2010年4月アーカイブ

『Lesson』について

| コメント(0)

城之内×海馬で、城之内の一人称です。

過去の性的虐待のトラウマでEDになってしまった海馬と、そんな海馬を愛を持って開発していく城之内君の物語です。
こういう説明の仕方をすると微妙にSMちっくなのですが、そういう内容では無いのであしからず…w
あくまで目指すはラブラブエロです(*´∀`*)

納得して頂けた方は、下の『レッスン開始!』からどうぞお入り下さいませ~!

誕生日でした~(´∀`;

| コメント(0)

また一つ歳を取った二礼です、こんばんは。

昨日(4/28)は私の誕生日でした~。
また一つ…歳を取ってしまったのぉ…orz
そんでもって今朝の事。
年くった自分にすっかりウンザリしつつPCを起動させたら、出て来た起動画面にビックラこきました…。

起動画面が社長(KCロゴ付)になっているだとぉ~っ!?

一瞬しか出て来ないのですが、いきなり画面に現れた社長に驚くやら萌えるやらで…w
相棒が私が寝ている間にPCを弄くっておいたらしいんですけどね。

どうやらこれが誕生日プレゼントらしいですwww

何て言うか…サプライズ的な社長で嬉しかったですよw
ありがとう~相棒!!ヽ(´∀`)ノ

PCを起動する時にしか会えない社長…。
会えても一日に1~2回ってところでしょうね。
ある意味物凄く貴重な社長をプレゼントして貰ったって感じがしますw

ていうかもう、こんな事されたら完全に起動するまでPCの前から動けないじゃないか!!
(普段は電源ボタンを押したら、起動するまで放置して何かやってます)
社長を無視するなんて事…私には無理ですわ…(*´д`*)


長編『Lesson』にLesson1をUPしました。
この間の『漂う青き水の底で君を想う』を書いてから、私の中ではすっかり短期集中連載がブームになってしまいました。
という訳で、コレも短く纏めた長編になると思います~!
今回は別にそこまでエロいシーンは無かったのですが、まず間違い無くそういうシーンだらけになると思うので、予め*マークを付けておきました…w
社長EDネタとかって…どんだけだよ私w

ネタとしては去年の年末くらいから纏めてあったのですが、当時は『無限の黄昏 幽玄の月』の方に集中していたので、なかなか書く機会が無かったんですよね。
今回いい具合に手が空いた(連載中の長編も無く、特に書きたいと思う短編も無い)ので、これをチャンスだと思って書く事にしました。
城之内に慣らされていく社長を、生温かく見守って頂ければいいなと思っておりますw

ちょっと…いやかなりマニアックになりそうな匂いがプンプンしていますがね…(´∀`;


そう言えばもうすぐ4月が終わっちゃいますね…。
今日の夜遅くか明日中には更新予定を纏めておきたいと思っています。
かなりグダグダな予定になると思いますが、どうぞご了承下さいませ~!


以下は拍手のお返事になります~(*'-')


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(´∀`)

『Escape…?』と日記の感想をありがとうございますv
私が百合城海を書こうと決めたのは、この『嫉妬』という感情を表現したいなと思ったのが切っ掛けでした。
普通の男同士の城海だと、この嫉妬という感情が全く活きて来ないんですよね~。
むしろ男の癖に嫉妬でギリギリしてたりするのを見ると、みっともないなって思っちゃいます。
男女の関係の城海でも良かったのですが、『真実の証明』で男女城海は完成しちゃっていますし、自分的にも今更あの二人の間に波風を立てるのは嫌だったのです。
せっかくラブラブしているんだから、そっとしといてあげよう…という、一種の親心でしょうか…w
という訳で考えついたのが、二人とも女の子にしちゃえば良いんじゃね? という結論でした。
女の子同士であるなら男同士には出来無いイチャイチャも出来るし、二人揃って相手の交友関係に嫉妬してても全然不自然じゃありません。
相手を独占したい。出来る事なら自分の事だけを見ていて欲しい。
こういう感情は、女の子独特のものですよね~(´∀`;
醜いと言われれば醜いんでしょうけど、これがまた妙に可愛いと思うのも確かなのですw
という事で、妙に可愛い百合城海を、これからもゆっくり書いていきたいと思っていますv

右手首の事に関しましても、ご心配をお掛けしました。
もう全然痛く無いので大丈夫ですが、これから先もやってしまわないとも…限らないんですよねぇ…;
気を付けて仕事を頑張りたいと思いますw

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

Lesson1

| コメント(0)

「城之内…」

 名前を呼ばれて振り返った。部屋の入り口にバスローブを羽織った海馬が立ち尽くしていて、まだ濡れている髪を掻き上げながら、じっとオレの事を見詰めている。いつもは真っ直ぐにオレを射貫く青い瞳が、所在無さげに揺らめいているのが印象的だった。

「本当に良いのか…?」
「うん」

 海馬の質問に即答する。
 だって何を戸惑う事があるんだ? これから好きな奴を抱けるっていうのに。
 だけど海馬は困ったように目を伏せて、深い溜息を吐いた。何とも言えないその表情は、オレの事を気の毒がっているようにも、こうなった状況を後悔しているようにも、そして自分自身を責めているようにも見える。
 海馬がそんな気持ちになるのは仕方が無いし、オレも理由を知っているから特に何も言わない。でも、逃がすつもりも無いし、このままで済ますつもりも無かった。

「おいで…海馬」

 右手を差し出して名前を呼べば、海馬は大人しく近付いて来てオレの手に自分の掌を重ねて来た。その手をキュッと握ると、握り込んだ冷たい手がピクリと動く。そのままクイッと手を引き寄せて優しく抱き締めると、途端に身体が強ばりフルフルと首を横に振られた。

「オレは…本当に何も感じられないぞ」

 泣きそうに震えたその声にオレはただ「大丈夫だよ」とだけ応えて、水分を含んで湿った栗色の髪を何度も撫でた。
 海馬が安心するまで、何度も何度も…。



 オレが海馬から衝撃の事実を聞いたのは、一ヶ月前の事だった。たまたま学校に来ていた海馬をチャンスだとばかりに屋上に呼び出して、ずっと胸に抱いていた恋心を告白した。
 春の夕日に染まる放課後の屋上。驚かれたり罵倒されたりするのも覚悟の上だったんだけど、意外な事に海馬はただ黙ってオレの告白を聞いていた。驚いたり嫌がったりしてるような表情は見せていない。それどころか、むしろ頬が赤く染まっていたりする。夕日に照らされる色とはまた違う染まり方に、オレは心の中で密かにガッツポーズをしていた。

 思った以上に好感触じゃね?

 これなら上手くいけば、このまま恋人になれるかも…と少し浮かれた時だった。オレの告白を聞き終わった海馬がふぅ…と嘆息して、眉根を寄せて少し困ったような顔をしながらオレの事を見返した。
 あ、やっぱりダメか。断わられるんだなー…と諦めモードに入ったんだけど、海馬の口から出て来た言葉はオレの予想を遙かに超えていた。

「セックスは…出来無いぞ?」
「………はい?」

 好きとか嫌いとか、はいとかいいえとか、そんな答えを予想していたオレの頭にいきなり『セックス』という単語が入り込んできて、正直一瞬何を言われたのか理解出来なかった。
 セックス? セックスってあのセックスだよな? オレが海馬としたいって思ってる、あのセックスの事だよな…?

「え? あの…セックスって…? えぇぇっ!?」
「だからセックスだ。抱き合う事は出来無いと言っている」
「ちょっ…ちょっと待ってくれ! 何でいきなりセックス? てか、オレの告白はどうでもいいのか!?」
「告白…は…別にどうとでも…。オレもお前と同じ気持ちだったと言えば、理解出来るか?」

 同じ気持ちと言われた事に、ブンブンと激しく首を縦に振る。
 理解出来る。勿論理解出来るよ! 超出来る!! 要はお前もオレの事が好きだったって事だろ? それって両思いだったって事じゃん!!

「それじゃあ…」

 一気に明るい気持ちになって笑顔になったら、そんなオレの顔を見て海馬はまた悲しそうな顔をした。
 へ? 何で? せっかく両思いだっていうのに、何でそんな泣きそうな顔をしてるんだ?

「海馬…?」

 首を傾げて名前を呼べば、海馬は深い溜息を吐いて目を伏せた。そしてボソリと言葉を放つ。

「感じないのだ」
「…? 何を?」
「だから…感じないのだ」
「感じないって…」
「だから…その…。分かり易く言えば性感が無いのだ。何をしても気持ちいいとは感じられない」
「え………?」

 真っ赤な夕日に照らされて、俯き加減で重たい口調で話す海馬。その言葉には決して嘘は含まれて無くて、オレは自分の告白以上に凄まじい内容の話を聞いているんだという事に気が付いた。
 性感が無い。感じられない。それって…。

「更にオレはEDなのだ。つまり勃たない。性的に興奮する事も出来無いし、勃起もしないし射精も出来無い。した事も…無い」
「なっ…!? 射精した事無いって…!? それ…マジ?」
「嘘は言っていない。気が付いたらこうなっていた。身体には何の異常も見付からない事から、精神的なものの所為だろうとは医者に言われているがな」

 そこで一旦言葉を句切って、海馬は自分が何故こんな風になってしまったのかをオレに教えてくれた。
 海馬は海馬剛三郎の養子になってからすぐ、性的虐待を受けたのだそうだ。実際に犯された事は無かったらしいんだけど、見知らぬ中年や壮年の親父達の前で裸にされ、身体のあちこちを触られたり、手や口で相手の射精を手伝わされたりと、散々な事をされていたらしい。
 その時に海馬が心底思ったのは、大人の男というのは臭くて汚くて酷く醜い最低な生き物なんだっていう事だった。幼心に強烈なイメージで心に食い込んだその考えは、やがて成長していった海馬の身体にも影響を与え始める。
 背が伸び骨格もしっかりしてきて、大人の男として充分に育った筈なのに、性的な成長だけは一切進む事が無かった。

 何をしても性的に感じる事が出来無い。興奮しない。勃起しない。射精出来無い。

 本来だったら自分の身体の異常に悩み苦しんで、何とかしようと足掻くんだろう。もしオレが海馬と同じ立場になったりしたら、間違い無くそうすると思う。だけど海馬は、自分のその症状に対して何の不都合も感じていなかった。
 元々性体験に対してトラウマがある。セックスは汚くて醜いもので、決して綺麗なものでも神聖なものでも何でも無い。もし自分があの汚い親父共と同じような大人の男にならなくちゃいけないんだったら、むしろこのままでいた方が都合がいい。
 …海馬は、そう思ってしまったんだ。

「だからセックスは出来無い。オレもお前の事が好きだが、付き合うのは無理だろう。お前は『普通の男』だからな。そういうの無しとかは…考えられないだろう?」

 最後にそう言って、海馬は完全に俯いて黙り込んでしまった。日が暮れてきて冷たい風が吹き付ける。まるで海馬の心のような冷たさだって思った。そしてそんな冷たい風に吹かれていたオレは、衝撃の告白を聞いていた筈なのにショックを受けるどころか、その冷たさを温めたいと思っていた。
 ショックじゃないかと言われれば、そんな事は無い。確かにショックだったさ。でもそれで海馬への想いが変わる訳じゃあるまいし、感じられないなら『オレ』が感じるようにしてやればいいだけの話だと…そう思ったんだ。

「うん。考えられない。無理」

 海馬の言葉にハッキリと答えると、海馬はやっぱり…という様な顔をしてますます顔を俯けていく。だからオレはそんな海馬に、追い打ちを掛けるように言葉を放った。

「でもお前の事も好きだから。諦めきれないから、付き合ってくれ。勿論セックス込みで」
「だから城之内…っ。それは無理だと言って…っ」
「何が無理なの? 身体に異常は無いんだろ? だったら取り戻せばいいだけの話じゃん」
「取り戻せばって…お前…。そんなに簡単に言うけどな…」
「簡単じゃ無いよ。簡単だなんて思って無い」
「………?」
「でもオレはお前とセックスがしたい。お前が好きだからセックスがしたい。セックスは汚いもんでも醜いもんでも無いんだよ。好きな人同士が気持ちを確かめ合う…凄く大事で大切なものだ」

 オレが海馬の目を真っ直ぐに捕らえてそう言うと、それを目を丸くして聞いていた海馬は途端にクシャリと顔を歪ませて瞳を潤ませた。その表情で全てが分かる。海馬だって、本気でこのままでいいと思っていた訳じゃ無かったんだ。多分…ずっと苦しんでいたんだ。『普通』じゃない自分に悩んでいたんだ。
 ただ、幼い頃のトラウマがその苦しみを押さえ込んだ。このままでいいと思い込ませた。
 海馬にとって…それはどんなに辛い事だっただろう。

「頭では…分かっているのだ…。『普通のセックス』は…決して悪いものでは無い。健全な行為だと…分かっている。けれど、オレの記憶がそれを認めない。性交渉の事を考えると、汚くて醜いシーンしか出て来ないのだ…」

 白い頬にぽろりと涙が一筋伝っていく。海馬の苦悩が形に表れた瞬間だった。
 そっと手を伸ばして、その涙を指先で拭ってやる。温かい涙が皮膚から染み込んで血管に入り込み、深くオレの中を巡っていくように感じられた。

「小さいお前に手を出したおっさん達は…確かに汚くて醜い事をしていたんだろうさ。でもな海馬。それはセックスじゃ無い。一方的なそれは性的虐待とかレイプとか言うんであって、セックスじゃ無いんだ。オレがお前としたいのは…セックスなんだよ」
「分かっている…。だが…汚い…醜い…っ! 考えるだけで気持ちが悪くなる。吐き気がするんだ!」
「無理はしなくていい。お前はそのままでいていいんだ…海馬。だけどオレは…オレだけは…、特別にしてくれないかな?」
「何…だと…?」
「他の奴らには何も感じなくていいから。その代わり、好きだと思うオレに対してだけは感じてくれよ。閉じた心を…開いてくれ」
「お前に…だけは…?」
「そう、オレにだけ」
「………」
「だから付き合って? オレも焦らないから。ゆっくり感じるようになればいいさ」
「だ…だが…」
「絶対無理矢理セックスしたりなんてしない。約束する」
「だが…それでもオレは…自信が無い。このままではきっと一生治らないような気がするのだ…」
「だったら少しずつ慣らしていけばいい。何だって最初から上手くいく筈無いんだからな。そうだ、レッスンしようぜ海馬」
「レッスン…?」
「うん。一緒にレッスンしよう? お前がちゃんと感じる事が出来るようになるまで、少しずつ慣らしていこう。オレも一緒に頑張るから。な? いいだろ?」

