*真実の証明♀(完結) - それでも読んでみる! - 衝動

 突然飛び出た爆弾発言にオレは一瞬固まってしまっていたが、いやいやいやと慌てて意識を戻って来させる。
 な…何を! コイツは一体何を言い出すんだと!!
 オレが焦っているのを知ってか知らずか、海馬は先程エプロンを出したビニール袋を取り出して見せた。
「実は最初からそのつもりで、もう着替えも持ってきているのだ。という訳で風呂を借りるぞ、城之内。湯を貯めてもいいか?」
 そう言って勝手に風呂場に向かいそうになる海馬の腕を慌てて捕まえる。
 海馬が女に戻ってから早二ヶ月。
 二ヶ月も経って身体はもうすっかり女性そのものになったというのに、どうやら心はそれに追いついていないらしい。
 男の危険性が全く分かっていないらしいので、オレは少し説教してやる事にする。
「海馬…。あのな、今日親父は帰って来なくてオレ一人だって言ったよな?」
 オレの問いに海馬は至極不思議そうな顔をして頷いた。

「知っている。先程そう言っていたではないか。だから泊まると言っているんだ」
「いやいや、だからね。今夜はオレしかいないの。誰も助けに来てくれないんだよ」
「言ってる意味が分からんぞ、凡骨。伝えたい事があるならはっきりと言え」
「ホントに分かんねーのかよ…」
「何をだ?」

 頭の上に?マークを浮かべて首を傾げる海馬を見て、オレは盛大に溜息をついてみせた。
 そして掴んでいた腕を引き寄せて海馬の身体を腕の中に抱き込んだ。
 多分言葉で言っても分からないんだと思うから、こうなったら嫌われるのを覚悟で実力行使に出る事にする。
「あのな。男って狼なんだぜ? 知ってた?」
 オレの言葉に海馬はキョトンとした顔をする。
「男ってさ、どんな仲の良い女の子でも隙があったら即襲ってやるぞって、常にギラギラしてるわけ。ましてやオレはまだ高校生で、今丁度やりたい盛りなんだよね-」
 そこまで言った時、腕の中の海馬がピクリと反応した。
 お、漸く分かって来たかと、オレは言葉を続ける。
「そんなオレの所に一晩一緒に居たらどうなるか分かるだろ? オレは普通の男だから我慢出来る自信が無いんだ。帰らなかったらこのまま犯ってやるからな」
「っひ…!」
 あまり男を信用するなよと最後に言って、オレはついでに海馬の小さなお尻を揉んでやった。その途端海馬が悲鳴を上げて飛び上がる。
 小さくて柔らかくて弾力があるそのお尻は凄く魅力的だったけど、ここはいい男になる為に我慢をする。腕の力を緩めて海馬がいつでも逃げ出せるようにしておいた。
 さっさと腕から抜け出してオレに罵詈雑言を吐いて逃げ出すのをずっと待ったけど、何故だかそれがいつまで経ってもやって来ない。
 おかしいなと思って海馬を見ると、身を固くしてはいるが逃げようとはしていなかった。それどころかオレの服をギュッと握って真っ赤な顔でオレを見ていた。

「…け…れば…」
「ん? 海馬?」
「やりた…けれ…ば…、やるがいい…」
「はい…?」
「別に構わない…。今まで助けて貰ったお礼だから、お前の好きにすればいい」
「っ…! 何を言ってるんだお前は!!」

 海馬の発言に一瞬で頭に血が昇って、オレは思わず大声で怒鳴っていた。
 何だ? コイツは今何て言った?
 今まで助けて貰っていたから? だからそのお礼で犯されてもいいと?
 くそっ! ふざけんなよ!!
 オレは心底頭に来ていた。
 海馬がオレに礼をしたいという気持ちはよく分かるが、女として自分の身体を大事にしないのとは話が違う。
 大体そんな事言ったら、お前は助けてくれた人間全てに足を開くつもりなのかと問い詰めたかった。
 女にとって男に身体を許すという事は、一大決心の上のとても大切な儀式の筈だ。それをそんなに簡単に「やってもいい」などとほざいた海馬に本気でむかついてしまう。
 普通の女友達ですらこんな事言われたらむかつくのに、好きな女にこんな事言われれば誰だってキレるというものだろう。
 そこまで考えてオレは漸くはっきりと気付く事が出来た。
 そうだ。オレは海馬の事が好きなんだ。
 好きな女だからこそ、自分の事を大切にしない海馬の発言にキレたのだ。


 相変わらず頭に血が昇っていたが、頭の片隅は冷静だった。
 何とかして自分が何を言ったのか分からせてやろうと思い、オレはそのまま海馬の腕を引き摺るように引っ張って自分の部屋に向かう。
 襖をパシンッと開け放って、薄暗い部屋に敷きっ放しになっていたオレの布団の上にその細い身体を投げ捨てた。
「いたっ…!」
 布団の上に転んだ海馬は慌てて起き上がってオレを睨む。
 そんな顔したって怖くねーんだよと思いながら、オレはなるべく感情の籠もらない声で冷たく言い放った。

「そんなにやって欲しけりゃ、自分でスカート捲って『犯して下さい』ってお願いしてみな」

 海馬が目を丸くして信じられないような顔でこっちを見たけど、オレだって一歩も引くつもりは無かった。