2010年2月アーカイブ

第二十五夜

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 黒龍神よ…。
 私はただあの二人に幸せになって貰いたかっただけなのです。こんな結末を望んでいた訳では無かったのです。
 だけれども…今回の事で私も漸く悟りました。
 私は今までただの傍観者として、全ての事をずっと救いの巫女一人に背負わせて来ました。
 そうする事が当然だと思っていたのです。
 でも、そうではなかったのですね。私もこの世界の住人の一人として、覚悟を決めなければならなかったんですね…。
 その事が…今になって漸く…分かりました。気付くのが遅過ぎたのかもしれません…。
 それでも黒龍神よ…。そんな私でも、今から出来る事はあるでしょうか?
 ただの思念体の私でも…彼等の為に役立つ事が出来るでしょうか?
 もう何も…後悔したく無いのです。どうか私にも闘わせて下さい。
 彼等の…克也と瀬人の為に。

 




 黒炎刀に貫かれた時…海馬は全く痛いとは感じなかった。ただ熱いと…ヒヤリとした熱が背中から胸を通り過ぎていったように感じた。
 これで城之内共々小さな石ころになる。本当は…城之内と共に生きる事が望みであった。けれどそれが無理だと分かった時、それならばせめて最後まで彼の側にいようと思ったのだ。もうこれ以上城之内を一人にしない為に…石になって終生を共にする為に。
 共に生きる道を選べなかった事はとても悲しい。けれど海馬は自らの選択を全く後悔していなかった。城之内を失った後、一人取り残されて生きるよりずっとマシだと思ったのである。

 それなのに…何故自分は生きているのだろうか…?

 最初、自分は既に死後の世界にいるのかと思った。そんな風に誤認してしまうくらいに、その世界は白かったのだ。
 漂う意識を引き戻され、初めは曖昧だった四肢の感覚が少しずつクリアになっていく。浮上する意識に逆らわずにその瞳を開ければ、ただただ真っ白い世界が目に入ってきた。

「………?」

 全く意味が分からなかった。自分は城之内によって黒炎刀に貫かれた筈だった。背中から…胸にかけて、城之内と共に。重なった身体は一本の刀によって串刺しになり、二人はそのまま死んで石ころになった筈だったのに…。
 不可解な現象に首を捻りながら、無意識に胸に手を置いた。そこは刀が通った筈の場所。本来だったら刀傷がある筈だった。それなのに…ちっとも痛く無いのだ。それどころかどんなに探っても傷一つ無く、貫かれた痕すら見当たらない。だが…。

「確かに…刺された筈…」

 その場所を探る度にぬるりとした血で指が汚れ、着ていた白い着物も流血で真っ赤に染まっている。そう…確かに海馬は黒炎刀によって身体を貫かれていた。それなのに傷がない、痛みも無い。
 訝しげな現象に眉を顰めた時、自分の背後で人の気配がするのに気付いた。上半身を起き上がらせて慌てて振り返れば、そこに二人の人物がいる事に気付く。
 一人は白い世界に横たわっている城之内の姿。白い着物に青い袴の神官着を着ていて、上半身の着物を海馬と同じように血で真っ赤に染め上げている事から、あの瞬間が夢では無かった事が分かる。そしてもう一人は、意識を失った城之内の側に屈み込み、彼の胸に掌を当てている男の姿だった。真っ白い着物を着たその後ろ姿に、海馬は見覚えがあった。それは…。

「せと………?」

 この三年間、ずっと海馬の側に寄り添い、何かと助けてくれたあのせとがそこにいた。此方に背を向けている為表情は分からないが、何故だか近寄りがたい雰囲気を醸し出している。そして海馬はもう一つ、せとがいつもと全く様子が違う事に気が付いた。
 せとは…実体化していたのである。いつもの半透明とは全く違うクリアな姿。確かな質量を持って彼はそこにいた。

「せ…と…? お前…」

 震える声で呼びかけると、せとはピクリと反応した。そして城之内の胸から掌を持ち上げると、ふぅ…と深く嘆息する。血で汚れた着物の袷を綺麗に直して、そしてせとはスッと立ち上がり…振り返った。
 その顔を見て、海馬は驚きに目を瞠った。いつも穏やかな笑みを称えていた彼の顔は、何故だか酷く無表情だった。そして何の感情も見せないままスタスタと海馬の目の前まで歩いて来て、その場にしゃがみ込んだ。

「せ…と…。っ…!!」

 顔を覗き込むせとに視線を合わせ、恐る恐る彼の名を呼んだ時だった。パシンッと乾いた音が耳のすぐ側で鳴り響き、次いで自分の左頬がカーッと熱くなっていくのを感じた。衝撃に揺らいだ視界に、海馬は自分がせとに平手打ちをされたのだという事を知る。
 ジンジンと痛む頬に手を当ててゆっくりと視線を戻せば、今度はギュッと強く抱き締められた。温かい…血の通った確かな身体。この三年間、一度も触れ合える事の無かった感触が、今そこにある。その事実を俄には信じられなくてただ呆然としていると、海馬の視界の先に花びらが一枚落ちてきた。それは薄いピンク色の桜の花びらだった。何故こんなものが落ちてくるのかと思いせとの肩越しに視界を巡らせてみて…目に入ってきた余りの光景に海馬は声もなく驚いた。

「っ………!?」

 桜の花びらだけではない。あのマヨイガに咲いていた数々の花々が全て散って、その花びらを辺りに漂わせていたのだ。赤、青、黄色、紫、ピンク、オレンジ、白…ありとあらゆる色が風に乗って舞っている。色の無い白い世界で、そこだけが鮮やかだった。

「馬鹿な…事を…」

 今自分が見ている光景が信じられなくて呆然としていると、耳元でせとが小さく呟いている事に気付いた。その声は…酷く震えている。

「何故死を選んだ…。何故克也の言葉に耳を傾けたりしてしまったのだ。何があってもお前だけは生きる事を諦めてはいけないのに…。克也が持っている黒炎刀を奪い取ってでも、生きる選択をしなければならなかったのに…っ!」

 怒りと…そして哀しみで震える声に、海馬は漸く我を取り戻した。そっと身体を動かして、せとの腕の中から身を起こす。そして…初めてせとの顔をまともに見た。
 せとは…泣いていた。酷く悔しそうに下唇を噛み締めながら、静かにハラハラと泣いていた。

「お前達は…本当に馬鹿な事をしたのだ。少しは反省しろ」
「………すま…ない…」
「私が黒龍神に願い出なかったら、お前達はあのまま死んでいたのだぞ」
「それでは…お前が救ってくれたのか?」
「当たり前だ。他に誰がいるというのだ」

 そう言ってせとは、流れ出る涙を袖口でぐいっと拭って立ち上がった。ザァッと風が吹き、様々な色の花びらがせとと海馬の間を通り抜けて行く。風にはためく彼の白い着物の裾が、せとがいつもとは違って実体化している事を知らしめていた。
 それを信じられないような目線で見上げていると、海馬の視線に気付いたせとが視線を下げて見下ろしてくる。そして何度か瞬きをして口を開いた。

「いつか…私が話して実際に見せてやった奇跡の事を…覚えているか? この贖罪の神域特有の…奇跡を起こす力の事を」

 静かに深く通るその声に、海馬はコクリと頷いた。そしてそれと同時に、この白い世界が贖罪の神域だという事を知って酷く驚いてしまう。どこを見渡しても真っ白なその世界は、海馬が知っている贖罪の神域とは全く違っていたからだ。
 四季の花咲くマヨイガも、朱塗りの大鳥居も、荘厳な黒龍神社の本殿も、今ここには何一つ残っていない。見えるのはどこまでも続く白と、様々な色の花吹雪だけだった。

「私はあの時、お前の前で花を咲かす奇跡を見せてやった。今回はその力を逆に使ったのだ。お前達二人を助ける為に、黒龍神に必死に頼んで奇跡の力を最大限に使わせて貰ったのだよ」
「奇跡の力を…逆に?」
「そう…。普段は放出する力を…逆に取り込んだのだ」

 そう言ってせとは手を上に掲げた。目にも眩しい白い腕に、色鮮やかな花吹雪が絡まって離れて行く。

「贖罪の神域を形成していた全ての奇跡の力を取り込んで、私は実体化した。その結果、あの世界は形を保つ事が出来なくなってこのような姿になってしまったがな…」

 せとの言葉を聞き、海馬は改めて周りを見渡して見た。相変わらずどこもかしこも白いその世界は、せとが言うにはあの贖罪の神域だったそうだが…。それが全く信じられない程、何の痕跡も残されていない。
 余りの事実に絶句している海馬の元にせとはもう一度しゃがみ込み、そして今度は手を伸ばして海馬の胸元に触れてきた。傷のあった辺りを優しく撫で擦る。

「傷…残ってないだろう」
「あ…あぁ…」
「もう痛くはないな?」

 その質問に頷く事で答えると、せとは漸く安心したように柔らかな微笑みを浮かべた。

「実体化し…全ての奇跡の力をこの身に取り込んでから…今度はお前達を救う為に奇跡の力を放出したのだ。怪我が治っているのはそのせいなのだよ」
「克也も…同じように?」
「そうだ。つい先程まで治していたが傷は綺麗に塞がった。もう大丈夫だ」

 満足そうなせとの笑みを見ながら、海馬はそろりと向こうに倒れている城之内に目を向けた。海馬の視線を追ってせとの目線も城之内へと向かう。城之内はまだ意識を失ったままだった。だが傷が治ったからにはもうすぐ目を覚ますだろう。
 よく見ると…城之内の身体の傍らに、黒炎刀が転がっているのが見えた。鞘には入っておらず、血に濡れた銀色の刀身が生々しく目に映る。

「っ………」

 口内に溜る唾をゴクリと飲み込んで、海馬はそれから視線を外した。あの時は感じられなかった痛みが戻ってくるような気がしたのである。
 目を伏せて顔色を悪くする海馬に、せとは何も言わなかった。ただその場で立ち上がって静かに海馬の事を見下ろしている。じっと見られている感覚に海馬が顔を上げれば、自分と同じ澄んだ青色を称えた瞳と視線がかち合った。

「さて…救いの巫女よ。今度はどうする?」

 暫く黙って見つめ合った後、せとは唐突に言葉を放った。言われた意味が分からなくて首を捻れば、せとはクスリと笑って振り返り城之内の方に視線を向ける。その後を追って海馬も向こうを見てみれば、丁度今まで気を失っていた城之内が目覚めたところだった。海馬と同じように自分の身に起こった事が理解出来ないのであろう。上半身を起こしながら不可思議な顔で自分の胸元を見詰め、傷痕を手で確かめている。
 やがて…こちらの気配に気付いたのか、城之内が視線を上げた。その途端、琥珀の瞳が驚きで大きく見開かれる。

「っ………!? せ…と…っ!?」

 余りの驚愕に身動きすらならない城之内の側に、せとは微笑みを称えたまま近付いていった。そして転がっていた黒炎刀を拾い上げ、更に側に落ちていた鞘に刀身を収めて城之内に差し出す。驚き過ぎて刀を受け取る手が出せない城之内に焦る事無く、せとはそのままの姿勢で低い声を出した。

「おはよう。漸く起きたか馬鹿者が」

 言われた事が全く理解出来ない様相を見せながら、城之内は大きく見開かれた琥珀の瞳で何度も瞬きする。

「悲劇に浸り自殺してみた気分はどうだ? 海馬瀬人を解放しようとした事だけは褒めてやるが、結局道連れにしているのでは全く意味が無いではないか、この愚か者」
「せ…と…。お前…せと…か…?」
「あぁ…そうか。そうだったな」

 震えながらせとの名を口にする城之内に、せとは大きく溜息を吐く。そしてきつい目付きで城之内を見ながら、ゆっくりと口を開いた。

「『初めまして』…克也。私の名前はせと。千年前…お前が九十九人の村人と自分の恋人を殺し、食人鬼になって贖罪の神域に閉じ込められた時。お前の事を心配しながら転生していった『せと』が残した思念体だ」
「思念体…? せとでは…ないのか…?」
「残念ながら私は、今貴様が思い描いている『せと』では無い。魂を持たぬ意識の固まり…それが私の正体だ」

 相変わらず差し出された黒炎刀を受け取ろうとせず、城之内はただ呆然とせとを見上げていた。そんな城之内に対して、せとの視線はどこまでも冷たい。いつも心から城之内の事を愛しく思い、穏やかに彼の事を見守っていた瞳は今はどこにも見当たらない。
 そんなせとの事を、海馬は酷く困惑した気持ちで見詰めていた。

 どうして…どうしてそんな目をして克也を見るんだ。
 あんなに大事に想っていたじゃないか。あんなに心配していたじゃないか。あんなに…愛していたじゃないか…。それなのに…どうしてそんな目をしているんだ…っ!!

 海馬にはせとの思惑が全く読めなかった。ただ、彼が酷く怒っている事だけは感じていたが。
 困惑する海馬と城之内を他所に、せとはどこまでも冷静だった。相変わらず低く唸るような声で冷たく言葉を放つ。

「自ら死を選んだ愚か者に、一つだけいい事を教えてやろう…。私が生まれたのは千年前。お前がこの贖罪の神域に閉じ込められたあの瞬間から、私もずっと共にここにいたのだよ。お前には姿も見えず声も聞こえずで、私の存在を感じ取る事は出来なかったようだがな」
「なっ…!? ずっと…? まさかずっと贖罪の神域にいたとでもいうのか…っ?」
「あぁ、そうだ。私はずっとここにいた。千年という長い刻を…お前と共に過ごしてきた」
「な…ん…で…」
「さて、克也。そこで本題に入るのだが…。実は私もつい先程、黒龍神に『要石』の事を聞いたのだ。まぁ…事の顛末を聞くついでだったのだが」
「え………?」
「確か『要石』には『贖罪の神域に千年近く存在した者』がなれるらしいな。その条件だけでいいのだったら、この私だって『要石』になれるという事だ」

 そう言ってせとは、持っていた黒炎刀の鞘を華麗に抜き去った。そして未だ血に塗れたままの銀色の刀身を翻し、切っ先を城之内の鼻先に向ける。

「さて、選択の時だ…克也」
「せ…と…? 何…を…」

 冷や汗を流しながら焦りの色を見せる城之内に、せとはニヤリと笑いかける。城之内を見下ろすその青い瞳に一切の曇りは無く、また胸に秘めた決意に関しても少しも揺らがない事が、遠くから見ている海馬にもよく分かった。
 キラリキラリと黒炎刀の刀身を光に煌めかせながら、せとは落ち着いた声で無情に言い放つ。

「何…簡単な事だよ。もう一度『自分』を殺し、悲劇の主人公として美しく物語の幕を降ろすか。それとも、もう一度『せと』を殺して海馬瀬人と共に無様に生きてみるか…。二つに一つの選択だ」
「なっ………!?」
「どうせどちらも『一度』殺しているのだ。二度目も大した事は無いだろう? さぁ…再選択の権利を黒龍神がせっかく与えてくれたのだ。よく考えて選択せよ」

 驚きに目を瞠る城之内に、せとは少しも表情を緩めない。ただ…約三年間ずっと寄り添って生きて来た海馬には、せとの本意が見えてきていた。心に迫ってくる彼の真意に、海馬は知らず涙を流す。

 せと…。お前は…それ程までに…オレ達を救いたいのか…。
 それ程までに…想っていてくれたのか…。

 せとの強い決意と、それに対して揺らいでしまった自らの決意。海馬は余りに自分が情けなくなり、そしてせとの本当の強さと優しさを知って、涙を留める事が出来なかった…。

本屋さんで頑張ります

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新しい仕事が決まった二礼です、こんばんは。

鼻水と咳は出ていますが、風邪の方は何とか治まったようです。
そうそう。日記には書いていませんでしたが、実はずっと新しいお仕事を探していました。
年が明けてすぐの1月15日にそれまでずっと働いてきたセブンイレブンが閉店になり、それからすぐに別のお仕事を探し始めました。
幸運な事に、一週間後には近所の別のセブンにバイトが決まったのですが…。
そこが…何というか…まぁちょっと…自分的に合わなかったんですよね…;
同じセブンなんですけど、経営者が違うとこうまで違うのか…みたいな感じで、とてもじゃないけど耐えられなかったんです。
(我が儘を言ってはいけないとは思いますが、そのオーナー自体が少し…いやかなり苦手なタイプの人で…色々と無理だったんです…w)
更に働ける時間が思った以上に少なかった事も有り、そこのセブンはさっさと辞めてしまいました。
で、そこからまた仕事探しをしていたのですが、この度近所の大手本屋の支店で働ける事が決まったんです!
本好きとしてはずっと本屋で働くのが夢だったので、今すっごく嬉しいですw
勤務時間や土日祝のお休みに関してもちゃんと考慮してくれるそうなので、今度こそ安心して働けそうです。
はぁ~良かったぁ~(*´∀`*)

で、ここからはお知らせなのですが…。
実はこの本屋さん、前のセブンイレブン(今までずっと働いてきた方ね)とは違って、完全曜日制じゃ無いんですよね~。
勤務時間も夕方から夜(大体16時~21時。例外もありますが)になるので、昼間に働いていた今までとは全く違う生活になります。
………それでなんですけどね、もしかしたら今までのような更新は出来なくなるかもしれません。
一応今現在決めている『月・水・土』はそのままにしておこうと思いますが、日付が変わるギリギリの深夜更新になる事もあるかと思います。
現に次の月曜日はもうお仕事が入っているので、少なくても22時前の更新は無理なんですよね。
今までのようにきっちりとした更新(…と言っても、元々更新時間なんかバラバラですけど…w)は出来なくなると思いますが、その辺りはどうぞご容赦下さいませ~!


長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第二十四夜をUPしました。
前回が短かったので、今回は気合いを入れてちょっと長めに書いてみました。
…というより、切る場所が無かったという方が正解ですけどw

以前この場所で、私が『無限の黄昏 幽玄の月』を書くにあたって三つほど頭に浮かんだシーンがあると書いた事がありました。
一つ目は海馬が血まみれになって城之内に食べられているシーン。
二つ目は城之内が大切にしていたせとの頭蓋骨を海馬が粉砕するシーン。
そして三つ目が、炎の中で心中する城海の姿のシーンでした。
今回のお話は、この三つ目のシーンになります。
頭に思い浮かんだシーンがかなりドラマティックだったので、これを上手く文章に表せるかどうか全く自信が無かったんですけど、何とか頑張ってみました。
さてさて…どんなもんだったでしょうか?w

展開から分かる通り、随分ダラダラと長くやってきたこの『無限の黄昏 幽玄の月』も、もうすぐクライマックスです。
最後まで気を抜かずに書いていこうと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します~!!

あ、一応言っておきますけど、ちゃんとハッピーエンドですよ?
うん、ホントホントですw


以下は拍手のお返事になりま~す!(´∀`)


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~(・∀・)

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をありがとうございます~v
風邪の方はお陰様で何とか治まりました。某Cさんもインフルじゃなかったみたいですし、お互い良かったですw
私の方は持病の関係でもう少し症状が長引きそうですが、それもあと少しなんじゃないかな?
季節の変わり目は身体を壊しやすいので、Rosebank様も気を付けて下さいね~!

『無限の黄昏 幽玄の月』もかなり大詰めになってきて、私も日々気合いを入れて続きを書いています。
というか、流石Rosebank様!! 海馬の死亡フラグに気が付きましたね…w
死亡フラグを完全に隠してしまうのは簡単なのですが、それもまたツマラナイので二十三夜の最後にさらっと入れてみましたw
気付かなくてもOK、気付いたら尚OKってとこでしょうか。Rosebank様なら絶対気付くと思っていましたけどね…w
…で、今回のあのラストに繋がる訳です。
死にネタが苦手なRosebank様の為に予め言っておきますが、この物語はちゃんとハッピーエンドで終わるので大丈夫ですよv
余り心配なさらないで下さいませ~(´∀`)

あ、そうそう。コメントにあった『城之内の術を海馬は自分の精神力で破ったのでしょうか?』という質問ですが、まさにその通りでございます。
城之内の側に行きたいという海馬の強い心が術を破ったんですよ。今回の話でもやっていますね。
こういう事を大っぴらに書くと恥ずかしいんで余り大声では言えませんが…、これがまさに『愛の力』ってヤツですwww
あぁ…やっぱり恥ずかしい…(*ノノ)
でも、そんな恥ずかしさ(笑)に負けず、ラストに向けてスパートを掛けていこうと思っています~!

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

第二十四夜

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 救いが…。あんなにも強く望んできた救いが…遠く離れて行く。
 どうすればいい…っ!
 私は一体…どうすればいいと言うのだ…っ!!
 黒龍神よ…教えて下さい。
 一体…どうすれば良いのですか…。
 どうすれば…彼等を救えるのですか。
 私はただ…彼等に幸せになって貰いたかった…それだけなのです。

 




 もしかしたらとんでも無い危機に面しているのかもしれない…。
 海馬は大股で本殿へと歩いて行きながら、そんな事を考えていた。先程からざわつく胸が、その予感を肯定している。だが何故か…海馬は全く焦っていなかった。それどころか今自分が至極冷静な事に、逆に驚きを隠せない。
 救えると分かっているからだろうか。それとも救えぬと分かっているからだろうか。そのどちらかは分からない。それでも海馬は怯まなかった。
 海馬が願っているのはただ一つだけ…。城之内の側にいる、それだけだったから。

「………?」

 やがて本殿に近付くにつれて、何か異様な拒否感を感じて海馬は一旦足を止めた。肌がピリピリする。目の前に見えない壁があるようだ。本能が…それ以上進んではいけないと告げている。

「結界…か…」

 思い当たった現象に、思わずチッと舌打ちをした。
 考えていたよりも、もっとずっと強烈な結界だ。生身の人間が尻込みしそうになるくらいの迫力に、思念体のせとが耐えられる訳が無かったのだ。多分彼は、この先一歩も前に進めなかっただろう。だが海馬は違う。海馬は生きている人間だ。精神面で屈しそうになっても、生身の肉体はそれに対抗する事が出来る。後ずさりしそうになる足を叱咤して、海馬は一歩を踏み出した。
 その途端、ザワザワと背筋に悪寒が走り肌が粟立つ。見た目にはいつもと全く変わりが無い風景なのに、そこは何とも居心地の悪い空間だった。それはまさに城之内の神力そのものと、彼の『ここへは誰も来て欲しく無い』という意志の強さの表れだ。気を抜けば今にも逃げ去ってしまいそうになる気持ちを抑え込んで、海馬は一歩一歩前へ進んでいった。
 何とか本殿へ辿り着き、履き物を脱いで階に足をかける。ビリビリと空気が震えるような気配に逆らい、本殿の扉を両手で掴んで大きく開いた。

「克也…っ!!」

 贖罪の神域特有の濁った光が差し込むのと同時に、海馬の目に城之内の姿が入り込んできて、海馬は思わずその名を叫ぶように呼んだ。
 白い着物に青い袴姿の城之内は、床に正座して此方に背を向けていた。両手に黒炎刀を携え祭壇を仰ぎ見ている。海馬がここに来た事に気付いている癖に、彼は少しも反応しない。それどころか海馬を拒絶する空気が濃くなったような気がする。

「くっ………!!」

 逃げたい…今すぐにでもここから去りたいと訴える本能を宥めて、何とかその場に膝を付いた時だった。ふと…海馬はその黒炎刀の鞘に、二つの鈴が結ばれているのに気が付いた。一つは元々黒炎刀に結ばれていた赤い組紐の鈴。そしてもう一つは、ずっと自分が持っていた青い組紐の鈴だ。
 千年の間、ずっと離れ離れだった鈴が今は一緒に結ばれている。その事実に海馬はドキリと心臓が高鳴るのを感じた。何故だかは分からない…。だが、せとから受け継いだ魂が…そして城之内の持つ刀自身から何かを感じている。
 二つの鈴が揃った黒炎刀は…まるでようやっと目覚めたかのように生き生きと輝いていた。

「克也………?」

 もう一度、今度は弱々しく彼の名を呼ぶと、城之内はそこで漸く振り返ってくれた。海馬の姿を確認して、ふっ…と優しい笑みを零す。けれど…全てを拒否する結界の力は強まる一方だった。

「瀬人…。眠りの術を解いてしまったのか…」

 スッ…と、音も起てずに立ち上がりながら城之内が此方に向き直る。神官姿の彼はいつもとは違う神々しさを纏っており、その威風堂々たる姿に海馬はゴクリと生唾を飲み込んだ。

「馬鹿だな…。あのまま眠っていれば、目覚めた時には既に終わっていたというのに…」
「克也…? 何を…するつもりだ…?」

 座り込んだまま、海馬は恐る恐る城之内に手を伸ばした。強い力に気圧されて立ち上がる事が出来ない。這いずるように少しずつ城之内の側に近寄って…、だがある一点から全く先に進めなくなってしまった。そっと手を近付けると、そこに何か見えない壁のようなものがある事に気付く。ペタリペタリとまるで分厚いガラスを触っているような感触に、海馬は眉を顰めた。

「二重結界だよ。いくらお前でも、もうそこから先には進めない」

 そう言って城之内が笑う。寂しくて…哀しそうな…辛い笑みだった。

「克也…っ。一体何を…するつもりなんだ…っ。とにかくここを開けてくれ…っ!」

 進路を塞ぐ壁に苛ついて、目の前の空気を掌でバンバンと叩く。だが城之内は静かに首を横に振り…そして口を開いた。

「駄目だよ…瀬人。そこは開けてあげられない」
「どうしてだ…っ!!」
「お前を…解放する為だ」

 城之内は笑いながらそう言い、そしてゆっくりと俯いた。持っていた黒炎刀が揺れて、二つの鈴がチリンッ…チリンッ…と軽やかな音を起てる。

「ありがとう…瀬人。お前は紛れも無い救いの巫女だったよ。この千年間、ずっと罪と…闇に捕われていたオレを助けてくれた。お前のお陰でオレは光を取り戻した。自分の立場を思い出した。本当に…感謝しているよ。ありがとうな…」

 心から満足そうにそう言い放つ城之内に、海馬は小さく首を振った。何故だか城之内の言葉を、それ以上聞いてはいけないような気がしたのだ。
 見えない壁に張り付いてイヤイヤをする海馬に、だが城之内は言葉を留める事はしなかった。ふぅ…と軽く嘆息し、天井を仰ぎ見てふわりと微笑む。

「オレはさ…漸く気付いたんだよ。オレの本当の罪とは何かって事にさ。オレは…本当だったら、食人鬼に身を堕とした時点で死ななきゃならなかったんだよなぁ…。あの時せっかく黒龍神が殺してくれようとしたのにさ、生きる切っ掛けを与えられて…それに甘えてしまった。こんなオレでも…死ぬのは怖かったんだよ。だけど罪は罪。オレの本当の罪とは…今まで生き存えて来た事。生きている…それ自体が罪なんだ」
「克也…っ! それは…違う…っ!」
「違わないよ。何も違わない。おめおめと生き存えて…九十九人の贄の巫女の身体を無残に食って、その命をたった十年ぽっちで散らせてしまって…。罪は減るどころか、どんどん増えるばかりだ。救われない食人鬼…それがオレの存在意義だった筈なのに…。それなのに、最後にお前が現れてくれた」

 天井を見上げていた顔を元に戻して、城之内は優しい目線で海馬を見詰めた。どこまでも深く透き通る青い瞳と、強く悲しい光を帯びている琥珀の瞳が交差する。

「本当に…救われたんだよ。お前の存在に…オレの心は救われた。忘れていた愛を思い出した。誰かを大事に想い、守りたいと願う心を取り戻したんだ。自らの手でせとを殺して絶望の淵にいたオレに、お前は再び光を灯してくれたんだよ…。こんなに心から愛しいと思う人がもう一度現れるなんて…思わなかったもんなぁ…」

 城之内の琥珀の瞳が優しく細められた。まるで眩しい光を見るように、海馬の事を見詰めている。

「だからオレは、自分の手でお前を解放する事にしたんだ。お前はここにいちゃいけない。オレに縛られていては…いけないんだ。現世に帰らなくては…」
「や…やめろ…っ! 余計な事はするな…っ!!」
「余計な事じゃないよ。必要な事だ。お前はオレを救ってくれた。だからオレもお前を救う…ただそれだけの事」

 城之内の瞳も…そして言葉も、どこまでも優しい。だが海馬は全身に寒気を感じる程の恐怖に捕われていた。
 いけない…。城之内をこのまましておいては…いけない…っ! 何とか留めなくてはいけない!!
 そう分かっているのに、結界の力で身体が自由に動かない。それがもどかしくて堪らなかった。

「実はな、さっきまで黒龍神と対話してたんだ。本来のオレには黒龍神と直接対話する能力は無いんだが、何とか瀬人を救う方法が無いかと尋ねたらすぐに応えてくれたよ。そして…とても良い事を教えてくれた」
「克…也…っ! ま…待て…っ!!」
「『要石』を用いてこの世界を永久に閉じるんだ…。そうすれば『要石』以外の生きとし生けるものは全て、外界に排出される事になる」
「克也!! 待てと言っているのだ!!」
「ただ一つ問題がある。『要石』を作るには、真の力を取り戻した黒炎刀が必要不可欠なんだ。この柄に付いた二つの鈴…。これはただの鈴じゃない。これもまた神力を纏った、黒炎刀の一部だったんだ。今までずっと離れ離れだった鈴が漸く二つ揃って、黒炎刀も本来の力を取り戻した。これで…やっと…」
「克也!! いいからオレの話も聞いてくれ!!」

 見えない壁に必死に縋り付いて、海馬は城之内に向かって叫んだ。もうこれ以上城之内の与太話など聞きたくなかったし、それ以上聞いても何の希望も見出せない事に感付いていたからである。

「克也…っ。お前が一体何をしようとしているのか…それはオレには分からない。だがどうしようもなく下らない事だという事だけは分かるぞ」
「瀬人…。これは下らなくなんか…」
「下らない!! これが下らなくて、一体何が下らないんだ!! 克也…っ! どうしてオレと一緒に生きてくれようとしてくれないんだ!!」
「瀬人…っ?」
「どうせ一人で死ぬつもりなのだろう…?」
「っ………!!」
「やはりな…。あぁ…いいさ。お前はそれで満足だろうよ。だが残されたオレはどうなる? オレは…救いの巫女だ…っ! この三年間、オレはずっとお前を救おうとして来たんだぞ!! お前と一緒に生きる為に…頑張って来たんだぞ!!」
「瀬…人…」
「どうして生きようとしてくれない!! どうして二人で一緒に現世に帰ろうとしてくれないんだ…っ!!」
「………」

 何とか城之内に生きる希望を見付けて欲しくて、海馬は喉の奥から必死に叫んでいた。拳で目の前の壁を何度も叩き付け、いつの間にか流れていた涙を拭おうともせずに訴える。
 だが城之内は…そんな海馬に対して酷く冷静だった。

「現世に帰って…どうするんだ?」

 泣きそうに笑いながら、だが一粒の涙を見せないまま城之内が口を開く。

「オレは人間では無い。食人鬼だぞ? 現世に帰ってどうする。どうせ新月の晩の飢餓は…耐えられない」
「そんなの…またオレを食べれば…」
「忘れているのか、瀬人。お前がオレに食されても生きていられるのは、この贖罪の神域の力のお陰なんだぞ。現世で同じように食べられてみろ。あっという間に死んでしまう」
「あっ………」
「それで? お前を食べるのは別にいいさ。お前は贄の巫女なんだからな。だが次の新月の晩からは一体誰を食べればいいんだ? 他の巫女か? 神官か? それとも街に住んでいる普通の人間か…?」
「克…也…」
「な? オレはもう戻れないんだよ…瀬人」

 最後にそう言って、城之内はまたニッコリと微笑んだ。悲しそうに…辛そうに…ただ儚く。そんな顔をされればそれ以上何も言えなくて、海馬はただ泣きながら見えない壁に縋る事しか出来なかった。ただどうしても城之内の事を諦め切れず、ドンドンと何度も拳で壁を叩く。何度叩いてもびくともしない透明の壁が、憎くて憎くて仕方が無かった。

「克也…っ。克也…っ」

 何度も呼びかける声に城之内は首を振るだけだ。そして持っていた黒炎刀を前面に掲げると、それまで優しかった瞳をきつくして海馬を見据える。

「瀬人…。マヨイガに戻れ」

 感情の籠もらない声でそう言われて、だが海馬は首を横に振ってそこから離れようとはしなかった。

「嫌だ…っ」
「いいから戻れってば」
「嫌だ…嫌だ…っ!」
「これからオレは要石になるんだ…。それをお前には見せたくないんだよ…瀬人」
「要…石…?」
「そう…要石。この世界の中心にあり、この世界を支え、この世界を収束する者。黒龍神によれば、この贖罪の神域に千年近く存在した者がなれるらしい。要石たる人物に黒炎刀の刃を突き立てて、その命を終わらせた時…その者を中心にこの世界は急速に収束していく。生きとし生けるものは全て現世に戻り、最後には世界は小さな石ころに変わる…。それが要石。この世界の…最後の姿だ」

 信じられない話を聞き呆然とするしかない海馬の前で、城之内はスラリと黒炎刀を鞘から引き抜いた。銀色の刀身が光を反射する。美しく…そして恐ろしい程に。
 煌めく刀身を暫く見ていた城之内は、やがて持っていた刀をその場で一振りした。チリリリンと二つの鈴が清らかな音を出した瞬間、本殿のあちこちから一斉に火の手が上がる。紅の炎は木造の柱や壁を走り、あっという間にその威力を拡大させていった。
 真っ赤に揺らめく炎を目の当たりにし、海馬の瞳が大きく開いていく。

「い…嫌…だ…っ」
「なぁ…瀬人。この贖罪の神域に千年近く存在した者って…オレしかいないじゃんか。そうだろう? だからオレは要石になる。要石になって…お前を解放する」
「や…嫌だ…っ。克也…嫌だ…っ!」
「反対しても無駄だ。オレはもう決めたんだよ。だから…もう戻ってくれ…瀬人。お前にオレが要石になる姿を見せたくはない」
「嫌だ…っ! こんな事は…もう…止めてくれ…っ!」
「瀬人、聞き分けてくれ。それに…今更止めてどうなる? またあの生活に戻るのか? 十年…いやあと七年でお前は死ぬっていうのに。お前を死なせて…次の新しい贄の巫女を迎えて…またあの無駄な日々を過ごせと? そんなものは御免被る」
「一人で…たった一人で死なせろと言うのか…お前は…っ!! それこそ御免被る!!」

 流石に真っ直ぐに視線を向けられなくなった城之内が顔を背けたのに対し、海馬はいつまでも城之内の姿を見詰めていた。拳を硬く握り締め、目の前の壁をしつこく何度も叩き続ける。城之内の側に行きたい…と、ただそれだけを願い続けて。

「オレは救いの巫女だ…! お前と共に在る者だ…っ!! お前を一人で死なせるのを見過ごすなんて…何が救いの巫女だ!!」
「瀬人…」
「せめて…あぁ…せめて…! お前と共に戻る事が叶わぬのなら…せめてお前と共に逝かせてくれ…っ!! 克也!!」
「なっ…! 瀬人…っ!?」

 微塵も揺らがない海馬の覚悟。その余りに強い覚悟に驚きで目を瞠る城之内の目の前で、海馬はただただ必死に壁を叩き続けた。ピシリと…見えない亀裂が走ったような音が辺りに響く。

