脱がせたバスローブをベッドの下に落とすと、そこに現れたのは余りにも白過ぎる身体だった。自らもさっさと服を脱ぎ捨て軽く唇にキスを落とすと、そのまま唇と舌を這わせつつ細い首筋に沿って身体を下げていく。
女のとは違う何の膨らみも無い胸に手を当てて、その余りの滑らかさに城之内は夢中になった。目にとまった薄桃色の突起に掌を這わすとそこは堅く芽を出して、それを指で摘んでコリコリと刺激すると海馬の身体がピクリと跳ねる。それに気を良くして顔を近付け舌でペロリと舐め、更に口に含んでキュッと吸い上げると海馬が「ぁ…っ」と小さな声を上げた。
その声に思わず顔を上げると、顔を真っ赤にした海馬と目が合ってしまう。気不味かったのかふいっと顔を背ける海馬に軽く笑って、城之内は行為を続ける事にした。
海馬の方はと言えば、今までに感じた事のない感覚に翻弄されていた。
男に性行為を目的に身体に触れられるのは慣れていた筈なのに、城之内の指や唇や舌の感触は、今までのどんな男とも違っていた。
何て事は無いただ皮膚に触れられているだけなのに、まるでそこに火を付けられたかのように熱かった。行為が進むにつれ身体の中にも熱が溜まり、じっとしている事が出来なくなる。自らの身体が自分の意志を無視してビクビクと跳ね、城之内が施す快感に耐え切れずにシーツの上で身を捩った。
余りの事に海馬は嫌々をするように首を振る。
こんな感覚は知らない。今まで何人の男に犯されようと、こんな風になった事は無かった。こんな感覚は…こんな快感は知らない…っ!!
熱くなっていく身体に焦りを感じて思わず目の前の身体を押し返すと、城之内は困ったように笑って海馬の手を取り指先にキスを落とし、それを邪魔にならないようにシーツに押しつけた。
「海馬、ちょっとコレ借りるぜ」
熱の籠もった声でそう告げると、城之内は枕を取り出すとそれを海馬の腰の下に押し込める。
「いきなりでローションも何も持ってきてないからさ。ちゃんと舐めて準備するから、大人しくしてて…」
「ゃっ…あっ。城之内っ…!」
抵抗する海馬を無視してそのまま太股を持ち上げると、それをグイッと左右に押し開く。目に留まったひくつく後孔にそっと舌を伸ばし、唾液を含ませるようにそれを舐める。やがて抵抗する力を失って緩くなったのを見計らうと、舌を中に押し込めて柔らかい内部を愛撫した。
「あっあっ…。ふぃ…っ、ぅ…んん! やぁ…っ!」
舌で腸壁をグイグイ押されるたび、海馬の身体は耐えきれないほど熱くなりビクビクと痙攣してしまう。まだ一度も触れられていないペニスも震え、堅くなり透明な先走りを自らの腹の上にポタポタと止めどなく流していた。
「っ…!! うぁ…っ…あぁぁっ!!」
城之内が指で後孔を左右に押し開き舌を更に奥へ進めた時、耐えきれなくなった海馬が身体を大きく震わせ悲鳴を上げてしまう。
驚いた城之内が慌てて目線を上に上げると、ピクピクと震えている海馬が自分の腹と胸の上に白い精液を放っているのが目に入った。
「お前…まさか、舐めただけでイッちまったのか?」
「っ…! ふ…ざけ…るな…っ」
「そんなに興奮してたのか」とキョトンとした顔で自分にそう尋ねてくる城之内に、海馬はキッと睨み付けると弾む息で何とか言葉を紡ぎ出す。
「好…きな…男に触れら…れて…、興奮しない…人間…が…いるのか…っ!?」
潤んだ青い瞳で睨み付けられて、城之内は思わず破顔してしまう。余りの嬉しさに身体を重ねると、ギュッと力を込めて抱き締めた。
「うん、そうだよな…。ゴメン、俺が悪かった」
汗で湿った首筋を優しく撫でながら耳元で囁くと、海馬が拗ねたような顔をしてすり寄ってきた。その顔をそっと包み込みもう一度瞳を合わせて深いキスをする。湿った水音をたてて舌を絡ませて海馬の口の中を堪能しながら、城之内は自分の腹に当たっている海馬のペニスに指を絡める。
「っ…、っん…!! ぅふ…!」
途端にビクリと身体を跳ねさせ逃げようとする海馬を宥めつつ、キスを続けながらも絡めた手をそっと上下に動かした。
先走りの液がペニスと指に絡みつきグチュグチュと厭らしい音を立てる。親指を尿道口に押し当ててグリグリと円を描くように刺激すると、くぐもった悲鳴を上げて海馬の身体が大きく震えた。