 海馬の細い両肩を掴んで、顔を覗き込んでそう提案する。必死なオレの声に海馬は暫くパチパチと瞬きを繰り返して、そしてやがてほんのり顔を赤くしながらコクリと頷いて了承した。



 それが今から一ヶ月前の事。
 この一ヶ月は、昼休みに一緒にお昼を食べたり、たまに一緒に帰ったり、手を繋いでみたり、キスをしてみたりして、反応を確かめつつ様子を探っていた。本当はディープキスくらいまではやっておきたかったんだけど、流石にまだ触れ合わせるだけのキスで精一杯だった。
 唇を押し付けても海馬は何も反応しない。ただピクリと小さく肩を震わせて、いつも泣きそうに顔を歪めていた。まるで何も感じられない自分を責めているかのように…。
 その度にオレは海馬の頭を優しく撫でて、「大丈夫。海馬は何も悪く無いよ。大丈夫だから…」と声を掛ける。海馬はオレの肩口に顔を埋めて、いつも黙ってじっと何かに耐えているようだった。
 そしてある日…というか今日の昼間の事なんだけど、この状況に我慢出来無くなった海馬がオレにこう言ってきた。

「城之内…。そろそろレッスンを…始めてみないか?」
「え………?」

 真っ直ぐにオレを見詰める青い瞳。その目に浮かぶのは強い決心とオレに対する真摯な気持ちだけで、決して自暴自棄になった訳じゃ無いって事がよく分かる。

「だけどお前…いいの…か?」
「あぁ。構わない」
「無理しなくていいんだぜ…。オレだってそんなに焦ってる訳じゃ無いし、お前の事が好きだからまだ暫くは待っていられる。もう少し時間が経ってからでも…」
「待つだけ無意味だ。それにこういう事はさっさと始めてしまった方が良いだろう。時間が経てば経つ程、取り返しの付かない事になる」
「だけど…」
「オレが良いと言っているのだ、城之内! やるのかやらないのか…さっさと決めろ!!」

 海馬のその強い言葉に、コイツがどれ程悩んで…そしてどれだけの覚悟をして決意を固め、レッスンを受ける事を決めたのか…、痛い程に伝わって来た。だからこそオレは、この想いを無視しちゃダメだと思った。
 海馬の決意をちゃんと受け止めてあげなくちゃいけないんだって…オレも強く覚悟する。

「分かった。じゃあ…今日の夜にお前んとこの邸に行ってもいいか?」
「あぁ」

 オレの問い掛けに、海馬はしっかりと視線を合わせながら頷いた。



 そしてオレ達は今…海馬の寝室にいる。
 シャワーを浴びてきた海馬をベッドの縁に座らせて、ゆっくりと押し倒していった。緊張でカチコチに固まった身体をゆっくり撫で擦りながら、オレは優しく笑いかけながら耳元で囁く。

「大丈夫…。最初から全部したりしないから。今日はちょっと触るだけだからな?」

 オレの言葉に海馬は力無く頷き、そして目を閉じてそっと身体の力を抜いていった。

リズムが大事

| コメント(0)

急にお仕事に呼び出された二礼です、こんばんは。

日曜日の夕方、お出かけから帰って来たら本屋さんから電話が掛かって来てました。
掛け直すと、バイトさんの一人が具合が悪くなって帰ってしまったので、今から出て欲しいというお電話でした。
具合が悪くなるのは本人のせいでは無いので了承してお仕事して来ましたが、休日に急に呼び出されたりすると一瞬パニくりますよね。
何て言うか、気合いが足りない的な感じで…w

普段シフトが入っている時は、前日の夜から「明日は仕事だ~!」という気合いという名の諦め(笑)をしているんです。
それが無いとやっぱりリズムが狂っちゃうんですよね~。
仕事自体は短時間で特に大変でも何でも無かったのですが、何か一日損した気分です…w
仕事するにしても、遊ぶにしても、何にせよ気合いって大事なんだな~って思いました(´∀`)

つー訳で、GWは気合いを入れてお仕事して、あとはスパコミに行って来たいと思います!(スパコミだけがGW中の楽しみです…w)
ちなみにですね。5月に入るといきなり忙しくなっちゃうので、4月以上に更新が出来無くなると思います。
只今更新日の予定を調整中ですが、5月一杯はゆっくり目の更新となりますので、その辺りはどうぞご了承下さいませ~!!


百合城海シリーズに『Escape…?』Ver.克美をUPしました。
城海による自転車逃避行…。
ツッコミ処満載ですが、私的には書いてて凄く楽しかったですw

瀬人子さんと違って、克美ちゃんは自分の想いをハッキリと自覚しています。
彼女達が『親友』から『恋人』になるのには、この克美ちゃんの自覚が大きなポイントとなるような気がするんです。
今回の事件で完全に『恋』を自覚した克美ちゃんと、未だ『親友』から抜け出られていないまでも、少しずつ気持ちが変化している瀬人子さん。
とりあえず克美ちゃんの気持ちが切り替わったので、第一ポイントは無事に通過というところでしょうかね…w
ちゃんと恋人同士になれるように、チマチマと書いていきたいと思っています…(*´∀`*)

そうそう。作中に出て来た『大きな河に掛かる長い橋』は、ウチの近くにある河に掛かっている橋がモデルです。
橋の上って風が凄いんですよ…;
特に夕方は海からの風が吹き込んで来て(ウチの地域は海抜0メートル地帯)、自転車の乗っているとフラフラしちゃうんです。
髪の毛とかグッシャグシャになりますよw


以下は拍手のお返事で~す!!


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~♪

コメントの件は了承致しました。
忙しい時は余り無理なさらないで下さいね~。
義務ではありませんので…w
謝る事では無いので、全然大丈夫ですよ~!

それでは今日はこれで失礼致しますね(´∀`)
ではまた~(・∀・)ノシ

Escape...?Ver.克美♀

| コメント(0)

 オレと一緒に逃げてくれ。
 克美がそう口に出した時、瀬人子は一体自分が何を言われているのかさっぱり分からないようにキョトンとしていた。目を瞠って黙って克美の顔を凝視する。

「逃げるって…お前…」
「いいから! ここに乗れ!!」

 自らも自転車に跨がりながら荷台を指差すと、瀬人子は少し悩んだような顔をして、荷台と克美の顔を交互に見ていた。だがやがて諦めたかのように軽く溜息を吐くと、荷台に横向きに腰掛ける。瀬人子が自転車に乗ったのを見て「腰、掴んで」と口に出せば、恐る恐ると言った風に自分の身体に細い腕が回された。腰の辺りで白い手が重なるのを確認すると同時に、足に力を入れてペダルを漕ぎ出す。そのまま授業中で静かな校舎の脇を通り抜け、裏口から外へと飛び出した。

「城之内…っ! 一体どこへ行くつもりだ!?」

 ビュウビュウと耳元を吹き抜ける風に片眼を瞑りながら、瀬人子は克美の荒れた金髪を見ながら口を開く。だがその質問にも克美は何も応えない。ただキコキコと金属が軋んだ音を起てる自転車を必死で漕ぎながら、細い路地を物凄いスピードで駆け抜けて行く。

「城之内…っ!」
「………」
「おい! 城之内!!」
「分からない…っ!!」
「え…?」
「どこに逃げればいいかなんて…そんなの分からない!! でもオレは…とにかくここから逃げ出したいんだ…っ!! お前と一緒に逃げたいんだよ…海馬!!」

 そう…。どこに逃げればいいのかなんてそんな事…分かる筈が無かった。
 ただ逃げ出したかった。ここでは無いどこかへ…瀬人子と一緒に逃げてしまいたかった。

「アメリカになんて行かせない…っ! 結婚なんてさせない…っ!!」

 青から赤に変わったばかりの歩行者信号をギリギリで通り抜けて、克美は叫ぶようにそう言い放った。その叫びに応えるかのように自分の身体に回る細い腕に力が籠もるのを感じて、克美はますますペダルを漕ぐ足に力を入れる。
 今の克美にとっては、瀬人子の腕の強さと背中から伝わる熱だけが、現実世界の全てだったのだ。


 瀬人子の口から「結婚する」という話が出た時、カーッと頭が一気に熱くなって何も考えられなくなった。そして胸がムカムカとして気持ちが悪くなり、同時にとても泣きたくなった。
 親友が幸せを掴むというただそれだけの話だったのに、心の底から「嫌だ!」という想いが湧き上がって来て克美の心を蝕む。それだけでも辛かったのに、更に瀬人子の口から漏れ出た言葉に、もう逃げ出したいという衝動を我慢する事が出来無くなったのだ。

『ただの『友達』に…そこまでする権利は無い…』

 そうだ。自分はただの友達だ。だから瀬人子の人生に口を出す権利は無い。権利は無いが…どうしても嫌だったのだ。
 どうして自分がそこまで瀬人子の結婚を嫌がるのか。そしてどうしてそこまで彼女を独占したいと思ってしまうのか。克美はその理由を嫌って程良く分かっていた。

 それは…瀬人子に恋愛感情を持っていたからだった。

 自分と同じ女の子に対する恋愛感情。克美はもうずっと以前から、この想いに悩まされている。何度瀬人子の側を離れようとしたか分からない。だがその度に瀬人子には怒られて、そして自分も彼女の側を離れる事なんて出来無いという事を思い知らされるのであった。
 留めようとした想いは日に日に大きく膨らんで、今はもう完全に無視出来無い程に克美の心を占めてしまっている。こうなるともう…潔く認めてしまうしか道は残されていなかった。

(オレは…海馬が…。コイツの事が好きなんだ…)

 自分の想いを認めた瞬間に、それは失恋と成り果てた。
 瀬人子の想いは自分とは同じではない。彼女はあくまで『親友』として自分を見ている。数ある『友達』というカテゴリの中の、たった一人の頂点。それが『親友』。元々瀬人子は『友人』という関係に魅力を見出せない人間だった。そんな瀬人子のたった一人の『親友』になれた時、それが何よりも光栄な事だと克美は心から感謝したのだ。
 あの『海馬瀬人子』が認めたたった一人の親友『城之内克美』。それが克美にとっては長い間『自慢』であり、そして『誇り』でもあった。

 それだけで良かった。それだけで良かった筈なのに…。

 気が付いたら想いはどんどんと変化していき、そしてついに同じ女の子相手に抱いてはいけない気持ちへと変化していってしまったのだ。『親友』は自分。けれど決して『恋人』にはなれない。それは大きくて深い絶望を克美にもたらした。
 瀬人子だって女の子だ。いつかは誰か他の男に恋をして、そして結婚をして子供を産むのだろう。だけれども、それはもっとずっと先の話だった筈だ。少なくても今すぐの話では無い…筈だったのに。

 それなのにそれは…突然目の前に降って来た。

 認められなかった。そんな事、認められる筈が無かった。
 瀬人子がアメリカに行き、三十歳の男のプロポーズを受けて婚約して…そしていずれ結婚してしまうなんて、そんな事は許される筈が無かった。
 あの一瞬。瀬人子の口から『婚約』という言葉が零れ落ちた時、熱くなった頭の中で思い描いたのは、ベッドの上で男に組み敷かれ淫らに喘ぐ瀬人子の姿だった。
 白いシーツがクシャクシャになっていて、その上で全裸の瀬人子が男に組み敷かれ、涙を流しながら真っ赤な顔で甘く喘いでいる。青い瞳が涙で潤み、赤く腫れた唇で知らない誰かの名前を呼んでいる。白く細い腕を男の背中に絡みつかせて、足を大きく開いて男を受け入れていた。
 男が動く度に揺れ動く瀬人子の身体。白いシーツに広がる栗色の髪と、動きに合わせて震える小さな胸。目をギュッと強く閉じて、ハァハァと荒い呼吸をしながら、それでも男の名前を呼ぶ事を止めない。

 やめてくれ…! やめてくれ…っ!! やめてくれっ!!
 瀬人子の身体に触らないでくれ!! 彼女の中に入り込まないでくれ!!
 あの白くて細い綺麗な身体に触れていいのは…オレだけなんだ!!

 瀬人子と知らない男が抱き合う大きなベッドの脇で、克美は目を閉じ両耳を塞いで蹲る。
 ほんの一瞬の間に脳裏に広がった妄想の中で、軋むベッドの音を聞きながら克美は大声で泣いていた。そしてふと現実に立ち返り目の前に視線を向けた時、痛々しげな表情をして俯いている瀬人子の姿を見て、克美は一大決心をしたのである。

 瀬人子を連れて逃げよう…っ!!
 コイツがアメリカに行けないように! そんな男と二度と出会えないように!
 逃げてしまおう…っ!!

