天蓋付きの大きな寝台の上に、その細い身体をゆっくりと降ろす。
部屋の隅に置かれた燭台の灯りだけのその部屋は、幻想的な雰囲気に包まれていた。
仰向けに寝かされた瀬人は、頬を紅く染め静かに自分を見詰めていた。
怒りに任せて乱暴に扱ってしまった三年前のあの日とは違って、今は優しい手つきで夜着を肌蹴けていく。
相変わらず男性と女性の交わった複雑な身体だったが、それでもあの頃より少し身体の線が優しくなった様に感じる。
自らも服を脱いで、その細い身体に覆い被さった。
「本当に…抱いてもいいのか…?」
確認するように尋ねると、瀬人は強い決意を秘めた瞳でコクリと黙って頷いた。
その瞳を見て、克也は荒れた暖かい大きな手を滑らかな白い肌に触れさせた。
花の香りのする首筋に唇を寄せ、強く吸って赤い花びらを散らせた。
「ぁっ…」
たったそれだけの刺激で瀬人が悩ましげに喘ぐ。
その声がもっと聞きたくて、克也は白い肌のあちこちに花びらを散らして回った。
まるで少女のような小さな胸にも掌を這わせ痛くないように優しく揉んで、先端に付いた桃色の乳首に吸い付いた。
キュッと強めに吸って刺激すると、瀬人の身体がビクリと跳ねる。
「あっ…。かつ…や…っ」
寝台のシーツを掴み必死で快感に耐えている瀬人を見て、克也はクスリと笑みを零した。
そのまま胸を愛撫しながら下腹を撫でていた手を滑り落として、下半身で反応していた小さなペニスを握り込んだ。
「ゃ…うっ…!」
思いもしなかった刺激に、瀬人は思わず自分の口に手を当てて喘ぎを飲み込んだ。だがその手を克也がもう一方の手で優しく掴み、顔の脇に降ろされてしまう。
「我慢しないで…。声を…聞かせてくれ…」
「いや…だ…。恥ずか…しい…から」
「それでも聞かせてくれ…。ずっとその声が聞きたかったんだ。恥ずかしいって言うならほら…オレだってそうだよ。こんなにお前を欲しがっているのを知られるのは…恥ずかしいよ」
降ろした手を再び握られ、そのまま克也の胸へと移動される。
左胸の上に当てられた手からは、克也のドクドクという通常より早い鼓動が伝わってきた。
「な?」と嬉しそうに笑みを浮かべられて、瀬人もそれに頷くことで答えた。
パタリと再びシーツの上に手が落ちるのを見て、克也が少し身をずらす。
「多分…一回イッておいた方が楽だと思うから…」
そう言って握り込んでいたペニスに顔を寄せて、そのまま口内に含んでしまった。
「あっ…! やぁ…っ」
ビクリと反応し瀬人は思わず克也の髪を強く掴んでしまう。だけどそれ以上抵抗する事が出来なくて震える手でそのまま克也の頭を押さえ込んでしまった。
克也はそれを感じながら、口内のペニスに優しく舌を這わせる。
三年前のあの日、瀬人に痛みを感じさせるほど無理矢理弄ってしまった事を詫びるように、優しく丁寧に愛撫した。
瀬人のそれは大人になっても思春期前の少年程の大きさしか無く、硬く勃起してもすっぽりと克也の口に治まってしまっている。
克也はペニス全体を一度強く吸い上げてから口から出し、今度は先端の方だけに吸い付きながら根本と裏筋を親指の腹でゆるやかに撫で上げた。
「あっ…あぁ…っ。ゃ…っ! ダ…メ…っ」
克也がちゅうちゅうと吸い上げる度に瀬人の身体に震えが走り、やがてくっと息を詰めるとそのまま克也の口中に甘い精液を放ってしまった。
「ふぁ…。はぁ…は…ぁ…」
荒い息をつきながらシーツに身体を沈める瀬人に満足気に笑うと、克也は瀬人の長い両足を膝立てて、ゆっくりと左右に押し開いた。
皮膚の薄い内股に掌を這わせ、やがて身体の中心へと辿り着く。
克也はそこでもまた、三年前のあの時の事を思い出していた。
小さなペニスを弄りどんなに瀬人が感じていても、そこは濡れることすら無く完全に自分を拒絶していた。