荒い息をつく唇を離すと、零れる唾液もそのままに城之内は身を屈め、今自分が握っている海馬のモノへと口を寄せた。くびれの部分を優しく舌で舐め、そのまま亀頭部分を口に含んでしまう。海馬の腰がビクリと跳ね頭上からは息をのむ音が聞こえたが、城之内はそれを気にせずに海馬のペニスを強く吸い上げる。
「ひっ…! んぁあっ! あっ…ダメ…だ…っ! やっ…!!」
海馬の細い指が城之内の金髪に絡んで何とかそこから引き離そうとするが、その度に軽く歯を当て手で強く扱くと力を無くし、逆に自らの股間に城之内の頭を押しつけてしまっていた。
その行為にクスリと笑いながら、城之内は空いている方の手を先程潤した海馬の後孔へと伸ばす。ヒクヒクしている穴の縁をなぞるように触れ、頃合いを見計らってツプリと指を押し込むと「っひ…!」という短い悲鳴が聞こえた。
「海馬…。お前のイイとこ教えてくれよ。なるべく気持ち良くなりたいからさ、俺もお前も」
「っ………!! し…知らん…っ!」
慎重に内部を解すように弄っていると、海馬が顔を真っ赤にしながら答えた。
「中で…んっ! 気持ちいい…と…ふぁっ…あっ…ん! 感じた事…は…無い…っ」
「そっかー。でも今は感じてるよな? ここか? 気持ちいい?」」
「ーーーっ!! っひぁぁ!!」
さほど痛みを感じていない事を確認しながら指をもう一本追加して内部を探っていると、突然海馬が大きく仰け反る。ここかと思い海馬が反応した一点を集中してグリグリと指を押しつけると、海馬は涙をボロボロ流しながらひっきりなしに悲鳴を上げ続けた。
「じ…城之内…っ! む…胸…っ!」
「胸?」
「胸の…奥…が、熱い…っ! あっ…も…ダ…メだ…ぁ…っ!」
まるで強いアルコールを飲んだ時みたいに胸の奥がカッと熱くなり、そんな身体の反応に耐えきれず海馬はシーツの上で激しく悶えた。
自らの指を噛み快感に耐える海馬の痴態に我慢が出来なくなって、漸く城之内が身を起こす。海馬の体内に入れていた指を引き抜くと頭上で小さな呻きが聞こえたが、それを無視してそのまま海馬の両足の間に身体を割り込ませると、濡れてひくつく後孔に硬くなった自らを押し当てた。
「もう…入れるから…力抜いて…」
熱い息を吐きつつ呟くと海馬がコクリと頷く。そのまま長い両足を抱え上げると体重をかけて熱いペニスを海馬の奥へと突き刺した。
「くぅっ…! ひっ! うぁ…っ!! あっあっあぁぁーーーーっ!!」
「ぅ…くっ…!」
海馬が城之内の肩に縋り付いて悲鳴を放つ。ギュッと閉じた瞼からは涙がボロボロと流れ落ちていた。城之内は狭い肉の抵抗に苦労しながらも己のペニスを無理矢理奥まで捻じりこませる。
「かい…ば…っ…! 大きく息…して…力抜いて…。大丈夫だから…」
身体を硬くして痙攣している海馬を安心させるように頭を優しく撫でると、城之内は少しずつ身を進めていく。
男の肉棒を受け入れる事なんて慣れきった事だと思っていたのに、海馬は何故か城之内相手だと上手く出来ない自分に苛立ってしまう。力を抜こうと思っても反対に身体全体に力が入って強ばってしまうし、深く息をしようと思っても浅く短い息しか出来ない。
痛くて苦しくて辛くて、嫌々をするように頭を左右に振り目の前の身体に強く抱きつく。そっと瞼を開けて潤んだ瞳で目の前の男を見ると、向こうもまるで余裕が無い必死な顔でこちらを見ているのが分かった。
海馬と目があった城之内はその途端フッと笑い、海馬の額や頬や唇に優しくキスを落とす。そして首筋に顔を埋めると嬉しそうにこう言った。
「そっかー。お前…初めてだもんなぁ…」
城之内の言葉に海馬は眉根を寄せると、荒い息を耐えながら反論する。
「ふざけ…て…るのか…。俺…は…こういう…のは…慣れてこそすれ…初めて…など…」
「いや、初めてだよ…。今までの相手は…さ、一方的にお前に性欲をぶつけてきただけだろ? そこには愛も何も無い。だけど今お前は、お互いに好きだと思ってる奴と初めて本気で抱き合ってるんだ。だから余裕が無いんだよ。だってこんなに感じた事…無いんだろ?」
城之内は気付いていた。
