2009年12月アーカイブ

大変お世話になりました~!!

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準備に追われている二礼です、こんばんは。

大晦日だ正月だ、その前に明日は冬コミだと、何だか準備だけでワタワタしております…w
今の時期を乗り切れば、正月はゆっくり過ごせるから頑張ろう。

今日は正月用の食材の買い物に行って参りました。
この日の為に一年間コツコツと溜めた某カードの6500ポイントが、あっという間に消えていってしまいました…。
6500ポイント分も安く買えたって考えるとお得感はいつも以上に感じましたが、やるせなさも大きかったですね…w
私の一年間の努力が一瞬で…www
それにしても、正月はやっぱりお金がかかりますねぇ…;
一年で一番おめでたい行事なので、仕方無いっちゃ仕方無いんですけどねw


そう言えばもう冬コミ始まっていますね~。
今日は行きませんでしたが、明日は参加する予定です。
私は一般参加なのですが、私と同じく一般な方も、サークルとして参加なさる方も、心から楽しめればいいなぁ~と思います(*'-')
寒いので防寒対策は万全にね!!(特に一般参加の方)
あとルールやモラルはきちんと守って、スタッフさんの指示にはちゃんと従いましょう。
(今年の夏コミはニ/コ/ニ/コ/動/画とかでコミケに興味を持ち、ろくに下調べもせずにお祭り気分で参加した新規参入者が多くて、とにかく大変だったそうです。)
コミケはサークル参加者も一般参加者も、同じ『参加者』です。一般参加の人は『お客様』ではありません。
スタッフさんも一切お金を貰っておらず、全員ボランティアであれだけ大変な仕事をなさっています。
その事を忘れず楽しく有意義な時間を過ごせるのが、コミケの醍醐味って奴ですよね!!
私もその辺りを踏まえて、明日は楽しんで来ようと思っています!(*´∀`*)


さてさて…。今日は日記のみですが、これにて『小春日和』の2009年の更新は最後になります。
今年の2月にサイトをオープンさせてから、本当に色々な方にお世話になりました。

「社長好き好き」と騒いでいたら「自分でサイトを作りなさい」とアドバイスしてくれたリアル腐友。
サイト製作に辺り、何から何まで協力してくれた相棒。
出来たてホヤホヤのサイトにリンクを貼って下さり、二礼と仲良くして下さった遊戯王サイトの皆々様方。
私の拙い小説を読んでくれて、拍手やコメントをして下さった方々。

本当に…本当にお世話になりました!
上記の方々の誰一人欠けても、『小春日和』というサイトを続ける事は出来ませんでした。
心から感謝しております。
ありがとうございました~!!
来年も色んなものにチャレンジして、幸せ一杯な城海を書いていこうと思いますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

それでは皆様、良いお年を~(・∀・)ノシ


以下は今年最後の拍手のお返事になりますです~(・∀・)

>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(*'-')

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をありがとうございます。
あははw やっぱりRosebank様的には余り得意な話では無かったようですね~。
本当はもっと「グロ>エロ」にしたかったんです。
でもそれじゃあんまりなので、少しエロ描写を増やしたんですよ。
つまり、アレでもエロ度は上がっているって事なんですw
Rosebank様のコメントを見る限り、少なくても「グロ=エロ」と受け取って貰えているようでしたので、少し安心致しました。

私個人はグロいのとかは全然平気ですし、
むしろ好物なんで何とも思いませんが、やっぱり苦手な人が見ると気持ち悪いのかな~とか思っちゃいます。
文字だけでも色々と想像出来ちゃいますしね~。
むしろ際どい表現が自由に出来る辺りは、小説の方が漫画よりグロかったりするのかもしれません…w
そういう訳で、いつもより多めに注意書きを置いておきましたw
あーいうのはしつこい位が丁度良いですよね~w

あの話の続きは、年明けにちゃんとUPするつもりです。
この状態での年越しは私も「どうなんだ…w」とは思いますが、まぁ…仕方無いですね(´―`)
(計ってやった訳では無いのですがね…w 何故かこうなっちゃいましたw)

それでは今日はこれで失礼致します。
ではRosebank様も良いお年を~(・∀・)ノシ

スイマセーン!!

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本日、年内最後の日曜日だという事で、大掃除だ正月準備だと朝から忙しく立ち回っております。
という事で、小説・日記共に、本日はお休みさせて頂きます~!
25日の日記に書きました通り、29日の分の日記はちゃんと書こうと思っています。
頂いた拍手のお返事とかは29日に致しますので、今日はご容赦下さいませ。
小説の方の更新は、年明けの5日からになりますのでご了承下さい。

Merry Christmas!!

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モスチキンうまうまな二礼です、こんばんは。

Merry Christmas!!

今日はヨシュア君(聖お兄さんより)のお誕生日でしたね!!
別にクリスチャンでも何でも無いのですが、昨夜は日本人らしく(笑)お祝いさせて貰いましたw
地元のちょっと有名なケーキ屋さんで予約していたブッシュドノエルとモスチキンを購入し、後は色々ご馳走っぽいものを用意して、珍しく白ワインなんか飲みながら美味しい物を食べまくっていたら…。
うん…増えたね…体重が。
こりゃ運動しないとダメだなぁ…。
だってご馳走はクリスマスだけじゃないんだよ!?
一週間後には、大晦日とお正月も待っているんだから!!
更にお正月と言ったらアレだよ、アレ!!

お餅!! …という大敵が控えているんだZE!!

ケーキなんて目じゃないね!! お餅の攻撃力はマジパネェからな!!
もうホント…今からどうしようって感じです…w
だからといって餅の誘惑に勝てるかというとそんな事は無くて…。
「勝てないに決まっているじゃないか!!」と言わざるを得ないwww
もうホント…ダメだねこりゃ(´∀`;


あ、そうそう。
年末年始は色々と予定が詰まっているので、今までのような更新は出来なさそうです。
という訳で、年内でのきちんとした更新は本日が最終です。
(最終更新が…アレか…orz)
29日の夜は日記だけ更新しようと思っていますが、30日は無理…だろうなぁ…。
だって冬コミだもの…w
年明けてもゆっくりは出来ないので(挨拶に出掛けたり、箱根に初詣に行ったり、友人が遊びに来たり)、小説は多分書けませんです。
1月1日に日記だけ書いて、次の小説の更新は5日になっちゃうと思います。
ご迷惑をお掛けすると思いますが、どうぞご了承下さいませ~!!


長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第十一夜をUPしました。
お待たせ致しました。エログロです。
本日年内最終更新だという事で、ちょっと長めに書いてあります。
最初もっとグロく書こうとしたのですが、私がこの手の表現に本気になると大変な事になるので、それなりに自重して頑張りました…w
という訳で今回はかなりグロい内容となっておりますので、その手の表現が苦手な方は本当に注意して下さい!!
読んでいる途中で気分が悪くなられても、私にはどうしようもございません…(´_ゝ`;
海馬が城之内君に美味しく頂かれました(両方の意味でw)という事実さえ分かっていれば、この話を飛ばして次の話を読んでも、多分支障はありません…w
そういう事なので、大丈夫そうな方だけ読んで下さいまし~!


あと追加。
FF13は順調に進んでいますが、何かスケゴがいました…。
大きさといい、デザインといい、まんまスケゴです…w
遊園地とか、下界の草原とかに普通にいますが、襲っては来ません。つか、闘えません。
(メンバーの一人に「暢気そうでも生き延びられるんですね」って言われてた…w)
かわゆいのぉ…(*´д`*)


以下は拍手のお返事でございま~す(*'-')


>発芽米子様

やっふ~♪ お久しぶりデース!!(´∀`)
拍手とコメント、どうもありがとうございました~!!&メリークリスマース♪

『クリスマスな僕ら』の感想をどうもありがとでしたっ!!
せっかくのクリスマスなので幸せ一杯なお話を…と思って書いていたので、何だか青春ドラマみたいな話になってしまって、チョット恥ずかしいです…w
でも米子さんに「幸せー」って感想を頂けて、凄く嬉しかったです(*´д`*)
『僕ら』の彼等も、そんな風に言って貰えて喜んでいるんじゃないでしょうかw

それから今やっている長編『無限の黄昏 幽玄の月』についてなのですが…。
米子さんが本気でグロ系が苦手だったら、今回の長編は読まない方がいいと思います…(´―`;
特に本日UPした分は絶対止めといた方がいいですよwww
私自体が昔からグロ系バッチコイ状態だったし大好きなので(『ひぐらしのなく頃に』とか最高に好きw)、今回の長編に限っては全く遠慮してないんですよ…w
米子さんもコメントで『楽しんで書いているのは~』と書かれていますが、まさにその状態で嬉々として書き進めていますw
あと、私は前ジャンルで攻めが受けの死体をカニバる話とかも書いていましたので、食人表現がダメな場合はホントに止めておいて下さい。
首? あぁ、首ね…。
もう既に生首出て来てますよ~www\(^o^)/
上記にも書いてありますが、まぁ…そういうお話なので、読まれる際は覚悟なさった方がいいかもしれません…(´∀`;;;

年末年始になって忙しい時期が来たので、これからは少しお休みを頂かなければなりません…(シクリ)
でも米子さんの仰る通り、自分のペースを守って 楽 し く 書いていきたいと思っています!
うん、ホント…。私的には凄く楽しいです…www

それでは今日はこの辺りで失礼致します~。
米子さんもお身体に気を付けて頑張って下さいねv
ではまた~(・∀・)ノシ


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございます!(・∀・)

『クリスマスな僕ら』と日記の感想をありがとうございした~。
私も今回の話を書くに至って『僕ら』の話を読み返してみたんですけど、好きだとは言っていてもちゃんとした恋人にはなってなかったんですよ~。
要するに曖昧な関係に甘んじて来ただけだったんですね。
で、「これはいかん!」という訳で、今回のクリスマス話を書いたという訳です。
せっかくのクリスマスですし、幸せ一杯な話を書きたいですしね~(´∀`)
何はともあれ、Rosebank様に温かい気持ちになって貰えて良かったです!
んでもって…。Rosebank様も仰っていますが、やっぱりこの『僕ら』のお話もシリーズ化した方がいいですよね~。
こうなったらやっぱりお初は書きたいですし…ねぇ?
百合城海もそうですけど、書きたい物が一杯で困っちゃいますw

あと『無限の黄昏 幽玄の月』のエログロですが、お待たせ致しました…w
前回のコメントで「遠慮しないつもり」なんて書きましたが、本気で遠慮しないと大変な事になると気付き、それなりにセーブさせて貰いました…(´―`;
海馬がかなーり痛い目にあっているので、Rosebank様にとっては辛い話になりそうですねぇ…;
でも流石にアレを食べさせる事はしませんでしたw
大事な男の子の象徴ですからね!! いくら城之内でも食べられませんよ!!wwwww
その代わりもっとエライ物食べていますけど…ね…(´∀`;;;

日記の件に関してですが、その人も実は大病を患っているんですよ。
でも、自分が体験していない病気は重要だと思っていない。ましてや昔の私が健康そのものだったもので、実感が湧かないそうです。
でもねぇ…。いくら健康な人間でも、時が経てば病気の一つや二つはするのにね。
自分だってそうなのに、どうしてもそれが分からないみたいです。
ただ、話す機会を減らすっていうのはチョット難しそうなんですよね~。
ぶっちゃけ実母なんでwww
そういう訳でやきもきしてしまうんですが、まぁ…適当にやっていきますw

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

*第十一夜(※グロ注意!)

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※この第十一夜の中には、非常にグロい表現があります。食人、血、悲鳴等が苦手な方は、十分注意して御覧下さい。

 




 泣いている…。
 彼が…泣いている…。
 食人鬼としての宿命に勝てず、押さえきれない飢餓にずっと苦しめられてきて泣いている。
 けれど…今回はきっとそれだけでは無いのだろう。
 彼を私と同一視しているお前にとって、あの身体を食べなければならないという事実は、余りにも酷な運命だ。
 それが一体、どれ程の苦しみを彼に与えるか…想像も出来ない。
 今だってほら、こんなに辛そうな顔をしているのに…。
 それでもなお、お前は涙を零そうとはしない。
 苦しさを、辛さを、そして悲しみを胸に秘め、鬼として笑ってみせるのだ。
 それがとても…哀しいと思う…。

 




 鳥居の向こうに日が沈み、辺りはすっかり暗くなってしまった。
 日が完全に沈んだのを見届けて、海馬はマヨイガが用意してくれていた風呂にゆっくりと入っていた。そして身体が温まった頃に風呂から出て、身体の水気を拭いて単衣に腕を通す。帯を締め、普段は腰に着けている鈴の入った白い守り袋を手首に巻き付けた。
 腕を降ろすと、チリリ…と軽やかな音が鳴り響く。
 その音を聞いて、そう言えば暫くせとの姿を見ていない事を思い出した。
 この贖罪の神域に足を踏み入れて、まず最初に目の前に現れた人物。悲しそうな顔で心から城之内の心配をしていた。現世にいた頃、度々見ていた白昼夢も見ていない。
 見限られた訳では無いと思う。多分、自分が思っている事やとっている行動が間違っていないからなのだろう。

 チリ――――――ン………。

 そう思って顔を上げた時、耳慣れた音が辺りに響いて消えた。
 周りを見渡しても姿は見えない。けれど海馬には、それがせとの返事のように思える。

「そんなに心配するな。誰に何と言われようとも、オレがアイツを救ってやろうという気持ちに変わりはない」

 誰もいない空間で一人静かに呟くと、海馬は本殿に向かう為に踵を返して玄関に向かった。


 夜になった為、空はいつも通り澄み切っていた。けれど、どんなに見上げても月はどこにも見当たらない。冬の星座がキラキラと美しく瞬いているだけだ。
 日が沈んでから、体調は一段とおかしくなっていた。
 身体の中心が燃えるように熱く感じ、鼓動もいつもよりずっと早いような気がする。頭も熱に浮かされたようにボーッとして、いつものようなクリアな思考が出来ないでいた。真冬の外気は身体の芯から凍える程なのに、身体全体が火照っている為に寒さもそんなに感じない。
 ジャリジャリと小石を踏みながら本殿へ近付き、履き物を脱いで階に足をかける。そしてゆっくりと段を上がり、ピッタリと閉じられた扉の取っ手に手をかけて、ゆっくりと開いていった。
 本殿の中は灯りが点っていて明るかった。キィ…という扉が開く音に、祭壇の前にいた城之内が振り返りこちらを見据えてくる。その右手が祭壇に祀られているせとの頭蓋骨に優しく触れているのを見て、ズキリ…と心臓が痛くなるのを感じた。
 何故そんな気持ちになるのか分からなかったが、これから自分を食するというのに他に気をとられている事が気にくわなかったのだという事にして、心を無理矢理落ち着かせる。
 キッと睨み付けるように立っている海馬に目を留めた城之内は、ニヤリと笑って祭壇の前から離れて歩き出した。

「来たか」

 そう一言だけ発せられた言葉に、頷く事で返事を返す。
 海馬の返事を確認した城之内はそのまま奥に歩いていって、突き当たりの壁の端に手を当ててその場所を少し押した。すると、そこにあった壁が横にクルリと半回転する。

「隠し扉…?」

 驚く海馬に城之内は目配せで合図を送り、そのまま中へと入っていった。慌ててその後ろ姿を追いかけて壁の中を覗くと、足元に四段程の石段があり、先の部屋は半地下状になっている。
 石で組まれた薄暗い小さな隠し部屋。その中央にポツンと立ち尽くす城之内を見付けて、海馬もそろりと一歩を踏み出した。

「っ………!」

 その途端、海馬の鼻孔を噎せ返るような鉄の匂いが襲った。慌てて袖で鼻を覆っても、その強烈な臭いは肌からさえも染み入ってくるようだ。
 良く見ると、石畳の床はあちこちに黒い染みが出来ている。特に部屋の中央が酷い。どす黒く、何かの液体をぶち捲けたような染みが放射線状に広がっていた。

 この悪臭とその染みの正体が何かなんて、考えたくも無い。

 そう思ってその場で立ち竦んでいると、城之内がゆっくりとこちらの方に顔を向けた。そして掌を差し出して「こっちへ」と命令する。
 覚悟はしてきた筈なのに、迷いも捨てた筈なのに。身体はまたいつの間にか恐怖でガタガタと震えている。痙攣する足を叱咤して、海馬はそろりと石段を降りていった。そして石の床の冷たさを感じながら、一歩一歩城之内に向かって近付いて行く。
 目の前まで辿り着いて、差し出された掌に自分の手をそっと載せた。その途端、指先から感じた熱に驚いてしまう。

「なっ…? 熱い…?」

 城之内の体温は、いつもは氷のように冷たかった。けれど今はまるで発熱したかのように熱い。自分の体温も今日はいつもより熱い筈だったが、今指先から伝わる温度はそれ以上だ。
 そして他にも色々といつもと違うところがあるのに気が付いた。
 爪が…長く鋭くなっている。口元から見える牙も、いつもより鋭さを増していた。琥珀の瞳も、いつも以上に獰猛な光を称えている。
 驚く海馬を間近で見詰めて、城之内は口角を上げてニヤッと笑いながら口を開いた。

「今朝…、何故欲情なんてするのかって顔してたな。ちゃんとした理由、教えてやろうか?」

 炎のように熱い掌で細い手をギュッと掴まれ、海馬は城之内の方に強く引き寄せられた。思わず蹌踉めいた身体を受け止めて、城之内は耳元で囁くように言葉を発する。

「それが黒龍神の慈悲だからだ…。オレに食われる痛みを、快感で紛らわしてやろうっていうのさ。だから欲情する。いつも以上に快感を受け止めやすくなってるんだよ」
「っ………!」

 そう言いながら城之内は首筋に唇を寄せ、熱い舌で滑らかな肌をべろりと舐めた。途端にゾクリと背筋を走った快感に、海馬はビクッと反応して呻いてしまう。
 ほんの少し首筋を舐められただけなのに、身体全体が快感で満ち溢れていく…。
 立っていられなくて、城之内にしがみついて半ば寄りかかるようにしていると、シュルリと帯が解かれ白絹の単衣を肌蹴られて地面に落とされた。露わになった白い肌に熱を持った掌を這わせながら、城之内は耳元での囁きを続ける。

「初代の贄の巫女はな、こんな快感なんて感じなかったんだよ。痛くて苦しくて辛いのをずっと我慢しながら、ただ黙ってオレに食われていた。だから『彼女』は黒龍神に願い出た。せめて次の巫女からは、痛みを紛らわす術を与えてやって欲しいとな。その結果が…これだよ」
「んっ…! はぁ…っ」

 サワサワと胸から腹部にかけて優しく撫でられ、それだけで海馬の脳裏が快感で一杯になっていく。先程のような恐怖ではなく快感で膝がガクガクと震え、城之内に縋っていないとその場に座り込んでしまいそうだった。

「オレに犯されながら食われる…。それが贄の巫女の本当の役目だ」
「あっ…ぅ…っ! じょ…のうち…っ」
「海馬」

 ブルブル震えながら鬼の名を呼ぶと、その声に城之内はピクリと反応した。そして今までのようなからかい混じりの声ではなく、至極真面目な声で海馬の名を口に出した。抱き締められている為に顔は見えないが、多分あの琥珀色の瞳は真剣な色を称えているに違いない。
 震える背中を片手で撫でながら、城之内は海馬の耳元に深く囁いた。

「いいか、海馬。今掴んでいる快感を手放すな。もう少しゆっくり説明してやりたいけど、オレの飢餓もそろそろ限界だ。今からお前を食うけど…何が何でも快感に縋っていろ」
「城之内…? 一体…何…言って…」
「もう何も言うな。黙っていろ」
「何…が…。っ…! ひっ…っ!?」

 一瞬何が起きたのか分からなかった。
 耳元でガリッと音がして、首筋が一気に熱くなっていった。何か生温かい液体が首から肩にかけて大量に流れ落ち、身体を伝って地面に落ちていくのが分かる。それは冷たい石畳に染み込んで、新たな黒い染みとなっていった。

「あっ…! あっ…あっ…あぁっ…!!」

 深く牙を穿たれ首筋の肉を噛み千切られ、傷付いた頸動脈から大量の血液を噴出しながら、海馬は漸く自分が城之内に噛みつかれたのだという事を理解した。激しい痛みを訴えるその場所を押さえようと手をあげれば、手首に巻き付けた守り袋からチリンッ…という鈴の音が響く。震える手で噛み千切られた首筋を押さえると、白い守り袋はあっという間に紅く染まっていった。
 痛い…。いや、痛いなんて生易しいものでは無い。余りの激痛に気を失う事も出来ない。
 それなのに…。反対側の首筋に優しく吸い付かれて、震えが走るほどの快感を感じていた。

「快感を手放すなって言っただろ」

 城之内がそう言ってくるが、海馬はただ震え続ける事しか出来ない。フルフルと力無く首を振りながら、必死で目の前の身体にしがみつく。紅く染まった守り袋の中から、チリリリ…とまるで鈴が震えているような音がした。その音を気にしながらも、城之内は海馬の身体を支えながら、薄い腹部を撫で回していた掌を鳩尾の辺りでピタリと止めた。そして長い爪を滑らかな皮膚に引っ掛けるように立て、次の瞬間、力を入れて皮膚を突き破り内部へと抉っていく。

「うっ…ぁ…っ…あああああぁぁぁぁぁぁぁっ――――――――――――っ!!」

 今まで感じた事の無い、形容しがたい激痛が海馬を襲った。腹部の傷から流れ出た大量の血液が、パシャパシャと石畳の上へと落ちていく。
 目を見開いても、その目にはもう何も映らない。眦から涙をボロボロと流しながら、ただ絶叫する事しか出来なかった。
 城之内はガクガクと痙攣する海馬の身体を支え、足元の血溜まりの中にその身体を横たえた。そして完全に開ききった腹部の傷に手を突っ込んでいく。

「ひぐっ…!! くあ…ぁ…っ!!」

 城之内の手によって、自分の身体の中から何かがズルリと引き摺り出された。それが何であるかなんて考えたくはないし、考えられもしない。クチャクチャと何かを咀嚼する音が聞こえるが、それを見る勇気も無かった。

「ふぁ…っ。あ…あぁ…あっ…あ…」

 痛かった。痛くて苦しかった。激しい痛みに呼吸も出来ない。思うように息が吸えない。大量の出血で身体は急速に冷えていって、痙攣が止まらない。
 早く気を失って楽になりたいのに、妙に意識がはっきりしている事がまた海馬を苦しめていた。
 多分…食人鬼の飢餓というものは、人間を食するだけでは満たされないんだという事に海馬は気付いていた。
 血と肉と…恐怖と悲鳴。それらが揃って、初めて飢餓が満たされる。だから意識を失う事が出来ないんだと…海馬は頭の片隅で冷静に考えていた。
 それと同時に、自分の身体にも異常が起きている事を感じる。
 こんなにも痛くて苦しいのに、身体は快感を求めていた。城之内に触れられ傷付けられる度に、身体の中心に快感の熱が点り背筋を伝わって脳天まで届いていく。

 もっと…もっと…。もっと触って欲しい。もっと傷付けて欲しい。もっと…犯して欲しい。

 いつの間にか頭の中はそればっかりになっていた。
 痛みと快感に翻弄され、身動ぎする度に石畳の上の血溜まりがビチャビチャと音を起てる。噎せ返るような血の臭い。他の誰でもない…自分の血の臭い。
 胸を腹部を切り裂かれ、長い爪で内部を抉られ、血を啜られ肉を噛み千切られ、内臓を食われ骨を囓られ…。最早悲鳴すら出せずにいる。
 それなのにもっと触れて欲しくて、快感を与えて欲しくて…。どんな事になってもいいから内部に熱の固まりを捻り込んで欲しくて、海馬は震える足をそろそろと左右に開いていった。

「うぅっ…!! も…っと…。あっ…ぐぅっ…!! あ…はっ…あぅ…もっと…っ!!」

 自分でも何を口走っているのか分からなかった。それでも朦朧としてきた頭で、欲しい物をひたすらに求める。
 それに気付いた城之内が足の間に身体を割り入れ、硬く勃起した熱を無理に捻り込んで来た。愛撫も何も無いままの無理な挿入。けれど痛みに麻痺した身体は、それを喜んで迎え入れる。

「ひぁっ…! んっ…あぁぁっ!! やっ…あぁ――――――っ!!」

 力を失った身体をビクビクと震わせて海馬は喘いだ。
 喘ぐ度に迫り上がってきた血の塊をゴボリと吐き出し、ゲホゲホと噎せ返る。自由に呼吸が出来なくて、苦しくて苦しくて涙が幾筋も零れていった。
 けれど…行為を止めて欲しいとは思わなかった。身体を前後に揺さぶられ、粘膜を何度も擦られて、発生した熱に酔いしれる。自分では全く気付いていなかったが、海馬はいつの間にか何度も射精をしていた。
 血と涙と汗と精液に塗れながら、海馬は恍惚とした表情を浮かべて城之内を見詰める。何故だかとても満たされた気分になっていた。

「上出来だ…」

 ヒューヒューと息絶える寸前のような掠れた呼吸音を起てながら喘ぐ海馬に、城之内は笑ってみせた。
 満足そうな笑顔。だけどどこか悲しそうな笑顔。
 口の周りを海馬の血液で真っ赤に染めて、いかにも食人鬼らしく無慈悲にそして残酷そうに笑っているが、それがまた無理をしていると思うのは何故なのだろうか…。
 霞んだ視界でそれを捉えながらゼェゼェと荒い呼吸を繰り返していると、城之内の指がゆっくりと自分の顔に向かって近付いて来る。そして長い爪をピタリと青い瞳の上で固定した。

「綺麗な青い瞳…。アイツと同じ色…」

 眉根を寄せて、悲しく笑う城之内を海馬は黙って見詰めていた。
 苦しんでいる…。多分今この男も、自分と同じくらい苦しんでいる。
 押さえきれない食欲。満たされていく飢餓に歓喜の声をあげる身体。けれど心は、きっとそれを望んではいない。
 城之内は本当は…人間を食したくなんてないのだ。ましてや自分は、あのせとと同じ姿。苦しくない筈が無い。
 けれど…その胸の痛みさえ凌駕する程の食欲に、城之内自身も翻弄されているのだった。

「目玉…食わせて…?」
「………。構わ…な…い…。好きに…しろ…」

 そう言う他に、一体何が言えただろう。こんなにもはっきりと、城之内の心の中が見えているのに。
 初めて出会ったあの時のように、まるで子供の様に泣きじゃくっているというのに。

 長い爪が近付いて来ても、海馬は瞳を閉じなかった。ツプリと爪の先が眼球に突き刺さる痛みを感じ、視界が闇に閉ざされる。
 もう痛みは感じなかった。ただ熱かった。目玉を抉られたそこから、涙とはまた違う生温い液体が大量に流れていくのを感じる。最早自分が叫んでいるのか喘いでいるのかすらも分からない。
 ただ閉ざされた視界の中、必死で伸ばした手を熱い掌で掴まれた事だけはハッキリと分かった。掴まれた時の振動で、手首の鈴がチリンと鳴る。
 強く掴まれていた訳では無かったので、海馬はそっと城之内の掌から手首を抜き去るとその肌に指先を触れさせた。
 手首から腕を通って肩へ。そして逞しい肩を撫でつつ更に上に上っていき、頭に辿り着く。意外と柔らかい髪の毛に指を通しつつ、闇夜に光る金髪を頭に思い描いた。

 今でもきっと…綺麗に輝いているのだろうな。
 そういえばちゃんと見ていなかった。
 激痛に翻弄されて、見る余裕も無かったが。

 チリチリと鈴の音を慣らしながら、自らの血でベトベトに濡れた手で丁寧に城之内の髪を梳く。そして、海馬は見えない目で空を見ていた。
 現世での見納めとしてずっと眺めていた、あの透き通った冬の青空。
 出来ればもう一度見たかったな…と思う。城之内と二人で…ちゃんと現世に戻って。

 目を抉られてしまっては、もうどうしようも無いけれど…。

 最後にそんな事を思い少し残念に感じながら、海馬は漸く遠くなっていく感覚に感謝しつつ…意識を手放していった…。

近くて遠い人間関係

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せっかくのクリスマス前に嫌な思いをした二礼です、こんばんは。

人間同士の付き合いって…難しいですよね…。
他人ならまだしも、血が繋がっているとどうしようも無い。
自分の考えに凝り固まってどうしても私の持病の事を理解して貰えないので、理解して貰う為の資料ページをメールで送ったら、「抗議ですか」と返事が返って参りました。
抗議ってあんた…;
あんまりにも私の病気に対して無頓着な事を言い、無責任な発言を繰り返すから資料を送っただけなのに…;
「昔のアンタは健康だった」「薬なんて飲み続けてると身体に悪いから止めてしまいなさい」とか、余りにも酷過ぎる。
その人の頭の中では、『健康だった=病気になっても大した事無い。むしろすぐ治る。治らないのは気合いが足りない』って事になってるらしいです。
気合いで治せるなら、とっくに治してるがな。
だが残念な事に私の持病は一生モンです。薬飲むの止めたら一ヶ月で死にますが何か?
クリスマス前にこんな下らない事で喧嘩なんてしたくなかったです…orz

という経緯がありまして、つい先程まで凹んでおりました…。
気分が凹むと、小説も日記も何も書けなくなるのが困りものですわ。
FF13やって何とか少し浮上する事が出来ました…w
本日は後ろ向きな日記で申し訳ありませんでした~!!


