之内にあの気遣いの笑みをさせている事に気付いてしまった。
 それが情けなくて悔しくて、涙が止まらない。

「何が…救いの巫女だ…っ!!」

 城之内を救いたいと…そう思っていた筈なのに…!!
 海馬は城之内を救えると信じていた自らの自信が、足元からガラガラと崩れていくのを感じていた。

休み疲れ...(´∀`;

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何か全然休めてないような二礼です、こんばんは。

世間は昨日から新しい一年が始まりましたが、私は既に満身創痍です…w
てか、騒ぎ過ぎた。年末年始、騒ぎ過ぎた。
この時点で既に疲労困憊って、どういう事なの…w
もう若く無いんだから、少し大人しくしてなきゃダメだねこりゃw

1日の日記にも書きました通り、3日は箱根まで初詣に行って参りました~!
途中、平塚中継所の手前で一旦止まり、旗を持って沿道でずっと応援していました。
相変わらずの迫力に大興奮でした!!
選手達、皆格好いいなぁ~(*´д`*)
最近は携帯でモバイルTVとか見られるので、外に居ても逐一チェック出来るのが良いですよね~。
「今二宮だから、もう少しで来るよ~!」とか、周りの人(勿論全然知らない人w)とwktk出来るのも楽しいですw
かなり早めについたので、めっちゃ沿道の手前に居たのですが…。
ちょっとでもTVに映ってたらいいなwww


長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第十二夜をUPしました。
ふぅ…。スプラッタ状態で年越しさせちゃって、ゴメンね社長w
とりあえず一山越えたので、ここから後半に入っていきます。
この小説では珍しく城之内君がイジケモードを発動しているので、そこを社長がどう解すかが問題になってくるんですよね~。
社長のイジケも大分頑なですけど、城之内は元の性格が明るい分、一旦イジケてしまうと収拾が付かないような気がします…w
頑張れ社長www


以下は拍手のお返事でございま~す(´∀`)


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(*´д`*)

明けましておめでとうございます~!
日記の感想をありがとでした!

年末年始は忙しくてドタバタしちゃいますよね~。
正月休みがちゃんと休みになってなかったような気がします…w
私もそろそろリズムを取り戻さなくては…。

お節とお雑煮の写真を載せたのはですね、件の忘年会でそういう話があがったからでした(´∀`)
地域ごとの料理の違いというのは多々ありますが、特にお正月料理ではそれが色濃く出るような気がします。
お正月も近かったので特にお雑煮の話題で盛り上がり、「あちら辺は○○を入れて、こちら辺は出汁がどうこうで、向こうとこっちじゃ餅の形も全然違う…」と、色んな地域のお雑煮を例に出して話していたんですね。
んで、それじゃウチのお雑煮はどうなの?って話になりまして、それで「んじゃ作ったらUPしとくよ~」と纏まった訳ですw
私は関東育ちですが、母親が東北出身なので、お雑煮はどちらかというと東北色が濃いんですよね。
写真のお雑煮にイクラが乗っているのも、東北の太平洋沿岸部の特色ですw
根菜盛り沢山の汁は東北地方に多いらしくて、青菜(写真に写っているのは小松菜)を入れるのは関東色です。
ちなみにお餅は四角餅を焼いて入れます。(関西の方は丸餅を焼かないで入れるんですよね?)
かなりミックスされていますが、これはこれで美味しいんですよ~w
各地方のお雑煮の食べ比べとかしてみたいですよね~v
一番興味があるのは京都の白味噌仕立てのお雑煮かな。
美味しそう…(´¬`)

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

第十二夜

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 千年もの長い刻の中で、誰も私の存在に気付く者は居なかった…。
 男も…女も…、恋人であった克也でさえ…。
 克也も私も、千年という刻をずっと孤独に過ごして来た。
 だからこそ、奇跡だと思ったのだ。
 そう…お前の存在は確かに奇跡なのだ。
 お前の存在こそが奇跡の始まりなのだ。
 私はそう…信じている。
 信じさせてくれ…『救いの巫女』よ…っ!!

