*子連れ城海シリーズ - SS集 - 猫の爪痕

克人(以下『克』)
瀬衣名(以下『瀬』)
 



克「いたた…」
瀬「どうしたの、克人?」
克「どうしたのじゃないよ。思いっきり背中に爪立てただろ…瀬衣名」
瀬「あ、ゴメンね。つい」
克「ついじゃないよ。これ結構痛いんだからな」
瀬「ちょっと見せてみて。あ、ホントだわ。凄い事になってる」
克「お風呂…染みるだろうなぁ…」
瀬「男の子が何言ってるのよ。あ、でもコレ見て思い出したわ」
克「何を?」
瀬「私がまだ9歳の頃の話よ」
克「9歳というと…」
瀬「確か家出してすぐの頃だったかなぁ」
克「あぁ、やっぱり。あの頃の事か」
瀬「久しぶりにパパと一緒にお風呂に入った時にね、背中に引っ掻き傷があるのを発見しちゃって…」
克「………。え…、それって…」
瀬「そうなのよ。今考えればそういう事なんだって分かるんだけど、その時は全然分かんなくってね」
克「………」
瀬「で、思わず聞いちゃったの」
克「誰に!?」
瀬「パパに」
克「な、何てっ!?」
瀬「その引っ掻き傷どうしたのって」
克「そ…そうしたら…?」
瀬「そしたらパパ何て言ったと思う?」
克「さぁ…?」
瀬「滅茶苦茶綺麗な猫に引っ掻かれたんだって誤魔化したのよ~!」
克「ね…こ…」
瀬「それもすっごい嬉しそうな顔しながら。その時はそれで納得したんだけど、今考えるとおっかしいわよね~!」
克「………;」
瀬「やだ~! 思い出したら笑えてきちゃった! キャッキャッ!」
克「………。父さん…;」
 



父親達の関係を全面的に認めている瀬衣名にとってはタダの笑い話ですが、微妙に複雑な感情を抱いている克人にはキツイ話だったようです…w