「側に…側にいさせてくれ…克也…っ!! オレはただ…お前と共にいたいだけなんだ…っ!!」

 結界が歪み空間が揺れる。海馬の想いが城之内の神力を無力化しようとしていた。そしてその感触に海馬は覚えがあった。今朝、あの眠りの術を破ったあの瞬間の…。

「克也…っ!! オレも連れて行け…克也…!! 克也!!」

 大声で城之内の名前を呼んだ瞬間、それはバリンッという大きな音を起てて粉々に砕け散った。途端に自由になった身体を起こして、海馬が城之内に駆け寄る。首筋に白い腕を絡め、驚きで半開きになっている城之内の唇に夢中で自らの唇を押し付けた。
 周りの炎が熱い。熱が今にも二人を飲み込もうとしている。だが海馬は何も怖く無かった。城之内がここにいる…それだけで全てが満たされていくのを感じていた。

「克也…どうか…側に…」

 昨夜…初めて純粋に結ばれた直後のあの瞬間。気を失う直前に漏らした言葉をもう一度囁く。そしてそれを聞いた瞬間、城之内はくしゃりと顔を歪め…そしてホロリと涙を一粒零した。

「馬鹿だな…お前。本当に…馬鹿だ」
「馬鹿とは…失礼だな。ただお前を愛しているだけだ…克也」

 ホロリホロリと、涙は続けて流れ出てくる。嬉しいのか…それとも悲しいのか…、城之内は複雑な顔をして笑っていた。

「地獄を彷徨うのは…オレ一人でいいというのに…」
「二人で彷徨えば、地獄もそれなりに楽しいかもしれないな」
「戯れ言を…。ここで戻れば…現世に帰れるんだぞ…」
「お前を失って…一人で現世に戻っても何の意味もない。お前を失った時、オレもまた死ぬんだ」
「瀬人………っ!!」

 酷く泣きそうな声で名前を呼び、城之内は海馬の身体を強く抱き締めた。その力に心底安心して、海馬は城之内の首筋に頬を擦り寄せる。

「瀬人…。怖く…無いのかよ」
「怖くは無い。お前が一緒だからな…克也」
「オレと一緒に死ぬ事が…お前の本意だったというのか…?」
「死ぬ事は本意では無い。お前と共に在る事こそ本意だ」
「共に…石になると?」
「あぁ」
「小さな石ころだぞ…?」
「構わない」
「お前は…本当に…馬鹿な事を…っ。食人鬼を愛したばかりに…その鬼と心中だなんて…っ。こんな…こんな場所で…お前の人生の幕を引かなきゃならなくなるなんて…」
「馬鹿はお前だ。オレが引くのは人生の幕では無い。この贖罪の神域という悲劇の世界の幕だ。もう二度と…誰もこんな悲しい想いなんてしてはいけない。鬼も…人間も…全ての者が…だ」

 海馬の言葉に、城之内が視線を上げた。その気配に海馬も顔を上げて城之内を見る。青い瞳と…琥珀の瞳が交差して…重なった。一瞬の静寂。他に何の音も聞こえない。周りで燃え盛っている炎の熱も、今だけは全く感じられなかった。
 まるで時が止まったかのような静けさの中で、海馬は己の背中の中心に、鋭い刃の切っ先が当たっている事に気付く。背後に腕を回した城之内が黒炎刀を今にも突き立てようとしているのだ。
 怖くは無い。それは本当だ。ただ少し…ほんの少しだけ…悲しいと感じる。それだけだった。

「瀬人…愛してるよ…」
「あぁ…。オレも愛している…克也」
「目を…瞑っておいで。すぐ済むから…」

 優しく…まるで眠りに誘うかのような深い声に、海馬は安心してコクリと頷いた。そして言われた通りに目を瞑り、目の前の城之内の身体に寄り掛かる。

 チリ――――――ン………。

 あぁ…鈴の音だ…。済まない…せと…。オレは…克也を助ける事が出来なかった…。救いの巫女だというのに…全く情けないな。だが…克也を一人で死なせはしない。本当は一緒に現世に戻りたかったが…それが出来ないのならせめて一緒に逝く事にする。もう二度と、こいつを一人にはしない。ずっと…ずっと…克也と一緒にいてやるから…。だから…許してくれ…せと…。

『う…そ…だ…っ。嘘だ…っ! 嘘だ…っ!! 私は…私はこんな結末を望んでたんじゃない…っ!! こんな…こんな事…嘘だっ………!!』

 背後から悲痛な叫び声が聞こえて来たのと、背中から胸にかけて焼け付くような熱が通り抜けていったのを感じたのは、ほぼ一緒だった。
 まるで今周りで燃え盛っている紅蓮の炎のような…熱くて冷たい熱。それが黒炎刀の刃だと知ったのは、迫り上がる血泡をゴポリ…と口から吐き出した後だった。

カイ瀬人

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運命と必然の間で
 



 その男の事を、酷く疎ましいと思っていた。

 自分と良く似たその姿。まるで鏡の向こうから遣って来たかのように感じられる造形。違うのはその髪の毛が酷く長ったらしい事と、髪の色が自分とは違って少々赤味が強い事…。そして常に目元を隠している事だけだ。外見的にはそれしか違いが無い。ただ内面は違う。その男は…常に明るくて、そして酷く馴れ馴れしかった。
 常日頃から忙しく遊んでいる暇なぞ無いというのに、奴はオレにピッタリ引っ付いて離れない。それだけでもウザイというのに「瀬人、瀬人」とファーストネームで呼んで来る事に関しても頭に来る。誰が名前で呼んで良いなんて許したのだ。オレは自分の名前を他人に呼ばれる事を、他の誰にも許した事など無い。それが例え…自分に生き写しの相手であってもだ。
 だからオレは何度も「名前で呼ぶな」と奴にきつく言い含めてきた。だが奴はその度に「またその事か」と軽く受け流し、少しも態度を改めようとしない。それどころかますます親しげに懐いてくる有様だ。

 そういう奴の行動の一つ一つが、オレの精神を苛立たせた。あからさまに嫌がって見せても、奴は決してへこたれない。相変わらす「瀬人」と名を呼び、笑顔で近寄ってくる。
 一昨日も…昨日も…今日も…。そして今だって。

「瀬人…? 何故そんなに俺の事を避けるんだ?」

 社長室にふらりと現れた奴に、オレは椅子から立ち上がりながらキツク睨み付けた。仕事の邪魔をされそうだったので手先だけでシッシッと追い返すようにすれば、ほんの少しだけ声のトーンを落として珍しい事を言ってくる。
 ふん…。そんな寂しそうな声を出されてもオレは騙されないぞ。実際いつもの奴はヘラヘラと笑ってオレに纏わり付くし、今だってくいっと上がった口角はびくともしない。何とも腹立たしい男だ。

「避ける? オレが貴様をか?」
「そうだ」
「冗談も程々にしておけ。オレがそんな事をする筈無いだろう」
「そんな事はないぞ。ほら…また避けている」

 奴の側を通り過ぎようとした時、腕を強く掴まれて歩みが止まってしまった。その拍子に持っていた資料を床に落として、せっかく束ねていたそれらの紙が四方八方に広がる様を目の当たりにしてしまう。床に広がる紙を見て、思わずチッと舌打ちをしてしまった。
 本当に…どこまで迷惑な男なんだ、コイツは!!

「急に掴むな! 大事な書類を落としてしまっただろう!!」

 怒りに任せて大声で怒鳴っても、目の前の男は全く反省の色も見せずにいつもの笑みを見せている。

「書類なら後で拾ってやる。それより今はもっと大事な話をするべきだ」
「仕事以上に大事なものなんてあるか! オレは忙しいんだ。貴様の下らない話に付き合っている暇なぞ無い!」
「下らなくなんかないぞ。これからも俺達が上手く付き合っていく為には必要な…」
「付き合う? 誰と誰がだ?」
「俺とお前とがだ」
「下らない…。それこそ戯れ言だ。誰が貴様のように出自もハッキリしないような奴と付き合うものか」
「不確定要素が高いものを嫌うお前の性格は、もう把握済みだけどな。だが本当に俺の存在を嫌っているのならば、ここまで近付けてくれもしないだろう。お前はそういう人間だ」
「分かったような口を…っ」
「それに俺には分かっている。お前が俺を嫌ってなどいない事をな…。ただお前は、俺の存在を認めたくないだけなんだ」
「なん…だと…っ」

 腕を強く掴まれたまま、オレは目の前の男を睨み付けた。睨んだ…と言っても奴の視線と直接交わる訳では無い。その瞳は影の如く隠されているからだ。全く持って忌々しい。瞳から真意を探る事すら出来やしない。
 せめてもの抗議にと精一杯の力を込めて睨み付けてやるが、奴は全く意に介しはしなかった。それどころかますます笑みを深くする。オレが一番嫌いな…にやつく笑みを。

「どういう意味だ…それは…っ」

 男がニヤニヤしているのが気にくわなくてそう問い掛けると、奴はムカツク事にひょいっと肩を竦めておどけてみせた。
 真意が…見えない。コイツが一体何を考えているのかがさっぱり分からなくてイライラする。

「言ったまんまだが? お前はオレの存在を認めたく無いんだ。だから常にオレを無視し、いないように振る舞い、わざと気に掛けないようにしている。最初はただ単に嫌われているだけかと思ったんだが…」
「あぁ。全く持ってその通りだ」
「違うだろう…瀬人? それは違う。それはお前が本当に嫌いな相手に対して取る行動では無い」
「そ…そんな事…っ」
「それに気付いた時、では何故だ…と俺は考えた訳だ。そして漸く答えが出た」
「っ………」
「お前…。俺の存在が…怖いのか?」

 ビクリと身体が震えた。何か聞いてはいけない事を…聞いたような気がした。

「な…何…を…」
「あぁ、そうだ。お前は俺が怖いのだ。俺の存在が…不確定で曖昧な俺の存在が怖いだけなんだ」
「なっ………!」
「いつお前の元を去るやもしれない、いつ消えるかもしれない、いつ無かった事になるかもしれない俺という存在が…怖くて堪らないんだ。そうだろう?」
「ち、違う…っ。そんな…事…っ」
「確かに俺の存在は不確かだ。俺もいつまでこの場所にいられるか…分からない」
「っ………!!」
「別れを恐れるお前の気持ちも良く分かる。正直俺だってその日が来るのが怖い。だけどな…瀬人」

 男が身体の向きを変えてオレに向き合った。見えない視線が見えるような気がする。真っ直ぐに…じっと…真摯な視線が。

「いつか来る別れを恐れているだけでは、せっかくの出会いが無駄になるんだぞ」
「え………?」
「身を置く世界が違う我らが今一緒にいるという事は、この出会いにはそれなりに深い意味があるという事だ。例えこの先に永遠の別れが待ち構えていようと、この出会いは決して無駄な事ではない。ん? そうは思わんか…瀬人?」

 ニヤリと…口元に浮かぶ笑み。だがどうしてだろうか? 先程より巫山戯た笑いでは無いし…それに何故だか余り腹が立たない。

「どうせお前の事だ。いつか別れなければならないのなら、初めから仲良くなどならなければ良いとでも思っていたのだろう」
「っ………!」
「ほらな、やっぱりだ。だがそれでは出会った意味が全く無くなる。別れる事にでは無く…出会う事にこそ意味があるというのに…だ」
「出会う事の…意味…?」
「そうだ。せっかく意味のある出会いをしたというのに、お前はそれを無にしようとしていたのだ。勿体無い事だぞ? もっと俺を信用して利用するがいい」
「だ…だが…」
「あーもう! 難しい事は考えるな、瀬人。俺達が出会ったのは、運命であり…必然であったのだ。例えそれが永遠では無くても…な」
「運命であり…必然…」
「そうだ瀬人。別れを…恐れるな」

 目の前の男がふわりと笑っている。厭味の無い…優しくて男らしい笑みだ。その笑みに何故だが至極安心してホッと息を吐いたら、掴まれていた腕を引かれてそのまま強く抱き締められてしまった。温かな男の体温に包まれながら、オレもその背に腕を回す。
 そうだ…。本当は…ずっとこうしたかったのだ。ただこの男が今にも消えてしまいそうに見えて、怖かっただけだった。



 別れはいつか必ずやってくるだろう。だがオレはもうそれを恐れない。
 運命と必然の間で…この男と共に生きる覚悟をしたからな。その日が来るのを一日でも遅らせる為に、精々必死に足掻いてみせようと…そう決めた。

風邪っぴきさんです...orz

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風邪っぴきの二礼です、こんばんは。

月曜日の夜くらいから、何か喉がイガイガしておりました。
そして火曜日の朝、喉は見事に腫れ上がり熱が出始めました…。
日が暮れると同時に急激に熱が上がり、一時は38度を超える始末…;
正直…怠いですw
でも薬を飲んでビタミンCを補給し、一日ゆっくり休んでおりましたら、何とか良くなってきたようです。
今朝は喉の痛みも少し引いて(まだ痛いですけど…w)、熱も微熱状態になったのでもう大丈夫\(^o^)/
外は春のような暖かさなのに、風邪を引いた為に引き籠もり状態ですよ…w
てか、熱が上がってた時は背中がぞくぞくして、暖かさを全く感じられませんでしたw
季節の変わり目は体調を崩しやすいって言いますけど、本当に弱いんだなぁ~と改めて実感した次第です(´∀`;
皆さんもこの季節の風邪にはお気を付け下さいませ~!
(てか、某Cさんがインフルっぽいんだけど…大丈夫だろうか?)


長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第二十三夜をUPしました。
ちょっと短いんですけど、体調不良に付きご容赦を。
…というより、これ以上に良い切り場所が無かっただけなんですけどね…w
さて、ここからいよいよ本当の意味での終盤です。
城之内君の決意とか、海馬の救いの意味とか、せとの役目とか、一気に纏めていきますんで宜しくお願いします!!
つか、もう余り口を開かない方がいいですね…(´m`)
余り長く書くとボロが出るので(笑)、今度からはここでの説明も簡単にしよう…w


以下は拍手のお返事になりますお~(´ω`)


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!!(゜∇゜)

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をありがとうございます。
意図していなかった事とは言え、平成22年2月22日に第22夜UPは流石に凄かったですね…w
どうせなら日記の更新とかも22時22分UPとかにすれば良かったです。
(これも全く意図していなかった事なのですが、日記更新時間が21時22分だったんですよねーw あと一時間ずらせば良かったです…w)
それから『小春日和』一周年に関してのお祝いのコメントも、どうもありがとうございました~!
時が経つのは本当に早いですね…!
これからものんびりと、そして自分好みの城海を一杯書いていこうと思っていますので、どうぞ生温かく見守っていて下さいませ(´∀`)

『無限の黄昏 幽玄の月』では、幸せで悲しいセックスを感じ取って頂けたようで、凄く嬉しいです!
まさにRosebank様が仰る『死地に赴く兵士』そのものなんですよね~。
ただ如何に海馬にその事を気付かせないようにするのかが、今回の一番難しかったところでした。
でもこんな事で「難しい」なんては言っていられなくて、これから最高に難しい場面が控えているんですよ…w
頭に浮かぶそのシーンを上手く表せる事が出来るがどうかは…ちょっと自信がありません(´―`;
今まで書いてきた長編の中でも…もしかしたら一番難しいシーンかもしれないんで…。
でも、少しでも脳裏のイメージに近い文章を頑張って書いて行こうと思っています!

誤字指摘もありがとうございますw 本当に助かります(´∀`)
結構何度も見返しているのですが、どうしても見逃しが出て来ちゃうんですよね~。
目が滑るというか何というか…;
指摘されて初めて気が付いて「こんなところに伏兵が!!」と驚くのはいつもの事ですw

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

第二十三夜

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 幸せだった夜が明けて、悲劇の朝が幕を開ける。
 動き出した歯車はもう止まらない。
 私の力では…もう無理なのだ。
 この歯車を止める事が出来るのは…、いや、歯車の向きを変える事が出来るのは…ただ一人だけ。
 救いの巫女よ…どうかどうか…。
 私はもう…誰の涙も見たくは無い…のだ…。

 




「――――よ。オレの………を用意……くれ」

 明け方、誰かが自分から離れて行く気配に海馬は目を覚ました。未だ重い瞼を少しだけ開けて視線を巡らすと、薄明るくなってきた部屋の中で一糸纏わぬ姿の城之内が布団から起き上がっているのが見える。そういえば先程城之内が何か言っているのが聞こえたが、夢うつつで聞いていた為、何と言っていたのかはっきりとは聞こえなかった。

「………」

 いつもは目が覚めるとすぐにでも行動出来る海馬だが、今日に限って身体が重くて自由にならない。気を抜くとすぐにでもまた眠りに誘い込まれそうになるのを何とか耐えて、城之内の行動を黙って見詰めていた。
 全裸で起き上がった城之内が枕元に手を伸ばし、そこに用意されていた着物に袖を通す。身に着けられたそれを見て、海馬は自分は未だ眠りの中にいて夢を見ているのだと思った。城之内が身に着けた着物がいつもの黒い着流しではなく、白い着物と青い袴の神官着だったからだ。
 見慣れただらしのない風体ではなくキッチリと着込まれたその姿に、知らず嘆息する。
 昨夜…城之内と初めて純粋に肌を合わせた。多分そのせいなのだろう…と海馬は思う。記憶が千年前の『せと』と混乱しているのだと感じたのだ。

 これは千年前のせとの記憶。多分初めて結ばれた夜の、次の日の朝の光景だ。そうでないと城之内のこの格好の説明が付かない。自分は今、千年前にせとが見ていた光景を夢として見ているだけ…。きっとそうに違いない。

 そう思ったら何故だか少し安心し、海馬は城之内に向かって手を伸ばした。「克也…」と呼ぶと、腰紐をギュッと縛っていた城之内が驚いたように振り返る。そして海馬の顔を確認すると、苦笑しながら近付いて来て枕元に座り込んだ。

「ゴメン…。起こしちゃったな」
「いや…大丈夫だ…」

 ふわりと笑みを浮かべながら首を振って応えると、城之内も同じように笑ってくれる。そして大きな手で前髪を掻き上げられた。現れた額に掠めるようにキスをされ、そのまま掌で視界を隠されてしまう。ひやりとした体温が、寝起きで火照った肌に心地良かった。

「まだ起きるには早い時間だ…。もう少しゆっくり眠っておいで」
「克也…?」
「大丈夫だ。起きたらきっと…全て終わっている。何もかも悪い夢だったんだ…」
「かつ…や…」
「愛してるよ…」
「あぁ…。オレも…だ…。オレも…愛してる…克也…」

 視界が闇に閉ざされている所為だろうか。目覚め掛けた意識がまたウトウトと眠くなる。大きな掌の向こうで城之内が何かブツブツ呟いているのが耳に入ってきた。何だろう…何を言っているのだろう…。海馬には全く理解出来なかったが、その言霊の調べはとても心地が良くてうっとりする。何だかとても安心して、海馬は再び眠りの世界へと引き摺り込まれて行った。
 本当だったらそのまま深く眠ってしまっていただろう。完全に深い眠りに落ちる直前に聞いた城之内の言葉が、海馬の脳裏に届いていなければ…。

「本当に…愛しているよ。おやすみ…瀬人」

 瀬人…瀬人…瀬人…。今、城之内は瀬人と言った。『せと』ではなく『瀬人』と。
 それにいつものあの鈴の音が聞こえなかった。過去の記憶を垣間見る時は、いつも決まってあの鈴の音が頭に響くと言うのに。それが意味する事は…今見た事は全て現実だという事…。
 その事を認識した途端、海馬は落ちかけていた意識を取り戻した。そして急いで目を開けようとしたのだが、それが叶わない事に気付き内心舌打ちをする。
 気を抜けば今すぐにでも眠りに落ちてしまいそうに気怠い。心地良い眠気が海馬の全身を覆っている。だが海馬はそれに全力で抵抗していた。この眠気は自然な眠気では無いと悟ったからだ。
 先程城之内が呟いていた言霊。多分アレが人を眠らす為の術か何かなのだろう。思えば彼は黒龍神に愛されて生まれ、人々を守る神力を持った神官だった。食人鬼に身を堕としたとは言え、このくらいの術は城之内にとっては大した事では無いのだろう。それに寝起きに聞いたあの言葉。普段は着ていない神官着をマヨイガに用意するように言っていたのだったら、話は全て繋がる。

「ふざ…ける…な…っ!」

 ギリギリと歯を食いしばり、大波のように襲う眠気に必死に抗う。黒龍神に仕える神官として、そして贄の巫女としての修行は積んできたが、神力に関しては城之内に遠く及ばない。特別な術など何一つ使えず、ただ城之内の食欲を満たす事しか出来ない。それでも海馬は信じていた。救いの巫女として、自分にしか出来ない事があると…ずっとそう信じてきた。

「くっ…っ!! か…つ…や…っ!! 克也…っ!!」

 閉ざされそうになる意識に反発し、大声で城之内の名前を呼んだ時だった。突然目の前で、パンッという何かが破裂したような音が聞こえ、それと同時に急に意識がクリアになった。先程まであれほど重かった身体も嘘のように軽くなる。バチッと目を開けて慌てて辺りを見回しても、既に城之内の姿は見えない。だがそれ程時間は経っていないようだ。

「くそっ…! 巫山戯おって…っ!!」

 普段余り口にしない汚い言葉を吐きながら、海馬は急いで布団から出て立ち上がった。ふと、枕元に自分用の巫女着が用意されているのに気付く。一瞬無視してそのまま単衣で城之内を捜しに行こうかと思ったが、思い直してちゃんと着替える事にした。
 気持ちが焦って手が震える。それでも海馬は大きく息を吐き、しっかりと巫女着を身に着けた。帯を締めながら「大丈夫…大丈夫…」と自分に言い聞かせるように呟く。

 城之内は…オレを愛してると言ってくれた。オレにありがとうと言ってくれた。そして…優しく抱いてくれた。
 そんな城之内がオレを置いて行く筈が無い…っ!!

 そこまで考えて…海馬はふと手を止めた。そして、今自分が何を考えていたのかを思い返してみる。

「置いて行く…? 城之内がオレを置いて行くと…オレは今、そう考えたのか?」

 何故そう考えたのか分からない。だがどうしてもその考えが頭から離れなかった。
 城之内の存在が遠く離れて行く…。だがそんな事、どうしたって許せる筈が無い。自分は救いの巫女。城之内を救う存在だった筈だ…っ!!
 やはりもたもたしてはいられないと、急いで着付けを終えて海馬は自分の手首を探った。そこに結びつけられていた筈の青い組紐の鈴を、いつものように腰に結わえようとしたのだが…。だがそこには何も無かった。

「………っ!?」

 どこかに落としたのかと思って足元を見回しても、どこにも鈴は落ちていない。

「鈴が…っ!!」

 途端に泣きそうになって、跪いて辺りを探ってみる。だがどんなに捜しても、あの青い組紐の鈴はどこにも落ちていなかった。
 大事なものなのだ。アレはとても大事なもの。あの鈴が無いと何故だかとても恐ろしい事が起きるような気がして、海馬は気が気では無かった。

 チリ――――――ン………。

 無いと分かっていても諦める事が出来ず必死に捜している時に、ふといつものあの鈴の音が辺りに響いた。昨日からずっと聞いていなかった為、妙に懐かしく感じるその音色に海馬は顔を上げる。そして庭先に佇むせとの姿を見て、海馬はクシャリと顔を歪めた。

「せと…っ。克也が…いなくなって…それから…鈴が…っ。」

 半ば混乱しかかって、海馬はせとに助けを求めた。城之内がいなくなり、大事にしていた鈴も無くなり、もはや何から手を付けていいのか分からなくなっていたのである。だが当のせとは落ち着き払って、焦りを隠せない海馬の元に静かに歩み寄って来た。そしてその場に膝を付くと、海馬の顔を覗き込んで真剣な声で言葉を放つ。

『救いの巫女よ…。落ち着いて聞きなさい』
「せ…と…?」
『鈴は克也が持って行ったようだ。そして今、克也は黒龍神社の本殿に籠もって詔を上げ、何かを祈っている。側に行って内容を聞き出したかったのだが、強い結界に阻まれて思念体である私では側に寄る事が出来ない。けれどお前ならその結界を破れる筈…。今から克也の元に行ってあげなさい』
「克也が…祈りを…?」
『そう。黒龍神に何かを懸命に祈っている。それが何かは分からぬが…よからぬ事である事だけは確かだろう』
「よからぬ事って…一体何を…」
『救いの巫女よ…ここが正念場だ。克也を救えるかどうかは…これからのお前の行動一つで決まるのだ』
「っ………!」
『お前のもたらす救いが一体どんな形なのか…それは私にも分からない。この先、克也とどのような決着を迎えるのかも…全く見えないのだ。だけれども…黒龍神の預言は絶対だ。そなたが克也を救うのだよ…救いの巫女、いや海馬瀬人よ…』
「せと………」

 そうだ…。こんなところでパニックに陥っている暇なぞ無い筈だ。三年前のあの日…自分自身に強く誓ったではないか。
 必ず城之内を救ってみせると!!
 第百代目の贄の巫女が救いの巫女となって鬼を救う…それは黒龍神が残した絶対的な預言。けれど救いの形が不明のままで、どういう意味での救いなのかはまだ誰にも分から無い。
 だが海馬はもう何も怖くは無かった。顔を上げて、せとの脇を通り過ぎ、マヨイガを出て本殿へと向かう。

 何が起きても、もう恐れはしない。怯みもしない。ただこの命を掛けてでも城之内克也を救ってみせると…そう強く決意していた。

祝!! 1周年~!!

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もう一年経った二礼です、こんばんは。

つい先頃気付いたのですが…昨日2月21日でどうやら『小春日和』は1周年を迎えていたらしいです。

おめでとう~!!(゜∇゜)パチパチ

そういえばこの時期だったよな~と思ってログを確認したら、ちゃんとしたサイト開設日は2月21日になっていたんですよね。
その前にはもういくつかの小説をUPしていたようですが、TOPページやらインデックスやらを設けてきちんとしたサイトの形にしたのが21日だったんです。
うん…すっかり忘れていましたw
てか昨日気付けば良かったな。せっかくUP日がずれたっていうのに、勿体無い事をしました。

それにしてももう1年なんですね~。時が経つのは早いなぁ…;
1年前のこの頃は、小説を書くのなんて約8年ぶりというブランクを抱えていて、かなり四苦八苦していたような覚えがあります。
いや、勿論今でも四苦八苦しているのですが…(´∀`;
でも今は自分の文章形態とかも大分定まって来たので、初期の頃よりはずっと小説を書くのが楽になっていますね~。
これを期にと当初書いていた小説を読み返してみたのですが…何だか色々と酷い;
手探りで自分の形態を捜しているのが一目瞭然ですねw
『勇気の証明』とか、本当は物凄く書き直したいんです!!
…でも、面倒臭いのと時間が無いのでやりませんけどね…(´―`;

勢いで始めたこのサイトも、何とか1周年を迎える事が出来ました。
くじけそうになった事もありますが、何とか皆様のお陰でここまで成長する事が出来たと思っています。
皆様からの拍手やコメントやメール等にどれだけ助けられたか知れません。
本当にありがとうございました~!!
この調子でこれからも頑張っていこうと思っています。
のんびり甘々サイトですが、どうぞこれからも宜しくお願い致します~v


長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第二十二夜をUPしました。
平成二十二年二月二十二日に第二十二話UPか…。よく出来た偶然だw

さて…与太話は置いておいて、久々のラブラブエロです~(*´д`*)
いつもの二礼に比べればあっさり目かもしれませんが、まぁ…これくらいが本当は丁度良いんじゃないかとw
ていうかですね。これが直接ラストに繋がるのだったら、私ももっと濃ゆいエロを目指したと思うんです。
ハッピーエンドを目前に控えたラブラブエロとか大好物なんでw
でも、もうお気付きの方もいらっしゃると思いますが、これで終わりじゃぁ無いんですよねぇ…。
勿論目指すはハッピーエンドなんですけど、海馬と城之内にはもうちょっと頑張って貰わないとね。

そういやこれもさっき気付いた事なのですが、容量的には既に『奇跡の証明』の本編分を上回っている事が判明しました。
こ…こんなに長く書くつもりは無かったんだけど…?
おかしいなぁ…(´・∀・`)


以下は拍手のお返事でございまっす!!


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございます~(*'-')

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をありがとでした~v
鬼×人間もうそうですけど、異種族間のエロって何か背徳的な感じがして良いですよね~(*´д`*)
鬼とか吸血鬼とか妖怪とか神とか天使とか悪魔とか、考えれば考えるだけ萌えが無限に出て来ますw
本来、種族的には決して交わってはいけない両者の間に愛が芽生えて、理を超えて結ばれるというパターンは私も大好物です!!
人間や天使等一見か弱そうに見える方が受けの場合が多いですが、たまに逆に萌える事もありますね。
例えばRosebank様がコメントで言っていた『ぬ/~/べ/~』に関しては、私はRosebank様とは逆のCPに萌えていました…w
絶大的な力を持った奴を屈服させるのにもまた萌えてしまい…って、あれ? やっぱりSなの? みたいな(´∀`;
まぁ、異種族間恋愛に限らず、禁断の愛って構図は最高って事ですよねw
(ただし個人的には近親相姦ネタは少し苦手です…(´―`;)

それから梅見の事についてもコメントありがとうございます。
お天気も良かったし気温も温かかったので、良いお散歩になりました~。
お陰で筋肉痛が酷いですが…w
これは二礼個人の意見なのですが、実は私は桜より梅の方が好きなんです。
桜も華やかさも大好きなのですが、梅のしとやかさや桜にはない薫り高い芳香等が堪らなく好みなんですよね~。
この季節は春が近付いているとは言ってもまだまだ風が寒くて、殆どの人はわざわざ外に出て梅の花見に行こうという人はいません。
いるとしたら写真愛好家や、熟年カップル、草花愛好家と言ったところでしょうか。
梅の花は満開なのですが、桜の季節ほどの賑わいが無くてとても静かなんですよね。
そんな雰囲気もまた好きで、風に乗って流れてくる梅の香りを楽しみながらゆっくり散歩するのが趣味なのです(*'-')
この季節が終われば本格的に春が来て、桜が満開に咲くでしょうね~v
そうしたら今度は桜の花見に行こうと思っていますw

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

*第二十二夜

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 運命の歯車が動き出す。
 救いの扉が開き、時が繋がる。
 全てが丸く収まって幸せを手に入れたように感じても、それでも未だ…試練はあるのだ。
 救いの巫女よ…。
 そなたにそれが…乗り切られるであろうか?

 




 城之内の冷たい掌が、海馬の肌の上を辿っていく。白絹の単衣は既に肌蹴られ、申し訳程度に両腕に引っ掛かっているだけだ。前面が完全に露わにされ、薄い胸や腹の上を城之内の指先や舌が這う度にビクビクと震えてしまう。半分は性的に感じている為…、そしてもう半分は食される恐怖を思い出しているからだ。
 それでも海馬は抵抗しなかった。気を抜くと城之内の身体を押し返そうとする腕を強い意志で抑え付けて、布団のシーツをキュッと掴むことで耐える。フルフルと腕が震える度に、手首に結び付けた青い組紐の鈴がチリチリと鳴った。

「あっ…ん…」

 単衣の袂に入れてあったその鈴を海馬の手首に付けたのは、誰であろう城之内であった。海馬が感じている様を知りたいというのがその理由だったのだが、自分が身動きする度に鳴る鈴の音は、海馬に取っては恥ずかしい事この上無いものだ。いつもの新月の晩と違って快感だけを与えられている状況は、自分の痴態を余すところ無く見られているようで落ち着かない。

「はっ…。あっ…」

 知らず知らず、やがて来るであろう痛みに緊張し硬くなる身体。けれどもじっくりと施される愛撫に、少しずつではあるが緊張も解けて来た。城之内の指や唇や舌が自らの肌に触れる度に、内側から熱が籠もってくる。じわじわと広がるその熱に、海馬は熱い吐息を吐き出した。

「克…也…っ」
「うん。可愛いよ瀬人。ここも…美味しそうだ」
「んぁっ…!?」

 突然硬くなった乳首を指先で摘まれて、海馬は湧き上がった快感にビクリと身体を跳ねさせた。親指と人差し指でコリコリと弄られるだけで、耐えられない快感が脳内に届く。もう片方も同じように弄られ、今まで弄られて赤くなった乳首はそのまま城之内の口に含まれてしまった。チュピッ…と吸われると、それだけでジンッ…とした快感が背筋に走り頭が真っ白になってしまう。

「あっ…ぅ…! ふっ…う…んっ」

 むず痒い…それでいて優しい愛撫に海馬の身体は耐えきれなかった。ビクビクと城之内に触れられる度に小さく震えて、甘い喘ぎ声を漏らす。
 快感には慣れていると思っていた。月に一度の新月の晩。情欲に支配された海馬の身体は、ちょっとした事でも非常に感じやすくなっていて、あの痛みと苦しみの中でも快感を感じ何度も射精してしまう。三年間続いたその行為に海馬は慣れていたし、それ以上に凄まじい性行為は無いと思っていた。だから城之内と結ばれる事は嬉しかったが、普通のセックス自体を甘く見ていたところがあったのだ。

 それなのに…まさかこんなに感じてしまうなんて…っ!!