短編に『クリスマスな僕ら』をUPしました。
今まで何回かやってきた『○○な僕ら』の設定を活かした、2009年のクリスマス企画になります~。
イブは明日ですけど、木曜日は残念ながら更新日じゃ無いので今日UPしちゃいますね(*'-')
もう一つクリスマスネタを考えていたのですが…そっちは間に合いそうにないなぁ…;
でもお蔵入りするのも勿体無いので、年末年始のどこかでやるかもしれません。
やっぱりエロ神の申し子としては、クリスマスエロ書きたいしね!!


以下は拍手のお返事になりますです~(´∀`)


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(*'-')

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をありがとうございます。
うふふ~w こういう御都合主義がパラレルファンタジーの良い処なんですよ~w
ちなみにこの『欲情』に関しては、プロットを作る段階でいの一番に書き込んであります(*´∀`*)
どんだけだよって感じですよねwww
とにかくこの長編に限っては、私も遠慮しないで書きたい物を書く事にしていますので、かなり際どい表現が出て来ても生温かく見守って下さい…w

黒龍神の慈悲の解釈については、Rosebank様が書かれたコメント通りで間違い無いです。
まぁ…食われる苦痛を何かで紛らわせたいとしたら、やっぱり快感かな…と思う訳ですよw
当初から言っていた『エログロ系スプラッタ』の意味を理解して貰えて、私も嬉しいですwww
ただここで言って置きたいのは、これはただの『エロ』では無く『エログロ』だと言う事なんですよ。
以前にも言いましたが、私は前ジャンルでカニバリズムの話とか平気で書いていましたので、今回もキッツイ場面をなるべくグロく書こうと思っています。
『エロ』はいいとしても、その『グロ』部分がどう受け止められるのかは、私にも分かりません。
でも上記でも書いてあります通り、遠慮をするつもりは全く無いんですよね~w
次回はいよいよ『エログロ』のターンな訳ですが、引かれるのを覚悟で書こうと思っていますので、ダメそうだったら引き返して下さいませ(´∀`;

あ、そうそう。
忘年会楽しかったですw
お酒好きなんで、飲み会で知人とワイワイ騒げるのは楽しくて良いですよね~!

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

クリスマスな僕ら

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2009年クリスマス企画。
城之内×海馬で、城之内の一人称です。
一応、『アンニュイな僕ら』『現金な僕ら』『青春真っ盛りな僕ら』の続きになります~。

 




 それを見付けたのは十一月の初めの頃だった。

 童実野駅の駅前デパートでお歳暮フェアが始まり、オレはそれの臨時バイトとして一ヶ月半程そこで働く事になったんだ。
 制服に着替えてから従業員用スペースから出て、お歳暮フェアを行なっている催事場に向かう途中に、その店はあった。
 男性用アクセサリーの小さな店。ネックレスやら指輪やら時計バンドやら…。材質もゴールドやシルバー、皮やクリスタル製品など様々だった。
 別に自分で買おうとは思わなかったけど、男性用らしいごついデザインやシンプルで格好いいデザインに惹かれたのは事実だ。その店の前を通る度に何となく店の中を覗き見て、そこに飾られている色々な品物を物色していた。
 そしてある日、オレはその店のショーウィンドゥに飾られていたネクタイピンに目を止める事になった。
 至極シンプルなデザインの、シルバーのネクタイピン。青い小さなガラスが埋め込まれていて、それを見た途端、アイツの顔が脳裏に浮かんだ。
 別段、そんなに高い品物では無い…と思う。オレから見れば結構なお値段なんだけど、アイツからしてみればただの安物に過ぎないだろう。
 だけど、それがとてもアイツに良く似合うと思ったんだ。
 だからそれに決めた。今年のクリスマスプレゼントとして、そのネクタイピンをアイツに贈ろうと…そう決めた。


 結局、お歳暮フェアのバイト代のほぼ半分をつぎ込んで、オレはそのネクタイピンを買う事に成功した。そして今、オレは買ったばかりのプレゼントをダウンジャケットのポケットに突っ込んで、海馬邸へと向かっている。
 十二月二十四日のクリスマスイブは海馬と共に過ごす事が決まっていたから、それはそれで凄く楽しみにしてたんだけどさ。でもなんか、変な感じがしていた。
 六月の梅雨の時期から始まったオレと海馬の不思議な付き合いは、半年経った今でも同じように続いている。
 オレは海馬の事が好きで、海馬もオレの事が好きな筈だ。雨が降る夜はどちらかの家に泊まりに行って(親父の事もあるから、大体はオレが海馬の邸に泊まりに行く事が多かったけど)、一緒に布団にくるまって眠り朝を迎えた。そんなにしょっちゅうでは無いけど、お互いの気が合えば身体を重ねる事もした。
 身体を重ねると言っても、一般的に言われているようなセックスをするって訳じゃ無い。いつぞやの海馬邸でやったような、互いで互いを高め合うような、そんな接触の仕方だ。
 よく考えれば、オレ達はちゃんと『お付き合い』してる訳では無かった。お互いに好きとは言い合っていたけれど、だから『恋人』になろうという話には行ってなかったんだ。
 いや、恋人のつもりではいたけどよ。オレも海馬も、自分達が恋人同士だという認識はあったと思う。でもやっぱり『恋人のつもり』は『恋人』じゃないんだなって、最近は思うようになっていた。
 だったらさっさときちんとした恋人関係になれば良かったんだろうけど、どうしてもそこまで行き着く事が出来ないでいる。
 それが何でだかは、最初は全然分からなかった。でも最近は何となく分かるようになっている。

 多分…怖かったんだ。きちんとした関係に収まるのが怖かった。

 完全に恋人同士になってしまえば、もしその関係が破綻した時は完全に離別しなければならなくなる。そんな事は、考えただけでも辛くて仕方が無かった。でも、もし今までのような曖昧な関係を続けていたならば…。別れる時が来てもきっと辛くない。…そう信じていた。
 だからオレは海馬に関係性の進展を求める事は出来なかったし、そう考えていたのは多分オレだけじゃなかったんだろうな。海馬もオレにその手の話をする事は無かった。
 互いが互いに甘えて、曖昧な関係をずっと続けてきた。違和感を感じつつも、そんな甘えた関係を止める事は出来なかった。
 だけどあのネクタイピンを見付けたあの日から、オレはそれじゃダメなんだという事に気付いた。いや、ダメだと言うよりは「嫌だ」って思ったんだ。

 もっと海馬の側にいたい。もっと近くで海馬と触れ合いたい。もっと深く…海馬を感じたい。
 もっと…もっと…もっと…。

 考えれば考える程、オレは貪欲になっていく。自らの胸の内に溜まる気持ちを無視する事は出来なくなっていた。
 そして…オレは決めたんだ。
 今日、このプレゼントを手渡して海馬に告白する…と。
 これで受け入れて貰えなかったら、海馬の事はスッパリキッパリ諦める事にしていた。
 その事を強く思いつつ、ポケットに入っているプレゼントの箱をギュッと握る。そしてオレは、いつの間にか目の前に現れていた海馬邸を睨み付けるように見上げていた。


 招かれた部屋の中はとても温かく、海馬はいつものようにソファーにゆったりと座って経済誌に目を通していた。そしてオレの姿を目に留めると、ニッコリと微笑んでくれる。

「遅かったな。バイトが忙しかったのか?」

 そう尋ねられて、コクコクと頷いた。

「あぁ、うん。でもいつもこんなもんだぜ」
「そうか。腹は? 減っているんだろう?」
「うん。もうペコペコだ」
「じゃあ、今用意させるから大人しく待っていろ」

 オレの言葉にクスリと笑みを零した海馬は雑誌を置いて立ち上がると、すぐそこに置いてあった電話の受話器を外して内線をかけていた。多分もう少しすれば、オレの為にクリスマスのご馳走が運ばれてくる事だろう。
 それを待っている間に、オレはさっさとクリスマスプレゼントを渡してしまう事にした。
 ダウンジャケットを脱いで海馬が用意してくれたハンガーに掛けつつ、ポケットから取り出した小さな箱を目の前に差し出した。

「海馬…これ。クリスマスプレゼント」

 そう言って笑ってやれば、海馬は一瞬驚いたように目を瞠って、次の瞬間に破顔した。
 滅多に見られない海馬の繕わない笑顔に、逆にこっちが照れてしまう。

「これをオレに?」
「うん」
「開けてみてもいいか?」
「いいけど」

 顔が熱くなっていくのを自覚しながらぶっきらぼうに答えれば、海馬はまたクスクスと笑いながら受け取ったプレゼントの包み紙を丁寧に剥がし始めた。そして箱の中から出て来たネクタイピンを見て、嬉しそうに微笑んでくれる。

「ほう…これは…。貴様にしては趣味が良いな」
「安物だけどな。そんなんで悪いけど」
「いや、十分だ。綺麗だな。これなら普段から着ける事が出来る。ありがとう、城之内」
「あ…うん。いや…」

 そう言って海馬は、取り出したネクタイピンをもう一度箱の中に収めながらオレにお礼を言ってくれた。まさかそこまで気に入ってくれるとは思わなかったので、予想外の反応にこっちまで嬉しくなってくる。
 一大決心した告白はまだしてないけど、それは別に後でもいいよなーって気持ちになってきた。とりあえずはもうすぐ運ばれてくるご馳走を食ってからでも遅くは無い。
 そう思ってソファーまで歩いて行って深く腰掛けた時だった。「城之内」と呼ばれたのに気付いて海馬の方に向き直ったら、とても綺麗な包装紙に包まれた何かを差しだしている海馬の姿が目に入ってきた。

「何…?」
「何…では無い。クリスマスプレゼントだ」
「え…? オレ…に…?」
「そうだ。他に誰がいる」

 押し付けられるように渡されたそれを受け取って、オレは呆然と海馬の顔を見上げた。

「どうした? そんな変な顔をして…」
「あ…いや…その…」

 オレの手の中には、鮮やかなプリントが施された軽い紙袋。カサリと開けてみると、中から現れたのは自転車やバイク等に乗る時に使う、ライダー用の手袋だった。黒地に赤いラインが入っていて、まさしく海馬がオレの為に買ってくれたんだなって事が分かる。
 その手袋を見て思い出した。


 十二月に入って大分寒くなってきて、オレは一度海馬に「最近めっきり寒くなってきて、新聞配達のバイトが辛くってさー。身体はいいんだけど、手先が悴むのが嫌なんだよ」と愚痴を零した事があった。その時にスポーツ用品店で貰ってきた自転車用品のカタログを捲って、ライダー用手袋のページをじっと見ていた事も思い出す。
 その時にオレの脇から同じようにカタログに視線を走らせた海馬が、ある手袋の写真を指差した。

『これなんかはお前の好みなんじゃないか?』
『うん、良く分かったな。オレもすっげー格好いいって思ってた。でもこれ…滅茶苦茶高いんだよ…』
『値引きされて六千五百円か…。本皮だしな。それくらいはするだろう』
『それは分かってるんだけどさー。オレみたいな貧乏人は、たかが手袋に六千円って思っちまうんだよ。欲しいけど手は出せないなー』

 確かその時にしたのは、こういう会話だった。
 海馬は…その時の会話の内容を、しっかり覚えていたんだ。そしてオレの為にプレゼントとして買ってくれた。
 オレは貧乏人で、海馬は金持ちで。けれどオレは、むやみやたらに海馬に物を買って貰うのは好きじゃなかった。何か施されてるって感じがしたし、海馬もそれをよく理解していたから、向こうもオレに対して無用な施しは一切してこなかった。
 でも、オレがその手袋を本気で欲しがって写真をじっと見詰めていたのを、海馬はよく見ていたらしい。
 ただ買い与えるだけじゃオレが受け取らない事を熟知していた海馬は、それがプレゼントなら受け取って貰えるとふんだんだろう。実際こうしてプレゼント交換のような形になり、手袋は無事オレの手に渡った。


 海馬がオレとの何気ない会話を覚えていてくれたんだって事に驚いて…そして凄く嬉しくなる。
 だけど、オレが本当に驚いたのはそこではなかった。
 オレは…忘れていたんだ。
 クリスマスはプレゼントを与えるだけじゃなくて、自分もプレゼントを貰えるんだって事を。


 幼い頃に母親が妹を連れて出ていってしまってから、オレのクリスマスにプレゼントという概念は無くなった。
 同じプレゼントなら誕生日プレゼントだってそうなんだろうけど、そっちは友人達が色んなものをくれるから、どうやら忘れずにいられたらしい。でも、クリスマスは別だ。ちょっとしたプレゼント交換ならした事はあったけど、本格的なプレゼントは、完全に自分には縁の無いものだと思い込んでいた。
 ただ、プレゼントをあげるという行為に関しては忘れた事は無かった。クリスマス時期のバイトとかで、ちょっとしたプレゼントをお客さんに贈るとかはした事があるからだ。
 オレにとってのクリスマスは、他人にプレゼントはあげても、自分がプレゼントを貰うイベントじゃ無かった訳だ。
 ずっとそう思い込んできて…、だから海馬から手渡されたこのプレゼントはまさに青天の霹靂だった。


 海馬からプレゼントを貰って、オレはそこで初めて、自分もプレゼントを貰っても良い立場だって事を思い出した。

「あり…がとう…。海馬」

 ずっと欲しかったライダー用手袋をギュッと握りしめてお礼の言葉を口にしたら、海馬は「あぁ」と一言だけ答えて満足そうに笑っていた。
 その穏やかな顔を見て…オレは今だと感じていた。
 告白をするなら…今だ。夕食が終わるまでなんて悠長な事は言っていられない。

「海馬」

 未だ迷う心を力尽くで決心させて、オレは強く海馬の名前を呼んだ。その声に海馬がこちらを向き、強く視線を合わせてくる。
 その鋭い視線に負けないようにこっちも見返して、一度深く息を呑み込み、声を発した。

「オレ…。お前の事が好きだよ」
「あぁ、知っている」
「お前も…そうだよな?」
「………。あぁ、そうだ」
「オレはお前が好きで、お前はオレが好きで…。それなのにオレ達は今まで、随分と曖昧な関係を続けて来たと思わないか?」

 オレの質問に海馬は驚いたように目を瞠って、だけど次の瞬間に「そうだな…」という一言と共にコクリと頷いた。
 ドキドキと高鳴る心臓を押さえるように、手の中の手袋を強く握りしめた。オレの言葉を待っている海馬も、ネクタイピンの入っている小さな箱を手の中でキュッと大事そうに包んでいる。

「海馬。オレは今のままじゃダメだって思うんだ」
「あぁ、確かにそうだな」
「だから…オレ…」

 いざ告白をしようとすると、やっぱり言い淀んでしまう。思い切りの良さはオレの長所だった筈なのに。
 それでも何とか無い勇気を掻き集めて大事な事を伝えようとした途端、目の前にいる海馬の小さな口から、静かな…それでいて毅然とした声が言葉となって出て来た。

「付き合おう、城之内」
「へ………?」

 完全に出鼻をくじかれた形になって、オレは思わず間抜けな声を出してしまった。声だけじゃなくて顔も間抜け面になってたらしいけど、海馬は全くそれに構う事無く、続けて言葉を発する。

「お前の言う通りだ、城之内。オレ達は曖昧な関係に甘え過ぎていた。だからそろそろきちんとしたケジメを付けないとな…」
「海馬…お前…」
「城之内。オレはお前と恋人になりたい。お前はどうだ?」

 どうだ? なんて言われても、そんなの…そんなの…。
 同意するしか無いじゃないか!!

「ずりぃよ…海馬」
「ん………?」
「それ、ホントはオレが先に言おうとしてたんだぜ。それをお前…先に言いやがって…っ!」
「フフッ…。こういうものは先に言ったもの勝ち…だろう?」
「可愛くねぇなぁ…ホントに。そんな奴にはこうしてやる!!」

 オレから贈られたプレゼントの箱を持ったままの手を掴んで、オレは海馬を自分の方に引き寄せる。グイッと思いっきり引っ張った為、海馬が珍しく焦った顔をしていたけど、オレはそれに構わないで自分の腕の中に倒れ込んできた細い身体を強く抱き締めた。
 すぐに海馬が非難めいた目をしながら見上げてきたけど、それも無視して引き結ばれた唇にキスを贈る。抵抗されるかなーとか心配したけど、海馬はそのまま大人しくキスを受けて、オレの腕の中で身を寄せてきた。
 唇と唇を合わせるだけの甘いキス。幸せな時間は夕食を持って来てくれたメイドさんによるノック音であっという間に過ぎ去ってしまったけど、温かい気持ちは胸の内に残ったままだ。


 その後、美味しいご馳走を食べて風呂に入ったオレ達は、一緒に眠る為に共にベッドに入り込んだ。
 本当はそのままセックスをしたかったけど、次の日は二人とも仕事があったし早朝に起きなければいけなかったので、そっちの方は後日に後回しって事になった。滅茶苦茶残念だけど、まぁ…仕方無いよな?
 それに焦る必要は無いって知ってるから、無駄にがっつきたくも無いんだ。


 既に規則正しい寝息をたて始めた海馬をそっと抱き寄せて、オレは自分も眠る為に目を閉じる。
 海馬がくれた本当のクリスマスプレゼントは、海馬と恋人になるという『幸せ』そのものだったんだ。

 その幸せはもうこの手の中にある。
 ここから先の幸せは、これからゆっくりと育んでいけばいい。

 至極穏やかな気持ちでそんな事を考えながら、オレは眠りについた。
 愛しい海馬の熱を直に感じながら…

穢して穢されて

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思い出を穢した二礼です、こんばんは。

散たんとこの日記にも書いてありますが、先日お話していた時に、昔の教育TVの事で大盛り上がりしてしまいました…w
でもね、でもね、私は言いたい。
八百屋のおじさん×チョーさんとか、ゴ○太×ノ○ポさんとか、モザイク塗れの地図とか、先に言い出したのは散たんですからね!!
まぁ…ノッ○さんは基本喋らないから喘ぎ声出せないとか、あとクラさん×チョーさんとか世代を超えたCPを言い出したのは私ですが…www
ゴン○君があの独特の声で「ふごっふふごっふ」言いながら盛ってるのを想像すると、ちょっと笑…悲しくなりますけどね…(´∀`;
何か久々に変な話で腹筋崩壊したので、楽しかったですw
あとじゃ○ゃ丸は総受け。異論は認めない。


長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第十夜をUPしました。
ふぅ…。漸く本題に入る事が出来ました。
これで一番書きたかったシーンに入る事が出来るぞ~!! ヤッフー♪
何だかいつも以上にチンタラ書いていますが、この長編は余り急いで書きたい話じゃ無いんですよね。
なので読んで下さっている方達には申し訳ありませんが、ゆっくりと気長にお付合い下さいませ~!
(春までに終われば…いいな…)

ちなみに今日は冬至ですよ?
皆さん、柚子湯の用意は宜しいですか?(´∀`)
(柑橘系の匂いが大好きなので、柚子湯だとテンション上がるんですよね~w)


以下は拍手のお返事になりま~す!(・∀・)


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(´―`)

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をありがとうございます。
今回の長編では確かに健気で一途な海馬を目指して書いていますが、そんなにキュンキュンされるとは思っていませんでした…w
海馬の性格付けに関しては「ちょっとやり過ぎかなぁ…」とも思っていたので、こういう反応を頂けるとありがたいです(´∀`)
せとさんの使命については、出てくるのはまだ当分先になりそうですねぇ…。
今回、かなり本気でプロットを作成して長編に臨んでいるのですが、実はまだまだ序盤なんですよ…w
せめて『奇跡の証明』くらいの長さにしたいとは思っているのですが、今から大幅オーバーになりそうな予感がプンプンしています;
でも、今回は一話分の話を結構短く区切っているので、総合するとそんなに酷い長さにはならないような気がします。
何にせよ、焦りだけは禁物ですよね。
読んで下さっている方達にも、そして自分自身でも、納得のいく形で物語を進めていこうと思っています(*'-')

あと、日付の間違いの指摘もありがとでした~!
ホント…何考えて19日にしたんだか…w
あとクリスマスですけど、せっかくですし何か書こうと思っています。
24日が更新日じゃ無いのが惜しいとこなんですけどねぇ…。
う~ん…。どうしようwww

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

第十夜

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 昔から…太陽のような男であった。
 いつでも明るくて、側にいればこちらまで温かくなるような熱を持っていた。
 それなのに、その太陽は地に堕ちてしまった。
 今では輝く事も忘れて、薄闇の世界で僅かな光を放つに過ぎない。
 その僅かな光でさえ、本人には放っている事すら分かっていないのだろう。
 けれど…貴方なら分かってくれるだろう?
 それでも彼は太陽なのだ。
 地に堕ちてなお、あんなにも眩しい…太陽なのだ。

 




 その日は朝から体調がおかしかった。

 いつものあの夢は見なかったが、身体が熱に浮かされたように妙に熱く、いつも以上に汗びっしょりになって目を覚ました。
 トクン…トクン…という自分の心音がやけに強く感じられ、身体の中心に熱が溜まっていくのが分かる。
 朝五時の時計の音を聞いて布団から這い出るものの、ぐったりと身体全体が重く感じて、いつものようなスッキリとした目覚めにはならない。頭の中心も霞掛かったようにはっきりせず、満足な思考すら出来なかった。
 額に手を置いて深く溜息を吐き、それでも海馬は何とか立ち上がって、浴室へと向かった。そして冷たい真水を頭から何度も浴びる。
 凍るような冷たい水を浴びて一時身体は楽になったものの、着替えを済ます頃にはまた気怠さを訴えるようになっていた。それを無視するように本殿に赴きいつものように詔を唱えるが、全く集中する事が出来ない。
 結局最後まで精神を統一する事が出来ず、海馬は肩を落として深く息を吐き出した。

「何なのだ…一体…」

 トクトクと高鳴る心臓を押さえつつ、海馬はゆるりと立ち上がって振り返る。そしてそのまま本殿の扉を開け放ち、外に出て履き物を履いた時だった。「海馬」という静かな呼び声に気付いて、海馬は動きを止め声のした方に視線を向けた。
 本殿のすぐ側に生えている大きな桜の木。その太い枝の上に、黒い着物姿の城之内がいた。幹に背中を預け、腕を組み俯いて座っている。
 いつもは琥珀色の瞳を真っ直ぐこちらに向けて話しかけてくる癖に、今日に限って城之内はこちらに視線を向けようとはしてこなかった。

「大分キテるようだな。大丈夫か?」
「………?」

 戸惑っている自分を見透かすように放たれた城之内の言葉に、海馬は何度か瞬きをして首を傾げる。何故城之内が自分の体調の異変に気付いているのか、理解する事が出来なかったからだ。
 思わず口から漏れ出た「何故…?」という疑問に、城之内がこちらに向き直った。
 一瞬目が合ったが、その途端、城之内はふいっと自ら顔を横向けて再び視線を外してしまう。そして口元にだけ笑みを浮かべて満開の桜を見上げつつ、軽い溜息を吐きながら言葉を放った。

「いや、そりゃ気付くだろうよ。何年同じ事を繰り返してると思ってるんだ」
「は………?」
「まぁ…仕方無いか。お前にとっては初めてだからな、一応教えといてやる。日が沈むまでは今まで通りにしていても構わないが、日が暮れたら準備を始める事。朝食や昼食は摂ってもいいが、夕食は食わない方がいいぜ。オレは別に構わないが、お前の方が吐くかもしれないからな。それから、巫女としての正式な衣装は着て来なくてもいい。風呂に入って身体を清めたら、単衣を羽織るだけで構わない。そのまま夜半になったら本殿まで来い」
「ま…待ってくれ…っ。一体何を…言って…」

 次々と飛び出す城之内の言葉に、海馬は完全に混乱してしまった。彼が一体何を言おうとしているのかが分からない。
 そんな海馬の態度に、城之内は逆に驚いたように目を瞠り、次の瞬間には呆れたように言い放った。

「何だ。気付いて無かったのか」
「は…? 何を…だ…?」

 心底驚いたような溜息混じりのその言葉に、海馬はますます混乱してしまう。
 何とか城之内の真意を探ろうと彼の方をじっと見詰めていると、再びこちらに向き直った城之内が、クスリと笑いながら答えを弾き出した。

「今日は新月だぜ、海馬」
「っ………!!」

 城之内の口から漏れ出た『新月』という言葉で、海馬は漸く自分に課せられた本当の使命を思い出した。
 そうだ…。自分はこの食人鬼の飢餓を満たす為に、ここにやって来たのだった…。
 慣れない生活に戸惑い、毎日を必死に暮らす内に一番大切な事を忘れてしまっていた。
 忘れてはいけなかったのだ。
 自分は…贄の巫女だった…。

「身体…熱いだろ。それ欲情してんだよ」
「欲…情…? 何故…?」
「それが黒龍神の慈悲だからだ。細かい事は本番迎えりゃ嫌でも分かる」
「っ………!」

 城之内の言葉にすっかり動揺してしまった海馬をチラリと見遣り、彼は三度視線を外してしまう。そして枝の上で身を起こすと、ひらりとその場から飛び上がり本殿の屋根へと着地した。
 まるで風に舞う羽のような軽い動き。人間には有り得ない跳躍力。
 余りにも人間らしく振る舞うものだから、海馬はすっかり忘れていたのだ。目の前のこの男が人間では無く、食人鬼なのだという事を。
 いや、忘れていた訳では無い。城之内が『鬼』だという事は常に頭のどこかにあった。獣のような瞳孔も、闇夜に煌めく金の髪も、本能的に感じる恐怖も、その全てが彼がただの人間では無いという事を嫌と言う程教えてくれていた。
 それなのに、海馬はいつの間にかそれらを意識する事を止めてしまっていたのだった。
 何故だかは分からない。けれど一つだけ分かる事がある。それは…。

 自分はいつの間にか、この城之内という男の存在を受け入れてしまっていた。

 という事だった…。

 屋根に飛び移った城之内の動きを追い、彼の方をじっと見詰める。
 海馬の視線に気付いている筈なのに、城之内はもう振り返ろうとはしなかった。ただ暫く黙って冷たい風に吹かれ、そして「じゃあ…夜に」と一言だけ残してその場から姿を消した。その後ろ姿を見送った次の瞬間、海馬は己の身体が震えている事に気付いて蹌踉めいてしまう。

「っ………! ふっ………っ」

 誰の気配も無くなった神社の境内で、海馬は己の身に腕を回して蹲ってしまった。
 覚悟はしてきた。それが己の大切な役目だという事も、分かり過ぎる程に理解している。
 それなのに…今になって…ここまで来て…、まさか恐怖を感じるなんて思いもしなかったのだ…。

 怖い…怖い…怖い…怖い…怖い…っ!!

 ガタガタ震える身体をギュッと抱き締めて蹲っていると、突然側の生け垣からガサリと葉が揺れる音がした。
 城之内が戻って来たのかと思って恐る恐る振り返ってみると、そこにいたのは見覚えのある茶寅縞の猫であった。現世の黒龍神社の境内を縄張りにしている野良猫で、海馬も何度か会った事がある。
 海馬の姿を目に留めた猫は暫くキョトンとしていたが、やがて「ミャア」と可愛らしい声で鳴くとそのままゆっくり近付いて来て、海馬の足元に顔をすり寄せてきた。
 グリグリと額を押し付けてくる猫に海馬は笑みを零し、その猫を抱き上げながら立ち上がり、本殿の階まで歩いて行く。そしてそこに腰を下ろして、膝の上で猫を抱き締めた。

「慰めて…くれるのか?」

 静かな声でそう囁くと、猫はまるで返事をするように「ミャア」と鳴いた。そして海馬の胸元まで伸び上がると、琥珀の瞳をうっすらと細めてゴロゴロと喉を鳴らす。
 綺麗な琥珀色の瞳。まるで太陽のような輝かしい色。明るい茶色の毛の先は、見方によっては金色にも見える。

「あっ………」

 まるで小さな太陽のようなその色を見て、海馬はふと城之内の事を思い出した。
 昼間でも夕闇のように薄暗く太陽なんて見る事が出来ないこの贖罪の神域で、あの金髪と琥珀の瞳はまさしく太陽の代わりだった。光の差さない薄闇の世界で、あの男こそが太陽そのものだったのだ。
 それなのにあの太陽は、自らが犯した罪に縛られて輝く事を忘れている。いや…忘れているのではない。多分…きっと…知らないのだ。輝ける事を知らないまま、千年もの長い時間を過ごして来たのだ…。
 そこまで思い至って、海馬は先程まで感じていた恐怖が少しずつ薄れていくのを感じていた。
 そうだ…もう怖くない。己の『本当』の使命を思い出せ。自分はただ食われる為だけに、ここに来たのでは無い。あの悲しい食人鬼を、千年の呪縛に捕われたあの男を救う為に来たのだと、その事を今こそはっきりと思い出せ…っ!!
 その為だったらどんな苦痛にも耐えてみせる。その自信が自分にはある。
 救いの形がどういうものだかは未だ分からない。けれども、彼を救いたいと…そしてあの太陽を輝かせたいと決心したこの気持ちだけは、きっと間違ってはいないと思う。

「ありがとう、お前のお陰だ。もう怖くはない」

 柔らかな猫の毛を撫でながら、海馬は静かに優しく囁いた。その言葉に猫はピクリと耳を揺らし、再び愛らしい声で「ミャア」と鳴いて返事をした。
 己の膝の上で丸くなりゴロゴロと喉を鳴らし続ける猫を優しく撫でながら、海馬は薄闇の濁った空を仰ぎ見る。
 いつかこの空に明るく輝く太陽を取り戻してやると…そう強く思っていた。

FF13やってます~!

