*素質シリーズ - ページをめくる - 素質Ⅸ(前編)

城之内×海馬。城之内の一人称。
素質でのクリスマスネタ&実は社長が絶倫だという占いを活かして書いてみました…w
でも多分、他のに比べたらきっと普通プレイです。
いや、ホントに(*'-')
(珍しくまだ本番を書いていないので、*マーク抜きですw)

 




 オレの恋人は年末年始が超忙しい。
 玩具・ゲーム産業では大手企業の海馬コーポレーションの事だから、年末年始はまさに稼ぎ時だ。クリスマス商戦から始まって、年明けのお年玉商戦まで全く気が抜けない日々。社員は当然の事ながら、社長なんて地位に就いてりゃ、そりゃピリピリと胃が痛くなるような毎日が続くだろう。
 だからオレ達は、普通の恋人同士みたいにクリスマスの夜を二人きりでロマンチックな気分で迎えたりとか、お正月休みをゆっくり過ごしたりだとか、そういうのが全く出来ない。
 一般人のオレとしては、せっかくのイベントにイチャイチャ出来ないのは確かに不満だった。だけど海馬が自分の夢にどれだけ本気かって事もよく知っているから、余り煩くは言えないんだ。仕事してる時の海馬の目はとにかく真剣で、そういう海馬もまた大好きだったからさ。
 だから、年明け最初の土曜日の朝に海馬から『明日の日曜日は休めそうだから、今夜は泊まりに来い』ってメールを貰った時は、天にも昇る程嬉しかった。
 約二週間ぶりの逢瀬。最後にセックスをしたのがいつだったか、ちょっとよく思い出せそうにない。
 ていうかこれって、年明け一発目のセックスって事じゃない? てことは姫はじめって奴? いや、まだセックス出来るって決まった訳じゃ無いけどさ。でも、海馬がそういう風に誘ってくる時って大概向こうもヤりたがっている時だから、まず間違い無くする事になるんだろうな。
 なんて事を考えつつ、にやつきながらオレは海馬邸に泊まりに行く事にした。


 久しぶりに海馬とモクバと三人で夕食を済ませて、その後はゲームをしたりして遊びまくった。年末年始が忙しいのは海馬だけじゃなくて副社長であるモクバも同じだったから、その労をねぎらう意味でも一緒に遊んでやりたかったんだ。
 でもやっぱり疲れていたんだろうな。二時間ちょっとも遊ぶとあくびの数が増えてきて、モクバは眠そうに目を擦り始めた。「眠いのか?」と聞けば素直にコクリと頷くから、海馬と二人で部屋まで送ってやった。
 ニコリと微笑みつつ「おやすみなさい」と言うモクバの言葉と共にパタンと閉まるドアを二人で眺めて、そしてふいに見詰めあった。視線が合った途端に海馬の青い眼が細められて、ニヤリって感じで笑みを浮かべる。

 あぁ…そうだな。子供の遊びはもう終わり。
 これからは…大人の時間だ。

 なーんて思いながらオレも同じようにニヤッて笑って、海馬の細腰に手を回しつつ私室まで歩いて行く。で、ドアを開けてキスでもしながら雪崩れ込むようにベッドに…なんて考えていたら、リビングの隅っこに山盛りになっているプレゼントの箱に驚いて、それどころじゃなくなってしまった。
 何だ…この箱の山。しかもどう見てもこのラッピングは、クリスマス用のものばかりなんだけど…。

「海馬…」
「何だ」
「何これ?」
「見たままだが」
「クリスマスプレゼント?」
「そうだが?」
「何で正月も終わったってーのに、こんな場所に積んであるの?」
「一つ、開ける暇が無かった。二つ、どうせ下らない物だから捨てる予定だった。以上」
「はぁ…。開ける暇が無かったってのは分かるけど、下らない物だって分かるのは何でだ?」

 何気なく、本当に何気なくそう尋ねると、海馬はオレの顔を見てふぅ…と深く息を吐き出した。そしてオレの側から離れるとプレゼントの山まで歩いて行く。一番上に積んであった小さな箱を手に取り、それにチラリと視線を向けると、またわざとらしく溜息を吐く。