 …と。
 そして克美は瀬人子の腕を掴んで、現実からエスケープする為に歩き出したのだった。



 克美と瀬人子を乗せた自転車は童実野町の市街地を走り抜け、今は隣町との境までやって来ていた。目の前に流れる大きな河。その河に掛かる長い橋を渡れば、そこはもう童実野町では無い。
 いつの間にか太陽は西に傾き、河面は夕日に照らされてキラキラと美しく輝いている。午後になって海から吹いてくる強風にフラフラしながらも、克美は懸命にペダルを漕いで前に進んでいた。自転車に二人乗りをした長い長い影が道路へと伸びる。橋の上を行き交う車がその影を踏みつけるのを眺めながら、克美はそれでも自転車を止める事はしなかった。

「城之内…」

 強い風が耳元で唸る中、背後から聞こえた瀬人子の声に耳を傾ける。息が切れて苦しかったが「何?」と一言だけ問い掛けた。

「お尻が…痛い」
「我慢しろ」

 固い荷台に長時間乗せられている為だろう。瀬人子が臀部の痛みを訴えるが、克美はそれを無視した。

「少し休ませてくれ」
「嫌だ」
「喉も…渇いた」
「嫌だ」
「それに…」
「………」
「それに…こんな事しても…無駄だ」
「嫌だって言ってんだろ…っ!!」

 瀬人子の言葉に、克美はますますムキになる。疲れ切った足に鞭打って、ペダルを更に早く漕ぎ出した。
 橋を渡りきって坂を下り、隣町の市街地をも走り抜ける。日が沈み辺りが薄暗くなっても、克美は自転車を漕ぐのを止めなかった。

 遠く…もっともっと遠くまで。アメリカも、瀬人子にプロポーズをしている自分の知らない男も、誰も瀬人子に追い付けないような遠くまで。

 だけどそんな遠くまで逃げて、自分は一体瀬人子と『どうしたい』というのだろう…?
 そう思った瞬間、突然身体に疲労感が襲ってきた。周りを見渡せば辺りはすっかり暗くなり、街灯がポツポツと灯っている。目の前に丁度小さな公園が現れたので、克美はそこで漸くブレーキを掛けた。ギッと半分錆び付いたような音が響いて自転車が止まる。
 住宅街のど真ん中の小さな児童公園。遠くの民家で飼われている犬が吠えている声と、カチャカチャという夕食時の家庭の音があちこちから聞こえるだけで、公園は他に誰もおらずシンとして静かだった。
 ブーンという微かな電気音に視線を巡らせると、公園の入り口に自動販売機があるのが見える。思い立ってポケットを探ると五百円玉が一つ入っているのを確認して、克美はホッと安心したように息を吐く。そして背後の瀬人子に「休憩するから一旦降りて」と話しかけた。
 その途端、戸惑いがちにスルリと細い腕が解かれて、瀬人子が荷台から足を降ろした。背後の重みが無くなるのを感じて、自分も自転車から降りて振り返る。そして目に入って来た瀬人子の表情に息を飲んだ。

「あ………」

 瀬人子は…酷く不安そうな顔をしていた。顔面は蒼白で、悲しそうに眉根を寄せている。

「ゴメン。お尻…痛かったよな?」

 そう問い掛ければ瀬人子は黙ってコクリと頷いた。だが別に怒っている訳でも無いらしい。長い間自転車に乗って風に吹かれていた為、瀬人子の栗色の髪の毛はかなり乱れている。それを手で直してやりながら、克美は公園の奥を指差した。

「疲れただろ? 今何か飲み物買ってやるから、あそこのベンチで座って待ってな」

 克美が指差した方向を見て頷いた瀬人子は、そのまま公園へと歩いていく。その背後を見送って、克美はポケットから五百円玉を取り出しながら自販機に歩み寄った。暗闇に明るく照らし出される自動販売機の商品を見て、少し悩んでまずは自分の分のスポーツ飲料を買う。ゴトンという音と共に落ちてきたそれを取り出し口から抜いて、今度は瀬人子の為に温かいお茶を購入した。
 ずっと自転車を漕いで汗を掻いている自分は冷たいドリンクの方が良かったが、ただ荷台に座って強い風に吹かれていた瀬人子の為には温かい方が良いと思ったのである。現に自分の腰を掴んでいた瀬人子の手は、まるで氷のように冷たくなっていた。
 二つのドリンクを自転車の籠に入れて、そのまま自転車を手で押しながら公園へと入っていく。瀬人子は、真っ暗な公園の中のベンチにポツンと座っていた。
 藤棚の下の小さなベンチ。街灯が疲れたように俯いている彼女を照らし出している。

「海馬。お茶買って来たぞ」

 努めて優しく声を掛ければ、その顔がゆっくりと上がった。相変わらず顔色が悪く、表情も暗いままだ。

「ほら、あったかいの。寒かっただろ?」

 お茶を差し出すと、それを受け取る為に瀬人子が手を伸ばしてくる。指先が触れた時に、その手が冷たいままなのが気になって仕方が無かった。
 ペットボトルのキャップを開けて瀬人子がお茶を飲むのを見て、克美も自分の分のスポーツドリンクのキャップを外した。そして喉が渇いていた事もあり、一気に半分近くを飲んでしまう。甘くて少し塩気のある液体が、今はとても美味しいと感じた。

「はぁ~…」

 喉の渇きが治まって、克美は大きく息を吐き出しながら街灯に寄り掛かった。公園の中心には時計があって、もうすぐ夜の六時半になろうとしている事が分かる。
 あぁ…道理でいい匂いがする筈だ…と思い、克美は辺りを見渡した。あちこちの家々からは、夕食を作っている音と共に良い香りが漂って来ている。途端にグーとなったお腹に手を当てつつ、克美は「お腹空いたなぁ…」とボソリと呟いた。
 スポーツドリンクは百五十円。瀬人子のお茶は百二十円。手元に残ったお金は二百三十円。これでは御飯は食べられない。どこかのコンビニによって、お握りかパンを買ってこよう…。そして二人で分けて食べようと、そう思った。

「腹減ったなぁ…海馬。少し休んだらどこかのコンビニに寄って何か買おうな」
「………」
「それにしても随分漕いだな…。どのくらい遠くまで来たんだろ」
「………」
「多分もう結構遠くまで来てるよな」

 克美の言葉にそれまで黙ってお茶を飲んでいた瀬人子は、制服の胸ポケットから携帯電話を取り出した。フリップを開けて暫く何かを弄ると、ふぅ…と小さく嘆息する。

「城之内…」
「ん?」
「ここは童実野町の隣街の、東の端の住宅街だ」
「へ? 何でそんな事が分かんの?」
「GPSで調べれば一発で分かるだろう」
「ふぅん…そうなんだ。最近の携帯って凄いな。オレそういうの弱いからさー。ちなみにどれくらい遠くまで来た?」
「そうだな…。車で来るなら…約二時間ちょっと。幹線道路を真っ直ぐに来れば一時間半というところだろうか」
「…え? 一時間半?」
「あぁ」
「こんだけ漕いで…まだ車で一時間半の距離なのか…?」
「………そうだ。結構迷走していたからな。そんなに遠くまで来た訳では無い」

 瀬人子の台詞に、克美は気が遠くなるのを感じた。
 一時間半。たったの一時間半。これだけ懸命に自転車を漕いで、やっとの思いでここまで逃げて来たというのに、それなのにたったの一時間半で追いつかれる距離だなんて…。
 余りのショックに、克美は思わず持っていたスポーツドリンクのペットボトルを取り落とした。公園の砂地に甘苦い液体がトクトクと染み込んでいく。
 呆然と突っ立ったままの克美を見上げて、瀬人子は少し悲しそうな顔をして言い放った。

「城之内…。逃げるのは…無理だ」

 逃げるのは無理。その言葉が克美の頭の中でグルグルと巡る。
 あぁ、分かっていたさ。そんな事は充分過ぎるくらい分かっていた。でも、どうしても逃げ出したかったんだ。瀬人子を連れて逃げたかった。例え無理だと分かっていても…あのままあそこにいる事なんて出来無かったんだ。

「っ………ふぅ…っ!!」

 突然目の奥が熱くなって、そしてボロボロと涙が零れ落ちてきた。一気に身体が重たくなって、克美はその場にしゃがみ込んでしまう。膝に顔を埋めてヒックヒックと泣く克美に、ベンチから立ち上がった瀬人子が近付いて来て、そして丸まった背中ごとゆっくりと抱き締めて来た。

「城之内………」
「い…やだ…っ! 嫌だよ…海馬ぁ…っ! 結婚するなんて…嫌だぁ…っ!!」

 泣きながらいやいやと首を振る克美に、瀬人子はその背を抱き締めたまま優しい声で言葉を発する。

「城之内、逃げるのは無理なんだ。どんなに頑張っても…逃げられない」
「嫌…っ! 嫌だ…っ!!」
「だから…な。逃げるのが無理なら、抗おうと思う」
「え………?」
「プロポーズは断わる。結婚なんてしないから安心しろ、城之内」
「海馬…っ」
「お前が不安がるような事を言って悪かった。ただオレも…少し苛ついていたから…」
「海馬…? どういう事…?」
「あの…な、城之内。実は…お前に対してお願いがあるのだ…」
「な…に…?」
「………っ」
「海馬…?」
「何故だか…何故だかは分からないが、オレはどうしてもお前が他の奴と仲良くしているのが…嫌なんだ。だから…友達として付き合ってもいいが、親友のオレは特別にして欲しいというか…優先して欲しいというか…。あ…その…我が儘な事を言っているとは分かっているのだが…、どうしても…な」

 戸惑ったような瀬人子の言葉に顔を上げれば、目に入ってきたその顔は真っ赤に染まっている。どうやら自分が意味不明な事を言っている事に、自分自身で戸惑ってしまっているらしい。

「だから…その…。今度の土日はアイツ等とじゃなくて…オレとお泊まり会をして欲しいというか…何て言うか…」
「うん、分かった…」
「城之内…? いいのか?」
「いいも悪いも、オレはいつだってお前優先なんだよ…。いつだってお前と一緒にいたいんだからさ…海馬」
「城之内…」
「だからお願いだ。結婚なんてしないでくれ。オレの側に…いてくれ」
「城之内…。ふ…ふふっ…」
「海馬?」
「ふふっ…。まるで…プロポーズみたいな言葉だな」

 ふわりと優しい笑みを浮かべてそう言う瀬人子に、克美の心臓はドキリと高鳴った。同時に胸の奥がズキリと痛んだけれど、その痛みには気付かないふりをして克美はコクリと頷き、瀬人子の身体をそっと抱き締める。

 今はまだ友情の域を出ないその抱擁も、やがてはその意味を変える時が来るのだろうか…?

 冷え切った瀬人子の細い身体を優しく抱き締めつつ、克美は疲れ切った脳裏でぼんやりとそんな事を考えていたのだった。

自分の身体を過信してはいけない

| コメント(0)

右手首復活の二礼です、こんばんは。

うむ…思ったより大した事無くて良かったw
今朝起きた時に水道の蛇口を捻ったら特に痛くも何とも無くなっていたので、どうやら無事に完治したらしいです。
良かった良かった。これで普通に生活する事が出来る(´∀`)

それにしても、重い物を持つ時は気を付けなければいけませんね…。
自分の身体の丈夫さを、過信評価していました。
余り無理をしないように、本屋さんでの業務を頑張りたいと思います!!

そう言えば去年…本が詰まった重い段ボールを無理矢理持ったせいで、指の骨にヒビが入った人がいたっけね…w
怪我にはお互い気を付けようね…散たんw


百合城海シリーズに『Escape…?』Ver.瀬人子をUPしました。
以前からチョコチョコやっていた百合城海を、今回を期にシリーズに纏めさせて頂きました。
(僕らシリーズも纏めないといけないんだけど…面倒臭いから今度でいいや~w)
この百合城海は長編ではありませんし、あくまでシリーズ物なので、『親友』から『恋人』に移行する過程をゆっくり書いていきたいと思っています。
今回のお話は、その第一歩というところでしょうかw
前半は瀬人子さん側から書いたので、次回は克美ヴァージョンで続きを書いていこうと思っています。

女体化や百合が平気な方は、引き続き楽しんで下さい(*'-')
苦手な方は…申し訳ありませんが黙ってスルーして下さいませね…。


以下は拍手のお返事でございまする(`・∀・´)


>daimon様

初めまして~! こんばんは~!!
拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(゜∇゜)

『素敵な小説』の一言が嬉しくて嬉しくて…。
余りに嬉し過ぎて悶えまくりましたw
こちらこそ素敵なコメントをありがとうございますv

daimon様が書かれたようなコメントが、書き手としては本当に嬉しいんですよ~!
大変な事も有りますし、諦めようと思った事も何度もありますが、daimon様のような方がいらっしゃるからこそ「もう少し頑張ってみよう!」という気になるんです。
春になって急に身の回りが忙しくなって、私も小説を書くのが苦しく感じていたところだったのですが、今回のdaimon様のコメントを読んで励まされました!!
ありがとうございます。これでまた書き進める事が出来ます(´∀`)

これからも自分の萌えに素直に従いながらノンビリと更新していきますので、お暇な時にでも覗きに来て下さいませ~!
お待ちしております♪

それでは今日はこれで失礼致します。
ではでは~(・∀・)ノシ


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(*'-')

『漂う青き水の底で君を想う』と日記の感想をありがとうございますv
確かに切ない系のラストでしたね。
でも私が裏に込めたハッピーエンドをちゃんと感じ取って下さったようで、安心致しました(´∀`)
城之内が何年後にイタリアから帰って来るか分かりませんが、きっと帰って来てからはラブラブになるのでは無いでしょうか?
この話の城海は心の絆がとても強いので、何も心配する事は無いと思いますよ~!
城之内がいつ帰って来るのか…そして無事に帰って来た後に海馬とどんな関係を築いて行くのかは、読んで下さった方のご想像にお任せしたいと思います。
私が書くのは、城之内の帰りを『漂う青き水の底で』信じて待っている海馬のシーン…あそこまでですから。
読んで下さった方達の分だけラストがある…というのも、また面白いと思う訳なのです(´―`)

六畳を八畳に変えたのは、私の頭の中にある城之内の部屋のイメージが八畳分の広さを持っていたからです…w
現実問題として、貧乏苦学生の城之内が八畳もの広さを持ったアパートを借りられるかどうか微妙だったので、最初は六畳間にしたんですよね。
でも、どうしても八畳間のイメージが抜けなかったので、最終的にはイメージ優先で八畳に変更したのです。
まぁ…平屋の木造アパートですし、六畳も八畳も余り違わないんじゃないかなぁ~なんて甘い事を思ったりしてw
Rosebank様も余り不自然に感じ無かったそうですし、変えて良かったのかなぁ…? と今は思っています。

それから誤字の指摘もありがとうございました…w
何度か文字校正してからUPしているのですが、どうしても見逃しが出て来ちゃうんですよね。
他の方が書いた文章とかだったら、すぐに間違いを見付けられるんだけどなぁ…;
早速治しておきました。ありがとでした~!