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FF13をちょろちょろプレイしている二礼です、こんばんは。

実際にプレイしてるのは相棒で、私は隣で見ているだけなんですが…ねw
でも流石にPS3!! 映像が超綺麗!!
余りの映像の美しさに感動しまくりです。
さらにBGMが最高!!
浜渦さんはいい仕事するなぁ…ホントに。 
ついでにFF13を少しずつ遊んでいって、一つ分かった事があります。

今回の主要メンバーの女性陣…、全員S体質でした…w

頼りがいがある女性陣に比べて、男性陣の頼りない事と言ったらありませんwww
ちなみに男性陣の中では、今のところアフロが一番お気に入りです!!
アフロ格好いいよアフロ。
アフロの中に住んでいる子チョコボもカワユス(*´∀`*)

年末年始は、FF13でたんまり遊べそうですw


あ、そうだ。S体質で思い出しましたw
前回の日記で「SM占いとかやってみました」とか書きましたが、私の場合は「あなたはまず間違い無く『アブノーマル』です」という結果が出ました…。
まず間違い無くアブノーマルって…どういう事だwww
やっぱり変態か!! 変態だって事なのか!!


長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第九夜をUPしました。
今回は説明しなくちゃならない表現がいくつかあったので、ちょっと長くなっちゃいました。
でもこれで世界観のカバーは大体済んだかな~って思っています。
あとは本格的に話を進めていくだけですね。
さて…と。
そろそろ本題に取り掛かるとしますか…(´―`)


あ、それとですね。
22日に忘年会があるので、火曜日の更新は少し早めになると思います。
17時半くらいには上げられたらいいなって感じですね~。


以下は拍手のお返事になりますです~(´∀`)


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(*'-')

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をどうもありがとうございます。
そうそう、そうです~。
実は海馬と城之内とせとって、三角関係なんですよね~(´∀`)
ただし今の時点での三角は、まだ微妙に歪んだ形なんです。
この時点での海馬の気持ちは、実はまだ『恋』ではありませんからね。
見届けの巫女である静香ちゃんから聞いた話で心底同情し、更に自分が『救いの巫女』であるという事で強い使命感を感じたので、その気持ちに準じて城之内を救おうとしているだけなのです。
城之内は城之内で、千年前に自らの手で殺してしまった恋人への罪悪感から罪に捕われたままで、まったく成長も出来ず。
せとはせとで、城之内と海馬を想う気持ちは人一倍なものの、『生きて』いる人間では無いので自分一人では何もする事が出来ません。
というより、死んだ人間は生きている人間に強い影響を与える事が出来ないのです。
この三人が今後どのように気持ちや関係性を変化させ、成長させていくかが鍵となってくる訳ですよ。
前回の返信でも言いましたが、この辺りもじっくりと書いて行こうと思っています(´―`)

日記の占いにも反応どうもでしたw
散さんとこの、あの占い日記は笑いますよね~w
私も大爆笑でしたwww
そして密かに自分の『素質シリーズ』に自信を持った事は内緒ですwww
良かった…、間違って無かった…。
私達は間違って無かったんだ!!

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

第九夜

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 私に縛られて欲しくは無い…。
 それが私の一番の願い。
 けれどもその願いは、お前には決して届かない。
 刻が経つに連れ、その呪縛は重くなっていくばかり。
 だからどうか…彼の呪縛を解いてあげて欲しいと…そう願う。
 けれども、それは貴方を苦しめるだけだという事もよく分かっている。
 それがやり切れなくて…悲しくて…とても苦しい…。
 私がここに残された使命すらも…まだ分からないままなのに。

 




 薄闇の空を背景に、大きな鳥居が建っている。その下に、黒い着物を着た城之内が後ろ向きで立っていた。贖罪の神域の緩い風に吹かれて、金色の髪を揺らしている。
 鳥居の向こうの風景は、いつも歪んでいてハッキリとは見えない。まるで小石を投げ込んだ直後の池の中を覗いて見るように…。
 そんな歪んだ景色をじっと見続ける城之内の側に、海馬は近寄っていった。そして琥珀の視線の先を辿っていって…驚きに目を瞠った。
 普段は歪んで何も見えない空間の先で、小さな村が炎に包まれている。夜空を染める真っ赤な炎と、村を包み込む真っ黒な煙。村全体を焼き尽くす炎の熱と人々の悲鳴が、ここまで届くようだった。

「『せと』は一人だ。二人もいらない…」

 余りにも悲惨な光景に目が釘付けになっていた海馬は、ふと、隣から聞こえて来た呟きに我に返った。慌てて城之内の方を見遣ると、彼は返り血で真っ赤に染まった神官着姿で、黙って村の方を見詰めている。酷く冷めた瞳で…けれども悲しそうに泣きながら。
 嗚咽も漏らさずただ涙を流しながら、城之内は腕の中に持っていた何かを大事そうに抱き締めた。

「じょ…のう…ち…っ! それは…っ!!」

 それは血で真っ赤に染まったせとの生首であった。血の気を失った白い顔、光を失った瞳が虚空に向けられている。
 城之内はその首を持ち上げ、白い唇にそっと口付けた。涙を零しながら、幾度も…幾度も。
 そして、涙で濡れた琥珀の瞳を海馬に向け、感情の籠もらない声で酷く冷たく囁いた。

「オレにはせとがいればそれでいい…。他の誰かなんていらない…。そう…お前も…いらない」
「城之内…っ!!」

 堪らず伸ばした手は何も掴む事なく、冷たい空気を切る感触に海馬は目を覚ました。


 部屋の中はまだ暗闇に閉ざされていた。けれど海馬は朝の気配を肌で感じて、そのまま布団から身を起こす。夜着として着ている白絹の単衣が汗でびっしょり濡れていて、冷ややかな朝の空気に触れ身体が震えた。

「っ………」

 自らの身体を強く抱くように腕を回し、深く溜息を吐く。
 毎晩のように見る夢にいい加減疲れを覚え始めていた。だからといってどうする事も出来ないのが、また海馬の憔悴に拍車をかけている。
 あんな鬼の言う事など、気にする必要は無いと思っていた。城之内が千年前に自らが殺してしまった恋人に執着するのはある意味当然の事だと思っていたし、その事に関して自分がどうこうする事など出来ないからだ。
 けれど…初日でのあの拒絶が、思った以上に堪えていたらしい。
 自分を受け入れて欲しかった訳では無かったが、あそこまで完全に拒絶されるとも思っていなかったのである。

「救いの巫女…か…」

 海馬は汗を吸ってしっとりと重くなった前髪を掻き上げつつ、自嘲気味に笑いながら小さく呟いた。最近では、こんな状態で一体どうやって彼を救えばいいのかと…そればかり考えている。
 そうこうしている内にも時間は経っていたらしい。居間の柱に掛かっている柱時計が午前五時を告げる音を鳴らしたのを聴いて、海馬はようやっと布団から抜け出て立ち上がった。


 海馬がこの贖罪の神域に来てから数日が経っていた。
 現世とは違う重苦しい空気に最初は疲れ果てていたものの、それも二、三日もするとすっかり慣れてしまい、今では普通に生活する事が出来るようになっている。この家に関しても、城之内が言った通り自分の世話をしてくれているようで、その便利さを本当にありがたいと思うくらいだった。
 例えば夜着として身に纏っている白絹の単衣。普段は空っぽの箪笥の中を夜眠る前に覗くと、綺麗に折りたたまれた上質の絹で織られた白い単衣が仕舞われているのだ。絹糸で刺繍された紗綾形が灯りに反射してとても美しく、もし現世でこの着物を買うとなればかなりの値段になる事は否めないだろう。


 居間にある柱時計もそうだった。最初、この家には時計なんか無かったのである。
 次の日の朝早く、目覚めた海馬はまず時間を知りたいと思った。常日頃の生活から時計は無くても身体はリズムを覚えていて、何もしなくてもきちんと早朝に目覚めてくれたのだが…。だが、時間に縛られる現代風の生活に慣れていると、時計がないとどうしても不安になってしまう。
 ましてや今は、一年で最も夜が長い季節。朝が来ても遅くまで日は昇らない。
 だから海馬はまだ夜中のように真っ暗な部屋の中で、時間が知りたいと思ったのだ。
 知りたいと思ってもこの家に時計等無い事は、既に前日に確認済みだった。だから、早々に諦めて布団から起き上がった時に響いた時計の音に、心底驚いたのである。
 妙に聞き慣れた音に慌てて居間に赴いてみれば、そこの柱に掛かっていた時計はとても見慣れたものだった。
 それはとても古びた柱時計だった。刻を知らせるボーンボーンという深い音がとても好きだとモクバが言っていた、海馬家の居間の柱に掛かっていた時計。
 その時計がいつの間にか、このマヨイガの居間の柱に掛かっていたのである。


 城之内は、この家が海馬のお世話係だと言っていた。だが、これはただのお世話係の域を超えているような気がする。
 このマヨイガは贄の巫女がこの世界で少しでも過ごしやすいように、対象者の心を読み取って現世での生活を再現してくれているのだ。

 黒龍神の慈悲。

 その言葉に、海馬は心底納得した。
 閉ざされた生活に最初は戸惑ったものの、日が経つに連れて全く違和感を感じずに過ごせるようになっていたのである。
 その事に気付いてからというものの、海馬は現世にいた頃の生活を崩さないまま日常を送る事が出来ていたのだった。


 朝五時の時計の報せを聞いて立ち上がった海馬は、そのまま浴室へと向かって行った。そして単衣を脱ぎ捨てて、真水で身を清める。
 冬の水は凍える程に冷たくて肌に震えが走るが、その分しっかりと目が覚めて頭の中がクリアになっていくのが分かる。暫く水を浴びていると、やがて身体の中心がまるで熱が点ったように熱くなるのを感じて、海馬は水を浴びるのを止めて浴室から出て来た。
 身体の水気を拭き、用意してあった巫女としての衣装に着替え、腰に鈴の入った守り袋を結び付けて顔を上げた。そしてそのまま家を出て神社の本殿へ赴き、深く一礼してから中に入る。
 祭壇の前で跪き二礼二拍一礼をし、目を瞑り静かに詔を唱え始めた。朗々たる声で詔を全て唱え、最後にもう一度深く一礼してから立ち上がる。
 振り返ると冬の遅い朝日が昇って来たようで、外が漸くほんのりと明るくなっているのが見えた。その明かりに誘われるように扉を開き空を見上げると、まるで夕闇のような濁った空が目に入ってくる。


 この贖罪の神域は、昼間はいつもこんな薄闇に包まれているのだ。例え日が昇ったとしても、完全に明るくなる事は無い。なまじ夜の空が澄んでいて、月も星もはっきりと見えるだけに、昼のこの薄暗さには未だに慣れる事が出来なかった。
 軽く溜息を吐きつつ、本殿から一歩足を踏み出した時だった。
 バサバサと軽い羽音が庭の方から聞こえて来て、小さな茶色い固まりがいくつも海馬の目の前に降って来た。

「雀…?」

 目の前に降って来たそのいくつもの茶色い固まりは、現世で海馬に良く懐いていた雀であった。チョンチョンと地面を蹴って海馬に近付き、首を傾げながら足元で海馬の事を見詰めている。
 側に行きたいという声が聞こえたような気がして、そっと右手を差し出してやれば、それを待っていたかのように雀達は一斉に飛び上がり細い指に羽を降ろした。そしてまるで甘えるかのように、海馬の指に小さな頭を擦り付ける。
 その温かな熱に、海馬の顔にも自然と笑みが浮かんだ。

「何だ…お前達。一体どこから来た」

 この贖罪の神域に来てからというもの、『生きて』いるものは自分と食人鬼である城之内しか見た事が無かった。植物は不自然な程に沢山あるものの、『生きて』『動く』物を見た事はただの一度も無かったのである。
 だからこの世界には『生き物』はいないと思っていたのだが、どうやらそうでも無かったらしい。

「くすぐったいな。そんなに擦り寄るな」

 数羽の雀がスリスリと頭や身体を擦り付けて来るのに少し笑って、海馬は履き物を履いてそのままマヨイガまで帰って来た。そして庭の柿の木から熟した実を一つもいで、雀の前に差し出してやる。

「腹が減っているのか? これを食べればいい」

 差し出された柿の実に雀が嬉しそうに群がり、美味しそうに啄み始める。それを黙って見詰めながら、海馬は久々に心が温まっていくのを感じていた。無心に柿の実を啄む雀の邪魔をしないようにゆっくりと動き、縁側に腰を下ろす。海馬が身動いでも、雀は一羽も海馬から離れようとはしなかった。
 冬の風に吹かれながら、暫く優しい時間が流れていたのだが…。
 突然、雀達が何かに気付いたようにビクリと小さな身体を揺らし、そして一斉に空へ飛び上がって行った。

「………っ!?」

 まるで何かから逃げるように高く高く飛び上がり、そして鳥居の向こうの空まで辿り着いた時に、歪んだ空間に掻き消されるようにその姿が見えなくなる。
 余りに突然の事態に状況が掴めなくて、雀達が啄んだ為に穴の空いた柿の実を手に持ったまま呆然としていると、屋根の上からクスクスという笑い声がするのに気付いた。
 慌てて立ち上がり振り返ってみると、そこにいたのは城之内であった。

「城之内…」
「こんな朝っぱらから黒龍神に祈りを捧げるとは…ご苦労さんなこって。真面目なんだな」
「オレは神官であり巫女だ。神職に仕えている者として朝夕のお勤めをする事は、至って普通の事だと思うのだが。今までの贄の巫女達も同じようにしていただろ?」
「まぁな…。だからこそオレはいつも思っていたよ。現世にいる時ならまだしも、ここまで来てそんな事をする事に、一体何の意味があるのかってね。どんなに祈りを捧げようと、黒龍神はもう何も助けてはくれない。月に一度オレに食われて、十年後に死ぬって事に関しては、何も変わらないんだからな…」

 ニヤニヤ笑いながらもどこか寂しげな表情をしている城之内に、海馬は何も言う事が出来ずに視線を合わせる事しか出来なかった。だがふと、手に持っていた柿の実の事を思い出して、先程疑問に思った事を口に出してみる。

「そう言えば…。先程数羽の雀がいたのをお前も見ただろう?」

 海馬が口に出した疑問に、城之内は面白そうに頷いて見せた。

「あぁ、見たけど。それが?」
「オレはこの贖罪の神域に来てから、オレ達以外に『生き物』はいないと思っていたのだが…」
「いないぜ。基本的にはな」
「………? どういう事だ…?」
「元々は何もいない空間なんだ。内から出られない代わりに、外からも決して人間は入って来られないからな。でも、人間なんかよりもっと純粋な生き物…、つまり動物や鳥なんかは時々間違ってここに入って来ちまう事がある」
「間違って?」
「あぁ。この空間が異質な空間である事は、奴らもちゃんと感付くらしいけどな。たまにそれに気付かないで入って来てしまう事があるんだよ。動物達は出入りも自由だから特に問題も無いし、そういう予期せぬ客は贄の巫女にとっては心の癒しにもなるらしい。現に今、お前…楽しかっただろ?」

 城之内の台詞に海馬はただ黙って頷く。
 この何もいない空間に、突然雀が現れた謎は解けた。だがもう一つ、海馬には疑問に思っている事があった。
 雀達はつい先程まで、海馬の手の上で安心しきって柿の実を啄んでいた筈だった。それなのに、突然何かに怯えたかのように飛び去って行ってしまった。今まで色々な動物に好かれてきた海馬であったが、突然怖がられるという事が無かった為に、少し驚いてしまったのだ。
 その疑問を口に出そうと手に持っていた柿の実に視線を移した時だった。まるで海馬の心を読んだかのように、城之内が口を開いた。

「雀が何で突然逃げ出したのか…そんなに不思議か?」

 城之内の言葉に慌てて屋根の上を見上げると、彼は相変わらず寂しそうな笑みを称えたままこちらを見ていた。

「動物や鳥達は、人間なんかよりずっと異形の者に対する気配に敏感だ。オレがやって来た気配に気付いて、命の危険を感じて慌てて逃げ出したんだ。動物達は…純粋だからな」
「だが…。貴様は別に動物や鳥に危害を加えるという訳では無いんだろう?」
「そりゃそうだけどね。オレだって動物は大好きだし、これでも人間であった頃は犬や猫にはよく好かれていたしな。でもな、さっきも言ったけど動物ってのは凄く純粋な生き物だからさ。本能に従順な訳よ」
「本能…」
「そう、本能。奴らの本能がオレの存在を危険なものとして認識してるってこった。近付いてはいけない。危険な存在。近寄ったら命を落とすって…な。奴らにはちゃんとそれが分かっているんだ」

 そこまで言って、城之内は突然屋根から飛び降りた。
 そして海馬の目の前に降り立つと、立ち上がってそっと掌を海馬の頬に当ててくる。ヒヤリとした体温に、海馬の肌がゾワッと粟立った。

「お前にだって…感じている筈だ。オレの存在が相容れない者だと、危険な者だと、近寄ってはいけないと…。ちゃんと本能がそう警告しているのを…感じるだろ?」

 獣の瞳孔をした琥珀の瞳が細められるのを間近で見て、海馬は思わず一歩後ずさってしまった。ジャリッ…と履き物の下で地面に擦られた小石が音を起てる。
 背筋に悪寒が走り、肌が粟立つ。頭の中がざわついて、『これ』は危険だと警告していた。
 こめかみから流れる冷や汗に気付いた城之内がニヤリと笑い、海馬の頬から手を引いてその場でクルリと後ろを向いた。

「ほら…な? 今はまだそんなに実感が無いだろうけど、その内嫌でも分かるようになる。そう…次の新月が来れば嫌でも…な」

 城之内はもう振り返らなかった。冷たい冬の風に金の髪を揺らして黙って背を向けるのその姿は、今朝の夢を思い出させる。海馬にはそれがとても悲しく映っていた。


 海馬がこの贖罪の神域に来てからもう数日が経っている。
 新月の晩は…もうすぐそこまで迫っていた。

眠れる獅子、起こすべからず

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占いブームがやってきた二礼です、こんばんは。

先刻、散たんと色んな占いの話をしていて、すっかり占いブームになってしまいました…w
天中殺がどうたらこうたらという話から始まって、姓名判断やHN占い、果てはSM占い等々。
ネット上で出来る色んな占いをやりまくって、凄く楽しかったですw
姓名判断で散たんと全く同じ結果が出たのには笑いました…w
ぶつかったらイカンのだそうです。ライオン同士の争いになって、誰も仲裁出来ないらしいです。
ライオンってwwwww

たまにこうやって占いで遊ぶと、凄く面白いですよね~。
でも、占いだけに流されるのはダメだと思います。
悪い結果が出たからといって本気で落ち込むのでは無く、『当るも八卦当らぬも八卦』という気持ちで軽く受け止めるのが一番いいんじゃないかな?
だって占いを本気に受け止めちゃったりしたら、私なんてもう全然ダメダメになりますよ!
今年の夏頃から、寺社仏閣に行く度に引いてたおみくじが全部『凶』だったんですから!!
………よく考えればこれって凄い事だったのかもしれない…(´―`;
でも考え方を変えればさ、今現在『凶』だって事はこれ以上は悪くならないって事になりません?
ね? ね? そうだよね? そう考えればこれもまた『吉』だって事だよね?
『当るも八卦当らぬも八卦』とは、こういう精神の事を言いますw


長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第八夜をUPしました。
贖罪の神域は現世とは違って、とっても不思議な空間なんだよ~という事を強調したかったので、マヨイガなんて出してみました。
動きもしないし喋りもしませんが、この家は海馬のお世話係になるんです。
何という御都合主義!!www
けれどそれがファンタジーパロディの良い処なんだ~(´∀`)エヘヘ

完全SF脳の友人に言わせると、ファンタジーのこういう御都合主義なところが嫌いなんだそうです。
理屈を立てないと納得出来ないって奴ですね。
そういう意味で見ると、社長もファンタジー嫌いっぽいですよね~。
すぐに「非ィ科学的だ!!」って喚き散らしそうですwww


以下は拍手のお返事になりま~す(*'-')


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございます~!(・∀・)

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をどうもです~v
うふふ…(´m`)
今日もRosebank様の予想コメントが炸裂していましたが、さて…どうなりますやらw
今回はちょっとだけ当たりで、後は残念…って感じだったかな?(´―`)
でも、一番可哀想なのは城之内って辺りは当っています。
怖くて恐ろしくて巨大な力を持っている鬼ではあるけれど、本当はちっぽけな存在なんですよ。
千年という長い時間を贖罪の神域にて幽閉されて過ごして来ましたが、彼は未だに千年前の呪縛に捕われたまま全く成長していないんです。
この呪縛を海馬がどう解いていくのかって辺りが、今回の長編で一番力を入れて書きたいところですね。
テーマがとても難しい物語なので、急がないでじっくりと本腰を入れて、確実に書いて行きたいと思っています。
ちょっと長くなりそうですが、宜しくお付合い下さいませ~。

日記の方の感想もどうもでした~v
そうそう、関東以北のおつゆは黒いんですよね。
実はアレ、その地方の水の質が関係しているんです。
関西の方は軟水ですが、関東から北は硬水なんですよ。
水が硬い為、昆布や鰹節だけでは繊細で美味しい出汁を取る事が出来ないんです。
なので煮干し等を使ってガッツリ濃い出汁を作ります。
そこまでガッツリ濃いのを作ってしまうと、今度は繊細な味付けだけでは物足りなくなってしまうんですよね。
なので塩では無く醤油を入れて、出汁に合うように濃い味付けにするんです。
なので真っ黒になると…w
確かにおつゆを全部飲み干すという人はこっちでは少ないと思います。
でも塩分だけで言えば、実は同じくらいしょっぱいらしいですよ?
関西の方は味付けが繊細で味が舌に刺さらないので、塩分に気付きにくいらしいですね。
私はどっちも大好きですがw

以前に関西圏に住んでいる友人(♂)が「関東のうどんは絶対食えない! 黒いつゆが気持ち悪い!!」と息巻いていた事がありました。
地域によって味の違いが出るのは仕方の無い事なので、そこまで言う事無いのに…(´・ω・`) と、ちょっと悲しくなった事があります…w
郷に入っては郷に従えと言いますし、その地方の美味しい料理を楽しんで食べるのが一番素敵だと思うんですけどね~(´∀`)

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

雪景色

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 雪は憂鬱になるから、そんなに好きでは無い。

 幼い頃は大好きだった。天気予報で「積もる」と言われば、モクバと二人で手を取り合って喜んだものだった。
 施設の狭い部屋の中。明日の朝になったら一面の銀世界になっていると大人達に言われ、ワクワクしながらベッドに入って目を瞑る。けれど、暫くしてモクバの規則正しい寝息が聞こえてきても、オレは一向に眠れずにいた。雪が楽しみ過ぎて、目が冴えてしまっていたのだ。
 身体の芯まで冷たくなるような空気の中。上着を羽織ってオレはベッドから抜け出て、窓に近寄ってそっとカーテンを開いてみる。
 雪は既に降っていた。音もなく静かに、シンシンと。
 真っ暗な夜空から白い固まりがフワフワと落ちてきて、それが施設の園庭に次々と積もっていく。まるで舞台照明のように照らされた街灯の光の中でだけ、雪が降ってくる様がはっきりと見えた。
 それは本当に美しい光景だった。美しくて至極幻想的な感じさえした。
 オレは結局夜中までベッドに戻る事は無く、冷え切った身体を掌で撫で擦りながら、いつまでもそんな美しい光景に目を奪われていた…。


 そんな風に雪が積もった日は朝から雪遊びをして、モクバや施設の他の子供達と一緒にはしゃぎつつ遊んでいたものだが…。
 だが、大人になるとそんな事も言っていられない。
 この軟弱な都会は雪が降るとすぐに交通網が乱れ、物流までもがストップしてしまう。社長として社員の身の安全も心に留めておかなければならない身としては、こんな日にいつまでも残業させる訳にもいかなくて。バスや電車が完全に運休する前に、自宅に帰してやらなければならないのだ。
 更に物流がストップしているという事は、今日やるべき仕事が後日に回ってしまうという事にもなる訳であるから、その事に対しても頭の痛い事態となる。
 やるべき事は山のようにある。もう子供の頃のように、無邪気には喜べない。
 それが何より憂鬱になるから、雪は余り好きでは無かった。


 窓の外では、夕刻から降り始めた雪がシンシンと地面に積もり始めている。時計を見れば午後の八時。モクバも含め他の社員は社長命令で定時で上がらせているから、残っているのは家が会社から近い少数の社員と、あとはオレとSPくらいなものだろう。
 電車やバスはまだ動いているようだから、帰るなら今の内かもしれない。オレはどうせリムジンで帰るから電車は使わないのだが、鉄道が完全に止まってしまえば必然的に道路が混む事になる。そうなるとこちらの帰宅時間も遅れてしまう事になるから、余り遅くまで残って居るのは得策とは言えなかった。
 本当はもう少し仕事をしていたかったのだが、仕方無くPCの電源を落とし、オレは帰る準備をする為に立ち上がった。その途端、内線が掛かってきた音を聞いて、身体の動きを止めてしまう。
 やれやれ…。人がせっかく帰ろうとしている時に…と溜息を吐きながらも、おれは机の上の電話に手を伸ばした。そして受話器を手に取り耳に当てる。「オレだ。どうした」と問い掛ければ、比較的近場に住んでいる為まだ会社に残っていた秘書が軽やかな声でこう伝えて来た。

『社長。城之内様からお電話が来ております』

 城之内。その単語を聞いた瞬間、心臓がドキリと高鳴った。思わず受話器を取り落としそうになって、震える手で慌ててギュッと握りしめる。
 城之内からの電話など、実に何日ぶりだろうか。『お繋ぎしますか?』との秘書の声に「あぁ、頼む」と即答し、オレは机に寄りかかりながら前髪を掻き上げた。


「オレ、このままじゃダメなんだよ。お前につり合う男になる為に、ちょっと旅してくる。だから帰ってくるまで待ってて?」

 オレの恋人であった城之内がこう言って童実野町を出ていったのは、今から約三年前、童実野高校の卒業式の翌日の事だった。
 はっきり言ってオレは城之内の言っている事が何一つ理解出来なかった。
 オレにつり合うとは一体どういう事なのか…とか、オレにつり合う為に何故わざわざ旅に出なくてはならないのか…とか、聞きたい事は山程あったが、それを尋ねるのも面倒臭くて結局城之内のやりたいようにさせる事にしたのである。
 どうせ凡骨の事だろうから一~二週間もすれば帰ってくるだろうと高を括って待っていたのだが、城之内は意外にしぶとく…そして頑固だった。
 一ヶ月経っても二ヶ月経っても帰って来ない。向こうからは時々電話連絡が入るし、たまに現地で買ったであろう絵葉書が届いたりする事もあったが、城之内は決して帰って来ようとはしなかった。
 理由を聞けば「まだまだつり合って無いんだ」と言うばかりで、こっちの話を聞こうともしない。いい加減諦めて帰って来いと促そうにも、城之内は携帯電話を持っていないので、こちらからのコンタクトは一切出来ない状況だ。
 それでも最初はしょっちゅう連絡が来ていたから良い方だった。二、三日に一回は電話連絡があり、二週間に一回は絵葉書が届く。けれどそれが間延びしていくのは、あっという間の出来事だった。
 今では電話連絡なんて二、三ヶ月に一回あれば良い方だし、絵葉書なんて半年に一回だ。