あの時の事を気にしながら恐る恐る指を這わせると、驚いた事にそこには既に熱い沼地が出来ていた。
温かな粘液を指に絡みつかせながらゆっくりとその場所を撫でると、くちゅりと濡れた音がして瀬人が羞恥で顔を赤く染めてしまう。
「ちゃんと…濡れてるな…」
感嘆しながらそう言うと、閉じていた瞼を開き潤んだ青い瞳を見せながら瀬人が恥ずかしそうに微笑む。
「お前の事だけを想っていたら…勝手に身体が成長した。だからもう…遠慮なんかしなくても大丈夫だから…」
瀬人の言葉を受け克也はゆっくりと指を動かし始めた。
柔らかな女性器の周りを探るように撫でて、男性器を受け入れる為に濡れそぼっている膣にそっと指を差し込む。
「っ………!!」
その途端、小さな悲鳴を上げて瀬人の身体がビクリと跳ねた。
突然感じた痛みに耐えるようにシーツを掴み、眉根を寄せて目をギュッと瞑り震えている。
その顔を見てどうしても三年前のあの日と記憶が重なってしまい、克也はつい指を抜いて身を引いてしまった。
急に克也の身体が離れて行った事を不思議に思い、瀬人は瞳を開き克也を見上げる。
そこには明らかに戸惑いの表情を浮かべた克也の姿があった。
「克也…?」
「無理だ…瀬人…。オレはやっぱり…」
「何が無理なのだ…。オレの身体はもう無理なんかじゃないぞ…?」
「違う…。それは分かっている…。だけどオレはもう二度と…あの日のようにお前を泣かしたりしたくないんだ…。だから…」
「だからオレの事を一生抱かないつもりか? 巫山戯るな…っ! オレがどれだけこの日を待ち望んでいたのかお前は知っているのか…っ!? これ以上…これ以上オレを待たせるな…っ!!」
瀬人の悲痛な叫び声が寝室に響き渡った。
克也がそれに反応できずにいると、何時の間にか起き上がっていた瀬人に逆に押し倒される。
「お前がその気にならないのなら、オレがその気にさせるまでだ…」
そう言うと瀬人は克也の身体に唇を寄せた。
身体のあちこちにある古傷を辿って、暖かい柔らかな舌でまるで労るように舐めていく。
少しずつ身体を下にずらしていって、やがて辿り着いたペニスに白く細い指を絡ませると、それにも唇を近付けた。
「せ…瀬人…っ!?」
その行動に焦りを見せた克也に、瀬人はフッと笑ってみせる。
「克也…。お前、オレが半分男でもあるという事を忘れていただろう…。オレだってお前に触れたいとずっと思っていたのだ」
瀬人の言葉に目を丸くしてしまった克也を見て満足し、瀬人は手の中のそれを躊躇せず口に含んでしまった。
既に勃起していたそれは瀬人の小さな口に収まり切らず、硬く張り詰めた根本をやわやわと指で愛撫しながら先端部分に舌を這わせる。
すぐに溢れてきた先走りの液をチュッと音を立てて吸い上げ、そのまま再び口中にペニスを招き入れると軽く歯を立てた。
「ぁっ…、瀬人…っ」
余裕が無いように克也はビクリと身体を揺らし、栗色の髪に手を差し込み思わず強く押し付けてしまう。
喉の奥を直接押され嘔吐きながらも、それでも瀬人は愛撫をやめようとはしなかった。
熱く脈動するそれを愛しく思い強く吸引すると、やがてそれは喉奥で熱い精液を放った。
「んっ…く…、はぁ…」
克也の荒い息を感じながら瀬人は大半は胃に流し込んだが、飲み込めなかった残りが唇の端から零れ落ちる。
それを指先で拭ってついじっと眺めてしまった。
「瀬人…っ! ご、ごめん!」
焦った風にシーツの端で瀬人の口元や手を拭う克也に、瀬人は嬉しそうに笑ってみせる。
「気持ち良かったか?」
「え? あ…あぁ…、そりゃまぁ…。凄く…気持ち良かった…」
「それは良かった。それにしてもお前のは…色も味も匂いも濃いのだな。驚いた」