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

Escape...?Ver.瀬人子♀

| コメント(0)

城之内克美×海馬瀬人子。
あの『Friend...?』の事件から少し経った頃の二人の物語です。
あくまで『親友』としての関係を持続させようという二人…。
でも、限界はすぐそこにまで近付いていました。

 




『君がこっちに来るまであと十日程だね。久しぶりに美しい君に出会えるのを、僕は楽しみに待っているよ。こちらに来たら一緒に食事をしよう。花束は真っ赤な薔薇がいいかい? それとも清楚な君のイメージにピッタリの百合の花? 出来れば指のサイズも教えてくれ。勿論左手の薬指のサイズだ。僕の気持ちはもう知っているんだろう? 君は僕がプロポーズする度に笑って誤魔化すけれど、僕の方は至って真面目な…』

 今朝アメリカから届いた長ったらしいメールにそこまで目を通し、瀬人子は呆れたような溜息を吐きながらパタリとノートPCを閉じた。本当は今すぐにでも削除してしまいたかったが、大事な仕事相手でもあるのでそこまでの事は出来無い。その事でまた苛立って、瀬人子は頭を抱えて何度も深く息を吐き出した。


 瀬人子がその男と初めて出会ったのは、彼女がアメリカでの事業に本格的に手を付け始めた頃だった。アメリカの地でも海馬コーポレーションを、そして海馬ランドを広く知って貰おうとデザイナーを急募し、大々的に宣伝しようと思っていたのである。そして応募された数あるデザイン画の中から瀬人子が選び出したのは、若干三十歳の若手デザイナーの作品だった
 新進気鋭の広告デザイナー。白人と東洋人のハーフで、知識も教養も、そして性格や外見も全く問題が無い。大学も飛び級で卒業しているらしいし、専用デザイナーとして採用した時に交わした会話では、その男の知識量と深い考え方に瀬人子も感心した程だった。
 仕事の面では何も問題が無い。こちらが注文した通りにデザインを仕上げ、期日もしっかり守ってくる。それなのに困った事が一つだけあった。

 それはその男が、瀬人子にしつこくプロポーズするようになってしまったという事だった。

 何度断わっても決して諦めない。『君はまだ若いから』『僕の大人としての魅力に気付いていないだけだ』『僕と結婚すればきっと幸せになれるよ!』と、執拗に食い下がってくる。自分とその男の関係は、ただの雇い主とデザイナーの関係に過ぎないとはっきり言っても、彼の脳には全く届いていないようだった。

「はぁー…。くそっ…!」

 ガックリと項垂れて、瀬人子は思わず悪態をついた。あと十日程でアメリカに行かなければならない。多分少なくても一ヶ月は向こうで業務に当たらなければならないだろう。仕事は好きだから、どんなに忙しくても働く事に関しては何の文句も心配も無い。ただ一つだけ瀬人子の気分を重くさせているのは、そのデザイナーの存在なのだった。

「………」

 ふと、社長机の上に置かれていた卓上カレンダーに目を留める。アメリカに行くまであと十日。その間には、土日を挟む事になる。暫くはアメリカで過ごさなければならない事が決まっていた為、その土日はゆっくり休めるようにと敢えて何のスケジュールも入れていなかった。
 置いてあった卓上カレンダーを引き寄せて、その週末の日付をそっと指先でなぞる。そして頭に克美の姿を思い浮かべた。

「城之…内…」

 克美にはまだアメリカ行きの事は言っていなかった。早めに言おうとは思っていたのだが、どうにも仕事が忙しくて学校にも登校出来ず、いつのまにかこんな時期まで追い込まれていたのである。幸い今日は午後からスケジュールが空いていた。

 午後からでも出席して、城之内にアメリカ行きの事を伝えよう。そしてこの土日は、二人でゆっくり過ごそうと提案しよう。

 そう決意して瀬人子は社長椅子から立ち上がった。
 久しぶりの克美とのお泊まり会。その後は一ヶ月程アメリカに行かなければならないが、その楽しい思い出さえあれば仕事も余裕で乗り切られるし、あのしつこいデザイナーの事も気にならないような気がした。
 克美は自分の提案を断わるような事はしないだろう。それどころか嬉しそうに尻尾を振りながら飛びついてくるに決まっている。
 一時は喧嘩別れをするような事件にまで発展したが、あれ以降はそれまでと全く同じ付き合い方をしている。ただほんの少しだけ、昔と違って自分と接触する事が少なくなったような気がしたが、それも気にする範囲の事では無いと思っていた。

「城之内…」

 忙しさにかまけて、連絡する事さえ怠っていた。学校に行って顔をみせれば、きっと克美も喜んでくれるに違いない。
 アメリカに行く前にあの明るい笑顔が見られる事、そして共に過ごす事が出来ることに瀬人子は大いに喜んで、早速学校に行く準備をして社を後にしたのだった。



「ねぇ、城之内さん。今度の土日に、泊まりがけで遊びに来ない?」

 学校に着いた時には、あと十分程で昼休みが終わる頃だった。廊下を忙しなく行き交う生徒達の間を縫って、瀬人子は自分の教室へと足を進めていた。そして教室の扉に手を掛けて一気に開けようとした時に、その声は突然瀬人子の耳に入って来たのである。
 よく知らない…少女の声。多分同級生なのだろうが、余り学校に来ない瀬人子にとっては、聞き覚えの無い声だった。
 その少女の声が再び「城之内さん?」と語りかける。瀬人子が開けようとして開けられなくなった扉のすぐ向こう側で、その話し声はしていた。

「ウチの親が旅行に行っていて留守なの。友達呼んで騒いでもいいって言ってるから遊びにおいでよ」
「は…? でもオレなんかが行ってもいいの?」
「いいよ~! ミッチもアサちゃんもユッキーも来るんだよ」
「でもオレ、あんまあの人達と遊んだ事ないし…」
「いいんだってば。皆ずっと城之内さんと遊びたがってたのよ。だって城之内さん、いつも海馬さんと一緒だったから…」
「う…ん…」
「土曜の夜にウチに集まってお泊まり会するの。それで日曜日は朝から出掛けて、映画を見たり買い物見たり食事をしたりするの。楽しそうでしょ?」
「それは楽しそうだけど。でも…なぁ?」
「何? 何か予定があるの?」
「いや…。何も無いけど…」
「じゃ、決まりね! 皆にもそう言ってくる!」
「お、おい! 勝手に…!!」

 克美の焦った声が聞こえて来たのと、瀬人子がガラリと扉を開けたのはほぼ同時だった。扉が開かれる音で思わず振り向いた克美と、その前に立っていた見知らぬ少女。二人揃って瀬人子を見て「あっ」と声を出したのが、瀬人子の気持ちを苛つかせた。

「城之内…」

 低い声を出しながら、青い瞳を細めて克美を睨み付ける。そして呆然と突っ立っている克美の腕を掴んで、無理矢理引っ張った。

「か、海馬っ!?」
「話がある。ちょっと来い!!」
「うわっ…! い、痛いって…海馬!!」

 制服越しに強く腕を掴んで、痛がる克美を無視して瀬人子は廊下をズンズンと進み、そして凄い勢いで階段を昇って行く。
 目指す場所は屋上。もうすぐ昼休みが終わるから、生徒は一人もいないだろう。今はとにかく、誰もいない場所で克美と話がしたかった。そうでないと…先程のあの会話を聞いてからざわめく胸の内や、熱く滾る脳内は治まらないような気がしたのだ。



 屋上に続く重い鉄の扉を開け放って、瀬人子は一歩表に出る。次いで屋上に降り立った克美を突き放して、瀬人子は彼女の目の前に立ち塞がった。そのまま黙って睨み付けていると、克美が後頭部を掻きながら困ったように溜息を吐くのが目に入ってくる。
 困った時に出る克美の癖。克美は突然現れた瀬人子と、そして今の状況に心底困惑していたのだ。

「なんだよ…。突然どうした? 仕事…忙しかったんじゃないのか?」

 克美の台詞に、瀬人子も幾分眼力を落として軽く嘆息しながら口を開く。

「忙しいのはまだ続いている。だが少し時間が空いたから…登校したのだ」
「そ、そうか…」
「何だ、その態度は。煮え切らないな。そんなにオレが登校してきたのが残念だったのか?」
「ばっ…! 馬鹿言うな!! そんな事思ったりしねぇよ!!」
「そうか…? 先程は実に楽しそうにお喋りに興じていたでは無いか」
「アレは…別に普通じゃんか。同級生と話す事なんて、お前だってするだろ?」
「オレはそんな無意味な事はしない」

 何故だかとても苛々する。この感覚には覚えがあった。
 そう…あの日のあの街中、一緒に買い物に行く筈だった克美が自分を置いて、偶然再会した元彼とホテルに行ってしまった時の苛々によく似ていた。
 あの時とは違い、克美は別に瀬人子を置き去りにした訳では無い。ただ同じクラスの女生徒と喋っていただけだ。それなのに瀬人子の心は苛々して、その苛立ちを止める事が出来無かったのだ。
 今感じている苛々は、あの時のものよりもずっと酷いかもしれないと…そんな事を考えつつ、瀬人子は低い声で言葉を放つ。

「城之内…。オレは十日後に仕事でアメリカに行く。一ヶ月は戻って来られない」

 苛ついている心とは裏腹に妙に冷静な声だ…と瀬人子はまるで他人事のように思っていた。

「だからこの土日に『お泊まり会』をしようと思ったのだが…。どうやら貴様は別のお泊まり会に行くようだしな。仕方が無いからオレはモクバと二人でゆっくり過ごす事にしようと思う」
「ちょ…。ち、違う! あれは…」
「何が違う? ん? 随分楽しそうな計画だったでは無いか。貴様もオレとばっかりいないで、自分自身の楽しみを見付けるが良い」
「そう思ってるなら、何でそんな言い方するんだよ! それにオレはまだアイツ等と遊びに行くと決めた訳じゃ…」
「あぁ…そうだ。せっかくだからオレの方も出発を早めてしまうのも有りだな」
「おい、海馬…! オレの話も聞いてくれよ…!」
「そうだな。よし、そうしよう。あっちにはオレにプロポーズしている男もいる事だしな。さっさとアメリカに行って一緒に食事でも楽しんで、そのまま婚約するのもいいかもしれん」
「え………?」

 心に苛々を抱えたまま、瀬人子は思っている事とは正反対の事をベラベラと喋り続けた。そうしないと苛立ちで押し潰されてしまいそうだったから。
 だが、普段から瀬人子の悩みの種であるあのデザイナーの男の話を出した途端、それまで焦って瀬人子に弁明しようとしていた克美の顔がピシリと固まった。一気に蒼白になっていく克美の表情に、流石の瀬人子も苛立ちよりも驚きが先に立って、言葉を続ける事が出来無くなってしまう。

「城…之…内…?」

 今まで見た事も無いような克美の表情に、瀬人子は恐る恐るその名を呼んだ。けれど克美は反応しないばかりか、目を大きく見開いたままじっと瀬人子の顔を見詰めている。
 押し黙ったままの二人の間に一陣の風が通り抜け、瀬人子と克美の前髪をサラリと吹き上げた。そしてそれで漸く我に返ったように克美は二度三度瞬きをすると、ズイッと瀬人子に詰め寄って細い腕を力一杯掴み上げた。先程とは全く逆のシチュエーションに、今度は瀬人子が痛みに呻く。

「っ………!」
「な…なぁ…今のどういう事だよ…?」

 震える克美の声に、瀬人子は腕の痛みで顔を歪めながら渋々口を開いた。

「もう大分前から…プロポーズを受けている男性がいる。今度アメリカに行った時も会う予定だ」
「プロポーズって…どういう…。あ、いや、嘘なんだろ? 嘘なんだよな?」
「何が嘘のものか。こんな事で嘘を言ってどうなる」
「だってお前まだ十七歳じゃないか…! 結婚なんて早過ぎるだろ!?」
「すぐに結婚はしなくても婚約は出来るから、何の問題も無い」
「こ…婚約…っ」
「婚約したら、もう日本に戻ってくる事も無いだろうな。アメリカに永住して…」
「嫌だ…そんなの…!」
「城之内…?」
「そんなのは嫌だ…っ!!」

 瀬人子の話に、克美はクシャリと泣きそうに顔を歪めてイヤイヤと首を横に振った。まるで子供が駄々をこねるような態度に、瀬人子も何も言えなくなってしまう。

「嫌だよオレ…っ。お前がいなくなるのは絶対嫌だ! 結婚なんて止めてくれ!!」
「何を我が儘言っているのだ…っ。貴様だってお友達と楽しむのだろう? オレだって自由に恋愛しても…」
「オレのは違うよ!! まだ返事もしてないし、遊びに行くつもりもない!! それにただの遊びと結婚じゃ、全然話が違うじゃないか!!」
「違わない!! お互いに別の交友関係を楽しめばいいじゃないかという話からは逸れていない!!」
「いいや違うね、全然違う! それにオレはお前がいいんだ…っ。他の奴じゃ意味が無い!! お前と一緒にいたいんだよ!!」
「じょ…の…」
「そんな野郎にはもう会うな!!」
「それは無理だ。彼は海馬コーポレーションアメリカ支部で抱える大事なデザイナーであって…」
「じゃあもうアメリカになんて行くな!!」
「それこそ無理だ!! オレの仕事がどういう仕事なのか…貴様だって理解しているだろう!?」
「理解してるけど…嫌なものは嫌なんだ!!」
「我が儘を言うな!! オレとお前はただの『友達』に過ぎない癖に…っ!!」

 そこまで大声で叫んで、今度は瀬人子の方が泣きそうに表情を歪める番だった。
 そうだ…。自分と克美はただの『友達』。最近は『親友』かどうかすらも分からなくなっている。自分には自分の、克美には克美の付き合いというものがある。それが分かっているというのに、克美が他の誰かと仲良さそうにしている事が我慢ならなかった。思わず厭味を投げ付け、思ってもしない事を口走る程に…苛ついてしまっていたのだ。

「ただの『友達』に…そこまでする権利は無い…」

 まるで自分に言い聞かせるように、瀬人子はポツリと呟く。そして顔を俯けてしまった。権利という言葉を口に出した途端、克美の表情が見ているこちらが悲しくなるくらいに酷く歪んだからだった。
 その顔を見ているのは…辛かった。自分がとても酷い事を克美に言ったと分かっていた為、瀬人子自身もやりきれなくて堪らなかったのである。


 きっと克美にはこれで本格的に呆れられて…そして嫌われてしまっただろう。
 克美はこれから別の少女達と友情を育み、日本で今まで通り明るく過ごして行くに違いない。自分はアメリカに渡ってあの男と結婚してしまおう。愛は全く無いが別に構わない。

 克美の元から離れられるなら…彼女の手が届かない場所に行けるなら、別にそれがどこでも良かったし、どんな手段を使っても良いと思った。

 そんな風に瀬人子が自暴自棄になっている目の前で、克美は別の炎を琥珀の瞳に灯し始めていた。そして掴んでいた瀬人子の腕をグイッと引っ張り、無言でスタスタと歩き出す。
 何の予兆も無く突然歩き始めた克美に面喰らって、瀬人子は足を縺れさせ転びそうになりながら必死な声を出した。

「じ…城之内…っ? ちょっと待ってくれ…っ!」
「………」
「歩くのが速い…っ!! どこへ行くつもりだ!!」
「………」

 瀬人子の質問に克美は答えない。ただ黙ったまま階段を下り続け、授業が始まってシンとしている廊下を真っ直ぐに進み、下駄箱へと辿り着く。靴箱の中から自分のスニーカーを取り出してそれに履き換え、今度は瀬人子の下駄箱からローファーを取り出して地面に揃えて置く。
 靴を履き替えろという意志を汲み取って、瀬人子は大人しく上履きからローファーに履き替えた。そして今まで履いていた上履きを丁寧に下駄箱に戻した途端、克美はまた瀬人子の腕を取って無言で歩き始めた。
 何を言っても聞きそうにないので、瀬人子は黙って腕を引かれて付いて行く。そして辿り着いた場所は、校門脇の自転車置き場だった。

「城之内…? 何を…?」

 徐ろに置いてあった自分の自転車を取り出す克美を見ながら、瀬人子は心底不思議そうな声を出す。その声に漸く振り向いた克美は、至極真剣な顔をしてこう言い放った。

「逃げる」
「え………?」
「お前を連れて逃げる。二度とアメリカになんて行けないように。オレの知らない男なんかと結婚させないように」
「っ………!!」
「オレと一緒に逃げてくれ…海馬!!」

 嘘でも冗談でも無い克美のその言葉は、熱い響きとなって瀬人子の頭に届いたのであった。

百合城海シリーズにつきまして少々...

| コメント(0)

百合城海のページにようこそいらっしゃいませ~(*´∀`*)
このページは、『男同士』では無く『女の子同士』の城海を書いた物語が収まっているページでございます。
百合というからには、城之内も海馬も女の子ですので、女体化がダメな方は直ぐさまお帰り下さい。
大丈夫な方だけ、楽しんで行って下さいませ~!