 最初は国内を点々と移動しているだけだと思っていた。なのに、いつからか外国で買った絵葉書まで届くようになっていた。国際電話は金が掛かる為、そういう時は電話連絡は一切来ない。ただ、安っぽい絵葉書だけがオレに届く。
 連絡の無い間は、城之内が一体どこにいるのかなんてさっぱり分からない。国内なのか、それとも国外なのかすら分からないのだ。
 オレにつり合う男になる為と勝手に自分で決めて、勝手に旅立ってしまった。大体その理由だって、オレは未だに理解しかねているのだ。
 オレがいつお前に「オレにつり合う男になれ」と言った? そんな事言った覚えは無いし、思った事すら無かった。
 それを勝手に思い込んで旅立ってしまって、当の恋人は約三年も置いてけぼりにされている。いい加減呆れ果て、捨てられてもおかしくない時間だとオレは思う。
 けれど…捨てられないのもまた事実だった。

 オレはまだ城之内を待っていたのだ。
 三年間も放っておかれながら、それでもまだ待っていた。
 城之内の「待ってて」という言葉を裏切れなかったのだ…。


 内線が外線に切り替わって、受話器の向こうの音が変わる。風の音と背後で車が走り去る音。どこかの公衆電話からかけてきているようだった。『もしもし?』という脳天気な声が聞こえて、オレは向こうに聞こえるようにわざと大きな溜息を吐いてみせる。

「何だ…。生きていたのか、凡骨」
『ちょっ…? 何その言い方。久しぶりなんだからもっと優しくしてよ』
「放蕩馬鹿の貴様に優しくする道理など無い」
『そんな…、酷いわ海馬君!! せっかく心配してあげたのに!!』
「貴様に心配される事など、何一つ無いわ! そろそろオレの事なんか、もうどうでも良くなって来たのではないか?」
『そんな事ないってばさ。今日そっちは雪なんだろ? 珍しく大雪になりそうだから注意が必要ですって、さっき天気予報で言ってたからさぁ…。心配になって電話かけてみただけなのに』

 城之内の台詞から、彼が今日本にいるだろう事が分かった。
 だが、それが分かったところでどうしろと言うのだろう。狭い日本とはよく言われるが、それでも端から端まではそれなりに距離はあるのだ。
 ましてや今ここにいなければ、例え国内に居ようがその距離は外国にいる時と全く変わらない。意味が無いのだ。

 受話器の向こうからは、相変わらず風の音が響いている。たまに背後に走っているであろう車の音が乾いた音では無い事に気付く。バシャバシャと水を弾く音と、チャリチャリと鎖がアスファルトに接触している音が伝わって来ていた。

「雨………?」

 思わずそう呟いたら、『いや、雪だよ』とすぐに返事が返ってくる。

『もうね、すっごい雪なんだ。オレなんか埋まっちゃいそうなくらい。お前だったら頭一つ分くらいは出るかもしれねーな』

 ケラケラと楽しそうに笑って現状を報告する城之内に、オレは不機嫌具合を隠さずにまた大きく溜息を吐いた。
 何がそんなに楽しいのだ。三年もオレと離れているのに。脳天気にも程がある。
 この三年間、オレはちっとも楽しくなかった。何をしても心の底から楽しめなかった。お前がいなければ、全ての楽しさは半減してしまうというのに…。

「城之内…」
『ん?』
「楽しそうだな…」

 こんな風に嫌みを言ったりしたくなかった。それでも、言わずにはいられなかった。
 もう…この脳天気の阿呆に付合う気力は残されていなかった。

「旅は…そんなに楽しいか? オレと一緒にいるよりも楽しいのか?」

 受話器の向こうからは、暫く風と雪の音しか聞こえなかった。いや、それだけでは無い。城之内の息遣いが聞こえる。はぁ…と温かい吐息を深く吐き出す音が、オレの耳に届いた。
 ややあって、『待つの…辛くなってきた?』という至極真剣な声が響いてくる。
 その声だけで城之内の顔が浮かぶ。きっと明るい琥珀の瞳に真剣な光を携えて、両の口角を少しだけ上げて困ったように笑いながらオレの返事を待っているのだろう。

「待つのは…嫌いなんだ。最初から嫌だと思っていた」
『うん…』
「それでも三年待ってやったんだ。いい加減戻って来い…っ! 戻って来ないなら、もうお前の事は忘れる事にする!」
『それは困る! うん、そうだな。そろそろ帰るよ。桜の花が咲く頃には』
「長い!! そんなには待てない!!」
『え? そう? んじゃ梅の花が咲く頃…』
「もういい加減にしろ、城之内!!」
『海馬…泣かないで。ちゃんと帰るからさ…』

 城之内の言葉で、オレは自分が泣いている事に初めて気が付いた。頬に涙が幾筋も流れ、視線がぼやけて苛々する。

「いつ帰って来るのだ…っ!」
『だからもうちょっと…かな。年が明けて冬が終わる頃には…』
「遅いと言っているのだ!! もっと早く帰って来い!!」
『えー? えと…じゃぁ…年明けにでも…』
「もう嫌だ! これ以上少しでも待ちたくない!! 今降ってるこの雪が、溶けきる前に戻って来い!!」
『そ、そんな無茶な…っ!!』
「無茶でも何でも無い! オレはこれ以上の譲歩はしないからな…っ!!」

 溢れる涙を手で覆うようにして拭って、オレは城之内に怒鳴りつけた。
 情けない…。涙が…止まらない。
 静かな部屋の中にオレの嗚咽だけが響いていて、受話器の向こうはまた静かになってしまった。
 このまま答えが出なければ、すぐにでも電話を切ってやる。そして城之内との関係も綺麗サッパリ終了してやる!!
 そう思った時だった。

『帰るよ』

 強く耳に押し当てた受話器から、城之内のはっきりした声が響いてきた。

『分かった。帰るよ。今そっちで降ってる雪が溶けきらない内に、絶対そっちに帰る。だからもうそれ以上泣かないでくれ。オレ、お前に泣かれるの弱いって知ってるだろ?』

 強くて優しくて、オレの事が大好きな城之内の声が響く。
 それだけで、何故こんなにも安心してしまうのだろうか…。

「本当だな…」
『うん、本当だよ。だからもう泣くなよ』
「な…泣いてない!」
『嘘吐けよ。泣いてたじゃん』
「泣いてない…っ!!」
『分かった分かった。泣いてても泣いてなくても、もうどうでもいいや。さっさと帰ってその顔見てやりゃいいんだからな』

 最後にクスッと笑って、城之内は『じゃ、また連絡入れるから』と言って電話を切った。
 部屋の中はまた静かになり、オレ一人が残される。けれどもう…寂しくも何ともなかった。
 机から身を起こし窓辺に近寄って、外の風景を眺めてみる。相変わらず雪はシンシンと降り積もり、街の景色を真っ白に変えていく。明日の朝には一面の銀世界になっているだろう。

 大人になってからは、雪はただ憂鬱なものに過ぎなかった。
 けれど今はこんなに気持ちが高揚している。ワクワクしている。
 今夜はきっと眠れない。風邪を引かないように温かい上着を羽織って、夜中まで降り続ける雪を見よう。どんなに深く積もっても、オレはもう焦ったりはしない。寂しくもならない。
 この雪が溶ける頃には、お前が目の前にいると信じているから…。


 静かに優しく降り積もる雪を少しでもゆっくり眺める為に早く帰ろうと、オレはコートを羽織って部屋を出た。
 たまには雪も悪く無いと…そう思いながら。

第八夜

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 彼女は言った。
 どうか救いを下さいと。
 それは私が言いたくて言いたくて仕方の無かった事だったから。
 だから彼女のその言葉を聞いた時、私は心から感謝したのだ。
 私の声は黒龍神には届かない。
 けれど、私も彼女と一緒にずっとそう思っていた。
 救いを。どうか救いを。
 彼と贄の巫女と、両方に救いを…慈悲を与えてやって欲しいと…。

 




 城之内に連れられて向かった先は、本殿の裏手にある一件の家だった。現世であれば本家…つまり城之内家がある場所である。現世にある現代風に建て替えられた家とは違って、目の前に建っているのは茅葺き屋根の古風な民家だった。窓からは灯りが漏れて、台所や風呂に当る場所からは白い湯気が出ている。
 一瞬、自分の目の前を歩いているこの男が食事や風呂の用意をしてくれていたのだと思った。だが海馬の考えを見透かしたように、振り向いた城之内はニヤリと笑ってこう言い放つ。

「オレは別に何もしてないぜ?」

 それでは一体誰がこんな事をしているんだと問い掛けて、だがそれは、海馬の口から放たれることは無かった。家に近付くに連れて、その周りの奇妙な光景に気付いたからである。
 茅葺き屋根の家の前には大きな桜の木が一本生えている。それは現世でも同じ場所に桜の木がある事から、別段不思議な事では無い。その桜の木の脇には、柿の木が二本生えている。それも現世と一緒だから別に良いのだ。
 ただ、海馬の目にはそれがとても奇妙に映っていた。
 季節は冬だというのに、桜の花は満開に咲いていた。その脇に生えている柿の木には、熟した柿の実がたわわに実っている。家の裏手にある椿の木々は紅や白の美しい花を咲かせ、藤の垣根には朝顔の蔓が巻き付き朝を待つように青色の蕾を膨らませていた。
 それだけでは無い。庭の方に目を向けると、藤棚には薄紫色の藤の花がまるで簪のようにいくつも垂れ下がり、その足元には真っ赤な彼岸花が何本も地面から顔を覗かせている。他にも向日葵や菖蒲等の夏の花の隣ではコスモスが風に揺れており、艶やかな紫陽花の隣に生えている金木犀にはオレンジ色の小さな花がびっしりと咲き誇り、芳醇な香りを辺りに漂わせていた。その向こうではそれに負けじと、梅の花の爽やかな香りが風に乗ってここまで届いている。

 桜、桃、梅、杏、藤、百日紅、木蓮、花水木、紫陽花、向日葵、菖蒲、朝顔、桔梗、秋桜、小菊、萩、竜胆、金木犀、銀木犀、椿、山茶花、水仙、沈丁花…。桜桃に林檎に柿に桃に杏子に枇杷に蜜柑に花梨。

 あらゆる季節の最も美しい状態の姿をしている花々と、全て立派に熟した実を付けている果樹。

「………?」

 どう見ても、それは異様な光景だった。一瞬華やかに美しく見えるものの、冷静に考えれば恐ろしさすら感じる。
 けれど…海馬はどうしてもそうは思えなかった。何故かその不可思議な風景に、優しさすら感じたのである。
 しばらく周りの景色に見惚れていた海馬は、城之内がいつの間にか家の中に入っていってしまった事に気が付いた。慌ててその後を追いかけて、そこでも有り得ない光景を目にして驚きに目を瞠ってしまう。
 板間の居間では既に夕食が準備されていたのである。囲炉裏には根菜が煮込まれた暖かい汁物の鍋が吊されており、その前には一人用の膳が用意されていた。巫女用の食事として、きちんと肉や魚や五穀などの材料は抜かれている。

「腹減っただろ。それ夕食だから、好きな様に食っていいぜ」

 いつの間にか戸口の脇に寄りかかるようにして立っていた城之内が、海馬に向かってそう声をかけた。

「これは…一体誰が…? まさかお前が…?」
「まさか。さっきも言ったけど、オレは別に何もしていない」
「では…誰が…?」

 この贖罪の神域にいるのは、この地に幽閉されている食人鬼である城之内と、贄の巫女の二人だけの筈。城之内が何もしていないと言うなら、一体誰がこんな事をすると言うのだろうか…。
 そこまで考えて、海馬はふと頭に浮かんだ単語を口に出した。

「まさか…マヨイガの一種か…?」

 マヨイガ。漢字で書くと迷い家となる、東北の遠野地方に伝わる不思議な伝承の家。
 神の悪戯とも妖怪の一種とも言われているが、そこに迷い込んだ者に幸運を与えるという不思議な伝説がある。
 海馬が自ら弾き出した答えに戸惑っていると、それを肯定するかのように城之内がクスリと笑いながら口を開いた。

「まぁ…そんなとこだろ。ここは黒龍神が贄の巫女の為に用意した家だ。せめて普段の生活くらいは何不自由なく過ごさせてやろうと思って作ったらしい。いわば、この贖罪の神域での、お前の世話係だな」
「この家が…世話係…?」
「そう。食事の準備も風呂の準備も全てやってくれるし、着替えなんかも勝手に箪笥に入れてくれる。庭の木になってる果物の実は、好きな様に勝手に食えばいい。いくら食っても次の日には復活してるからな」
「それは…凄いな。流石の黒龍神も贄の巫女を哀れに思っているという事か」
「そういうこった。まぁ…全ては初代の贄の巫女の入れ知恵なんだけどな」
「入れ知恵? 初代の贄の巫女の?」
「あぁ。初代の贄の巫女がこの贖罪の神域にやって来た時にはさ、ここはなーんにも無いただの空虚な空間に過ぎなかったんだよ。ただ本殿がポツンとあるだけでさ。そこへ初代の贄の巫女がやって来て、色々と足りない物を吟味してくれたって訳」
「………」
「黒龍神は立派な龍神だけど、神は人間じゃ無いからさ。人間にとって何が必要なのか、よく分かって無かったらしい。それを初代が全部自分で進言して、後の贄の巫女の為に用意してくれたって訳。どうせ死なねばならない身なれば、癒しや救いや慈悲は必要だと…な」

 そこまで言って、城之内は何かを考え込むように黙り込んでしまった。目は開いているが、視点が近くには無い。どこか遠く…そう、まるで千年前の過去を見据えているようだった。
 初代の贄の巫女という事はまだ分家では無く、城之内の名を持った者の中から選ばれていた巫女の筈。という事は、その者はこの城之内とかなり身近な人間であった筈だ。
 その者が城之内とどういう関係であったかは知らないが、遠くを見詰める城之内の視線の強さから、かなり近しい者であった事が海馬に伝わってくる。
 ただ…それを聞くのはどうにも無粋なような気がして、ついに海馬はそれを口に出す事が出来なかった。
 何も言う事が出来ずに黙って城之内を見詰める海馬の視線に気付き、城之内はチラリとこちらの方を見遣った。そして目が合うと、ふっと笑ってみせる。

「まぁ、とにかく飯食っちまえよ。食べ終わったら食器もそのまんまにしてていいんだぜ。家が何とかしてくれる。風呂はあっち。寝室はこの向こうだ。さっきも言ったように箪笥の中に着替えが入っているから、好きに使えばいい」
「え………?」
「風呂から上がったら布団が敷かれていると思うから、今日はもう寝ちまいな。慣れない場所に来て疲れただろう。次の新月まではまだ間があるから、暫くはここでの生活に慣れる事を最優先にするんだな」
「ま…待て!!」

 勝手にベラベラと喋り倒し、伝える事だけ伝えた城之内はさっさと部屋を出て行こうとしていた。くるりと背を向けたその姿に、慌てて海馬が声をかける。

「食事は…? 一緒に食べないのか…?」

 声をかけられ足を止めた城之内は、海馬の一言に心底驚いた顔をして振り返った。まるで全く想定していなかった事を言われたかのように、目を丸くしてこちらを見ている。
 そんな城之内に対して、海馬もまた首を傾げた。

 自分はそんなにオカシイ事を言ったのだろうか…?
 これから一緒に住むのだったら、食事を共にするのは当然の事では無いのか…?

 そう疑問に思いつつ黙って見つめ合っていると、やがて、城之内の方が海馬の思考に気付いて破顔した。さも可笑しそうにクスクス笑いながら、けれどまた、少しだけ寂しそうな顔をする。

「お前は…一体オレを何だと思ってるんだかなぁ…。本当に面白い奴だ」
「はぁ………?」
「オレの存在を忘れたのか? オレは食人鬼だぜ。食いモンは生の人間だけで、普通の人間の食事は一切摂らない。新月以外は腹も減らないから、何も食べる必要が無いんだよ。オレの事は気にしないで、さっさと食っちゃいな」
「だ…だが…。これから共に暮らすのであれば食事時くらいは一緒にいた方が…」
「共に暮らす? 誰と誰が?」
「オレと貴様だ」
「へ…? 冗談言うなよ。この家はお前の為だけに用意されたもの。オレの家じゃ無い」
「なんだと…? では貴様は一体どこで暮らしているというのだ?」
「どこでも。適当だよ。毎日の食事は必要無いし、睡眠時間だって二、三時間摂れば十分だしな。成るように成るって奴さ」
「適当…?」
「そう、適当」

 適当に過ごす。そう言った城之内の視線がある方向を向いているのを見て、海馬はハッと気が付いた。
 本殿だ…。多分、贄の巫女がこの家で寛いでいる間は、あの鬼は本殿にいるのだ。
 本殿には恋人の…せとの頭蓋骨がある。多分その骨の近くで、城之内は夜を過ごしているのだろう。

 ツキリ…ッ。

 その考えに至った瞬間、何故か胸が痛んだような気がした。痛みは一瞬で消え去り、気が付いた時にはもう跡形も無くなって痛みを感じた事すら忘れてしまう。
 だが、何故かザワザワと胸の奥が揺らめく感じが消えない。
 何だ…今のは…? 何なんだ…? 何でこんなに変な感じがしているのだろうか…?
 全く理解の出来ない症状に、思わず胸に手を当てた。それを見ていた城之内は、複雑な顔をして首を傾げる海馬にクスリと微笑み、そのままクルリと踵を返す。

「おやすみ、海馬。また明日」

 明るい口調でそれだけを伝えながら廊下を歩いて行き、やがて暗闇の向こうに消えていった。
 後に残されたのは、温かな食事を目の前にして棒立ちになっている海馬一人だけ…。
 食欲は全く無かった。けれどこのまま突っ立っていても埒があかないので、渋々その場に膝を付き膳を引き寄せる。箸を手に取り、小鉢に入れられた山菜の煮付けを一口分掬い取って口に入れた。
 その途端、至極懐かしい味が口内一杯に広がる。
 それは小さい頃母親が作ってくれた煮付けの味そのものだったのだ。試しに他の物を食べてみても、同じように懐かしく親しみのある味ばかりだ。

「これがマヨイガの力か…」

 軽く溜息を吐きながら、海馬は小さく呟いた。
 多分これが先程城之内が言っていた、黒龍神の慈悲という奴なのだろう。二度と現世に戻れない贄の巫女の為に、慣れ親しんだ物を提供する。過酷な環境下で、少しでも心安らかに過ごせるようにと…。
 流石だな…と感心する。そう思うのと同時に、とてもありがたいと思った。
 確かにこの味は心から安心すると…。
 それなのに、今の海馬はその食事を美味しいとは感じられなかった。
 贄の巫女として決定してから、食事は常に一人で摂っていた。だから別に一人での食卓が寂しいという訳では無い。
 ただ…胸の奥に何かが引っかかって、それが気になって食事に集中出来なかった。その事を思うと胸の奥がズシリと重くなって、途端に食べる気を無くしてしまう。
 結局海馬は用意された食事の半分も手を付けないまま、そのまま箸を置いてしまった。温かな湯気を上げる鍋を見つつ、深く溜息を吐いてしまう。

「初日からこれでは…、先が思いやられるな…」

 フッ…と自嘲めいた笑いを零し、海馬は力無く項垂れ暫くそこから動けなかった。
 胸の奥が苦しい理由も、食欲が無い理由も、動く気力が無い理由も、何も分からないまま…夜は更けていった。

そして嫌いな物~...;

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余り好き嫌いが無いとはいえ、それなりにはある二礼です、こんばんは。

日曜日の好きな物日記で、練り物系(蒲鉾とかハンペンとか竹輪とか薩摩揚げとか)を書くのを忘れてました(*´д`*)
練り物大好きw

そんでは本日は、個人的に余り興味が無い食べ物と嫌いな食べ物の披露です。
まずは食べれなくは無いけれど、余り興味が無い(魅力を感じない)食べ物。

  • (これを言うと皆ビックリするw 皮が生臭い塩鮭を食べちゃったせいだと思うんだけど、鮭お握りとかにも全く興味無し。イクラは大好きなんだけどさw)
  • 胃袋系モツ(モツ焼きとかモツ煮込みとかモツ鍋とか、全く興味が無し。ハラミ・ハツ・タン等のモツは大好きなんだけどねぇ…)
  • ポークカレー(個人的にはビーフカレーのが好みだ。関西圏は殆どビーフらしいけど、関東以北は完全にポークの支配地なんだよね…。関東でもポーク:ビーフの割合が7:3なのに、北海道なんて行ったら100%ポークだよw)
  • (函館では鯉こくはご馳走らしいんですけど…;)
  • 山葵漬け(漬け物は好きだしワサビも好き。けれど山葵漬けだけは少し苦手です。不思議だw)
  • 酢味噌(上にある鯉こくもそうなんですけど、酢味噌自体が少し苦手みたいです)
  • ジン系カクテル(あの薬品臭さがちょっと苦手)
  • ブルーチーズ(ゴルゴンゾーラとかね。基本チーズは大好きなんだけど、青カビ系はくど過ぎると感じます。ピザとかみたいに火を通せば美味しくて好きw 個人的には白カビ系(カマンベールとか)の方が好みです)
  • ナマコとホヤ(水っぽい…w 存在自体が理解不能w)


最後に嫌いな物~(´∀`;

  • 豆乳(豆腐製品は大好きな癖に、豆乳自体はダメなのだ…; あの微妙な甘ったるさと豆臭さがダメらしい…。少しでも固まっていれば(湯葉とかね)美味しいのに! あ、でも豆乳アイスとかはダメでした)
  • 煮ちゃった鶏皮(水炊きとか煮込みとかね。焼き鳥とか唐揚げとかの鶏皮は凄く好きなのに、煮た状態の奴だけは、どうしてもダメですわ…; 何か…鳥臭い…; 本当に物心ついた頃からダメだったので、コレに限って言えば一生嫌いなまんまだと思います…w)
  • 日本酒(日本酒飲めたらもっとお酒が楽しめると思うと、凄く残念です…。でも、あの妙な甘ったるさがダメなんだよぉ~!!)
  • 辛い物(辛い物は苦手です。ピリ辛なら全然美味しくいけるのですが、本格的に辛いものはダメですわ…; 唐辛子マークは一個まで!!)
  • 棒アイス(これは味の問題じゃ無いです。歯が知覚過敏なので、囓って食べる事が出来ないんですw 超凍みる;)


こうやって書き出すと、結構嫌いな物ってあるんだなぁ~って思います。
完全に嫌いな物自体は少ないかもしれませんが、結局魅力が無い食べ物だって敢えて好んで食べたりはしませんからね。
まぁ…でも、人間ですからw 嫌いな物があったっていいじゃないか!
問題なのはバランス良く食べる事なんですよね~。
偏った食生活だけは絶対ダメです!!


長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第七夜をUPしました。
いよいよ本編に入って来たので、初めてまともにお話しさせてあげました。
…結果、早速海馬がキレました…w
まぁ…結局は私が書く長編なので、いつもの如く海馬が可哀想な目に合うのが目に見えるというか何というか…(´―`;
もう今更何の言い訳もしませんです…w
でも何でなんだろうなぁ…。
海馬の事が滅茶苦茶好きな癖に、何でこんなに苛めたくなっちゃうんだろう…?
コレはアレか? ガキ大将気分って奴なのか!?www


あ、それから明日は病院デーなので、お休みさせて下さいませ。
この間体調を崩して酷い目に遭ってから、余り無理をしない事に決めました。
更新したい気はバリバリにあるのですが、それで体調を崩したりやる気まで無くしてしまっては元も子も無いという事に、今更ながら気付いたんです…w
大変申し訳ありませんが、宜しくお願い申し上げます。


以下は拍手のお返事にでございます~(´∀`)


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(*'-')

『素質Ⅷ』の後編と日記の感想をどうもです~v
最初は物好きなエロ海馬を書きたかっただけのこのシリーズですが、気が付いたらただのラブラブエロカップルになってました…w
最近では私自身も、素質を書く度に「お前等幸せそうだなぁ…」と思うくらいですよw
もういいよ、お前等はそのままでw
たまに羽目を外しても幸せそうなので、もうどうでもいいです…www

Rosebank様もコメントしていますが、愛あるエロっていいですよね~!!
私も大好きです!!(*´д`*)
この調子で素質シリーズもチョイチョイ書いていきたいと思いますので、次も楽しみに待っていて下さったら幸いに思います。

それから食べ物日記にも反応して下さって、ありがとうございましたw
そう言えばRosebank様は関西の方でしたね!!
納豆が嫌いと言う辺りで思わず笑ってしまいました…w
やっぱり関西圏の方って納豆苦手なんですねぇ…。臭いもんなぁ…www
地域によって食の好みも変わりますよね~。
ここ何年かで関東でも見るようになりましたが、関西の方ではメジャーな牛すじも、数年前までは余り知られていない食べ物の内の一つでした。
今ではこちらのセブンのおでんにも普通に入っていますが、やっぱり売れ行きはイマイチです。
逆に関東でしか食べない食材であるちくわぶ(竹輪じゃないです。生麩の一種でお団子とかスイトンとかに近い感じです)はよく売れますね。
どんな味かと聞かれると、上手く説明出来ないんですが…w(団子がおでんに入ってると考えれば一番近いかもしれません…w)
つゆの濃さ薄さも地域によって全然違いますし、こういうのを比べてみると、日本って本当に面白い国だと思います。
食文化や風習など、知れば知るほど面白くなってきて飽きませんよねw

あ、それと今回も誤字指摘ありがとでした~w
直しておきましたよ~!

