城之内×海馬+ヘルモス×クリティウス。
『草原の風に吹かれて』と『夜の帳に包まれて』の続編になります。
今回は海馬一人称。
クリティウスが…海馬以上に乙女になっていますので要注意w
ここの最近、オレは毎夜毎夜同じ夢を見続けて、その事で神経がかなり参ってしまっている。
見ている夢は特に悪夢という類のものではなかったが、ある意味悪夢になりつつあるのも事実だ。
お陰で熟睡する事が出来ずすっかり寝不足になってしまっている。
幸い会社の方も特に忙しい時期では無かった為業務に差し障りは無いが、学校ともなるとそうもいかない。
出席日数を稼ぐ為には暇を見付けて学校に行かねばならなくて、今日もふらつく頭を抱えつつ教室へと足を向けた。
扉を開け教室内に入ると、オレの恋人である城之内が机に突っ伏して眠っていた。近くに寄ると「う~…ん…」とか「く…」とか魘されているのが分かる。
オレはヤツの肩を掴むと少々乱暴に揺らしてやった。
「おい、起きろ凡骨」
「っ…!」
オレの声でハッと目を覚ました城之内は目の前のオレを見て、少しホッとした顔をした。
「海馬か…。起こしてくれたんだな、サンキュー…」
そして顔を見合わせて、二人揃って盛大な溜息をつく。
最近では向こうも焦れているらしく、夜だけではなくこんなちょっとした仮眠にまで現れる。オレも先程学校に行く途中の車の中で、余りの眠たさにほんの少しだけ目を閉じたその隙に、またいつもの夢が始まってしまっていた。
魘されていたオレに気付いて運転手がすぐに起こしてくれたから良かったものの、はっきり言ってこれでは身体が持たない。
寝不足の為少々ぼんやりしているオレ達のところに遊戯が来て、心配そうに顔を覗き込んできた。
「おはよう海馬君。ていうか、二人とも凄い隈出来てるよ。一体どうしちゃったの?」
「あぁ遊戯…。オレはもう…ダメだ…」
遊戯の問いに城之内がフッと自嘲気味に笑って、再び机に突っ伏してしまう。
「城之内君! しっかりして! どうしたっていうのさー!!」
城之内の肩を掴んでゆさゆさと揺らしている遊戯を見て、オレもまた現実逃避したい気分になっていた。
『どうして教えてくれないんですか? マスター!』
眠りに落ちて夢を見て、まず最初に耳に入る一言目がこれだ。
目の前には長ったらしいローブを纏ったクリティウスの姿。
髪と瞳の色は違うが、オレと全く同じ顔で必死の形相で迫ってくる。
『私はただヘルモスのマスターの城之内様と一緒に、マスター達がいつもしていらっしゃる交尾を見せて下さいって言ってるだけなのに…っ!』
余りの言いようにオレもキレて『巫山戯るな!』と怒鳴る。
『何が悲しくて他人に自分達の性行為を見せなくてはいかんのだ!!』
『どうせ見るのは私達だけなんですから、別に構わないじゃないですか』
『貴様いい加減にしろ!! 羞恥心と言う言葉を知らんのか!! この愚か者が!!』
『愛しい人と愛し合うという行為に恥ずかしがる意味が分かりません。マスターはそんなに恥ずかしい事を城之内様としてらっしゃるのですか?』
『き、貴様ぁ――――――――っ!! いい加減にしろぉ―――――――っ!!』
こんな感じでいつも堂々巡りで、やがて朝が来て唐突に目覚めるというのが最近の日常だった。
城之内の見ている夢の事は分からないが、多分オレと似たり寄ったりと言ったところだろう。
オレも城之内も体力的にはタフな方だと思うが、流石にこんな事が毎日続くと体力も無くなっていくというもの。
そういう訳でオレ達はもう限界寸前にまで追い込まれていた。
「えぇーっ!? それじゃ毎日出てくるの!?」
昼休みの屋上、結局オレ達はここ最近悩まされている現象について遊戯に相談する事にした。
他人に話すには少々恥ずかしい内容ではあったが、オレ達の関係を知っている遊戯に話すには何の問題もないだろう。
それに奴には少々期待している部分がある。
オレがクリティウスと、城之内がヘルモスと繋がっているように、遊戯はティマイオスと繋がっている筈なのだ。遊戯に頼めば間接的にティマイオスにあの二人の愚行を止めさせる事が出来るかもしれないと、オレはそう考えたのだ。
