城之内×海馬。海馬の一人称。
このシリーズの海馬はいつも変態ですが、今回はいつにも増して変態なのでご注意下さい(´∀`;
テーマは『匂い』ですw
人間…忙しい時間にずっと捕われていたり、色々な事に煮詰まっていたり、そういうのが原因でストレスが溜まったりすると、それから解放された時に異様に性欲が高まるというのは良く聞く話だと思う。
いや、良くは聞かなくても…、まぁ度々というか…たまにというか…そんな話もあるよな? みたいな感じか。
とにかく何が言いたいのかと言うと、今現在のオレ自身がそんな状態に陥っているって事だ。
ここ二週間ばかり毎日毎日残業して仕事に没頭していたせいで、城之内とは全く会えていなかった。ついでに言うと電話はおろか、メールも殆どしていない。丁度二週間前にオレが送った『暫く仕事が忙しくなるから会えない』というメールに対して、城之内から『分かった。こっちもバイトが忙しいから丁度良かった』という返事が返って来ただけだった。
それきりお互いに何の連絡をする事も無くこの二週間を生きてきたのだが、今日、漸く仕事のかたが付いたのでその旨を城之内に連絡したのだ。そうしたら『実はオレも、今日のバイトが終われば暫くゆっくり出来そうなんだ。今日の夜、会いに行ってもいい?』という返事が返って来た。
有無を言わさずにOKを出し、オレは残りの仕事をさっさと片付けてしまう事にした。
邸に帰れば城之内がいる。久しぶりにあの熱い手で触って貰えると思うと、仕事の効率もメキメキと上がっていく。我ながら現金な奴だと呆れはしたが、ご褒美が待っているとなればやる気が出るのは人間の性というものだな。
こうしてオレは最後の仕事をきっちりと片付け、意気揚々と邸に帰って来た。
…のだが、これは一体どういう事なのだろうか…。
先に邸に来ていたらしい城之内は、オレの私室のソファーでだらしなく座った状態のまま熟睡していた。余りの間抜け面に溜息が出るが、その顔に浮き出た疲れに起こす気力も…更に言えば怒る気も無くなってしまう。
この二週間、バイトが忙しいという話は本当だったらしい。
男らしい精悍な顔が、以前よりずっと痩せてしまっている。オレの顔に浮き出ているような隈は無いが、頬の辺りがげっそりとしていた。
オレとは違って城之内は肉体労働型だが、そのせいで働けば働く程痩せてしまう。勿論その分筋肉は付くから逞しい身体付きをしているのだが、それもちゃんと食べたり寝たりしないと意味が無い。
それに城之内は決して無理はしないタイプだ。自分の予定やその時々の体調と相談して、自分の身体を労りながら働いている。
その城之内がここまで消耗する程無理をする理由はただ一つ。あの飲んだくれのダメ親父が原因の時だけだった。
また新しい借金でも作ったのだろうと思うと居たたまれなかった。疲れ果ててぐっすり寝込んでいる城之内に手を伸ばして、荒れた金髪を優しく撫でる。
オレも城之内も勤労学生だ。どちらもかなり無理をしながら懸命に働いている。けれど、働く理由が全く違う。
オレが働いているのは、あくまでも自分の為だ。幼い頃からのモクバとの夢を実現させたい為だけに、毎日必死に働いているのだ。あの夢を実現させる事が出来るなら、どんなに辛い事でも耐えられる。今だってそうだ。二週間に渡る修羅場を潜り抜けられたのは、いつも脳裏にある夢が後押ししてくれたお陰だった。
だが城之内は違う。彼が働くのは父親がこさえた借金を返す為と、生活費を稼ぐ為に他ならない。それもまた自分が生きる為と言えばそうなのだろうが、決して城之内の夢の為なんかでは無い事だけは分かる。
それに生活する為だけだったら、もっと楽に働く事が出来ただろう。少なくてもこんなに無理をする必要は無い。
問題は借金なのだ。働いて稼いで借金を返したと思ったら、またあのろくでもない父親が新たな借金をこさえてくる。そしてまた城之内は、父親の尻ぬぐいをする為に無理をして働かなければならないのだ。
更に困った事に、城之内は金を借りるのが大嫌いなのだ。
一度見かねて借金返済の為の金を見繕うとしたのだが、猛反対されて結局黙って見守る事を約束させられてしまった。
『借金の問題は、あくまでウチの家族の問題だ。海馬は何にも関係無いんだから、そういう事はやめてくれ』
真摯な瞳で見詰められながらそう言われた事を思い出す。
だが…こんなお前の姿を見てしまえば、手助けくらいしたくなるってものじゃないか。お前はよくオレの身体の心配をしてくれるが、それは決してお前だけの特権では無い。オレだって同じなのだ。
疲れ果ててぐっすり眠っている顔に近付いて、半分開かれている唇にそっとキスをした。
カサカサに荒れた唇を潤すように、上下の唇を舌で舐めてつっと中に入り込む。温かな口内を舐め回しても、城之内が起きる気配は無い。唇を離せば溢れた唾液が城之内の口角から流れ出て、慌ててそれを舌で舐め取って飲み込んだ。
そのまま首筋に顔を埋めれば、久方ぶりの城之内の匂いが濃い汗の匂いと共に鼻孔に入り込んでくる。
多分バイト先からそのまま邸に来て、シャワーも浴びずに寝てしまったのだろう。シャツの裾から手を差し込めば、中に着ているタンクトップが汗でしっとり濡れているのが分かった。