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

今日は好きなもの

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余り好き嫌いが無いと言われる二礼です、こんばんは。

先日、リアル腐友と食べ物の好き嫌いについての話をした事がありました。
実は腐友はものすご~く食べ物の好き嫌いが多くて、特に嫌いな食べ物に関しては聞いていると思わず溜息が出る程酷いんですよw
もう一人男の友人で同じように嫌いな食べ物が多い人がいて、最初はこっちの方のみがよくネタにされていたんですけどね。
最近は腐友の食の好みが極端に偏っている事が判明したので、もっぱら二人揃ってネタにされていますw
で、そういう話をしていたら、じゃあ自分はどうかって思った訳ですよ。
確かに上記の二人程酷くは無いものの、私にだって嫌いな食べ物というものがある訳ですからね…。
という事で、今回は二礼の好きな食べ物と嫌いな食べ物を披露してみる事にしました。

まず、特に好きな食べ物ね~(*´∀`*)

  • 野菜(基本何でも好き。特にトマトとセロリがお気に入り)
  • 果物(何でもいけるけど、柑橘系はホントに好きだ。特にグレープフルーツとか青切り蜜柑とか、えぐみが強ければ強いほどいいw)
  • ハーブ系(ここで言うハーブってのは、香草全般の事ね。西欧料理におけるハーブもそうだけど、日本で言う青紫蘇や茗荷や生姜とかや、東南アジアでよく使われるパクチーなんかも入ります)
  • (鶏もそうだけど、魚卵も大好き~v)
  • ぬるぬるネバネバ系(納豆、オクラ、メカブ、山芋、モロヘイヤ等々。粘っていれば何でも好きw)
  • 漬け物全般(特に梅干しを愛しています。蜂蜜漬けとか鰹梅とかじゃなくて、本気でしょっぱいのが好きw お握りにはやっぱり梅干しです!!)
  • 貝類全般(出汁出過ぎ! 修正しなくていいやw コリコリとした歯ごたえもいいよなぁ~)
  • 豆腐製品(豆腐、湯葉、厚揚げ、がんもどき、油揚げ等々大好き! 豆腐は冷や奴より、温かい食べ方の方が好みだな。湯豆腐とか、お鍋とか味噌汁に入れたりとかね。揚げ出し豆腐とか最高だわ!)
  • 乳製品(牛乳を始めとして、ヨーグルトやチーズとか凄く好き!! 冬はホットミルクだよ!! 表面に張った膜とか好んで食べちゃうものw)
  • 魚肉ソーセージ(何故か普通のソーセージよりこっちのが好きだw)
  • 甘味全般(コレに関しては特に何も言う事はありません…w チョコも生クリームもアンコもきな粉も、何でも好きだw 好みが分かれるマシュマロとかも好きv フワフワモキュモキュヘグヘグしてる感じがいいよねw)
  • 珈琲(酸味があるのより苦い方が好み。炭焼きコーヒーいいよね)
  • お茶全般(日本茶から紅茶、更にはハーブティーまで色々。個人的には玄米茶とジャスミンティーが凄く好きです)
  • ビール(すっげー愛してるw いくら安くても発泡酒じゃダメだわ…)
  • ウォッカ系カクテル(癖が無いから飲みやすくて好きw ただし、お酒に弱い人は要注意w)
  • 梅酒(梅干しもそうだけど、梅製品が好きなんだよな…)

本当はこの後に嫌いな食べ物を続けて書くつもりだったのですが、何か思ったより沢山書く事になりそうなので、特に魅力を感じない食べ物&嫌いな食べ物については次回(火曜日)の日記に書く事にしますw


素質シリーズに『素質Ⅷ』の後編をUPしました。
城之内の匂いにムラムラしちゃう海馬が書けて、今回は本当に楽しかったですw
つーか私、前編で陰毛陰毛書き過ぎましたね…。
反省してまっする! うん、ホントホント。ホントだよ~(´―`)(嘘だな…w)
それでね、最近漸く気付いたんですよ。
これ、海馬が変態なんじゃなくって、

二 礼 が 変 態 な だ け な ん だ 

って事がね^^;
いいさw いいじゃないかw
何か色々吹っ切れたんで、これからも素質シリーズの城海には色々やって貰いますよw


以下は拍手のお返事になります~(*'-')


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(´∀`)

『素質Ⅷ』の前編と日記の感想をどうもです~v
ウチの変態海馬さんへの告白、誠にありがとうございましたw
元々この素質シリーズは、他サイトでは余り見ない変態的な思考を持った海馬を描きたくて始めたものでした。
だから第一作目は放尿プレイとか、今考えると物凄く濃ゆいプレイをしていたんですけどね…(´―`;
ある程度回数も重ねてきてやるべきプレイはやったような気がしていましたが、何故かどんどん海馬の変態度が上がっていくんですよ…。不思議な事にw
もう仕方無いというか…取り返しが付かない事になっているので(笑)、このまま変態さんで突き通す事にしますw
こうやって開き直ると、させたいプレイの幅が広がっていっちゃったりするんですよね~。
こりゃ困ったなwww

そうそう。城之内君の下の毛の色は、私もかなり悩みました。
髪の毛と同じ金色でも良かったのですが、城之内君のあの金髪が染めているものであった場合、下の毛は黒になるよな~って思ったんですよね。
それに金色より黒の方が男らしいというか、モッサリした感じ(大笑)が出ると思って、今回は黒にしてみました(*´д`*)
読み返してみたら思った以上に下の毛特有のくどさが表れていたので、これはこれで成功だと思っていますw

それから匂いの事なんですが…。
やっぱり匂いって、重要なセックスアピールの内の一つですよね!!
Rosebank様の仰る通り、匂いの中にはフェロモンも含まれていて、それが興奮する材料の一つになったりしますからね~。
でもRosebank様が「嫌過ぎる」と言っていた『城之内の使用済み下着で自慰する海馬』についてですが、これ見た瞬間に「うほw これは良いエロ海馬v」と思ってしまった私は、やっぱり変態さんなのかもしれません…www
いや、有りですよコレ!! 十分有りです!!wwww

あ、誤字の修正もありがとうございました~!
早速直しておきましたw

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

第七夜

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 せっかく救いの者がやって来ても、お前が気付かなければ全く意味が無いというのに…。
 何故…気付かない。
 何故そんなに罪に溺れたがる。
 お前をそこまで追い詰めたのは、やはり私のせいなのだろうか…。
 私は…私は…。
 もう…お前を解放してあげたい…。
 だが、この身では何一つ出来やしない。
 お前の為に何一つしてやる事が出来ない。
 それが…私にとっては何よりも悲しかったのだ…。

 




 食人鬼は…酷く驚いた表情のまま、ずっとその場に立ち竦んでいた。
 見た目は二十歳前後だろうか。人間で言うならば大人になったばかりのような不安定さを感じる。それなのに伝わってくる内面は、至極落ち着いたものだった。いや、落ち着いているというよりは、全てのものに対して諦めの気持ちがあるといった方が正しいかもしれない。
 多分…迷いというものが一切無いのだ。この千年という長い時間を過ごす間に、持っていても全く役に立たない希望というものを捨て去り、全てを諦めてただ流される事に何の違和感も感じなくなっている。
 それが、海馬が最初に感じた食人鬼のイメージだった。
 だが…それは酷く悲しい事だと海馬は感じた。そこに何の救いも見出せなかったからだ。

「あ…の…」

 一言も言葉を発する事無く、ただ黙って海馬の顔を見詰め続ける鬼に話しかけた時だった。
 驚愕の表情を泣く一歩手前のようにくしゃりと歪めて、その次の瞬間、鬼は盛大に笑い出した。

「ふっ…。くくっ…。あはっ…あはは…あははははははは…っ!!」

 片手で腹を押さえ、もう片方の手を額に置き、さも可笑しそうに笑い続ける。けれど、海馬にはその笑い声は酷く悲しげに聞こえた。
 この鬼は本当に可笑しくて笑っているんじゃない。また一つ、何かを諦めたに過ぎないんだと…何故か理解できたのである。

「これは…傑作だ…っ!! せとにそっくりな贄の巫女だと…っ!? オレにこれを食えと言うのか? そうか…分かったぞ。これこそが黒龍神がオレに下した、本当の罰だったんだな。あのせとにそっくりなコイツを食って、自らの罪を再認識しろと言うんだな。千年の間に薄れていった罪の意識を、もう一度心に刻み込めと…そう言うのか…っ」

 顔は如何にも面白そうに笑っている。けれど海馬には鬼の心が見えた。
 泣いていた…。涙を流していた。余りにも惨いと、まるで子供の様に泣き叫んでいた。
 見ていられなくて、思わず近付いてその身体に手を伸ばそうとする。だが、触れる直前にパシンッと鬼の手によって弾かれてしまった。笑い声は唐突に止み、獣の瞳が鋭く自分を見据えている。
 途端に背筋に走った悪寒に再び身体を固まらせ、海馬はコクリと喉を鳴らした。恐怖で口の中はカラカラに乾いて、飲み込む唾液も無かったが…。

「名は…?」
「え…?」

 悲しそうに眉根を寄せ複雑な表情をしながらも、鬼はうっすらと笑いながら海馬に対してそう聞いてきた。

「名前を聞いている。答えろ」
「海馬…瀬人です」

 海馬の口から出た名前に、鬼はまた驚いたように目を丸くした。そして小さく溜息を吐きながら、また自嘲気味に笑ってみせる。

「名前まで一緒なのか…。参ったな」
「オレの事は…見届けの巫女様から聞いてはいらっしゃらなかったんですか?」
「静香にか? いや、聞いていない。アイツは贄の巫女に関する情報は、何一つ教えてはくれないんだ。どうせ最後には死ななければならない贄の巫女の事を前もって知らせたりすれば、オレの気持ちに迷いが出る事をよく知っているんだろうな。全く…本当に良く出来た妹だよ」

 どこか遠い目をしてうっすらと笑う鬼に、海馬は再び手を伸ばしたくなってしまった。けれど、目の前の鬼がそれを全身で拒絶しているのを感じてしまって、出しかけた手を引っ込めてしまう。
 怖いという気持ちがどうしても拭えなかった。ただ、同時にとても悲しそうだとも思った。
 怖いのに…怖くて仕方が無いのに、どうしても放っておく事が出来ないのだ。
 側にいてやりたいと思う。何とかしてやりたいと思う。そして何より慈しみ癒してやりたいと…そう思う。

 この気持ちは一体何なのだろうか…?

 自分の感情が理解出来ず、それでも黙って鬼を見詰めていると、それに気付いた鬼が琥珀色の瞳をこちらに向けてきた。初めてまともに視線が合う。獣のような細い瞳孔は彼が人間では無い事を知らしめていたが、その瞳は思った以上に雄弁に鬼の気持ちを語っていた。
 鬼は今…非常に混乱しているようだった。
 やがて、海馬の顔を凝視していた食人鬼は、口を開き溜息と共に言葉を発する。

「それにしても困ったな。これでは名を呼べない」
「え…?」
「今までの贄の巫女とは、お互い名前を呼び合って来たんだがな…。困った事に、今のオレはお前の名前を呼びたくはないと思っている」
「は…? それは…どういう事ですか?」
「『せと』は一人だ。二人もいらない。オレのせとは、千年前にオレが自分で殺してしまったアイツだけだ。だからオレはお前の名前は呼ばない。お前の事はこれから海馬と呼ぶから、そのつもりでいろ」
「なっ…!」
「ちなみにお前にもオレの名前は呼んで欲しく無い。その顔で、その声で、オレの名を呼んでいいのはアイツだけだ。オレの事はそうだな…名字でいい。城之内とそう呼べ」
「そ、それは無理です…っ!」

 鬼が放った一言に、海馬は慌てたように詰め寄った。

「城之内と言えば本家の名字…っ。いわばオレ達分家の始祖に当る家です! その名字を呼び捨てになんて出来る筈もありません! しかも貴方は見届けの巫女様の実の兄君。そんな方をそのようには…っ」
「遠慮するな。オレは鬼だ。お前等人間共を貪り食う、最低最悪な食人鬼に過ぎない。せいぜい蔑んで呼べばいい」
「そんな…っ」
「ただ、絶対に名前だけは呼ぶな。絶対だ」
「それは…あの方を思い出すからですか? オレが貴方の名前を呼ぶ事によって、嫌でもせと様の事を思いだしてしまうからですか…?」
「………」
「卑怯です…っ。それに勝手だ…っ! オレは確かにあの方にそっくりだろうけど、全く違う人間なんだ! 勝手に同一視して勝手に拒絶しないで貰いたい…っ!!」
「う…煩い! 黙れ! ただの贄の癖に偉そうな口を訊くな!! お前の役目はただ一つ…っ。新月の晩にオレの飢餓を満たす為にその身を捧げ、後は黙って食われる事…。それだけでいいんだ…っ!」

 鋭く睨まれてビクリと身体が引き攣った。けれども、鬼の勝手な言い草に覚えた怒りがそれを超越する。怒りでフルフルと震える身体に同調したのか、腰に結び付けてある守り袋の中からチリンと小さく鈴が鳴った。
 その音に目の前の鬼は耳聡く気付いたようだったか、それを無視してこちらもキッと鬼を睨み付け、海馬は低く落とした声を出す。

「分かった…。オレの事はもう海馬で構わないし、オレも貴方を城之内とそう呼びます。けれど、こうまでされたらオレの方としても黙ってはいられない。少なくてもオレは、千年もの長い刻を一人で耐えてきた貴方の事を尊敬し、その苦しみに心から同情し、せめて少しでも楽になるようにと誠心誠意仕えようと思っていたが…。だが、それもここまでだ」

 気を抜くと手を出しそうな拳にギュッと力を入れて何とかそれを我慢しつつ、海馬は怒りに滲んだ涙を拭おうともせず、目の前の男に大声で言い放った。

「こうなったらこちらも遠慮等はしない…っ。敬語は一切止めだ! オレも好きな様にさせて貰う!!」

 ハァハァと肩で息をしてそう捲し立てた海馬に、鬼は暫くポカンとした顔をしていた。だがややあって、突然豪快に笑い出した。腹を抱えて肩を震わせて「あっはははははは…っ!!」と大声で笑っている。
 それは先程の状況とよく似ていたが、だが海馬にはその違いがはっきりと見えていた。
 今の鬼は…城之内は本気で笑っていた。自嘲気味な悲しい笑い声ではない。本気で可笑しくて笑っている声だった。滲んだ涙を袖で拭いながら、ヒーヒーと笑い転げている。

「あはははは…っ。面白いな…お前。今まで九十九人の巫女と過ごして来たオレだけど、お前程面白い奴は今まで誰一人としていなかった」
「………」
「気に入った。こっちへ来い海馬。これからお前が過ごす家に案内してやる」

 打って変わって明るい表情になった城之内は、そう言って本殿から出て歩き始める。慌ててその後を追いかけながらも、海馬は釈然としない気持ちに苛まれていた。
 どうやら自分の事は認めて貰えたらしかった。だが、せとと同一視されている事には変わらない。
 自分は確かに千年前のせとの記憶を断片的に持ってはいるが、海馬にとっては、それは何の特別な事でも何でも無い。ただ記憶を持っているという、それだけの事に過ぎないのだ。
 しかも海馬を苛つかせるのは、城之内は自分とせとを同一視している癖に、千年前のせとと一緒にはしたくないと思っている事だった。
 同じに見ている。しかし、同じにはしたくない。
 その矛盾が謙虚に現れていて、海馬は遣り切れない想いにさせられた。

 それからも、城之内は決して海馬を名前で呼ぼうとはしなかった。
 それが互いの悲しみや苦しみを引き起こすだけだと知っていても…尚更に。

寒くなるとヒッキーになります

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寒くなってきて引き籠もりな二礼です、こんばんは。

寒いと外に出掛ける気力が沸かないというか何て言うか…w
本当は買い物に行かなくちゃいけないのに、ウダウダしちゃうというか、ギリギリまで準備が出来ないというか…w
つまりダメダメだって事です(´∀`;
本当は家どころか部屋からだって出たく無いんですよ。
だって…洗面所とか…寒いでしょ?
身体に悪いとは思いつつ、トイレもギリギリまで我慢しちゃったりしてね…;
でもまだ寒さの本番じゃ無いんだよねぇ…w
あと半月もすればもっと寒くなるんだろうけど、考えただけでもガクブルしちゃいますわ…(´_ゝ`;
という訳で冷蔵庫にある物で何とか御飯作ってきましたけど、それももう限界なようです。
買い物…行かなくちゃな…;
激しく面倒臭いけどさ…行かなきゃ飯が食えない。
だってもう、お 米 が 無 い ん だ も の … www
おかずは何とかなっても、米が無いのはヤヴァイw 生きていけないwww
仕方が無いので、モフモフ装備で買い物行ってきますw


素質シリーズに『素質Ⅷ』の前編をUPしました。
『無限の黄昏 幽玄の月』の方がいよいよ本題にかかってきたので、気分転換も兼ねて久々にエロを書いてみました。
で、書いてみたのはいいんですけどね…。
キャー! オマワリサーン! ヘンタイヨー!! ヘンタイガイマスー!!
ってな感じになっててスイマセン…wwwww
いや、匂いって結構セックスアピールになったりするんですよ。
他人だとただの悪臭としか感じられないような匂いでも、好きな人が相手だったりすると妙に興奮しちゃうよね? とかね?
って、何を言ってるんだ私はw
とまぁ…とにかくそういう『匂い』を表したくて書いてみたのですが、海馬がただの変態になっちゃってて申し訳ありません…(´∀`;
いや、でも、もう…いいですよね?
だってこのシリーズの海馬さんは、最初から変態でしたものねぇ…www


以下は拍手のお返事でございまっする!(・∀・)


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~(*'-')

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をありがとうございます。
せとさんの首はミイラじゃ無いですw 完全頭蓋骨です。
千年も経っているんでちょっと古びて黄色味がかっていますけど、城之内君によって大事に本殿に置かれてあります。
生首からただの頭蓋骨になるまでの状況は、余り想像したくない部分ではありますけどね…(´∀`;

あ、そうそう。
ちゃんと初登場時の城之内君を「怖い」と感じて下さったようで、メッチャ嬉しかったですw
一応モデルはあの城之内克也君ですけど、この話の中では人間では無くて食人鬼ですからね~。
海馬も劇中で言っていますが、やっぱり人ならざる気配ってのを持っているんですよ。
海馬に同調してしまうRosebank様がそれをちゃんと「怖い」と感じて下さった事は、作者冥利に尽きると言うか何と言いますか…w
本当に嬉しかったです(*´∀`*)
よし! この調子で怖い城之内君をどんどん書いて行きますよ~!!

『檻に入れられた猫と鼠状態』という表現には、感服致しました!!
そうなんですよね。
海馬がこれから闘うのは直接的な『敵』では無くて、精神的な闘いなのですよ。
逃げ場が無い空間で、海馬がどんな風に頑張って行くのかを重点的に書いて行きたいと思っています(*'-')
あと、ウチの城之内が言葉責めが上手いと仰っていますが…。
そんなに上手いですかね?w
余り気にした事ありませんでしたwww

それからマグロ攻めに関してなんですけど、アレ、別に読まなくていいですよ~w
一応リバ設定のSSで、ただ寝転がってる海馬の上で頑張る城之内君ってだけの話なんでw

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

*素質Ⅷ(後編)

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 お互いに顔を赤くしながら暫く見つめ合い、余りの事態に言葉を発する事も出来なかった。
 こんな状態に置かれれば普通はショックで萎えてもいい筈なのに、城之内のものも、そして手で握っている自分のものも、一向に萎える気配を見せない。それどころかオレのペニスは、城之内に見られている興奮でドクドクと強く脈打っている。
 やがて先に城之内の方が痺れを切らして、ふぅ…という軽い溜息と共に口を開いた。

「オナニーしてたの?」

 ばつが悪くなって視線を反らせたオレに、城之内はニヤニヤしながら問い掛けてくる。疲れた顔に影が映えて、いつも以上に男らしく見えた。

「し…してたら悪いのか?」
「悪くはないけど、これ…一体どんな状況だよ」
「………」
「オレの匂い嗅ぎながらオナニーしてたんだ。臭く無かったか?」
「臭かった…」
「だよな。オレまだ風呂に入ってなかったもんなぁ」
「………」
「でも、感じちゃったんでしょ? オレの匂い嗅いで…欲情しちゃったんだろ?」
「………」
「いいよ。別に怒ってないから、こっちにおいで。ほら」

 そう言いながら、城之内はソファーに座ったまま下着ごとジーンズを脱いでみせた。その行為が何を指しているのか、全く分からないオレでは無い。ドクンと高鳴る心臓を手で押さえて落ち着かせながら、オレも上着とスラックスと下着を脱ぎ去って、城之内が待つソファーまで戻っていった。そして脚を広げて悠々と座るその身体を跨いでソファーに膝を付き、向かい合わせの体勢になる。
 不自然な体勢を安定させる為に、城之内の両肩に手を付いて顔を覗き込む。すっかり目が覚めたらしい城之内は、欲情に濡れた瞳でオレを見ていた。 

「凄いビンビン…。そんなにしたかった?」
「っ…うぁ…っ!」

 寝起きの熱い手でオレの腰を引き寄せた城之内は、そのままグッショリと濡れそぼっていたオレのペニスに指を絡めた。軽く撫でられただけで、背筋にゾクッとした快感が走る。上下に擦られるとグチュグチュと濡れた音が響いて、酷く恥ずかしかった。
 自分でやってた時には全く感じなかったというのに、城之内に触れられているというだけで快感や羞恥心が倍になって襲ってくる。

「こんなに濡らして…。もうトロトロじゃん」
「あっ…んんっ!」
「これだったらローションいらないな。ちょっと後ろ慣らすから、もうちょっとこっちに寄って…。うん、そう」

 城之内に言われるまま身体を前に押し倒して、オレは城之内の肩口に顔を埋めた。その途端、汗に混じった城之内の匂いが鼻を擽って、それにまた欲情してしまう。
 とにかく早くして欲しくて下半身を城之内に押し付けると、奴はクスッと少し笑って、オレのペニスに纏わり付いた先走りの液を指に絡め始めた。

「うっ…くぅ…っ!」

 オレの恥ずかしい粘液をたっぷり指に絡めた城之内は、そのまま内股を辿ってオレの後孔に触れてきた。そしてそのままツプリと体内に指を挿入する。
 二週間ぶりの刺激に一瞬身体と後孔が引き攣るが、だがそれもすぐに解れていく。慣れた身体はあっというまに城之内の指を奥深くまで飲み込んで、はやく欲しいもっと欲しいと訴えかけていた。
 グチグチとオレの体内を指で掻き回しながら、城之内がニヤリと笑う。

「ほら…。もうこんなに熱い。早く挿れて欲しいって言ってるぜ」
「わ…分かっているなら…早く…っ!」
「焦んなよ。今日は時間たっぷりあるんだろ?」
「嫌だ…っ! 早くしろ…っ!!」
「でもなぁ…」
「城之内…っ!!」

 少し強めに名前を呼んで、城之内と視線を合わせた。膝立ちになっているからオレの方が視線が高かったので、そのまま奴を見下ろす角度で今度はこっちがニヤッと笑ってみせる。興奮で乾いた唇を舌で舐めていきながら、熱い吐息と共に「早く…お前が欲しい…」と囁いてやった。
 途端にゴクリと鳴った喉に満足しつつ、オレは城之内の手首を握ってその場所から引き離す。そしてすっかり硬く勃ち上がっている城之内のペニスの上に、ゆっくりと腰を降ろしていった。

「あっ…!! んぁ…っ!!」

 ズプリと入って来る熱の固まりに、思わず背を反らせながらビクリと震えた。
 多少の痛みを感じはしたが、それ以上の快感がオレの身体を支配する。

「あぁ…あっ…ん! くっ…う…っ!」

 止められなくて。動きを止める事が出来なくて。
 城之内の肩を力一杯に掴みながら、夢中で腰を振った。グップグップと濡れた音が辺りに響き、その音でまた興奮していく。

「凄ぇ…海馬…っ! そんなにオレが欲しかった…?」

 オレの腰を支えつつ快感に潤んだ琥珀の瞳でこちらを見ながら、城之内がそんな事を言う。その言葉にコクコクと頷きながら、にやついた唇に噛みつくようにキスをしてやった。こっちから舌を入れてやると、まるで待っていたかのように城之内の舌もすぐに絡まってくる。
 チュプチュプと温かい舌を必死で絡ませて、オレは快感に涙を流しながらも腰の動きを止めようとはしなかった。
 そして…。

「ふぁ…っ!? あっ…んあぁっ!! ひっ…!! う…あぁぁぁぁ――――――――――っ!!」

 突然、あの耐えきれない衝撃がオレの身体を襲ってきた。
 既に何度か体験してきたドライオーガズム。けれど今まではソレが来るのが何となく分かっていた。来る事を阻止する事は出来なかったけれど、それなりの心の準備というものが出来ていた筈なのに。
 それなのに今日のソレの来訪は…いきなりだった。

「あっ…あっ…あぁぁっ!! じょ…う…ちぃ…っ!!」
「おっと…大丈夫か? いきなり来たな」

 身体を激しく痙攣させて強く抱きつくオレに、城之内もギュッと抱き締め返してくれて、背中を優しく撫でてくれた。

「やっ…! も…とま…ら…な…っ!! あぅ…っ!! あぁぁんっ!!」
「ん…良い子。今日は焦らしたりしないから…ちゃんと掴まってて」

 溜まっていた性欲が暴走して、自分ではどうにもならなくなったオレに、城之内は至極優しかった。前面に回した手でペニスを掴んで、爪の先を鈴口に差し込んでクチッ…と刺激される。

「くぅっ…!! ふあぁぁぁ――――――――――っ!!」

 微かな痛みと、それを圧倒的に上回る快感にあっという間に射精したオレを強く抱き寄せて、城之内もオレの体内で達してくれた。ドクドクとペニスが蠢いて、生温かい熱が広がっていくがの分かる。
 射精しながら小さく震えている城之内の首に手を回しギュウッと強く抱き締めた。
 愛しかった。堪らなく愛しかった。ずっとずっと…城之内が欲しくて仕方が無かったんだ。

「海馬…? 大丈夫か?」

 グッタリと寄りかかったままのオレに、城之内が心配そうに声をかけてくる。その声にコクリと頷いて、そっと身体を離して視線を合わせた。そして優しく微笑んでやると、城之内も漸く安心したかのように表情を緩めてくれる。

「平気…だ」
「そっか…良かった。ゴメンな、久しぶりなのに無茶な事しちゃって…」
「別に気にしていない。というか、オレがちょっかいかけたのがいけなかったのだ。こうなったのは、むしろオレのせいだ」
「珍しいよな、お前があんな事するなんて…。そんなに溜まってた?」
「まぁな。そういう貴様はどうなのだ?」
「オレ? 勿論溜まってましたけど、それが何か?」
「ふふっ…。そうだと思った。それで…どうする? 今日はこれで満足か?」
「まさか。勿論この後もお相手して欲しいところだけど、とりあえず風呂入らせてくれない? 汗臭いだろ?」
「別にオレはそのままでも構わないが…」
「マジで!? あ…でもやっぱり悪いから風呂入るわ」
「そうか」
「………。それとも…一緒に入る?」
「………」
「海馬…?」
「は、入る…」

 城之内と一緒に風呂になんか入ったら大変な事になるのは分かっていたけど、今日のオレはそれを望んでいるから特に迷うことは無かった。
 というより、オレ自身も今の運動で汗ビッショリになっているしな。会社から帰って来てそのままだったし…。
 とりあえず綺麗になる前に、もう一度だけ城之内の匂いを嗅ぎたいと思って、目の前の身体に強く抱きついた。そして首元に顔を埋めて、胸一杯にその匂いを吸い込む。
 あぁ…この匂いだ。この匂いがオレを狂わせる。
 再び快楽の火が点き始めた身体を持て余しつつ、オレは一つだけ心配していた。

 本当に…この匂いが癖になったらどうするんだろうな…と。

*素質Ⅷ(前編)

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城之内×海馬。海馬の一人称。
このシリーズの海馬はいつも変態ですが、今回はいつにも増して変態なのでご注意下さい(´∀`;
テーマは『匂い』ですw

 




 人間…忙しい時間にずっと捕われていたり、色々な事に煮詰まっていたり、そういうのが原因でストレスが溜まったりすると、それから解放された時に異様に性欲が高まるというのは良く聞く話だと思う。
 いや、良くは聞かなくても…、まぁ度々というか…たまにというか…そんな話もあるよな? みたいな感じか。
 とにかく何が言いたいのかと言うと、今現在のオレ自身がそんな状態に陥っているって事だ。
 ここ二週間ばかり毎日毎日残業して仕事に没頭していたせいで、城之内とは全く会えていなかった。ついでに言うと電話はおろか、メールも殆どしていない。丁度二週間前にオレが送った『暫く仕事が忙しくなるから会えない』というメールに対して、城之内から『分かった。こっちもバイトが忙しいから丁度良かった』という返事が返って来ただけだった。
 それきりお互いに何の連絡をする事も無くこの二週間を生きてきたのだが、今日、漸く仕事のかたが付いたのでその旨を城之内に連絡したのだ。そうしたら『実はオレも、今日のバイトが終われば暫くゆっくり出来そうなんだ。今日の夜、会いに行ってもいい?』という返事が返って来た。
 有無を言わさずにOKを出し、オレは残りの仕事をさっさと片付けてしまう事にした。
 邸に帰れば城之内がいる。久しぶりにあの熱い手で触って貰えると思うと、仕事の効率もメキメキと上がっていく。我ながら現金な奴だと呆れはしたが、ご褒美が待っているとなればやる気が出るのは人間の性というものだな。
 こうしてオレは最後の仕事をきっちりと片付け、意気揚々と邸に帰って来た。


 …のだが、これは一体どういう事なのだろうか…。
 先に邸に来ていたらしい城之内は、オレの私室のソファーでだらしなく座った状態のまま熟睡していた。余りの間抜け面に溜息が出るが、その顔に浮き出た疲れに起こす気力も…更に言えば怒る気も無くなってしまう。
 この二週間、バイトが忙しいという話は本当だったらしい。
 男らしい精悍な顔が、以前よりずっと痩せてしまっている。オレの顔に浮き出ているような隈は無いが、頬の辺りがげっそりとしていた。
 オレとは違って城之内は肉体労働型だが、そのせいで働けば働く程痩せてしまう。勿論その分筋肉は付くから逞しい身体付きをしているのだが、それもちゃんと食べたり寝たりしないと意味が無い。
 それに城之内は決して無理はしないタイプだ。自分の予定やその時々の体調と相談して、自分の身体を労りながら働いている。
 その城之内がここまで消耗する程無理をする理由はただ一つ。あの飲んだくれのダメ親父が原因の時だけだった。
 また新しい借金でも作ったのだろうと思うと居たたまれなかった。疲れ果ててぐっすり寝込んでいる城之内に手を伸ばして、荒れた金髪を優しく撫でる。


 オレも城之内も勤労学生だ。どちらもかなり無理をしながら懸命に働いている。けれど、働く理由が全く違う。
 オレが働いているのは、あくまでも自分の為だ。幼い頃からのモクバとの夢を実現させたい為だけに、毎日必死に働いているのだ。あの夢を実現させる事が出来るなら、どんなに辛い事でも耐えられる。今だってそうだ。二週間に渡る修羅場を潜り抜けられたのは、いつも脳裏にある夢が後押ししてくれたお陰だった。
 だが城之内は違う。彼が働くのは父親がこさえた借金を返す為と、生活費を稼ぐ為に他ならない。それもまた自分が生きる為と言えばそうなのだろうが、決して城之内の夢の為なんかでは無い事だけは分かる。
 それに生活する為だけだったら、もっと楽に働く事が出来ただろう。少なくてもこんなに無理をする必要は無い。
 問題は借金なのだ。働いて稼いで借金を返したと思ったら、またあのろくでもない父親が新たな借金をこさえてくる。そしてまた城之内は、父親の尻ぬぐいをする為に無理をして働かなければならないのだ。
 更に困った事に、城之内は金を借りるのが大嫌いなのだ。
 一度見かねて借金返済の為の金を見繕うとしたのだが、猛反対されて結局黙って見守る事を約束させられてしまった。