 身を食われるという痛みのない純粋な快楽。一つ一つの愛撫が海馬に取っては初体験で、受け止めきれない快感に戸惑ってしまう。新月の晩はどんなに痛くても苦しくてもじっとしている事が出来るというのに、今の海馬はそれが全く出来ないでいた。体内を暴走する熱に戸惑い混乱して身を捩る。知らず…目尻に涙が溜まって視界も歪んでいた。

「んっ…! あぁっ…ぅ…。克也ぁ…っ」

 ハァハァと荒い息の中で城之内の名前を呼ぶと、優しく微笑んだ城之内が海馬の髪の毛をサワリと撫でる。紅潮した頬に冷たい唇を押し付け、そのまま移動して海馬に口吻をした。薄く開いた唇の間から舌を差し込み、ぬるりと口内を舐め回す。怯えたように引っ込んだ海馬の舌を誘い出し根本から絡み付いた。二人分の唾液が混ざり溢れて、ピチャピチャという濡れた音が辺りに響く。

「んふっ…! はふっ…んっ…ぅ…うっ…んっ!」

 息苦しさでクラリと回る視界の中で、海馬は夢中で城之内の首にしがみついた。チリリッ…と手首の鈴が軽やかに鳴る。
 口の周りが唾液でベタベタになる程絡み合い、最後にチュルリと舌を強く吸ってから城之内が離れて行く。はふっ…と熱い吐息を吐きながら、海馬はそのまま城之内の首筋に顔を埋めた。鼻孔に届いた城之内の匂いを胸一杯に吸って、感じた愛しさに精一杯身体を密着させる。スリスリと鼻先を擦り寄せていると「擽ったいぞ」と城之内に笑われた。

「ちゃんと…気持ちいい?」

 城之内の問い掛けに海馬は素直に頷いて応える。そして濡れた唇を拭ってくれていた城之内の指先を捉えて、その指の腹に吸い付いた時だった。いつもとは違う感触に唇を離し、改めて指先をじっくりと眺めてみる。別段変わったところは見られない。だが、どうしてもいつもと違う気がしてならなかった。
 気のせいかと思いもう一度城之内の指先を咥えてみて、指の輪郭を舌先でなぞった時に海馬は漸く気が付いた。

「克也…? お前…爪切ったのか?」

 いつもは鋭く伸びている城之内の爪。それが今は綺麗に丸く切り取られている。慣れない手付きで必死に切ったのだろう、かなりの深爪になっていた。「こんなに深く切って…。痛くないのか?」と聞いても、城之内はフルリと首を横に振り笑みを崩さない。

「お前を傷付けたくなくて…爪を切ってみたんだけど上手く切れなかった。でも本当に痛くは無いし、どうせ次の新月の晩にはまた伸びるだろう」
「そういえば…さっき何かやる事があると言っていたな。まさかその時に爪を…?」
「野暮な事は言いっこ無しだぜ、瀬人」
「んっ………」

 安心させるように微笑みながらそう言った城之内は、心配そうに見上げる海馬の顎を指先で持ち上げた。そして指を咥えた事により再び唾液に濡れて光る海馬の口元に再び唇を押し付ける。柔らかい海馬の唇を挟み込むように吸い付き、溢れる唾液を舌で舐めとっていく。
 城之内が施す至極優しいキスに海馬がうっとりしている間に、城之内は掌を下腹部に下げていった。海馬の唾液で濡れた指先を滑らすようにして鳩尾や腹筋を撫でる。いつもと違って爪の引っ掛からない感触に、海馬はまたピクピクと反応していた。

「ふっ…あっ…ぁ…」

 まるで焦らされるように施される愛撫に、海馬のペニスはもうすっかり硬くなってしまっていた。未だ一度も触れられていないというのに、我慢しきれずポタポタと自らの腹の上に零れる先走りの液が恥ずかしくて仕方が無い。自分一人が欲しがっているような感覚に、海馬は耐えきれなくなって両腕で顔を覆って隠した。チリンッ…と手首に括り付けた鈴が鳴って、恥ずかしさに拍車を掛ける。

「瀬人…? 恥ずかしいのか?」

 自分の腕によって遮られた視界の向こうから優しい城之内の声が聞こえ、海馬はその問い掛けに頷く事で答えた。

「今更だと…思った。お前に抱かれる事は…慣れている…と。けれど…これはやっぱり…違う…。お前が先程言っていた意味が…やっと分かった…」
「フフッ…。だろ? オレもそう思ったんだ。やっぱりコレは新月の儀式とは全然違うんだよ。純粋に肌を合わせるって…こういう事なんだよな。オレも千年ぶりに思い出したよ」
「克…也…」
「愛しい人を抱ける嬉しさも…幸せも…ずっと忘れていた。だけどお前が思い出させてくれたんだ…。だから瀬人…お前の顔をもっと良く見せて欲しい。感じてる声も…聞かせて欲しい。快楽に溺れる姿も…沢山見たい。もっともっと…お前をオレに刻みつけてくれ…瀬人」
「克也…?」

 海馬はふと、城之内の言葉に引っかかりを感じた。思わず顔の上に載せていた腕をどけて、自分の身体の上にのし掛かる城之内の顔をじっと見詰めてしまう。けれど城之内はそんな海馬に柔らかく微笑みかけるだけで、それ以上は何も言わなかった。海馬の下腹部を冷たい掌で優しく撫で回した後、硬く勃ち上がっているペニスを強く掴んでくる。

「うっ…ぁ…っ」

 散々焦らされた上での直接的な刺激。待ち望んだ快感が突然与えられて、海馬は堪らずビクンッ…と身体を跳ねさせた。
 何か…何かとても大事な事に気付きそうだったのに、城之内から与えられる快感に頭が痺れて何も考えられなくなる。トロトロに濡れそぼったペニスを上下に扱かれて、必死に城之内の腕に縋り付いた。黒い着流しをギュッ…と握り締める。

「そのまま…力を抜いててくれよな。少し慣らすから」

 じわりと涙を浮かべて快感に耐えている海馬に微笑みかけ、城之内は反対側の手を持ち上げて自分の人差し指の側面に歯を当てた。鋭い牙がプツリと皮膚を突き破り、真っ赤な血が溢れて流れ出す。そして自らの血で濡れた指を海馬の足の間に持って行き、未だ硬く結ばれたままの後孔に触れさせた。温かい血液をヌルリとそこに撫でつけると、その感触に後孔と内股が小さく痙攣する。月に一度の性行為に慣れているその場所は、あっという間に綻んでいった。

「ひぁっ…! あっ…あぁっ!」

 くぷり…と潜り込む指に、海馬はただ甘い声をあげる事しか出来ない。二本の指で柔らかい内壁を何度も擦り上げられると、それだけで海馬の身体に震えが走った。指の先が一番感じるところに触れて、ビクンと下半身が跳ね上がる。止まらない痙攣に、手首の鈴もチリリリリ…と細かな音色を起てていた。

「瀬人…。あぁ…もうこんなになって…。オレを受け入れる為に…こんなに柔らかく…熱く…締め付けてくるなんて…」
「はっ…ぅ…! っ…やっ…! あっ…んあぁっ…!」

 うっとりと…幸せそうに城之内が海馬に語りかけた。けれどもう、海馬はその言葉に反応する事が出来ない。ただ体内を暴走する熱に翻弄されるだけ。
 やがて体内を慣らした指が抜けて、完全に綻んだ後孔に城之内の熱が入り込んできた。硬く熱い楔。普段体温の低い城之内も、この時ばかりはまるで発熱したかのように身体が熱くなる。

「ひっ…! ひゃっ…あっ…あぁぁっ―――っ!!」

 耐えきれない衝動に悲鳴を上げる。それはいつもの苦痛に藻掻き苦しむ悲鳴とは全く違う…甘い蜜を絡みつかせたかのような悲鳴だった。
 両足を大きく左右に開かれ、更に高く抱えあげられ、何度も何度も揺さぶられ最奥を突かれる。その度に信じられないような快感が沸き起こり、海馬の身体や脳内を麻痺させていった。
 何も出来ない。何も考えられない。ただ受け止めきれない快楽に涙がボロボロと零れていくだけ。

「あっ…あっ…あぁ…っ! か…つ…やぁ…っ!!」

 震える手を伸ばして城之内に助けを求める。もう自分ではこの衝動を抑えきれなくて、自分を抱く城之内に頼るしか無かった。触れた黒い着流しを強く引っ張ると、それはズルリと肩から落ちて城之内の肌が露わになる。自分より少し浅黒いその肌に腕を絡みつかせ、海馬は強くその身を抱き締めた。

「かつ…や…っ! かつやぁ…っ!!」
「瀬人…っ。オレの…瀬人…っ」
「克也…っ! 側に…いるか…ら…。オレ…お前の側…に…いるから…っ!」
「瀬人…」

 涙を流しながら海馬は必死に自分の決意を城之内に伝える。だが城之内は、うっすらと微笑むだけで何も返しては来ない。ただ汗でしっとりと重くなった栗色の髪の毛を、優しく何度も撫でるだけだった。

「ありがとう…。愛しているよ…瀬人…」

 快感で麻痺した脳内に、城之内の愛しむような…それでいて悲しい響きを持った言葉が届く。けれどそれをしっかりと認識する前に、海馬は絶頂を迎えてしまった。

「ひぃっ…! あっ…あぁっ!! ぅ…あっ…あぁぁ…あぁ――――――――っ!!」
「瀬人………っ!!」

 城之内の…海馬を呼ぶ声が震えている。まるで何かを決意しているかのように…哀しげに震えている。その響きに海馬の胸の奥がざわりと波立ったが、達した衝撃に耐えきれずに意識は白い霧に飲み込まれていった。

「あっ………克…也…」

 体内に吐き出される熱を感じながら、海馬は震える手で城之内の頭を探る。金の髪を指先に絡め取って強く掴んだ。この男がここから離れていかないようにと…強く。
 チリンッ…と手首の鈴が…鳴った。

「克也…どうか…側に…」

 何とかそれだけを伝え、海馬はコトリと意識を失う。
 最後に…霞む視界の向こうで寂しげに笑っていた城之内の顔だけが…印象的だった。

梅見に行ってきました~(*'-')

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筋肉痛の二礼です、こんばんは。

昨日は急にお休みしてスミマセンでした。
天気が良いという事も有り、急に遠出して梅を見に行く事になったのです。
二礼は毎年この季節には梅見をしますが、いつもは新宿にある『新宿御苑』というでっかい有料公園に行くんですね。
ところが今年は何を思ったか、相棒が突然遠出したいと言い出しました。
で、電車に揺られつつ片道二時間かけて辿り着いたのは、蒲鉾と提灯が有名で箱根を間近に控えた小田原でした。
二礼は神奈川県出身ですが、小田原で遊んだ事はありません。
箱根には何度も行っているので通過はしているのですが、そこに留まってしっかり観光をした事が無かったんですよね。
(位置関係図:静岡~箱根~小田原~~~~~横浜~川崎~東京【東海道沿いに簡単に書くとこんな感じ】)
という訳で、梅見も兼ねてお散歩開始。
観光客らしく小田原城にヒーヒー言いながら昇ったりして、とにかく一日中歩き回っていました。
確かに梅は綺麗だったし、良いお天気だったし、美味しい物も一杯食べて来たし、お土産も買ってきてホクホクですけれど…ちょっと無理をし過ぎましたね…。
今現在…筋肉痛で身体のあちこちが辛いですwww
「せっかく来たんだから、お城に昇ろう!!」と、無理して天守閣まで昇ったのがいけなかった…orz
いや、てっぺんから見た小田原の景色は物凄く綺麗だったけどさ…w
ていうか、基本的に運動不足なんだな。
今年はもっと身体を動かさないとダメだ。


長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第二十一夜をUPしました。
何か物凄く今更な事なのですが、この物語の城之内君は千年前の平安時代末期の生まれです。
なので横文字には凄く疎いんですよ。
基本的に贖罪の神域から出られない城之内君にとっては、そういう知識は全く不必要の物でありましたし、代々の贄の巫女達もわざわざそんな事を教えたりはしなかったでしょうしね。
という訳で、キスやらセックスやらの横文字を平仮名で言う城之内君は、書いててとても楽しかったですw
ていうか、何か可愛い…w
そしてそれを懇切丁寧に教えている海馬も可愛いw
自分で書いてて「うはw これは可愛いw」と思ったのも久しぶりです(´∀`)
次はいよいよラブラブHシーンですね~!
気合いを入れて書こうと思っています。
そして、そのシーンが終わったら次は………。


以下は拍手のお返事でございます~(*'-')


>るるこ様

どうもです~v
拍手とコメント、ありがとうございました~(*´∀`*)

『無限の黄昏 幽玄の月』で漸く両思いになった城海にキュンキュンして下さって、どうもありがとうございます~!
こういうコメントを頂けると「ちゃんとラブラブ具合が出ていたんだなぁ~」と思って安心致します。
何だかんだ言っても、やっぱりラブラブしてる城海が一番萌えるんですよね~(´∀`)
ラブラブキュンキュンが最高です!!

エロに関してですが…無いと思いました?w
いやいやいや、ま さ か !!
二礼に限ってそれは無いでしょうwww
次回はしっかりとラブいHシーンを書こうと思っています(´―`)
まぁ…他の作品に比べればそこまで濃ゆいエロでは無いと思いますが、それなりにご期待下さいませ…w

それではこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!!(´∀`)

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をありがとうございますです!
昨日は突然お休みしてしまって申し訳ありませんでした。
たまにこういう事があるので、リアルの世界は生き辛いですねw(おいw)
でもお陰で楽しい休日を過ごす事が出来ました。
煮詰まり気味だった脳もリフレッシュ出来たので、引き続き『無限の黄昏 幽玄の月』の方を頑張りたいと思います(*'-')

城之内君は、千年前の『せと』さんの事を本当に心の底から愛していました。そしてその気持ちは贖罪の神域に閉じ込められたこの千年間、全く変わる事がありませんでした。
だからこそ余計に、海馬自身に惹かれていく自分の気持ちを認めたく無かったのでしょうね…。
海馬が苦しむのを見て辛くなるのは、海馬がせとにそっくりで、過去の姿とダブるからだと思い込もうとしていたのです。
自分が愛しているのはあくまで『せと』であって、海馬では無いと…。
でも城之内君の気持ちはどんどん大きくなっていって、ついにバランスが崩れてヘタレになったと…そういう訳だったんですね。
鬼として覚悟を決めた城之内君が、今後どうやって海馬に救いを求めるのかは…もうすぐ答えが出ると思います。
『無限の黄昏 幽玄の月』はこれから大事なシーンの連続ですので、私もこれからは気を引き締めてしっかりと書いていきたいと思っています!
ちなみに、Rosebank様は私が容赦ないとコメントされていましたが…。
私も最近は「自分は本当はMでは無くてSなんじゃなかろうか…?」と思うようになりました…w
ドMとドSって紙一重って事なんでしょうかね?w

あとコンビニのおでんの話ですが、Rosebank様の仰る通り匂い凄いですよ~www
レジ前は常におでん臭ですwww
でもお陰でレジ前は温かいんですよ~。おでんのホカホカで身も心も温まりまくりですw

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

第二十一夜

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 一人で見上げる冬の満月は…それはそれは美しいものだ。
 彼が…救いの巫女が私を捜しているようだが、今日は彼の前に現れるつもりは無い。
 私を気に掛けるより、克也の事を気に掛けなさい。
 三年越しの思いが漸く実を結ぶというのに、他人を気に掛けている暇は無いだろう。
 月もほら…こんなに美しい。
 恋人が結ばれるには丁度良い晩だ。
 なのに…何故だろうか。
 こんなに美しい満月なのに、見ていると背中にぞくりと悪寒が走るのは…。
 幸せな夜の筈なのに…何故こうまで不安になるのであろう…。

 




 少しやらなければいけない事があると言って本殿の方に姿を消した城之内を見送った後、海馬は幸せな気持ちのまま夜を過ごしていた。マヨイガが用意した食事を摂っている間も、心の中はずっと温かかった。いつもは一人寂しく食べている食事も、今日は少しも辛くは無い。今は姿が見えなくても、会おうと思うえばいつでもあの城之内と触れ合える事を知っているからだ。
 ただ一つだけ、せとの姿が見えない事だけが気に掛かった。
 今日は昼間に別れたきり彼の姿を見ていない。特に最近は海馬が一人で食事をしている時の話し相手になってくれていた為、あの透き通った姿が見えないと少し寂しく感じてしまう。
 現れるのはいつも向こうからで、こちらからせとにコンタクトを取る事は出来ない。それでもいつもは自分の気持ちを汲んで良いタイミングで現れてくれるというのに、今夜は一度たりとも姿を現わさなかった。
 一瞬ヤキモチを妬いているのかとも思ったが、頭に浮かんだその考えを即座に否定する。せとはそんなつまらない嫉妬をするような者では無い。むしろ思念体として悟りを開いているような奴だ。きっと何か別の理由があるのだろう…と思い至り、海馬はそのまま食事を進める事にした。



 食事を済ませ、いつものようにゆったりと湯浴みをしてから部屋に戻ると、冬の冷たい夜風が入り込んでいるのに気付く。そっと覗き込んでみると、障子を開けて柱に寄り掛かっている城之内が、晴れやかな顔で夜空を見上げている姿が目に入って来た。
 灯りの点いていない真っ暗な部屋の中。外から差し込む月の光が城之内の姿を照らしていて、海馬の目にはそれがとても幻想的に映る。そのまま月光の中に溶けていってしまいそうな光景に、彼を繋ぎ止めようと声を出して城之内の名を呼んだ。

「じょ…。かつ…や」

 海馬の呼び声に振り返り城之内が笑う。つい、いつもと同じように名字で呼ぼうとして慌てて名前に言い変えた海馬に、クスクスと面白そうに笑みを零していた。

「オレの名前、呼び慣れないか? 瀬人」
「心配しなくてもすぐに慣れる」

 面白そうに笑う城之内に気不味くなって敢えて強気にそう言うと、城之内はますます声をあげて笑っていた。そして掌をヒラヒラと振って海馬を呼ぶ。それに素直に従って側に寄り、縁側近くの畳に正座をすると、伸びてきた冷たい腕に肩を抱き寄せられ身体を密着させられた。ドキリと高鳴る心臓に気付かないふりをして、城之内の逞しい胸元に頬を寄せる。触れた肌は人間よりも幾分低い体温なのだが、そこに確かな心音が感じられて海馬はほぅ…と安心したかのように息を吐いた。

「何を…していたんだ?」
「ん? あぁ、月を見ていたんだよ。今日は見事な満月だ…」

 城之内の言葉につられて空を見上げると、暗い夜空にポッカリと浮かんだ満月が目に入ってくる。もう空の真上まで昇った満月は紅くもなく、真っ白に輝いて影が出来るほどの眩しい光を地上に放っていた。

「綺麗だな…」

 美しい月の光に感心してそう呟いたが、それに対する城之内の答えは返って来ない。代わりに闇夜にも明るく輝く琥珀の瞳がじっと海馬の顔を見詰め、やがてそれがゆっくりと近付いて来た。顎先を指でつっと持ち上げられ、次の瞬間には冷たい唇が押し付けられる。軽くキスをしただけで城之内は顔を離し、また真摯な瞳で海馬の事を見詰めていた。けれど、驚いたように目を丸くしてピクリとも動かない海馬の様子を見て取って、我慢しきれずに吹き出してしまう。

「ふっ…くくっ…お前…。何て顔でオレを見てるんだよ。接吻なら三年前に一度しているだろう?」

 妙に可笑しそうに肩を震わせて笑っている城之内に、漸く我に返った海馬が眉を顰めて睨み付けた。

「そ、そんなに笑う事は無いだろう。確かに三年前のキスはオレからしたが、今のはちょっと不意を突かれたと言うか…少し驚いただけだ」
「きす…?」
「そうだって言って…あぁそうか。お前はキスの意味が分からないのか」
「きす…。鱚?」
「違う。今、海の魚を思い浮かべただろう」

 海馬の問いにコクリと頷く城之内に軽く嘆息して、海馬は今度は自ら顔を近付けていった。城之内の頬に両手を当て、冷たい唇にそっとキスを施す。先程よりは少しだけ長く触れ合って、チュッという軽い音と共に顔を離した。

「これが…キス…だ。接吻とか口吻とかいう意味だな」
「へぇ…。要はこれも外国から入ってきた新しい言葉って事か?」
「そういう事だ」
「そうか…きすか…。ふふっ…何だか可愛い響きだな。他には何か無いのか?」
「何か…とは?」
「口吸いとか」
「は? 口吸い!?」
「あれ? 知らね? 接吻する時に相手の口の中に舌入れたり絡ませたり吸ったり…」
「あぁ…。ディープキス…だな」
「でーぷ?」
「デープじゃなくてディープな。このディープには『深い』という意味がある」
「なるほど! 深いきすって事か。分かり易いな」
「でも余り使わない言葉だな。普通はキスだけで意味が通じるから」

 月の光の下で身体を寄せ合って、一見とてもロマンチックな光景なのに何だか会話は全然色っぽく無いと感じ、海馬はそれが妙に可笑しいと思っていた。それでも甘く流れる空気が心地良くて、城之内の身体に擦り寄って雰囲気にそぐわない会話を続ける。

「そういう隠語って、今はもう殆ど外国の言葉になってるのか?」
「そうだな…。隠語に限らず、最近は余り日本古来の言葉は使わなくなってきていると思う」
「他にはそうだなぁ…。例えば身体を交わす事とかにも言葉があったりする?」
「身体を交わす…? あぁ、セックスか」
「せっくす?」
「そう、セックス。肌を重ねる事を『セックスをする』と言うんだ」
「せっくすを…する…か。何かやらしい響きだな」

 海馬の言葉に少し考え込んだ城之内は、寄り掛かっていた海馬の身体をギュッと強く抱き締めた。そして青く透き通る瞳を覗き込んで、コクリと喉を鳴らす。海馬には城之内が何を言いたいのかよく分かっていたが、敢えて口を出さずに彼が行動に移すのをじっと待っていた。今はそれが城之内の役目だと思ったから…。
 やがて少しの時間の後、城之内が思いきった顔で口を開いた。低く甘い声で、海馬が一番欲しかった言葉を告げる。

「瀬人…。オレ…お前とせっくすがしたい。深いきすも…したい」

 ほんの少しだけ戸惑うように告げられた言葉に、海馬は黙って頷いた。そしてその場で立ち上がると、微笑みながら城之内に向かって手を伸ばす。伸ばされた細く白い手に、鬼の冷たい手がおずおずと載せられるのを感じて、海馬はその手をキュッと握り込んだ。
 やっと繋がったその手を…もう二度と離したくはなかったのだ。

「克也…。布団へ」

 振り返れば部屋の中央には既に布団が一組敷かれている。いつものようにマヨイガが用意している事を、海馬は知っていたのだ。
 海馬に手を引かれるまま立ち上がった城之内は、脇に立っている海馬の細い身体をそっと抱き寄せてその布団へと向かって行った。城之内に促されるまま黙って歩いて来た海馬は、布団まで辿り着くと自らその場に仰向けに寝転がる。次いで薄い身体の上にのし掛かって来た城之内に、栗色の前髪をサラリと掻き上げられた。現れた白い額にそっと唇を押し付けられる。

「本当に…いいの?」

 思いがけない城之内の言葉に、ついクスリと笑ってしまう。

「今更だろう…? 新月の晩の時は、散々犯している癖に」
「そうだけど…。やっぱ今はアレとは…ちょっと違うと思うから」
「違う…?」
「そう、違う。だっていつもは、あくまでお前を食べる事が主目的だからさ。お前を…瀬人を抱くのは食われる痛みを少しでも軽減する為だってだけだし…。現にほら、見てみろよ。緊張でこんなに手が震えてる」

 小さく震える城之内の大きな掌を包み込み、海馬はその手に唇を寄せた。冷たい肌に何度もキスをして頬を擦り寄せる。

「馬鹿だな…。緊張する事なんて無いのに…」
「そう言うなよ。純粋な意味で人を抱くなんて、千年ぶりなんだからさ」

 千年前、城之内にはせとと言う恋人がいた。きっとあの悲劇が起こる前までは、彼もただせとが好きだという純粋な気持ちだけで、恋人と肌を合わせていたに違いない。それなのに、たった一晩の悲劇で幸せだった全てが城之内の元から去って行ってしまったのだ。
 愛しい恋人も、大事な妹も、平和な村も、優しい村人も、神官としての地位も、黒龍神からの愛も、人間としての彼が持っていた全ての幸せが、この震える掌から零れ落ちていってしまった。後に残ったのは食人鬼になってしまった己の身一つと、贖罪の神域に幽閉されるという長く絶望的な年月のみ…。
 それがこの優しい男をどれだけ苦しめたのか…。海馬はそれを考えると、胸がとても苦しくなるのだった。

「離れないぞ…」

 掴んだ手の甲にもう一度強く唇を押し付けて、海馬は城之内を見上げた。琥珀の瞳がゆらゆらと揺れている。どこか不安そうな城之内にニッコリと微笑みかけて、海馬は安心させるようにその手を撫でる。ゆっくりと…ゆっくりと…冷たい肌が温かくなるまで。

「大丈夫だ。オレはお前の元を離れない。ずっと…二人一緒だ。約束するから」

 海馬の言葉に、城之内は一瞬だけくしゃりと表情を歪めた。まるで泣く寸前の子供の様に。けれど次の瞬間には穏やかな表情に戻って、海馬の細い首筋に鼻先を埋めた。温かい熱を楽しむかのように顔を擦り寄せ、頸動脈に添って舌を這わせる。その行為が、いつも新月の晩に首筋を噛まれる前段階によく似ていて、海馬は思わず首を竦めてしまった。わざとでは無かったが、痛みを覚えた身体が条件反射をしてしまうのは仕方が無い。

「す…済まない…っ! つい…」

 城之内の行為が止まったのを感じて、海馬は慌ててそう謝った。だが城之内は怒りもしないで優しく微笑んでいる。

「何もしないよ」
「克也…」
「今日は痛い事は何もしない。ただお前を抱きたいだけだ…瀬人。どうか…オレを信じてくれ。信じる方が無理かもしれないけどな」

 苦笑しながら告げられたその言葉に、海馬は首を横にフルフルと振った。せっかく城之内と結ばれようとしている時に、彼にそんな悲しい事は言って欲しく無かったのである。

「信じる…。信じるから…。だからオレがどんなに怖がっても、途中で止めたりしないでくれ…っ」
「うん。止めたりなんか…しないよ。瀬人…お前が欲しいから」
「克…也…。克也…っ」
「愛してるよ…瀬人」

 再び城之内の身体がのし掛かってくる。直接感じるその重みを心から愛しく想い、海馬はその首に腕を絡め広い背中をそろりと撫でて、もうどこにも逃がさないように黒い着流しの生地をキュッ…と握り締めたのだった。

本日(土曜日)はお休みです

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ゴメンナサイ~!!
本日急遽お出かけする事になってしまった為、更新が出来なくなってしまいました。
申し訳無いのですが、今日はお休みさせて頂きます。
代わりに今日の分の更新は、明日の日曜日の夜にしようと思っています。
頂いた拍手コメントの返信等も日曜日に致しますので、もう少々お待ち下さい~。
大変申し訳ありませんが、ご了承下さいませ。

オレは今、奇跡を抱き締めている

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オレは今、奇跡を抱き締めている
(キスの無いバレンタインへのオマージュ)

 



 Ver.城之内

 目が覚めたら、部屋の中はもうすっかり明るくなっていた。窓の外からは眩しい冬の日差しが燦々と輝き、昨夜の大雪が嘘のような青空が広がっている。上掛けが捲れ露出した肩が冷たくなっているのに気付いて、もう一度温かい布団の中に潜り込もうとした時だった。
 自分の隣でぐっすり眠っている海馬がもぞりと動いて、ふぅ…と小さく嘆息した。
 栗色の髪がサラリと零れ、薄く開いた唇から温かい吐息が漏れている。冬の日差しに反射して肌は眩しい程に白く、昨夜散々泣いたせいで少し腫れた目元が紅色に染まって綺麗だった。
 何て儚い存在なんだろう。十年ぶりに見た海馬の寝顔は、オレの意識を夢か何かのように錯覚させる。手を伸ばせば春の淡雪のように消え去ってしまうような…、そんな感じがするんだ。
 早く目覚めて欲しい。薄い瞼の下に隠れている、あの窓の外に見える青空のような綺麗な瞳を見せて欲しい。そして、ちゃんとお前がここにいるんだって…オレに実感させて欲しい。そうでないと…不安で不安で仕方が無かった。

「んっ………」

 掛け布団を捲り上げた時に入り込んだ冷たい空気が気に入らなかったのか、海馬が小さく呻いてオレに擦り寄ってきた。細い身体を抱き寄せると、海馬の腕が無意識にオレの背に回る。キュッと少し力を入れて抱き締めると、背に回った腕が同じように抱き締め返してくれた。

 温かい体温、滑らかな肌、重なる心臓の音。オレの腕に中にある…確かな存在。

 あぁ…良かった。海馬はちゃんとここにいる。そう思ったらふいに泣きたくなった。
 海馬の存在が…愛しくて愛しくて。もう二度とコイツとこんな風に抱き合う事なんか出来ないんじゃないかって思ってて…。ずっと不安で…悲しくて…恋しくて。
 コイツがオレの元を去っていってから、どれだけ後悔したかしれない。だけどどんなに後悔しても過去はやり直せないんだ。何度か別の幸せを求めようとしたけど、どうしても海馬の事を忘れる事は出来なかった。それだけ海馬の存在が、オレの心の奥深くまで根付いてたって事だけど。

 諦めて…後悔して…それでもまだ求め続けて、そしてまた落ち込んで。昨日までのオレはあんなに負の固まりだったというのに、今のオレはこんなにも幸せで満たされている。胸が温かい。目の奥が熱い。ふいに訪れた幸福に舞い上がってしまいそうだ。こういうのを何て言うんだっけ? そうだ…奇跡だ。これは奇跡なんだ。
 十年という長い年月をお互いに変わらぬ気持ちを抱いていた事も。海馬が勇気を出してオレの元に帰って来てくれた事も。そして再び共に歩けるようになった事も。何よりも海馬の存在そのものが…奇跡だった。
 無意識にオレを抱き締める腕に力を込める海馬に微笑んで、オレもその身体を抱き締め返す。幸せな気持ちで…強く強く。

 オレは今、奇跡を抱き締めている。

 



 Ver.海馬

 目が覚めたら、部屋の中はもうすっかり明るくなっていた。窓の外からは眩しい冬の日差しが燦々と輝き、昨夜の大雪が嘘のような青空が広がっている。上掛けが捲れ露出した肩が寒かったが、オレは起きる気が無いまま布団の中でじっとしていた。暫くして、冷たい空気に身体が冷えたのか、城之内が目を覚ましてもぞもぞと動き出す。その動きに何故だか妙に緊張してしまって、少しだけ身体を動かして小さく息を吐き出した。
 城之内が目を覚ましたのなら一緒に起きればいいだけの話なのに、何故だか寝たふりをしてしまう。目を開けて城之内の姿を確認するのが怖かった。
 脳裏に甦る昨夜の城之内の姿。確かに目の前にあった筈のその姿が、今はまるで夢か何かのように感じてしまう。十年ぶりに見たその姿を、オレの脳は未だ現実のものとして捉えていないらしかった。考えれば考える程白く霞んでいく城之内の姿。まるで昨夜の大雪に覆い隠されていくようだ。霞んでいく記憶に一気に不安になる。けれど、今目を開けてその姿を確認する勇気は無かった。
 もし目を開けても誰もいなかったら…。これはただの夢で、オレは未だにアメリカの地にいるんだとしたら…。ずっと一人で暮らして来たあの部屋の、冷たくて広いベッドの中央で目を覚ますような事があったら…。

「んっ………」

 途端に怖くなって、堪らず城之内に擦り寄った。つい声が漏れてしまって「しまった」と思ったのだが、どうやら城之内は気付いていないらしい。熱い腕がオレの身体を抱き寄せてくれたので、自分もそろりと彼の背中に腕を回す。キュッと力を入れて抱き締められたので、同じように腕に力を入れた。

 熱い体温。男らしく鍛えた身体。重なる心臓の音。オレの腕に中にある…確かな存在。

 あぁ…良かった。城之内はちゃんとここにいる。そう思ったらふいに泣きたくなった。
 城之内の存在が…愛しくて愛しくて。十年前はこの存在が重過ぎて受け止めきれなくて、逃げるように彼の元を去った。このまま無理して付き合っていても決して上手くはいかないだろうし、何よりオレの存在に縛られる城之内なんて見たくなかった。彼にはもっと自由でいて欲しかったから…。

 けれど、オレはどうしても城之内の事を忘れる事が出来なかった。離れていれば離れている分だけ、彼への想いが募っていく。だから…思い切って戻って来た。これでダメなら、永久に城之内の元を去ろうと…そう決意していた筈なのに。
 それなのに、まさか奇跡が起こるなんて。城之内がオレと同じ気持ちを抱えたまま、あの十年という長い年月を過ごし、そしてもう一度一緒に歩く事が出来るようになるなんて…思わなかったのだ。これは奇跡だ。まさしく奇跡だ。
 そう思ったら城之内の事がますます愛しくなって、力を込めて抱き締めた。途端に同じように抱き締め返してくれる熱い腕に幸せを感じて涙が零れそうになる。

 オレは今、奇跡を抱き締めている。

おでん最強説浮上

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おでん塗れの二礼です、こんばんは。

今週に入ってから関東はずっと天候が悪く寒い日が続いていました。
こんな寒い日はおでんが一番だよね!! という訳で張り切っておでんを作ったのはいいんですが…。
作り過ぎた…orz
自分が好きな練り物を中心にボンボン材料をぶち込み「大根・卵・蒟蒻は外せないよね~。あとちくわぶちくわぶ♪」とルンルン気分で用意をしていたら、鍋から汁が溢れました…;
仕方無いので、食べては足し食べては足し…と続けているのですが、一向に無くなる気配が無い。
もう3日目なんですけど~!
でもあと1日で…何とかなるかなぁ?