「ここにあるプレゼントは、取引先の企業の偉い奴からかKCと業務連携したり、またはこれからそういう繋がりを持ちたい奴らからの贈り物ばかりだ。下らない物だとは言ったが、多分殆どはまともな物だと思う。だが、オレを所謂『そういう目』で見ている奴らの分も含まれているからな。中にはとんでも無い物も混じっていたりする訳だ。プレゼントの中身を一々確認していて、『そういう』物が出てくると途端に嫌気が差すのでな。だったら最初から全部開けない方がマシだろう?」
「うん…。まぁ…確かに」
「だからと言って即捨てするのも気分が悪い。だから今までは頃合いを見て、落ち着いた頃に纏めて捨てていたのだ」

 海馬の言葉にオレが「なるほどね」と答えるのと同時に、海馬は持っていたプレゼントの箱を元の山の中にポイッと投げ捨てた。小さな箱がコロコロと山肌を落ちていき、壁に当って動きを止める。
 自分が今まで持っていたプレゼントの箱が他の箱に埋もれて見えなくなったのを確認して、海馬は「フン」と鼻を鳴らした。そしてシャツのボタンを外しながら浴室へと向かって行く。
 あぁ、風呂に入るんだなぁ…と何となく考えて、そしてもう一度目の前に広がるクリスマスプレゼントの山に目を向けた。

「なぁ、海馬ー」

 振り返りつつそう名前を呼ぶと、海馬は浴室へ続く扉のノブに手を掛けたところだった。一旦動きを止めて「何だ?」と首を傾げてくる。

「お前、今から風呂入るんだろ?」
「そうだが」
「どうせ長風呂になるんだし、その間暇だからさー。このプレゼントの中身、確かめてみてもいい?」
「………。はぁ?」
「いや、お前の話聞いて何か気になってよ。大企業のお偉いさんとかがさ、自分よりずっと年下の学生社長に一体何を贈るのかってやっぱ興味あるじゃん」
「あるじゃん…と言われても、オレは別に何の興味も無いが…」 
「お前が無くてもオレはあるの。なぁ…開けてもいい?」

 オレがしつこく「なぁ、なぁ」と言っていると、海馬は諦めた様に小さな溜息を吐いた。そして「好きにしろ」と言い残して、浴室へと消えていく。
 ちょっと呆れてたみたいだけど、好きにしろって言われてるなら好きにしていいよなって事で、オレはプレゼントの山に手を伸ばして最初に手にした箱の包み紙を嬉々として剥がし始めた。



 どうせ捨てるつもりのもんだから、別に丁寧に剥かなくてもいいだろうって事で、オレはビリビリと好き勝手に包装紙を破いていく。
 そうしたら出てくる出てくる…。物の価値がイマイチよく分かっていないオレの目にも「高級品だろう!」と理解出来るようなものがわんさかと出て来た。

 海馬に似合いそうな細身のスーツ(上下)。
 本皮のコート。
 ブランド物のバッグ。
 どう見てもガラスじゃなくて本物のダイヤモンドが付いた、ネクタイピンとカフスボタンのセット。
 超有名メーカーの腕時計。
 一本ン十万もするような洋酒とかワイン。(海馬は未成年なんだけどな…)
 滅茶苦茶格好いいシルバーのジッポライター。(煙草は吸わないっていうか、だから海馬は未成年なんだってば…)
 指輪、ネックレス、ブレスレットなどの宝石類。等々…。

 貧乏人のオレから見れば「流石」としか言いようの無いものが次々と出て来た。その殆どは趣味の良い物で占められていたけど、ただ時々、どうにも首を捻りたくなるような物も出てくる。

 鋲の付いた革パンツ。
 鎖付の首輪。
 何故か宝石の付いた手錠。
 SM用の鞭。
 高いヒールのブーツ。
 中身が何だか分からない怪しい飲み薬。
 様々な味や匂いのローションのセット。
 このオレも見た事が無いような凄まじい大人の玩具。
 おまけに面白コンドームの数々…。

 海馬が「下らない」と言った物も、綺麗に包装されたプレゼントの箱から沢山出て来た。
 そうか…そういう事か。こりゃ確かにプレゼントを開ける意欲も失われるってもんだな。でも、こんなもん贈ってどうするつもりだったんだろうなぁ…。いや、下心丸見えってのは分かるんだけどさ。
 例えばこのSM用の鞭にしても、海馬に使いたいのか、それとも海馬に使って欲しいのかがよく分からない。興味があって一緒に付いていたカードを読んでみたけど、海馬に対する熱烈な愛の言葉が気持ちの悪い程にビッシリと書かれていて、一行目を通しただけで読む気が失せてしまった。他のプレゼントにもカードは付いていたけど、どうせ似たり寄ったりだと思い、読むのを止める。

