城之内克美ちゃんと海馬瀬人子さんの百合です。
百合と言ってもエロはありませんがw
城之内と海馬の女体化が大丈夫な方だけどうぞ~(´∀`)
この童実野高校には、二大マドンナと呼ばれる少女達がいる。
余りにも対照的で余りにも似通った彼女達は、マドンナの称号通りに童実野高校に通う全ての男子達の憧れの的となっていた。
ただ一つ普通のマドンナと違う事は、彼女達は決して女性らしく無いという特徴があったのだ。
まず一つ。彼女達は決して女性らしい喋り方をしない。
何せ二人揃って一人称が『オレ』なのだ。語尾も「~わ」とか「~ね」とかは一切使わず、一方は「~なのだ」などと言うどこの時代劇だという喋り方をし、もう一方に限っては「~だぜ」等の完全な男言葉だった。
そして二つ目。普段の態度が完全に男そのもの。
女子高生らしく可愛いグッズに興味を持ったり、好きな男子の前で自分の可愛さをアピールしてみたり、たわいもない事で友人と一緒にちょろっと泣いてみたりと、そういう事は一切しなかった。代わりに彼女達が見せたのは、いっそ清々しい程の男らしい態度。いつでもサバサバとし、何かに追われているかのように廊下を大股で歩き、まるで男子生徒のようにカードゲームに本気で興じていた。
普通、女子生徒がここまで完全に『男』になってしまっていたら周りの人間は引いてしまうのだろうが、ところがこの童実野高校の生徒達は逆にそんな彼女達に強い憧れを抱いてしまったのだ。
何せ…彼女達は外見だけは最高に良かったのだ。
黙っていれば美人&可愛いの二大マドンナが敢えて男らしい態度を見せる事によって、男子生徒はそのギャップにメロメロになり、女子生徒は頼れるお姉様像を脳裏に描き出し、ついにはファンクラブまで造られる始末。
そんな風に学校中を魅惑の渦に巻き込みながら、本人達は全く意に関せず今日も今日とて自分達らしく学生生活を送るに過ぎなかった。
童実野高校で二大マドンナと言われている海馬瀬人子と城之内克美が出会ったのは、この高校に入学してからだった。
周りの生徒の中には、これだけ似通った二人ならきっと幼馴染みで、仲が良すぎる為に同じような一人称や喋り方に統一したんだろうと思っている人間が何人もいた。
だが誤解しないで欲しいのは、彼女達はそれまで何の面識もなく、高校入学後たまたま同じクラスの隣同士の席になって初めて顔を合わせたに過ぎないという事だ。
彼女達はとにかく何から何まで正反対だった。性格は元より、まず家庭環境が違い過ぎる。
海馬瀬人子は、この童実野町では知らぬ人間はいない、それどころか世界的に超有名な海馬コーポレーションの若き女子高生社長だった。童実野町の一等地に広大な屋敷を持ち、毎朝毎夕黒塗りのリムジンが彼女を迎えに来て、これまた黒服サングラスの厳つい男がボディガードとして常に側に付いていた。
一言で言えば超セレブ、更に突っ込んだ言い方をすれば、この童実野町の支配者そのものだった。
対して城之内克美はと言えば、これまた典型的なド貧乏だった。住まいは団地の三階で、日々金が無い金が無いと騒いでいる。
数年前に両親が離婚して、彼女は妹と別れ父方に引き取られたのだったが、この父親がまた酒浸りのどうしようもないダメ親父だったのだ。この父親のせいで彼女は中学生時代は酷く荒れたらしかったが、高校に入ってからは心を入れ替えて元の明るい性格を取り戻している。
生活費と学費を稼ぐ為に朝は早くから新聞配達の仕事をし、夜もコンビニやゲームセンター等で細々としたバイトをする生活が続いていた。
第三者から見れば本当に余りにも違い過ぎる二人のマドンナ。
だが彼女達に言わせれば、自分達はよく似ているのだという。多分他人には分からない、何か深い絆があるのだろう。
いち早くその事に気付いた本人達は、それからずっと親友としての関係を築いている。高校二年生になっても同じクラスに収容された二人の絆はますます強くなっているようだった。最近はお互いの家に遊びついでに泊りに行ったりもしているらしいし、もうこの二人の間には誰も入れなくなっていたのである。
