*勇気の証明(完結) - 3 - *③side城之内

 自分の頬をバシバシと叩いて気合を入れると、部屋を出る為にドアノブを捻る。
 その途端グルリと周りの景色が歪んで、次の瞬間にはまた海馬邸の二階の廊下に立っていた。
 目の前には別の部屋のドア。
「この部屋は…。確か海馬邸の執務室のドア…」
 ドアノブを回して部屋を覗くと、執務机の向こうに人影が見える。どうやら椅子に座って向こう側を向いているようだ。その後姿から、それは海馬剛三郎だとわかる。
 そしてその剛三郎の姿の向こう側から長く白い足が揺さぶられているのが見えた。
「んっ…! はっ…ぁ…あっ! ひぁっ…!」
 椅子に座った剛三郎が、膝の上に抱え上げてる誰かを揺さぶる度に、チャリチャリと耳障りな鎖の音と悲痛な喘ぎ声が漏れてくる。
 部屋に入り呆然と立ち尽くすと、向こうを向いていた剛三郎がゆっくりと振り返った。
「やぁ…城之内克也君。待っていたよ。随分遅かったじゃないか」
「海…馬…?」
 ニヤリといやらしく笑う剛三郎の膝の上には、自分がよく知っている海馬の姿があった。
 身に纏っているものは首に括りつけられた鎖付きの首輪だけで、長く白い足を大きく左右に開かされて、後孔には剛三郎のモノを一杯に頬張っていた。
 その白い身体には精液が飛び散ってこびりつき、海馬が既に何度もイカされている事を伺わせる。ハァハァと荒く息をつく顔は上気していて、涙でグシャグシャに濡れていた。
 剛三郎は満足そうに城之内を見ると、海馬の顎を持って視線を上げさせる。
「ほら…瀬人よく見なさい。お前の大事な城之内君が助けに来てくれたよ…」
「は…ぁ…。じょ…の…ち…?」
 虚ろな視線を城之内に合わせると、海馬はハッと目を見開いた。
 慌ててフルフルと首を振り、手を上げて視線を遮ろうとする。
「や…やめろ…見るな…城之…内。俺を見るなっ…。見ないでくれっ…! 見るなぁーっ!!」
「くく…、恥ずかしいのか? 瀬人…。彼が好きなんだろう? もっとお前の淫乱な姿を見てもらいなさい」
 身体を捩り必死に城之内の視線から隠れようとする海馬を見て、剛三郎は鼻で笑っていた。
「やめろよお前!! 海馬に何しやがるんだ!!!」
 激昂して思わず殴りかかろうとした城之内の身体が、また先程の力で吹っ飛ばされた。
「がっ…!!」
 今度は床に背中から叩きつけられると、また金縛りにあってしまう。
「うっ…! くそっ…!」
 何とか動き出そうと無茶な努力をしていると、いつの間にか剛三郎が足元に立っているのが見えた。
 手には鎖を握っていて、海馬の身体が無理矢理引き摺られる。
「ほぉら瀬人。愛しい彼を無事現実空間に戻してあげたかったら、ワシの目の前で慰めてみせるがいい」
「ぅ…。約束…は…、守るんだろうな…?」
「勿論だ瀬人。ワシがお前との約束を破った事があったかね?」
 それを聞くと海馬はのろのろと四つん這いで城之内の足元までやってくる。そして震える手で城之内のジーンズのベルトを外し、ファスナーを下ろし始めた。
「か…海馬…っ!? お前! 何してんだよ!」
 思わず焦ってそう声をかける城之内に、海馬は一瞬だけこちらに目線を向け低く呟いた。
「我慢しろ城之内。無事に現実世界に帰りたかったらな…」
 潤んだ瞳を上げて城之内と視線を合わすと、海馬は安心させるように微笑した。そしてまるで自分に言い聞かせるように言葉を放つ。
「安心しろ…。こんな事でお前は汚れたりしない…。どうせここはヴァーチャル空間だ」
 唖然としている城之内を余所目に海馬はトランクスの中から城之内のペニスを取り出すと、ゆっくりと顔を近づけソレを口に含んだ。
 海馬の痴態を見て少なからず反応してしまっていたソレは、海馬に触れられてあっという間に硬くなってしまう。
 海馬は根元を指で押さえて刺激しながら、最初は先の方だけをしゃぶって舌で先端をつつくように舐めまわす。やがて溢れてきた先走りを舌で舐め取るようにして、次に唾液を絡ませるように喉の奥までグッと飲み込んだ。
「んっ…。…っふ…ぅんっ…」
 裏スジに舌を当てて顔を上下に振る。その度にジュプジュプといういやらしい水音が辺りに響いた。
「や…めろっ…! 海馬っ…!」
 何とか身体を動かして海馬を止めようとするのだが、如何せん自らの意思とは逆に身体は全く動かなかった。
 それを見ていた剛三郎は、四つん這いになってる海馬の白い尻をいやらしく撫で回す。
「んっ…!」
 その度に震える海馬を剛三郎は面白そうに見つめる。
「どうしたのだね、城之内君? 瀬人の口は気持ちよくは無いかな? ワシ自らが仕込んだからそんな筈は無いと思うのだがねぇ…」
 剛三郎はにやにやと厭らしく笑うと、そのまま海馬の白い双丘を割り開き自らのペニスを宛う。それにビクリと反応し身体を堅くする海馬を無視して、剛三郎はその赤黒い醜いものを一気に海馬の体内に差し込んだ。
「………っ!!! っ…ひっ! ひぁっ…!!」
「いっ…!!」
 突然の衝撃に思わず含んでいた城之内のモノから口を外し、力を入れて握り締めながら海馬が悲鳴を上げた。
 握り締められた痛みで城之内も思わず呻いてしまい、それに気付いた海馬がそれでも先程までの行為を続けようと震える唇を寄せて来る。
「ほらほらどうしたのかね瀬人。お口がお留守だよ。こんなでは約束は守れないぞ」
「はっ…ぁ…。わか…って…いる…!」
 喘ぎながらも海馬は必死で体制を治すと、もう一度城之内のペニスを口に含み舌を絡め始めた。