女の子と申しましても、二人の口調はいつも通りですし、一人称も『オレ』ですw
その辺りはあまり違和感が無いようにして、女の子としての城海を書いていければいいなと思っております。
まぁ…女の子同士という時点で、普通の城海とは全く違う訳なのですが…(´∀`;

こんな感じで、普通に『親友』同士だった二人が、『恋人』になっていくまでの過程を、ゆっくり書き上げて行きたいと思っています。
それでは以上の事に了承された方は、下の『秘密の花園へ』から先にお進み下さいませ~!

六枚目

| コメント(0)

 三月に入って漸く冬の寒さが和らいで来た頃。童実野町にある一番大きな美術館の特別展示室で、城之内が通っていた専門学校の卒業制作展が開かれた。様々なジャンルの作品が整然と並べられる中、その油絵は一番目立つところに展示されていた。
 群青色の海の中、ポツンと置かれた古めかしいソファーと、そこで背中を向けて横たわっている人間のヌード画。油絵の下に嵌っているプレートには『漂う青き水の底で』という題名が刻まれている。数ある卒業制作の作品達の間で最優秀賞に選ばれたその絵の周りには、常に何人もの学生や観覧者で溢れかえり、人足が途絶える事が無い。
 少し離れた場所から城之内の油絵を見守りながら、オレはその絵の前で繰り広げられる言葉に静かに耳を傾けていた。

「見て、この絵。凄く綺麗」
「綺麗な青色…」
「海だよな…これ。何故か海だって分かるんだよな。不思議だ」
「この人…男の人? それとも女の人?」
「どっちにしろ綺麗な人だなぁ…」
「この絵を見てると息が出来なくなるな。まるで自分が海の中にいるようで…」
「何かこの人…可哀想だわ。ただの絵なのに、見てると泣きたくなるの」
「この人の涙が見えるようだ」

 あの絵の中のオレは、泣いているように見えるのだという。そんな気持ちでモデルを務めていた訳では無いのだがな…と考えて、一時は本当に泣きながらポーズを取っていた事を思い出した。
 城之内はもう既に引っ越しの準備をし始めている。この卒業制作展が終われば、後は部屋を引き払ってそのままイタリアに行ってしまうのだと言う。
 イタリアで絵の勉強をする事に関して話す時、城之内の瞳は期待でキラキラと輝いていた。あんな瞳をされてしまえば、もう引き留める事さえ出来無い。ましてやオレ達の関係は、ただの貧乏苦学生とその協力者というだけなのだから、彼の人生に関わる事にオレが口出しするのも憚られた。
 そう…オレ達は何も変わっていなかった。あの日、あの薄暗い八畳間の堅い床板の上で抱き合ってからも、それが切っ掛けで『恋人』になれた訳では無いのだ。『好き』という言葉も『愛している』という意思表示も、オレ達の間では何一つ行なわれていない。
 何も…変わっていないのだ。

 ただあの時、城之内の気持ちがオレに流れ込んで来た事だけは確かだった。

 言葉は無い。態度も今までと全く変わっていない。それでも、城之内もオレと全く同じ気持ちでいると確信出来るのは…オレが自惚れているからなのだろうか…。



 二週間後。盛況だった卒業制作展も終了し、飾られていた作品は生徒達の手元に戻って来ていた。勿論城之内も例外では無く、見事最優秀賞を取ったあの油絵もちゃんと戻って来たらしい。「最後にもう一度絵を見に来いよ」という城之内の言葉に誘われて、オレは通い慣れたアパートに足を向けた。
 安い平屋の木造アパート。扉を開くと、途端に油絵の具やベンジンの匂いがムッと鼻を刺した城之内の部屋。それなのに、その匂いはもう…感じる事は出来無かった。
 いつも狭い部屋だと思っていた。美術関連の道具が所狭しと並べられて、狭い部屋を更に狭く見せていた。だが今は…そのような道具は一つも無い。
 ガランとだだっ広い八畳間。置いてあるのはパイプベッドと石油ストーブ、そして愛用のイーゼルだけだ。

「この部屋は…こんなに広かったのか…」

 ボソリと呟くと「あぁ、オレもそう思った」と城之内がカラカラ笑いながら口にした。

「余計な物は全部捨てて、本当に使う物だけをイタリアに送っておいた」
「もう部屋は決まっているのか?」
「うん。学生の為の安い寮があるんだ。そこに住みながら勉強するよ」

 キッチンで二人分のインスタント珈琲を煎れて来た城之内は、マグカップを持ったまま暫くキョロキョロと視線を彷徨わせていた。だが、机も椅子も無くなった部屋の状況に苦笑し、仕方無くその場に座り込む。

「ゴメン。机と椅子はまだ残しておけば良かったな」

 そう言う城之内に首を振って、オレも堅い床の上に直に座り込んだ。コトリと目の前に置かれたマグカップに手を付ける。揺らめく琥珀色の液体を啜りながら、目の前に胡座をかく城之内をじっと見詰めた。いつものように砂糖とミルクが入った珈琲を美味しそうに啜りながら、城之内は静かに微笑んでいる。

「出発は…いつなのだ?」

 暫くお互いに黙って珈琲を啜っていたのだが、沈黙に耐えきれなくてつい口を開いてしまった。
 城之内は一瞬こちらに視線を向け、そして口に含んでいた珈琲をコクリと飲み下すとふーっと大きな溜息を吐いた。そして空になったマグカップを床の上に置きながら、目を伏せて口元に笑みを浮かべる。

「明日。午後の飛行機で発つよ」
「明日…っ!?」

 明日という言葉が、どこか遠い時間のように感じられた。もうあと数時間後の事だというのに、まるで数年先の事のように思えて仕方が無い。だが思わず目を走らせた腕時計の針を見て、城之内の言う『明日』という言葉が急に現実味を伴ってオレの中で反響した。
 明日…明日…。そう、もう明日なのだ。残された時間は…無い。

「そ…うか…」

 自分でも分かるくらいに声が硬く震えている。多分この動揺は城之内にも伝わっているだろう。

「部屋はもう引き払った。残ったベッドとかストーブとかの荷物も、明日の午前中には送って終了だ。イーゼルだけは何より大事だから、自分の手で持っていくけどな」
「そう…だな。高校の…あの美術教師に貰った大事なイーゼルだからな」
「うん」
「気を付けて行けよ」
「うん」
「向こうでも…身体には気を付けてくれ。余り無理はするな」
「うん」
「それからたまには…」

 たまには…何と?
 そこまで言いかけて、オレは慌てて口を閉ざした。たまにはメールを? 電話を? 手紙を欲しいと? 恋人でも何でも無い関係なのに、オレは未だに城之内との接触が欲しいというのだろうか。
 自分の言動が浅ましく…そしてとても図々しく思えて、オレは自分の口元を手で覆った。
 こんなオレの気持ちに城之内はもうとっくに気付いているだろう。真っ直ぐに奴を見られなくて、オレは瞳を伏せて俯いた。だがふいに、目の前で胡座をかいていた城之内がゴソリと動いて、ズルズルと四つん這いでオレに近付いてくる気配を感じた。思わず目を開くと、目の前に真摯な表情でオレの顔を覗き込む琥珀の瞳と視線が合う。
 驚いて目を瞠るオレに城之内はゆっくりと手を伸ばして来て、口元に宛てていた手を掴んで引き剥がしていく。そして手首をギュッと強く握ったまま体重を掛けられて、そのまま床の上に押し倒されてしまった。

「じょ…の…んっ!?」

 名前を呼ぼうとすると、途端に唇を塞がれる。何度も何度も啄まれるようにキスをされ、やがて口内に熱い舌が入り込んできた。ぬるりと暴れ回るそれに積極的に自分の舌を絡めつつ、オレに覆い被さる城之内の首に腕を回し、大分草臥れたトレーナーの生地を握り締めた。
 静かな部屋にピチャピチャという濡れた音だけが響いて、オレの口の端からは飲み込めなかったどちらの物とも言えない唾液がトロリと流れ落ちる。暫くして城之内がオレから離れた時には、舌と舌の間に唾液の糸が繋がっていた。
 二人揃って、はぁー…と大きく息を吐き出す。

「海馬………」

 オレの口元と繋がった糸を指先で優しく拭いながら、城之内は低い声でオレの名を呼んだ。

「あのイーゼルは凄く大事な物だ。だからイタリアまでは自分の手で持って行く。だけど、あのイーゼル以上に大事な物がある。それこそ本当だったらイタリアまで持っていきたい物が…」
「………」
「海馬…。お前だよ海馬。分かるか? オレはお前の事が凄く大事なんだ」

 城之内の台詞に、オレは素直にコクリと頷いた。
 あぁ、分かる。分かり過ぎる程に良く分かる。

「でもオレはお前をイタリアに連れて行く事は出来無いし、お前だってイタリアには来られないだろう? 他にも大事な物…一杯持ってるしな」

 続けられた城之内の言葉に再び頷く。
 何もかもを捨てて城之内に付いて行くには…オレには抱える物が多過ぎるのだ。それは多分、城之内のあのイーゼルや絵に対する情熱と同じような物だ。だから捨てられないし、オレも城之内も抱えている物を捨ててまで我を通す事は出来無い。
 ふいに…ポタリポタリと上から水滴が降って来た。その内の一滴がオレの瞳の真上に落ちて、まるで自分の涙のように眦から零れ落ちて行く。
 確かめなくても分かる。これは城之内の涙だ。そしてその涙が呼び水になったかのようにオレの瞳もじんわりと熱くなって、熱い涙が溢れてくるのを感じていた。

「好きだよ…」

 突然告げられた言葉にも驚きを感じず、オレは喉に流れ込んで来た塩辛い液体をコクリと飲み込みながら頷いた。

「オレ…お前が好きだよ。海馬…」
「オレも…だ…」

 涙で喉が塞がって、上手く声が発せられない。本当は大声で泣きたいのに我慢しているものだから、こめかみや喉の奥が痛くて痛くて堪らなかった。多分城之内もオレと全く同じ状態なのだろう。何度も喉を鳴らしながら、震える声で「海馬」とオレの名を口にする。

「なぁ、海馬。あの絵…貰ってくれ」

 城之内の言葉にチラリと視線をイーゼルに向ける。そこに置かれているのは、あの油絵だ。

「いいの…か? 最優秀賞を…取った絵だろう…?」
「うん、いい。だからこそお前に貰って欲しい。あの絵は…お前の為だけに描いた絵だ」

 固い床板の上に寝転がりながら、オレはイーゼルの上に置かれた油絵を見上げた。群青色の海の底で、オレは古ぼけたソファーに横になって項垂れている。
 あの姿は今のオレの姿。オレの心情そのものだ。

「今のお前、あんな風だろ?」

 ふいに囁かれた一言に心底驚いた。思わずオレを見下ろす城之内の顔をまじまじと見詰め返すと、城之内が少し寂しそうな笑みを浮かべながらオレの顔を見ている事に気付く。

「あんな風に…」
「城之内…?」
「あんな風に、オレを待っていてくれるんだろう…?」

 みるみる内に琥珀色の瞳が潤んでいく。一度は止まった涙が再び流れ出して、オレの顔の上にパラパラと降って来た。その涙を受け止めながら、オレは城之内の首に絡めていた腕を強く引いて、奴の身体を引き寄せた。心地の良い重みがオレの身体にのし掛かる。

「そうだ…。だからなるべく早く帰って来い」
「海馬………」
「ただし、やりっ放しは駄目だ。勉強中の事を途中で投げ出したりとかは、絶対にするな。やるなら全力でやれ。学ぶべき事は全て学んでから戻って来い」
「海馬…お前…」
「お前が満足いくまで学んで来るまでは、オレはずっと『あそこ』で待っていると約束する。お前が描いた海の底で…一人静かに待っていてやる。だから安心してイタリアに行って来い」
「海…馬…っ!!」
「待っている…。ずっと…ずっと待っている。だから…っ!!」

 そこから先は言葉にならなかった。初めて身体を重ねたあの日のように、後はただ二人で泣きながら抱き締め合う。
 そうする事しか…出来無かった。



 季節の移り変わりは早い物だ。
 城之内がイタリアに旅立つのを見送ったあの日はまだ三月で、春とは言え吹いている風も冷たかったというのに、今はもうすっかり初夏になっている。青い空が広がり、爽やかな風が吹いていた。多分もうすぐ梅雨が来てこの青空も見えにくくなるのだと思うと、少し寂しいような気がする。

「城之内………」

 この青空のずっと向こうに、城之内がいる。距離は大きく離れているが、その事がオレをほんの少しだけ安心させていた。
 後日、城之内から「これも貰ってくれ」と届けられたあの薔薇模様の古びたソファーに座り、ノートPCを起動させてメールのチェックをするのがオレの日課になっていた。こうやって城之内から届いたメールをゆっくり読むのが、最近の楽しみになっている。
 先日貰ったメールでは、言葉が通じなくて意思の疎通が大変だという事が書かれていた。だがそれ以外には特に問題無いらしく、スケッチブックにデッサンをして水彩絵の具で簡単に色を付けた絵が添付されて送られて来た。
 世界中を飛び回るオレでさえ見た事が無いような、明るいイタリアの町並み。白い壁と青い空と、向こうに見えている緑の森と、手前の道路に寝転がる猫。美しい街だと…素直に感嘆する。
 決して写真では無く、自分が描いた絵で送ってくる辺りが城之内らしいと自然に笑みが浮かぶ。そして同時に、彼が側にいない寂しさを思い出した。


 城之内が日本を去ってまだ二ヶ月。この先どれくらいイタリアに行っているか分からない。一年か、二年か、三年か、それとももっと掛かるか…。
 寂しさに慣れる事は決して無いだろう。だがその度に、オレは自室に飾ってあるあの油絵を見て耐えるのだ。簡単には泣けない現実のオレの代わりに、群青色の海の底で泣きながら寂しさを全身で訴えている『オレ』の絵を…。

「今日も…ちゃんと待っているぞ…。だから早く帰って来い…城之内」

 絵に向かってボソリと呟き、オレは目を閉じて自分の意識を群青色の海の中に落とし込んだ。揺らめく青い水の中で、あのソファーに横になって城之内を想う。それはオレにとって城之内への愛を確かめる、大事な大事な時間だった。


 寂しい時間は今後も続くであろう。だが決して不安では無い。いつかきっと、城之内がオレの元に帰って来ると知っているから…。
 だからオレは今日もその絵を眺めながら、遠い地で夢を追いかけている愛しい男の事を想うのだった。

紙の束って重たいんだね!!

| コメント(0)

右手首を負傷した二礼です、こんばんは。

火曜日のお仕事中の事でした。
ちょっこら重い本を無理して片手で持って袋に入れようとした時に、本を持っていた方の右手首がクキッと嫌な音を起てました。
その時はあんまり気にしていなかったのですが、次の日(水曜日)になってから異変に気付きました…。

い…痛い…だと…っ!?