瀬人の台詞に克也の顔が一気に赤くなる。
明らかに焦りの色を見せ始めた克也に、瀬人は笑みを浮かべたまま説明した。
「オレは奇跡の子だから、こんなに精液は濃くない…。普通の男の精液を見たのは初めてなのだ。そうか…、これが普通の男というものなのか…」
そのまま未だ精液のついたままの指先をペロリと舐める。
「だが悪くないな。美味しくは無いが嫌ではないぞ。これからもこうしていいか?」
瀬人の言葉に深く溜息をつくと、克也はその細い身体を抱き寄せてそのままシーツの上へと押し倒した。
そして苦笑しながら少し乱れた栗色の髪を優しく梳き、小さくボソリと呟く。
「してもいいけど、程々にな…。オレにだって人並みの羞恥心はあるんだからさ」
そんな克也に瀬人は肩が震えるほど笑ってしまい、それを誤魔化す為に自分にのし掛かる男の首に両腕を回し引き寄せる。
熱い体温を直接自らの皮膚で感じ、瀬人は心の底から幸せを感じていた。
瀬人が白龍国から黒龍国へ嫁いで来て三年半。朧気で見え辛かった幸せを、漸くその手ではっきりと掴んだ瞬間だった。
克也の無骨な指が瀬人の胎内を少しずつ慣らしていく。
まるで待ちきれないように愛液が次から次へと溢れてきて、指を伝って流れ落ちたそれはシーツをぐっしょりと濡らしてしまっていた。
「んっ…、ぁ…ぅ…っ!」
「瀬人…、お前凄いな…。内股まで垂れてベトベトになってるぞ」
克也の熱の籠もった声に、瀬人は耳まで真っ赤に染めてしまった。
欲情に潤んだ瞳で克也を見詰め、口を開く。
「仕方…あるまい…。さっきお前のを舐めて…興奮してしまったのだ」
瀬人の言葉に克也は破顔して「今更照れてんのか?」と面白そうに聞き返すと、それに憮然とした表情で瀬人は反論する。
「男のアレを直接見たり触ったりしたのは初めてなのだ…っ。さっきはお前に触れる事が嬉しくて夢中でやったが…、今は…その…」
尻すぼみになる瀬人の台詞に、だが克也はそれ以上馬鹿にするような事は言わなかった。
「そういうところは男なんだよな、お前。それに性格も少し男っぽくなったような気がする」
「そう…か…?」
「いや…違うな。男っぽくなったんじゃない。強くなったんだ。以前より…ずっと」
そう言って克也は長い時間をかけて瀬人の中を慣らしていた指を抜き、そこに熱くて硬い塊を膣口に押し当てる。
「瀬人…」
克也の呼びかけに瀬人はただ黙って頷く。
その熱を全て受け入れる為に身体の力を抜くと、それを見計らって克也が身を進めてきた。
「ぁっ…ぅ…! あっ…ひぁ…っ!」
狭い胎内をこじ開けるかのように進む熱に耐えきれなくて思わずその広い背に腕を回すと、その指先がぬるりと滑る。
不思議に思って克也の背筋に反って指を這わすと、その背中は既に汗びっしょりで、窪んだその場所には流れ落ちてきた汗が水たまりのように溜まっているのを感じられた。
あぁ…と思う。
必死なのは自分だけでは無いのだ。
克也もこんなに必死になって自分を愛してくれていることを知り、瀬人は嬉しさの余り泣きながら微笑んだ。
「瀬人…? 大丈夫…か…?」
心配そうに覗いてくる克也にコクリと頷いてみせる。
「問題ない…。好きなように動いていいぞ」
「でも…お前辛そうだし…。最初は優しくしないと…」
「構わん。オレはそんなに柔ではない…」
自分の身の内に全てを収めきってしまったあと、瀬人を心配する余り克也の動きは止まってしまっていた。
だが瀬人が呼吸をする度に内部が柔らかく締め付ける為、動かずにいてもそれだけで感じてしまっているのだろう。
眉根を寄せてその快感を無理に我慢しているのが分かる。
瀬人はそんな克也の顔を引き寄せて、その唇に優しくキスをした。