「………。う…ん…。はぁ…」
という訳で週末を控えた金曜日、本日もお泊まり会は開催され城之内克美は海馬瀬人子の邸に泊りに来ていたのだが、ここ最近ずっと気になる事があって瀬人子に気付かれないように小さく溜息を吐いた。
二人は今、瀬人子の私室に備え付けられている風呂に一緒に入っている。瀬人子は既に髪や身体を洗い先に湯船の中に入っている状態なのだが、後から入って来た克美が身体を洗っているのを後ろからじーっと見詰めているのだ。
その視線が…とにかく痛い。
瀬人子が自分を見る視線が痛いのに克美が気付いたのは、高校二年に進学してからだ。それまでも何となく感じていたものの、はっきり気付いたのは二年になってから始めて受けた体育の授業の時、一緒に着替えをしていた時だった。
背後からじーっと見詰めてくるその視線が、チクチクして痛くて仕方が無い。「何?」と振り返って聞いてみても「別に」と言われてフイッと視線を外されるだけ。意味が分からないのに攻撃的な視線だけは確実に感じていて、もうそろそろいい加減にして欲しいと思う。
身体に纏わり付いたボディソープの泡をシャワーで綺麗に流して、瀬人子が待つ湯船に入っていく。それを横目でじっと見ていた瀬人子は、克美と目が合うといつものようにフイッと視線を外してしまった。
その頑なな態度に、流石の克美もプッツンとキレてしまう。
「あのさぁ…」
苛立った声を隠そうともせず、克美は湯船の中で瀬人子の腕を捕まえて引き寄せた。
「海馬、お前さぁ…。オレに何か言いたい事があるんだろ?」
「べ…別に…」
「嘘吐け。ここんとこずっと異様な目付きでオレの事見てる癖に。何? 何か文句でもあんの?」
「そんなものは無い」
「じゃぁ何で? 何でそんな目でオレの事見てるの?」
「………」
「海馬?」
「………」
「かーいーばー?」
何も言わずに黙っている瀬人子に克美が首を傾げて先を促すと、突然瀬人子の腕が伸びてきて湯の中で克美の胸をガシッと鷲掴みにした。
「ぎゃあっ!」
これには流石の克美も悲鳴を上げてしまう。
「ちょっ、痛いって! 何やってるんだよ海馬!」
「これが…っ! この胸が…っ!!」
「ちょっと海馬サン!! 何やってんのよ! げっ…! そこお尻…って、うわわっ!!」
「この尻もだ…っ! 何で…こんな…っ!!」
「ちょっちょっちょっとやめて海馬!! やめてやめて! ぎゃあーっ!!」
湯船の中で暫く攻守攻防の争いが続き、数分後漸く離れた二人はゼーハーと肩で息をする始末だった。すっかり疲れ切って呆れた目で瀬人子を見詰める克美と違い、瀬人子は相変わらず睨み付けるような視線で克美を見ている。
「一体何だっての…。オレの胸と尻が何だって…?」
完全に疲れ切った声で克美がそう問いかけると、瀬人子は途端に目を吊上げて湯船の中から立ち上がり、壁に凭れ掛かっている克美にビシッと指を指した。
そしてバスルーム中に響く音量で盛大に言い放つ。
「何故貴様のはそんなに大きいのだっ!!」
「はい?」
言われた事が一瞬理解出来なくて間抜けな返事をしてしまったが、目の前に立ちはだかる瀬人子の裸体を見て克美は漸く納得がいったように「あぁ、なるほど」と頷いた。
男らしいサバサバした態度とは逆に、克美の身体は実に女性らしかった。出るとこは出て引っ込んでいる部分はキュッと引っ込んでいる。胸も結構大きくて、男子生徒曰く『グッドプロポーション』なのだ。
逆に瀬人子のプロポーションは…実にでこぼこが少なかった。男子生徒からは『モデル級のスレンダー美人』と言われて褒め称えられてはいるが、本人からしてみれば屈辱以外の何物でも無い。遠回しに『貧乳』だと言われているも同じだったからだ。
ウェストは克美より細いものの、胸と尻のサイズが何とも貧弱で、それが一種の真っ直ぐ体型を作り出してしまっている。
以前は全く気にしなかった自分の体型だが、克美と行動を共にするようになって段々と気になるようになってきてしまった。体育の着替えの際や、お泊まり会で一緒に風呂に入る時等、一度気になるとどうしても目線がそっち…つまり胸やら尻に行ってしまう。最初は憧れに過ぎなかった大きな胸や尻。それがいつしか憎しみの対象になってしまって、やがて突き刺さるような視線に変化していったのだ。