こんな風におでん塗れの毎日を城之内君が過ごしていたら、社長は怒って暫く会ってくれなさそうですよねw
身体に染みついたおでん臭に気付いて、露骨に嫌な顔をされそうです…w


長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第二十夜をUPしました。
この話も後編に入ったので、一気に畳み掛けていきますよ~!!
ゴールが見えるって楽しいなぁ~w
でも見えているゴールはまだまだ遠そうです。辿り着けるのは一体いつになる事やら…(´∀`;

城之内君が海馬を食べられなくなったのは、せとと同一視している他にこんな理由もありました。
自分の気持ちの変化に対処出来なくて混乱した結果だったんですね。
そりゃそうですよね~。
千年間ずっと保ってきた価値観を、たった2~3年ぽっちで引っ繰り返されちゃったんですから。
思えば可哀想な男だよ…(←自分で書いておいて何を今更w)


以下は拍手のお返事になりますです~♪


>2月16日AM0時にコメントを下さった方へ

わ~い♪
拍手とコメント、どうもありがとうございます~(・∀・)

『STEP』はちょっとお馬鹿な城海を目指して書いていたので、『バカップル』はまさに褒め言葉です!!www
ていうか、イライラさせてスンマセンでした…w
もうね~ホントいい加減にして欲しいくらいですよね~。
でもまぁ…元々『STEP』を書く時のコンセプトが「乙女海馬を前面に押し出していこう!!」だったので、ある意味仕方の無い事なのでございますw
それでも楽しんで貰えたようで、本当に良かったです~v
私も頑張って書き上げたかいがありました(´∀`)

『STEP』はこれにて完結ですが、もしかしたらまた乙女海馬を前面に出した話を書くかも…しれません。
あくまで「かも」ですけど。
その時はまたイライr…じゃなくて、楽しんで貰えたら幸いですw

それではこれで失礼致します。
ではでは~(・∀・)ノシ


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~(゜∇゜)

『STEP』のらすとすてっぷと日記の感想をありがとうございます~v
いやホントに…完全に忘れていたんですよね…『STEP』…w
でも何とか甘々のまま最後までいけて、ホッと一安心しておりますw
てか、馬鹿ップルいい加減にしろwww

『STEP』は元々が不定期連載なので、他の作品に比べたら存在を忘れやすかったというのは確かにありますね~。
そういう意味ではRosebank様の仰る通り、長編と言うよりシリーズ物に近いですね。
シリーズ物のカテゴリを作ったのは、確か『STEP』を書き始めた後だったような気がします。
もしシリーズ物のカテゴリを作った後にこれを書いたのだったら、間違い無くそっちに収容したと思うんですけどね~。
でもあの頃は普通に長編として考えていましたし、何だかんだ言って無事に完結もしたので、『STEP』はこのまま長編カテゴリのところに置いておこうと思います。
移動するの面倒臭いですしね…w
スイマセン。基本的に面倒臭がり屋なんです…私(´∀`;

百合城海や僕らシリーズは、次に続きを書く時にシリーズ物に入れようと思っていました。
ところがそれを書く余力と暇が、今は無いんですよね…w
意外と移動に手間が掛かるのもあるので、時間がある時に纏めてガッツリやっちゃうのが良いのかもしれません。
でも今はRosebank様の仰る通り、『無限の黄昏 幽玄の月』一本に集中して頑張りたいと思っています(*'-')

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

第二十夜

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 千年近く存在していても、全く気付かない事がある。
 最近漸くそれに気付き、自分の不甲斐なさに呆れてしまった。
 私が気付いたもの…それは克也が救いの巫女を見る視線である。
 一体いつからなのだろうか…。その視線が救いの巫女自身を見詰めていたのは。
 救いの巫女よ…そなたも気付いているのだろう?
 あの視線に籠もる熱は…お前と同種のものだ。
 その事実に気付いた時に、私は克也が完全に『せと』の幻影から解き放たれたのを知ったのだった。
 心から克也と救いの巫女の関係を喜び…そして同時に感じる胸騒ぎに苦しむ。
 やっと訪れた幸せに…どうしてこんなに不安なのだろうかと…。

 




 冬の到来と共に起こった城之内の事件も年が明ければすっかり落ち着き、三年前と同じような生活を送る事が出来るようになっていた。今は二月。風はまだまだ冷たいが、明らかな春の足音が近付いているのが分かる。…と言っても、マヨイガの庭の木々に季節感などまるで無いのだが。
 あの日、あの冷たい雨の中で海馬が城之内に食われてから二月程が経っていた。次の新月の晩からは今までと同じように儀式を行なう事が出来るようになり、もう二度程食されたが、城之内は三年前と同じように海馬の身体を食べている。もう血を啜るだけで吐き気を催すような事も無く、すっかり回復して明るい様相を見せるようになった城之内に海馬も安心していたのだった。
 そしてそれと同時に、今まで気付かなかった事にも気付くようになっていた。
 それは城之内の視線だった。
 二ヶ月前までの城之内はすっかり弱りきっていて、その視線に気付く事は出来なかった。だがきちんと海馬を食する事によって体力を回復し、三年前に出会った頃のように普通に接するようになってからは、海馬は確実のその視線の強さを感じるようになっていたのである。
 それは城之内が海馬自身を見詰めている目だ。自分の外観を通してせとを見ている視線では無い。間違い無く海馬自身を見詰めている琥珀の瞳。

「お前には悪いと思うが…だがそれが凄く嬉しいと感じるのだ」

 縁側に座り、春先の冷たい風に吹かれながら海馬はポツリと口にした。その言葉に隣に座っていたせとが嬉しそうに微笑みコクリと頷く。

『ただの思念体である私に遠慮する事など、何も無いと言っているだろう。良かったな』
「あぁ…。漸く認めて貰えたんだと…嬉しくて仕方が無いのだ」

 頬を薔薇色に染めながら、海馬は垣根の向こうに目を向ける。ここから鳥居の方を見ると、側に映えている桜の木が少しだけ見えるのだ。そして太い枝に横たわって昼寝をしている城之内の金髪を見て取って、幸せそうに微笑んだ。
 三年前に城之内を愛している事を知ってから、海馬はずっとこの気持ちを諦めて来た。この気持ちが報われる事は無い。愛されてもそれは『せとの身代わり』としてであり、自分が『海馬瀬人』として愛される事は絶対に無いと…。ならばせめて救いの巫女として彼を救う為に存在しようと、そう強く心に願い続けてきた。
 だが知らず知らずの内に、その気持ちが城之内の心を動かしていたのだ。

「最近は全て上手くいっている」

 桜の木の枝の上で目を覚ました城之内は、大きく背を伸ばして欠伸をしている。そして何かを思い立ったように、ひらりと地面に飛び降りて姿を消した。その軽い身のこなしを見て、海馬は安心したようにホッと一息吐く。二ヶ月前まで本殿の床にぐったりと横たわって、起き上がる事も辛そうな程弱りきっていた彼が嘘のようだ。
 普通あそこまで弱ってしまったら、人間だったら数週間の療養を余儀なくされるであろう。けれど、そこは流石に鬼と言ったところか。城之内は最初の食事でかなりの体力を回復し、その後の二度の新月で更に海馬を食する事により、今はもうすっかり元通りに回復していた。

「城之内はオレの存在を認め…鬼としての覚悟を決めてくれた。最近では新月の晩もしっかりと食べてくれるし、何の問題も無い」
『あぁ…。そうだ…な…』

 にこやかな顔でそういう海馬に、せとは苦笑しながら頷く。そんなせとの態度に、海馬は些か不快そうに眉を顰めた。

「何だ…。まだ心配しているのか」

 せとは何も答えない。だが深刻そうなその表情が、海馬の問いを肯定している。

「もうあれから二ヶ月経っているのだぞ。城之内の様子に変わったところは無いし、それどころかむしろ以前より元気になっているでは無いか。何を心配する事がある」
『そう…なのだが…』
「お前は千年もずっとここに閉じ込められて城之内の側にいたからな。心配するのは分かるが杞憂というものだ」
『分かっている。けれどどうしても…胸騒ぎがして…』
「それはただの気のせいだ。お前は意外と心配性なのだな」
『そうだな…。きっとそうなのだ…』

 困ったように笑いながら無理矢理納得したせとに、海馬も少し引っかかりを感じた。
 もしかしたら自分もせとと同じような事を心配しているのかもしれない。ただ城之内が当初の頃のように自分を食べてくれる安心感と、彼の視線が自分に向けられているという嬉しさで、それを感じないだけなのかもしれないと思う。感じないのか…それとも感じないようにしているだけなのかは分からなかったが。
 だが海馬はそこでフルフルと首を横に振った。

 違う。絶対に違う。きっとただの気のせいだ。こんなに何もかもが上手くいっているのに、間違っている事なんて何も無い。城之内は立ち直った。もう何も不安に思う事なんて無い。だからこの胸騒ぎは、気のせいに過ぎないんだ…っ!!

 そう強く思い込もうとする。けれど何故かそれが上手くいかなかった。魂が震える。魂が何かを訴えている。

「どうしてくれる。魂が貴様の思いと同調して、オレまで不安になってきてしまったぞ」

 感じる不安を打ち消そうと、わざと強がるような台詞を吐いた。ギロリと隣に座るせとを睨み付けると、せとは『それは済まないな』と苦笑しながら言って、その姿をスウッと消していった。



 数刻後。日が暮れてきて少し強くなってきた風に寒さを感じ、海馬は部屋に上がり込み障子を閉めた。長い間外にいた為に身体が冷えている。温かいお茶でも飲む為に居間に行こうと振り返ると、その途端に廊下に面した襖がスラリと横に開かれたのが目に入ってきた。暗い廊下からヒョコリと覗いた金の髪に、海馬は城之内の来訪を知る。「よぉ!」と明るく振る舞うその姿に、先程までの不安感が嘘のように消え去っていくのを感じた。

「元気?」
「お陰様でオレはいつでも元気だ。貴様も調子が良さそうだな。先程、桜の上で昼寝をしていただろう」
「何だ…見てたのか。話しかけてくれりゃ良かったのに」
「あんまり気持ち良さそうに寝ていたのでな。起こしそびれた」

 こういう何気ない会話を城之内と楽しむ時間が、海馬は一番幸せだった。こうしている時が一番強く城之内の視線を感じる事が出来るから…。
 幸せそうに微笑んでいる海馬に、城之内も笑いかける。そして持っていた木の枝を海馬に差し出した。それを受け取って、途端にフワリと鼻先を擽った爽やかで濃厚な香りに笑みを深める。

「これ、やるよ」
「ほう…白梅の枝だな」
「もうすぐ春が来るからな。この季節だったらやっぱり梅の花だろ」
「良い香りだな。貴様にしては趣味が良い。だがこのマヨイガの庭では、そういうのは余り関係が無いがな」
「それは言っちゃダメだって。こういうのは気分の問題だろ?」
「そうだな。それはそうと紅梅の方はどうした? 一緒に咲いていただろう」
「あぁ、咲いてたよ。だけど紅梅は何かお前の印象と違っててさ。白梅の方だけ切って持って来た。紅梅はどちらかというと…」

 それまでベラベラと喋っていた城之内の口が急に止まった。何か不味い事を思い出したかのように、渋い顔をして視線を反らす。だから海馬は敢えてその先を口にした。別にもう何も気にする事は無い。城之内の目がちゃんと『海馬瀬人』を見ていると知っているから…。

「どちらかというと、せとのイメージだな」

 せとの名前に城之内が慌てて顔を上げる。

「いめーじ…?」
「印象の同義語だ。ここ百年余りの間に外国から入ってきた新しい言葉だな」
「そうか」
「あぁ」
「あ…うん。まぁ…そういう事…だよ」
「何を気落ちしてるのだ。オレは別に何も気にしていないぞ」
「………本当…に?」
「当たり前だろう」
「そ…そっか…。良かった…」

 気落ちした城之内を安心させるように海馬が微笑みかけると、漸く城之内も笑ってくれる。最近、二人の間にはこういう遣り取りが増えていた。
 城之内が海馬をせとを違う人間として見るようになってから、彼は二人を一緒にしないようにする気遣いを見せるようになっていたのである。海馬にとっては最早気にするような事でも無かったが、少なくても海馬とせとを同一視していた自分を恥じているような城之内の態度に好感が持てたのは確かだった。

「気に入ってくれたんだったら、それでいいんだ。あとこれ…美味そうなのを選んで持って来たんだけど…」

 漸く安心したらしい城之内が、今度はこんもりと果物が盛られている笊を差し出した。そこに乗っている果実を見て、海馬は呆れたように小さく嘆息する。その笊を受け取って思わず苦笑した。

「お前…。花は季節に添っているのに、どうして果物はちぐはぐなんだ? 枇杷とあけびなんて、初夏と秋の果実だろう」
「今日はコレが一番美味そうに見えたんだから仕方無いだろう?」
「まぁ…確かに美味そうではあるが。ところでこのあけびはどうした? 枇杷はマヨイガの庭に成っているのを知っているからいいが、あけびなんて…生えていたか?」
「あけびはオレが裏山の入り口で見付けたんだ。どうやらあそこら辺もマヨイガの力が働いているらしくて、時々山の恵みが手に入るんだよ」

 城之内は得意げにそう言って笑っている。
 あの雨の夜が明けてから、城之内は時々こうして海馬に贈り物をする事があった。店も何も無いこの世界では、贈り物と言っても花や果物くらいしか無いが、それでも海馬は城之内の気持ちが嬉しかった。
 多分、これが城之内なりの侘びと礼なのだ。贈り物に付随する言葉は無いが、その気持ちをひしひしと感じる事が出来る。

「ありがとう。ではこれは水に漬けて来る事にしよう。冷やした方が美味しそうだからな」

 そう言って笊を持ったまま城之内の脇を通り過ぎ、開けっ放しの襖から部屋を出て行こうとした時だった。

「瀬人」

 城之内の声が海馬を呼んで、耳に入って来たその名前に驚いてピタリと足が止まる。
 瀬人…瀬人と呼んだ。ずっと名字しか口にして来なかった城之内が海馬の名前を口にした。『瀬人』と『せと』。イントネーションは全く同じ。けれど海馬には分かっていた。何故だかは知らないがそれが『せと』ではなく、自分の名前が呼ばれた事を理解したのである。
 恐る恐る振り返ると、城之内は至極穏やかな顔をして海馬の事を見詰めていた。そして再び口を開いて、海馬の名前を音に出す。

「瀬人…。本当に…ありがとうな。お前のお陰でオレは…立ち直る事が出来た。心から感謝してる」
「じょ…のう…ち…?」
「今ならはっきり分かるよ。お前とせとが全然違う人間なんだって事。こんな簡単な事が…どうして分からなかったのかなぁ」
「じょ…」
「そして…どうして気付かなかったのかなぁ…。こんなに…お前に惹かれていたっていうのに」
「っ………!」
「いや、本当は気付いていたのかもしれない。お前に惹かれていく自分の気持ちを…とっくに知っていたのかもしれない。でも、オレは気付かないふりをした。お前を愛する事はせとを裏切る事になると…ずっとそう思って来た。だからせとの思い出に縋り付いて自分を誤魔化していたんだ」

 城之内は穏やかな顔をしたまま喋り続ける。海馬はそれをただ黙って聞く事しか出来ない。驚き過ぎて…声が全く出なかった。

「海馬に惹かれるのは、お前がせとに似ているから。海馬が苦しむのを見る度に辛くなるのは、過去のせとに重なるから。だからお前自身に惹かれている訳じゃない。お前がせとに似ているから気になるだけなんだって…そう思い込もうとした。でもどうしても上手くいかなかった。苦しくて…食えなくなった」

 目を瞠ったまま呆然と立ち尽くす海馬にクスリと微笑んで、城之内は眩しいものを見るように目を細める。その琥珀の瞳はどこまでも優しくて…そして確実に自分を見ていた。『せと』では無く『瀬人』を。

「でもあの日、せとの頭蓋骨をお前に壊されたあの時。オレは漸く気付いたんだよ。そして認めさせられた。お前に惹かれていたんだって…好きなんだって気付かされた」
「だが…お前…」
「ん?」
「せとは…? 愛していたのだろう…?」

 漸く絞り出した声でそう尋ねると、城之内は微笑んだままコクリと一つ頷いて答える。

「愛していたよ。世界で一番愛していた。アイツとずっと幸せに生きたかった。でもな、せとは…アイツはもう千年も前に死んでいるんだ。オレがこの手で殺したんだから。もう過去の人間なんだよ。もうどこにも…いないんだ」

 チリ――――――ン………。

 どこかであの鈴の音が聞こえる。自分はもう千年前に死んだ人間なのだ…というせとの声が聞こえるようだった。

「でもお前は生きている。生きて…ちゃんとここにいる、触れられる。温かい体温を持っている。オレに言葉を掛けてくれる。笑ってくれる。泣いてくれる。怒ってくれる。その事がどんなに幸せな事か…オレは漸く気が付いた」
「城之内…っ」
「瀬人…。今までごめんな。それから…ありがとう。大好きだよ」
「城之内!!」

 今まで見た事が無いような笑顔で名前を呼ばれ、海馬はもう自分を制する事が出来なくなった。持っていた笊を取り落とす。盛られていた果物がバラバラと足元に散らばっても、海馬はそれを拾おうとはしなかった。ただ大きく足を踏み出して…そして駆け出して。

「城之内…っ!!」

 夢中でその身体に抱き付いた。首元に腕を絡めて、冷たい身体を自分の体温で温めるかのようにギュッと強く抱き締める。ややあって、自分の背に城之内の腕が回って同じように強く抱き締められるのを感じ、海馬は自ら身体をすり寄せた。

「城之内…っ。城之内…っ!」
「瀬人…。今更だけど…名前で呼んでいいか?」

 耳元で囁かれる城之内の言葉に、コクコクと頷く。

「お前も…名前で呼んで? オレの名前を…お前の声で聞きたい」
「城之内…?」
「オレの名前、忘れちゃった? 克也だよ…瀬人」
「かつ…や…」
「うん」
「克也…」
「うん」
「克也…っ!」
「うん。ありがとう…瀬人」

 何度も何度もお互いに名前を呼び合い、二人はいつまでも強く抱き締め合う。ふと…城之内の広い肩口から海馬が視線を上げた時、いつの間にか部屋の隅に立ち尽くしているせとと目が合った。せとは心から嬉しそうに微笑みながら、目が合った海馬に強く頷いてみせる。

『おめでとう、救いの巫女よ。それで良いのだ』

 優しい声が耳に届く。その言葉にそれまで耐えていた涙が一気に溢れて来て、海馬は泣き顔を隠すように城之内の黒い着流しに顔を埋めた。



 海馬とせとが心から幸せを感じていた頃。外はもうすっかり日が沈み、東の空からは満月が昇っていた。
 部屋の障子を閉め切っている為に海馬にはそれは見えなかったが、その月はまるで血のように真っ赤に染まり大きく膨張している。まるでこれから起こる不幸を予言するかのように…月は悲しげに紅く光るのだった。

ハッピーバレンタイン~♪

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何だかんだでバレンタインデーを無事に過ごした二礼です、こんばんは。

ハッピーバレンタイン~!!

一日遅いけど、ハッピーバレンタイン!!\(^o^)/

13日の夜は『瀬人の丸字に萌える会』のチャットに参加してきました~!
大人数のチャットは久々だったので凄く緊張したのですが、色々な方とお喋り出来て楽しかったです♪
同じ社長スキーでも、人によって萌えるポイントが少しずつ違うというのが分かって、そこら辺が面白かったなぁ~。
またこういう機会があったら参加したいです!
あと何か変な発言ばかりして、申し訳有りませんでした…。


話は変わりますが本日は月曜日。
週刊飛翔の発売日なのですが…少々ショックな事があって立ち直れません…orz
どうしてジャンプ作品なのに、自分が好きになったキャラはどんどん死亡していくのか…;
ネウロの笹塚さん然り、今回のワンピのエース然り…(一応反転)
泣ける。超泣ける。
最近のジャンプは主要人物であろうと何だろうと、簡単に殺してくるからなぁ…w
でも殺される事より、その後に簡単に甦っちゃったりする事の方が嫌いなので、このまま物語が進む事に関しては異論有りません。
(むしろ、去年のナルトで死んだカカシ先生が簡単に復活した辺りでキレかけた事があります…w(一応反転))
さようなら、エース…。
いい男だったよ…(涙)


長編『STEP』らすとすてっぷをUPしました。
ずーーーーーーっと放置していた『STEP』にケリを付けました…w
久しぶりだったので自分でも一応読み返してみたのですが、前回の『すてっぷえいと』の中で海馬が「城之内の誕生日云々」と言っているところを見ると、どうやら城誕に続きを書こうと思っていたらしいですね…(他人事のように)
でも今年の城誕は『Lost World』を書いてしまったので、此方はどうやら忘れ去られてしまっていたようです…w
正直スマンカッタ!!
で、バレンタイン企画をどうすっかな~と思っていた時に、ふいに思い出したのがこの『STEP』でした。
もうホント「ヤベェ!!」って思いましたねwww
放置プレイにも程があると小一時間(略
という訳で、バレンタインにてこの話は終了です~!
ふぅ…やれやれ。何とか丸く収まってホッとしております(´∀`;
てか何だかんだ言いながら、この城海が一番安泰してるよな~。
幸せそうで何よりだ…w


以下は拍手のお返事になりま~す!(´∀`)


>パヅル様

こんばんは~、初めまして~♪
拍手とコメント、どうもありがとうございました~(・∀・)

痺れるなんて、最上級の褒め言葉です!!
見た瞬間、本当に「嬉しい!!」って思いました(*´д`*)
こんな素敵なコメントを下さって、本当にありがとうございます~!!
てか、我慢は身体に毒ですよ?
気に入ったサイトさんには、これからもどんどん拍手やコメントを残していくのが良いと思います。
その方が本人達もやる気が出ますからね~!! 私みたいにw

ウチの海馬はとにかく乙女なのですが、そういう部分をお気に召して下さった様で安心しておりますv
無茶苦茶格好いい海馬も書いてみたいと思っているのですが、どうやら自分には無理っぽいので、最近ではすっかり諦めてしまっていますね~w
どうせだったら甘々を極める為に、これからも自分好みの城海を一杯書いていきたいと思っていますw
まさにやりたい放題ですねwww

あと、小説に関してお礼を言われていましたが…、こちらこそ素敵なコメントをありがとうございましたv
大感謝です!!
のんびりと続けるつもりでいますので、またお暇な時にでも覗きに来て下さいませ~!(´∀`)

それではこれで失礼致します。
ではでは~(・∀・)ノシ


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!!(*'-')

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をありがとうございまっす!
お? Rosebank様の予想炸裂ですね?w
流石にこの先の展開まではお教えする事は出来ませんが、「流石Rosebank様!!」とだけ言っておきましょうw
『無限の黄昏 幽玄の月』も後半に入って、私も書きがいが出て来ました。
今回はバレンタイン企画として『STEP』でお茶を濁しましたが、次回から一気に書き進めようと思っています。
さて…あとどれくらいでゴール出来るだろうか…。
それが問題ですw

第十九夜のグロ表現については、実はどうしようか迷ったんですよね~。
でも余りしつこくグロ表現をしても仕方無いし、特に必要な表現でも無いと思って削除しちゃいました。
てか何度か読み直した上で、第十八夜のあのラストで区切りを付けた方が綺麗だと思ったんですよね。
物語を上手く纏めるには、こういった思い切った判断も必要ですよね~。
あと、片仮名の雀語の可愛さに笑いました…w
「オニメ。ソコカラドケ」って、妙に可愛くて仕方有りませんwww
あの台詞も片仮名にすれば良かったなぁ~www

そういえば雀の寿命って、野生だとほんの1年程程なんですよね。
長生きしても2~3年程度。だから海馬が贖罪の神域に来てすぐに出会った雀では無いのかもしれません。
でももしかしたら、今回来た雀達はあの時の雀の子供か孫かもしれませんね。
贖罪の神域に可哀想な御方がいるから、たまに慰めに行っておくれとか親雀が頼んでいるのを想像すると、ちょっと萌えます…(*´д`*)

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

らすとすてっぷ

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 オレと城之内が目出度く恋人として身も心も結ばれてから早三ヶ月半。季節は秋から冬になり…そして春が近付いて来ている。丁度世間はバレンタインデーで騒がしくなっており、街中には赤やピンクや白などの可愛らしい色で飾られていた。
 街の洋菓子屋やデパ地下などは殺気だった女性達で大賑わいになっており、流石にあの中に入ってチョコレートを買う勇気はオレには無い。というか多分、物凄く奇異な目で見られる事請け合いだ。
 だが、そんな事で城之内の為のチョコレートを諦めるオレでは無い!! 買えぬなら自らの力で作れば良いのだ!!
 自慢じゃ無いが細かい作業は得意中の得意だ。分量や時間をきっちり計ってやらなければならない菓子作りは、オレに取ってはまさに打って付けの作業という訳だ。幸い海馬邸には世界的にも有名なパティシエが出入りしている。きちんと教えて貰えれば、菓子作り初心者のオレでも美味しいチョコレート菓子が作れるだろうと判断した。
 二月に入ってから忙しい合間を縫って毎日のように猛特訓し、そしてバレンタインデー当日に自分一人で作ったチョコレートケーキは…まさに完璧の出来だった。
 色、艶、香り、デコレーション、全てにおいてパーフェクト!! 同じ材料で味見用に作ったミニケーキの味も上々だった為、そっちに関しても心配していない。

「まさに完璧だ…。流石オレ!」

 つい自画自賛の言葉が口から漏れる程、そのケーキは素晴らしかった。用意してあったケーキ用の箱にそれを詰め、クリームが溶けないように保冷剤を入れて、丁寧にリボンを掛けた。それを一旦冷蔵庫に入れ、自室に戻って風呂に入る。しっかり身体を磨いてから出て来て、普段着に着替えた。普段着…とは言っても、いつもよりは少し気合いの入った服装だったが。
 本日バレンタインデーは、城之内の家で一緒に夕食を食べる予定になっていた。本当は海馬邸でバレンタインパーティーをするつもりだったのだが、奴の親父が丁度出稼ぎに出ているのと、たまに自分の手料理を食べて欲しいという城之内の要求を受け入れたのである。
 大した物は作れないけどさ…と城之内は言っていたが、奴が意外と料理上手なのはオレも知っていた。たまに放課後に彼の家に招かれて、ちょっとした食事を食べさせて貰う事が何度かあったが、その度に感心したものである。
 確かに高級な料理では無い。けれど素朴な料理の中に籠もった温かい気持ちや気遣いというものを感じられて、オレはそれが至極気に入っていたのだった。
 その城之内がバレンタインデーに料理を作ってくれるのだという。きっとそれが彼なりのバレンタインのプレゼントなのだと思い、オレは嬉しくて堪らなかった。



「この間のオレの誕生日の時は、お前に貰いっぱなしだったから」

 と城之内に言われたのは今月の初めの事だった。

「凄く嬉しかった。自分の誕生日を恋人に祝って貰うのって、こんなに幸せなんだって初めて知ったんだよ」

 照れて顔を真っ赤にしながらそう言う城之内は、何だかちょっと可愛く見える。オレもつられて照れてしまって「そ、そうだな…」なんて言いながら、二人で暫くオドオドしていた。
 去年のオレの誕生日。オレは恋人に「おめでとう」と言って貰える幸せを知った。そしてそれを城之内にも知って欲しいと思っていた。
 オレの誕生日から丁度三ヶ月後。訪れた城之内の誕生日に、オレは奴の家で手作りの料理でもてなした。この日の為に何度も何度も練習していたから、我が家のシェフ程では無いがそれなりの料理が用意できたと思う。と言っても、簡単なサラダと野菜スープとあとは若鶏のグリルくらいだったが…。
 だが城之内はその料理を「美味しい」と言って、にこやかな顔で全て平らげてくれた。流石にケーキまでは手が回らなくて、それだけは高級店で予約して買って来たものを二人で食べたのだが、その時にオレは深く決意したのだった。

 来月のバレンタインデーは、手作りチョコレートケーキを作ろう…っ!! と。



 こうしてオレは自分の決意通りに作り上げた手作りチョコレートケーキを持って、城之内の自宅の呼び鈴を押している。かなり自信を持って作ったケーキだから、城之内も喜んでくれるだろう。そう思ってワクワクしながら彼が出てくるのを待っていた。
 やがて、バタバタと歩いてくる足音の後にガチャリと鍵が開く気配がし、次いでドアが開いて城之内の顔が現れた。

「いらっしゃい」

 ニッコリ笑ってオレを迎える城之内に、ドキリと胸が鳴る。心身共に城之内と結ばれてからもう三ヶ月以上経っているというのに、未だにこういう瞬間があるから油断できないのだ。
 いつも通りに「お邪魔します」と言いながら玄関に入り靴を脱ぐ。用意されたスリッパを履いて、城之内に付いて台所に入った。

「はい、ハンガー。コートはそこに掛ければいいよ。今御飯用意するから…」
「じ…城之内」
「ん? 何?」
「これを…」
「え………?」
「バレンタインだからな。手作りのチョコレートケーキだ」
「っ!?」

 持っていた箱をおずおずと差し出すと、城之内は酷く驚いたような顔をしていた。一瞬頬が引き攣ったように見えたのは気のせいだろうか? だが次の瞬間には嬉しそうに笑って、オレからその箱を受け取った。

「ありがと~! 超嬉しい!! まさか貰えるとは思って無かったよ」
「何故だ。バレンタインデーは好きな人にチョコレートをあげる日だろう?」
「そうなんだけどさ。オレ達って男同士じゃん? だけどバレンタインってどうしても女の子の為にある日だって感じするからさー。まさか男のお前からこんなものくれるとは思わなかったんだよ」
「男だとか女だとか、そんなものは関係無いだろう。まぁ…流石に店で買ったりは出来なかったけどな」
「オレも。本当はチョコレート買ってあげようって思ってたんだけど、あの女の子達の中に入っていく勇気は無かったんだ。その代わり美味しいもの食べさせてあげるから、それで許してくれよな」
「分かっている。そんな事で怒ったりはしないぞ」
「良かった。んじゃ、そこに座って待っててよ。これは食後に一緒に食べような」

 心底嬉しそうに笑う城之内は、そう言ってケーキの箱を冷蔵庫に仕舞った。だがいつもは大きく開かれる扉が今日はこぢんまりと開けられた事に、オレは何だか違和感を感じてしまう。何故だか知らないがほんの少しだけ引っ掛かる城之内の行動。けれど、当の本人がいつもと変わらぬように振る舞っているので、オレはすぐにそんな違和感など忘れてしまったのだった。



 城之内が用意した料理は、何と意外にも創作イタリアンだった。
 パスタとサラダとスープとパン。パスタは小松菜と豚肉を使った醤油ベース。サラダは海草も入った盛り沢山で、ドレッシングはノンオイルの青紫蘇風味。スープは具だくさんのミネストローネで、深い味わいに「ほぅ…」と息を吐く。

「凄いな。こんな料理、どこで覚えて来たのだ?」

 感心したように言うと、城之内が得意げな顔をしてニカッと笑った。

「去年のクリスマス前から、駅前の創作イタ飯屋でバイトしててさー。料理長に無理言って教えて貰ってたの。お陰で家でも美味しいイタリアンが作れるようになって、凄く感謝してるんだ。腕に自信も付いたからお前に食べさせてやろうと思ってな」
「そうだったのか」
「美味い?」
「あぁ、凄く美味しいぞ」
「良かったー」

 安心したように笑った城之内は、立ち上がって使い終わった食器を全て片付けてくれた。そして冷蔵庫からオレが持って来たケーキの箱を取り出して、そっと蓋を開けて中身を覗き見る。

「すげぇ!! 本格的じゃん。コレ本当に手作りなのかよ」
「勿論だ」

 感動する城之内の言葉を肯定してやると、キラキラした目でオレの顔を見詰めて来た。
 よしよし、感動しているな。作戦は成功だ!!
 城之内はニコニコしながら、包丁を取り出して刃をガスコンロの火で炙り始める。この家にはケーキナイフみたいなものは無いから仕方が無い。炙った包丁で綺麗にケーキを切り分けて、皿に載せてオレと自分の前にコトリと置いた。ついでにお湯を沸かして珈琲を入れる。

「珈琲はインスタントで悪いけど…」
「構わん」
「残りは明日食べるよ」
「あぁ、そうしてくれ」

 穏やかな顔で言葉を交わし合い、インスタント珈琲を啜りながらケーキを食べる。「美味しい! 最高!」と感激する城之内の声に安心して、オレも自分の分のケーキにフォークを刺した。一口分を切り取って食べると、上品で濃厚な甘さが口に広がる。高級な材料を使っている為に不味くはなりようが無いが、これは予想以上の出来だと言っても良い。
 幸せで穏やかな時間。だから城之内の様子がいつもと違う事に気付かなかった。



 食事が終わり、その後は二人でゲームをして遊ぶ。これもいつもと全く同じパターンだ。ボードゲームやテレビゲームの場合もあるし、たまにデュエルする事もある。相変わらず城之内はオレには勝てないが、それでも最近は大分強くなって来ているのを感じていた。たまに本気でひやっとする事もある。確実にデュエルの腕を上げている城之内に危機感を感じ、それと同時に嬉しくも感じていた。

「この対戦終わったら、ちょっとデュエルしないか?」
「いいな」
「じゃ、オレデッキ持ってくるよ」

 城之内は嬉しそうにそう言い、ゲーム機の電源を切って立ち上がる。襖で隔てた自室に入っていく背を見送りながら、オレも立ち上がりながら冷蔵庫に近付いて行った。随分と喋りながらゲームをしていた為に喉が渇き、何か冷たい物を貰おうとしたのだ。
 オレが城之内の家に遊びに来るようになってから、この家の冷蔵庫は自由に使ってもいい事になっていた。「別に見られて困るようなモン、何も入ってないし」というのが城之内の理論だが、そういう大っぴらな所も彼の良い所だと思っている。
 ちなみに城之内の方もオレが自由に冷蔵庫を使うようになってからは、オレ好みの飲み物を入れておくようになっていた。以前はミネラルウォーターなんて見向きもせずに「水なんて水道水で充分だ」とか言っていた癖に、最近はオレの為に普通にミネラルウォーターのペットボトルを買い置きしているらしい。しかもちゃんとオレが気に入っているメーカーの水を買っている。こういう何気ない気遣いが一番嬉しいと感じて仕方が無い。
 そんな事を思い返して幸せに浸りながら、いつものように何の遠慮も無く冷蔵庫の扉を開けた時、上段に見慣れない箱が置いてあるのが目に入ってきた。

「ケーキ用の…箱?」

 それはケーキを入れる為の箱だった。二つ入っていて、手前の箱はオレが持って来た箱だ。だが奥の箱には全く見覚えがない。オレのに比べれば小さな箱だが、それは確かにケーキ用の箱だった。
 何気なく…本当に何気なくそれを手に取ってみる。ズシリと感じる重さは、その箱の中に確かに何かが入っているのをオレに伝えて来た。
 何が入っているのか気になって、蓋に手を掛けようとしたその時…。

「あーっ!? お前…何やってんだよ!!」

 いつの間にか自室から戻ってきた城之内が、焦った顔でオレを指差していた。顔を真っ赤にしてワナワナ震えるその態度が些か気に入らなくて「フン」と鼻を鳴らす。

「返せよ!! 人のモンを勝手に取り出すな!!」
「ほう…。その態度は何だ? 既に誰かからケーキを貰っていたという事か…?」
「ち、違う! それは違うから、大人しくそれを冷蔵庫に戻せ!!」
「どもるのが怪しいな。嫌だと言ったらどうする?」
「な…何だと…?」
「貴様がどんなケーキを貰ったのか…気になるところではある。どれ、オレが中身を見てやろう」
「や、止めろって言ってるだろ…っ!!」

 持っていた箱をテーブルに置いて蓋を開けようとすると、苛立った城之内が近付いてくるのが分かった。このままだと箱を取り上げられそうだったので慌てて持ち上げると、伸びてきた城之内の手も箱を掴み、引っ張り合いになる。

「返せ…っ!!」
「嫌だ…っ!!」

 どっちも後には引けず、小さな箱の奪い合いになる。だがそれが丈夫な素材のものならまだしも、挟んでいる箱はただの紙製。男二人分の握力に箱は簡単に変形し、共に手を滑らせたせいでポロリと地面に向かって落ちていった。
 あっ! と思った時には既に遅く、それはベシャリと嫌な音を起てて床に転がる。

「っ………!!」

 明らかにショックを受けて呆然と立ち尽くす城之内に、流石のオレも罪悪感を感じた。
 別に城之内の事を疑っている訳では無い。彼は意外にモテるから、他の女の子から手作りのバレンタインケーキを貰っていてもおかしくは無いし、だがその事でオレを裏切るとも思っていないのだ。
 ただちょっと…嫉妬してしまっただけだった。本命では無い奴から貰ったケーキを大事そうに冷蔵庫にしまっている事に、ほんの少しだけ妬いただけ…だったのに。

「す…すまん…っ!!」

 慌てて落ちた箱を取り上げようとしゃがみ込むと、伸ばした手を城之内の手によって掴まれてしまう。反射的に見上げた顔は、苦笑しつつも優しそうに微笑んでいた。

「いいよ。大丈夫だから」
「だが…せっかく貰ったのに…」
「だから違うんだって。もういいからあっち行ってて…」
「だけど…っ! あぁっ!?」
「ちょっ…!!」

 オレを押し留めようとする城之内に逆らって無理して箱を持ち上げたら、形が歪んで蓋の開いたそこから中のケーキが滑り落ちてきてしまった。
 ドロリとしたクリームが塗られたチョコレートケーキ。ケーキの上に乗っていたであろうプレートには、『瀬人へ』という文字がチョコペンによって書かれていた。ヘロヘロとしたその字には見覚えがある。
 これは…城之内の字だ。

「城之内…これは…?」

 思わずそう尋ねると、見上げた城之内は困ったような顔をして後頭部をガシガシと掻いていた。

「見たまんまだよ。チョコレートケーキだ」
「何故…?」
「オレもお前の為にチョコレートを贈りたかったんだよ。だけどどこ行っても女の子で一杯でさ。流石にあの中に入って行く勇気は無くて…。それで買えないなら自分で作ればいいじゃんって考えたんだ」
「………」
「本当は食事の後のデザートにこれを出すつもりでいたんだけど、お前が立派なの作って持って来てくれちゃったからさ…。予定が狂ったというか何て言うか…。でも、お前のケーキが想像以上に完璧で、よく考えたらこんなモン出せないし丁度良かったんじゃないかと…」
「丁度良くなんてない! オレはお前のケーキも食べたい!!」
「でもなぁ…。ホントに酷いんだよコレ。崩れちゃって形分かんなくなってるけど、見た目もボロボロだったしさ。これで良かったんだよ」