「こんなに汗びっしょりで…。風邪引くぞ?」
耳元で囁いても、城之内はピクリとも反応しない。スゥスゥと安らかな寝息を立てて眠ったままだ。
本当だったらこのまま寝かせてやるのがいいんだろうが、どうにもそういう訳にはいきそうにもない。何故ならば…オレの方が限界だったからだ。
なまじ性欲が溜まっていたところに城之内の匂いを嗅いでしまったせいだろうか…。自分の意志とは関係無しに下半身が大変な事になってしまっていた。
と言っても、叩き起こすのもまた可哀想なので、そのまま悪戯させて貰う事にする。
「そのまま寝ていろよ…」
そう囁きながらシャツのボタンを外し、中のタンクトップをたくし上げた。現れた逞しい胸板と腹筋に嘆息しながら、汗に濡れた肌にそっと舌を這わせる。汗の塩辛い味が舌を刺激して、その味だけで自分のペニスがまたドクンと大きくなったのを感じてしまう。
チュッチュッと吸い付くようにキスをしながら、ソファーの下に腰を下ろしながら下半身まで辿り着く。盛り上がった腹部の筋肉を一つ一つ舌で辿るように舐めながら、オレは城之内が履いているジーンズのボタンを外してファスナーを降ろした。そのまま前を寛げて、現れたトランクスもグイッと下にずらしてしまう。途端に目の前に現れた黒々とした下の毛に、そっと手を伸ばした。
城之内の陰毛はオレのとは違って剛毛…というか、男らしくびっしりと生えている。体毛が薄くて毛の質感自体が柔らかいオレは、局所が余すところ無く出てしまって、常々そんな城之内の陰毛を密かに羨ましいと思っていたのだ。
そんな憧れの毛に指を絡めると、そこは汗で少し湿っていた。顔を近付けると、何とも言えない匂いが漂ってくる。
城之内はシャワーを浴びていないから、そこは決していい匂いがしている訳では無い。はっきり言ってしまえば、臭いと表現した方がいいだろう。一日中肉体労働をした身体は、汗や老廃物に塗れている。ましてや下着の中なんてそれこそ顕著で、蒸れた空気が鼻孔を刺激した。
けれど…何故だかそれに興奮してしまったのだ。胸がドキドキと高鳴って、下半身に血が集まるのが分かる。
今ここで抱いて貰えるなら、あの苦手なドライオーガズムだって何度でも体験してやろうと思うのに。舐めろと言われたら、洗ってもいない汚くて臭いペニスだってじっくりしゃぶってやる。
だが残念な事に城之内は熟睡したままで、起きる気配などこれっぽっちも無い。仕方無く股間に顔を埋めると、つんとした強烈な匂いが鼻を刺した。臭いと思う筈なのに、どうしてもそこから離れる事が出来ない。
城之内の陰毛に鼻先を埋めたまま、オレは自分の下半身に手を伸ばしてみる。そこはもうすっかり硬くなって、下着の中からの解放を望んでいた。
その欲求に素直に従って、スラックスの前を寛げて自らのペニスを取り出してみる。ガチガチに硬くなったペニスに指を絡ませて、上下に擦った。すぐに先端から先走りの液が出て来て、手を動かす度にグチュグチュという濡れた音が辺りに響く。
「ふっ…! う…んっ…!」
もう止められなかった。
城之内の股間に顔を埋めたまま深く息を吸うと、つんとした匂いが脳内まで届いていく。その途端腰の奥がジンジンしてきて、最高に気持ちが良かった。
手が止められなくて、夢中で自分のペニスを上下に擦って。目を瞑って城之内の匂いを身体全体で受け止めながら、必死で自慰をしていた。
よく考えれば、忙しさにかまけて自慰をする事すらなかった。仕事をしている時は勿論そんな事しないし、疲れた身体を引き摺って邸に帰れば、後は風呂に入って眠るだけだ。自慰なんてする時間があれば、少しでも眠って体力回復に宛てたい。
しかし、どんなに仕事で疲れていたってオレだって男だ。こんな生活を二週間も続けていれば、性欲だって溜まってくるというもの。
そのツケがたった今ここに回って来ているという訳だった。
「う…ふぅ…っ。はっ…んっ…!」
ジュプジュプと音を起てながら必死でペニスを扱く。頭の中には既に城之内の存在は無く、ただ鼻孔から入ってくる城之内の匂いにオレの意識は全て持っていかれていた。
くんくんと匂いを嗅ぐ度に頭の中心がボワッと熱くなって、心臓が高鳴っていく。腰がズンと重くなり、下半身がザワザワと痺れていった。
オレの身体全体が気持ち良いと訴えていた。もっと欲しいという欲求に素直に答えて、大きく息を吸って城之内の匂いで肺を一杯に満たす。それと同時に頭の中心も熱く痺れて、快感で何も考えられなくなっていた。
だから気付かなかったのだ。先程まではしなだれていた城之内のペニスが、いつの間にか大きく勃起していた事に…。
「なぁにしてんの?」
突然頭上からかけられた声に、思わずビクッと身体を跳ねさせてしまった。そのままの状態で目を開けて恐る恐る見上げてみれば、そこに眠そうな顔を真っ赤に染めてオレを見下ろしている城之内と目が合ってしまう。
慌てて後ずさってみても、時既に遅しとはこの事で…。服を半脱ぎにされた城之内と、スラックスの前を寛げて勃起したペニスを握っているオレという状況では、言い訳すらも出来なかった。