『借金の問題は、あくまでウチの家族の問題だ。海馬は何にも関係無いんだから、そういう事はやめてくれ』

 真摯な瞳で見詰められながらそう言われた事を思い出す。
 だが…こんなお前の姿を見てしまえば、手助けくらいしたくなるってものじゃないか。お前はよくオレの身体の心配をしてくれるが、それは決してお前だけの特権では無い。オレだって同じなのだ。
 疲れ果ててぐっすり眠っている顔に近付いて、半分開かれている唇にそっとキスをした。
 カサカサに荒れた唇を潤すように、上下の唇を舌で舐めてつっと中に入り込む。温かな口内を舐め回しても、城之内が起きる気配は無い。唇を離せば溢れた唾液が城之内の口角から流れ出て、慌ててそれを舌で舐め取って飲み込んだ。
 そのまま首筋に顔を埋めれば、久方ぶりの城之内の匂いが濃い汗の匂いと共に鼻孔に入り込んでくる。
 多分バイト先からそのまま邸に来て、シャワーも浴びずに寝てしまったのだろう。シャツの裾から手を差し込めば、中に着ているタンクトップが汗でしっとり濡れているのが分かった。

「こんなに汗びっしょりで…。風邪引くぞ?」

 耳元で囁いても、城之内はピクリとも反応しない。スゥスゥと安らかな寝息を立てて眠ったままだ。
 本当だったらこのまま寝かせてやるのがいいんだろうが、どうにもそういう訳にはいきそうにもない。何故ならば…オレの方が限界だったからだ。
 なまじ性欲が溜まっていたところに城之内の匂いを嗅いでしまったせいだろうか…。自分の意志とは関係無しに下半身が大変な事になってしまっていた。
 と言っても、叩き起こすのもまた可哀想なので、そのまま悪戯させて貰う事にする。

「そのまま寝ていろよ…」

 そう囁きながらシャツのボタンを外し、中のタンクトップをたくし上げた。現れた逞しい胸板と腹筋に嘆息しながら、汗に濡れた肌にそっと舌を這わせる。汗の塩辛い味が舌を刺激して、その味だけで自分のペニスがまたドクンと大きくなったのを感じてしまう。
 チュッチュッと吸い付くようにキスをしながら、ソファーの下に腰を下ろしながら下半身まで辿り着く。盛り上がった腹部の筋肉を一つ一つ舌で辿るように舐めながら、オレは城之内が履いているジーンズのボタンを外してファスナーを降ろした。そのまま前を寛げて、現れたトランクスもグイッと下にずらしてしまう。途端に目の前に現れた黒々とした下の毛に、そっと手を伸ばした。
 城之内の陰毛はオレのとは違って剛毛…というか、男らしくびっしりと生えている。体毛が薄くて毛の質感自体が柔らかいオレは、局所が余すところ無く出てしまって、常々そんな城之内の陰毛を密かに羨ましいと思っていたのだ。
 そんな憧れの毛に指を絡めると、そこは汗で少し湿っていた。顔を近付けると、何とも言えない匂いが漂ってくる。
 城之内はシャワーを浴びていないから、そこは決していい匂いがしている訳では無い。はっきり言ってしまえば、臭いと表現した方がいいだろう。一日中肉体労働をした身体は、汗や老廃物に塗れている。ましてや下着の中なんてそれこそ顕著で、蒸れた空気が鼻孔を刺激した。
 けれど…何故だかそれに興奮してしまったのだ。胸がドキドキと高鳴って、下半身に血が集まるのが分かる。
 今ここで抱いて貰えるなら、あの苦手なドライオーガズムだって何度でも体験してやろうと思うのに。舐めろと言われたら、洗ってもいない汚くて臭いペニスだってじっくりしゃぶってやる。
 だが残念な事に城之内は熟睡したままで、起きる気配などこれっぽっちも無い。仕方無く股間に顔を埋めると、つんとした強烈な匂いが鼻を刺した。臭いと思う筈なのに、どうしてもそこから離れる事が出来ない。
 城之内の陰毛に鼻先を埋めたまま、オレは自分の下半身に手を伸ばしてみる。そこはもうすっかり硬くなって、下着の中からの解放を望んでいた。
 その欲求に素直に従って、スラックスの前を寛げて自らのペニスを取り出してみる。ガチガチに硬くなったペニスに指を絡ませて、上下に擦った。すぐに先端から先走りの液が出て来て、手を動かす度にグチュグチュという濡れた音が辺りに響く。

「ふっ…! う…んっ…!」

 もう止められなかった。
 城之内の股間に顔を埋めたまま深く息を吸うと、つんとした匂いが脳内まで届いていく。その途端腰の奥がジンジンしてきて、最高に気持ちが良かった。
 手が止められなくて、夢中で自分のペニスを上下に擦って。目を瞑って城之内の匂いを身体全体で受け止めながら、必死で自慰をしていた。
 よく考えれば、忙しさにかまけて自慰をする事すらなかった。仕事をしている時は勿論そんな事しないし、疲れた身体を引き摺って邸に帰れば、後は風呂に入って眠るだけだ。自慰なんてする時間があれば、少しでも眠って体力回復に宛てたい。
 しかし、どんなに仕事で疲れていたってオレだって男だ。こんな生活を二週間も続けていれば、性欲だって溜まってくるというもの。
 そのツケがたった今ここに回って来ているという訳だった。

「う…ふぅ…っ。はっ…んっ…!」

 ジュプジュプと音を起てながら必死でペニスを扱く。頭の中には既に城之内の存在は無く、ただ鼻孔から入ってくる城之内の匂いにオレの意識は全て持っていかれていた。
 くんくんと匂いを嗅ぐ度に頭の中心がボワッと熱くなって、心臓が高鳴っていく。腰がズンと重くなり、下半身がザワザワと痺れていった。
 オレの身体全体が気持ち良いと訴えていた。もっと欲しいという欲求に素直に答えて、大きく息を吸って城之内の匂いで肺を一杯に満たす。それと同時に頭の中心も熱く痺れて、快感で何も考えられなくなっていた。
 だから気付かなかったのだ。先程まではしなだれていた城之内のペニスが、いつの間にか大きく勃起していた事に…。

「なぁにしてんの?」

 突然頭上からかけられた声に、思わずビクッと身体を跳ねさせてしまった。そのままの状態で目を開けて恐る恐る見上げてみれば、そこに眠そうな顔を真っ赤に染めてオレを見下ろしている城之内と目が合ってしまう。
 慌てて後ずさってみても、時既に遅しとはこの事で…。服を半脱ぎにされた城之内と、スラックスの前を寛げて勃起したペニスを握っているオレという状況では、言い訳すらも出来なかった。

ち...違うんDA!! 誤解だってば!!

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結局マグロ攻めを書いてしまった二礼です、こんばんは。

先日の散たんとこの日記とウチの日記で、密かにマグロ攻めブームがやってきたようですが(笑)、皆さん誤解しておられます…w
違うんだ!! 違うんだよ!!
攻めが敢えてマグロに徹するのは、それはただの鬼畜&ご奉仕プレイに他ならないんだってば!!
私と散たんが話していたのは、社長が攻めに回った場合(ここ大事)、体力が無いからどうしても最後はマグロ状態になっちゃうよね~って事だったんです。
つまり、社長が攻めというのが大前提なんですよwwwww
マグロプレイとマグロ攻めは違うって事ですね。
絶対書かないと日記に書きましたが、せっかくなので正解例を置いておきます(´∀`;
海城なんで、攻め社長が苦手な方は注意して読んで下さい~!
(ていうか、海城はこれで精一杯ですわw)

マグロ攻め


長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第六夜をUPしました。
はいはい、漸く城之内君出て参りました~w
一応主人公の一人の筈なのに、随分とまぁ遅いご登場でした…。
静香ちゃんの過去話編で既に登場済みとは言え、御本人の登場はこれが初ですからね~。
私自身も、いつになったら城之内を出せるのかとヤキモキしておりましたw
という事で、ここからが本当の本編って奴になりますね。
先はまだまだ長いので、地道に頑張って書いていこうと思っています(*'-')


以下は拍手のお返事になります~!(・ω・)


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございます~(´∀`)

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をありがとうございました~。
流石のRosebank様です!
今回の長編も色々な予想や解釈をして下さって、書いている方としても楽しくて仕方ありませんw
鈴とか髪の毛の色とか本編の直前に入っている台詞っぽい奴とか、色んなギミックが散りばめられていますが、勿論それらは全部回収するつもりでいます(*'-')
この回収作業が長編をやってて一番楽しい部分なのですが、どんなに予想をされても最後までネタバラシが出来ないのも辛いところですよね…w
正解でも不正解でも、私は今まで通り固く(笑)口を閉ざしていますが、Rosebank様から頂けるコメントは時々ニヤッとするような事が書いてあるから油断なりませんねw
『無限の黄昏 幽玄の月』はこれからが本番になりますが、頑張って書いて行きますので、どうぞ最後までお付合い下さいませ~!

あと海馬が汚れるのが似合うという話ですが、汚れっぱなしだとダメだと思うんですよね…やっぱり。
Rosebank様の仰る通り、例え汚れてもそれに負けないくらいの強い意志と高潔な魂を持っているからこそ、海馬は美しいんだと思います!!
本当に凄いキャラですよね。
改めて好きになっちゃいます(*´д`*)

それから陰陽師ネタにも反応して下さってありがとでした~w
城海で主従関係って、やっぱり燃えますよね!?
何か今やってる長編とネタが被りそうですが、その内短編にでも起こしてみようかな~と思っていますw

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

第六夜

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 ずっと待っていたのだ…。
 救いをもたらす者が来るのを…ずっと待っていたのだ。
 私の役目は彼の側にいる事。
 彼の側にいて、彼の罪を共に見続ける事。
 例え自分の存在を知って貰えなくても、決して側を離れず、千年という長い年月を彼と共に過ごして来た。
 それがどんなに辛くても…ここから逃げ出す事なんて、考えられもしない。
 何故ならそれがオレの罪だから。
 けれど…お前は違う。
 お前は救いをもたらす者。
 彼を…救う者。
 本当に必要なのは…私では無いのだ。

 




 鳥居の向こうに見える山肌に太陽が近付いて行き、そして黒く見える山の輪郭に少しずつ沈んでいく。それを眺めながら海馬はくるりと振り返り、鳥居に背を向けて本殿を睨み付けた。
 いや、海馬が見ようとしているのは本殿では無い。これから現れようとしている、贖罪の神域への門だ。

「海馬君…」

 背後では遊戯や了、それに見届けの巫女が海馬と共にその時が来るのを待っていた。
 日が暮れ始めるのと同時に冷たい風が吹いてきて、髪や着物の裾がハタハタと靡く。顔にかかる髪を鬱陶しそうに掻き上げた時、突然目の前の空間が不自然に歪み始めた。奥にある本殿が、まるで蜃気楼のように揺らめいて見える。

「日が…沈みました」

 見届けの巫女の凛とした声がその場に響く。それと同時に目の前の空間に縦に亀裂が走り、それがゆっくりと左右に開いていった。

「門…。開いちゃったね…」

 少し沈んだ了の声が耳に届く。だが海馬はその声に振り返る事無く、開かれた門に向かって歩いて行った。そして門の前まで来て、一旦歩みを止める。
 門の向こうは霞がかっていて、余り良くは見えない。だが、こちらの世界と同じような本殿が建っているのが何となく見えた。人影は見えない。ただ寂しい空間が広がっているだけだ。

「いって参ります」

 歪んだ空間を強く睨み付けながら、海馬は振り返る事無くそう言った。
 特に誰に対して…という訳ではない。この現世に残す全ての人々に対し、それだけは言っておきたかったのである。

「いっていらっしゃいませ」

 海馬の別れの言葉に対し、見届けの巫女がそう答えを返した。多分背後では先程と同じように深く頭を下げている事だろう。
 了が自分の背中を黙って見詰めているのが分かる。耐えきれなくなった遊戯の嗚咽も聞こえる。海馬家に残ったモクバも、多分今は複雑な思いで黒龍神社の方向を眺めているに違いない。
 それでも海馬は一度も振り返らなかった。振り返る必要を感じなかった。
 自分の目的は、この先にしか無かったから。

「海馬君…っ!!」

 決意を込めて一歩を踏み出す。背後で遊戯の悲鳴が聞こえたが、気にせずに歩を進めた。
 途端に全身に違和感を感じて、その気持ちの悪さに思わず顔を歪めてしまう。まるで水の中に沈められたかのような掴み所の無い耳鳴りと、ザワザワと紙やすりか何かで肌を擦られるような感触に吐き気すら覚えた。こめかみに冷や汗が流れ、身体には震えが走る。だがその感覚に耐えて数歩先に進んだ時、その気持ち悪さが一気に消えていくのが分かった。

「………?」

 不思議に思って顔を上げた時、海馬は自分が今までとは全く違う空間にいる事に気付いた。


 見た目は余り現世とは変わらない。赤と黒を基調とした黒龍神社の本殿もそのままだし、その黒龍神社を守る為の鎮守の森も、いつもと同じようにサワサワと静かに葉擦れの音を起てている。
 日はすっかり暮れたのか、空を見上げると満点の星空が見えた。一番最近の新月は丁度一週間前だった為、今から満月になろうとしている三日月が白く輝いている。
 美しい夜空だった。この空が昼間は薄闇に覆われるのかと思っても、とてもじゃないが信じられないくらいに美しかった。

「っ………!?」

 突然、本殿の周りに置かれていた篝火に火が点き、真っ暗だった辺りが火によって明るくなった。
 誰か他にいる訳でも無いのに、まるで自分が来るのを待っていたかのような演出に、流石の海馬も少し戸惑ってしまう。
 何となく落ち着かなくてキョロキョロと視線を走らせていると、辺りに軽やかな鈴の音が響き渡ったのが聞こえた。

 チリ――――――ン………。

 いつもは頭の中に響くその鈴の音は、今確かに自分の耳に直に届いて聞こえた。
 慌てて音のした方に視線を向けると、本殿の前に白い人影が立っているのが見えた。真っ白な着物を着た男性が、本殿の方を見据えて立っている。
 一瞬、この贖罪の神域に幽閉されている食人鬼かと思ったが、記憶にある克也の姿とは全く違う姿形だった。だがどこか見覚えのあるその後ろ姿に、どうしても目が離せない。

「誰だ…?」

 思わず口に出して尋ねると、立ち尽くしていた人物が振り返ってこちらを見た。
 その顔を見て、海馬は驚きを隠せなかった。何故ならその顔は一番良く知っている顔…、自分が毎朝鏡で見る顔そのものだったからだ。
 けれど、向こうの人物は決して自分自身では無い。そうなると…考えられるのは一人しかいなかった。

「せと…なのか…?」

 震える声でそう問い掛けると、その男はふっと笑みを浮かべ、本殿の奥の方に消えていった。

「待て…っ!」

 慌てて消えた背を追って、海馬も本殿へと向かっていく。見たところ作りは全く同じらしかったので、いつもと同じように勝手に本殿に上がり込んだ。そして祭壇を覗き込み、奥に掲げられているものを見て目を瞠る。

「黒炎刀…」

 そこにあったのは、本物の黒炎刀であった。柄に赤い組紐が付いた鈴があるから間違い無い。
 千年前の悲劇の折、凶器となった護神刀。この刀によって、百人もの命が無残にも奪われた。そして、それによって本当の悲劇が訪れた。

「………」

 複雑な気持ちでその刀を見据え、ふと、隣に視線をやった時だった。黒炎刀の隣に置かれていたものを見て、思わずぎょっとして後ずさる。
 海馬の目の前にあったのは、古びた一つの頭蓋骨だった。黒炎刀と同じように、大事そうに祭壇に置かれている。

 チリ――――――ン………。

 頭の中にあの鈴の音が響いた。
 十三歳のあの日、見届けの巫女から初めて詳しい話を聞いた時に見たあの映像が甦る。

『やめろ…っ!! 克也っ!!』

 今ならはっきり声が聞こえる…。
 克也にこれ以上罪を犯して欲しくなかった。妹殺しだけはさせたくなかった。だから自分が庇いにいったというのに、こんな事になるなんて思わなかったのだ…。
 克也を…鬼にしてしまった。そのせいで、こうして千年間もの孤独の苦しみを味合わせる事になってしまった。
 愛する人を…罪に陥れてしまった。

「後悔…しているのですか…?」

 いつの間にか頭蓋骨の前に現れた半透明のせとに、海馬は静かに問い掛けた。その問いに、せとは悲しげな顔でゆっくりと頷いて答える。

『もっと…良い方法があった筈…だったのに…な…。私では…彼を救えなかったのだよ…』

 せとはそれだけを海馬に伝えると、またふぅっと消えてしまった。
 本殿は余りに静かすぎて、まるで時が止まったかのようだ。外からはパチパチという篝火の薪が爆ぜる音が聞こえるが、滞った空気に息が詰まりそうだった。
 それでもそこから動く気にはならなくて、置かれた頭蓋骨にそっと手を伸ばした時だった。

「それに触るな!!」

 鋭い声が背後から響いて、思わずビクッとし手を引っ込めた。
 どうして今まで気付かずにいられたのだろうか…。背後に人ならざる者の気配を感じて、余りの恐ろしさに振り向く事すら出来ない。背筋がゾワリとし、肌が粟立つのが分かった。

「お前が新しい贄の巫女か。何だ…百代目は男なんだな。どこの家の出身だ? 漠良…は違うよな。今朝還した奴が漠良の家の巫女だったからな」

 海馬が感じている恐怖が伝わったのだろうか。最初に発していた畏れを解き、その者はまるで普通の人間のように話しかけて来る。それによってガチガチに固まっていた身体が解れていって、海馬はホッと息を吐いた。
 多分、今自分の背後にいるのが例の食人鬼…つまりあの克也なのであろう。
 話には聞いていたが、やはり人間では無い者の気配は恐ろしかった。身体の全ての筋肉が固まって、少したりとも身動き出来なくなる程の緊張を感じたのである。
 少しでも動いたら殺される…っ!
 本能がそう訴えて、身体を固めてしまったのだ。
 だが今は、その緊張は解かれている。それに少し安心して、海馬は鬼の問いに答える為に口を開いた。

「海馬…です」
「海馬か。久しぶりだな。ここんとこずっと漠良と武藤とで交互に来てたみたいだったから。ざっと五十年ぶりってとこかなぁ?」
「………」
「おい、もう怖くはないだろ? 覇気は解いたからこっち向いてくれよ」

 鬼に乞われ、海馬はゆっくりと振り返った。そして見たのは、本殿の入り口の柱に寄りかかってこちらを見ている鬼…克也だった。
 金色の髪に獣のような細い瞳孔。だがそれ以外は普通の人間のように見える。黒い着流しを着た鬼は黙ってこちらを見詰め、そして次の瞬間、その瞳が驚きに大きく見開かれた。

「せ…と…っ!? 何故…? どうして…っ!?」

 チリ――――――ン………。

 再びあの鈴の音が頭の中に響く。
 驚きの表情のまま海馬と頭蓋骨を見比べる克也を眺めながら、海馬は自らの誓いをはっきりと思い出していた。

 これから…この男を救う為の闘いを始めなければならない…と。

マグロ攻め

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 海馬と恋人になって、最初の頃は交換しながらやっていた。
 何を交換って…。そりゃ攻める側と受ける側、つまりタチとネコの立場って事だな。
 恋人ったってオレ達は男同士だし、必然的にどっちかが女役をやらなきゃセックスなんて出来ない。セックスをしないという選択肢は最初から無かったから、これは海馬との恋人関係を持続させる上で切っても切り離せないものの内の一つだった。
 女役をやる事に抵抗が無かったのかと言われれば、無かったとは言えない。だってオレも男の子だし。やっぱり突っ込まれるより突っ込む方がいいだろ?
 だから最初は我慢して女役もやってたんだけど、最近そっちの方の出番が激減していた。
 つまり…海馬が女役をやる事の方が増えて来たって事だ。
 男としてはそれは確かに嬉しい事なんだけど、その原因が分かってしまうと、それってどうなんだろう…とか思ってしまう。
 だってさ、海馬の奴…。

 滅 茶 苦 茶 体 力 が 無 い ん だ よ !!

 スタートはいいんだよ、スタートは。
 最初は海馬も体力があるから張り切って攻めて来るんだけど、途中でガクンと体力が切れて、後半は全く役に立たなくなる。
 今だってほら…。「たまにはオレも攻めたい」という海馬の願いを聞いてやって今日のオレは受けに回ってるんだけど、何かもう…動きが覚束ないんですけど?
 「眠い?」と尋ねてやれば「いや…」とは返ってくるものの、明らかにお疲れの症状が出ている。
 参ったなぁ…もう。後は突っ込むだけなのに、どうしてここで電池切れ起こすんだよ…。

「分かった。お前もういいから、そこに寝とけ」

 仕方無いから身体を起こしつつそう言ったら、海馬は大人しくベッドの上に寝転がった。そしてゴロリと身体を仰向けにすると、「ふぅ…」と深く嘆息する。
 おい…、攻めが溜息吐くなよな…。前戯だけでどんだけ疲れてんだよ…。
 何かこのまま放っておいたら寝ちゃいそうだったから、慌てて寝転がった海馬の上に乗り上げて脚を跨いでやった。
 幸いというか何というか、珍しくじっくり解して貰ってたから、このまま入れてしまう事にする。

「しょうがないなぁ…。このまま入れてやるから大人しくしてろよ?」
「あぁ…」

 ダメだ、コイツ…。返事にすらやる気が感じられない。
 ベッドに入る前はあんなにやる気満々だったのに、その勢いは今はどこにも感じられなかった。とは言っても、このままで終わらせるなんてのはまた論外な訳であって…。
 オレは多少無理をして、硬く勃ち上がった海馬のソレを自分の後孔に押し当てた。そしてそのままグッと腰を下ろして、半ば無理矢理飲み込んでしまう。

「っ…! うっ…っ」

 海馬のペニスはオレの程大きくは無い。けれど、本来受け入れる場所じゃ無い場所に受け入れている為、やっぱり痛みと不自然な圧迫感が襲ってきた。
 それなりに慣れたとは思ってたけど、受けになる事自体随分と久しぶりの事だったから、身体はすっかり忘れてしまっていたらしい。
 あ…チクショウ…痛ぇなぁ…。でもこれで海馬が満足してくれれば、それでいいのかなって…。って、あれ?

「か…海馬っ!? っ…てぇ…!」

 痛みで顔を歪めながら海馬の顔を見たオレは、余りの事態に慌てて大声を出してしまった。下半身は飲み込んだペニスの違和感に未だ慣れてなくて、声を出した拍子に体内のソレを強く締め付けてしまい、途端に走った痛みに思わず呻いてしまう。
 だけど今はそんな事言ってる場合じゃない!
 ペニスおっ勃てて、人の身体の中に入り込んでいる癖に、海馬は目を瞑って今にも寝入ろうとしていた…。

「お…おいっ! 起きろよ!!」

 焦って両肩を掴んでユサユサと揺すってやると、海馬が面倒臭そうに瞼を開く。

「お前…っ。今寝てただろ!?」
「いや、寝てない」
「人がせっかく入れさせてやったのに、眠るとか無しだろ!!」
「だから寝てないと言っている。ちゃんと気持ちいいから安心しろ、城之内」
「安心出来るか、馬鹿!」
「大丈夫だ。今ので起きた。ちゃんと最後まで出来るから…」
「やっぱり寝てたんじゃねーか!! ちゃんとしねーと、もう抜くからな!!」
「いや…それは困る」
「困るんなら最後までしっかり起きてろよ。オレが動いてやるから」

 ったく…。セックスの途中で眠りそうになるとか、どんだけだよ。おじさんじゃねーんだぞ! まだ若いんだぞ!!
 受ける側ならまだしも、攻める側で寝落ちしそうになるとか、マジで有り得ない。だけどそれがあり得ちゃうのが海馬って人間であって…。

「くっ………!」

 これ以上長引かせてまた寝そうになられるのも困るので、もうちゃっちゃと終わらせてしまう事にした。
 下半身はまだ痛みを訴えているが、腹筋使って中のモノをギュウッと強く締め付けると、激しく腰を上下に動かす。
 気持ちいいとか気持ち良く無いとかそういう問題じゃなくて、もうここから先は時間の問題だ。如何に海馬が眠りに落ちる前に、射精させるかって事が一番大事なんだ。
 ていうか…、こんな事考えながらセックスするのも、ものすご~く虚しい行為ではあるんだけど…な。

「ふっ…! はっ…はぁ…っ。うっ………!!」

 なるべくペニスの先端が奥に当るように腰を打ち付けて、最奥で絞るように締め付けたら、「うっ…!」と呻いて海馬がブルリと震えて達したのが見えた。同時に体内に生温かい熱が広がっていって、海馬が射精したのを直接感じる。

「はぁ…っ。はぁ…っ。か…海馬…?」

 海馬の白い肌の上に汗をポタポタ落としながら息を整え、ふっと顔を上げてみたら…。
 案の定、海馬はもうとっくに眠ってしまっていた。人の体内に…ペニスを収めたまんまで。

「有り得無ぇ…」

 思わずボソリと呟いてしまった。
 何が有り得ないって…。本日受けであるオレは、まだ一度もイかせて貰って無かったのだ…。

「どうすんだよ、これ」

 中途半端に体内を刺激されたオレのペニスはビンビンで。だけど相手はもう寝ちゃってて、スヤスヤと安らかな寝息をたてている。ムカついたから鼻を摘んでやっても、起きる気配すらしない。
 残されたのは、力を失った相手のペニスを銜え込んだまま、それとは逆にいきり立ったペニスを持て余した状態のオレって訳だ…。
 悔しいからそのままの体勢で手淫により射精をし、白い身体の上に精液をぶち捲けてやった。拭いてなんかやらない。オレの精液で汚れたまま朝を迎えやがれ!!