 




 ゆらゆらと…。まるで波間に漂う小舟に乗っているような感触に、海馬はそろりと瞳を開けた。
 鈍く霞んだ視界の中、まだ暗い夜空を背景に金色の髪が揺れているのが分かる。

「………じょ…ぅ…ち…?」

 掠れた喉から何とか声を絞り出して名前を呼ぶと、それに気付いた城之内がこちらを向いた。視界は相変わらず霞んでいて、城之内の顔がよく見えない。

「気が付いたか?」
「………」
「今、家まで連れて行ってやるからな。寝ててもいいぞ」
「………い…え…?」

 頭がボーッとして、城之内の言葉が理解出来ない。ただ、寝ててもいいんだという事だけはしっかり理解出来たので、海馬はその言葉に従って再び瞼を閉じた。
 逞しい腕が自分の身体を抱き上げてくれているのが分かる。その腕の強さに心から安心し、けれどまるで氷のような体温の冷たさにとても悲しくなった。

 この腕が…もっと熱ければいいのに…。

 そう願いながら、少しだけ浮上した意識がまた深く潜っていくのを感じていた…。



 チリ――――――ン………。

 どこかであの鈴の音が鳴っているのが聞こえて、海馬はそっと瞳を開いた。色の無い真っ白な空間に驚いて視線を辺りに巡らすと、数メートル先に二人の人物が立っているのが見える。
 一人は黒い着流しを着た城之内。そしてもう一人は巫女姿の人間だった。
 自分では無い、別の人間だ。長い髪を一つに纏めて背中に垂らしている。小柄な体型から女性だという事が分かるが、誰かという事までは分からなかった。
 城之内はこちらを向いている為に顔が見えているが、手前に立っている巫女はその城之内と向き合う形の為、表情が一切見えない。背中を向けたままの巫女は、必死に何かを城之内に訴えている。そしてそれを聞いている城之内の表情は、どんどん重くなっていった。

「近寄らないで!! この…化け物!!」

 ふいに、女性の怒鳴り声が海馬の耳に入ってきた。その声にハッとして城之内の方を見ると、彼は酷く辛そうな表情をしながら、けれど決して反論する事無く黙して俯いている。
 女性の声は、恐怖で酷く震えていた。そして城之内に指をさし、また何か煩く喚いている。
 城之内が余りに辛そうに女性の言葉を聞いている為に、海馬は罵声を浴びせ続けている女性を留めようと思わず一歩を踏み出した。ところがその途端、城之内の目の前にいる人物の映像が切り替わった。
 先程とはまた違う人物。今度もまた女性のようだった。

「家に帰りたい…。お父様とお母様にお会いしたい…」

 両の掌を顔に当て、肩を落として泣いている。泣き続ける巫女を前に、城之内はまた辛そうな表情をした。けれど決して声をかける事は無い。
 暫くその様子を見守っていると、海馬の目の前で次々と巫女が入れ替わっていった。そして城之内に対して自分勝手な事を次々と言っていく。

「化け物め…っ!! 私の側に来ないでくれ…っ!」
「こんな風に死ぬ為に生まれて来た訳じゃないのに…っ!! 誰か助けて…っ!!」
「新月の晩には必ずお勤めを果たします。けれどそれ以外では…貴方の顔など見たくもありません…っ!」
「もう嫌…っ!! あんな痛くて苦しいのは…もう嫌よ…っ!!」 
「鬼になった時点でさっさと死ねば良かったのに…。子孫にまで迷惑をかけるなよ…っ!」
「元は黒龍神に仕える神官だったのでしょう? こんな事をしてまで生き続けて、恥ずかしくないの?」
「救いなんか訪れるものか…! お前に待っているのは地獄落ちだけだ!!」
「黒龍神様…助けて下さい…っ!! 私はこんな処で死ぬのは嫌です…っ!!」
「死ね…っ!! お前が今ここで死ねばいいんだ…っ!! そうすればこっちは現世に帰る事が出来るのに…っ!!」
「お前のせいで、俺の人生は滅茶苦茶だ…っ!! どうしてくれるんだ!!」
「帰して…っ!! 私をもう…家に帰して…っ!!」

 様々な事を言っては消えていく歴代の贄の巫女達。「死ね」「化け物」と何度も蔑まされても、城之内は言い訳一つしなかった。ただ黙って彼等の言葉を聞いている。辛そうに表情を歪めても、涙一つ見せない。けれど、硬く握った拳が細かく震えているのを、海馬の目は見逃さなかった。
 酷い暴言の数々に、海馬は思わず自分の耳を押さえたくなる。