 そう言ってケーキを片付けようとする城之内の手を遮って、オレは潰れたケーキに手を伸ばした。床に面していない部分のクリームを指先で掬って口に入れてみる。
 確かに酷い味だった。チョコレートもクリームも安物の材料の味がしたし、何しろ砂糖が溶けきって無くて舌の上でジャリジャリと音がする。この調子だとスポンジケーキの部分もそんなに美味しくはないだろう。
 それでもオレは幸せだった。こんなに幸せな気分で味わえるケーキは食べた事が無い。

「一生懸命…作ってくれたのだな…」

 四苦八苦しながらケーキを作っている城之内の姿が脳裏に浮かぶ。普段面倒くさがり屋の城之内がそこまでする理由はただ一つ…。それはオレに対する愛だ。
 オレの誕生日を身体を重ねて共に過ごしたあの日から、オレは城之内のオレに対する気持ちがどんどん強くなっていくのをひしひしと感じていた。強い堅実なその気持ちは、今はオレと同等だろう。
 あの日から、城之内は自分の気持ちの強さに関しては何も言わない。けれど、日々感じる事が出来る。オレを好きだと…愛していると声高に叫ぶ彼の声が聞こえる。

「こんなに美味しいケーキ…初めて食べた」
「嘘吐け。滅茶苦茶不味いぞ…コレ」

 オレと同じようにしてケーキのクリームを舐めて、城之内が渋い顔でそう言う。

「でも本当に美味しいと感じるんだ。本当だぞ…城之内」
「海馬…?」

 嬉しくて嬉しくて堪らなくて、オレは目の前の城之内に抱きついた。首に腕を絡めて唇を重ねると、城之内が強く抱き返して来て舌を入れてくる。
 砂糖がざらついたチョコレートクリーム味のキス。不味くて美味しい、何よりも幸せなキス。城之内の気持ちが籠もった…最高のキス。
 唇を離し、てろりと繋がった唾液の糸もそのままに、オレは城之内に微笑みかけた。

「好きだぞ…城之内」

 オレの告白に城之内もニコリと笑い、もう一度軽く唇を押し付けてきた。離れる時にチュッと音がして、照れて顔が赤くなる。

「オレも。大好き」
「どのくらい好きだ?」
「もうすっげー好き! 最高に好き!!」
「オレも最高に好きだぞ」
「んじゃ、オレの方がもっと大好き!! もう離れられねーもん」
「オレだって離れられないくらい好きだ」
「それじゃ、もっともっと…。とにかく大好きだ!!」

 何度も何度もキスをして、オレ達は顔を見合わせてクスリと笑った。そして立ち上がり、オレの手を引いて自室に向かおうとする城之内に頷いてみせる。


 これからもこうやって、幸せな一時を共に迎えよう…城之内。
 オレ達はついに行く着く場所まで辿り着いた。後はお互いに変わらぬ強い気持ちを抱き続けたまま…幸せに過ごしていけばいいのだ。
 最後のステップを二人で超えて、この先の新たな扉を開いていこう。


 城之内の熱を…そしてオレの熱を強く相手に分け与えながら、オレ達は次なるステップに向かって歩いていった。

あ、バレンタイン...;

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バレンタインデーをすっかり忘れていた二礼です、こんばんは。

バレンタインデー…もっと先かと思っていました…w
気が付いたら13日だもんねぇ…。
最近スランプ気味だったので、余計に日が経つのが早く感じられます。
(暇な時間があっても集中して小説が書けません。ダラダラとやって、ようやっと更新分を書き上げる事が出来る…といった感じでしょうか)
急がなくちゃ!! ちゃんとやらなくちゃ!! …と思うと、余計に何も出来なくなるのが困ったところです…w
まぁこんな精神状態では何やったって上手くはいかないので、のんびりと気持ちが向上するのを待つ事にします(´∀`)
あ、でもバレンタイン企画はちゃんとやりたいなぁ…。
せっかくの『愛の日』ですもんね!!
週明けの15日にでも、何かバレンタイン小説を一本上げときたいと思っています。
さて…何を書こうかしらね?w


長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第十九夜をUPしました。
何だかダラダラと書き進めてきたこの物語も後半に入って、私も漸くエンジン掛かってきました(遅っ!!)
二礼はゴールが見えるとやる気になるタイプなので、ここから先は余り悩まないで書き進められるんじゃないかな~と思っております。
プロット的にはもうすぐそこに終わりが見えているのですが、小説にするとそう簡単にいかないのがまた辛い…w
ちなみに今までで一番長く書いた長編は『奇跡の証明』だったのですが、地味にそれを超えそうです。
まぁ…『奇跡~』の方は番外編もあるので、全体的な長さに比べたら全然あっちの方が長いんですけどね。
てか、本当にパラレル好きなんだなぁ…w
楽しいよパラレル楽しいよ(´∀`)


以下は拍手のお返事でございます(*'-')


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(・∀・)

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をありがとうございます~v
おぉ…! 前回は静かなお話でしたか?
個人的には砕けたせとの頭蓋骨を煎餅みたいにポリポリ食ってる辺りで、そんなに穏やかな話では無いと思っていたのですが…w
でも確かに全体的に見ると、会話を中心として静かに事が進んでいる話だったと思います。
そういう意味では今回もかなり静かなお話でしたが、それはそれ…Rosebank様にはもうお分かりになられます…よね?
そう、嵐の前の静けさって奴ですw
小説の方はもう少し続きますが、個人的にはもう終わりが見えているので、ラストを迎えるのが楽しみで仕方ありませんw
あー! 早くラストが書きたいです!!

あと海馬の『セックス慣れした神官』には笑いました…w
まぁ確かにそうなんですが、これも覚醒海馬ならではといいましょうか。
城之内を助ける為にはもう何も怖くないんでしょうね。
それ故の、あの強気の発言ですw
自分で書いておいて、あの海馬はかなり格好いいと思うのですが…如何でしょうか?w

映画の感想もありがとでした~♪
私は結局観に行っていないのですが、あちらこちらのサイトで感想を読んで、それだけでかなり満足しちゃいました…(´∀`;
王様以外のDMメンバーが出ていないのは、本当に残念に思います。
ちょっとくらい出してくれればいいのにね~(・3・)

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

第十九夜

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 克也が…鬼としての自分を受け入れてくれた。
 あの琥珀の瞳に再び生気が戻って来た事を、とても嬉しく感じる。
 だが、どうしてだろうか…?
 何故こんなにも不安なのだろうか…?
 私には…克也が何かしてはいけない覚悟をしてしまったような…そんな気がするのだ。
 気のせいだと思いたい。そんな不安な事、考えたくも無い。
 だがとうしても、その考えが頭から離れない。
 これは一体どういう事なのだろうか?
 私は…どうすればいいと言うのだろうか…救いの巫女よ…。

 




 チチチ…、チュンチュン。

 少しずつ浮上していく意識の中で、海馬は小鳥の鳴き声を聞いていた。それと同時に瞼の裏が明るくなって、未だ重い瞼を無理矢理開いてみる。
 最初に目に入ってきたのは、マヨイガの寝室の天井。いつものように部屋の中央に敷かれた布団で眠っていたのだと知って、そのまま視線を庭の方向に向けてみる。障子戸は開かれ、外からくすんだ陽の光が部屋に入り込んでいた。その光を認識すると同時に、敷居の柱に寄り掛かるようにして庭を見ている城之内の姿が目に入ってくる。
 雨上がりの庭。屋根の上や木々の葉から、ポタポタと雨水が水滴となって地面に落ちているのが見える。贖罪の神域特有の濁った太陽でも、光を反射している水滴はとても美しく海馬の目に映った。

 チッ…チチッ…。チュンチュン…チュン。

 目を覚ました海馬の耳に、今度はハッキリと小鳥の鳴き声が聞こえてきた。その声に布団の中でゴソリと身体を動かすと、気配に気付いた城之内が振り向いてニコリと笑う。その顔に昨日までの悩みや辛さはどこにも見えなかった。

「起きたか」

 今まで海馬が見た事の無いような笑顔で微笑みながら、城之内は優しく言葉を発する。
 明るい部屋で見る城之内はすっかり血の気が戻り、未だ頬は痩せているが健康的な顔色をしているのが見て取れた。琥珀の瞳も輝いて生気が漲っている。
 強い城之内が再び戻って来た事に海馬は純粋な喜びを感じ、一安心してホッと息を吐き出した。

「具合はどうだ? 昨夜は情欲の手助けも無かったから辛かっただろ」
「あ…いや…、大丈夫…だ」

 答えた声は掠れている。昨夜、あの冷たい雨の中で無意識に叫んでいた為、喉がやられたらしい。覚悟していたとはいえ、新月の晩以外に食されるという事は、相当な苦痛をもたらすのだという事を海馬は改めて知った。
 たかが快感。されど快感。いつもは苦しくさえ感じるあの情欲が、どれだけ苦痛を軽減していたのか身を持って知ったのだった。

「悪かったな。久しぶりだから、全く手加減出来なかった」

 眉根を寄せてそう謝る城之内に、海馬はフルリと首を横に振る。覚悟して自分から身を差し出したのだから、その事で謝られる必要は無い。
 昨夜、あの冬の冷たい雨の中で、海馬は城之内に食われていた。覚悟を決めた城之内の食欲は凄まじく、久々に腹を割かれ内臓の類も殆ど食されてしまった。血を啜られ、肉を食まれ、骨を囓られて、余りの苦痛に絶叫を漏らす。
 けれど海馬は全く後悔していなかった。痛みと苦しみの中に、何とか自分の気を紛らわそうとしている城之内の愛撫を感じていたから…。
 普段海馬が城之内に食される時は、身体が新月の理によって情欲を起こす。黙っていても海馬の身体は快感を感じ、城之内も敢えて性的な意味で触れて来る事は無かった。そんな事をしなくても、城之内が触れるだけで海馬は勝手に感じてしまうからだ。
 だが昨夜は新月では無いので、そんな事は起こらない。海馬の身体は至って普通に痛覚を受け入れ、快感によってその苦痛を紛らわす事が出来ない。
 だから城之内は、海馬の身体を愛してくれた。自身の食欲を満たしながら、丁寧に愛撫を施してくれたのである。勿論普段とは全く違う状況下で、そんな愛撫など大して効きはしない。一瞬感じた快感はあっという間に苦痛に取って変わられ、海馬の口からは喘ぎの代わりに悲痛な叫びしか出て来なかった。
 それでも、その一瞬に感じられる快感を、海馬は幸せだと思っていたのである。

「何とか…快感を与えてやろうと思ったんだけどさ。やっぱり新月の晩じゃないと上手くいかないな」
「いや、いいのだ。オレだって覚悟していたのだから…。美味かったか?」
「あぁ、美味かった。凄く…美味かったよ」
「ちゃんと満足するまで食べたのか…?」
「勿論。お陰様で腹一杯になった」
「そうか。それならいいのだ」
「まぁ、もう二度とこんな事は無いから心配するな。今度からはちゃんと新月の晩に食うからよ」

 そう言って城之内はもう一度庭に目を向けていた。途端にチュンチュンと騒ぎ出す小鳥達に苦笑している。

「雀…?」

 目の端に映るいくつもの茶色い小さな固まりに海馬が疑問符を投げかけると、城之内は後頭部をガシガシと掻きながら困ったように口を開いた。

「あぁ。鬼であるオレが怖い癖に、お前の事が心配でここから離れないんだ。ずっと遠巻きに見守って、さっきからチュンチュン煩いのなんの。どうせ『鬼め。そこからどけ』って言ってるんだろうけどさ」

 クスクス笑いながらそんな事を言った城之内は、ゆるりとその場で立ち上がった。途端に地面をチョンチョン蹴っていた雀達がパッと舞い上がり、近くの木の枝に飛び移る。そして葉の陰に隠れながら、また文句を言うようにチュンチュンと騒がしく鳴き始めた。

「うるせーよ。海馬にもお前等にも、もう何もしないから大人しく柿でも食ってろ」

 乱暴な言葉の割りには楽しそうにそう言って、城之内は廊下から部屋の中へと戻って来た。そしてそのまま海馬の足元を素通りして、廊下に続く襖を開ける。

「久しぶりに本気で食ったからさ、貧血酷いんだろ? 今朝食持って来てやるから…」

 優しげな笑みで海馬に伝え、城之内はそのまま部屋を出て行った。廊下の向こうに遠ざかっていく足音を聞きながら、海馬はそっと自分の身を起こしてみる。途端にクラリと視界が全回転するような酷い目眩を感じ、再び枕に頭を載せた。
 グラグラと回る天井に深く息を吐き出し、額に手を載せる。既にどこの傷も塞がっていたが、自分の指先がいつも以上に冷たいのを感じ取って軽く嘆息した。

 チリ――――――ン………。

 ふと、耳元で聞こえたいつのも鈴の音に視線を巡らすと、いつの間にかせとが枕元に座っているのが目に入ってきた。彼の顔は非常に穏やかで満足気であったが、いつも以上に心配しているのが海馬にも分かくらい戸惑っている。

「何だ、そんな顔して…。オレはそこまで酷い食われ方をしたのか」

 試しにそう聞いてみると、せとはコクリと頷いてみせた。

『翌日には傷は全快すると知っていても…本当に死んでしまうのでは無いだろうかと心配する程の食べられ方だった。見ているだけなのに、まるで痛みが伝わってくるようだったぞ…』
「ほう…それは凄いな。オレは途中で気を失ってしまったから、よく覚えていないのだが」
『気を失って正解だったのではないか? 正直あの時は、弱っていた克也の事なんか忘れてお前の心配しかしていなかった』
「フフフ…。それはよっぽどだな」
『笑い事では無いぞ。腹の中がほぼ空っぽになっていたくらいだからな』
「空っぽか。いい食べっぷりでは無いか。それだけ奴の食欲が戻ってきたという事だろう?」
『そうだ…な。鬼としての覚悟も決まったようだし』
「あぁ」
『だが…それがまた心配でもあるのだ』

 突然低くなったせとの声に、海馬は布団の中から彼の顔を見上げた。せとは何故か難しい顔をしながら、城之内が去って行った廊下の向こう側をじっと見詰めている。

『救いの巫女よ。克也がお前を食わず、衰弱して死んでいく心配は無くなった。だが…私はまだ安心はしていない…出来ない』
「どういう意味だ?」

 せとの言っている事が理解出来ず、海馬は疑問をぶつけた。それに対し、せとは視線を海馬に戻しながら心配そうにポツリと言葉を零す。

『確かに…克也は鬼としての自分を受け入れたようだった。だがそれと同時に、何かしてはいけない覚悟をしたような気がするのだ』
「してはいけない…覚悟…? 何だそれは」
『それがよく分からないのだ。ただ何となく…そう感じるのだ。これで良いと思っているのに、何故か心がざわつくのだよ…救いの巫女よ』
「心が…ざわつく…?」

 何か訳の分からない物に怯えているようなせとに、海馬も彼の言葉を繰り返してみる。だが海馬にはそういったものは何も感じられない。ただ城之内が食欲を取り戻し、ちゃんと自分を食べて回復してくれた喜びしか感じられなかった。
 不可解なせとの言葉に迷っていると朝食を盆に載せて持って来た城之内が現れ、いつの間にかせとは消えてしまっていた。枕元に盆を置き「今日は梨を剥いてきた」と嬉しそうな顔で果物が入った器を差し出す城之内に、海馬はクスリと笑みを零す。
 考え過ぎだ。きっとせとは考え過ぎなのだ。千年間も悩み苦しむ城之内を見続けて来たのだから、突然訪れた希望に疑いを持ってしまうのは仕方の無い事なのだ。

「よいしょっと…。大丈夫か? 頭起こしても気持ち悪くなってないか?」
「大丈夫だ」

 城之内の冷たい腕が海馬の背を支え、布団から起き上がらせてくれる。その腕に安心して体重を掛け、海馬は上半身を起こして城之内から器を受け取った。盆の上にある他の食事には目も向けず、まず最初に城之内が切ってくれた不格好な梨に手を付ける。
 楊枝を刺して梨を口に運ぶと、シャクリという瑞々しい音と共に海馬の口の中に爽やかな甘さが広がった。

「甘くて美味い」
「だろ? もっと食えよ」

 海馬の言葉に城之内が至極嬉しそうに微笑んだ。
 新月明けで弱っている海馬に食べさせる為に、城之内が自分で選んで切ってくれる果物。盆に載せられた果物の器に一番最初に手を付けるようになったのは、一体いつからだっただろうか。少なくてもかなり以前からやっていたような気がする。
 城之内が海馬を余り食べなくなり、寝込んでいる海馬の為に朝食を運んでくれなくなった時に、「そういえば最近アイツの果物を食べてないな…」と考えていた時期があった。その事を考えると、自分が贄の巫女としての役割を果たすようになってからすぐにやり始めた可能性が高い。
 不器用ながらも、とびきり甘い果物を切って持って来てくれる城之内。その果実を一番最初に食べて「美味い」と言うと、本当に嬉しそうに笑う城之内の顔が海馬は大好きだった。

「本当に美味いな」

 シャクシャクと梨を食べていると、それを見ている城之内の顔が破顔する。心の底から嬉しそうなその顔を見ながら、海馬は次の梨に楊枝を刺した。
 久しぶりに味わえた城之内の不格好な果物。上機嫌で甘い梨を口に運びながら、だが海馬は先程のせとの言葉が気になって仕方が無かった。気にしたくなど無いのに、どこか不安に感じてしまう。だがそれを無理矢理思考の端に押しやって、目の前の城之内に微笑みかけた。不安に感じるだけ無駄だと思ったのである。

 不安に感じる事など…何も無いと信じていたのだ。

Y談

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Y談(猥談というよりは、あくまでY談というノリで…)

 




 それは僕と城之内君が、海馬君の邸に勉強会に行った時に起こった…。

海馬(以下:海)「貴様等…人の邸に来てまで、何下らない本を持ち込んでいるんだ」
表遊戯(以下:表)「あ、海馬君やっと来た~!」
城之内(以下:城)「下らなくなんかないぜ? 青春を謳歌するには必要不可欠なものだ」
「エロ本の何が必要か。そんなもん無くたって生きていくのに何の影響も無い」
「海馬君はそれでいいかもしれないけどさ~。僕らはそうはいかないんだよ」
「遊戯、僕らって一緒にするな。少なくてもオレは童貞じゃないぜ?」
「ほう…。遊戯、貴様童貞だったのか?」
「ちょっ…!! 酷いよ二人とも!!」
「だってそうなんだろ~?」
「うぅっ…っ!!」
「ほら、やっぱりな」
「じ…城之内君は仕方無いとしても…。海馬君はどうなのさ!?」
「オレか? ご期待に添えなくて大変申し訳無いが、童貞では無い」
「えぇっ!? 本当に!?」
「まぁ何度か…な」
「お前のセックスって、何かしつこそうだよなー」
「しつこいのは貴様の方だろうが。オレはセックスにそこまで時間は掛けないぞ」
「えぇ~? だってさー。おっぱいとかお尻とか、柔らかいの最高じゃん! 大きい胸だとこう…いつまでも揉んでいたくなるっつーか」
「手をワキワキさせるな。気持ち悪い」
「いいじゃんか別に。てかお前だっておっぱいくらい揉むだろ?」
「さて…。オレは基本的に貧乳の方が好きだから、そこまで揉むような事はないな…」
「マジで!? 何で貧乳だよ!! 明らかに巨乳の方が気持ちいいじゃんか!!」
「貴様と一緒にするな。大体あんな脂肪の塊のどこかいいんだか…。大き過ぎるとかえって不気味だぞ」
「し…信じられない発言!!」
「それに貧乳の方が感度は良いのだ。乳首弄るだけでイク女もいるくらいだからな」
「巨乳の女だって感度はいいぜ。すぐ濡れるし、クリ●リス弄れば気持ち良さそうに喘いでくれるし…」
「ク●トリス弄ればどんな女だって喘いでくれる。偉そうに言う事じゃ無い」
「そうでもないぜ? オレ一度貧乳の女とやった事あるけど、痛がるだけで全然感じてくれなかった」
「それは貴様の愛撫の仕方が悪い。貧乳の女は基本的に感じやすいからな。指で弄れば痛がるに決まっている」
「えぇ~? じゃあお前はどうやって弄ってんだよ」
「指が痛いなら舌に決まっているだろ」
「お? 舐めちゃうの?」
「自慢じゃ無いが、オレはク●ニには時間を掛ける方だ」
「クン●とか!! 海馬君ったらや~らしい!!」
「何がやらしいものか。そんな事言ったら性行為自体が全てやらしいわ。それに舐められれば気持ちいいのは、男も女も一緒だろう?」
「確かにな~。フェラして貰うとすっげー気持ちいいもんな」
「貴様のはフェ●チオというよりはイマラ●オの方だけどな」
「うっ…。だ…だってさ~。ちょっと無理矢理にすると、顔真っ赤にして涙ぐんだりするだろ? それがまた萌えるっていうか…」
「このドSめ。オレにはそんな事は出来ん」
「お前のってオレのよりは細いけどちょっと長いもんな。確かにイマ●チオしたら喉に当たって苦しそうだ」
「それにオレは相手に苦しそうな顔をさせるのは本意では無いからな。相手の好きな様にさせた方が気持ち良さそうにしてくれるから、フェラ●オの方が好きなのだ」
「なるほどね~。ちなみにオレは飲んで欲しい派なんだけど、お前はどう?」
「別にどっちでも。ただ飲むのを失敗して口の端から垂れ流してるのを見ると、ちょっと腰にクルものがあるな」
「あー! それ分かる!! あれいいよなぁ~!! 萌えるよな~!!」
「ただ無理してまで飲んで欲しくは無い。アレは不味いから」
「そりゃ仕方ねーよ。でもどんなに不味くても、海馬は飲んでくれるんだろ?」
「まぁな。不味くても飲むという行為自体は別に嫌いでは無い」
「ち…ちょっと!! ちょっと待ってよ二人とも!!」
「何だ? 遊戯?」
「どうした?」
「何だじゃないでしょ二人とも!! 何でそんな話で盛り上がる事が出来るんだよ!!」
「何でって…。話の流れ的に…みたいな?」
「別に意図した訳では無いがな」
「そうじゃなくて! そういう意味じゃ無くて…!!」
「遊戯?」
「………?」

「君達は…付 き 合 っ て い る ん で し ょ !?

「そうだけど?」
「そうだが?」
「「何か問題でも?」」

 頭を抱え蹲る僕に心底不思議そうな目を向けながら、二人は異口同音で僕に疑問をぶつけてきた。
 後から詳しく聞いてみたら『オレ達の女性経験は自分達が付き合う以前の話だから、今は二人とも相手のみで浮気なんかしていない』との事だったけど、僕にはそんな二人の関係が理解不能だった事は言うまでも無い…。

 ていうか海馬君…貧乳好きだったんだね。そっちの方が意外だよ。

東京スカイツリー

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今更な事に気付いた二礼です、こんばんは。

東京都港区にある東京タワーがそろそろお役御免となり、墨田区に現在建設中の東京スカイツリーって塔が新たな電波塔になる事は知っていました。
で、その事は知っていたのですが、自分のマンションからハッキリ確認出来る謎の建造物が、その件の東京スカイツリーだって事には気付きませんでした…w
何か変な形の建物だとは思ってたんだよ…www
それがまさか、新しい電波塔だとは…思わなかったもんなぁ…(´∀`;
確認した時は目から鱗が落ちましたw
妙にでっかい事とか変な形だとかの理由も漸く分かりましたよ。
てか、ホントにでっかいよコレ?
近場に住んでる訳じゃないのに、遠目でもその大きさがよく分かります。
凄いなぁ…。こんなデッカイの建てて神様に怒られたらどうすんだろwww(旧約聖書のバベルの塔より)
とりあえず言語をこれ以上バラバラにされるのだけは勘弁して下さい…w
(注:二礼は別にクリスチャンじゃないです。高校がミッション系だった為に、少し詳しいだけですのであしからず…w)


あ、そうそう。
何か今日散たんとこの日記に、物凄く阿呆なチャットログが載っていますが、余り気にしないで下さい…w
常にあんな感じで話しているんですけど、やっぱちょっとテンションが可笑しいですよね…www
(どっちがどっちかってのは、分かる人には分かりますよね?)
でもね、いたストって本当に面白いんですよ~!(ボードゲームで言うところの『モノポリー』みたいなモンです)
私はDS版は持っていないのですが、PS2版の『いただきストリートスペシャル』(FFとDQの両方のキャラで遊べる奴)は持っていて、大好きでかなりやり込んでいました。
そんな理由があってあんな風に大盛り上がりした訳なんですが、実際遊戯王いたストとかあったら絶対買うと思います!! てか本気でやりたい!!
ス/ク/エ/ア/エ/ニ/ッ/ク/スとコ/ナ/ミで手を組んで作ってくれたりしないかなぁ…(*´д`*)
何か話してたら久々にやりたくなってきたな。
後でプレイしようっと。


長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第十八夜をUPしました。
海馬に遅れる事三年…。てか千年以上生きているので、三年どころの遅れでは無いのですが…w
漸く城之内君も覚醒致しました~。
ただし「これで後はハッピーエンドに向かって一直線」って事にならないのが、二礼の天の邪鬼なところでして…www
城之内君は鬼としての自分を受け入れはしましたが、結局はそれだけなんですよね。
海馬は城之内を救おうとしている。城之内は鬼としての自分に目覚めただけ。この差はかなり大きいです。
この差をどうやって埋めるのかが今後の課題な訳なんですが…、難しいですねw
とりあえず後半戦に突入した事だけは確かです。
よーし!! 引き続き頑張っていきますよ~!!


以下は拍手のお返事になりま~す!(・∀・)


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~(´∀`)

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をありがとうございまっす!
ゲームを取り上げられてパニックになる受験生の例えには笑わせて貰いました…w
まるでウチの弟のようだ!!www
(二礼の弟は高校受験直前にゲームに夢中になり、ゲームボーイとスーファミを母親にぶっ壊された過去が有ります。てか私もやるのに…!! と二人してショックを受けていた思い出が甦りました…w)
確かに『無限の黄昏 幽玄の月』の城之内は、いつもの城之内より若干(?)厨二病的な所がありますよね~(´∀`;
自分の不幸にどっぷりと浸かっていたり、救いを自ら拒絶していたり、その癖甘えて被害者面していたりと、散々です…。
でもこれで少しはまともな男になるんじゃないでしょうか?w
ただ上記で書いてある通り、城之内君は鬼としての自分を認めただけなんですよね。
だからまだ本気で救いを求めていません。
逆に鬼としての自分を受け入れてしまったせいで、余計に救いを求め辛い状況になってしまった事は確かです。
そんな城之内をどうやって救うのかが、これからの海馬の課題ですね(*'-')

プロットの件ですが、私は基本的に飽きっぽくて怠け者なんですよw
だからちゃんとプロットを作っておかないと、途中で作品を放り投げてしまう事があるんです。
そして困った事に、放り投げたものをもう一度拾うという事をしないんですよね~w
けれどプロットを作っておくと次の目標が分かり易い。(次はこのシーンまで進めよう…とかね)
以前にも言いましたが、バスガイドみたいに中継地点を挟みながらゴールを目指すのが一番性に合っているみたいです(´∀`)
でもまさかその為のプロットが、イメージを思い出させる為に役に立つとは思いませんでした…www
ホントにありがとう、去年の自分!!

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

第十八夜

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 覚悟というものは、人が生きていく意味ではとても大切なものなのだ。
 例えそれが良い意味であろうと、悪い意味であろうと…。
 鬼になった克也は、その覚悟をすっかり忘れてしまっていた。
 だが救いの巫女よ、お前がそれを思い出させてくれたのだ…。
 ありがとう…。本当に…感謝している。
 だからこそ、私は信じているのだよ。
 お前が…きっと克也を救ってくれるという事をな…。

 




「せ…と…」

 バラバラになった骨を掻き集め、それを両手で掬い取った城之内は、呆然としたまま石畳の上に座り込んでいた。涙はもう流れてはいなかったが、その目には何も映っていない。琥珀の瞳はただ白い骨の破片を見詰めている。
 海馬はそんな城之内に軽く溜息を吐いて目を伏せた。そして振り返るとそのままマヨイガまで帰って行く。
 せとの頭蓋骨を壊されて城之内がショックを受けている事はよく分かっている。こんな状態で話の続きをしようと思っても無駄なのだという事も。
 今は城之内を一人にして、彼に考える時間を与える事…。それが一番大事だと思われた。
 振り返らず真っ直ぐにマヨイガに辿り着き、庭に入り込むと手水鉢の水に差してあった白椿の枝を手に取る。そしてそのまま部屋に上がり込んで、用意してあった一輪挿し用の花瓶にその枝を活けた。辺りに冬らしい澄んだ爽やかな香りが満ちる。
 その香りは、海馬の心を静めてくれた。先程まで怒りや苛立ちで荒んでいた心が、今は嘘のように落ち着いている。畳の上に正座をし、海馬は目を瞑って深く息を吸い込み…そして吐き出した。
 先程までの動の時間とは全く違う…静の時間がここには流れている。
 白椿の花の香りに包まれながら、海馬の心は至極穏やかだった。もう何も怖くは無い。何が起きても平気だと思う。これで城之内が救われるなら…彼にどんな事をされても耐えられると思った。
 やがて我に返った城之内が怒りに任せてここに来るだろう。その怒りをきちんと正面から受け止めよう…。そう思って海馬はじっと待っていたのだが、日が暮れても城之内がマヨイガに遣って来る事は無かった。



 マヨイガが用意した夕食を済ませ湯浴みをしていても、未だ城之内がここへ来る気配は無かった。その事に流石の海馬も些か不安になる。
 この三年間、贖罪の神域で城之内と一緒に過ごした間に知ったのは、彼は基本的に喜怒哀楽のはっきりした性格だという事だった。長い年月をずっと閉じ込められて過ごして来た為、その傾向は大分抑えられてしまっているようだったが、それでも嬉しいときはパッと顔を綻ばせ、悲しい時は辛そうに眉根を寄せ、楽しんでいる時はケラケラと声をあげて笑うという…至極分かり易い感情表現を持っている事は知っている。
 その中でも特に分かり易いのが、城之内の『怒り』だった。
 何らかの理由で城之内を怒らせてしまった時の彼の恐ろしさは、普段物怖じしない海馬でさえ全身に震えが走る程だ。普段は明るい琥珀色の瞳が爛々と真っ赤に燃え、そこから視線を外しただけで息の根を止められるような…そんな錯覚さえ覚える。
 些細な事でもそう言った怒りを露わにする城之内が、大事にしていた恋人の頭蓋骨を壊されて怒らない筈が無い。それなのに城之内は怒鳴り込んでくるどころか、その気配さえ全く感じさせなかった。

「流石に…やり過ぎたか…?」

 温かな湯の中で僅かな後悔を覚え始めていると、庭に面した窓からサーッという水が落ちる音が聞こえてきた。庭に植えられている木々や植物の葉が、パタパタと水滴を弾く音に雨が降ってきた事を知る。
 この贖罪の神域は現世から切り離された独立した空間ではあるが、天候や気候などは現世に多分に影響される。濁った空の下でも季節が巡るのはそのせいだ。
 現世で風が吹けばこちらでも風は吹くし、雨が降れば雨が降る。春の雨、夏の嵐、秋の木枯らし、冬の雪も、現世と全く同じようになる。
 ただ海馬は…この贖罪の神域での雨が酷く苦手だった。
 この世界で降る雨は、見届けの巫女から話を聞いていた時に垣間見た過去の映像を思い出させる。
 黒炎刀によって燃え盛る黒龍村。人や家を焼くその炎を、黒龍神は自身の神力が宿った雨を降らせて沈静化した。その雨によって食人鬼になってしまった城之内も理性を取り戻す事が出来たのだが、人外に変化してしまった身体は神聖なる雨に耐える事が出来ず、皮膚や肉を焼いて城之内を苦しめていた。
 黒龍神の降らす雨に打たれ、石畳の上で苦しそうにのたうち回る城之内の姿が脳裏に甦る。苦しそうに呻き声を上げながら、それでも城之内は石畳の上をズルズルと這って恋人の首を抱き締めに行った。

『せと…っ。せと…っ! オレが…オレが殺した…っ!! オレが…せとを…殺した…っ!!』

 悲痛な叫びが耳元で甦る。
 あんなに大事にしていたせとの首。城之内の心の拠り所だった恋人の頭蓋骨。自分はそれを壊してしまった。いくら城之内に覚悟を迫る行為であったとはいえ、彼のショックを考えると胸が痛む。だがそれでも、海馬は後悔はしていなかった。
 ふぅ…と大きな溜息を吐き、海馬はザバリと湯の中から立ち上がった。そして浴室を出て身体の水気を拭き、用意してあった白絹の単衣に着替える。少し考えて、手首に青い組紐の鈴を付けた。大きく腕を振ると、チリリリ…と軽やかな音が鳴り響く。
 その音に勇気を貰い、海馬は城之内の元に行く為に一歩を踏み出した。



 マヨイガが用意したであろう唐傘が玄関に立てかけてあったが、海馬は敢えてそれを無視して外に出た。冬の冷たい雨が細い身体を濡らしていく。湯浴みで温まった熱があっという間に冷えていくのが分かる。それでも海馬は真っ直ぐに歩き続け、そして鳥居の側まで遣って来た。
 暗闇の中で視線を彷徨わせると、案の定…鬼は未だそこに座り込んでいる。冷たい雨に打たれて、黒い着流しは濡れそぼっていた。

「城之内…?」

 流石に心配になってその名を呼んだ時、海馬の耳に聞き慣れない音が入り込んできた。
 カリッ…ポリッ…と、何か堅い菓子でも食べているかのような音が聞こえる。その音の発信源は…確認しなくてもすぐ城之内だという事が分かった。石畳の窪みに出来た水溜まりをバシャリと踏んで、海馬は座り込んでいる城之内の目の前に回り込む。そして音の正体を自分の目で確かめて、その余りに悲しく辛い光景に眉を顰めた。

 城之内は…砕けた骨を食べていたのだ。

 痩せ細った腕をのろりと動かして、手の中から小さな骨の破片を摘み口に運ぶ。ガリリッ…と奥歯で骨を噛み締め、細かくなった破片を口中でポリポリと砕き、そしてゴクリと飲み込む。城之内の喉仏が上下に動く様を見て、海馬は何も言えなくなった。

「海馬…」

 新たな破片を口に運びながら、城之内は静かな声で海馬を呼んだ。

「ゴメン…。オレは確かに…甘えていた…」

 全身が雨でずぶ濡れになっていて、滴り落ちる水滴が城之内の顔を濡らしている。だが海馬は確信していた。雨による水滴の中に、城之内の涙が隠れている事を…。

「百人の人間を殺して…村を焼き…オレは食人鬼になった。自分の恋人まで殺してしまって…本当に酷い事をしたと思う。だけど黒龍神によって理性を取り戻して…オレはどこかで自分はあの食人鬼とは違うと…思い込んでいたんだ」

 カリッ…と、また一つの破片が噛み砕かれ、城之内の胃の中へ消えていく。

「確かに恋人をこの手で殺しはしたが…食ってはいない。他の人間だって…無闇矢鱈に食ったりなんかしていない。贄の巫女だけだ。オレに食われる為に存在する贄の巫女だけを食っている。だからオレはアイツとは違うと…ずっとそう思い込んできた」

 ポリッ…ガリッ…と、まるで煎餅か何かのような音を起てて、城之内は骨を食べ続けていた。

「自分で殺しちまった恋人の頭蓋骨を大事に取っておいて、それを祀る事によって自分が理性有る人間であると思い込もうとした。人外に変化してしまっても、オレは極悪非道な食人鬼とは違う…。心はまだ人間のままなんだと…そう信じていた」

 ゴクリと…口内に溜まった骨の破片を飲み込んで、城之内は空を見上げた。どんよりとした雨雲が覆う空には、いつものように煌めく月や星は見えない。ただ冷たい雨がサーサーと降り注ぐだけだ。その雨に全身をグッショリ濡らしながら、城之内は全てを諦めたかのようにうっすらと笑っていた。

「でもそれは…間違いだったんだなぁ…。オレは鬼である自分を、ちゃんと受け止めなくちゃならなかったんだ。恋人の存在に甘えて、人間であった頃の思い出に甘えて、自分を取り巻く逆境に甘えて、たまにオレを慕ってくれる贄の巫女に甘えて…」

 クスクスと小さな笑い声と共に、城之内は泣いていた。涙は雨水に隠れて見えなかったが…彼は確かに泣いていた。

「ずーっと甘えてばっかだったんだな。それで罪が許されるなんて…ちゃんちゃら可笑しい事だ。自分の存在すら認められていない男が、自分がやらかした罪を本当の意味で理解出来る訳無いんだよ。でもやっと…それに気付いた」

 大分少なくなってしまった骨の破片を掌でギュッと握り締めて、城之内はそのまま仰向けにパタリと倒れ込む。冬の冷たい雨が彼の全身を無慈悲に打っていた。

「お前のお陰だよ…海馬。お前のお陰でオレは鬼である自分を受け入れる事が出来たんだ。千年経って…やっと…」

 雨に濡れた掌を開くと、白い骨の破片がザラザラと石畳の上に零れていく。だが城之内は、もはやそれを掻き集めようとはしなかった。細かい骨の破片が雨水に流れて、地面へと消えていく。

「オレはもう言い訳出来ない。せとの骨を…食っちまった。あんなに大事に想っていた恋人ですら食べてしまう…人を食うしか脳のない極悪非道の食人鬼だ」
「城之内…」

 石畳の上で大の字になっている城之内の側に、海馬はカクリと膝を付く。全てを悟ったかのような城之内の顔が辛かった。

「覚悟を決めたよ…海馬。オレは食人鬼だ。罪を犯した…鬼だ。鬼は鬼として、自分の罪を受け入れるよ」
「城之内…お前…」
「あぁ…それよりも何よりも…腹…減ったな…。食べてもいいか…?」
「勿論だ。その為にここに来たのだ」

 海馬の答えに城之内が首を横に傾げて視線を向けた。そして目に入ってきた海馬の姿にクスリと笑いを零す。

「何だお前…。びしょ濡れじゃねーか…。単衣…張り付いてるぞ」
「そんな事言ったら貴様の方がびしょ濡れだ」
「ははっ…。そりゃそうだな。つーかここまで濡れたらどっちも変わらねーだろ…」
「そうだな」

 至極久しぶりに見た琥珀の瞳が、楽しげに輝いている。城之内が鬼としての覚悟を決めた瞬間だった。
 冬の雨に打たれ、冷たさに身体は細かく震え、吐く息は白い。それでも二人はそこにいた。そこから動こうとはしなかった。

「新月じゃないのに…いいのか? 快感が気を紛らわしてはくれないから、多分物凄く苦しいぜ?」
「その分、貴様が愛撫に力を入れてくれるのだろう?」
「あははっ…! 言うねぇ…。場所は? ここでいい?」
「どこでも。我慢しきれないのなら、今すぐここで食えばいい」
「んじゃここで…頂こうかな」

 ニヤッと笑った城之内が手を伸ばし、海馬の腕を掴んで引っ張った。腕が大きく揺れた事により、手首に巻き付けた青い組紐の鈴がチリリ…と雨の中にも関わらず澄んだ軽やかな音を鳴り響かせる。その音を聞きながら、海馬は城之内の力に逆らわず仰向けになった彼の身体の上に覆い被さった。身体の力を抜き城之内に全てを任せる事にする。目を閉じて深く息を吐き出した。

「あっ…。城之内…」

 冷たい手が単衣の合わせに伸び、グイッと襟元を乱される。現れた白い喉元にいつもより短い牙が突き刺さるのを、海馬は幸せな気持ちのまま感じ取っていた。

去年の自分よ、ありがたう!