 その日の夜…。オレは海馬の隣で布団にくるまりながら、一つだけ強く心に誓いをたてた。
 もう二度と、海馬に攻めはやらせないと…!!
 何言われようと、どんな文句が出ようと、もう関係無い。
 こんな思いをする事に比べたら、ギャンギャン騒がれた方がまだマシだ。

 幸せそうに眠る海馬の横顔を見ながら、オレはその夜、余りの情けなさにチョットだけ泣いていた…。

陰陽師ネタ爆発

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漸く落ち着いて来た二礼です、こんばんは。

やれやれ…。ようやっと安定してきました。
普段は多少体調悪くても「何とかなる」精神でいた二礼も、今回は流石に酷くてそんな事言ってられませんでした…。
こんなに酷い状態になったのって、今持っている持病が発病した時くらいじゃなかろうか…?
………。
いや、嘘だなw
今までにも何回かあるわ…w
そういう訳で今日は調子が良いので、久しぶりに妄想ネタなんぞを…。


最近ジャンプでやってる『銀/魂』で陰陽師ものをやっていたり、長編で人外城之内君とか書いているせいで、陰陽師と式神ネタが頭に浮かんできましたw
稀代の陰陽師である海馬瀬人と、その式神である城之内克也。
城之内君は生まれついての式神では無く元々は悪鬼で、海馬に調伏された為に式神として彼に仕えています。
命を救われて式神として海馬に仕えている為、普段は大人しく(?)海馬に命令されるまま闘いますが、たま~に本性が覗いちゃったりするんです。
ていうか、城之内君は定期的に人の精気を摂取しないと死んでしまう体質だと美味しいと思います。
海馬も海馬で城之内君の実力を買っているし、自らの片腕としても認めているので、時たま城之内君に言われるままに身体を許してたりしたら凄く萌えるw
精気吸われまくってぐったりしつつも、城之内君の好きなようにさせる海馬。
そんな海馬の事を本気で好きになっちゃって、文句言いつつも式神として真面目に働く城之内君。
海馬がピンチの時には、血だらけになりつつも必死で主人を守る城之内君とか、考えただけでも滅茶苦茶萌え…いや燃えます!!
自分と同じ種類の妖怪を相手にした時「何故それ程の実力がありながら、人間なんかに仕えているのか」と問われ、瀕死の状態に陥りながらも「さぁてね? 何でだろう」とニヤッと笑ってはぐらかす城之内君とか素敵だと思いません?w
ヤベーw 超格好いいw 一人で燃えてきたwww
最近、城海に夢見過ぎのような気がしてなりません…w


長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第五夜をUPしました。
出発直前&鈴の行方はここでした編でした。
あと、初めての表海もどきにも挑戦してみました!
ウチは城海サイトですし、このサイトを作る時にも自分自身で「(サイトに載せる物としては)城海以外は書かない」と決めていたので、多分今後も他のCPをUPする事は無いと思うのですが…。
だからと言って他のCPが全てダメかというと、そういう事では無いんですよね~。
個人的にはやっぱり城海が一番ですが、次点で表海が物凄く好きなんですw
表海の良いところは、表君の一途っぷり&城之内には無い余裕のある態度と、海馬のデレっぷりが最高なんじゃないかと…(*´д`*)
そんな訳で表海もどきを書いてみたのですが…やっぱりと言うか何て言うか、表君の片思いで終わっちゃいましたね…(´―`;
ゴメンね…表君。
こんな目に合わせちゃったけど、本当は表海大好きなんだよ…。

さて、次回はいよいよ贖罪の神域へご出発です。
おやつの持ち込みは禁止ですよ^^

あ、そうそう。
あと準備中にしていた用語集を、ちょこっとだけ纏めてみました。
物語が進むに従って常時更新していこうと思っています。
うん。自 分 の 為 に ね !
(本日は、の項の手直しと、冬至の項を付け足しておきました~)


あとこれは追記ね。
散たんへ。
マグロ攻めは書かないからなwww
絶対書かないからなwww


以下は拍手のお返事でございま~す(´∀`)


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました(・∀・)

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をありがとうございました~。
流石Rosebank様!
私が各話で伝えたいと思っている事を、ちゃんと読み取って下さっているのがコメントから伝わってきました。
書いている身としては、凄く嬉しいと感じました。
本当にありがとうございます~!
特に黒龍神の思惑は、まさにその通りなんですよ!
城之内が犯した罪は決して許す事は出来ない。それを私欲で庇った静香ちゃんも簡単に許す訳にはいかない。
けれどどっちも自分が愛して生まれた子達ですからね。
だから城之内や静香ちゃんに罪を償わせつつも、最後は救われるように手助けをしているのです。
でも、その救いが最終的にどういった形になるのかまでは分かっていません。
龍神でも読めない事があるのです…w
最後はどうなるかは分からない。けれど第百代目の贄の巫女によって救われる事だけは確実に分かる…という状況なんです。
お膳立ては全て済ませてあるので、あとは『救いの巫女』である海馬がどう動くかにかかっているんですよね~。
私も早く続きを書きたくて仕方ありませんw
やっぱりパラレル書くのが好きみたいです…私(´∀`)

『ありがとうが言えない社長』も見て下さったんですねw
どうしてもありがとうが言えなくて、周りが大騒ぎしている様は何度見てもオカシイですw
でも社長…。
アレはお礼じゃなくて、仇っていうんだよ…(´_ゝ`;

それでは今日はこれで失礼致します。
Rosebank様もお身体には気を付けて下さいね~。
未だ新型インフルエンザが流行っているそうですしね…;
ではまた~(・∀・)ノシ

第五夜

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 それは約束の証。
 彼から贈られた、永遠に自分を愛するという誓いそのもの。
 嬉しかった。幸せだった。だからずっと大事に持っていた。
 それなのに…それはもうどこにもない。
 一体どこで無くしてしまったというのだろうか…。
 今は見失ってしまった、あの幸せだった頃の記憶を持った…小さな鈴は。

 




 海馬が指定された部屋の襖を開けると、奥の上座に座っていた見届けの巫女と目が合った。少女は海馬に微笑みかけ「こちらにおいでなさい」と声をかける。その言葉に一礼して、海馬は部屋に入って少女の前に座り込んだ。

「最後の最後まで呼び出すような事になってしまって…ごめんなさいね。こんな直前になって、どうしても貴方に話しておきたい事が出て来てしまったのです。本当は話すかどうか最後まで悩んだのですけれど、どうしてもあのせと様にそっくりな貴方を見ていたら話さなければならないと思いまして…」
「いえ…大丈夫です。オレも何か他の事をしていた方が気が紛れますので」
「そうですね。では…早速これを見て頂けますか?」

 そう言って見届けの巫女が背後から取り出したのは、この黒龍神社の宝であり神刀である黒炎刀であった。柄に結びつけられている鈴が、動きに合わせてチリンと鳴る。

「それは…黒炎刀ですね。本殿から持ち出しても宜しかったのですか?」
「構いません。どうせこれは模造品ですから」
「は…?」
「本物の黒炎刀は、千年前に兄が贖罪の神域に持ち去ったままなのですよ。これはその後、黒炎刀に似せて作った模造品…。つまりレプリカです」
「そうだったんですか…」
「えぇ…。でもこれは…この鈴だけは本物ですよ」

 柄に付けられた鈴を手に取って、身届けの巫女はその紐を外し始めた。鮮やかな青い組紐で結ばれたそれをシュルリと外して、掌の上に載せてみせる。チリンと軽い音を起てて、それは少女の掌の上で転がった。

「その鈴が本物という事は、あの事件の時に外れてしまったという事ですか?」

 少女の掌に載った小さな銀色の鈴を見詰めながら海馬はそう尋ねる。しかし見届けの巫女は、その問いに対して首を横に振って答えた。

「いいえ。本物の黒炎刀に結びつけられていた鈴は、そのまま兄の手によって贖罪の神域へと行ってしまったままです。これは対になっていたもう一つの鈴…、いつの間にか行方不明になっていた筈のもう片方の鈴なのです」
「え…? そ、それは一体どういう事ですか? 無くなっていた筈の鈴が、後から見付かったという事ですか?」
「そういう事です」

 チリ――――――ン………。

 見届けの巫女が海馬の問いに頷いた瞬間、久方ぶりにあの鈴の音が海馬の頭の中に響いて来た。
 元々は対の鈴。黒炎刀の柄に二つの鈴が付けられていた。片方は赤い組紐、もう片方は青い組紐。その青い組紐の方の鈴を、誰かが柄から解いて自分に手渡していた。

『これを…お前に』

 大きくて優しくて無骨な手が、小さな鈴を掌に載せて自分に差し出してくる。

『持っていて欲しいんだ。オレ達は男同士だから、どうせ結婚は出来ない。けれどオレが永遠にお前を愛する証として…これをお前にあげよう』

 顔を上げれば男らしい顔に満面の笑みを浮かべている男が一人。太陽の下、明るい茶色の髪を風になびかせて照れ臭そうにしていた。

『もう片方はオレが持っている。これでオレ達は対の鈴だ』

 克也だ…。
 海馬は心の中で男の名前を呟いた。
 この風景は、まだ人間であった頃の克也が自分に愛の誓いをたててくれた時のもの。まだ幸せであった頃の、温かい記憶…。

「あの悲劇の晩から一夜明けて、生き残った私達は百人の犠牲者をせめて手厚く葬る為に、遺体を本殿に集め始めました。勿論その中にはあのせと様の遺体もございました。首は兄が持ち去ってしまった為に首無しの遺体ではありましたが、私はせめてせと様のお身体を綺麗に清めて差し上げようと思ったのです」

 青い組紐が付いた鈴に見惚れている海馬に、見届けの巫女は優しく微笑みかける。そして軽く嘆息しつつ、自らも鈴を愛おしそうに見詰めながら口を開いた。

「御遺体は…酷い有様でした。兄が首を跳ねてしまった為に、上半身は血と泥で塗れて…。けれどもっと酷いのは下半身でした。食人鬼に無理矢理犯された状態そのままになっていたのです。完全に裂けてしまわれて、血と精液がこびり付いてしまっていて…。本当だったら立って歩く事さえ辛かったでしょうに、せと様は御自分の身体を返り見ず、私と兄を救う為にここまで駆けつけてくれたのでした」

 少女は少し泣きそうな顔をしながら、掌の上で鈴を転がしていた。チリリ…と軽やかな音を起てて、転がる度に銀色が光に綺麗に反射する。

「お湯で濡らした布で瀬人様のお身体をお拭きする為に着物を脱がした時でした。袂から小さな守り袋が転がり落ちて来たのです。何とは無しにそれを手に取ってみると、中から小さな鈴の音が響いて参りました。中を覗いたら…」

 チリ――――――ン………。

 鈴の音が響く。軽やかでいて清らかな鈴の音が。
 そうだ…。よく覚えている。
 これは克也との約束の証。守り袋に入れて、いつでも大事に持っていた。

「これを見付けて…そして私は悟りました。きっと兄が御自分でこの鈴をせと様に差し上げたのだろうと。それだけお二人は本気で愛し合っていらっしゃったのに、何故あのような悲劇が起きてしまったのか…」

 もう一度だけ掌で鈴を転がし、そして少女は青い組紐を摘んで海馬に向かって差し出した。何気なく手を伸ばすと、海馬の掌の上に転がすように鈴が置かれる。チリン…と涼やかな音が今度は自らの掌の上で鳴った。
 じっと思い詰めた表情で鈴を見詰める海馬に見届けの巫女は微笑んで、そして優しい声で語りかける。

「それを…差し上げましょう。お守代わりに持ってお行きなさい」
「え…? オレがこれを…? いいんですか?」
「構いません。それは貴方が持って行くべきもの。きっと貴方の為に、私は千年間この鈴を守ってきたのですね」
「見届けの巫女様…」
「私はもう何も心配しておりません。きっと貴方なら…何もかも大丈夫な気がしますから」

 最後にそう言って見届けの巫女はふわりと笑い、海馬に向かって深く頭を下げていた。



 日の入りまであと一時間を切った頃。海馬は本殿の別室で神官着を脱ぎ捨て、巫女としての衣装に着替えていた。
 白い着物に赤い袴。先程見届けの巫女から貰った青い組紐の鈴は、白色の新しい守り袋に入れて腰紐に結びつけておく。
 姿見を見ながら襟元を直していると、後ろの襖の向こう側から誰かが自分を呼ぶ声がした。

「海馬君…。入ってもいい?」

 その声が幼馴染みでもあり同じ贄の巫女候補でもあった武藤家の遊戯だと分かって、海馬は「構わん」と一声かける。その声で背後の襖が開き、沈んだ表情の遊戯が顔を出した。
 遊戯はそのままトボトボと部屋の中に入ってくると、海馬の側まで来てその場に立ち尽くす。そして大きな瞳一杯に涙を溜めながら、海馬の事を見上げていた。

「海馬君…、本当に行くの?」
「それがオレの役目だからな」

 別に何でも無いようにそう言い捨てると、遊戯はついにボロボロと涙を零しながら海馬の背に縋り付いた。

「泣くな」
「だってぇ…っ」
「まだ小さなモクバだって、今日は泣かなかったんだぞ」
「それは海馬君がそう教えて来たからじゃないか…っ。僕はそんな事教えられて無い…っ」
「屁理屈を言うな。少なくても一年前までは同じ贄の巫女候補として育ってきたお前の事だ。これがどんなに大事な役目か、よく分かっているだろう」
「そうだけど…、確かにそれは良く分かっているけれど…っ。だけど、それとこれとは関係無いよ!」
「遊戯…?」
「だって僕は…僕は…っ。ずっと海馬君の事が好きだったんだ…っ! 子供の頃からずっと…ずっと好きで…憧れてて…。それなのに、その大好きな人が死に場所へ行こうとしている時に、君は僕に泣くなと言うの…?」

 ぎゅうっ…と力を入れて抱きつかれて、流石に黙って立っている事が出来ずに少し身動いでしまう。だがその時、動きに合わせて腰に付けている守り袋からチリン…と小さな鈴の音が響いた。
 遊戯の事は大好きだった。自分に向けられたこの気持ちも嬉しいと思う。
 けれどやっぱり…違うと心のどこかが叫んでいた。
 彼じゃない。自分が本当に求めているのは、遊戯じゃないと海馬は知っていたのだ。
 救いたい…。彼を…克也を。それがどんな結果になるか分からずとも、千年に渡る彼の孤独を救いたい。

「あぁ、そうだ。泣くな遊戯」

 努めて冷静な声で、海馬は背後の遊戯にそう告げた。
 敢えて振り返らず…真っ直ぐ前を向いたままで。

「死に行く者に情を移すな。後で辛くなるのは自分自身だ」
「酷い…。酷いよ海馬君…っ」
「何と言われようと、オレはこの考えを改めはしない。お前に何と言われようとオレは行く。行って全てを終わらせてやる…っ!!」

 ギュッ…と、海馬は強く拳を握りしめた。余りに強く手を握った為に、自らの爪が掌に刺さって痛みを感じる。
 今まで見た事のない程強い決意を秘めた海馬の表情に、遊戯も驚いて呆気に取られ、ただ呆然と海馬を見上げるしかなかった。


 窓の外では日が沈んでいくのが目に入ってくる。
 雲一つ無い澄んだ冬空に、眩しい程の西日が輝いていた。

モコモコ装備

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完全冬装備になった二礼です、こんばんは。

12月に入って本格的に寒くなってきましたね。
寒がりの私は、ついに半纏と膝掛けを常用するようになりました…w
11月一杯までは上着を羽織るだけでも何とかなっていたのに、最近はもう膝とか腿の辺りがスースーしちゃってダメですね。
上半身は半纏、下半身は膝掛けで、完璧冬装備で小説書いてますw
更に寒くなるとレッグウォーマーも追加される予定です。
冷え性なんで冬になると足は膝から下が、腕は手首から先が冷え冷えのガッチガチになるんですよね~…(´∀`;
ホント…嫌な季節がやって参りました。
早く春にならないかなぁ~。(気が早過ぎwww)


長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第四夜をUPしました。
ちょっと短めでスミマセン。
時間軸を戻して、いよいよ出発の朝を迎えたシーンになります。
向かう方(海馬)は何だか色々と決意を固めてるから別に良いですけど、残される方(モクバ)はたまったもんじゃないですよね…。
この物語はあくまで海馬主体の物語なので、ここでは敢えて海馬が出発した後のモクバの様子を書く事はしませんでした。
でもまぁ…普通に考えればあの後一人で大泣きしたんじゃないかなぁ…(´・∀・`)
逆に海馬との約束を守って、最後まで泣かなかったら凄いと思いますけどw
という事で、海馬の出発まであともう少しです。
海馬はいいとしても、むしろ城之内の出番がなかなか来なくてスミマセン…(´∀`;
でもほら、真打ちの登場はなるべく伸ばした方が良いって言いますしね? ね?
………つーか…、奴は真打ちになり得るのだろうか…?www


以下は拍手のお返事でございまっす!!


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました(*'-')

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をありがとうございます。
城之内を裏切った村人達は確かに罪を犯しましたが、あの後とち狂った城之内に直接殺されたり、大事な家族の命を奪われたりして、その罪は既に精算済みです。
何の力も持たない普通の人間としては、罪の贖いはそれで十分だと黒龍神が判断したんですね。
むしろ黒龍神が重要だと感じたのは、人ならぬ特別な力を持っているのに、その力を利用して罪を犯した城之内の方だったんですよ。
前回の本編でも書いてありますが、黒龍神は本当は城之内を神域に閉じ込めたまま殺してしまうつもりでした。
城之内が犯した罪を、その命によって償わせようとしたのです。
だけど静香ちゃんがそれに待ったをかけました。
今の静香ちゃんは形式上は『兄の罪の半分を肩代わり』している状況ですが、本質的には『神の決定に異を唱え、罪人の命を私欲によって救った』という罪が課せられているんです。
その結果が、自分の子孫を兄の為に生け贄として捧げる事と、それを千年間『見届け』なければならないという重い罰だった訳なんですよ。
この辺は裏設定ですので、今後この設定が出てくるかどうかは分かりませんが、静香ちゃん自身はちゃんと分かっているみたいですね。
第三夜で『身勝手な願いとは分かっております』と自分で言っていますから(*'-')

それから、城之内が持ち去ったせとさんの首の事ですが…。
やっぱり気になりました?w
Rosebank様の事だからもう感付かれているとは思いますが、私が何の意味もなくこんな事をさせる訳が無いので、まぁその内出てくると思いますw

あと、海馬ステップは私も見ましたよ~!www
どんなに我慢しようとしても、あのステップでどうしても吹き出してしまいます…w
個人的にはついこの間ランキングに上がっていた『ありがとうが言えない社長』もお気に入りですw
アレ…完全に恩を仇で返してますよね…w

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

第四夜

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 悲劇はもう沢山だと思った。
 目に見える全てが悲劇そのものだったから。
 この千年間の間、何人もの贄の巫女が鬼に食され、その命を灯を燃やし尽くして儚くなっていくのを見ていた。
 もう見る事も…聞く事も…、その悲劇を間近で感じる全てが嫌だった。
 けれどそこから逃げ出す訳にはいかなかった。
 逃げずに全てを見守る事が…自分に課せられた罪だったから。
 だからずっと待っていた。
 この悲劇の幕を降ろす者が現れるのを…ずっと待っていたのだ。

 




 その年の冬至の朝は、去年と同じようにどこまでも澄み切った空に真っ赤な朝日が輝いていて本当に美しかった。
 出発は昼過ぎ。朝食に白湯と茹でた野菜と少量の果物を口にしただけの海馬は、それからはずっと縁側に座り込んで空を眺めている。
 見届けの巫女の話により、贖罪の神域の空がこんなに綺麗ではないという事は知っていた。身届けの巫女も実際に自分の目で贖罪の神域を見てきた訳では無い。ただ月に一度、聖なる月の光が一番地上に満ちる満月の晩だけは、神域に閉じ込められている兄と話をする事が出来るのだそうだ。
 その兄との語らいで、見届けの巫女は贖罪の神域がとても薄暗く、まるで黄昏が永遠に続いているような感じだという事を知ったのだという。

「昼間はずっと薄暗いのだそうです。まるで日が沈む寸前の夕闇に覆われているかのように。ただ夜は昼間とは違って、澄み渡った空が見えるのだそうですよ。月も…星も…まるで手が届くかのように見えるのだそうです」

 ここ一年、贄の巫女としての最終的な修行の為に、海馬はほぼ毎日黒龍神社の本殿へと通っていた。そしてその場で顔を合わせる度に見届けの巫女は、海馬に贖罪の神域の情報を教えてくれていたのである。
 薄闇の牢獄。いるのは食人鬼と…そして贄の巫女である自分だけ。他には誰もいない、閉ざされた神域。
 自分はそこで月に一度食人鬼に食され、十年後には生命力を使い果たし死んでいかねばならない。

「もう…この青空を見る事は一生無いのだな…」

 そう思うと、流石に少し感傷的になった。
 真冬の冷たい風に吹かれて、ただ黙って空を見上げ続けていると、背後に人の気配を感じた。そしてその気配が自分に向かって深々と頭を下げ、こう告げる。

「兄サマ。黒龍神社へ向かう準備が整いました」

 この一年、自分と同じように新しい海馬家の当主としての修行を積んだ、弟のモクバだった。
 一年前の冬至の日、不幸な運命に自分の腕の中で大泣きしていた子供は、ここ数ヶ月で随分と立派に…そして何より大人になった。兄との約束通り、あの日以来一粒の涙を見せる事も無く、当主としての力量を確実に身に着けていったのである。

「そうか…。済まないな、モクバ」

 着ていた神官着を整えながら立ち上がった海馬に、モクバはもう一度軽く頭を下げた。

「兄サマ…。申し訳ありませんが、オレは本殿までは御一緒出来ません…。どうかここでお見送りさせて下さい」
「モクバ…」
「本当にゴメンナサイ。けれど…最後まで一緒に付いていってしまったら、オレはきっと兄サマとの約束を破ってしまう。せっかくこの一年、泣かないで頑張ってきたんです。最後まで…頑張らせて下さい」

 眉根を寄せて辛そうに表情を歪めながらも、それでもモクバは涙を流しはしなかった。
 その辛そうな表情が幼い顔には不釣り合いで、海馬は思わず弟を抱き締めたくなってしまう。けれど、そんな事をしたらモクバのせっかくの努力が全て台無しになってしまう事も分かっていたので、海馬は敢えて弟には一切触れずにその脇を通り抜けた。
 モクバの脇を通り過ぎ、奥の襖を開きながら海馬は一度だけ振り返った。
 美しく手入れがされた中庭を眺めるように、弟は背筋をぴんと伸ばして座り込んでいる。こちらの気配には気付いている筈なのに、彼は決して振り返ろうとはしなかった。
 本当に強い子だ…と、その姿を見て海馬はそう思った。そして心から安心する。
 モクバがいれば、この海馬家は安泰だ。何も心配する事は無い。オレは安心して…努めを果たしに行ける…と。
 さようならは言わない。言えない。
 その代わり…感謝の言葉を。

「モクバ…、ありがとう」

 一言だけそう伝えて、海馬は部屋を出て廊下を進んでいく。
 モクバから視線を外すその一瞬、弟の肩がピクリと反応したのを見たような気がした。けれども、それを確かめる事はすべきではないという事もよく分かっていた。

 さようなら。

 心の中だけでそう呟き、海馬は顔を上げて真っ直ぐに進む事を胸の内で決めていた。


 用意されたリムジンに乗り込んで黒龍神社に着いた時、その入り口に同じような車が二台置いてあるのが目に入ってきた。
 考えるまでもない。この小さな町でこんな立派な車を持っているのは、三大分家と言われている武藤・漠良・海馬の三家しかいないのだ。

「武藤様も漠良様もいらっしゃっているようですね…」

 付き人の声に「そうだな」と返しながら海馬は振り返った。そして自分をここまで送ってくれた付き人に「もう帰れ。モクバを頼む」とだけ告げる。
 その言葉で付き人も哀しそうに表情を歪ませ、次の瞬間にはその場で深々と頭を下げた。
 付き人が車に戻るのを確認する事も無く、海馬はくるりと背を向けるとそのまま神社に向かって歩いていった。長い参道の階段を上り鳥居を潜ると、奥に見える本殿が物々しい雰囲気に包まれているのが分かる。
 気にせずいつものように本殿に上がり込むと、奥の方に一人の女性が横たわっているのが見えた。それと同時に、手前に座っていた二人の人物が振り返る。
 確認するまでもなく、それは遊戯と了だった。

「海馬君…っ」

 海馬の顔を確認し、遊戯は辛そうに俯いてしまう。同じように辛そうな顔をしながらも、了は寂しそうな笑みを浮かべて海馬と奥に横たわっている女性の亡骸とを見比べていた。

「いつだ…?」
「今朝だよ。日の出と共に還って来られたんだ。漠良家の出身の巫女だからって事で、僕が直接迎えに行ったんだよ」

 女性を見ながら尋ねた海馬の言葉に、了が直ぐさま答えを返した。
 贖罪の神域は、普段は完全に閉じられた空間だ。だが、十年に一度の冬至の日だけは特別で、日に二回だけ神域への門が開かれる。
 日の出に一回、日の入りに一回。
 前者はそれまで役目を果たして来た贄の巫女を現世に還す為に。後者は新たな贄の巫女を迎え入れる為に。
 門が開いている時間は多分一分にも満たないだろう。更にそこを潜れるのは贄の巫女一人だけ。他の人間はほんの少し踏み込む事は出来ても、完全に潜る事は出来ないのである。

「本殿と鳥居の丁度中間辺りかな。日の出と共に空間が割れていったんだ。まるで大きな門が開くように…。不思議な光景だったよ」

 了は海馬から横たわる女性の方へと視線を移し、ふぅ…と軽く息を吐いた。

「門の向こうにね、巫女を横抱きにした人が立っていたんだよ。僕が贄の巫女じゃなかったからかな…靄がかかって向こうの世界は良く見えなかったんだ。殆ど影にしか見えないその人が近付いて来て、そして僕に直接巫女を手渡してくれたんだよ。はっきりと顔を確認した訳じゃないけど、何だか普通の人間のように見えて拍子抜けしちゃった。だってずっと怖い食人鬼だって、小さい頃から教えられて来たからさ。あ、でも手は冷たかった。巫女を受け取る時に一瞬手に触れたんだけど、まるで氷のようだったよ」

 了の言葉を聞きながら、海馬はそっと横たわる女性の側に近付いていった。
 美しい女性だった。了の叔母だという事は聞いていたが、やはりどことなく了に似ていると感じる。
 その死に顔は安らかだった。巫女としての格好をしている為全部に目を通した訳では無いが、一見したところ、どこにも傷や怪我等は見られない。まるで眠っているようだった。眠っているだけと言われればそれを完全に信じてしまいそうな程、その死体は綺麗だったのである。

「お役目…ご苦労様でした…。後はオレに任せて下さい」

 背後に控えている遊戯や了には聞こえないくらいの小さな声で、海馬はそっと女性の亡骸に告げる。そして心に強く誓いを立てた。
 何もかもが悲劇だった。千年前のあの事件から、ここに至るまでの全ての事象が悲劇で彩られていた。

 食人鬼の陰謀により騙された村人。
 その村人の裏切りにより穢された恋人。
 耐えきれぬ事実に精神を壊し暴走した神官。
 九十九人の村人と最後の一人だった恋人の犠牲。
 罪を問われ龍神に幽閉された神官と、共に罪を償う事を覚悟した妹巫女。
 鬼に変わった神官に贄の巫女をおくりつつ、やがて救いをもたらす者が来るのを待ち望んでいた三大分家。
 鬼の命を繋いでいく為だけに十年間食され続け、やがて死んでいく運命の贄の巫女。
 そんな贄の巫女を涙ながらに送り出す三大分家の家族達と、それを千年にも渡って見届けてきた妹巫女…。

 血と涙と炎と、悲しみと苦しみと悔恨と…。
 それら全てが悲劇そのものである事に、海馬は胸を痛めていた。そして自分の力で、この悲劇に幕を下ろそうと強く心に決めていたのである。

「贄の巫女様」

 女性の亡骸に強く誓いを立てたその時、本殿の入り口の方から名前を呼ばれて海馬は振り返った。そこにいたのは巫女姿の少女で、その顔には見覚えがある。いつも見届けの巫女の側に控えている少女だった。
 海馬と視線が合うと少女は深々とお辞儀をし、見届けの巫女からの伝言を伝える為に口を開く。

「贄の巫女様…。見届けの巫女様が少し話したい事があるので、本家の奥の部屋まで来るようにと…」

 少女の言葉を受け取って、海馬は「分かった」と答え頷いた。そして心配そうに自分を見上げる遊戯と了に視線を巡らせ、何も言わずに本殿から出ていった。

ぼくたま

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細々と頑張っている二礼です、こんばんは。

一喜一憂というか何と言いますか、相変わらず上がったり下がったりを繰り替えしています。
困った事に仕事で小説が書けない日の方が調子が良くて、休みの日になると朝からイマイチだったりとかするので、世の中上手くいきませんねぇ…w
それでも無理するのは一番いけない事だって分かっているので、ゆったりペースを守ってやっていこうと思っています。


話は変わりますが、昨日ちょっと古い漫画を読み返して、余りの感動に大号泣しておりました…w
昔から好きな作品だったんで、話の内容は全部知っている癖に、読み返すとやっぱり感動しちゃうんですよね~。
『ぼ/く/の/地/球/を/守/っ/て』という少女漫画なのですが、知ってらっしゃる方は一体どれ程おられるのか…w
自分が書くパラレルに転生だとか生まれ変わりだとか前世の記憶だとかの表現が多いのは、この作品の影響を受けているからなんじゃないかと思っています。
なんだろうなぁ…。
上手くいかなかった過去→そんな過去を見つめ直す事によって上手くいく未来という構図が、凄く好きなんですよね…w
過去があるから未来がある…みたいな感じ?
とにかく本当にいい作品なんですよ!!
特に最終巻は何度読み返しても、涙が溢れて止まらないんですよね。
(以下、軽いネタバレの為、反転させてます)
特に月基地で一人残され、ついに狂ってしまった後の紫苑が取った行動には、涙無しで読む事は出来ません!!
そんだけ深く木蓮を愛していたんだよな…紫苑。
あの優しい笑顔と涙…。
狂ってしまって初めて、彼は漸く本来の自分を取り戻したんだよね…。
本当に…何て切ないんだろう!!
連載終わってもう大分経ちますけど、いい作品って言うのはいつまで経っても色褪せないものなんですよねぇ~。
こういう素敵な作品に出会えた事を、本当に感謝したいと思います。


長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第三夜をUPしました。
これが静香ちゃんが目撃した、千年前の事件の真相です。
これで大体の流れは掴めたかと思いますが、この哀しい出来事を体験した人物はあと二人いるんですよねぇ…。
一人は今も贖罪の神域に閉じ込められている食人鬼の城之内君、そしてもう一人は百人目の犠牲者となってしまったせとさんです。
一つの事件を三人の目で見ていて、今回はその内の一人の視線を借りて見たに過ぎません。
残りの二人の視線からこの事件を見詰めてみると、またちょっと違った感じを持つのではないでしょうか。
いずれ書こうと思っていますけれど、とりあえず今のところは、この流れが主体って事でお願いしますw


以下は拍手のお返事になります~(*'-')


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(´∀`)

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をありがとうございます。
一応千年前に起こった事件の大体の流れは今回UPした分で掴めたと思いますが、でも所々に謎を散りばめておいた事に、Rosebank様はもう気付いていらっしゃるようですね~w 流石ですw
冒頭の台詞の意味だとか、片方無くなってしまった鈴とかは、多分今後明らかにされていくと思います。
あと犠牲になった九十九人の村人ですが…。
確かにその殆どは城之内君を裏切った村人達で占められていますが、中には全く関係の無い女性や小さな子供や赤ん坊等も入っていました。
それに、城之内君を裏切った村人達は確かに許し難い行為をしましたが、彼等は何の力も持たない普通の人間だったんですよね。
巨大な力を目の前にして、それに打ち勝てる程村人達は強くはありませんでした。
食人鬼の甘言に惑わされて、自らと家族の命を守る為に、村人達には城之内君を裏切るという選択肢しか残されていなかったのです。
何の力も持たない脆弱な人々。その人々を守る力を黒龍神から特別に与えられていたのに、城之内君は個人的な怒りでプッツンしちゃって、その特別な力で非力な村人を無差別に殺してまわりました。
本来は人を守る為に使う力を悪用してしまったのです。
それが如何に仕方の無かった事とは言え、黒龍神は悲しかったのでしょうね…。
信頼して預けた力を、本来とは全く逆に使われてしまったのですから。
これって黒龍神側から見ると、城之内君の方が黒龍神を裏切った事になるんですよ。
だから黒龍神は彼を許せず、罰を与える事にしたのです。
まぁ…その辺りは他の二名の視線で、いずれしっかり書いていこうと思っています(´∀`)

あとピザまんですが…、食べた事なかったのですか!?
そ…それは勿体無い!!
凄く美味しいので、是非食べてみて下さいw

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

第三夜

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 愛していた人が罪を犯した。
 だからこれ以上その手を汚して欲しくなかった。
 それだけだったのに、まさかこんな事になるなんて思わなかった。
 彼が闇に身を堕としたのは…間違い無く自分のせいだ…。
 悲しい…っ! 辛い…っ! 苦しい…っ!!
 いつになったら彼を救う事が出来るのだろうか…っ!!
 もう千年もの長い間、彼が苦しんでいる様をずっと見ている。
 側にいても、自分の力では何一つ出来ない。
 誰か…っ! あぁ…誰か助けてくれ…っ!!
 彼を救ってやってくれ…っ!!