別に骨にヒビが入ったとか折れたとかそういう事じゃ無いのですが、どうやら腱鞘炎になってしまったらしいです…w
そういう訳で、只今ちょっと右手首が痛いです(´∀`;
キーボードで文章を打つ程度には全く痛みを感じないのですが、水道の蛇口を捻る時が一番辛いですねぇ…;
つまり上下の動きは全然平気でも、横や斜めの動きをした時に痛みが発生するらしいんです。

凄く…厄介です!!www

水道の蛇口を捻る度に「いてっ!」と叫びながら耐えております…。
利き腕(右)だから余計に辛いというか、面倒臭いんですよ~w
早く治ってくれないかなぁ…(´・∀・`)


あと更新時間の事なんですが、結局日が変わる前に作業を終わらす事が出来ませんでした。
スンマセンでした…orz


長編『漂う青き水の底で君を想う』に六枚目をUPしました。
短期集中連載だったので、これにて終了でございま~す!
結局六話分掛かってしまいましたが、私の中ではこれを三話で出来ると思っていたらしいです…w
あー…うん。確実に配分を間違えていましたねぇ…w
でもまぁ、いつもとは違ってかなり中身が凝縮された連載だったので、書いてて本当に楽しかったです。
書きたいシーンをすぐに書けるって、ストレス掛からなくていいですね~w
(いつもの長編だと、書きたいシーンも全て後回しになるので、気分的に中弛みする事があります)
個人的にはムッツリエロが書けたので、凄く満足のいく作品に仕上がりました(*´∀`*)
結構お気に入りかもしれませんw

今後はこういうスタイルの連載もいいなぁ~と考えつつ、新しいネタに萌えていきたいと思っています。

追記…実はチョット思うところがあって、今まで『六畳』と書いていた部屋の広さを『八畳』に広げてあります。今回だけ間違った訳では無いのでご注意下さいませw


以下は拍手のお返事になります~(´∀`)


>ねこま様

こんばんはです~!!
拍手とコメント、どうもありがとうございました~♪(*´д`*)

ねこま様の一言感想が、まさに私が求めていた感想そのものだったので、コメントを読んだ時に思わず笑ってしまいました…w
そうですか、エロイですか。ありがとうござます!!
我々の世界ではむしろ褒め言葉ですよ!!www

なるべく精神にグッと来るようなエロさを求めて書いていたので、ねこま様の感想は本当に嬉しかったです~v
これからは直接的なエロばかりでなく、こういう雰囲気エロも一杯チャレンジしていきたいと思っています(´∀`)
何か『エロ』というよりは『ヤラシイ』って感じがして、いいですよね…w

それでは今日はこれで失礼致します。
『漂う青き水の底で君を想う』を読んで下さって、本当にありがとうございました!!
ではまた~(・∀・)ノシ


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(゜∇゜)

『漂う青き水の底で君を想う』と日記の感想をありがとうございますv
この間のRosebank様の予想的には、2番が一番近いかもしれませんね。
まぁ…城之内が帰国して結ばれるまでは書いていませんけどw
あと4番(賞を取る)と、油絵の題名がタイトルと被っている等の予想は当たっていましたね~。

情熱的お初(笑)も褒めて下さって、ありがとうございますw
確かにウチのお初は、いつも「さぁやるぞ!」と色々準備をしてからやっていましたからねぇ…。
こういうお初は、私にしては珍しかったと思います。
でも、流されHはアレはアレで萌えますよね~!
個人的には、受けが雰囲気に流されちゃって逆に燃えまくるって展開は好きなんですよw
いつも以上に攻めを欲しがってるって感じがしますもんね(*´д`*)
こんな感じのエロを、これからも一杯書いていきたいと思っています。

あとパン日記(笑)についてなのですが、焼きたてパンが美味し過ぎて止められなくて困っています…w
特に最近焼いたクルミパンが非常に美味しくて、すっかり朝はパンが主体になってしまいました;
(今までの朝食は、パンと御飯を交互に食べていたのですが…w)
ヤバイなぁ…。クルミ美味しいなぁ…。カロリー高いのに!!

そんな感じで今日も明日のパンの下拵えをしながら、今日は失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

にわかパン屋の二礼です、こんばんは。

ヤベー!! 焼きたてパン超美味い!!
最初は普通の食パンを一斤焼いたのですが、余りの美味しさにあっという間に食べきってしまいました…w
美味しいとは予想していましたが、まさかここまでとは思いませんでした…。
恐るべし、ホームベーカリー!!

という事で普通の食パンが成功したので、今度はレーズン入りのパンを焼いてみましたが…。
これがまた美味しいwww
参ったなぁ…。パン食が止められなくなるじゃないか…;
うん。次はクルミを入れてみよう!(←もう既に手遅れ)


話は変わりますが、この週末は自分的には何も忙しく無かったのにも関わらず、某Cたん(笑)の校正をしていたらあっという間に時間が過ぎ去っておりました…w
あれ? おかしいな? 金土日って他に何してたっけ?w
あぁ、そうだ。買い物行ったんだった。そんで、ホームベーカリー買って来てパンに嵌っちゃったんだw
そんな記憶が全部上書きされる程の修羅場でございました…(´∀`;
Cたん…頑張ったなぁ…www

今回は最初から全部のデータが纏まっていた訳では無いので、随時送られて来た分を細かく校正していました。
お陰でzipファイルのキャッチボールですよwww
「出来たー!」「見たー!」「出来たー!」「見たー!」の繰り返しですw
うん、アレは面白かったw

何はともあれ、無事に入稿出来て良かったです~!! 私も一安心しました。
出来上がりが楽しみだなぁ…!(*'-')
スパコミが一気に楽しみになって参りました~v


長編『漂う青き水の底で君を想う』に五枚目をUPしました。
淡々と書き進めて来たので、エロも淡々と表現してみました。
何か思った以上に城之内がエロ親父になっちゃってて、分かり易いエロよりヤラシイかもしれない…と思ってみたりw
一応次回でラストですが、この物語を3話分で終わらそうとしていたのが嘘のようです。
だって6話じゃん…; 倍掛かってるじゃん…;
最初から無理な話だったんだよなぁ…(´_ゝ`;

今は何か妙にスッキリしておりますw
長編に移行して本当に良かったわぁ~www


以下は拍手のお返事になりますです(*'-')


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました(´∀`)

『漂う青き水の底で君を想う』と日記の感想をありがとうございます~!
Rosebank様のお得意の予想が出ましたね…w
さて…一体どれが当たっているのでしょうか?
それは次回のお楽しみって事で宜しくお願いしますw

コメントを見て思ったのですが、確かに海馬の方が思い詰めて泣くって話は『勇気の証明』以来かもしれません…。
つまり…処女作以来って事ですか?
うぉぉ…; それは確かに凄い…というか、本当に珍しいパターンで書いていたんですねぇ…w
最近ヘタレ之内やダメ之内ばかり書いていたので、格好良くて自分の意志を曲げない城之内の存在に飢えてきたのかもしれませんね。
まさに原点回帰って奴でしょうか?
自分の意志を貫き通す城之内君は、やっぱり格好良くて良い漢なんだなぁ~と思わずにはいられませんw

で、そういう城之内君に合うのはやっぱり乙女海馬な訳でありまして…w
久しぶりに乙女思考満載の海馬を書けて楽しかったです(*´∀`*)
うん。やっぱり海馬は可愛いですよね~v

日記に付いてもコメントありがとでした♪
焼きたてパンって想像以上に美味しいんですよね~(´¬`)
二回目はレーズンパンを作ってみたのですが、最高に美味しかったですw
今後はクルミとか、他のドライフルーツとか、チョコチップとか、チーズとか、色んな物に挑戦したいと思っております。
………。
でも…ヤバイなぁ…。
パンばっかり食べてると…また太ってしまう…www

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

*五枚目

| コメント(0)

 四季の中でも秋は特に短く、あっという間に終わってしまう。気が付けば冬がやって来てクリスマスや正月も終わり、もうすぐ二月になろうとしていた。テレビの中では連日のようにチョコレートのCMを流し、街は赤やピンクや白などの可愛らしい色で溢れている。外はまだ寒いというのに、そんな寒さを感じさせないほど街は賑やかだった。
 それなのに、この狭い八畳間は外界とはまるで違った雰囲気の静かな空気を醸し出している。


 オレが城之内の卒業制作のモデルを引き受けてから約五ヶ月。イーゼルに立てかけられた油絵はそろそろ仕上げに掛かっているらしかった。気分の赴くまま筆を走らせていた初期の頃とは違って、最近は特に丁寧に描いているのが分かる。神経を集中させている城之内の気配が、背後から痛い程に伝わってくるからだ。

「ふぅ………」

 城之内に気付かれないように、オレは肺に溜まった淀んだ空気を静かに吐き出した。
 卒業制作の提出期限は二月に入ってすぐだという。オレの方ももうすぐ年度末の業務で忙しくなり、余計な時間は全く取れなくなる。これまでのように暢気にモデルをする事も出来なくなるだろう。よって城之内のモデルを努めるのは、実質的に今日が最後…もしくはあと一回が限度だった。

「………」

 部屋の中は本当に静かだった。聞こえるのは城之内がキャンパスに筆を走らせる音と、ストーブの上に置いた薬缶が吹き上げる蒸気音、あとは二月の風が窓を揺らすガタガタという軋みだけだ。
 ヌードモデルをしているオレの為に部屋の温度は相変わらず高く、真冬だというのに城之内は未だに半袖で絵を描いている。たまに流れ落ちる汗を腕で拭っている気配もしていたが、どんな事をしても決して城之内の集中が途切れる事は無かった。奴の瞳はポーズを取っているオレか、キャンパスの絵にしか向けられていない。
 部屋の中央で実際にソファーに横たわっているいるオレと、キャンパスの中でも同じように横たわっているオレの姿。そのどちらも『オレ』である事には違いない。そうだ…、城之内が見詰めているのはこのオレだけなのだ。
 その事を妙に嬉しく感じ、そして心の中で強く願う。どうかこの姿が、城之内の心の底にずっとずっと強く居座っていますように…と。

『だから、学校を卒業したらイタリアに留学するって言ったんだ』

 あの衝撃的な城之内の告白の後、オレは自分の気持ちに無理矢理気付かされ、そして同時に宣言された別れに一人涙を零した。城之内が日本を去るというショックからは、未だに抜け出せてはいない。だが、実際に泣いてしまったのはあの日が最初で最後だった。
 あの日、約束の一時間後に目を真っ赤に腫らしたオレを見て、城之内はただただ驚くばかりだった。「どうしたんだ?」とか「具合が悪いのか?」とか本気で心配する声に、「目にゴミが入っただけだ。埃が溜まっているようだから、たまには掃除しろ」と言い捨てて、オレはさっさと身支度をして邸に帰ってしまった。
 部屋が汚れていたのは事実だったので城之内はオレの言葉を素直に受け止めて、その後にきちんと掃除をしたらしい。次の週にやって来た時には見違える程に部屋が綺麗になっていて、自分の嘘の発言等すっかり忘れていたオレは逆に面喰らった程だった。

「どうだ? 綺麗になっただろ? コレでお前も安心してモデルが出来るよな!」

 得意げに言い放つ城之内に苦笑して、オレはコクリと頷いてみせる。そんなオレに城之内は大喜びして、特別美味しい珈琲を煎れてくれたのだった。
 幸せな時間だったと思う。だが、城之内のそんな行動は、オレの本心に何一つ気付いていないという証拠でもあった。
 いや…気付く事は無いだろう。オレと城之内は、只の絵描き志願者とその協力者。そして今は、画家とモデルの関係だ。オレの恋心に…ましてや男が男に惚れた等という事に、あの鈍い城之内が気付く筈が無い。
 別に気付いて欲しかった訳では無いのだ。オレ自身も、この気持ちは誰にも打ち明けようとは思わない。
 だが少し…誰かを想うという事に対して、虚しいと感じていたのも事実だった。


「………?」

 そんな事をつらつらと考えている内に、部屋の中はすっかり暗くなってしまった。冬至の頃に比べて大分日が延びてきたとは言え、冬の日差しはやはり短い。オレの記憶が確かならば、完全に日が落ちるまでに一度休憩を取る筈だったのだが…。
 そう言えば、いつもは昼間から煌々と照らされている電気も消えている。ストーブの火だけが赤く浮かび上がる薄暗い八畳間。西の窓から消えかかった茜色が、ほんの少しだけ見えている。宵闇に反応して街灯がパッと灯り、通りに面した窓からボンヤリとした白い光が入り込んできた。

「城之内………?」

 オレの背後には間違い無く城之内がいる筈だ。オレの背中をじっと見詰めている奴の視線を感じる事が出来る。だが、いつも感じていた絵を描く動作が全く感じられない。この薄暗い世界で、城之内はただただオレにだけに強い視線を送っていた。

「城之内…? 灯り…点けなくていいのか? こう暗くては絵が見えないだろう…」

 呼びかけても返って来ない返事に不安になり、もう一度話しかけてみる。ポーズを崩す訳にはいかないから言葉だけを放ってみるが、それでも城之内が動く気配は無かった。
 じっと…ただ強くじっとオレの事を見詰める城之内。だが暫くして、カタリという筆を置く音と共に城之内がパイプ椅子から立ち上がる気配がした。一言も喋らないまま、奴は床板を踏みしめてオレの背後まで近付いて来る。

「じょうの…」
「黙って」

 呼びかけた名前は、城之内の発した一言に即座に消え失せてしまった。
 そのまま上から見下ろされるように見詰めて来る視線を感じて、オレは身体を強ばらせてしまう。城之内が一体何をしたいのかが分からなくて混乱した。

「海馬………」

 どの暗い時間が経ったのだろうか。
 低い低い声が、オレの遙か上から降ってくる。その声が心なしか震えているようなのは、オレの気のせいなのだろうか…?

