海馬と恋人になって、最初の頃は交換しながらやっていた。
何を交換って…。そりゃ攻める側と受ける側、つまりタチとネコの立場って事だな。
恋人ったってオレ達は男同士だし、必然的にどっちかが女役をやらなきゃセックスなんて出来ない。セックスをしないという選択肢は最初から無かったから、これは海馬との恋人関係を持続させる上で切っても切り離せないものの内の一つだった。
女役をやる事に抵抗が無かったのかと言われれば、無かったとは言えない。だってオレも男の子だし。やっぱり突っ込まれるより突っ込む方がいいだろ?
だから最初は我慢して女役もやってたんだけど、最近そっちの方の出番が激減していた。
つまり…海馬が女役をやる事の方が増えて来たって事だ。
男としてはそれは確かに嬉しい事なんだけど、その原因が分かってしまうと、それってどうなんだろう…とか思ってしまう。
だってさ、海馬の奴…。
滅 茶 苦 茶 体 力 が 無 い ん だ よ !!
スタートはいいんだよ、スタートは。
最初は海馬も体力があるから張り切って攻めて来るんだけど、途中でガクンと体力が切れて、後半は全く役に立たなくなる。
今だってほら…。「たまにはオレも攻めたい」という海馬の願いを聞いてやって今日のオレは受けに回ってるんだけど、何かもう…動きが覚束ないんですけど?
「眠い?」と尋ねてやれば「いや…」とは返ってくるものの、明らかにお疲れの症状が出ている。
参ったなぁ…もう。後は突っ込むだけなのに、どうしてここで電池切れ起こすんだよ…。
「分かった。お前もういいから、そこに寝とけ」
仕方無いから身体を起こしつつそう言ったら、海馬は大人しくベッドの上に寝転がった。そしてゴロリと身体を仰向けにすると、「ふぅ…」と深く嘆息する。
おい…、攻めが溜息吐くなよな…。前戯だけでどんだけ疲れてんだよ…。
何かこのまま放っておいたら寝ちゃいそうだったから、慌てて寝転がった海馬の上に乗り上げて脚を跨いでやった。
幸いというか何というか、珍しくじっくり解して貰ってたから、このまま入れてしまう事にする。
「しょうがないなぁ…。このまま入れてやるから大人しくしてろよ?」
「あぁ…」
ダメだ、コイツ…。返事にすらやる気が感じられない。
ベッドに入る前はあんなにやる気満々だったのに、その勢いは今はどこにも感じられなかった。とは言っても、このままで終わらせるなんてのはまた論外な訳であって…。
オレは多少無理をして、硬く勃ち上がった海馬のソレを自分の後孔に押し当てた。そしてそのままグッと腰を下ろして、半ば無理矢理飲み込んでしまう。
「っ…! うっ…っ」
海馬のペニスはオレの程大きくは無い。けれど、本来受け入れる場所じゃ無い場所に受け入れている為、やっぱり痛みと不自然な圧迫感が襲ってきた。
それなりに慣れたとは思ってたけど、受けになる事自体随分と久しぶりの事だったから、身体はすっかり忘れてしまっていたらしい。
あ…チクショウ…痛ぇなぁ…。でもこれで海馬が満足してくれれば、それでいいのかなって…。って、あれ?
「か…海馬っ!? っ…てぇ…!」
痛みで顔を歪めながら海馬の顔を見たオレは、余りの事態に慌てて大声を出してしまった。下半身は飲み込んだペニスの違和感に未だ慣れてなくて、声を出した拍子に体内のソレを強く締め付けてしまい、途端に走った痛みに思わず呻いてしまう。
だけど今はそんな事言ってる場合じゃない!
ペニスおっ勃てて、人の身体の中に入り込んでいる癖に、海馬は目を瞑って今にも寝入ろうとしていた…。
「お…おいっ! 起きろよ!!」
焦って両肩を掴んでユサユサと揺すってやると、海馬が面倒臭そうに瞼を開く。
「お前…っ。今寝てただろ!?」
「いや、寝てない」
「人がせっかく入れさせてやったのに、眠るとか無しだろ!!」
「だから寝てないと言っている。ちゃんと気持ちいいから安心しろ、城之内」
「安心出来るか、馬鹿!」
「大丈夫だ。今ので起きた。ちゃんと最後まで出来るから…」
「やっぱり寝てたんじゃねーか!! ちゃんとしねーと、もう抜くからな!!」
「いや…それは困る」
「困るんなら最後までしっかり起きてろよ。オレが動いてやるから」
ったく…。セックスの途中で眠りそうになるとか、どんだけだよ。おじさんじゃねーんだぞ! まだ若いんだぞ!!
受ける側ならまだしも、攻める側で寝落ちしそうになるとか、マジで有り得ない。だけどそれがあり得ちゃうのが海馬って人間であって…。
「くっ………!」
これ以上長引かせてまた寝そうになられるのも困るので、もうちゃっちゃと終わらせてしまう事にした。
下半身はまだ痛みを訴えているが、腹筋使って中のモノをギュウッと強く締め付けると、激しく腰を上下に動かす。
気持ちいいとか気持ち良く無いとかそういう問題じゃなくて、もうここから先は時間の問題だ。如何に海馬が眠りに落ちる前に、射精させるかって事が一番大事なんだ。
ていうか…、こんな事考えながらセックスするのも、ものすご~く虚しい行為ではあるんだけど…な。
「ふっ…! はっ…はぁ…っ。うっ………!!」
なるべくペニスの先端が奥に当るように腰を打ち付けて、最奥で絞るように締め付けたら、「うっ…!」と呻いて海馬がブルリと震えて達したのが見えた。同時に体内に生温かい熱が広がっていって、海馬が射精したのを直接感じる。
「はぁ…っ。はぁ…っ。か…海馬…?」
海馬の白い肌の上に汗をポタポタ落としながら息を整え、ふっと顔を上げてみたら…。
案の定、海馬はもうとっくに眠ってしまっていた。人の体内に…ペニスを収めたまんまで。
「有り得無ぇ…」
思わずボソリと呟いてしまった。
何が有り得ないって…。本日受けであるオレは、まだ一度もイかせて貰って無かったのだ…。
「どうすんだよ、これ」
中途半端に体内を刺激されたオレのペニスはビンビンで。だけど相手はもう寝ちゃってて、スヤスヤと安らかな寝息をたてている。ムカついたから鼻を摘んでやっても、起きる気配すらしない。
残されたのは、力を失った相手のペニスを銜え込んだまま、それとは逆にいきり立ったペニスを持て余した状態のオレって訳だ…。
悔しいからそのままの体勢で手淫により射精をし、白い身体の上に精液をぶち捲けてやった。拭いてなんかやらない。オレの精液で汚れたまま朝を迎えやがれ!!
その日の夜…。オレは海馬の隣で布団にくるまりながら、一つだけ強く心に誓いをたてた。
もう二度と、海馬に攻めはやらせないと…!!
何言われようと、どんな文句が出ようと、もう関係無い。
こんな思いをする事に比べたら、ギャンギャン騒がれた方がまだマシだ。
幸せそうに眠る海馬の横顔を見ながら、オレはその夜、余りの情けなさにチョットだけ泣いていた…。