 もう止めてくれ…っ。

 そう思って顔を上げると、ふと、その暴言の中に少しずつ優しい言葉が混じっていくのが分かった。刻が経つに連れて、城之内に対する同情の念が増えていったらしい。
 暴言は相変わらず止まない。けれど時折現れる、城之内を心配する巫女達。決して多くはないが、彼を心から同情する者達は確かに居たのだ。そして暫く経った頃…。

 チリ――――――ン………。

 鈴の音と共に、海馬の目の前にどこかで見た事のある女性が現れた。
 どこか憂いを帯びた表情の、優しそうな美しい女性。

「困った人…。どうしても奇跡を信じられないのですね」

 深く優しい声で城之内に語りかけるその女性は、海馬がこちらに来る前に黒龍神社の本殿で対面した…漠良の叔母だった。

「本当は私が救って差し上げたかったのですけれど…。残念ながら私は九十九代目ですから。あと一代…惜しかったわ」
「何代目だろうと関係無い。オレを救えるヤツなんている訳が無い」

 それまでずっと黙っていた城之内が、ここに来て初めて口を開いた。
 全てを諦めきってしまったかのような…重い口調だった。

「またそんな事を…。黒龍神が自らそう予言なさったのですよ?」
「それは本当に予言だったのか? ただの気休めだったんじゃないか?」
「龍神がそんな意味も無い気休めを言うとは思いませんけどね。貴方は…黒龍神を信じてはいないの?」
「信じるも何も…。今のオレに、神を信じろと言うのか?」
「だって貴方も昔は、黒龍神に仕える神官だったではありませんか。黒龍神の御力はよく知ってらっしゃるのでしょう?」
「あぁ、知っている。嫌って言う程知っているさ。だから奇跡なんて信じられないんだよ…」

 城之内はそう言うと、その場にしゃがみ込んで俯いた。

「あれだけの事をしたオレを、黒龍神は決して許さない…。本当はオレを殺すつもりでいたんだからな。だから救いなんて来ないし、救うつもりも無い。オレを救う事は、黒龍神の本心じゃないからな。オレは…救われてはいけない…」

 蹲った城之内に、困った顔をしたままの漠良の叔母が近付いて行って、そっとその背を撫でた。白く細い手で何度も何度も、優しく…。

「本当に救う気が無いのなら、黒龍神だってそんな事は仰らないわ。貴方はきっと救われる…。次の贄の巫女によって…必ず。だからどうか、百代目の贄の巫女を…救いの巫女を信じて差し上げて。そして貴方も…自分の救いを求めて下さい」

 チリ――――――ン………。

 城之内を見詰める彼女の視線は慈愛に満ちていた。その光景から目を離す事が出来ずに立ち竦んでいると、三度あの鈴の音が辺りに響いた。そして海馬の目の前でまた人物が入れ替わる。
 力無く本殿の前の石畳に倒れ込んでいる城之内。返り血で染まった神官着をそのまま着ていて、身体を丸めるように倒れている。血は既に乾いていて、着物はバリバリになっていた。
 余りにもピクリとも動かないので、海馬は恐る恐る城之内の側に近付いてみた。
 長い前髪が影を作って、城之内の表情は見えない。ただ腕の中に、何か黒い固まりのような物を大事そうに抱えている事だけは分かった。

「城之内…?」

 呼びかけてみても反応すら無い。ふと、まるで死んだように寝転がっている城之内の身体の上に影が出来たのに気付いて、海馬は目線を上げる。そこにはいつの間にか巫女姿の一人の女性が、自分と同じように城之内の事を見下ろしていた。

「………?」

 今まで海馬が見てきた歴代の贄の巫女達は、一人一人がとても若かった。大体が十代後半から二十代後半くらいの間だっただろう。
 だがこの女性は、その中でも一番年上のようだった。少なくても十代や二十代では無い。多分三十代前半から四十代前半にかかる位の年齢だろう。ただ、年の割にはとても美しい女性だった。穏やかな笑みを浮かべて、漠良の叔母と同じ慈愛の瞳で城之内の事を見下ろしている。
 暫く城之内を見詰めていた女性は、その場でしゃがみ込むと城之内の腕の中に手を伸ばした。そして大事そうに抱えられていたものを、抜き取ってしまう。