「海馬…そのままじっとしていてくれ。何もしないから…。お前が嫌がるような事や、お前が困るような事は何もしないから…。しないって約束するから」
「………?」
「だから…ちょっとだけ…。ほんの少しだけでいいんだ。お前の肌に触れさせてくれ」
「っ………!? な…何…を…?」
「今見えてる部分だけでいいんだ。少しだけ…触らせて…。頼むからそのまま…動かないで…」
「………っ!!」

 暗闇の中に響く城之内の声に、オレは二の句が継げなかった。
 あぁ…まただ。またこの感覚だ。奴が一体何を言っているのかが分からない。分かる筈なのに…理解出来ないこの感じ。一度目はヌードモデルを頼まれた時、二度目は卒業後にイタリア留学すると告げられた時、そして三度目が今だ。
 何なのだ…。城之内は一体オレに何を告げようとしているのだ?

「っ………!!」

 そう内心で感じていた疑問を口に出そうとした時だった。背後に突っ立っていた城之内がその場にしゃがみ込み、オレの背中を掌でそろりと撫でた。
 熱くてガサガサに荒れた掌。油絵の具で汚れた手を、何度も何度も洗っているせいだ。ひび割れた指先が肌に引っ掛かって痛みすら感じる。

「いっ………!」
「ゴメン」

 引っ掻かれるような感触に思わず抗議すると、直ぐさま謝罪の言葉が飛んでくる。だが城之内がその掌を引っ込める事は無かった。
 ストーブが焚かれているとはいえ、剥き出しの肩や背中はやっぱり冷えている。その冷たくなった肌に、城之内の体温は至極熱く感じられた。肩胛骨や背骨の辺りを何度も撫でられ、首筋に指先が纏わり付く。その感触に背筋がゾクゾクとし、思わず身体をブルリと震わせた。

「海馬………」

 だが城之内はオレの反応に対して何も言わない。その代わりに後ろ髪を掻き上げられ、露わになった項にそっと唇を落とされた。ただ乾いた唇を滑らせるように肌に押し付け、背骨に添ってゆっくりと下がってくる。肩や肩胛骨を優しく撫でられながら、城之内が以前言っていた尻の割れ目…つまり尾てい骨の辺りを軽く吸われた時、急激に背筋を駆け抜けた快感にオレは耐える事が出来なかった。

「あっ………!」

 我慢出来ずに甘い声をあげ、ビクリと身体を跳ねさせる。その拍子にソファーの背からオレに垂れ下がっていた白いシーツが床に落ちて、まるでそれが合図だったかのようにオレは勢いをつけて振り返った。
 驚いたように目を瞠る城之内の首に腕を絡めて、半開きになった奴の口元に自分の唇を押し付ける。

「か、かい…むぐっ!!」
「っ…んっ…!!」

 身体を押し付けながら全体重を掛けると、バランスが狂って二人揃って床に転がってしまった。ガタンッ!! という大きな音が部屋に響く。

「いって…っ!!」
「じょ…の…うちぃ…っ」
「え…? 海馬…?」
「城之内…っ!!」

 ソファーから転げ落ちたオレを庇った為に、城之内は腰と背中を強く打ち付けたらしい。眉を寄せて顔を顰めていたが、オレはそんな事に気を回せる状態では無かった。
 分かり易く言えば、興奮…というより欲情していたのである。今まで城之内に対する想いを堰き止めていた何かが決壊したかのように、城之内を愛しいと想う気持ちがオレの中を濁流となって巡って、オレはそれに抗う事が出来なくなっていた。
 無我夢中で眼下に見える城之内の唇に吸い付き、今やはっきりと形状を変えた自分のソレを城之内の太股に押し付ける。薄く開いた唇に舌を押し込んで、熱い位に感じる口中を必死で舐め回した。

「海…馬…っ」
「んっ…! はっ…ぅ…っ!」

 やがて、されるがままだった城之内がオレの舌に応え出して、いつの間にか自分の口内を舐め回されていて…。二の腕をギュッと強く掴まれたと思ったら、一気に反転させられて体勢が百八十度変わっていた。
 床の上に寝転がるオレと、そんなオレを見下ろす城之内。お互いにハァハァと息が荒い。薄闇の中で暫く黙って見詰め合って、ややあって激しいキスのせいで唾液に濡れたままだった唇が再びオレの唇に押し付けられた。
 ぬるりと入り込んでくる舌に積極的に応えつつ、城之内の背に腕を回してTシャツの布地を強く掴む。それを感じ取ったのか、城之内の熱い掌が再びオレの全身を撫で回し始めて、否応なしに感じる快感に甘く喘ぎつつ、オレはソファーの足を蹴り飛ばした。
 ガタンッとソファーが堅い音を起てる。その音をどこか遠くで聞きながら、後は互いの身体にしがみつくので精一杯になった。



 はっきりと覚えているのはそこまでだ。
 分かっているのはオレと城之内はあの暗い八畳間の堅い床板の上で、ベッドに移動する事も無くセックスしてしまったという事だけだった。

 夢中だった。ただただ夢中で、他には何も考えられなかった。

 板間の上で無理な体勢をとらされていた為に、今も全身がズキズキと痛んでいる。ソファーの背に掛かっていたあの白いシーツに全身を包み、城之内が普段使っている安いパイプベッドに寝転がりながら、オレは今は明るく照らされた電気の下でキャンパスの前に佇んでいる城之内の事を見詰めていた。
 下半身にジーンズだけを履いた城之内はじっと自分が描いた絵を見詰め、そしてゆっくりとイーゼルをこちらに向ける。目の前に現れた油絵に、オレは驚きと感動で目を丸くした。


 そこは青い海だった。青い青い…空のような明るい青では無く、もっと深い群青色の海の中。深海にも…夜の海にも見える、他に何の生き物も感じられない静かな水の中に、そのソファーはポツンと置いてあった。
 まるで場違いな古ぼけたソファー。オレはそこに横たわっていた。白いシーツが中途半端に身体に掛かり、俯き加減にしなだれている。
 疲れているようにも、ただ眠っているだけのようにも見える。見方によっては泣いているようにさえ見えた。
 群青色の海の中、ぼんやりと白く浮かび上がる白いシーツとオレの背中。ソファーの背に掛かる腕や、床に落ちる足も生々しい。


「完成…したんだな」

 ポツリとオレが呟くと、城之内が静かな笑みを浮かべながら黙ってコクリと頷く。

「そうか…。これが…そうなのか」

 口元に笑みを浮かべてそう言った瞬間に、ホロリホロリと…涙が零れ落ちてくる。この間の時のようにそれを隠す事も出来ずに、次から次へと溢れ出てくる熱い涙をオレはただ白いシーツに染み込ませていった。

「海馬………」

 微笑みながら泣くオレに城之内は困ったように笑って、大股で近付いて来てシーツごとオレの身体を強く抱き締めた。じわりと伝わってくる体温が愛おしい。堪らなくなってシーツから腕を出し、上半身裸のままの城之内に強く抱き付く。
 そのままベッドの上で強く抱き締め合いながら、オレは随分長い事泣き続けていた。



 城之内が描ききったその青く美しい海の絵は、オレと城之内の別離を決定付けるものだった。
 群青色の水の中で泣いているかのように項垂れるオレの姿は、これから城之内に置いて行かれるオレの心情そのものだと…そんな風に感じられてならなかった。

ちょっとお疲れモードでウトウトしてる二礼です、こんばんは。

昨日の1Q84の3巻発売のせいでお疲れモードだったのですが、今日は遠出(と言っても家から約30分の秋葉原ですが)して買い物に行って参りました。

しげみは念願のホームベーカリーを手に入れた

という事で、買って来たものはホームベーカリーです。ついでに自分のPCをグレードアップする為の物も少々(6万弱)…。
ホームベーカリーは、以前から相棒と二人で「欲しいね~」なんて話していたんですよ。
でも私は「あったら便利だな」程度にしか思って無かったのに対して、相棒はかなり本気で欲しがっていたようなのですね。
で、今日ついに買って来てしまったと…w そういう訳なんですw
今早速普通の食パンを焼いてみてるんですけど、上手に出来るといいなぁ~!!
焼きたてパンって美味しいですよね~(*´д`*)ホクホク
それが家で手軽に出来るってだけで、かなりの浪漫です~!!
ちなみに買って来たホームベーカリーは、お餅もつけるらしいです。
つきたてお餅を、大根下ろしとか納豆とかで食べたいなぁ~(´¬`)
考えただけでも美味しそうだw

あとサプライズ的な偶然があって、凄く嬉しい再会をしました。
買い物も済ませたので家に帰ろうと地下鉄の駅で電車待ちをしていたら、以前働いていたセブンイレブンの店長さんとバッタリ出会ったのです!
電車に乗って地元の駅に着くまでの間、自分達や他の人の近況とかを久しぶりにお話出来て嬉しかったなぁ~!
お互いに元気で良かった良かったv
ただ旦那さんはバイクで転けて、骨折して大変だったらしいですけどね…w

皆さんも事故には充分気を付けましょうね~(´∀`)


長編『漂う青き水の底で君を想う』に四枚目をUPしました。
あくまで淡々と書き進めているこの物語ですが、今回のアレが一番大きな動きだったかもしれません…w
いや、そんな事は無いか…。
まだラストがあるもんな!

そんな訳で、自分の夢に真っ直ぐに進み続ける自立した城之内君と、気付いてはならない気持ちに気付いちゃった為に動揺している海馬の回でした。
ウチの海馬は他所様の海馬とは違って、結構普通に自分から城之内に恋をしちゃったりします。
ただその場合、恋する相手の城之内君は大概ヘタレかダメ男だったりするんですけどねw
だからこんな感じで完全に自立している城之内君相手に海馬が一方的に想いを寄せる話ってのは、私にしては本当に珍しいパターンなんですよ。
自分でも書きながら新境地を見出した気分ですw

短期集中連載なので、あと1~2回で終わってしまうと思いますが、最後まで気を抜かずに頑張って書いていこうと思っています。
というより、本当に書きたいシーンはこれからなので、むしろ気合い入りまくりなんですけどね…w


以下は拍手のお返事になりま~す!!(゜∇゜)


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(・∀・)

『漂う青き水の底で君を想う』と日記の感想をありがとうございまっす!
ヌードって確かに正面から見れば分かり易いし、それだけエロくも感じますけど、私はむしろ背中だけの方がエロイって感じるんですよね~。
逆に前面が見えない辺りが「前は一体どんな風な感じなんだろう…」という妄想をかき立てられるんですよ…(*´∀`*)
お尻の割れ目も同じような感じなので、やっぱりRosebank様も仰っているような『チラリズム』が一番萌えるんだと思います。
そんな訳で、海馬のあのポーズは『私の中で』一番エロイポーズだったりするんですよ~w
背中最高です!!www

モデルさんのポーズ決めや小道具の配置などが細かく描写されているのは、やっぱり私が実際に『その場面』を目の前で見てきているからなんでしょうね。
学生時代を思い出しながら書いているので、とても懐かしく感じられます(´―`)
ただ私の場合は他に何人もの生徒がいる中でのデッサンでしたが、城之内と海馬は二人きりですからね…。
単に『絵描き』と『モデル』とは言っても、やっぱり二人だけの狭い空間は途轍もなくエロく感じられます…w
しかも海馬はプロのモデルさんではありませんからね~。
どうしても羞恥心があるでしょうし、『エロス』から離れられないような気がしますw
そんなエロさを表現したくてこの物語を書いているのですが、それがRosebank様にも上手く伝わっているようで良かったです(*'-')

元々は短編用に書いていた作品ですので、上記にもあります通りあと1~2回で終了となります。
それでもなるべく濃い内容の作品に仕上げたいと思いますので、楽しみに待っていて下さいませ~!

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

四枚目

| コメント(0)

 城之内の卒業生制作のモデルを引き受けて、二ヶ月が経っていた。季節はもうすっかり移り変わり、オレが初めて城之内の絵を目に留めたあの日と同じ、高く澄んだ青空が広がるようになっていた。外では大分涼しい風が吹くようになっていたが、部屋の中は随分と温かい。裸でいるオレの為に、城之内が未だ秋だというのにストーブをガンガンに焚いている為だ。お陰でオレ自身は快適なのだが城之内の方は暑くて堪らないらしく、常に半袖で絵を描いているのだった。

「………」

 背後で夢中になって絵を描いている気配を感じながら、オレは小さく嘆息した。今ではすっかり見慣れてしまった薔薇の花を見詰めて、そのままそっと瞳を閉じる。時計は見られないから確かな事は言えないが、感覚からすれば多分もうすぐ休憩の筈だ。
 最初はじっとしているだけで辛かったモデルも、二ヶ月もすればすっかり慣れてしまった。体勢が楽なせいもあるが…と考えて、思わず苦笑してしまう。今でこそ力の抜き方を覚えたものの、最初の頃は横に寝転がっているだけも身体に力が入り、全身が凝り固まってしまったものだった。

 多分あともう少し…。城之内が筆を置き、深く息を吐くのが合図…。

 そんな事を思いながら瞳をゆっくり開いたその時、背後からカタリと筆が置かれる音と共に、ふーっという如何にも満足したような吐息が聞こえて来た。次いで「お疲れ様。休憩にしよう」という城之内の声に何となく嬉しさを感じながら、オレは自分の身体をゆっくりと起こしていく。


 薄手のガウンを羽織って腰紐を結び、ソファーから立ち上がってぐっと伸びをする。慣れたとは言え、ずっと同じ姿勢でいる事に疲れを覚えない訳では無い。凝り固まった筋肉を解す為にあっちこっちを伸ばすと、背骨や首の骨がポキリと音を立てた。

「疲れただろ。今日はあと一時間で終了だから、我慢してくれよな」

 オレの骨が鳴った音を聞き咎めて、城之内が苦笑しながらそう言ってくる。そして熱い珈琲の入ったマグカップを机の上に二つ置いて、パイプ椅子にドッカリと座り込んだ。油絵の具で汚れた手や腕を濡れ布巾で軽く拭って、手前に置かれたマグカップに手を伸ばす。そしてそのまま、既に砂糖とミルクが入っている自分用の珈琲を啜りだした。
 それを見てオレももう一つのパイプ椅子に座り、ブラックで用意されたマグカップを手に取って少し息を吹きかけて冷ました後、揺らめく琥珀色の液体を一口飲んだ。安いインスタント珈琲だが疲れた身体には丁度良い味だ。温かい液体が胃に落ちていく感覚に、ホッと一息吐く。