「この瞬間を待っていたのはオレだけでは無い。お前もなのだろう、克也? だったら遠慮なんてしなくていい。オレもそんな事して欲しくない。例え壊れそうになったとしても、今お前と繋がっている事を強く感じたいんだ…」
そう言ってわざと下腹部に力を入れ胎内のペニスをキュッと締め付けると、「ぅ…っ」と克也の小さな呻き声が聞こえた。
してやったりと克也の顔を見上げると、そこに見えた瞳の色にドキッとする。
そこに見えたのは、琥珀の中に潜む『赤』。
だがそれは三年前に見た怒りの『赤』では無く、明らかな欲情の『赤』だった。
「お前…。オレをこんなに挑発しやがって…。どうなるか知らねーからな」
「望むところだ」
ニヤリといやらしく笑う克也に瀬人も同じように笑い返して、動きの全てを享受するために瞳を閉じた。
「っ…! あっ…あ…んっ! か…つ…やっ…!!」
まるで嵐のようだと思う。
身体の外も中も酷く熱く侵されて、頭の中はぐちゃぐちゃだった。
克也に貫かれているというこの現実が、嬉しくて愛おしくて気が狂いそうな程に幸せだと感じる。
欲しくて欲しくて仕方の無かったものが今自分の胎内で暴れているのを感じ、それを逃がすまいと必死で締め付けた。
痛みや苦しさを感じなかった訳ではなかった。
克也が入って来た瞬間はやはり身の引き裂かれるような痛みに呻いてしまったし、今も内臓が直接押されるような感覚に翻弄されている。
だが、そんな感覚全てを超越するような何かが、身体の一番奥深くから湧き上がって来ている事にも気付いていた。
「んんっ…! ん…ふっ、くぅ…!!」
初めて感じるその感覚に耐えきれず、思わず目の前の逞しい肩に噛みついてしまう。
克也はそれに一瞬反応したようだったが、だがその動きを止めようとはしなかった。
瀬人の長い足を抱えたまま、自らのペニスで瀬人の身体の奥深くまで侵していく。
「んっ…! んんっ…ん…ぅ…うんっ…!」
揺さぶられるまま鼻にかかった喘ぎ声を漏らし、襲い来る何かに耐えきれないように瀬人はギュッと強く目を閉じた。
「んっ…、んんっ! んうぅ――――――――っ!!」
やがてそれは背筋を逆流し一気に頭の中心まで辿り着いて、瀬人は声にならない悲鳴をあげて達してしまった。
甘い痺れが全身を駆け巡り、足の指先をピンと伸ばして、大きく身体を震わせながら何度も射精してしまう。
克也は瀬人に強く噛みつかれたまま、自分の腹部に生温い液体が掛けられたのを感じていた。
「くっ…ぅ…っ」
胎内に震えが走り今までに無いくらい強く締め付けられ、耐えきれずに克也も瀬人の最奥で熱を放ってしまう。
身体の奥で感じた熱に瀬人は克也の肩から離れ、大きく息を吐き出しながらブルリと震えた。
「ぁっ…、あぁっ…。た…すけ…克也…っ。とまらな…っ」
「せ…と…?」
「熱…が…、止まらない…! どうし…たら…」
瀬人の訴えに下半身を確認すると、射精したというのに小さなペニスはまた硬くなってフルフルと震えてしまっている。
どうやら女性器の部分の絶頂がまだ続いていて、男性器にもそれが伝わってしまっているようだった。
それに気付き克也はフッと嬉しそうに微笑むと、再び瀬人の足を抱えあげる。
瀬人の痴態を見て、達した筈の自分のペニスも胎内に入ったまますっかり熱を取り戻していた。
「いいぜ。お前が満足するまで何回でもしよう…」
乾いた唇をペロリと舐め、もう一度瀬人の胎内に熱を擦りつけ始めた。
「あっ! あぁっ! あぅ…ん、んあぁ―――っ!!」
すっかり敏感になった内壁を再び強く刺激され、瀬人は大きな声で喘ぎを漏らしてしまう。
結局二人はその後も抱き合い続け、やがて何度目かと知れない絶頂を迎えた後、瀬人は克也の熱い腕に抱かれながらゆっくりと意識を手放していった。