 ていうかこれって、海馬の欲求が外に漏れ出してるって事はないよな…?
 そうだったら、ちょっと複雑だ。

 確かにオレは立派なSとして目覚めちまったけど、海馬を鞭打つような事はしたくないんだよ。打たれるのも痛くて嫌だし(大体オレSだから、打たれる方にはならない)、いくらドMだからって海馬を打つのも嫌だ。
 海馬がこの海馬家に養子になったばかりの頃、どれだけ凄まじい虐待を受けていたか、今のオレはもう知っている。そのせいもあるし、もう二度と海馬にそんな痛い目に合って欲しくも無い。
 どうせヤルんだったら、やっぱり気持ちいいプレイの方がいいじゃんな。鞭に打たれて痛がっている海馬より、「気持ち良過ぎておかしくなるぅ~!! あんっあんっ! もうらめぇ~っ!!」って悶えている海馬の方がずっと興奮する。

 ………まぁ、海馬は「らめぇ」なんて言ってくれないけどさ。
 言って欲しいけど。

 あ、ヤベェ。想像したらちょっと勃ってきちゃった。
 何はともあれ、こんな気持ちの悪い変態に海馬をどうこうさせるつもりは無い。「残念でした。海馬はオレの恋人なんだからな」なんて呟きながら、オレは次のプレゼントに手を掛ける。
 オレの手が掴んだプレゼントは、随分と軽い紙袋だった。赤と緑のいかにもクリスマスカラーの包装紙に、金色のリボンが光っている。巻き付けられたそれを無造作に解いて、紙袋をガサガサと開けてみた。そして中から出て来たその物体に、オレは思わず「ひゅう♪」と口笛を吹いてしまう。
 出て来たのは如何にも下らないプレゼント。だけどちょっとだけ、魅惑的なプレゼントだった。


 数刻後。パタンとドアが閉じる音がしてオレは振り返った。そこにはバスローブを羽織った海馬が、スッキリした顔で髪の毛をタオルで拭いている。
 オレの方をチラリと見遣り、そのままツカツカと部屋付きの冷蔵庫に近付いて行って、その中からミネラルウォーターのペットボトルを取り出した。キャップを捻って口を付けながら、ゴクリと喉を鳴らして水を飲む。
 嚥下する度に上下する喉仏が色っぽいなぁ…なんてニヤニヤしながら見ていたら、一旦ペットボトルから口を離した海馬にキッと睨まれた。

「何だ…。にやつきおって…」
「別に」
「プレゼントの物色は終わったのか?」
「ある程度はな。マジで下らない物が多かった」
「そうだろう。だからオレは嫌なのだ」
「だろうな。確かにあんなの見ちゃうとゲンナリするよな。でも、ちょっと良い物も発見したぜ」
「先程からニヤニヤしているのはそのせいか…」
「うん!」
「元気に答えるな。それで? 一体何を発見したというのだ?」
「ん? あぁ、コレだよコレ」

 そう答えて、オレは先程発見したプレゼントをピラリと取り出した。
 ヒョウ柄の薄い布地。端と端に人差し指を差し込んで、海馬の目の前でピローンと広げて見せる。

「ほら、コレ! すげぇだろ!!」

 オレが取りだした物体を、海馬は眉根を寄せて睨み付けるように見詰めていた。
 最初は如何にも下らない物を見るような目付きだったんだけど、オレがにやつきながら黙って海馬の反応を見ていたら、海馬もオレが何を言いたいのか分かったんだろうな。次の瞬間には顔を真っ赤にしてた。

「で? どうする?」
「どうする…とは?」

 分かっている癖にシラを切る海馬にクスリと笑って、オレはなるべく甘えるような声を出しながら手に持ったソレを差し出した。

「履いてみない? って言ってるんだけど」

 そう言うと海馬はますます顔を赤くしてしまう。けれど数秒後、「ふむ…」と小さく唸りながらそろりと手を伸ばして、オレからソレを受け取った。
 薄い布地でヒョウ柄の、如何にもって感じな際どいラインの…ビキニパンツを。