オレ達の話を聞いて遊戯が「う~ん…」と唸る。
「わかった。じゃ僕、今からちょっとティマイオスに会いに行ってくるね」
そう言って目を閉じて三秒後、奴は小さな寝息を立て始めた。
「すげーな…。三秒だぜ。ノ●太だ、ノビ●」
「静かにしろ凡骨」
オレ達はそのまま黙って目の前の遊戯を固唾を呑んで見守る。
五分後、ふいに眼を開けた遊戯は酷く申し訳なさそうな顔をして、オレ達に向かって手を合わせた。
「ゴメン…。ティマイオスも手が付けられないって泣いてた…」
遊戯の話によると向こうは向こうで大騒ぎらしく、流石のティマイオスもお手上げ状態らしい。
伝説の三剣士のリーダーを泣かすとは…、アイツ等はどれだけ暴れれば気が済むのだ。
「もうさー。いっそのことやってあげちゃえばいいんじゃない? そうすればもう二度と出て来ないんでしょ?」
絶望感に苛まれるオレ達に、遊戯がまるで他人事のように簡単に言い放った。
余りの物言いにオレは即座に反論しようとするが、隣にいた城之内の台詞に思わず固まってしまう。
「そうだな-。もう面倒臭いしなー…」
「城之内。貴様…何を考えている?」
「もうさー。いっその事パパッとやっちゃおうぜ海馬」
「な…な…ななな…何だとっ!?」
陸に上がった魚のように口をパクパクさせるオレの肩を掴んで、城之内は濃い隈を作った顔で迫ってくる。
「海馬…。オレはもう限界なんだ。もうこれ以上アイツ等の夢を見るのは嫌なんです。だから協力して下さい」
「い…いや…だが…しかし…っ」
「お前ももう限界なんじゃねーの? まだあの夢見てーの?」
「見たくはないが…だが…他人にその…あんなものを…」
「相手は人間じゃない。精霊だ。もうここは『見えるけど見えないもの』精神でいこうぜ」
「い…嫌だ…っ! 絶対嫌だ―――っ!!」
その後も何だかんだと拒否を続けるオレを城之内は説得し続けて、結局オレは渋々ながらもそれを了承せざるを得なかった。
複雑な気持ちを抱えたまま一日を終えて、夜を迎えてベッドに入る。
多分オレ達が決心した事は、向こうにはとっくに伝わっているだろう。
特に意識する事も無く眠りにつき夢を見ると、案の定隣には城之内がいた。
「よぉ、ご苦労さん」
「お前もな」
軽口を叩きつつも周りを見渡すと、そこはオレの私室だった。
どうやら普段オレ達が慣れた空間を作り出したらしい。アイツ等なりの心遣いなのだろうが、それがまた癪に障る。
現にドア付近に佇んでいる二人分の人影にオレはチッと舌打ちをした。
「「申し訳ありません! マスター!! 宜しくお願いします!!」」
二人揃って盛大に頭を下げるが、謝るくらいだったら最初からこんな事はしないで欲しいと思うオレは間違っているのだろうか?
せめて何か一言言ってやろうとオレが一歩踏み出した時、突如身体が浮いてオレは言葉を失った。
振り返ると城之内がオレの身体を持ち上げてベッドに向かって歩き出している。そのまま何時ものようにベッドに投げ出されオレの上に乗り上げた城之内は、二体の精霊に向かってビシッと指を射した。
「あのな、こういうのは普通他人には見せないもんなんだぞ。お前等はホントに何も知らないみたいだし、仕方無いから一度だけ見せてやるけど、これ見たらもうオレ達の夢に出てくんなよ」
「分かっています、マスター。本当に申し訳ありません…」
城之内の言葉にヘルモスが再び頭を下げる。
その言葉を聞いて城之内がオレの服に手をかけ始めたので、オレは目を強く瞑ってなるべくあの馬鹿精霊達の事を意識しないようにと自分に言い聞かせていた。
唇を合わせて舌を絡ませる。
互いに互いの服に手をかけ脱がせつつ、オレは城之内の背に腕を回し、城之内はオレの身体をまさぐるのに夢中になっていた。
そう言えば最近は夢に捕らわれて現実でセックスをする事が無かったな…と、熱くなってきた頭の中で考えた。
首筋から胸にかけて城之内の唇が落ちていく。胸の尖りをチュッと音を立てて吸われ、オレは小さく喘いで身体を震わせた。
じわりと身体全体が熱を帯びてくる。