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何とか頭の切り替えが上手くいった二礼です、こんばんは。

ふぅ…。良かった~!
何とか城誕企画からのイメージ脱出に成功したようです。
これで『無限の黄昏 幽玄の月』の方に集中出来るぞ~!!
二礼は基本的に不器用な人間なので、余り複数の事を同時には出来ないんですよね~。
だから長編を書いている時は、なるべく一本集中型にしている訳なんです。
と言ってもそればっかりやってたら流石に飽きてくるので、普段はところどころに短編を挟んだりしてますけどね。
でも今回みたいに途中で別の長編を入れるというのは初めての経験だったんです。
いや~、長編って怖いですよね…w
長くやれば長くやる程、そっちの世界に思考が傾いてしまうんですから…w
ここ何日かは自分が書いたプロットを何度も読み返して、世界観の取り戻しを行なっておりました。
お陰で何を書くべきかを思い出しました!
ありがとう去年の自分…w これで続きが書けるよ…w


という訳で、長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第十七夜をUPしました。
二礼は長編を書く時に、頭に浮かんだシーンの前後から肉付けをしていく感じで物語を作っていきます。
例えば『Rising sun』という長編を書いた時は、朝日が昇る窓を背景にして、逆光でシルエット状態になった全裸の海馬が微笑みつつ城之内に手を伸ばしている…というシーンがまず頭に浮かび、そこから色々と肉付けしていってああいうお話になったのです。
今回の『無限の黄昏 幽玄の月』の場合は、三つほど頭に浮かんだシーンがありました。
一つは城之内に食われて血だらけになっている海馬の姿。
そしてもう一つが、城之内が大切にしていた物を打ち壊す海馬の姿でした。
本日書いたシーンはここの部分になります。
(ちなみに三つ目はまだ秘密です…w)
こういう肉付けの元となったシーンというのは、私にとって長編を書く上での区切りになります。
今回、この一つ区切りを迎えた事によって、後は最後まで一気に行くだけになりました!
気が付いたら大分長くなっていた『無限の黄昏 幽玄の月』ですが、ラストまで手を抜かないで頑張って行きたいと思います~!!

あ、それからですね。
先日『瀬人の丸字に萌える会』に投稿した『誓いの一文』もUPさせて頂きました~!
一見完璧そうに見える海馬が実は丸字だとか…ギャップが可愛いですよね~(*´∀`*)
大好きです!www


以下は拍手のお返事になりますですよ~(*'-')


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~(´―`)

『無限の黄昏 幽玄の月』と日記の感想をどうもありがとうございましたv
おぉ…っ!! 凄い!!
今回はRosebank様の予想が大当たりでしたね~!!
お見事でした(´∀`)

今贖罪の神域には三人の登場人物がいます。
その中で完璧に悟っているのは「せと」が一番でしょうね。
次点で海馬かな~?
海馬は覚醒はしましたが、未だところどころに迷いが見えます。
でもその迷いは、海馬が生きているからこそ感じる迷いなんですよね。
生きているからこそ迷いが出るし、不安にもなる。
せとはただの思念体ですから、そういう不安要素が全く無いんですよ。
だから客観的に冷静な眼で物事を見る事が出来るし、真実を見極める事も出来るんですね。
生きている人間には難しい『感情に左右されない冷静な判断』というのは、今の海馬にとってはとてもありがたい助言になっているようです。
せとが贖罪の神域に存在し続けた理由は、こう言った意味ではやはり城之内の為というよりは、海馬の為だったんでしょうね。
城之内は…言わずもがな…ですなwww

あと疑問についてのお答えですが、多分見ていると思います…w
と言っても毎回見ている訳では無くて、見ていたり見ていなかったりと、その日の気分(笑)によってでしょうかw
でも城之内がダメ夫になってからは、心配して見る機会が増えたんじゃないかな?
彼にとっては、城之内も海馬も、どっちも大切な存在ですからね~。

それと、例のラクガキを可愛いと言って頂いて…ありがとうございます…w
お、お恥ずかしい…っ!!(*ノノ)
それと間違い指摘もありがとうございました。
早速直しておきました。

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

第十七夜

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 千年もの長い間、私は克也の側にいた。
 私はずっと克也は罪に溺れ…縛られているだけだと思っていた。
 だがこの贖罪の神域に来てまだたった三年のお前が、克也の本質に気付いてくれた。
 そうか…。そうだったのか…。
 私は克也の逃げ場に…なっていたのだな…。
 中途半端に逃げるくらいならば、逃げ場なぞいらぬのだ。
 克也には…そう、覚悟が必要だ。
 自らを救う為の…強い覚悟が。
 そして克也にそれを与えられるのはお前だけなのだ…救いの巫女よ。

 




 気怠い身体を叱咤し、薄闇の中を海馬は本殿へと歩いて行った。途中一旦立ち止まり、濁った空を見上げて溜息を吐く。贖罪の神域の空は、今日も酷く淀んでいた。
 三年間ほど贖罪の神域で暮らして来たが、この空の色にはいつまで経っても慣れない。強い願いも明るい希望も、全て無慈悲に飲み込まれて掻き消されるかのようだ。こんな世界に千年間も暮らしていれば、いくら食人鬼とはいえど精神が疲弊していってしまうのは仕方の無い事だと思う。

「それでも…お前は耐えていたのだな…」

 誰にも聞こえぬ言葉をポツリと零して、海馬は嘆息した。三年前、自分に対してまるで子供の様な無邪気な笑みを向けていた城之内を思い出し胸を痛める。
 あの笑みは偽りの笑顔であった。けれど城之内は笑う事を忘れはしなかった。いずれ自分は疎まれると知っていながら、贄の巫女に対して笑い続けていた。それが新月の度に自分に食われ、十年後には生命力を使い果たして死んでしまう贄の巫女達に対しての彼なりの気遣い…そして優しさなんだと気付いた時は、酷く悲しくなった事を思い出す。城之内の偽りの笑みが悲しかったのでは無い。自分の無力さが悲しかったのだ。
 あの頃の自分は、城之内に変わって欲しいと願っていた。偽りの笑みなんかではなく…彼の本心からの笑みが見たいと強く思っていたのだ。だがあれから三年経った今、海馬の思いは別方向に向いている。

「アイツに変わって欲しければ…、まず自分が変わらなければな」

 待っているだけではダメなのだ。向こうに変わって欲しければ、まず此方が手を差し伸べなければならない。そして今、海馬はその一歩を踏み出そうとしている。
 嫌われてもいい。疎まれてもいい。憎まれてもいい。ただ城之内を救いたい…。
 それだけが海馬の望みになっていたのだ。



 本殿に上がり込んでそろりと扉を開いてみると、床に何か黒い固まりが転がっているのが目に入ってきた。何の事は無い、それは黒い着流しを着ている城之内だったのだが。
 背を丸めて小さく縮こまって、グッタリと横たわっている。その姿に三年前に感じたような、鬼としての威圧感は微塵も感じられない。わざと足音を起てて近付いて背後に跪いても、城之内はピクリとも反応しなかった。

「おい…」

 流石に心配になって、幾分細くなった肩に手を掛けてその身体を揺さぶってみる。着物越しに彼特有の冷たい体温が伝わって来て、思わずザワリと肌が粟立った。城之内がまだ生きている証が欲しくて掴んだ肩をユサユサと揺らしていると、それまで硬く瞑られていた瞳がゆっくりと開いていく。光を失った琥珀色の瞳が現れ、ちろりと視線を動かして海馬を見た。涙すら乾いた眼球が痛々しい。

「何だ…。海馬か」

 ひび割れた唇から掠れた声が漏れ出る。小さなその声を聞き取る為に、海馬は身を屈めて城之内の顔を覗き込んだ。その際に大事そうに胸元に抱き込んだ黄ばんだ頭蓋骨が見えて、知らず舌打ちをする。

「新月明けだろ…。身体辛いんだから…寝てろよ…」
「悪いがそんなに辛くはない。貴様が全くオレを食わんからな。再生もあっという間だったぞ」
「食ったぜ…ちゃんと」
「アレを食ったと言うのか、お前は。全然足りて無いじゃないか。現にこんなに弱ってしまって…」
「別に死にはしねーから大丈夫だよ…。オレは…こんな事じゃ死にはしない。死ねない。ただちょっと…怠いだけだ」
「いくら不老の鬼でも、食わなければ死ぬんだ。こんな下らない事で死んで…貴様はずっと耐えてきた千年を無駄にするつもりなのか?」

 海馬の問いに城之内は答えない。ただ辛そうに再び瞼が閉じるのを、海馬は絶望的な気持ちで見ていた。
 城之内は自分に対して心を閉ざしてしまっている。やはりせとじゃないとダメなのか…と一瞬思いかけたが、慌てて首を横に振ってその考えを消し去った。
 自分は生きている…。生きている自分にしか出来ない事がある筈だ。その為にここに来たのだ。
 そう強く心に念じ、海馬は自分の左手を持ち上げた。青く走る血管が透けて見える手首を見据え、思い切ってそこに噛みつく。ガリッと嫌な音がして、次いで温かな鮮血がポタポタと零れ出て来た。口の中に残る自分の血液の不味さに閉口しながらも、血が滴る手首を城之内の口元に寄せる。そして半ば無理矢理にそこに押し付けた。

「飲め…っ!!」

 慌てて嫌がるように首を振る城之内の顔を押し付けて、零れる血液を口の中に流し込む。弱り切った鬼は簡単に海馬に組み伏せられ、ポタポタと落ちてくる血を口の中に溜める事しか出来なかった。

「ゲホッ…! やめ…ろ…っ! 今日はもう…新月じゃ…無い…っ!!」
「いいから少しでも飲め…っ!!」
「やめろ…っ!!」

 口内に溜る血液を何度も嚥下し、咳き込みながら城之内は反論する。それに対しても海馬は全く焦る素振りをみせなかった。
 城之内は食人鬼だ。別に新月じゃ無くてもいつでも人肉は食える。ただ黒龍神によって人間としての理性を取り戻した城之内は、普段はその食欲を抑える事が出来ているだけだ。その食欲の抑えがどうしても効かない日…それが新月の晩だという事だけなのだ。
 自らの血によって乾いた唇が潤っていく様を見て、海馬はホッと息を吐いた。だがそんな海馬とは逆に、城之内はずっと眉を顰めたまま不快そうにしている。そして一安心した海馬がほんの少し力を抜いた瞬間に、城之内の身体はそこから抜け出て行った。床に四つん這いになり、口に手を当ててゲホゲホと咳き込んでいる。

「吐くな」

 苦しそうに咳き込んでいる城之内に向かって、海馬は努めて冷静にそう言った。そう言わないと、城之内が本当に吐いてしまいそうな気がしたのだ。
 その言葉が効いたのかどうかは分からないが、城之内は涙ぐみながらもゴクリと喉を鳴らして、口内に残っていた血液も飲み込んだようだった。

「無茶な…事を…。新月でも無いというのに…」
「新月であろうが無かろうが、貴様はオレを食えるし、オレの傷はこの世界の理によって簡単に治す事が出来る。この程度の傷…貴様が心配する事では無い」
「確かにそうだけど…痛みを紛らわす為の快感が無いだろうが…」
「そんな事は問題では無い。オレの事を心配する前に、まずは自分の状況を心配する事だな」

 ズキズキと痛む手首を懐から取り出した手ぬぐいで押さえ付けながら、海馬は城之内に向かって言い捨てる。反論される事を覚悟していたのだが、いつまで待っていても城之内の言葉は無い。伺うように視線を向けると、城之内は口元に手を当てたまま呆然としていた。そして「オレは…やっぱり…食人鬼なんだな…」と小さく呟く。

「食いたくないと思っていても…やっぱり美味いんだよ…。血が…甘く感じられるんだ」
「何を今更…。千年間、ずっとそうやって過ごして来たのだろう?」
「そう…なんだけど…」

 一瞬何かを言い淀んで、そして城之内はホロリと涙を零した。傍らに転がっていた頭蓋骨に手を伸ばし、それを大事そうに胸に抱える。慈しむように何度も何度も優しく頭蓋骨の表面を撫でつつ、城之内は薄く微笑みながら静かに泣いていた。

「黒龍神は…何だかんだ言ってもやっぱり…神様なんだよな…。千年近く閉じ込められて…予言された最後の贄の巫女が来て…、漸く終わる事が出来ると思っていたのに。それなのに黒龍神はまだオレを許してはいなかったんだ。千年の間に忘れかけていたオレの罪を…こうしてまざまざと見せ付け…思い出させる。自分の罪を…オレがしでかした大罪を忘れるなと…そう言っているんだ」
「………」
「凄ぇよ…本当に…。効果覿面って奴だ。オレはお前を食えない…。お前を見ているとせとを思い出すんだ。食人鬼に犯されて苦しんでいる顔を…そして自分が最後に殺した瞬間のせとの顔が脳裏に浮かぶんだ。それを思い出してしまったら…もう食えない」
「だが…っ。食わなければお前が死んでしまう…っ!!」

 思わず詰め寄って海馬が強く叫んでも、城之内は頭蓋骨を抱いたままゆるりと首を左右に振るだけだった。

「食えないんだよ…。身体がもう…受け付けないんだ。美味いと感じる反面で吐き気がする。それに気付いた時に、オレは漸く悟ったんだよ。きっとこれが黒龍神の本当の罰だったんだとな…。千年を掛けて忘れた罪をもう一度思い出させて、絶望の中で…息絶える事。それが…」
「巫山戯るな!!」

 淡々と語られる城之内の言葉に、海馬は途中で耐えきれなくなって大声でそれを遮った。
 この贖罪の神域に来る直前に見届けの巫女が言っていた言葉が脳裏に甦ってくる。

『あのせと様と良く似た貴方を食べねばならないという事は…兄にとってはどれ程の苦痛となる事でしょう。もしかしたら、それが黒龍神が兄に対して下した本当の罰なのかもしれませんね…』

 あの時の見届けの巫女の言葉が、今目の前で現実のものとなっていた。だが海馬はそれを認めたくは無かった。そんな罰があって堪るかと思う。
 確かに城之内は大罪を犯した。それに対して罪を償う事は必要だったのであろう。だが黒龍神がそこまで酷い罰を下すとは、どうしても考えられなかった。ましてや城之内は黒龍神自らが愛した子だと言うではないか。
 黒龍神にとっては自らの子供と同じような存在の筈。そんな愛すべき子に…こんな惨い死を与える筈が無い。城之内が罪から救われる事をこそ望み…彼が死ぬ事は本意では無い筈だ。

「城之内…っ。貴様は…甘えている…っ!」

 怒りを覚えた為に震える声を何とか押さえ付けて、海馬は城之内をキッと睨み付けながら口を開いた。

「何が罪を思い出す…だ。貴様はそう言って罪を受け入れているふりをしながら、罪人である自分という状況に酔っているだけだ…っ。罪に流され、抗おうともしない。貴様の本当の罪とは、自分の罪と正面切って闘えない…お前自身の弱さにあるのだ!!」
「海…馬…?」
「いつまで罪人のつもりでいるのだ! この辛かった千年間を…どうして無駄にしようとしているのだ!! 何故救いを求めない!! 救われようとしない!!」
「だ…だって…っ! だってオレは…っ!!」

 城之内はいつの間にかボロボロと大粒の涙を零して泣いていた。衰弱し、力の入らない手でせとの頭蓋骨をギュッと抱き締めながら、海馬に向かって悲痛な叫びを訴える。

「オレは…せとを殺した…っ!! この世で一番大事な…愛していた恋人を殺した…っ!!」

 黄色く変色した頭蓋骨に城之内の涙が零れ落ちる。ポタリポタリと落ちた涙は、骨のひび割れに吸い込まれて消えていった。
 ヒックヒックとしゃっくり上げる城之内を、海馬は暫く黙って見詰めていた。だが次の瞬間、先程からずっと決意していた事を行動に移す為に、その場ですっくと立ち上がる。

 嫌われてもいい。疎まれてもいい。憎まれてもいい。オレはただ…コイツを救いたい。

 そんな強い想いだけが、今の海馬を動かしていた。足を振り上げ、泣き続ける城之内の肩の辺りを蹴りつける。弱り切った鬼の身体は簡単に後ろに倒れ、その拍子に持っていた頭蓋骨がコロリと床に転がった。手を伸ばしてそれを掴むと、海馬はせとの頭蓋骨を持ったまま扉を開けて表に出る。

「海馬…?」

 酷く心配そうなか細い声が背後から聞こえて来たが、海馬は敢えてそれを無視した。

「何を…するつもりだ…?」

 焦ったような声をあげた城之内が、慌てて起き上がって自分を追いかけてくる気配がする。それでも海馬は無視して歩き続けた。
 階を降り履き物を履いて、砂利を踏んで鳥居の辺りまでスタスタと歩く。そんな海馬の後ろを蹌踉めきつつも城之内が付いて行く。砂利道はやがて石畳になり、背後からペタペタと裸足のままの城之内の足音が近付いて来るのが分かった。

「海馬…? 海馬…おい…待てよ…」

 体力が落ちているせいと、そして海馬がこれから何をしでかすのか分からない恐怖で、城之内の声は細かく震えている。その声に海馬はようやっと足を止め振り返った。たかが人間の歩くスピードにも付いて来られない程衰弱しきった鬼を、哀れむかのような瞳で見詰める。

「城之内…。もう一度言うぞ。貴様は自分の罪に甘えている」
「………?」
「そしてそれと同時に、自分の罪から眼を背け逃げている。罪を認めているつもりで罪から逃れ、救われようとしてもまた罪に引き戻される」
「海馬…?」
「こんな中途半端な状態で千年を過ごして来たのだったら、黒龍神だって呆れるというものだ。だがオレはもう甘やかさない。お前を逃がしもしないし縛り付けもしない」
「何を…言って…?」

 言っている意味がまるで分からないとでも言うように首を傾げる城之内に、海馬は強く睨み付けたままハッキリと言い切った。

「貴様が『コレ』によって罪に縛り付けられ…そして罪から逃げているというならば、その元凶をオレは今から打ち砕く。お前には覚悟を決めて貰う」
「っ………!! や、やめ…っ!!」

 海馬の言葉によって、城之内には海馬がこれから何をしようとしているのかが分かった。慌てて掛けだして海馬を止めようとするが、筋肉の落ちた足が絡んでそれを阻んだ。皮肉にも自らの罪から逃げ続けた結果、その逃げ場を救い出す事が出来なかったのである。
 倒れ込む城之内を気にも止めず、海馬は大きく腕を振り上げて、手に持っていたせとの頭蓋骨を思いっきり石畳に叩き付けた。

 パキャン…ッ。

 酷く軽い音がして、古い骨は簡単に粉々に割れてしまった。石畳の上に倒れ込んだ城之内の鼻先に、白い破片がバラバラと散らばる。黄ばんでいると思っていた骨は、存外に白いままだった。

「あっ…あぁ…ああぁっ…!! せと…っ!! せとぉ…っ!!」

 淀んだ世界に城之内の悲鳴が響き渡る。

「うっ…あっ…あぁぁぁぁぁ―――――――――――――――――――――っ!!」

 チリ――――――ン………。

 石畳の上で泣き叫ぶ城之内の事を、ハァハァと肩で息をしながら見詰める海馬の横に、いつの間にかせとが並んで立っていた。口内に溜まっていた唾液をゴクリと飲み込んで海馬が横に視線を走らせると、せとは穏やかな顔をしたまま眼下の光景を眺めている。そして自らの頭蓋骨の骨を必死で掻き集める城之内を見ながら、静かな声で海馬に話しかけた。

『よくやった…救いの巫女よ。これで良いのだ』

 せとの言葉に海馬はただ頷くだけだった。

消しかけのラクガキ...;

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頭の切り替えが上手くいかない二礼です、こんばんは。

暫くぶりに『無限の黄昏 幽玄の月』を書いたのですが…頭の切り替えが上手く出来ませんw
あれ? シリアスってどうやって書くんだっけかな?
てか、ヘタレ城之内が酷過ぎて続きを書くのが辛いw

シリアスと言えば、ずーっと気になっていた『瀬人の丸字に萌える会』に参加して来ました~!
多分近い内に更新されるかと思います。
余り他の方の作品を気にしないで頭に浮かんだ事をツラツラと書いていたら…何か変な事になりました(´∀`;
おかしいな…? もっと甘くしたかったのに…。
私のはともかく、他に参加されている方の小説は素晴らしく甘いものばかりですよ~!!
ホントにもう…こんなに素敵な城海を一杯読めて私は幸せです(*´д`*)ハァハァ
気になる方は下のリンクからどうぞ~♪
瀬人さんの可愛い丸文字の世界を、一緒に堪能しましょうw
 

setonoji.jpg



話は変わりますが、本日散たんとお喋りしてたんですが…。
まぁ…あの…散たんとこの日記を見た方はもう知ってらっしゃると思いますが…。
私のラクガキが公開処刑にあっています…orz
ていうかアレ、消し途中だったんですけどwww(顔のラインが一部消えているのはその為)
あの後アレを全部綺麗に消して「ふぅ、やれやれ」とか思ってたら…時既に遅し。
散たんはとっくに保存していやがりました…;
やっ…やられた…っ!!
まぁ確かにね、最近絵の練習はしてますよ?
イラスト描くのなんて学生時代以来の事なんで、なかなか上達はしませんけどねw
(つーか美術系の学校に行ってた癖に、身体の描き方忘れています…; ダメだこりゃ)
でもね、アレはただのラクガキであって…他人様にお見せするものじゃ…無い…ん…だ…よ…(ガクリ)
あの美麗な海馬の横にあるアレが違和感バリバリ過ぎて、恥ずかしくて堪りませんwwwww
生wきw地w獄wだw


長編『無限の黄昏 幽玄の月』に第十六夜をUPしました。
一番最初にも書いてありますが、久しぶりのシリアスに頭が上手く切り替わりませんでした…w
つー訳でリハビリも兼ねて、少し短めになっています。
無理して書いてもグダグダになってしまうので、この辺はご容赦下さいませ。
でもアレですね~。城誕から帰って来てみれば、城之内の余りのヘタレっぷりにこっちが疲れますよ…w
城誕の方が『いい男』系の城之内君だったので、ギャップが大き過ぎるんですな。
どうやら切り替えが上手くいかないのは、この辺が原因みたいです。
参ったなこりゃw
でもまぁ…こっちでは海馬が何とか頑張ってくれるでしょうし、余り心配はしていないんですよね~。
覚悟を決めた海馬は最強だと思っておりますwww


以下は拍手のお返事でございまっす!!(`・ω・´)


>るるこ様

こんばんは~!
拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(´∀`)

『Lost World』の完結を祝って下さってありがとうございますw
城誕の癖に出だしが暗かったので、自分でもどうなるもんやら…と心配していたのですが、何とか幸せ一杯で終わって良かったですv
私は基本的に甘々好きなので、やっぱりこういう城海が書いていても一番楽しいですね~!
ラブラブっていいですよねw
おまけエロに関しても、読んで下さって本当にありがとうございました~v
海馬視点でのお初エロは、書いていると色々と疲れてくる事があるんですが(私の思考が城之内寄りなのと、あと海馬が初心過ぎてなかなか進まないw)、何とか無事に書き終わってホッとしております(´―`)
ふぃ~w 良かった良かったw
頑張ったお陰で城之内君も幸せ一杯な誕生日を迎えられたようですし、私も安心ですw
これからもこの二人はラブラブでいて欲しいですよね~v

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました!!(・∀・)

『Lost World』のおまけエロと日記の感想をどうもありがとうございます~!
やっぱ…海馬感じ過ぎですか…w
はい、私も書いててそう思いました\(^o^)/
でも本編のラストで『前戯から果ては後戯まで何度も射精させられ』って書いてしまったので、それを現実(?)にする為に猛烈に頑張りました!!w
お陰でかなりしつこいエロになってしまったのですが、楽しんで貰えたようで幸いです…v
ちなみに海馬が挿入されただけで達してしまったのは、Rosebank様の仰る通りに城之内に何度も前立腺を擦られていたのと、後は城之内と一つになれた喜びを海馬の身体が無意識に感じていたからでした…w
こういう表現は攻め側の視点より受け側の視点の方が活きて来るので、一度海馬視点でやってみたいと思ってたんですよね。
今回ずっとやろうと思っていた事を書けて、本当に良かったですw
後戯についても上記の通りに書いてしまった為に、そこまでしっかり書く事が今回の目標でした…w
エロイ感じが出せていたでしょうか…?
Rosebank様のコメントを見れば、上手く出せていたようですけどね~w

それから恵方巻きの秘密についても、教えて下さりありがとうございます~(´∀`)
そうか…。恵方巻きにはそんなエロイ秘密があったんですね…w
また一つ賢くなりましたw
こういう雑学、大好きです~!www

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

第十六夜

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 克也が…病んでいく。
 そしてそんな克也を見て…救いの巫女が泣いている。自信を無くしている。
 辛い気持ちは痛い程分かる。
 思念体のこの身にも…克也が弱っていく有様は堪えるくらいなのだから。
 けれどどうか諦めないで欲しい。
 お前がここで諦めたら、本当に全てが終わりなのだ。
 救いの巫女よ…。生きている人間には死んだ人間には決して出来ない事が出来るのだよ。
 それは奇跡を起こす力。
 奇跡を起こして…愛する者を救う力なのだ。

 




 季節は移り変わる。暖かい春が来て、暑い夏が来て、涼しい秋が来て、そしてまた寒い冬がやって来る。そんな移り変わりを繰り返して、三年目の冬が遣って来た。
 裏山では現世から迷い込んできたヒヨドリ達が騒がしく鳴き交わしている。遠くの空まで響くかのようなその鳴き声を聞きながら、海馬はマヨイガの庭に出ていた。座敷に飾る為の冬の花を捜し、目に付いた白椿の前で足を止める。美しく咲き誇っている花では無く、半分開きかけの花とまだ綻んでいない蕾が付いている枝を選び、その根元に剪刀を入れた。
 パチン…という音と共に枝が落ちる。その枝を受け取って、海馬は白く清らかな花を暫し見詰めていた。

 チリ――――――ン………。

 ふと…冷たい冬の風と共に、いつもの鈴の音が辺りに響き渡った。振り返ると白い着物を着たせとが、黙って立って此方を見ている。椿を手にその場に立ち尽くしていると、ふわりと笑ったせとが海馬に近付いてくる。そして白い手をそっと海馬の頬に這わせた。
 思念体である彼の手が海馬の身体に直接触れる事は出来ないが、それでも微かな熱を感じたような気がした。

『具合はどうだ?』
「悪く無いな」
『そうだろうな。新月明けだというのに、顔色もいい…。貧血は? 大丈夫か?』
「貧血…? そんなもの…なる訳無いだろう」
『………』
「大して食われてもいないのに…。最近では再生もあっという間に終わってしまって、以前のように生命力を使い果たして寝込む事も無くなっている」
『………』
「なぁ…せと。お前はもう気付いているのだろう? アイツが…城之内が…」
『お前を食わなくなっている事か…?』

 せとの静かな応えに、海馬はコクリと頷いた。
 いつの頃からだったろうか…。城之内は海馬を食さなくなっていた。
 初めの一年は普通に食べられていたような気がする。ところが二年目くらいから、新月明けの朝の辛さが軽減していっている事に気付き始めた。食されている最中は痛みと苦しさと辛さの為、城之内の食事の量が減っている事に全く気付かなかったのである。
 最初は気のせいかと思っていた。だがそれから注意深く観察していると、やがて城之内の食事の量が減っている事が明らかとなった。三年目に入ってからはその傾向は顕著になり、ついには内臓には全く触れられなくなってしまった。いつも軽く血を啜り、人体の柔らかい部分の肉を少し食すだけで終わってしまう。

「昨夜だって…。首筋を噛まれて血を啜られて、腕の内側と…腿の内側の肉を少し食われただけだった。再生もすぐに終わってしまって、夜が明ける前には身体の調子も元通りに戻ってしまっている。これでは…」
『そうだな…。これではいつ力尽きるか分からない』

 俯いた海馬に同調するかのように、せとも渋い声を出して眉を寄せた。
 城之内が海馬を食さなくなった事。その理由については、二人とも心当たりがあった。多分それは、海馬とせとの同一視に関係があるのだろう。
 海馬が城之内に食されている間は、如何に快感に気が紛れようとも、痛みや苦しみが完全に消え去る訳では無い。血を啜られ肉を食われ骨を囓られる辛さは、絶えず海馬を襲うのだ。その度に泣いて叫んで身を捩る。必死に痛みに耐えている海馬を、城之内が辛そうな目で見ている事は…もうとっくに気付いていた。

「城之内は…どうしている?」

 海馬の質問に、せとはますます辛そうな顔をしながらフルフルと首を横に振った。

『今日も本殿だ。相変わらず…』
「お前の頭蓋骨を抱いて床に転がっているのか」
『………。あぁ…』

 せとが溜息と共に海馬の問いかけを肯定した。自分も同じように大きく嘆息しながら縁側に腰掛ける。新月明けだという事で流石にずっと立ち続けているだけの余力は無い。軽い目眩を覚えながら、海馬は手に持った白椿を悲しそうな目で見詰めていた。
 いつからこんな事になってしまったのか…。そしていつまでこんな事が続くのだろう…。
 城之内が衰弱していっているのは、海馬の目にも明らかになっている。三年前に初めて会った時のあの恐ろしさや威圧感はもうどこにもなく、海馬に良く見せていたあの明るい笑顔も暗い影の中に潜んでしまって、まるで太陽のように明るかった金の髪もくすんだ色になってしまっていた。
 今や歩き回る体力も無いらしく、せとの頭蓋骨を抱えたまま一日中黒龍神社の本殿の床に寝っ転がっている日々。痩せこけた頬、細くなった手足、虚ろな瞳。
 身も心も…病んでしまった城之内。

「アイツは…このまま死んでしまうのだろうか…」

 冷たい冬の風に拭かれながら、海馬は不安そうにそうポツリと零した。
 見届けの巫女から城之内の話を聞いたとき、本気で心からこの鬼を救ってやりたいと思った。その思いは実際に贖罪の神域に来てからも変わっていない。それどころか…その鬼に対して恋愛感情まで持ってしまったというのに…。

「オレでは…ダメなのかもしれない…」

 何とか城之内を救ってやりたいと思い、この三年間、必死で彼の為に尽くしてきた。だがそれでも…城之内がせとの呪縛から解き放たれる事は無かった。それどころかいっそう強く罪に捕われて、ついには全く海馬を食す事が出来なくなってしまったのである。
 海馬の肉体に爪や牙を起てる度に、過去の幻想に捕われる城之内。海馬の痛みを…苦しみを…、過去のせとと繋ぎ合わせてしまってそれ以上食べ進める事が出来ないのだ。その想いは食人鬼の耐え難い食欲さえも超えて、今や城之内の全てを支配している。海馬はどうしても、その支配を打ち破る事が出来ないでいた。