 




 チリ――――――ン………。

 鈴の音と共に、また過去の光景が海馬の目の前に広がっていく。
 それは不思議な光景だった。
 足元に倒れているのは紛れも無く自分の死体。胴体は俯せに石畳の上に倒れ伏していて、首は少し離れた場所に転がっている。視線を動かすと、腰を抜かして座り込んでしまっている静香の目の前で、その兄が頭を抱えて苦しんでいた。
 妹と同じ亜麻色だった髪の毛はみるみる内に金色になり、村からの炎に照り返しで真っ赤に染まっていた。瞳はまるで獣のように瞳孔が細くなり、苦しげに息を吐く口元からは鋭く伸びた八重歯が見え隠れしている。
 慌てて近寄ってその身体を抱き締めた。けれど、その腕を彼の身体に触れさせる事は…出来なかった。

「兄は…鬼の思惑通り、食人鬼へと身を落としてしまいました。そしてその悲劇を間近で御覧になった黒龍神は、それを良しとはしませんでした。神聖な雨と共に目の前に姿を現わした黒龍神は、兄を罰すると私に告げたのです」

 真っ赤に燃えさかる村に、突如雨が降り出した。ただの雨ではない。龍神が降らせる神聖な雨。
 あれだけ激しく炎が燃え盛っていたというのに、その雨に少し触れただけで火はたちまち消えていった。
 人間にとっては恵みの雨。僅かに生き残っていた人々もその雨を身に受けて、身も心も癒されていた。
 だがその雨は、異形の存在に姿を変えた者にとっては害にしかならない。
 大量に降り続ける雨に皮膚を打たれ、まるで強い酸に焼かれたように雨に濡れた場所が煙と共に溶けていく。
 人から食人鬼へ姿を変えたばかりで未だ苦しいその身体を、神聖な雨に打たれて皮膚を焼かれ、余りの激痛にそれは石畳の上でのたうち回っていた。

『お兄様…っ!!』

 慌てて妹が近寄って、その身体の上から覆い被さって兄を雨から守ろうとする。けれども石畳の上に溜まった雨水が下からも身体を焼き、食人鬼に変わった者を苦しめていた。
 やがて…その痛みが彼を正気に戻らせたのだろうか。
 突如瞳に光を宿した鬼は、そのままズルズルと石畳の上を這っていった。そして少し先で転がっていた恋人の首に手を伸ばす。
 地面に仰向けに転がった首は、光を失った虚ろな瞳で空を見上げていた。見開いたままの瞳に雨が溜まり、それがまるで涙のように眦から流れ落ちている。
 鬼は…震える手でその首を抱き上げて、大事そうに懐に抱え込んだ。

『せと…っ。せと…っ! オレが…オレが殺した…っ!! オレが…せとを…殺した…っ!!』

 皮膚を焼く雨に全身を打たれ、愛しい恋人の首を大事に抱えて鬼は泣いていた…。

「黒龍神は…大層お怒りでした。人々を守る為に授けた力で、その守るべき人々の命を無残に散らした兄を、どうしてもお許しにはなれなかったのです。せと様の首を抱えて蹲っていた兄を、黒龍神はそのまま自らがお造りになった神域へと閉じ込めてしまわれました。そして私に、『この者は罪を犯し過ぎた。このままこの空間に閉じ込め滅ぼす…』と言われたのです」

 膝の上に置いた手を力強く握りしめ、当時の遣り切れない気持ちを何とか抑えつつ、少女はそのまま話を続けた。

「私は黒龍神に必死に訴えかけました。あんまりだと…余りに酷過ぎると。兄は確かに龍神に愛されて生まれて人ならぬ力を授かってはいましたが、あくまでも神そのものでは無く神に仕えるただの人に過ぎなかったのですから…。自らが命をかけて守っていた村人に裏切られ、そのせいで愛しい恋人を穢され、それで正気でいられる人間がおりましょうか…と」

 そこまで一気に話した見届けの巫女は、深い溜息を一つ吐いた。そして静かに空を仰ぎつつ、再び言葉を紡ぎ出した。

「黒龍神は暫くの間黙っておられて…、そして数刻後私に直接尋ねられました。それ程までに兄を救いたいかと。私は「はい」と答えました。次に、兄が神の意志に逆らう罪人だとしてもか…と問われても、私は再び「はい」と答えました。それが肉親の情だと。兄が罰を受けるのならば、妹である私も一緒に罰を受ける覚悟があると…そう訴えました」

 チリ――――――ン………。

 鈴の音と共に、現れた龍神に石畳の上で深く頭を垂れている少女の姿が見える。激しい雨に打たれ、髪も着物もグッショリ濡らしながら、それでも少女は石畳に額をこすりつけるように必死に願っていた。

「暫く黙っておられた黒龍神は、やがてこう言われました。では兄の命を取る事だけは止めておいてやろう。ただしこの空間から出す訳にはいかない。それに兄の命を繋ぎ止める為には生け贄が必要になってくる。兄はもう人間ではなく食人鬼になってしまったのだから、人間を食べねば生きていけない…と」

 見届けの巫女は再び真っ直ぐに視線を戻らせて、目の前に座っている三人をじっと見詰めてきた。
 その強い視線から、少女が本当に伝えたかったのはこの先だという事が嫌でも伝わってくる。

「黒龍神は私に教えて下さいました。龍神が降らせた雨に打たれて、兄は何とか人間であった頃の理性を取り戻す事が出来た…と。だからむやみやたらに人を食べる事はないだろうが、それでも月に一度、どうしても絶えられない飢餓に襲われる日が来ると。その時に人間を食べないでいると、やがてそのまま餓死してしまうと…そう言われました」

 本題に入ったからなのだろうか。少女の瞳は少しも揺るがず、ただ真っ直ぐに前を向いて話を続けていた。

「月の光は神聖なもの…。その光が全く届かない新月の晩が飢餓の日だそうです。そこで黒龍神は私に告げられました。月に一度、兄に食される生け贄を一人、この神域に送るが良い…と。生け贄は神域の力でどんなに食されても死ぬ事は無く、傷付いた身体も一晩経てばすっかり元通りに戻ってしまうそうなのです。ただし、その者自身の生命力を究極に高めて怪我を治すので、十年も経つ頃には生命力が尽きて、どんな丈夫な者でも死んでしまうのだそうです。だから十年ごとに新しく生け贄を寄越せ…と、そう仰りました」

 漸く辿り着いた、十年に一度の贄の巫女の話に、遊戯と了は釘付けになっている。
 ただし海馬だけはどこか呆然とした気持ちでその話を聞いていた。
 そんな事はもう知っている。誰が何人死のうと、もはや関係無い。ただ、今も贖罪の神域で苦しんでいる――の事を考えるだけで…胸が張り裂けそうだった。

「黒龍神は兄の為に色々と手を貸して下さいました。まず龍神の御力で、私に三つ子を授けて下さったのです。最初の百年は城之内の血を引く者の中から生け贄を差し出すように言われました。相手をする者が兄…つまり男性だった事から、生け贄になる者が男でも女でも『贄の巫女』と呼ぶように言われたのもこの時です。そして男性を知らないまま龍神の力によって私が産んだ三人の子をそれぞれ分家の始祖とし、名字を武藤・漠良・海馬とすべしと言われました」

 突如出て来た自分達の名字に、遊戯と了が思わず顔を見合わせた。
 今の話が本当なら、存在している三大分家の血を引く全ての人々は、皆この見届けの巫女の子孫という事になる。

「そして…次の百年からは、一族として栄えた分家の中から交互に生け贄…つまり贄の巫女を差し出すようにと告げられたのです。それから…三つ子を産む為に龍神の力をその身に受けた私は、不老不死の身体となってしまいました。黒龍神は、それこそが私に課せられた罰だと仰りました。自らの血を引いた子孫を兄の為に生け贄として送り出し、十年をかけて殺し、また次の新しい生け贄を送り出す…。そしてそれを最後まで見届ける。それが私の…見届けの巫女としての役目だと、そう言われたのです。そして人間としての理性を残したまま、月に一度人を食さねばならない事が…兄にとっての罰だとも教えて下さりました」

 自らの血を引いた子孫を、兄の為に生け贄として差し出さねばならないという事は…一体どれだけの悲しみをこの見届けの巫女に与えたのだろうか。
 考えるだけでも胸の奥が痛くなりそうな事を、この少女は約千年もの長き間に渡って実際にやってきたのだった。

「百年をかけて栄えた三大分家はやがて黒龍神のお告げの通りに、十年に一度、贄の巫女を兄のいる神域…『贖罪の神域』へと送るようになりました。その頃から本家城之内家では全く子供が生まれなくなり、やがて城之内の血を受け継いだ者は全員寿命を迎え死んでいきました…。今現在城之内の血を受け継いで生きているのは私と…あとは贖罪の神域に閉じ込められている食人鬼の兄だけです」

 それまで悲しそうな…辛そうな顔で話をしていた少女は、ここにきて漸く表情を和らげて軽く嘆息した。

「最初に黒龍神からこの話を聞いた時…、私は永劫に続くような苦しみの連鎖に泣き崩れました。けれど黒龍神はこうも言って下さったのです。『罰は永遠では無い。いつかお前の兄を苦しみから解き放つ者が現れる。今ここで預言をしよう。百代目の『贄の巫女』こそが、その役目を負っている』と…」

 そこまで言って、見届けの巫女は沈痛な顔をした三人を眺め、少し悲しそうに、けれども優しく微笑んだ。

「貴方達の中から…やがて百代目の贄の巫女は選ばれるでしょう。あぁ、でも了は違うかもしれませんね。同じ家から続けて贄の巫女が出る事はありませんから…。となれば遊戯か瀬人のどちらかでしょうね…。黒龍神は百代目の贄の巫女がどうやって兄を救うのかまでは教えてくれませんでした。だから私にも、この先どうなるかは全く分かりません。けれど黒龍神の預言が本当ならば…貴方達のどちらかが兄を救ってくれる事になる筈です」

 涙で濡れた眼をそっと伏せて、少女はその場で深くお辞儀をした。
 まるで千年前のあの日に、雨に打たれながら石畳の上で龍神に向かってしたかのように、深く深く。

「どうか…どうかお願い致します。身勝手な願いとは分かっております。けれど私は、何とかして兄を救ってやりたいと思っているのです。あれから千年…兄はもう十分に苦しみました。ですからどうか…兄を救ってやって下さいませ…っ! これだけが私の願いでございます…っ!!」
「見届けの巫女様…っ! 止めて下さい!!」
「どうか頭を上げて下さい!!」

 突然自分達に深く土下座をした少女に、遊戯と了が慌てて近寄ってその身体を支えた。
 本当だったら自分もその場に駆け寄って、その細い身体を支えてあげねばならなかったのかもしれない。けれど海馬にはそれが出来なかった。
 支えようとしなかった訳では無い。本当だったら遊戯や了と同じように駆け寄って、少女の身体を起こしてやりたかった。
 だが…身体が全く動かなかったのである。深く苦しい悲しみに支配されて、全ての筋肉が固まってしまったかのように身動きがとれない。ただ、涙だけは相変わらずボロボロと絶える事無く、澄んだ青い瞳から溢れては零れ落ちていった。

「克也…っ」

 突如、海馬の口から放たれた名前に、見届けの巫女が慌てて顔を上げた。そして「瀬人…?」と名前を呼びながら、泣き続ける海馬の側に近寄ってその顔を覗き込む。

「瀬人…どうしたのです? 今…何と言われました。一体誰を呼んだのですか」
「克也…っ! 克也…っ!!」
「どうしてその名を貴方が知っているのですか…っ!? 瀬人…っ!!」
「克也ぁ…っ!! うっ…あぁ…っ!! 克…也…っ!!」

 両耳を押さえ眼を強く瞑り、半狂乱になって蹲り泣き叫ぶ海馬に、見届けの巫女も遊戯も了もどうする事も出来なかった。



 結局その時は数分で海馬の状態は元に戻ったものの、その異様な雰囲気から見届けの巫女も、そして贄の巫女候補と呼ばれた遊戯や了もはっきりと理解してしまったのである。
 海馬瀬人こそが…百代目の贄の巫女、つまり『救いの巫女』であると…。

「何となく…そうでは無いかと思っておりました…」

 黒龍神から百代目の贄の巫女の名前が告げられてから暫くして、海馬家に直接やって来た見届けの巫女はそう言って、海馬に向かって少し悲しそうに微笑んだ。

「貴方は…お小さい頃から、あのせと様に良く似ておられました。姿形ばかりではなく、内面から感じられる雰囲気まで、本当に良く似ておいでで…。だから何となく予感はしていたのです。けれども、それと同時にそうであっては欲しくはないという気持ちも…ございました」

 海馬と共に縁側に腰掛けた少女は晴れ渡った冬の空を見上げて、冷たい風に長い亜麻色の髪を揺らしながらポツリと呟く。

「あのせと様と良く似た貴方を食べねばならないという事は…兄にとってはどれ程の苦痛となる事でしょう。もしかしたら、それが黒龍神が兄に対して下した本当の罰なのかもしれませんね…」

 その言葉に対して、海馬は何も言えなかった。
 ただ共に冬の空を見上げて、一年後の冬至へと想いを馳せる事しか出来なかったのである。

肉まんよりピザまんの方が好きですv

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ちょっとだけ元気になってきた二礼です、こんばんは。

ちょっとだけだけどねーw
でも先週よりは大分体調良いです。
体調が悪いと、小説を書く気力も沸かないんですよ…;
無理に書いても駄作にしかならないので(いつも駄作だというツッコミは無しなんだZE!!)、自分の体調と相談しながらチマチマ書いている状況が続いております。
このままゆったり生活を続ければ、もう少しすれば何とかなりそうかな~?
ていうか、本当にご心配をおかけしました~!!
スイマセンマジスイマセン。
完全復活まで、もう少々お待ち下さいませ~!!

つーか…点滴ってやっぱ凄いな。
直接血管に薬剤が投入されるって、実は凄い事なんだね…w(当たり前だと小一時間)


あ、そうそう。散たん(笑)に何となく差し上げたピザまんSSが、『REMS』にてUPされたようです。
寒くなってきたり、ついこの間までセブンで中華まん10%お得セールとかやってたから、「肉まんが売れ過ぎて困る」「ピザまんは美味しいよね」という話があって、そこから発生したSSでしたw
向こうでは書かれていないようですが、実はあのピザまん…。
廃 棄 品 (時間オーバー)なんだよねー(´∀`)
そうとも知らずに「美味い」と食す社長…。テラカワイソスwww
まぁ、腐ってる訳じゃないから大丈夫だよwww


長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第二夜をUPしました。
この過去話を出来るのは、見届けの巫女…つまり静香ちゃんだけなんですよねー。
唯一の生き証人ですから。
静香ちゃんは今までこうして贄の巫女候補に過去の真実を話しながら、贄の巫女としての覚悟を決めさせていたんだと思います。
ただし九十九代目までは…の話ですが。
今回は少し違った心意気で話をしているようですが、それは次回でお確かめ下さい(*'-')
つーか話の流れ上仕方の無い事とは言え、静香ちゃんのキャラ崩壊が酷過ぎるwww
でもまぁ…実は千年以上前のお生まれの方ですからねぇ…。
何だかもう色々悟っちゃってるんだという事にして下さい(´∀`;


以下は拍手のお返事になりますよ~(^o^)


>飛香莉様

お久しぶりです~!
拍手とコメント、どうもありがとうございました~(*'-')

新しい長編『無限の黄昏 幽玄の月』を読んで下さって、ありがとうございます!
そうですそうです。
今回の本編でも名前が出て来ていますが、見届けの巫女は静香ちゃんです。
キャラ崩壊が酷いですが、誰が何と言おうと静香ちゃんです!!(力説)
体調が悪いせいで今までのようにガッツリとは書けませんが、ゆったりとお楽しみ下さいませ~。
物語の内容は、ゆったりとはいきそうにありませんが…ねwww

それでは今日はこれで失礼致します~!
ではまた~(・∀・)ノシ


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました!!(>_<)

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をありがとうございます。
えーと、今回の物語に出てくる遊戯と了は、表君と漠良君の方になります。
一応前回の話し言葉でも気を付けていたんですけど、彼等の台詞が少ない為に判断し辛かったですね…w
王様とバクラの活躍は…この先あるかどうか分かりません。
少なくてもプロットには名前が書いて無いもので…www
ていうか、ウチの王様は活躍しなさ過ぎですね。
バクラは『奇跡の証明』での番外編がありましたけれど、王様は初期のバレンタインデー話と『真実の証明』にちょろっと出て来ただけだもんなぁ…(´∀`;
ゴメンね、王様。
王様の事は物凄く格好良いとは思っているけれど、性格的にタイプじゃないので書きにくいっつーか、余り書きたく無いんだよwww
多分私が、社長・凡骨・バクラ・表君・王様の5人の中から恋人候補を選ぶとしたら、王様は一番最後になるような気がします。
恋人というよりは、友達として付き合いつつ何かダメな事言ったら遠慮無くビシビシとチョップを入れていきたいような、そんな感じかなw

あと散さんのところに送ったピザまんSSも見て下さったようで…ありがとございました(´∀`)
まぁ…あのくらいのSSだったら1時間くらいで何とかなるので、大した苦労ではありませんでした。
あと話の内容がほのぼのだったのも良かったらしいです。
今回の長編はずっと書きたいと思っていたものだったし、それに対しての意気込みも半端無くあるのですが、テーマがちょっと…重いでしょ?
体調が悪い時に重い話を無理して書くと、気持ちの方も沈んじゃったりするんですよね…(´―`;
そういう意味では、あのピザまんSSは気分をリフレッシュさせるのに一役買ったというか何ていうか…。
アレを書いた事によって気持ち的に楽になったのは確かですね。
まぁ、余り思い詰めないで連載を続けていきたいと思いますw
たまには短編を織り交ぜたりしながらね(*'-')

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

第二夜

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 運命とは…残酷なものだ。
 この哀しい出来事は、どうしても避ける事が出来なかったのか。
 後からどんなに後悔しても、時が逆行する事だけは決して有り得ない。
 ただ分かるのは…自分のせいで彼が今も苦しんでいるという事実だけだ。
 千年もの長い間を…たった一人で…。

 




 部屋の中は緊迫した空気に包まれていた。側ではストーブが焚かれ十分に温かい筈なのに、背筋にゾクゾクとした寒気が走る。
 細い指先で滲んだ涙を拭い取った見届けの巫女は、当時を思い出しているのか…遠い目をしたままだった。綺麗な澄んだ瞳が、悲しみの色で濡れている。
 そんな見届けの巫女を見詰めながら、海馬は少女のこんな表情をどこかで見た事があると思っていた。だが同時に、そんな筈は無いと頭の中で否定する。
 幼い頃から第百代目の贄の巫女の候補として、度々黒龍神社の本殿へは連れて行かれていた。見届けの巫女とは毎回会う訳では無かったが、それでもたまに顔を合わせたりする度に彼女はゆったりと微笑み、少し会話をしては優しく頭を撫でてくれた。だが、こんな悲しみの表情を見せた事は一度も無い。
 だからこの既視感はただの勘違いの筈だった。それなのに…心のどこかがそれを否定する。
 自分は確かにこの表情を、遠い昔に見た事があると。しかも、自分も全く同じ気持ちで…。
 その時だった。

 チリ――――――ン………。

 小さな鈴の音が部屋の中に響き、海馬は思わず視線を巡らせた。どこからか鈴が落ちたのかと思ったが、だがこの部屋の床のどこにも鈴なんて落ちてはいない。それどころか、この小さな音に気付いたのはどうやら自分だけであるらしい。隣で見届けの巫女の話に耳を傾けている遊戯と了は、全く意に関していないようだった。

「異変が起こった時…、私は神社の本殿の奥で黒龍神にせと様と兄の無事をお祈りしていて、それに全く気付いていませんでした…」

 再び開かれた少女の言葉に、海馬は慌てて正面に向き直った。

「無心で祈っていると、突然誰かが本殿にやって来ました…。誰かと思って扉を開くと、そこにいたのは傷付いた身体を必死に引き摺ってここまで逃げてきた、兄の恋人のせと様だったのです。せと様は私の顔を見るなり叫びました」

『巫女様…っ!! 静香様…っ!! どうか今すぐお逃げ下さい…っ!!』

「え………っ?」

 突然脳裏に響く叫び声に、海馬はビクリと身体を揺らした。
 今のは一体誰の声なのか。どこかで聞き覚えがあるような…。そう、例えるならば自分の声がもっと低くなればこんな声になるだろうというような声だった。

「せと様の御言葉で、私は慌てて外に飛び出しました。そしてそこで見たのは…、鳥居の向こうの村が真っ赤に燃えている風景だったのです。家という家が全て炎に包まれ、激しい黒炎が辺りを包み空へと昇っていっておりました。そして人々の血や人体が焼け焦げる匂いが、まるでここまで臭ってくるような…そんな気さえ致しました…」

 見届けの巫女は悲痛な表情に顔を歪めながらも、淡々と言葉を紡いでいく。

「せと様は仰りました。自分が食人鬼に犯されている姿と村人の裏切りを目の当たりにした兄が、その余りに酷い衝撃に正気を保っている事が出来なくなって、狂気に取り憑かれ暴走してしまっていると…。食人鬼はその場で兄によって首を飛ばされ、倒れ伏したせと様を気にかける事も無く兄は村へと向かって行ったのだそうです。せと様は…気付いておられました。これが鬼の呪いだと。鬼の本当の目的は兄の恋人を穢す事では無く、せめて自分が死ぬ前に兄を自分と同じ闇の深みに堕とす事だったのだと…」

 チリ――――――ン………。

『今の――は、完全に理性を失っております…っ! 例え私や静香様を目の前にしたとしても、それが誰かは分からないでしょう…っ!!』

 再び脳裏に声が響いた。それと同時にまた…鈴の音も響く。

『ここに来るまでに、何人もの村人の死体を見ました…。全員黒炎刀で切られ、その身体に黒炎が纏わり付き焼け焦げておりました。こんな殺し方が出来るのは、この世でたった一人しか…、残念ながら――しかおりません…っ。男も女も子供もありませんでした。目に付く人間は全て殺して回っているようです。死体から飛び火した炎が家々も燃やし始めて、村は酷い惨状です…っ!!』

 脳裏に声が響くのと同時に激しい耳鳴りに襲われ、海馬は堪らず自分の両耳を押さえた。
 現実の音はグワングワンと歪んで良く聞こえない。その代わり、頭の中の声は酷く鮮明だった。

『ですから静香様。どうか早く逃げて下さいませ…っ! ――は私が責任を持って何とか致します。――が暴走してしまったのは…私の責任でもありますから…っ!!』

 そうだ…。自分は確かにこの話をよく知っている。
 そう…、まるで自分自身で体験したかのように。
 知らず知らずの内に涙が零れて、止まらなくなっていた。ホロホロと涙を零す度に耳鳴りも少しずつ治まっていく。
 目の前で話を続ける見届けの巫女の声が漸くはっきり聞こえてきたが、海馬はもうそれ以上聞きたくはないという気持ちに苛まれていた。
 何故だかは知らない。だけれども、その物語が目を覆い耳を塞ぎたくなるような悲劇で終わる事を…よく知っていた。

 チリ――――――ン………。

 あぁ…まただ。また、鈴の音が聞こえる。

「私がせと様の御言葉に戸惑っている内に、小さな鈴の音が鳥居の向こう…参道の階段から段々と近付いて来るのが分かりました。その鈴は黒炎刀の柄に結びつけられていたもので、元々は二つ対で付けられていたものでした。いつの頃からか鈴は一つだけになってしまいましたが、その残った鈴がチリチリと鳴りながら近付いて来たのです。やがて鳥居の向こうから姿を現わしたのは…兄でした」

 未だ海馬の涙は止まらなかった。ぼやけた視界に別の風景が混ざって見える。
 黒炎に覆われた真っ黒な空。それと対照的に真っ赤な炎を吹き上げて燃えている村。
 赤と黒を背景として現れたその男は、真っ白だった神官着を真っ赤に染め上げていた…。

『お兄様…っ!? どうして…? あぁ…どうしてこんな事に…っ!!』

 せっかく治まっていた耳鳴りが再び強く鳴りだし、同時に脳裏に少女の叫び声が響いた。まるですぐ隣で聞いて居るかのように、強く大きく…。

「兄は…私達の事が全く分かっていないようでした…。虚ろな目で黒炎刀を引き摺りながら近付いて来て、やがて私の目の前でピタリと足を止めました。振り上がる黒炎刀に、私は逃げる事が出来ませんでした…。恐れと悲しみで足が震えて…身体が固まって身動きする事が出来なかったのです。高く掲げられた黒炎刀の先がピクリと動いて…、そして私に向かって振り下ろされました」

 そこまで話して、少女は留めていた涙を再び零し始めた。
 隣で黙って話を聞いている遊戯と了は、ゴクリと喉を鳴らして真剣な表情で見届けの巫女の次の言葉を待っている。
 だが海馬には、その後の展開がもう分かっていた。
 いや、分かっていたというよりは…今まさにこの瞬間、涙で歪んだ視界に当時の映像が流れていたのである。

『やめろ…っ!! ――っ!!』

 妹殺しをさせる訳にはいかなかった。
 それに静香は黒龍神に愛されて生まれてきた巫女。黒龍神の言葉を直に聞ける、ただ一人の巫女。兄の暴走によって滅びてしまった村を立て直すには、彼女の力が必要不可欠だった。
 そうだ…。この村を愛していた。静かで平和で、慎み深く思いやりがある優しい人々が暮らすこの村が…。そしてただ一人、心から愛しいと思う人が全力で守っているこの村の事を本当に大事だと思っていた。
 だからこそ、このままここで終わらせる訳にはいかなかった。実の妹をその手で殺させる訳にはいかなかった。

「黒炎刀の刃が私に届く寸前…、必死の形相で駆け寄ってきたせと様が私と兄の間に立ち塞がりました。そして…黒炎刀はそのまませと様の首を跳ねてしまったのです…」

 もはや見届けの巫女は、流れる涙を拭おうともしなかった。ポタリポタリと顎の先から涙を落としながら、ただ淡々と事実を述べていく。

「兄の神官着は…襟元に少しだけ白い部分が残っていました。けれどもせと様の返り血でその部分までが真っ赤に染まってしまって…。そして次の瞬間、兄の身体は変化し始めてしまいました。奇しくも…自分の恋人のせと様が、その晩の百人目の犠牲者だったのです」

 頭の奥のどこか遠い場所で、悲痛な叫び声が聞こえたような気がする。
 海馬は過去と現代の間で意識を揺らめかせながら、そんなことを思っていた。