「っ………!?」

 女性が城之内から取り返した物を見て、海馬は思わず後ずさってしまう。女性の手の内にあった物…、それはせとの生首だった。
 季節は冬。冷たい空気が腐敗を遅らせていたのだろうが、もうその首はとても見られた物では無い。白い肌はドス黒く変色し、あちこちの肉が腐り落ちている。目玉もすっかり溶けてしまって、あの美しかった青い瞳はもうどこにも見られなかった。
 醜く腐った生首。けれど女性は不快な表情一つせず、その首を大事そうに胸に抱いた。

「くっ………!!」

 自らの懐からせとの首が消えた事に気付いた城之内が、一拍遅れて反応する。慌てて瞳を見開き、上半身を持ち上げて女性に向かって手を伸ばした。

「せと…っ!! 返せ…っ!! オレのせとを返せ…っ!!」

 必死に起き上がろうとしているが、身体がぐらついてまた地面に倒れ込んでしまう。ゼェゼェと荒く息を吐きながら、それでも何とかせとの首を取り戻そうとしている城之内の姿に、海馬は泣きそうになった。完全に弱り切っている城之内から側の女性に視線を移すと、彼女は未だ慈愛に満ちた瞳で城之内の事を見詰めていた。そしてせとの首を城之内から隠すように袖で覆ってしまう。

「お可哀想に…。こんな姿を晒され続けて、せと様もどんなにか恥ずかしくて哀しい思いをなさっている事でしょう」

 せとの首を城之内の視線から隠した女性は、とても優しい声でそう呟いた。
 聞いている者が心から安心するような…そんな素晴らしい声だった。

「ましてや貴方はせと様の恋人であった筈。大好きだった貴方にこんな姿を晒すのは、せと様にとっては何よりも辛い事だと思いますよ」
「か…えせ…っ。せとは…オレ…が…殺した…ん…だ…っ! オレが…側…に…いて…やらないと…泣いちまうだろ…っ!」
「克也…よくお聞きなさい。こんな事をしていては、せと様を辱めるだけですよ。せと様に…これ以上哀しい思いはさせたくないでしょう?」
「っ…! うぅっ…! せ…と…っ! せと…っ!!」
「三年…。三年間だけ土に埋めて差し上げましょう。三年も経てば、大地の浄化によって骨だけになる筈です。そこまでになれば…きっとせと様も恥ずかしくは無いでしょうから」
「嫌だ…っ! せと…!! せとぉ…っ!!」
「聞き分けなさい、克也。今の貴方では私を止める事は出来ませんよ。もう一月以上もこんなところに寝転がっていて…。最初の新月の晩も何も食べていないから、こんなに弱り切ってしまっているではありませんか」
「ふっ…うっ…! うっ…!! せ…と…っ!!」
「えぇ…そうよ。泣いてもいいんですよ…。これから…一緒に罪を償っていきましょうね…。私も母親として…貴方の罪を共に背負う覚悟があります」
「っ…!! うっ…! 母…上…っ!!」

 二人の会話を見ていた海馬は、「そうか…」と小さく呟いた。
 この美しい中年女性は、城之内によく似ていたのだ…。
 城之内が食人鬼に堕ちて最初の百年は、三大分家からでは無く城之内本家から巫女が選ばれていた。そうなると、特に初期の巫女は城之内自身と何かしら繋がりがある人物だとは思っていたが…。

「まさか…母親だったとはな…」

 黒龍神の慈悲も何も無い…全くの零から始めなくてはならなかった初代贄の巫女。後の巫女達がある程度の慈悲を受ける事が出来ているのは、全てこの人のお陰だった。
 基本的に処女童貞が原則とされている巫女に、既に母親となっている彼女が選ばれたのは、きっと黒龍神の思惑があったのだろうと思う。そうでなければ…こんな大役はとてもじゃないが務まらないだろう。

 チリ――――――ン………。

『この方は…私を隠してくれたのだよ…』

 突然、鈴の音と一緒になって背後から聞こえてきた声に海馬は振り返った。
 そこにいたのは白い着物を着た、せと本人だった。

『日に日に醜く腐っていく私の首…。私は…そんな自分を克也に見られたく無かった。ずっと見るなと…私をもう見ないでくれと叫んでいたのに、その声は克也には届かなかったのだ…』