「何で貴様ばっかり…っ。ずるいぞ!!」
「ずるいって言われてもねぇ…。こればっかりはどうしようも…」
「大体そのでかい胸は何だ、けしからん!! 何カップだ!!」
「カップ? オレの?」
「他に誰がいる!!」
「思ったよりは大きくないぜ。Dだし」
「でぃっ…Dーっ!?」
Dカップという驚異のサイズに、瀬人子は思わず自分の胸に手を当てた。そこにあるのは酷くちんまりとしたギリギリAカップの自分の胸。
途端に傷ついた顔をした瀬人子に、克美は焦って近寄ってその身体を抱き寄せた。
「そ、そんなに落ち込むなよ。胸なんて揉めば大きくなるって言うじゃねーか! ほら、オレが揉んでやろうか?」
「やっ…! 止めろ馬鹿!!」
半分慰めるつもり半分巫山戯半分で、克美は瀬人子の小さな胸を優しく掴んだ。そしてそのままフニフニ揉んでみると、途端に腕の中の細い身体が暴れ始める。止めろ馬鹿巫山戯るないい加減にしろと文句を言う瀬人子に、克美もすぐに離れるつもりだった。本来は巫山戯半分のその行為。だけど自分の手がしっとりとその小さな胸に引き付けられてしまって、なかなか離れる事が出来ない。
「城之内!!」
耳元で自分の名を叫ばれて、克美は漸くハッとしたように身を離した。そしてじっと自分の手を見詰める。先程までずっと小さくて柔らかい瀬人子の胸に触れていた自分の手を。
(何で…オレ…。すぐに手を離せなかったんだろ…)
克美が理解出来ない感情に捕われていると、パシャリと小さな水音が響いた。そして「城之内…」と再度自分の名前を呼ばれて、克美は目の前に視線を向ける。そこには湯船に肩まで浸かった瀬人子が、真っ赤な顔で自分を見上げていた。
「貴様…。胸は揉めば大きくなるなどと…そんな嘘ばっかり…」
「え? あ…いや、嘘じゃねーぜ? オレだって昔はBカップしか無かったけど、揉まれたらこんだけデカくなったし…」
「揉まれた…? 自分で?」
「まさか。中学生の時に彼氏が…」
「かっ…! かかかかか彼氏ぃーーーーっ!?」
克美の衝撃発言に湯船に浸かっていた瀬人子が叫び、再びその場で立ち上がった。目の前に晒された細身の裸体に、ドキリと克美の心臓が鳴る。
(あ…あれ…? おかしいな…?)
ドキドキと鳴り続ける心臓に手を当てながら、視線はそこから外す事は出来なかった。
(え…? 何でだよ…。海馬の裸なんて見慣れている筈だろ…? なのに何でオレ、こんなにドキドキしてるんだ…?)
顔に手を当てると、そこがカッと熱くなっているのが分かった。自分の身体がどうしてこんな変化を起こしているのか分からない。いや、この感覚には覚えがあった。中学生時代、それこそ先程口に出した彼氏と付合っていた頃の…。だけど相手は男じゃない。自分と同い年の少女だ。なのに何故自分がこんな気持ちになっているのか、克美には理解出来なかった。
ただ掌にはあの柔らかい感触がいつまでも残って消えなかった。本能で、もっと触っていたかったと思ってしまう。
そんな克美の気持ちを知ってか知らずか、瀬人子は再びビシッと指を突きつけて大声で叫んだ。
「き、貴様ぁーっ! 彼氏がいたとはどういう事だっ!?」
「どうって…。そういう事だけど…」
「だ…だって…。まだ中学生だったんだろう…?」
「中学生だって彼氏はいたし、ヤル事は既にヤッてたの」
「やっ…!? やっ…やっ…やっ…っ!」
「あ? 何? オレの初体験聞きたい?」
「そんなもの…っ! 聞きたくも無いわ!!」
「まぁそう言わずに。あれは中二の夏休みの時でさー。彼氏と一緒に夏祭りに行ったんだけどな。その帰りに神社の裏の雑木林で…」
「もういい!! 聞きたくないと言っているだろう!! 大体中二って…貴様まだ誕生日来て無いではないか!!」
「そうだな。まだ十三歳だったなぁ」
「ふっ…不潔だっ!!!」
「へ?」