先日ヴァーチャル空間で海馬の過去の映像を見せられた時、彼はどんな男に抱かれようともただ虚ろな瞳を天井に向け、相手の動きに任せて揺さぶられているだけだった。
だけど今の海馬は全く違う。自分の施す愛撫に一々反応して、甘い声を上げ身を捩り涙を流している。それは間違いなく海馬にとって初めての経験だった筈だ。
「ちゃんと俺で感じてくれてるんだよな…。俺、嬉しいよ」
城之内の言葉に息をのむ海馬に気を良くし、目の前にある細い首筋に唇を当て強く吸い上げると、短い喘ぎと共にピクリと身体が跳ね力が抜ける。その隙を狙って漸く全てを飲み込ませると、城之内は熱い息を吐き出して身を起こした。
「全部…入ったぜ…」
狭く熱い肉筒に締め付けられ苦しそうに眉根を寄せながらも、海馬の目を覗き込んで優しく微笑んだ。その真っ直ぐな視線に耐えきれなくて、海馬は目をギュッと瞑ってしまう。
自分の身体の中に城之内がいて、ドクドクと熱く脈打っているのが分かってしまう。それだけでも恥ずかしいのに、とてもじゃないが彼の顔を真っ直ぐには見られなかった。手探りで自分の上に乗っている男の身体を探ると、首筋に両腕を絡めて引き寄せた。
「も…いい…から…っ! はや…く…っ!」
それに「わかった」と余裕の無い声が返って来たかと思うと、突然足を抱えあげられ強く腰を打ち付けられた。
「うぁ…っ!! ぁ…あぁっ…! んくっ…!!」
熱い肉棒がギリギリまで引き抜かれ、全てが抜けきってしまう前にまた強く奥に打ち付けられる。それを何度も何度もやられて、やがて苦しいだけだった内部に変化が現れてくる。先程指で刺激された場所にペニスが当たると、それだけでまるで身体に電流が走ったかのような快感がもたらされた。
「くっ…あっ…あぅぁっ!! う…はぅ…っ!! んっ…ひっ…ん…あぁん!!」
口から出るのは意味の無い喘ぎ声だけで、言葉を紡ぐなんて事は出来はしない。目をギュッと瞑り流れ出る涙や涎を拭う事も出来ずに、ただ目の前の身体に必死に縋り付いた。
ギシッギシッと規則正しくベッドのスプリングが鳴る。そのリズムに合わせて、海馬は城之内の腰にその長い足を絡めた。
「っ…!? か…海馬…!?」
「じょ…の…ぅち…っ!! も…っ! も…う…、イク…っ! イキそ…っ!!」
頭の奥が熱くなり目の前が白く染まっていく。城之内がもたらす快感に頭はもう何も考える事が出来ず、身体は既に限界を訴えていた。
「うん…。俺ももうイキそう…。いいよ…イッて…海馬…っ!」
「あっ…!! ダメ…イクっ! も…出る…っ!! も…あっ…あっ…あっ…ふぁ…っ! あぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」
身体を大きく弓形に反らし、城之内の背に爪を立てて、海馬は達してしまう。腹に掛かる温かい液体を感じながら、城之内も海馬の身の奥に熱い精液を流し込んだ。
「っ…! んんっ…!!」
身体の奥深くで城之内のペニスがビクビクと震え、熱い精液が染みてくるのが分かる。だがそれを不快だとは全く感じなかった。
数知れない男達に抱かれていた時、あんなに嫌だと思う瞬間は無かった。生温い精液が自分の身体に染みて汚れが濃くなっていく感触が何よりも辛かったから。
だけど今は…この瞬間をとても嬉しく感じる。自分が大好きな城之内の色に染まった瞬間だったから…。
「じょ…の…うち…っ」
未だ達した余韻が残っている身体はだるかったが、その腕を伸ばして城之内の首を引き寄せた。そして感情の赴くままに強くキスをする。重ねた唇の隙間から舌を差し入れ熱い口内を必死で探り、それに城之内が答えて辺りには独特の水音と荒い息継ぎの音だけが響いた。
しばらくしてお互いに満足したのか、そっと唇を離す。どちらのとも知れない唾液が二人の間を結んで、城之内がそれをもう一度海馬の唇ごと舌で舐めとって飲み込んだ。そしてゆっくりと身を引いて、海馬の中から自分のペニスを引き抜く。
ズルリとした感触に海馬は一瞬眉を寄せて耐えるが、城之内が離れた後は、ふ~っと深く息を吐くとベッドに沈み込んだ。
身体の機能が全て麻痺してしまったようだった。指一本動かすのも億劫でそのまま横になっていると、隣に寝転んだ城之内にギュッと強く抱き締められる。