「救いたいと…思ったのだ…。けれど…もう…どうしたらいいのか分からない…っ。オレが城之内を救い出す前に…奴は死んでいこうとしている。自ら…地獄に堕ちようとしている…っ」
『少し落ち着け、救いの巫女よ』

 不安で不安で仕方が無くて、ボロボロと零れる涙を両手で覆っていたら、頭上から優しげな声が響いてきた。涙を拭いながら顔を上げると、至極穏やかな笑みを浮かべたせとが青い眼を細めて海馬を見詰めている。
 その顔には…不安など全く浮かんでいなかった。

『自信を持て。お前は予言された救いの巫女なのだ。それは間違い無いのだから』
「だが…」
『以前…お前がまだここに来たばかりの頃、私は言った筈だ。私はあくまで死んだ人間で…お前は生きているのだと。生きているお前にしか出来ない事がきっとある筈だ。それが克也の呪縛を解くと…私はそう信じている』
「せと………」

 せとの空気に溶ける手が、海馬の持つ白椿にそっと触れた…。実際に触れた訳でも無いのに、半開きだった花がゆっくりと開いていく。爽やかな香りが辺りに広がって海馬の鼻孔をくすぐった。

「お前…っ! こんな力を持っていたのか…!?」

 目の前で起きた奇跡に海馬が目を瞠ると、せとは穏やかな顔のままゆっくりと首を振った。

『これは私の力では無い。この贖罪の神域では強く願った望みが、ほんの少しだけ…現実で形になるのだ。と言ってもそんなにしょっちゅう出来る事でも無いし、これを知っているのは私だけだからな…』
「お前…だけ…?」
『そう、私だけ。たまに…こうして戯れに花を咲かせているだけだ。花に余り興味の無い克也はそんな事には気付かないし、それ故、外にこの事が伝えられる事も無い。代々の贄の巫女も私の姿は全く見えなかったから、こんな事は知らなかった筈だ』
「………」
『だからこそ私は思うのだ。千年もの長い間私がここにいたのは、やはりお前に会う為だったとな…。お前に会ってこの事を伝える為だと…』
「この事…?」
『奇跡を起こせる力だ、救いの巫女よ。私はこうして花を咲かせる事くらいしか出来ないが、お前にはもっと…違う事が出来る筈だろう? 克也を救う為の…奇跡の力だ』
「奇跡の…力…」

 綺麗に咲き誇った白椿の枝を胸に抱え、海馬はせとの言葉を繰り返す。そして今自分に何が出来るのか…何を求められているのかを考える。頭に浮かんだ光景に、慌てたようにせとの顔を見上げたが、彼はただ穏やかに微笑んでいるだけだった。

『救いの巫女よ…己が信じる事をせよ』
「だ…だが…っ!」
『何度も言うが、私は死んだ人間。そしてお前は生きている人間だ。死んだ人間に遠慮する事など…何も無いのだよ』

 せとはニッコリと優しく微笑んで、海馬に大きく頷いてみせた。そんなせとを見て、海馬は強く決心をする。城之内を救う為の覚悟を…胸に刻んだ。
 そして海馬はその場ですっくと立ち上がった。途端にクラリと軽い目眩がしたが、額に手を置いて目眩が落ち着くのを待つ。暫くして視界がクリアになったのを確認して、白椿の枝の根本を側の手水鉢の水に浸すと、そのまま踵を返して本殿の方へと歩いて行った。


 海馬はもう…何も恐れていなかった。
 城之内を救う為に、彼に嫌われる事も…そして疎まれる事も。もう何も怖くは無かったのである。
 ただ彼をもう一度明るい陽の光の下へ…と。
 この地獄の縁から城之内を救い出す事だけが、海馬の望みになっていたのだ。

誓いの一文

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城之内×海馬。城之内の一人称。
『瀬人の丸字に萌える会』に投稿した作品です(´∀`)

 




 インターフォンが鳴って、取り上げた受話器から聞こえて来た声にビックリし、急いで玄関まで走ってドアを開けたら、目に入って来たのは二年前に別れた元恋人の姿だった。

 二年ぶりに会ったっていうのに全然懐かしい気がしないのは、多分テレビや新聞でしょっちゅう姿を見かけているせいだ。それはまぁ…どうでもいいんだけど、何でこんな所にいるんだ…? そんなデッカイ荷物を持って。だって今コイツは…。

「お前…何やってんの?」

 約二年ぶりの会話の口火は、こんな疑問で切って落とされた。

「何やってるとは何だ。恋人がせっかく会いに来てやったのに、失礼な奴だな」
「元恋人だろ? 間違えんな。つーか、何でここにいるのよ。お前は今、アメリカにいる筈だろ?」

 そうだ。コイツは…海馬はアメリカにいる筈だった。

 今から二年前、オレ達がまだ高校生だった頃。オレと海馬は恋人として付き合っていた。恋人と言ってもそんなに長い付き合いでは無く、期間にして約三ヶ月ちょい位の短い間だったけど。でもその時はそんな短い間でも凄く楽しかったし、それに何より幸せだった。恋人になっても喧嘩はしょっちゅうやってたけど、友人でも何でも無かった頃に比べれば、ちょっとした喧嘩なんて可愛いもんだったよ。ちょっと時間を置けばすぐに頭が冷えて、お互いに歩み寄る事が出来たんだからな。
 そんな幸せな時間がプッツリ切れてしまったのは、卒業まであと半月って頃だった。

『アメリカに行く』

 夕暮れの教室で、海馬が静かにそう言った。
 驚きで目をまん丸にしたオレとは対照的に、海馬は目を細めて夕日に照らされているオレを見ている。

『暫く向こうで事業に専念するつもりだ』
『暫くって…どれくらいだよ』
『二年か…三年か…』
『三年…っ!? そんなに!?』

 咄嗟に頭の中で三年という時間の長さを測ってみた。
 三年…三年…。オレがこの高校にいた時間と同じくらいの…長い時間。

『城之内…』

 余りに突然の事に打ちひしがれているオレに、海馬はあくまで冷静な声で呼びかける。

『三年間…待てるか…?』

 その問い掛けに、オレは無意識に首を横に振った。
 三年間なんて…。そんな長い時間、一人で待てる筈ないだろう? オレが寂しがり屋だって知ってる癖に。何でそんな意地悪言うんだ。今だってなぁ…一週間会えないだけでも辛いんだよ。本当だったら毎日会いたいくらいなんだよ。
 それが…何で三年間も待たなきゃいけないんだ…っ!
 思わず吐露した心情に、海馬は深く溜息を吐いた。そして『そうか…』と酷く残念そうに呟く。

『ならば仕方が無い。恋人関係は一時解消しなくてはならんな』

 こうして海馬は『別れる』という結論を出し、オレは捨てられ一人日本に取り残されたのだった。



 あれから二年、当初言っていた三年には一年ほど早いが、海馬はオレの目の前に現れた。
 確かに二年だか三年だか言ってたけど、別に約束も何もしてなかったからこの登場はまさに予想外で本気で驚いた。
 ていうか、さも当然な顔して家に上がり込むな!! 昔は恋人だったんだろうけど、今は他人なんだからな!!
 大体何でオレのマンションをコイツが知っているのかが不思議だ。このマンションは高校卒業後、就職して金を貯めたオレが父親から独立して借りた部屋だった。卒業直後にアメリカに渡った海馬が知っている筈が無い。それなのに何でここにいるんだろうか…? しかも全然平気な顔をして。

「ふむ…。貴様にしてはまぁまぁな部屋だな」
「おい。勝手に入り込むなよ」
「いいではないか。どうせ今日からオレもここで暮らすのだからな」
「………はい?」
「アメリカでの事業も一段落したし、オレも日本で落ち着ける事になった。という訳で恋人関係復活だ。これから宜しく頼むな、城之内」
「え…? え? え? えぇぇっ!? ちょ…ちょっと待て!!」
「何だ? 何か不都合があるのか?」
「不都合っていうか…っ。突然そんな事を言われても心の整理が…っ」
「そんなもの、後からゆっくりつければ良かろう。どうせ今は女もいないのだろう?」
「っ………!? な…なんでそれを…っ!?」
「甘いな城之内。オレを誰だと思っている」

 腕を組んで得意そうに鼻を鳴らす海馬は、二年前と何一つ変わっていなかった…。
 そう、確かにオレには彼女がいた。
 海馬とは正反対の可愛い女の子。背が低くて全体的に小さくて、髪の毛が長くてフワフワで、その割りに胸が大きくて、明るくて優しくて何より可愛らしかった。
 本気でオレの好みだったんだけど、人生って奴はそう上手くはいかないらしくてさ…。一年ほど付き合ったけど、三ヶ月前に別れた。別れたっていうか…正しくは捨てられたんだけど。
 どうやら海馬はオレの情報を完璧に調べ上げてきたらしい。どうりでこのマンションの場所もバレている筈だ。

「彼女と別れたのを知ったから戻って来たのか?」

 呆れたようにそう言うと、海馬は振り返って黙ってオレの事を見詰めていた。目を細める仕草が、二年前のあの日とダブる。

「オレが彼女と別れてなかったら、どうするつもりだったんだ? それでも戻って来たのか? それともまだあっちにいたのか?」
「………」
「どうなんだよ」
「さぁな…」

 ちょっとムカついてわざと意地悪な質問をしたけど、海馬には全く効かなかった。肩を竦めて簡単にはぐらかされてしまった。ふぃっと横向けられた顔に、盛大に溜息を吐く。こうなると海馬はもう何も言わなくなるのを知ってたから、オレもこれ以上は突っ込めない。
 オレが諦めたのに気付いて、海馬は安心して床に荷物を広げ始めた。嬉々として自分の荷物を整理している海馬を見ながら、オレは苦笑してしまう。
 あれから二年も経っているのに、海馬の癖を覚えていた自分が…何だか可笑しかった。

 




 こうして海馬はオレと一緒に住むようになった。
 海馬本人の口から『恋人復活』という単語が飛び出していた為、やろうと思えばキスもセックスも出来たんだろうけど、オレ自身の気持ちの整理がついて無かったからそういうのはまだ一度もしてなかった。
 ただ一緒に寝起きして、食事して、お互いの会社に出掛ける日々。最初はギクシャクしていた関係も、日が経つに連れて段々と慣れてきた。今では海馬がこの部屋にいるのが当然のようになってしまっている。何の不自然さも感じないのだ。
 だからこそ…余計に感じる違和感。
 海馬が未だオレの恋人じゃ無い事が…とても変だと感じるようになっていた。


 ある日の事。その日は日曜日で、オレは久々の休日に浮かれていた。ここのところ業務が忙しく休日出勤とかで休みが殆ど潰れてしまっていたから、朝からのんびり過ごせるのが嬉しくて堪らなかった。
 朝起きて、顔洗って、朝飯食って、パジャマ代わりに着ているスウェットのままテレビの前に座り込んだ。一ヶ月半程前に買った新作のRPGを忙し過ぎてプレイ出来てなかった為、今日は気合いを入れてやるつもりでいたんだ。
 やっとプレイ出来ると言う嬉しさでニコニコしながら必死になってやってたら、海馬はテーブルの上にノートPCを広げたまま、黙ってプレイ画面を見ていた。たまにオレが謎解きに詰まると、ちょいちょいとアドバイスをくれる。何でそんな事知ってんだって訊いたら、発売当初にモクバと一緒にやって終わらせちまったんだと。三日でクリアってどういう事だよ。RPGはもっとゆっくり楽しむもんだ。
 そんな事を思いながらも、こんな風に海馬とゆったりとした時間を楽しめる事が嬉しかった。なんだか凄く幸せを感じてしまって、オレは自分の心の整理がつき始めている事に気付き始める。それが決定的になったのは、その日の夕方の事だった。
 朝からずっとやってたゲームを一時中断してトイレに行こうとした時、テーブルの上で海馬が何かを書いているのに気付いた。何気なく覗き込んでみると、それは買い物のメモだった。

 牛乳
 食パン
 玉葱
 ほうれん草
 ベーコン
 味噌

 …と書いてある。
 あーもう味噌切れたんだなーなんて思いながら、何だかその文字に違和感を感じて立ち止まってしまった。

 あれ? コイツの字ってこんなんだっけ?

 そう思いながらもう一度よく覗き込んでみる。再生紙のメモ帳に書かれていたその字は…見事なまでの丸文字だった。細長い繊細な指先から生み出される、まるで女子高生が書くような可愛い丸文字。角とかがくるんってなってて、全体的に丸くて可愛らしい。
 そう言えば…と、二年前の事を思いだした。オレは一度だけこの字を見た事があったのだ。


 二学期の期末テストの後の補習。オレは赤点を取った為、海馬はテスト当日に重要な会議があったせいでテストを受けられなかった為に、二人揃って補習を受けていた。最後の仕上げにプリントを一枚埋めなければならなくて、頭の悪いオレは当然それに悪戦苦闘していた。
 当たり前のように海馬はさっさと終わらせてしまったんだけど、いつまで経っても終わりそうにないオレに同情したんだろう。最後まで一緒に残ってくれて、本気で分からないところは丁寧に教えてくれるという親切振りを発揮していた。
 プリントの端っこに書かれるアドバイスの文字と数字。その時も確かに可愛く丸まったその字に違和感を覚えたんだけど、目の前のプリントを片付けるのに必死でそれどころじゃなくて…。
 結局その日はヘトヘトになって帰って海馬の丸文字の事なんて忘れてしまっていたし、その後はクリスマスだ正月だと海馬が忙しくなって共に過ごす時間が減り、更にその後は…言わずもがなだ。

「何だ?」

 オレがじーっと買い物メモを見ている事に気付いたんだろう。いつの間にか海馬が顔を上げて、オレの事を訝しげに見ていた。

「いや…買い物メモ…」
「あぁ、これか。買い物するものを予めメモしておくと、余計なもの買わずに済むだろう?」
「うん…まぁ…そうだな」
「何か買いたい物があるのか?」
「あ…いや、そういう訳じゃ無いんだ」
「………?」

 海馬が意味が分からないというような感じで首を傾げる。
 味噌の後に洗濯洗剤が付け足されるのを見ながら、オレはそう言えば前の彼女もこんな事してたなー…なんて思い返していた。


 海馬とは違う丸文字を書く女性だった。如何にも女の子らしい可愛い文字。よくこんな風に買い物メモを書いて出掛けていた。
 最後に彼女の文字を見たのは別れた時。

『買い物に行って来ます。20時には帰るからね』

 テーブルの上に置かれたメモ。それを信じて待っていた自分。
 けれど彼女は、二十時になっても戻って来なかった。『20時』って書いてあっても今日の『20時』じゃ無いのかもしれない…なんて物凄く馬鹿な事を思いながら、それでも彼女を待っていた。けれど次の日の二十時にも、その次の日の二十時にも、彼女は帰って来なかった。
 三日目。携帯に『ゴメンナサイ』という件名で彼女からのメールが入った。長々としたメールには『他に好きな人が出来た』とか『その人と付き合う事になった』とか『黙って出て来てゴメンね』とか色々書いてあったけど、最後の方に『優しい克也君なら、またすぐに新しい彼女が出来るよ』と書いてある辺りで読むのを止めてしまった。
 その時点で彼女の事はどうでもよくなっていたので、貰ったメールを即削除し、彼女の番号もメールアドレスも同様にその場で削除した。
 何か怒りを通り越して呆れてしまっていたんだと思う。裏切られたと思う反面、どうでもいいやと感じていた。
 恋人に捨てられたのは人生で二度目の経験で…。だけどその時、オレは思い出していた。高校の卒業式の半月前。海馬に捨てられた時の事を…。
 どうでもいいやなんて思えなかった。悲しくて悲しくて、暫く落ち込んで立ち直れなかった。
 彼女に捨てられた時、そこまで悲しくならなかったのはやっぱり本気で彼女を愛して無かったのかなーなんて思う。だってオレが本当に愛したのは…たった一人だけだったから。

「何なんだ…。買いたい物があるのなら言え」

 相変わらずじっと買い物メモを見詰めていたら、可愛い丸文字で洗濯洗剤の下に入浴剤と書き加えた海馬が、不快そうに見返してきた。その顔に笑い返してオレは首を横に振る。

「いや、大丈夫。特には無いよ。ていうかちょっと待ってて。オレも行くから着替えてくる」

 未だ訝しげな顔をしている海馬の頭をクシャッと撫でて、オレは着替える為に自室に戻った。スウェットを脱いでジーパンに履き替えながら「買い物に行っている時に一人で待っているのは苦手なんだよ」と小さく呟く。勿論その声は海馬には届かないのだろうけど、オレは言わずにはいられなかった。

 




 こうして海馬への気持ちを深めていったオレだったけど、よく周りを見渡して見たら随分とあの可愛い丸文字に囲まれて暮らしている事に気が付いた。
 買い物メモに始まり、ちょっとした注意書き。オレへの伝言。自分のアイデアの箇条書き。冷蔵庫には休日のスケジュールやゴミ出しのメモまで貼ってある。
 毎日少しずつ増えるその文字に、オレは何だか安心した。その丸文字を見る度に、海馬がここにいるんだなぁ…って実感出来たから。
 いつもの海馬からは全く想像出来ない、意外な程の丸い文字。だからこそ、余計にその文字が大好きになった。海馬の全てを表しているようで愛おしかった。その文字に包まれて生活する事に、オレは幸せを感じていたんだ。


 次の週の日曜日、いつものようにゲームに勤しんでいたら会社から電話が来た。何でもマシントラブルを起こしたから今から来てくれという内容だった。酷く面倒臭かったけど仕方が無いからゲームを切って、会社に行く準備をする。海馬に「夕方には帰って来るから」と告げると、ニコリと微笑まれて「夕食を作って待っている」と言われた。その笑顔が本当に綺麗で可愛くて、オレはそれだけで幸せ一杯になってしまう。
 休日に急に呼び出された不機嫌なんて何のその。オレは幸せ気分続行のまま作業に掛かり、本来なら三時間ほど掛かる作業をたったの二時間で終わらせてさっさと会社を出た。途中、駅前で見付けたケーキ屋さんで苺の載った可愛いショートケーキを二つ購入し、浮き足立ちながら家に帰る。
 まるで奥さんが待つ家庭帰る新婚ホヤホヤの旦那さんみたいだなーなんて思っちゃったりなんかして、自分でも馬鹿だなーってにやけてしまった。そしてケーキを大事に抱えながら、オレは密かに決心していた。

 帰ったらちゃんと言おう。もう一度恋人になってくれって…オレから言おう。

 ずっと好きだったんだって告白したら、海馬は一体どんな顔をするんだろう。そう思ったら、一秒でも早く海馬に会いたくて堪らなくなる。
 早く早く家に帰らなくちゃ。あともう少しだ。この坂を上ったらマンションが見える。玄関ホールに入って…エレベーターのボタンを押して乗り込んで。上昇してそして停止したエレベーターから一歩足を踏み出せば、自分の部屋のドアが見える。鞄から鍵を取り出して、ノブを回して…。

「海馬…っ!」

 ドアを開けるのと同時に大声で名前を呼んだ。けれど、それに答える声は無かった。
 部屋の中はシンとしていて、人の気配が全くしない。靴を脱いでリビングに入ると、いい匂いが漂っている。コンロの上に置いてある鍋の中には作りかけのスープがあり、これから使う予定の調味料も綺麗に並べられていた。
 料理…まだ途中なのにどこに行ったんだろう…と気になり周りを見渡してみると、テーブルの上に一枚のメモが残されているのに気が付く。

『20時には帰る 瀬人』

 手に取ったメモには、あの可愛らしい丸文字でそう書いてあった。
 あれ…? と思った。
 何だか背筋がゾワッとした。心臓がドキドキする。頭がカッと熱くなってこめかみがピクピクした。
 何で…? 何でだ…? 何でこんなに不安なんだろう…? これはただのメモ。オレに宛てた伝言。『20時には帰る』って書いてあるんだから、きっと『20時』には帰って来る筈。大丈夫…。海馬は約束を破ったりしない。きっと大丈夫。絶対帰って来る。帰るって書いてあるんだから帰って来る…っ!
 そう信じたい筈なのに…オレの身体は不安感で全く身動き出来なくなってしまった。椅子に座り込んでテーブルに突っ伏す。
 大丈夫…大丈夫…と必死になって自分に言い聞かせた。背後の壁に掛けられている時計のチッ…チッ…という秒針の音が、やけに大きく聞こえる。

 時計…あぁそう言えば時間…今何時だろう。会社を出て来たのが確か六時過ぎで…普段なら三十分くらいで帰れるけど…。でも今日は途中で寄り道してケーキ買ってたから、もうちょっと遅い筈だ。となると七時前…かな。七時…という事は、まだ一時間以上あるのか…。八時…八時まで…あとどれくらいなんだろうか…。

 ちょっと起き上がって振り返り、壁の時計を確かめればいいだけだ。もしくは自分の腕に嵌めている腕時計を見ればいいだけ。それだけなのに…オレは怖くて時間を確かめる事が出来なかった。
 怖い…怖い…怖い…。海馬に置いて行かれる事が…怖くて堪らなかった。

 帰って来いよ…っ。ちゃんと…ここに帰って来いよ…っ!
 彼女に捨てられた事は、もうどうでもいいんだ。あんな事、大した事じゃ無い。
 だけどオレは…っ! お前に二度も捨てられたらきっともう立ち直れない…っ!! 生きていけない…っ!!
 お前じゃないと…ダメなんだ…っ!!

 ギュッと身体を硬くして、時間が過ぎるのをじっと待つ。もう『20時』になったのか…? それともまだか…? まだ全然時間が進んで無いのか、それとももうとっくに過ぎ去ってしまっているのか…全く分からない。
 時間を確かめなければ。でも怖くて無理だ、出来ない。もしとっくに『20時』を過ぎていたら? それで海馬がまだ帰って来ていなかったら? もう二度と…オレの元に帰って来なかったら?

 怖い…っ!! どうしよう…怖過ぎる…っ!!

 半分泣き出しそうな気持ちで自分の身体を縮ませた時、背後で玄関の鍵が開く音がした。次いでドアが開閉する音が聞こえ、誰かが靴を脱ぎリビングへと遣って来る。そしてオレの背後で立ち止まり意外そうな声を出す。

「貴様…。何をやっているのだ…?」

 海馬の声だった。今聞こえたのは確かに海馬の声だった。
 海馬が…帰って来てくれた…っ!!

「この箱は何だ…? って、ケーキじゃないか! こんなところに出しっぱなしにするな。あぁ、やっぱり…。せっかくの生クリームが溶けているぞ」
「か…海馬ぁ…っ!!」
「城之内…? な…? な、何で泣いているのだ!? 一体どうし…っ」
「海馬ぁーっ!!」
「うわっ…!!」

 オレの泣き顔に一歩引いた海馬に飛びついて、細い身体をギュウッと強く抱き締めた。何だ何だと戸惑う海馬を無視してワンワン泣いて、「大好きだ」とか「愛してる」とか「恋人になってくれ」とか、もう滅茶苦茶に告白しまくる。オレの告白に海馬は一瞬反応してたけど、数秒後にはもう冷静になって混乱したオレを落ち着かせる事に必死になっていた。

「分かった。貴様がオレを好きなのは分かったから落ち着け…っ。とりあえず何故泣いているのかを教えてくれないか?」
「にっ…にじゅう…じ…には…かえるって…おまえ…っ」
「あぁ、書いたな。オレもお前と同様、仕事の関係で呼び出されたのだ。で? それがどうした?」
「にじゅ…じっ…に…っ。ち…ちゃんと…もど…って…こない…かと…」
「戻って来ているではないか。今何時だと思っているんだ。まだ十九時半だぞ」
「かっ…かのじょ…が…っ。もどって…こな…くて…」
「彼女? 貴様の前の彼女か?」

 海馬の問い掛けに必死になってコクコクと頷く。

「かいもの…に…いって…。にじゅ…じに…もどるって…めも…が…あって…。でも…もどって…こなくて…」
「二十時に戻るとメモがあったのに…戻って来なかったのか?」

 海馬の言葉に何度も何度も頷きながら、オレは必死で訴えかけた。

「でも…それは…もういい…んだ…。ほんと…に…こわいの…は…、おまえに…すてられる…こと…」
「オレに…?」
「にねんまえ…おれ…すてら…れて…。まじで…かなし…く…て…。も…かい…すてられ…たら…もう…むり…。おれ…たちなおれ…ない…っ」
「城之内…」
「もう…すてるな…っ! おれを…すてるな…っ!!」

 しゃっくり上げながら何とか本心を伝える。オレはもう必死だった。海馬に捨てられたく無くて、必死になっていた。
 やがて…暫く押し黙っていた海馬が、クスッと笑ってオレの身体を抱き寄せてくれた。そして宥めるように優しく背中を叩きだす。

「済まんな…。存外に…悲しい想いをさせていたようだ…」
「海馬…っ」
「三年待てないなら、無理に待たすより別れた方が良いと思ったのだ。最初は悲しくても、その内可愛い彼女でも見付けて…幸せになってくれるのでは無いかと。そう思ったのだ。けれどそれが…何よりお前を悲します結果になってしまったようだな」
「海馬…オレ…っ」
「もう何も言うな。約束する。もう二度と離れないと…約束するから」

 そう言って海馬はオレから離れると、いつものメモ帳を取り出してペンを握った。そしてそこに何かをスラスラと書き、オレに手渡してくる。
 流れる涙を手の甲で拭いながら、オレは手渡されたそのメモを見てみた。そこにはいつもの可愛い丸文字でこう書かれていた…。

『海馬瀬人は城之内克也の側を二度と離れない事を誓います』

 可愛らしい丸文字でくそ真面目に書かれたその一文に、思わずプッと吹き出した。
 何だコレ。超可愛いんですけど。

「笑うな。せっかく書いてやったのに」
「わ…笑ってないぜ」
「嘘吐け。笑ってるくせに」

 あぁ…うん、悪いとは思ってる。お前が真剣にこの文章を書いた事は分かるし、オレもそれを真摯に受け止めたいんだけど…。だけどゴメン。笑いが止まらないんだ。
 幸せで幸せで…幸せ過ぎて、笑いが止まらないんだよ…。ついでに涙も止まらない。せっかく止まりかけてたのに…どうしてくれるんだ。


 目を腫らしてボロボロ泣きながら幸せ笑いをしているオレと、ブスッと不機嫌そうにしながらも真っ赤な顔で照れている海馬。奇妙な空気の中にも幸せは漂っていた。
 こうしてオレ達は、再び新たな一歩を踏み出す事に成功した。海馬と共に毎日を暮らしながら、オレは今でもあの愛しい丸文字に囲まれて過ごしている。オレを安心させる、大好きな可愛らしい丸文字。海馬の心が籠もった文字。
 そしてオレ達を繋ぎ合わせたあの『20時には帰る 瀬人』というメモと、その後に書かれた誓いの一文は、今でもオレの宝物になっている。
 あの誓いがある限り…オレ達はずっと愛し合っていけるんだと、そう信じていられるんだ。

今年は西南西

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歳の分の豆を食ったら多分それだけでお腹が一杯になる二礼です、こんばんは。

節分ですね~!
節分と言ってもウチでは何も特別な事はしませんけどね。
小さい頃はちゃんと豆まきをやっていたのですが、後で掃除をするのが大変なので近頃は全くやっていません。
代わりに我が家に根付いた恵方巻き文化…w
最近はコンビニやスーパーでも美味しい恵方巻きが一杯売っているので、どれを買おうか迷っちゃいますよね。
自分で作ればいいんでしょうけど

面倒臭いのでしません!

いや、巻き寿司は作れるんですよ。
学生時代は、某小僧○司でバイトしていたので…w
でもねぇ…。やっぱり面倒臭いw
特に寿司酢は相棒の協力(団扇係)が無いと、一人では出来ないもので…。
たまに手巻き寿司をやる時は、まさに一大イベントになりますw
でも楽しいよね、手巻き寿司♪
大好きです(´¬`)

余談ですが、城海の二人にも是非恵方巻きを食べて欲しいな~なんて考えているのは、私だけでしょうか…?w
並んで同じ方向を見て黙って恵方巻きをパクつく訳なのですが…。
何となく横をチラ見した城之内が、恵方巻きを必死で頬張っている海馬を見て思わずフェラーリを想像してしまい、ブッと吹き出してしまえばいいと思います。
海馬は海馬で「貴様…っ!! 汚いぞ!!」と叫びたいのを我慢してジロリと睨み付け、城之内の倍以上の時間を掛けて何とか完食し、その後でクドクドと説教すればいいですね。
で、素直に謝罪した城之内を許してあげて、後は二人で仲良くすればいいんじゃないかな。
えぇ、色んな意味で\(^o^)/
………。
……。
…。
妄想失礼致しました…w


城之内誕生日企画の『Lost World』におまけエロの『こうしてオレはここにいる』の後編をUPしました。
つ…疲れた…www
海馬視点の長編エロはものっそい久しぶりだったので、何だか妙に肩が凝りました…w
『素質』シリーズのエロエロ海馬ならもっと手早く書けるのですが、初心海馬はなかなか自由にならなくて…辛いですねぇ…w
そういや『言葉の力』を書いていた時も、こんな風に苦労していたような気がします。
はぁ~…やれやれだぜw
でも何とか仕上げられて良かったです(´∀`)
城之内君も御誕生日に素敵なプレゼントを貰えて、幸せ一杯でしょう…w
私も一安心ですwww

大好きな城之内君の誕生日にラブラブな城海を書けて、本当に良かったと思っています。
城誕企画を読んで下さって拍手や感想を下さった皆様、どうもありがとうございました~!!
心からお礼申し上げます。

さて…。
それじゃ気持ちを切り替えて、『無限の黄昏 幽玄の月』の方を何とかしなくちゃいけませんね…。
他にもやりたい事が出来てしまったので、今度はそっちを頑張る事にします!!


以下は拍手のお返事になりますです~v


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(*´д`*)

『Lost World』のおまけエロ(笑)と日記の感想をどうもありがとうでした~!
いや~…疲れました…w
上記にもありますが、初心海馬は余りにも頑な過ぎて自由に書く事が出来ないんですよね~。
お陰でえらい時間が掛かりましたが、何とか無事に結ばれたようでホッと一安心しております(´∀`)
でもアレですね。
最近エロは『素質』でしか書いていなかったので(『無限の黄昏 幽玄の月』の方はエロというよりは、スプラッタ重視だったので…)、自分で書いていても初心海馬の反応が新鮮で堪りませんでした…(*´∀`*)
恥ずかしがったり痛がったりなんて…『素質』の海馬はしてくれないもんなぁ…w
大変で疲れましたけど、とっても楽しかったですv
やっぱり初心海馬は可愛いですよね~!!