 静かな部屋の中に、自分の荒い息と海馬の喘ぎ声、淫猥な水音と肉を叩きつける音が響いて、その異様な光景に城之内は眩暈を覚えた。
 一体どうしてこんな事になってしまったのか解らない。
 ただ目の前に広がる光景と、下半身から海馬が伝えてくる感覚が、それを現実のものだと知らしめていた。
思わず自分の下半身に顔を埋めている海馬を見ると、その表情だけで射精感が湧き上がってくる。真赤に上気した顔、目元はうっすらとピンク色に染まり、青い目は濡れてゆらゆらと揺れていた。
「海…馬…っ! 俺…も…う…出そ…っ!」
 ゾクゾクと背筋を駆け上ってくる快感に、城之内は限界を訴える。
 それを聞いた海馬がとどめとばかりに城之内のペニスを深く銜え込み、敏感な肉に軽く歯をたてた。
「っ…! う…ぁ!!」
 耐え切れずにそのまま口内に射精してしまうと、海馬は一瞬眉を顰めながらも、ゴクリと音をたてそれを全て飲みつくしてしまう。
 そして次の瞬間には海馬自身も達してしまい、艶かしい悲鳴をあげ身体を震わせながら足元に精を放っていた。
 海馬に覆い被さっていた剛三郎もその体内に精を注ぎ込んだらしく、自分のペニスをズルリと抜き去る。そしてそのまま荒い息をつきながら倒れこんでいる海馬の髪の毛を鷲掴みにし、力任せに持ち上げた。
「うっ…! ぃっ…!」
「瀬人、いつまで呆けているつもりだ。用が済んだのならさっさとどきなさい」
 苦しそうな声を上げる海馬を無視して、剛三郎はそのまま海馬を床に叩きつける。
「て、てめぇ!! 何しやがるんだ!!」
 余りの事に思わず立ち上がって叫ぶ。そしていつの間にか自分の身体が自由になっている事に城之内は気付いた。
「ほう…」と感心そうに呟いた剛三郎を、城之内は睨み付ける。
 身体は怒りで震え、拳を強く握り締める事で何とか爆発しそうな感情を制御していた。
「そんなに憎いかね? 瀬人をこんなにしたワシが」
 そんな城之内を余裕たっぷりに眺め、剛三郎は挑発するように言葉を続ける。床に倒れこんだままの海馬に近づくと、その首輪についた鎖を無理矢理グイッと引っ張り上げた。「ぐぅ…っ!」と苦しそうに海馬が呻くのを無視して、剛三郎は笑っていた。
「ほら見たまえ。ワシが付けてやったこれがある限りコイツは何も出来ん。本当はお前にもコレを付けてやろうと思ったのだが、瀬人がどうしてもダメだと言うから諦めたのだよ。その代わりこの余興を思いついたのだがね。いや、実に面白い余興だった。退屈しのぎには丁度良かったよ」
 満足そうに高らかに笑う剛三郎に、城之内はもう我慢の限界が来ていた。


 コイツは今、海馬の首に付いている首輪を自分が付けたと言っていた。
 多分この首輪が乃亜の言っていた逃亡防止用プログラムなんだろう。
 だったら今コイツを倒してしまえば、海馬を助ける事が出来る…!


 乃亜から貰った短剣型ワクチンを取り出すために城之内が自分のベルト付近を探った時だった。
「違う…っ! コイツは違う、城之内!!」
 苦しげな声で叫んだ海馬に、城之内はビクリと身体の動きを止めてしまった。
「コイツはダミーだ…っ! 本物は別に…うぁっ!」
「海馬…っ!! うわっ!」
 最後まで言う事が出来ずに再び剛三郎に床に投げ出された海馬を見て、それを救い出そうと一歩踏み出した途端、城之内もまた何度目かの衝撃波によって弾き飛ばされていた。
「お前はもう用済みだ。瀬人の事は諦めてさっさと現実世界に帰るがいい」
「ふざけるな!! こんなところに海馬を置いていけるわけねーだろ!!」
「何を言おうともう無駄だよ。瀬人はこのままここでワシと共にいる。現実の身体など知った事か。ワシにはもう関係が無い」
 頭に血が昇って再び怒鳴りつけようとした城之内だったが、先程この部屋の前に飛ばされて来たのと同じ眩暈に襲われ、言葉を紡ぐ事が出来なかった。