「海馬…ありがとう…。大好きだ…! 俺、お前が大好きだよ…!」
「城之内…」
抱き締めてくる熱い身体に海馬も腕を回した。
「礼を言うのはこっちだ…。ありがとう城之内…。俺もお前が大好き…だ…」
二人で視線を合わせてクスリと笑いあい、身体を重ねて指を絡め合って、やがて二人共に眠りの世界へと誘われていった。
…ン。…クン。ド…クン。
「………?」
どこか遠くで懐かしい音がしているのに気付いた。
ドクン…ドクン…ドクン…と、それは随分と規則正しく鳴っている。
昨夜無理をした身体は泥のように重く再び眠りの世界へと戻りかけたが、その懐かしくどこか優しい音がどうしても気になって、海馬は重たい瞼をそろりと開けた。
最初に目に入ったのは一面の肌色だった。
自分が普段眠っているベッドのシーツはいつも白だったため、その色には全く覚えが無い。
不思議に思ってぼやける視界をなんとか焦点を合わせると、今度は違うものが目に入ってくる。
自分のとは違う、健康そうな褐色の胸の飾りが規則正しく上下しているのを見て、それが人の胸なのだと言う事を理解した。そして自分が顔を押し当てているのもその人物の胸板で、下から聞こえてくる規則正しい音は彼の心音だという事も。
「っ…!!」
慌てて起き上がると、昨夜の久しぶりの性行為のせいか、下半身が酷く痛んで思わず身体の動きを止めてしまう。何とか痛みを逃しベッドの上を見ると、そこに寝ているのは城之内だった。海馬の身体に腕を回し幸せそうに眠っている。
その姿を見て、寝惚けていた海馬の頭が不意に覚醒する。
城之内の告白とそれに答えた自分。熱っぽい目線が自分を捕らえて身体に触れられ、泣かされて喘がされてイカされてそして…。
脳裏に次々と甦ってくる昨夜の情景にカーッと熱くなる両頬を押さえ、海馬はぎくしゃくしながらも何とかベッドから降りる。枕元の時計を見るともう朝の8時を過ぎていて、慌てて床に落ちていたバスローブを羽織りそっと後ろを伺う。
城之内はピクリとも動かずに熟睡していて、それに漸く安心して起こさないように慎重に彼の顔を覗き込んだ。
眠っている顔はまるで子供のようにあどけなかった。それが昨夜の男臭く熱っぽい表情と重ならなくてどうしても違和感を感じる。
「どっちがお前の本当の表情なんだ…」
それが何となくおかしくて、クスリと笑って城之内の頭を撫でた。そして少しだけ開いているその唇に、触れるだけのキスを落とす。
「昨夜は…本当にありがとう…。愛してるぞ、城之内…」
耳元で小さく囁くと、海馬は城之内を起こさぬようにそっと身を起こしバスルームに向かった。
部屋の向こう側でバスルームの扉がしまる音がし、やがてシャワーを流す音が聞こえ始めて、そこで漸く城之内がゆっくりと身を起こす。
口元を手で覆い、顔は耳まで真っ赤に染まっていた。
寝たふりをしていたお陰で貴重な体験をさせて貰ったが、顔がにやけるのを我慢するのにどれだけの集中力を強いられたか…。
「反則だろ…アレ」
そう言いつつも頬が緩むのを止められない。
やっと手に入った大事な大事な人。
片付けなければならない課題はまだまだ沢山ありそうだが、それでも二人でなら何とかなるだろうし、ここまで来たなら時間もかからないだろう。一つ一つ確実にこなしていけばいいだけの話だ。
「そうだな…。海馬が風呂から上がってきたら、まずは一緒に朝飯を食おう。それからこれからの事を話しながら今日はのんびり過ごそう。よし、そうしよう!」
今日の予定を勝手に決めてしまうと、城之内はベッドの上で思いっきり背伸びをする。そして勢いをつけて起き上がると、ベッド下に散らばった衣服を身につけてカーテンを開けた。
朝の強い光が差してきて、その眩しさに思わず目を閉じてしまう。強く眩しく優しいその朝の光は、まるで自分達のこれからを祝福しているかのようだった。
「今日もいい天気だ!」
そう呟いて振り返る。シャワーの音は何時の間にか止んでいて、もうすぐ海馬も部屋に戻ってくるだろう。戻ってきたら海馬を思いっきり抱き締めよう。それから自分が決めた今日の予定を伝えよう。
きっと海馬も同意してくれる事を確信しながら、城之内はその顔に笑みを浮かべた。