それから『Lost World』の真の意味についてですけれど…、そんなに気になさらなくても大丈夫ですよ?w
私自身もそこまで気にして書いていた訳では無かったんですから。
ただやっぱり自分が意図していたものを指摘されるっていうのは、嬉しく感じましたね~!
今回は気付かれなかったようですが、Rosebank様も普段から私の作品の深い部分を読み取って下さるので、コメントを貰う度に感謝しているんですよ(´∀`)
裏に込めたメッセージに気付いて貰えるのって、小説を書いていて一番嬉しいところだと思っています。
本当にいつもありがとうございます~v

さて…、城誕企画も無事に終わりましたし…。
そろそろ『無限の黄昏 幽玄の月』の方の城海も幸せにしてあげませんとね!
ラブラブからシリアスへと、頭を切り換える事にしますw

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

*こうしてオレはここにいる(後編)

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 お互いに身に纏っていた衣服を全て脱いで、オレは全裸で俯せになっていた。腰だけを高く上げさせられて、信じられない場所を舌で舐められている。城之内の舌が後孔の縁を舐め孔の中を出し入れされる度に、そこがグズグズに溶けていくように感じた。グッチュグッチュといやらしい水音が辺りに響き、羞恥で全身が熱くなって腰がガクガクと震える。
 そんな場所を城之内に見られているというだけでも恥ずかしいのに、それどころか直接舐められているなんて…とてもじゃないが耐えられない。だがそれでも…オレは何とか耐えていた。逃げ出したいという気持ちを無理矢理抑えつけて、シーツを掴み下唇を噛み締めてじっと我慢する。

「んっ…ぅ…!」

 やがて後孔の縁に吸い付くようなキスを施した城之内は、舌の代わりに濡れた後孔に指を入れてきた。グググッと付け根まで押し込まれて、内壁を指の腹で撫でられる。微かに感じる痛みと圧迫感と、そして訳の分からないジンジンとした感覚に翻弄された。

「ふっ…! んぐ…っ。んっ…うんっ…!」

 羽根枕に顔を埋めて、くぐもった喘ぎ声を上げる。「気持ちいい?」という城之内の問い掛けに、弱々しく首を振った。気持ち悪い訳では無かったが、気持ちいいとも感じられない。

「よ…く…分から…ない…っ」
「さっきもそうだったけど、初めてだからなぁ。すぐには快感に結びつかないか」
「ん…っ! あ…ぅ…」
「ここは? ダメ?」
「ふぅっ…! くっ…んっ」
「じゃ…ここは?」
「ダ…ダメ…だ…っ」
「そっか…。んじゃ、こっちかなぁ…?」
「ッ…!! ひぁっ…!?」
「え? あれ? 海馬?」

 一本だった指を二本に増やして、城之内はオレの中を丁寧に探っていた。少しずつ場所を移動しながら、オレの感じる場所を見付けようとしている。だが、オレはなかなか快感を感じる事が出来なかった。もう諦めてさっさと挿れてしまえば良いのに…と、そう思った時だった。
 ふと…何かの拍子に城之内の指先がある一点を掠めた時、信じられないような快感が脳天にまで駆け上がって身体全体が痙攣した。
 前には一切触れられていない。それなのに感じる強烈な性的快感。

「あっ…! あっ…あっ…あぁっ!!」

 城之内の指がそこに触れる度に、身体がブルブルと震えるほどの快感に苛まれる。声を抑える事が出来ない。腰が勝手に上がっていく。城之内もオレの変化に気付いたのだろう。わざとそこばかりを何度も擦って刺激してきた。

「海馬…? ここ…いいの?」
「く…あぁっ。わ…から…な…っ!」
「分からない? こんなによがってるのに?」
「あぅ…っ! へ…変…だ…っ。そこ…変だ…っ! あぁっ…!!」

 ビクリビクリと身体が痙攣する。喘ぎが止まらない。言葉にならない声をあげてただ震えるだけのオレに、城之内はしつこく何度もその場所を解している。そして自分の叫声が途切れたほんの一瞬、背後で城之内がゴクリと生唾を飲む音が響いた。ズルリと指を抜かれ、何か別の物をピタリと押し当てられる。熱く感じるそれが何なのか理解する前に、城之内はオレの中に入って来た。

「ひっ…! うっ…ぁっ!! あっ…あぁぁぁぁっ!!」

 無理矢理入って来る熱の固まり。狭い体内を押し広げて進んで来る為、痛みと圧迫感が尋常では無い。内臓が押し潰されそうな感覚に、悲鳴を上げて身体をずり上げた。

「うぁっ…! やっ…やぁっ…!」
「海馬…っ。落ち着いて…。力抜いて…大きく息して…っ」
「やっ…嫌だ…っ! 痛…い…っ! 苦しい…っ!」
「うん、ゴメン…っ。分かってるけど…ちょっとだけ我慢…して…っ」
「ふっ…あ…あぁっ…! んっ…ぁ…? っひ…! や…う…嘘…っ?」
「………? どうした…海馬?」
「う…嘘だ…っ。あぅ…っ! あ…あ…あぁぁっ…!」

 それは突然だった。城之内がオレに入って来た瞬間、感じたのは痛みと苦しみだけだった筈なのに…。気が付いたらオレは、射精していたのだ。
 トプトプとシーツに零れるオレの精液。熱を吐き出す度に腰から伝わる快感でザワザワと身体が震える。長い時間を掛けて全ての熱を放出しきって、力を失ったオレはガクリと上半身をシーツに沈めた。ゼェゼェと荒く呼吸していると、城之内の手がオレの股間を探ってくるのが分かった。

「海馬…お前…」

 戸惑ったような城之内の声が聞こえる。濡れた股間とシーツの感触に、オレの身に何が起こったのか分かったのだろう。呆れているのか、それとも興奮しているのか。深い溜息が背後から聞こえた。

「挿れただけでイッちまったのか…」
「はっ…ぁ…。う…うる…さ…い。笑うなら…笑え…」
「何言ってるんだよ。笑ったりしねーよ。こんなに嬉しいのに…」
「………?」
「やべー…。超嬉しい…っ。海馬…お前凄いよ。初めてなのにオレでこんなに感じてくれたんだなぁ…。マジで滅茶苦茶嬉しい…っ」

 本当に嬉しそうにそう言って、城之内は背後からオレの身体を抱き締めて来た。その拍子に体内に入ったままの城之内のモノがゴリッと内部を抉って、その何とも言えない痛みと圧迫感に小さく呻いてしまう。オレが身体を硬くしたのに気付いた城之内は、「あ、ゴメン…ッ」と謝って慌てて上体を起こしていた。途端に背中に感じた冷たい空気に、ブルリと身震いをする。
 興奮して体温が上がっていた城之内に強く抱き締められていた為、オレの背中は奴の胸に密着して熱い程の体温を感じていたのだ。それが突然離れて行った為、性行為で汗ばんでいた背中が急にヒヤリとして不快感を覚えた。思わず肩越しに振り返り、少し不満げに城之内を睨み付けると、オレの視線に気付いた奴は優しく微笑んで琥珀の瞳を少しだけ細める。その顔が至極男臭くて、顔が一気に熱くなったのが分かった。

「何? 顔赤いよ?」
「う…煩い…」
「オレに惚れ直しちゃったとか?」
「煩いと言っている…っ」
「くっくっく…。ホント…可愛いなぁ…」

 肩を震わせて笑った城之内は、そのまま身を引いてオレの中からペニスを抜き去った。ズルリと何かを引き摺るような妙な感触にゾワリと肌が粟立つ。
 身体を貫いていたモノがいなくなって、オレはその場でガクリと倒れ込んだ。下半身は未だ自分の身体では無いような感じがしていたし、城之内を受け入れた場所はズキズキと痛みを訴えている。けれど、どうしても一つだけ引っ掛かった事があって、オレは視線を上げて城之内の方を見詰めた。
 困ったような表情でオレを見ている城之内の顔。そこから少しずつ視線を下にずらせば、相変わらず硬く勃起したままのペニスが目に入ってくる。
 何度も言うが、オレだって男だ。今城之内がどういう状態に陥っているのか、同じ男として良く分かっている。

「お前…。まだなのだろう…?」

 そう問い掛けると、城之内は苦笑して後頭部をガシガシと掻いて首を捻る。

「うん…まぁ…そうだね」
「続きは…? しないのか?」
「………」
「オレは別に構わない」
「………」
「まさか…もうしないつもりなのか?」
「いや、それは無い。するよ」

 はっきりきっぱりとそう言い切った城之内は、俯せで倒れ込んでいるオレの身体に手を掛けて、ゆっくりと仰向けの状態に寝転がした。丁度腰の辺りに自分が放った精液で濡れたシーツが当たり、ヌルリと濡れたその感触に眉を顰める。オレの様子に「どうした?」と城之内が訊いて来るので「シーツが…」と言い淀んだら、クスッと笑われて「仕方無いから我慢して」と言い含められてしまった。

「どうせもうグチャグチャなんだから、今更気にしても仕方無いだろう?」
「そ…それはそうなんだが…」
「それにこれからもっと気持ち悪い事になるんだし」

 仰向けになったオレの身体を熱い掌で撫で回しながら、城之内はそう言って少しだけ辛そうな顔をした。
 腹部を撫で回していた手が下がり、内股を優しく撫でて、更にその奥へと入り込む。先程まで城之内のペニスを受け入れていた後孔は、再び入り込んで来た指を二本とも何の苦労もなく飲み込んだ。それでもどうしても感じてしまう圧迫感に微かに呻いても、城之内は指を抜こうとはしない。グチュグチュと濡れた音を起てながら、何度も指を出し入れしていた。

「あっ…うっ…」
「ここ…痛い…よな。充血して真っ赤になってるし」
「うっ…! くぅ…んっ」
「初めてだもんな…。辛いよな…」
「じ…じょ…のう…ち?」
「でも…ゴメン。オレはそれでもお前が欲しい」

 切実な顔。オレが欲しくて堪らないのに、オレを傷付けたくないと願う顔。オレを愛している…城之内の顔。
 その顔が嬉しかった。その顔が愛しかった。その顔があるからこそ…全てを許せると思った。
 確かに城之内の言う通り、オレの後孔は今も痛みを訴えている。ズキズキと鈍く痛み、内部が熱を持っているのが分かる。もう一度挿入されたら、今度こそ本当に壊れてしまうのでは無いかと思うくらいに。
 それでも…それでも…。

「構わん。早く…来い」

 城之内に向かって両手を差し伸べた。
 例え壊れてしまっても構わない。オレは後悔しない。それでもオレは…城之内が欲しかった。

「オレだってお前が欲しいのだ…」
「うん」
「早くお前を感じさせてくれ」
「うん」
「愛してる…。大好きだ、城之内」
「うん。オレも愛してる。海馬…大好きだよ」

 にこやかに微笑んだ城之内がオレの片足を担ぎ上げる。赤く腫れた後孔に再び城之内のペニスの先端が当たるのを感じて、オレは目を閉じて力を抜いた。
 挿入される際の力の抜き方はもう覚えた。後は城之内を受け止めるだけ…それだけなのだ。



 暗い寝室内に、異様な音が響いていた。
 肌がシーツに擦れる音。城之内の腰が打ち付けられる度に響く肉を打つ軽い音と、いやらしい粘着質な水音。荒い息遣いと呻き声。
 お互いに言葉も無く、夢中で抱き合っていた。

「あっ…! うっ…ふ…っ!! っ…ぅ…!!」

 最初は気持ちいいなんて全く感じられなくて、粘膜を擦られる痛みと内臓を押される圧迫感に呻くだけが精一杯だった。気を抜けばすぐにでも逃げ出したいという欲求を訴える身体を叱咤して、何か縋り付くものを捜して手を彷徨わせる。そうしたらその手を掴まれて、城之内によって奴の首へと導かれた。

「掴まってて…。辛かったら引っ掻いてもいいから」

 優しくオレを労る声に安心して、スルリと自分の腕を城之内の首に引っ掛ける。汗びっしょりの背中に掌を這わし、ぐいっとその身体を引き寄せて自分に密着させた。そんなオレの行動に城之内はクスリと笑うと、滑り落ちた足を抱え直して再び腰を動かす。敏感になった粘膜が城之内の熱を伝えて来て、オレは背を引き攣らせて喘いだ。

「んっ…! あっ…はぁ…っ!! ひぁっ…!?」

 やがてどれくらい経った頃だろうか。ただ痛くて辛いだけだった自分の内部に、熱が燃え広がるように何か別の感覚がじわりと浸みている事に気付いた。最初はただ気のせいかと思われたその感覚も、城之内が最奥を抉る度に強くなる。まるで電気がショートするかのように頭の中がパチパチして、オレは漸くその感覚が快感である事に気付いた。

「あっ…んっ!! やぁっ…!! じょ…の…うちぃ…っ!! た…たすけ…っ!!」

 痛みや苦しみが消え去った訳では無い。それなのに、快感がその他の感覚を覆っていく。身体に熱が溜っていく。
 自分ではどうする事も出来ない感覚に苦しんで、オレは目の前の身体に力強くしがみついた。掌に感じるしっかりとした筋肉に爪を立てる。
 助けて欲しかった。オレを解放して欲しかった。
 ボロボロと泣きながら喘ぐオレに、城之内は優しく微笑んで頭を撫でてくれる。そして頬に軽く唇を押し付けられ、耳元で熱い吐息を漏らした。

「海馬…。気持ちいい?」

 散々「分からない」と答えてきた問いに、オレはコクコクと夢中で頷く。
 今なら分かる。気持ちいいのだ。城之内に触れられる事が…とても気持ちいい。

「も…無理…っ! 気持ち…いい…っ! 助け…て…くれ…っ!!」
「うん。オレも気持ちいいよ…。もう…最高…っ」
「ダメ…だ…っ! あっ…もう…っ!! んぁ…っ!!」
「海馬…? イキそ…?」

 城之内の問い掛けに何も答えられない。ただ涙をボロボロと零し、苦しくて堪らなくて頭を左右に振った。
 そして城之内のペニスがオレの最奥を強く突き上げた瞬間、最後の箍が外れたようにオレはブルブルと痙攣しながら射精してしまった。

「――――――――っ!!」

 声が出ない。いや、実際は叫んでいたのかもしれない。息をする事も出来ず、吐精の快感に酔う。

「ぅっ…!! くっ…ふ…っ!!」 

 身体を硬直させ、弓なりになって溜まりに溜った熱を放出していた。達するのと同時に体内のペニスを強く締め上げたらしく、城之内もオレの中でイッてしまったらしい。オレを抱く城之内の身体も細かく震えていて、痛い程に強く抱かれ耳元では苦しげな呻き声が聞こえていた。じゅわっ…と体内で広がる熱を感じて、それが愛しくて堪らない。

「じ…城之内…」

 未だ息は整わなかったが、小さくその名を呼んだ。オレの呼びかけに城之内が顔を上げ、汗に濡れた顔でニコリと笑う。それがとても男臭くて、その格好良さに思わず顔が熱くなった。

「とうとう…ヤッちまったな…」
「…あぁ………」
「ゴメン…。最後はちょっと…無理しちゃったな…」
「別に…構わない…」
「ホントにゴメンな。痛いだろ…?」

 そう言って城之内は掌で優しくオレの腹を撫で始めた。熱い掌がいつも以上に熱を持って汗ばんでいる。

「今…ここに…オレのが入ってるんだよな…」
「っ………」
「ありがとう…海馬。オレ…ホントに物凄く…嬉しいよ」
「んっ…うっ…っ」
「海馬…?」
「あっ…! あふっ…!」
「え…? ちょっ…っ」
「あっ…あっ…んやぁ…っ」
「か、海馬!? どうし…っ」
「ひゃあぁっ!!」

 目を丸くして城之内が驚いていた。だが、本当に驚いたのはオレの方だった。
 城之内はただオレの下腹部を撫でていただけ。自分のペニスが入り込んだ…そして精液を注ぎ込んだそこを優しく撫で回していただけだった。オレの体内に埋め込まれたままのソレは大分力を失っており、勿論内部を刺激するような事も無い。
 それなのに…オレは感じてしまったのだ。
 城之内に下腹部を撫で回される度にザワザワとした快感が全身を包み、我慢出来なくて吐精してしまったのだ…。

「海馬…、お前…」

 ハァハァと苦しげに息を整えていると、目を見開いた城之内が心底感心したような目でオレを見詰めているのに気付いた。

「凄過ぎだろ…」

 酸素が足りていない頭では、城之内の言葉がどういう意味を持つのかさっぱり理解出来ない。ただオレを見詰める城之内の瞳が嬉しそうに輝いているのを見て、その言葉が悪い意味で放たれたのでは無いという事が分かる。
 一晩に一気に四度も射精して、疲れと眠気でクラクラとする頭の中で、城之内の言葉に対する返事を必死に考えていた。だがどうしても上手い言葉が出て来ないので、「まぁな…」とだけ答えて目を瞑る。

「ま…まぁなって…おい!!」

 オレの返事の何が気にくわなかったのか…。急に焦ったように身体を揺さぶってくる城之内を無視して、オレはそのまま意識を眠りの中に沈み込ませた。
 城之内…。オレは今猛烈に眠いんだ…。続きはまた…明日に頼む…。
 心の中でそう呟いて、オレは完全に意識を失った。



 そして…夜が明けた今。オレは昨晩と同じように城之内に身体を揺すぶられている。「大丈夫か?」とか「痛むのか?」とかオレを心配する言葉の中に、たまに「おい、昨日の『まぁな』ってなんだよ」という問い掛けも含まれていた。
 そんな事を問われても、オレには何も答えようがない。ますます深く布団の中に潜り込みながら、オレは恥ずかしさで目も開けられなかった。
 昨夜は意識が朦朧としていた為、自分が放った言葉の重要性を全く分かっていなかったのだ…。

 まぁなって…そ…そんな…っ。
 有り得ないだろう!!

 これでは自分が如何に感じやすく何度も射精出来る事を、まるで自慢しているかのようでは無いか…っ!!
 海馬! 海馬!! と叫ぶように何度もオレを呼ぶ城之内に、オレはますます身体を硬くする。無理矢理掛け布団を剥がされそうになって、慌てて布団を掴んで引き戻した。そして耐えきれずに大声で叫んでしまったのだ…。

「恥ずかしいんだから…放って置いてくれぇーっ!!」

 …と。

 その後…。
 オレのある意味本当に恥ずかしい雄叫びが、城之内の格好の持ちネタになった事は…言うまでも無かった。ニヤニヤ笑われながら揶揄される度に舌打ちをするが、それでも幸せを感じてしまうのだから救いようが無い。
 今日も城之内の優しい腕に抱かれながら、オレは自分がここにいられる幸福を噛み締めていた。

 こうしてオレはここにいる。今日も…明日も…多分ずっとな。

雪...だと...っ!?

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雪の予報にビックリな二礼です、こんばんは。

おぉ…!! ついに雪が降りますか!!
と言っても都心では数㎝程度みたいですけどね~。雪国の人には笑われてしまいますな!
でも普段全く雪が降らない地域なので、たった数㎝でも大事なんですよ!!
電車は止まるし、車はスリップするし、人も転ぶしでね…;
この日記を書いている最中にもみるみる外の温度が下がって来ているので(エアコンの室外機の温度を調べる事が出来ます)、雪が積もるのは間違い無いんでしょうね…;
そういや去年は雪らしい雪が降らなかったので、二年ぶりの雪になるのかな?
一昨年も丁度この時期に大雪が降って、大変な事になっていたような気がします…w
(確か節分の日だったと思います。大雪の中セブンに予約していた恵方巻きを買いに行ったので…w)

恵方巻きと言えば、アレは良い文化ですねぇ~w
関東ではつい何年か前から漸く根付いたのですが、最初にあの太巻きをそのまんま食べると聞いた時にはビックリしましたよ!!
でも子供の時に憧れていた丸食い(太巻きとかホールケーキとか…w)を堂々と出来るので、個人的に大好きな文化ですwww
小さい頃は巻かれた太巻きをそのまんま食べようとした日にゃ「行儀が悪い!!」ってメッチャ怒られてたもんなぁ…;
好きなものをお腹一杯食べたいっていうのは、人類共通の夢だよね?www


城之内誕生日企画の『Lost World』におまけエロの『こうしてオレはここにいる』の前編をUPしました。
本当は…一話で収めたかった罠…orz
一話で収めて『無限の黄昏 幽玄の月』の再開をしたかったのです。
なのですが…。
「せっかくの御誕生日だし、城之内君にもいい想いをして貰おう~!!」と気合いを入れて書いたら…、どうにも纏まりませんでした…。
大体にしてエロを書く予定も無かったのに。
でも書きたくなっちゃったものは仕方無いのだ!!
…と早々に諦めて、やりたい事をバッツリやる事にしましたwww
という訳で城誕企画、もう少々お付き合い下さいませ~!!

あ、そうそう。
実はこの『Lost World』という題名なんですが、二つの意味を掛けていたんですよ。
一つは城之内君が消えた世界という意味でのLost World。
もう一つはあの『冷たい世界』が、海馬が最後に願った為に消えてしまったという意味でのLost World。
つまりどっちも『失われた世界』なんです。
今回貰った拍手コメントで、ちゃんとこの二つの意味に気付いていらっしゃる方が居て、本当に感動しました…(*´д`*)
こういう事があると、小説書いていて良かったなぁ~と思うんですよね~!
幸せですv ありがとうございました~!!


以下は拍手のお返事になりま~す(・∀・)


>るるこ様

こんばんは~♪
拍手とコメント、どうもありがとうございました~(´∀`)

『Lost World』の幸せ城海にキュンキュンして下さってみたいで、良かったです~v
ラブラブな城海を目指して書いていたので、るるこ様のコメントを見て嬉しかったです(*´∀`*)
良かった…。ちゃんとラブラブになっていて良かった…w
そんなこんなで宣言通りおまけエロを書いてみましたが、一話で終わりきらず…済みません…orz
気合いが入り過ぎました…www
次回で何とか終わらせて『無限の黄昏 幽玄の月』の方も再開させますので、どうぞ向こうの城海も見守っていて下さいませ…w
うん、アイツ等も幸せにしてやらないとね…(´―`)
というか、あっちの城之内のヘタレっぷりをまず何とかしないとな…w

それではこれで失礼致します。
ではでは~(・∀・)ノシ


>1月31日の14時台にコメントを下さった方へ

こんばんは~(*'-')
拍手とコメント、ありがとうございます~!!

城誕企画を褒めて頂けて嬉しかったです!
それと『Lost World』という題名の本当の意味に気付いて下さって、ありがとうございました~(´∀`)
前半は少し悲しい物語でしたので、誕生日企画らしく無く、ちょっとしたチャレンジだったのですが…。
読んで下さった方々が少しでも楽しんで頂けたのならば、もうそれで良いと思っています(´―`)
私も頑張って書いた甲斐がありました。
あの二人は今後もずっとラブラブで過ごしていくんだろうと思いますw

それではこれで失礼致します。
感想ありがとでした~v
ではでは~(・∀・)ノシ


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(・∀・)

城誕企画の『Lost World』と日記の感想をどうもありがとうでした~。
何とか綺麗に纏まってくれたようなので、此方としてもホッとしております…w
本当はエロを書くつもりは無かったんですけどね~。
『Lost World』の海馬が余りにも初心なのと、城誕企画なのに肝心の城之内が余り良い想いをしていないのが気になって、思い切って書く事にしちゃったんですw
そしたらねぇ…気合いが入り過ぎちゃいまして…orz
でもお初エロっていいですよね~w
今回は城之内君の方も余りセックスに慣れていないという感じで書いているので、もう二人揃って初々しくて堪りませんwww
お初エロもいいですけど、熟練エロもなかなか味があっていいもんなんですけどね。
もう何度も肌を合わせているけれど、ふとした時に改めてお互いの魅力に気付いて再燃しちゃうとか…大好きですw
今年もこんな感じで、色んなエロに挑戦していきたいと思っていま~すwww

Rosebank様のコメントを読んで気が付いたのですが、そう言えば『寂しがり屋の黒兎』もエロシーンありませんでしたね~。
でもあの城海は『Lost World』の城海とは違って、かなりスレていますからね…w
海馬も初心ではありませんし、あまりラブラブなHにはならないんじゃないかと…w
むしろ城之内君が夢中になり過ぎて、半レイプ状態になってそうな気がします。
まぁ…その後が幸せそうだからいいんですけどね(´∀`;

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

*こうしてオレはここにいる(前編)

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『Lost World』のおまけ話。
初エッチをした時のお話です(*´д`*)
幸せ一杯のエロエロ城海をどうぞお楽しみ下さいませ~w

 




「海馬…っ! おい、海馬…っ!」

 頭から掛け布団を被って丸くなっているオレの身体を、目を覚ました城之内がゆさゆさと揺さぶる。直接見なくても分かる、心から心配したような声。だがオレはその声に応える事が出来ないでいた。
 というか…出来る訳が無かろう!! 昨夜のあの出来事からまだ数時間しか経っていないのだぞ!!
 そんな状態で城之内とまともに目が合わせられる筈が無いというのに…っ!!

「おい、海馬。大丈夫か? 具合…悪いのか? まだ痛むのか?」

 あぁ…頼むからそんな事をそんな風に訊いてこないで欲しい。昨夜の事を思い出すだけでも、身体がカッと熱くなる程恥ずかしくて堪らないというのに…っ!
 ほんの少し布団から顔を覗かせれば、部屋の中はすっかり明るくなっていた。大きな窓から差し込む冬の朝日。それが心配そうにオレを覗き込む城之内の裸体を照らして、くっきりと見えた身体のラインにまた顔が赤くなる。
 身体を使って働いているからだろうか。城之内の身体は思った以上にしっかりとしていて、筋肉質だった。十代後半でまだ成長途中であるにも関わらず、既に完成されたかのような男らしい身体つき。オレもそれなりにしっかりとした筋肉が付いているとは思っていたが、城之内と比べると自分の細身の身体に愕然としてしまう。
 そして同時に思い出してしまった。
 自分が昨夜、あの身体に抱かれたのだという事を…っ!!

「………っ!!」
「か、海馬っ!?」

 再び布団を頭から被って潜り込んだオレに対して、城之内が焦ったように声を掛けてきた。
 頼む城之内…っ。そんなに構わないでくれ…っ! もう放って置いてくれ…っ! オレは…オレは…っ。
 恥ずかしくて堪らないんだ…っ!!



 昨夜、城之内に手を引かれて寝室まで行ったオレ達は、暫くベッドの前で立ち尽くしていた。手を強く握ったまま、互いに互いの動向を探っている
 これから何が起こるのかは分かっていた。ベッドの上に移動しなければならないという事も分かっていた。だが、どう行動したらいいのかが分からない。
 とりあえずこの手を離した方がいいのだろうか…とか。ベッドの縁に座った方がいいのだろうか、それとももう寝っ転がってしまった方がいいのだろうか…とか。服は最初に脱いでおくべきなのだろうか、それとも行為と共に脱いでいくべきなのだろうか…とか。
 とにかく色々な事が頭の中を駆け巡り整理が付かない。ただでさえこの状況が恥ずかし過ぎて、頭がグラグラしてまともな思考も出来ないというのに…。

「海馬…」

 どのくらい時間が経った頃だろうか。城之内が遠慮がちにオレの名を呼んで、そっと手を引いてきた。その力に逆らわずにそのまま城之内の腕に抱かれると、数歩後ろに下がって…そしてベッドに押し倒される。
 背中に慣れたベッドのスプリングの感触が伝わって来て慌てて視線を上げれば、真剣な光を讃えている琥珀色の瞳に出会った。

「本当に…いいの? 抱いちゃうよ?」

 いつもの城之内からは想像出来ないような不安な声。そして震える声の中に、明らかな欲情も見え隠れしていた。
 本当だったら今すぐにでもやりたいに決まっている。その証拠にオレの肩をシーツに押し付けている手がブルブルと震えていた。大きな掌がじわりと汗ばんでいるのが伝わって来る。
 やりたければさっさとやればいいのに…。恋人なんだし事前承諾も得ている。ここで多少無理な行動に出ても、それはそれで当然だと思うし、オレも怒らない。
 なのに城之内は我慢している。最後の最後までオレの意志を尊重するつもりなのだ。
 そういう城之内の気持ちを…心から嬉しいと思った。そして城之内自身の事を愛おしいと感じ、そんな城之内に愛されているという事実を心底幸せだと思う。

「構わないと言っただろう?」

 そっと手を持ち上げて、城之内の頬に掌を当てた。愛おしくて…ただただ城之内の存在が愛おしくて…。頬を辿って額から荒れた金髪までを優しく撫でる。

「好きに…するがいい。誕生日プレゼントだ」
「誕生日プレゼント?」
「あぁ、その通りだ」
「誕生日プレゼントかぁ…。という事は、誕生日以外は抱かせてくれないって事? それともセックス解禁がプレゼントって事なのかな?」
「どっちでも。お前の好きに取ればいい」
「そっか。じゃぁ『解禁』の方がいいな。誕生日だけなんて嫌だし。てか、オレ我慢するのなんて絶対無理だし」

 まるで悪戯っ子のように城之内がニッと笑った。その笑顔が余りに幼く見えて、オレもプッと吹き出してしまう。
 その後、暫く二人してクスクスと笑い合っていた。これから初めてセックスをしようとしている恋人同士にあるまじき状況。けれど異様に甘ったるく感じられるその雰囲気に流されて…、やがてそれは城之内のキスによって終わりを迎えた。

「んっ………!」

 甘く深いキス。口の端から唾液が零れ落ちても、城之内はキスを止めようとはしなかった。
 一月二十一日に初めてこのキスを施された時、オレは流れ落ちる唾液が気持ち悪くて、それを早く拭いたくて堪らなかった。けれど今は不思議な事に、そんな事は微塵も感じられない。それどころかもっと深くキスをして欲しくて、拙いながらも必死で城之内の舌を追った。

「んっ…んっ…」

 舌を絡ませる度にクチクチと水音が鳴って恥ずかしい。それなのに止めたいとは思わない。温かい舌を夢中になって絡ませていたら、着ていたパジャマがハラリと肌蹴る感触に気付き、慌てて視線を下に向けた。
 どうやらキスをしている最中に、パジャマのボタンを全て外されていたらしい。
 一体いつの間に…。全く気付かなかった…。

「海馬…」
「ぁ…っ」

 唇を外され、城之内に熱っぽく名前を呼ばれる。互いの唾液で濡れたままの唇が移動し、首筋をチュッと音を起てて吸われた。微かに感じたくすぐったさに小さな声を上げれば、城之内が満足げに笑う気配がする。
 濡れた唇はそのままあちこちに吸い付いては離れ、離れては吸い付きを繰り返し、やがてオレの胸に辿り着いた。乳首の周りをチュッチュッとわざと音を起てて吸われ、そのせいで感じた気恥ずかしさに思わず目をギュッと瞑った瞬間、乳首自体を口に含まれてしまった。

「ふぁっ…!?」

 敏感な先端を温かな口内に含まれて、舌で舐められて強く吸われる。途端にビリビリと感じた快感に、堪らず背を仰け反らせて喘いだ。

「気持ちいい?」

 城之内は自分の唾液で濡れた乳首を指先で捏ねながら、もう片方の乳首も熱い舌で舐めていた。口に含まれた乳首を強く吸われ、同時に指で弄られている方の乳首をギュッと指先で押し潰されると、それだけで腰の辺りがゾワゾワとする耐え難い感触に襲われる。
 フルフルと首を横に振りながら「分からない…っ」と告げると、何故か城之内は嬉しそうに笑っていた。

「分からないなら教えてあげる。海馬、これが気持ちいいって事なんだよ」

 そう言ってニッコリと笑った城之内は、そのまま頭をずらして今度はオレの臍の辺りに吸い付いてくる。下腹部から感じる何とも言えない擽ったさにピクピクと跳ねていたら、突然パジャマのズボンの上から自分の大事な場所に触れられて驚いた。熱い掌でサワサワと股間を撫でられて、背筋をゾクリと駆け上がる何かに怯えて首を振った。
 怖かった…。とても怖かった。あれだけ覚悟していたというのに、何故だか急に恐怖を感じて耐えきれなくなった。

「お、勃ってる…」
「っ…! あ…っ」
「良かった。ちゃんと気持ちいいみたいだな…って、海馬?」

 城之内はそんなオレの気持ちに気付かずに、ズボンの上からオレのペニスを探ってキュッと握り込む。その途端、再びゾワリと背筋が震えて、訳の分からない恐怖に頭が混乱した。
 ブンブンと顔を左右に振って、何とか城之内の身体を押しのけようとする。だが必死の抵抗も虚しく、オレの手は城之内に掴まれあっさりとシーツに縫い止められてしまった。

「どうしたんだよ急に…っ。海馬…?」
「やっ…! 嫌だ…っ! 城之内…っ」
「無理だよ海馬。今更嫌だって言われても、もう止まれない」
「嫌だぁ…っ! 怖い…っ!!」
「怖いのは分かってる。初めてだから仕方無いしな。でも…もう無理なんだ。ゴメン、分かってくれ」
「嫌…っ! 嫌ぁ…っ!!」
「ちゃんと気持ち良くしてあげるから…。だから大人しくしてて…な?」

 そう言って城之内は、暴れるオレの両手を一つに纏めて頭上に縫い止めてしまった。そして左手だけでオレの両手を押さえつけると、空いてみる右手でもう一度股間を探ってくる。一旦腹部を優しく撫でて、そしてそれはズボンの中に入ってきた。熱い掌が直接オレのペニスに絡みついて、それだけで腰に震えが走る。

「あっ…!!」

 恥ずかしさに堪らず目を強く瞑ると、溜っていた涙がホロリと眦から流れ落ちた。それを熱い舌でペロリと舐め取られ、同時に掌が緩やかに動き出す。

「うっ…ん…っ。あ…あぁ…っ。はっ…あ…ぁ…あっ…」

 何度もペニスを上下に擦られて、やがてそこからはグチュグチュという濡れた音が響いてくるようになっていた。先端から溢れ出た液体を、城之内は親指の腹でクルクルと撫でるように擦りつける。その度にゾワリゾワリと背筋がざわめいて、腰がブルブルと痙攣した。
 オレだって男だ。自分で自分を慰める事は何度もした事がある。けれど今感じている快感は、自分でしていた時よりも何十倍も強い快感だった。
 腰から下が、まるで自分の身体では無いようだ…。快感に麻痺して、その他全ての感覚がずっと向こうへ遠ざかっていく。感じるのは快感だけ。頭に浮かぶのは、熱を吐き出したいという欲求だけ。

「あ…あぁっ! も…う…っ!!」

 無意識に限界を訴えていた。快感に耐えきれず流れ落ちる涙に、周りの様子がよく見えない。ただ涙で滲んだ城之内の顔がニコリと笑って「うん。いいよ」と言ったのだけは理解出来た。
 許しが貰えた…。それがとても嬉しくて…。

「っぁ―――――っ!!」

 許しと同時にペニスの先端に爪が埋め込まれたのを感じ、オレは声も無く大きく弓形に仰け反りながら、城之内の掌の中に全ての熱を解き放ってしまった。



 一瞬…何が起きたのか分からなかった。ただ頭の中が真っ白になって、身体が全ての力から解き放たれた事だけは分かる。
 ぐったりと力を無くしたオレに、城之内は顔を近付けてキスをしてきた。チュッチュッと軽く吸われるように、顔の至る所に唇を押し付けられる。

「すっげー可愛かった…。気持ち良かった?」
「………?」

 何を言われているのかよく分からなかったが、とりあえず気持ち良かった事だけは確かだったので、コクリと一つ頷く。城之内はそんなオレの答えに満足したのか、優しく微笑むとティッシュで綺麗に拭いた手でオレの頭をよしよしと撫でてくれた。
 その感触に覚えがあって、そっと城之内の顔を覗き込んでみる。

「城之内…」
「ん?」
「撫でて…くれていたのだな…」
「………?」
「オレが…熱で意識を失っている間…。ずっと…こうやって撫でていて…くれたのだろう?」
「あ…あぁ…。確かにそうだけど、何で知ってんの?」
「感じていたからだ」
「え?」
「夢の中で…感じていたのだ」

 あの冷たい世界の中。悲しい想いに泣きたくなる度に、城之内の掌を感じていた。ふわりと優しく頭を撫でるその感触に、あの世界の中のオレがどれだけ慰められたか分からない。

「ちゃんと…覚えているのだ…」

 キョトンとした顔でオレを見詰めている城之内に微笑みかけて、オレは手を伸ばして目の前の身体に強く抱きついた。
 愛しい愛しい城之内。もう二度と手放さない。後悔はしたくない…だから。

「続きを…してくれ」

 オレの言葉に、城之内の身体がビクリと震えた。予想通りの反応に思わず苦笑する。
 だがもう逃がさない。後悔しないと決めたから。

「城之内…。お前…ここで止めるつもりだっただろう?」
「う…。何で…分かった?」
「何となくだ」
「ったく…。何となくで分かっちまうのがお前らしいよな。でも確かに止めようと思ってる。ここで一旦区切るのがいいんじゃないかな…と」
「嫌だ…。最後までしろ」
「止めとけよ。お前さっき混乱してただろ。初めてなんだから無理すんなって」
「そっちこそ無理をするな! さっきから…そ…その…。か、硬いモノが当たっているぞ!!」

 先程からオレの太股の辺りに感じる硬い感触に、恥を捨ててそう言い放った。視線を下に向ければ、スウェットの前面部分が大きく変化しているのが見て取れる。
 オレの視線を追うように自分の股間を目にした城之内は、ややあってクックッと笑い始めた。
 何故ここで笑うのか…。訳が分からない奴だな。人がせっかく心配してやっているというのに!
 だが城之内は随分と余裕そうな表情で、オレの顔を見詰めながら口を開いた。

「そりゃ、お前のあんな姿を見せられれば…仕方無いって奴だよ」

 苦笑しつつそう言う城之内に、思わず顔が熱くなる。
 自分の痴態に欲情されるというのは、思っていた以上に恥ずかしい。だが、だったら何故途中で止めようとしているのか…。それが全く理解出来なかった。

「あんなの見ちゃったらさ、堪んないもんな」
「そ…そうだろう…っ。だったら早く続きを…っ!」
「うん。続きしたいよ。でもな、そこまで焦る必要も感じて無いんだ」
「な…何故だ…?」
「だってオレ達恋人同士じゃん。やろうと思えばいつでもやれるんだし…何も今夜に全部しなくても…」
「今夜で無いと駄目なのだ…っ!!」

 城之内が優しく、オレを宥めるようにそう言うのに大声で反論した。
 あの城之内が居ない冷たい世界…。あれはただの悪夢だったけれど、あの世界が絶対に来ない等と…どうして言えるのだ。もしかしたら明日にでも遣って来るかもしれないのに!
 そんな時にまたあのような後悔をするのだけは…嫌だった。

「後悔したく無いのだ…っ! 今を逃して…そして二度と出来なくなってしまったら? そう考えたら…耐えられない」
「ちょっ…海馬。そりゃお前の考え過ぎだって…」
「どうしてそんな事が言えるのだ? オレが見ていた夢はそういう夢だった。気が付いた時には全てが遅く、何もかもを後悔する夢…。オレは…もう二度と嫌だ…。あんな後悔はしたくない…っ!!」

 ギュウッと目の前の身体を強く抱き締めて耳元でそう叫ぶと、城之内が戸惑いつつもオレの身体を抱き返してくれる。

「そんな事言われたら…止まれなくなるじゃん」
「止まらなくていい…っ!!」
「最後まで…やっちゃうよ?」
「やれと言っている…!!」
「ははっ。男らしいなぁ」

 少しだけ面白そうに笑った後、城之内はオレの身体を引き離して熱の籠もった瞳で見詰めて来た。琥珀の瞳がゆらゆらと揺れている。

「んじゃ、もう何があっても止めないからな?」

 そう告げる城之内に強く頷いて、オレは身体の力を抜いた。