 悲しそうに顔を歪め、せとは自らの首を大事に抱える城之内の母親を見詰めていた。

『けれどこの方が…私の首を隠してくれた。縋る克也を振り切って、土中に埋めてくれたのだ。お陰で三年後に掘り返された時には、すっかり醜い姿ではなくなっていた。本当に…感謝しているのだ』

 泣き縋る城之内とそれを押し留める母親の映像が少しずつ薄れていって、やがて綺麗に消えてしまった。この白い空間に残されているのは、今は海馬とせとだけだ。
 城之内と母親が消えていったその場所をいつまでも見詰めているせとに、海馬は身体ごと向き直った。そしてこの贖罪の神域に来てからずっと疑問に思っていた事を口に出す。

「お前は…何物だ?」

 海馬の質問にせとは振り返り、視線が合わさるとフッと微笑みを浮かべる。

「ここに残った魂なのか?」
『いや…魂では無い…』

 海馬の問いに、せとはゆるりと首を横に振って答えた。

『私の魂は輪廻の方式に則って、疾うに転生済みだ…』
「では何だ? 何故意志を持ってここにいられるのだ?」
『思念だ』
「思念?」
『そう…。私はただの思念の固まり。克也の事が心配で放って置けなくて、側にいたいと強く願ったせとの思念の固まりだ。余りに強い人の願いは、思念を有る一定の場所に繋ぎ止める。それが私。克也の側にいて、ただ見守る事しか出来ない無意味な存在だ』
「………」
『誰にも存在を認められる事無く、ただずっとここにいた。千年もの長い刻を…克也が苦しむ様だけを見続けて来た。何かしてあげたくても何も出来ない。何故なら私はただの思念の固まりに過ぎないからな』
「お前………」
『ところが奇跡が起こった。今まで誰一人私に気付く者はいなかったというのに、お前だけが気付いてくれた。私の姿を見、声を聞き、意志を交わす事が出来る。お前は何とも思っていないようだが、これは本当に奇跡なのだよ。千年の贖罪の中で、初めて起こった奇跡なのだ』
「奇跡…?」
『そう、奇跡だ。だから私は信じている。救いの巫女よ…どうか克也を救ってやってくれ…。私も出来うる限りの協力をしよう』
「アイツを救う? そんな今更な事を言われても困る。オレはここに来る前から、あの鬼を救ってやると決めていたのだ」

 せとの頼みに、海馬は胸を張ってそう答えた。まるで「何を馬鹿な事を聞いているのだ」とでも言うように。
 そんな海馬の答えを聞いて、せとは心底嬉しそうに破顔した。そして美しい笑顔を浮かべたままコクリと一つ頷いて口を開く。

『宜しい。では、そろそろ目覚めなさい…』

 チリ――――――ン………。

 最後にもう一度だけ澄んだ鈴の音が響き渡り、海馬の意識は浮上していった。

明けましておめでとうございます!!

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正月からグダグダな二礼です、こんばんは。

明けましておめでとうございま~す!!

2009年は大変お世話になりました。
今年もどうぞ宜しくお願い致します!!

年末年始と遊びまくって、正月からヘットへトになっております…w(体力無いのに無理するから…;)
前回の日記で書きました通り、12月30日は冬コミに行って参りました!
とりあえず散たんとポチさんにご挨拶だけして、買い物へ。
一通り買い物を済ませた後にもう一度ご挨拶。
その場で忘年会の予定を立てさっさと帰宅。
サークル参加で動けない二人の代わりに店を探し予約を入れて、二人が会場から出てくるまで家でゆったりと戦利品を読みふけっておりました…w
で、夕方から合流して忘年会に行ったのですが…。

騒ぎ過ぎて喉が痛くなり、おまけに笑い過ぎて腹筋が鍛えられましたwww

ダメだこりゃw 何話しても爆笑するんだものwww
最初は遠慮して普通に萌え話しようという努力が垣間見られましたが、気が付いたら下(シモ)のお話になってたもんなぁ…(´∀`;
何だよメタモルフォーゼってwww 昔の耽美小説って表現が凄いよな…w
あと『炙り』の読み方は『いぶり』じゃないですwww
メニュー見て散たんの間違いに気が付いて、暫くツッコミも入れられない程爆笑していましたw
散たんとこの日記じゃ結構すぐにツッコミを入れてた感じですけれど、実際は