「はぁ…」と熱い息を吐いて瞳を開けると、何時の間にか間近にクリティウスが来ていてオレの顔を覗き込んでいた。
「マスター…」
オレと同調でもしているのだろうか? 妙に上気した顔で耳元に囁かれる。
「マスター…綺麗です…」
「う…るさ…っ。黙れ…馬鹿者…が…っ。んっ!」
突如城之内に性器を握られ、オレの言葉が途切れる。
ゆるゆると上下に扱かれて、先端から溢れてきたであろう先走りの液でペニス全体が濡れていくのが分かった。
「はぁ…じ…城之内…っ!」
耐えきれなくなって城之内を呼ぶと、「分かってる」と返事が返ってくる。
いつの間に取り出したのか、いつも使っているローションと同じもの取り出して、オレの後孔に塗り付けていた。
入り口を馴染ませるようにぬるぬると探って、やがて中に指が入ってくる。
「あぅっ…!」
ビクリと撥ねたオレを宥めるように、城之内の指は優しくそれでいてしつこく内壁を探っていた。
「ここ…。こうやってちゃんと慣らさないと…痛いし傷つけるから…」
熱の籠もった声で城之内がヘルモスに説明している声が聞こえる。
返事は聞こえて来ないが、多分頷くので精一杯なんだろう。
頭の片隅で「フン、童貞め!」と蔑みながらも、オレは城之内が与えてくる快感に翻弄されていく。
シーツをギュッと握ってその快感に耐えていると、不意にその手に誰かの手が重ねられた。
目を開けると心配そうなクリティウスと目が合う。
「マスター、泣いてます…。苦しいんですか…?」
余りに心配そうな顔をしているので、何故だかオレはおかしくなってきた。
フッと鼻で笑って、サラサラの金髪に手を伸ばす。
「感じると…生理現象で涙が出てくる…。最初は苦しいが…慣れるとそうでもないぞ…?」
オレの言葉に安心したのか、漸くクリティウスが嬉しそうに微笑んだ。
オレの中を慣らし終わって、城之内が身の内に入ってくる。
流石にこの時ばかりは圧迫感に呻いてしまうが、それも直に慣れ、オレは城之内の与える快感に夢中になった。
「あっ…! あぁっ…、ひぁっ…!! うぁ…はぁ…ん!」
「海馬…っ! かい…ば…っ!」
城之内に激しく上下に揺さぶられながら、オレはその腰に足を絡めてより密着しようとする。そうすればより奥に城之内を感じられ、頭の中が真っ白になる程の快感が得られる事をオレはよく知っていた。
オレは元よりオレを抱いている城之内も、多分もう頭の中にはあの二人の精霊の事は存在しないに違いなかった。
感じるのは互いの熱と与えられる快感ばかりで、二人で一緒に放出する為に高みへと昇っていく。
「あぁぁっ…!! ぁ…城之内…っ!! もう…っ、あっ――――!!」
「海馬っ…! くぅ…!」
前立腺を熱くて固い塊で押され、オレは耐えきれずに射精してしまう。達したオレの内壁に絞られて、城之内もまたオレの体内に精を吐き出した。
ドサリと力を無くした城之内が体重をかけてきて、オレはそれに腕を回して深く息をつく。暫くそうやって互いの体温を感じつつ熱が冷めるのを待ってそろりと目を明けると、異様な形相でこちらを見ている精霊達に気付いてしまう。
あぁ…そう言えばコイツ等がいたんだったかと今更ながらに思い出す。
オレの身体の上ですっかり息を整えた城之内が起き上がって、二人に向かって「はい、コレで終わり。分かった?」と話しかけると、横にいたヘルモスが真っ赤な顔で首をブンブンと縦に振った。
「はいっ! あ…ありがとうございました!」
土下座する勢いで頭を下げるヘルモスに城之内が苦笑する。
「いや、いいから。その代わりもう夢には出てくんなよ」
「はい、お約束します」と言うヘルモスの答えにオレ達は漸く安心したのだが、オレはどうにも最後の光景が気になっていた。
オレ達の性行為を見て興奮したであろうヘルモスの顔は赤かったが、それとは逆にクリティウスの顔が真っ青だったのだ。
それを問う前に夢から覚めてしまったのでどうしようもなかったが、どうにもそれが気になって仕方が無い。
オレは何かもう一悶着ありそうな気がしていた。
そしてそういう予感に限って当たってしまうのも、また必然なのだ。