気付いたら瀬人子は湯船の端まで行ってしまい、自分の身体に腕を巻き付けて涙目でこちらを見ていた。ていうか…何だよその目は…と克美は多少苛ついてしまう。今瀬人子が自分を見詰める目線は先程までの攻撃的なものとは違い、酷く軽蔑に満ちていたのだ。
「あのなぁ…。海馬…」
「オレに近寄るな!!」
「っぶ!!」
その目線を何とかして欲しくて一歩近付くと、途端に持っていた湯桶で汲んだお湯を思いっきり掛けられてしまう。
「お前がそんな奴だとは思わなかった!! 不潔だ!! もう二度とオレに近付くな!!」
「おいおい…。セックスした女が不潔だっていうなら、全国の結婚している奥様に謝れよな」
「それは別にいいのだ。大人になってから真っ当な恋愛をして相手と結ばれるなら構わない」
「オレの恋愛が真っ当じゃ無いとでも?」
「この際恋愛云々は関係無いのだ! 問題はまだ十三歳でそこまで行ってしまった事にあるのだ、この淫乱が!!」
「ちょっ…! 淫乱とか言うなよ! 別にいいだろ…! 誰に迷惑掛けてる訳じゃないんだから…っ!」
「迷惑掛けてるとかそういう問題じゃない! オレが言っているのはモラルの問題なのだ!!」
瀬人子の叫びに克美はビクリと身体を揺らす。そして今までの態度はどこへやら、途端に小さくなった声で「だって…仕方無いだろ…」と呟いた。
中学時代の自分は本当に荒れていて、曰くド不良だったのだ。そういう大事な事を教えるべき親が既にモラルを無くしていて、モラルなどあって無い生活をずっと続けていたのだ。
あの時はそれでいいと思っていた。快楽に流されれば自分を取り巻く嫌な事を全て忘れられるから。克美にとってセックスは都合の良いストレス解消だったのだ。彼氏だけじゃなくて、不特定多数の人間と関係を結んだ事もある。そんな生活が自分には合っていると思い込んでいた。
勿論今はそんな事は思っていないし、反省も…そして後悔もしている。
でもどんなに後悔しても、失ってしまった大事なものは返っては来ないのだ。
だから普段はなるべくそれを忘れようとする。中学時代に経験した全ての事を『いい思い出』として、わざと明るく語ってみせるのだ。
他の友人達はずっとそれで騙されてくれた。克美が昔不良だった事も知っていたので、その事で敢えて突っ込んだり自分のモラルを押し付けたりする事は無かったのだ。
だけど…瀬人子は違った。
全ての事情を知っていながら、自分の考えをはっきりと克美に伝えたのだ。…多少過激ではあったが。
すっかり俯いて何も喋らなくなった克美に、瀬人子も漸く警戒を解いて逆にこちらから近付いていった。そして自分とは違って綺麗に小麦色に焼けた肩に白い手を置いて「スマン…」と小さく囁く。
「その…悪かった…。ここまで言うつもりじゃ…無かった…」
「いや、別にいいよ。お前の言う事は尤もだからな」
その後は二人揃って無言になり、ギクシャクしながら風呂場から出て着替え、そして寝室に向かった。
いつものようにキングサイズの瀬人子のベッドに共に入りながら、お互いに背を向けて「おやすみ」と言い合う。普段だったら向かい合って夜が更けるまで下らない話をしてから眠りにつくのだが、今日はどうしてもそんな気分にはなれなかった。
暗闇の中、どちらからも規則正しい寝息はいつまで経っても聞こえてこない。それでもお互いに眠ったふりをして身を強ばらせた。
温かなベッドの中で、克美はそっと自分の掌を握り合わせる。先程の柔らかい感触がどうしても消えない。
胸を揉む感触だけなら、自分の胸の方がサイズも大きいし柔らかいし弾力もあって、何より揉みがいがあるのだ。
それなのに…、あの心許無い小さな胸の柔らかさが掌にずっと残ったままになっている。
瀬人子は…綺麗なのだ。
身も心も綺麗なままなのだ。
だから瀬人子には自分のように汚れて欲しく無いと、克美はずっとそう思っていた。
それなのに…どうしてなのだろう。
同じ女の子なのに…自分の手で汚してしまいたいなんて思ってしまうのは。
彼女を自分と同じ所には引きずり込みたく無いのに…、一体この感情は何だっていうんだ!
結局克美は朝方まで眠れず、ずっと自分に自問自答していた。
「何故…?」と。
答えが出ることは…無かったが。