「っ…w ひ…ひひ…っw ひははっ…w ちっ…ちがっ…w ぶはっ…www これ…いぶりじゃ…無い…っw あぶりだよ…っ!!www(その後耐えきれずに爆笑)」

と、こんな感じでプルプルしてましたw
あとこの場でちょっとツッコミを入れさせて頂くと、ポチさんと私が「社長が履いている」と主張したのはボクサーパンツでは無くて、『ボクサーブリーフ』です(*´∀`*)
ボクサーパンツはアレだね。試合する人が履いてるあのデッカイヤツだねwww

何はともあれ、非常に楽しい忘年会でした!!
居酒屋さんに5時間近く居たような気がするけど、楽しかったからキニシナイ!!(・3・)

散たん、ポチさん。本当に楽しかったです!!
また一緒に遊びましょうね~v(*´д`*)


さてさて。正月の予定としては、元日から友人達が遊びに来ているので、まだまだ騒いでしまいそうです…w
でも明日は一日ゆっくり出来るので、少しは小説も書けるかな?

そうだな~。あとは地味に地元の人にしか分からない正月の話題など…w

二礼は新春恒例の箱根駅伝の大ファンなので、明日(2日)は朝からずっとTVに釘付けになります。
実家が横浜市の戸塚という処の近くにありましたので、毎年戸塚中継所近辺に応援に行っていたんですね。
たかが大学生の駅伝と侮るなかれ!!
実際間近で見ると、物凄い迫力でビックリするんですよ!!
長距離ランナーなのに物凄いストライドで、まるで短距離ランナーのような速さで目の前を走り抜けるんです。
もう本当に、見れば見る程かっこいいんですよ~!! 最高です!!(*´д`*)
という訳で東京に越してからもTVは必ずチェックしてますね。
2日はずっと家に居てTV見てるだけなんですけど、3日は外で見るチャンスがあるんです。
二礼は毎年3日に箱根まで車で初詣に行くんですけど、コースが箱根駅伝と全く一緒なので、必ずどこかですれ違うんですよね。
(3日は復路なので、行く方向が違うのですれ違うだけ)
大体平塚~大磯辺りですれ違って応援して、そのまま選手達が走ってきたコースを箱根に向かって進んで行くんです。
箱根の山を登って箱根神社でお参りをして、昼食を食べながらラジオの中継を聞くっていうのが毎年のウチの正月光景なんですw
(どこのお店も、ちゃんと箱根駅伝のラジオやTVを流しています)
今年は毎年自分が応援している神奈川大学が予選で落ちてしまって、出場出来なくなってしまいました。
非常に残念ですが、他の大学の走りにも期待しているので、今からとても楽しみです~!!


んでは、新年一発目の日記は以上で終了致しますね~。
次回の更新は5日になるかな。
その日には『無限の黄昏 幽玄の月』の続きもUP出来ると思います~!
そう言えば散たんが年末の更新で「こんな処で切ってゴメンね社長」みたいな事書いていましたが、私に比べれば全然マシだと思います…w
向こうはただのすれ違いだけど、こっちは出血大サービスのスプラッタだもんなぁ…;
社長をあの状態のまま置いておくのもどうかと思いますので、早々に続きを書きたいと思っておりますwww

よし! 日記も書いたし『はじめてのおつかい』見てくるぞ~!!


最後に31日から1日にかけての写真を少々…。
どうでもいい事ですけど、お雑煮って地方色が色濃く出るから、見てるだけでも楽しいですよね~(´∀`)
 

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1日午前1:00頃。地元の神社に初詣に行って来ました。
普段は誰もいない小さな神社なのに、ズラ~ッと大行列です。

 

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本殿前。まだまだ行列w
地元の人が無料で配ってくれる甘酒が、温かくてとても美味しかったです~(*´д`*)
今年も一年、何事も無く平和に過ごせますように…(´人`)

 

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焚き火が温かい…。ホッとしますね。

 

DSC04664_s.jpg

あけおめことよろ(*'-')
朝が来たのでお節を食べます。

 

DSC04669_s.jpg

忘年会でも話題にあがっていた、ウチの具沢山お雑煮です。
具に隠れて見えませんが、お餅は四角餅(のし餅を切り取ったもの)を一度焼いて、そのまま入れてあります。
(あ…。箸が逆に置かれてらw)

 

DSC04670_s.jpg

お雑煮アップw
餅が見えないwww