「いい夕焼けだな」

 城之内の言葉に窓の外を見れば、そこは真っ赤に染まっていた。秋の夕日が今にも西の地平に消え入りそうになっている。

「大分日が短くなってきたなぁ…」
「そうだな」
「この日がまた長く伸びる頃には、ちゃんとお前の絵が出来ていればいいんだけど」
「馬鹿な事を言うな。出来ていないと困るのはお前の方だろう?」
「あはは! 確かに」

 クスクスと楽しそうに笑いながら、城之内は珈琲を啜っていた。オレもブラックの珈琲をゆっくりと飲み干していく。そしてチラリとイーゼルの方に目を向けた。
 イーゼルはいつでもオレに背を向けている。描きかけの絵を見せて欲しいと頼んでも、城之内は決して見せてはくれなかった。休憩の時も絶対にオレの目に留まらないように、イーゼルの向きを変えるのだ。

「何? 絵が気になるの?」

 オレがじっとイーゼルを見ている事に気付いたのだろう。城之内がパイプ椅子から立ち上がりながら、ニッコリと笑いつつ言葉を放つ。そのまま差し出してくる手に空になったマグカップを押し付けつつ、困ったように笑みを浮かべる城之内を軽く睨み付けた。

「気になっていても見せてくれない癖に、何を言う」
「うん。完成するまでは見せてあげない」
「大体モデルはオレなのだぞ? オレにだって見る権利はあると思うのだが」
「分かってるよ。だから完成品は『一番』に見せてあげるって言ってるんだ」
「途中経過だって気になるだろう?」
「それはダメ。描きかけの絵を見せるなんて、そんなお前に対して『失礼』な事は出来ない」

 妙に真剣な光を瞳に載せ、城之内はそう言ってクルリと背を向ける。そのまま空になった二つのマグカップをシンクに持って行くのを横目で見ながら、オレはムスッとしながら立ち上がった。時計を見ればもう十分が過ぎようとしている。休憩は終わりだ。これからラスト一時間のモデル業が始まる。
 ソファーに近付いて羽織っていたガウンを脱ぐ。薄手とは言え、肌を覆っていた物を脱ぐと流石に寒さを感じた。ブルリと身体を震わせると「大丈夫か?」という、心配そうな城之内の声が背後から響く。

「寒い? ストーブ強くする?」
「いや、平気だ」
「大分涼しくなってきたもんなぁ…。次回からもう少し厚手のガウンを持って来た方がいいかもしれないぜ」
「そうだな。そうする」
「あぁ…そうだ海馬。オレ、実は…」

 ソファーに横になり、いつものように城之内が白いシーツを上から被せていくのを感じつつ、淡々とそんな会話をしていた。
 それはいつもと全く変わらない光景だった。同じポーズを取り、シーツの位置を決めた城之内が満足げにイーゼルへと戻っていって、置いてあった筆を再び手に取ってキャンパスに走らせていく。それが二ヶ月間ずっと続いてきたオレ達の儀式の筈だった。それなのに…。その日に限って城之内はオレが全く予想もしなかった事を言い出したのだった。
 余りに突然の言葉に、オレは訳が分からなくなる。知っている筈の言葉が、まるで知らない外国語のように聞こえる。
 この感覚には覚えがあった。これは二ヶ月前に「ヌードモデルになって欲しい」と城之内に頼まれた時とよく似ていたのだ。

「今…何て言った…?」

 オレの腰の辺りのシーツを微調整している城之内を、横目で睨み付けながらそう問い掛ける。自分でも分かるくらいに声が強ばっているのが、妙におかしく感じた。

「だから、学校を卒業したらイタリアに留学するって言ったんだ」
「は………?」

 城之内が一体何を言っているのかが分からない。イタリア? イタリアってどこの事だ? あのヨーロッパのイタリアか? 日本から遠く離れた…あのイタリアの事なのだろうか?

「その為にずっと貯金して来たんだ。それにこの間久しぶりに静香に会いに行った時にさ、母親にこの話をしたら全面賛成してくれたんだよ。何かオレの将来の為に貯金してた金があるとか言って、それを少し出してくれるらしい」
「………」
「かなりギリギリの金額だけど、やってやれない額でも無い。思い切ってイタリア留学して、向こうで絵の勉強してくるよ」
「ど…く…らい…?」
「ん?」
「どれくらい…行くのだ…?」
「それは分からない」
「この部屋はどうするのだ」
「引き払うよ」
「オレを…置いて行くのか!?」
「え………?」
「っ………!?」

 一瞬…自分の言った言葉が、まるで他人の言葉のように耳から入ってきた。
 オレは今…一体何を言った? オレと城之内の関係は、絵描きを目指して勉強中の苦学生とその協力者というだけだった筈だ。それなのに何故、置いて行かれるのが嫌だなんて思ったりしたのだろう…?

「海馬…?」
「い…いや、何でも…無い…」
「海馬…。だってお前…」
「何でも無いと言っている! 早く向こうに戻って絵を描け!!」

 大声で喚くと、狭い八畳間に暫しの沈黙が舞い降りた。だがややあって、呆れたような盛大な溜息の後に城之内がイーゼルへと戻っていく足音が聞こえて来る。その気配を背後で感じながら、オレはオレで静かに深い溜息を吐いた。目前で咲く赤い薔薇の花を見詰めながら絶望感に苛まれる。


 気付いてしまった…。気付いてはならない事に気付いてしまった。
 絵描きになりたいという夢を持った城之内に協力したいと、ただそれだけを想っていた筈だったのに…。それが恋心に変化してしまっている事に気付いてしまった。
 だが、今更その気持ちに気付いたからといってどうなると言うのだろう? 城之内はオレの事なんて何とも思っていないというのに。オレの全裸を見ても顔色一つ変えず、ただ黙々と絵を描き続ける日々。それどころか、あと半年でイタリアに留学するというのに。

 オレは…置いて行かれるというのに…。

 男が男に恋をした…。その時点で自分の気持ちが信じられないというのに、この状況は余りにも辛過ぎる。
 オレの元を離れる城之内を引き留める事なんて出来やしない。絵描きになるという城之内の夢を応援すると決めた時から、彼の邪魔をする事だけは出来なかった。

「っ………」

 いつも背後から感じるだけの気配。たまには城之内が真剣な表情でオレの身体を描いている姿を、実際にこの目で見たいと思っていた。それが出来ないポーズに苛立ちさえ感じていたのだが、今回だけはこの背面を見せるポーズをありがたく感じる。
 泣きたくなんて無かったのに、涙が勝手に零れ落ちていく。目の前に咲いている薔薇の花が赤く滲んでいった。せめて泣いている事が城之内にバレないようにと、全身に力を込めて身体が震えるのを我慢する。

「どうした海馬。珍しく力が入っているぞ。もう少しリラックスしてくれ」
「………」

 オレの異変を察知した城之内の注意が飛んでくる。けれどオレは暫くの間、身体の力を抜く事が出来なかった。



 城之内がイタリア留学するまであと半年。
 今もキャンパスに出来上がりつつあるオレの絵が永遠に仕上がらなければいいと…、泣きながらそんな事ばかりをずっと考えていた。

まぁ...そうなるよね? うん

| コメント(0)

やっぱりダメだった二礼です、こんばんは。

うん!! やっぱりダメだった!!
何がダメだったかというと、今やってる短編…もとい長編の事についてです\(^o^)/
もうダメだって思った時点で、さっさと諦めて長編にしちゃえば良かったのにね~。
馬鹿だねぇ~。本当に馬鹿だねぇ~。
そういう訳で『漂う青き水の底で君を想う』は、案の定長編になってしまいました…;
いや~スンマセン。マジでスンマセン。
ただ、そんなに長くする予定は無いので、結構すぐ終わると思いますw

で、何でそんな無茶をしてまで短編にしたかったというとですね…。
実はただ単純に、長編カテゴリを作るのが 面 倒 臭 か っ た だけだからです!!
新たに長編カテゴリを作るより、既存の短編にぶっ込んじゃった方が遙かに楽ですからね…w
いやホント、面倒くさがりでごめんなさい…(´∀`;

でも何とかなると思ったんです!! 本当にそう思ったんです!!
何とかならなかったけどwww


という事で、長編(泣)『漂う青き水の底で君を想う』に三枚目をUPしました。
あぁ…うん…最初からこうすれば良かった…orz
カテゴリ作るのは面倒臭かったけど、長編に移行したら気が楽になったもんなぁ…w

ちなみに、ヌードモデルがどうのこうのという下りは、私の学生時代の体験談です。
プロのモデルさんは、本当に見事なくらいにスッパリ脱いでくれますからね。
確かに全裸なのですが、そこにエロさなど微塵も感じさせ無いのが、逆に凄いと感心してた次第です。
男の学生さん達も普通に一杯いましたけど、誰も「ちょっとトイレ」なんて離席したりしませんでしたしねw
多分ね、少しでも恥じらったりしちゃったら、その時点でダメなんだと思います。
恥じらう=エロスに繋がっちゃいますからね~。
そこを敢えて思い切って全裸になる事で、『エロス』から『モデル』になる事が出来るんだなぁ~と思いました(*'-')

ちなみにこの話のコンセプトは、全くの逆ですw
如何に『モデル』から『エロス』に繋げるかがミソって奴ですね~w


今週は色々とやる事が一杯あって、私も気が抜けません。
某方の文字校正もやっていますので、気を引き締めて頑張っていこうと思っています(´∀`)


以下は拍手のお返事でございます~♪


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(*'-')

『漂う青き水の底で君を想う』と日記の感想をありがとうございます。
はい、結局長編になってしまいました(´∀`;
でも逆に長編にした事で、短く収めなくて良いんだと気が楽になりました…w
じんわりと続きを書いていこうと思っています。

で、本題(笑)のヌードモデルなのですが、残念ながら背中だけでございますw
正面からの絵では無くて大変申し訳無いのですが、背中には背中だけの独特の美しさがあると思うんですよね~。
Rosebank様のコメントにもありましたが、今回私の脳裏に浮かんだシーンは、ソファーで城之内に言われる通りに背中を向けるポーズを取っている海馬の姿だったんです。
正面とか横からとか、後から色々考えてみたんですけど、ついに私の脳内の海馬は振り向いてくれる事はありませんでした。
という事で、背面画になった訳なんです。
尻の割れ目もバッチリ見えているより、見えるか見えないかのギリギリの辺りがエロくて良いんじゃないかと…w そう思う訳なのです(´―`)

まぁ…そういうのを抜きにしても、海馬の背中なんて、それだけで御飯3杯食べられる程エロイと思いますけどね!!
肩から背中を伝って腰までのラインとか、背骨や肩胛骨が浮いた様子とか、白くて艶やかな肌の感じとか…。
妄想が止まりません!!(*´д`*)ハァハァ
そういう背中をずっと見られる城之内君が、羨ましい今日この頃ですw

日記で書いた胃もたれについても、心配して下さってありがとうございました~。
食べ過ぎだって分かっていても、ついつい楽しい雰囲気に流されて食べちゃうんですよねw
今回はお酒を飲まなかったので、まだマシだったのかもしれませんが…。

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

三枚目

| コメント(0)

 ヌードモデルをやって欲しいという城之内の申し出を聞いてから二週間後。オレは再び城之内の部屋を訪ねる事になった。理由は言わずもがな。城之内の卒業制作のモデルをする為だ。
 あの時、モデルを引き受けるという返事は即答する事が出来なかった。城之内の為にモデルとしても協力をする事は一向に構わなかったが、流石にヌードモデルともなると、そう簡単に決意するのは無理だったのである。
 普通だったら速攻断わっていただろう。それなのに、あの時に見た城之内の瞳が余りに真剣で、オレは断わる術を全て失ってしまっていたのだった。
 結局三日後に電話で了解の旨を伝え、今に至るという訳だ。


 呼び鈴を鳴らすと、すぐに城之内が出てくる。何かをやっていたのか、額に汗をびっしょり掻いていて、それを腕で拭っていた。

「いらっしゃい。言っといたもの、ちゃんと持って来た?」
「薄手のガウンだろう? ほら、持ってきたぞ」
「バスローブでも浴衣でも何でもいいんだけどさ、今の季節は薄い方がいいと思ってな」
「こんなもの何に使うのだ?」
「休憩する時に羽織るんだよ。それともお前、裸のまんまで休憩したい?」
「なっ…!」
「まぁいいから入って。そんで洗面所で今着てるもの全部脱いで、持って来たガウン羽織って部屋に来て」
「全部…? 下着もか?」
「当たり前だろ? ヌードモデルなんだから」

 オレの質問に城之内は何でも無いように答え、自分はさっさと奥に引っ込んでしまった。
 よく考えたら城之内はヌードデッサンに慣れているのだ。専門学校に入った時から苦手な人物画を克服するべく、個別にゼミも取っていると言っていたくらいだから。
 最初オレは、それならばもうオレのデッサンは必要無いではないかと言った事があった。だが城之内はその問いに対して「モデルさんは皆女性ばかりなんだよ。男の練習もしたいから引き続き頼む」と答えて、結局オレをデッサンし続けていた。


 夏も終わりに近付いていたが、未だ暑い季節なのは変わらない。汗でべとついたシャツを脱いで、城之内の部屋の洗面所でオレは全裸になった。鏡に映った白くて真っ平らな身体に溜息を吐く。
 こんな面白味の無い身体で、一体何を描くというのか…。どうせ描くなら、専用のモデルでも雇えばいいのにと思って止めた。常にギリギリの状態で生活している城之内に、モデルを雇う金なんて無い事を思い出したからだ。
 その点、何でも協力するオレは奴の格好のモデルとなる。それ以上もそれ以下も無い。だから城之内がオレをモデルに選んだのは、特に深い意味は無いのだ…。
 城之内がオレをモデルに選んだ事に対して何とか理由付けをしたくて、オレはここ何日かずっとそんな事ばかりを考えていた。
 別にどうだって構わない筈だ。城之内の行動に意味があろうと無かろうと。だがオレは、どうしてもそこに理由を捜してしまうのを止められなかった。何故か胸がズキリと痛む。絵描きになる城之内の為に協力し、その夢を支えると決めたのは自分だった筈なのに。奴が立派な絵描きになって、あの日見た美しい空の絵をもっと沢山見たいと思っただけだったのに。
 それなのに何故か、オレは城之内がオレを『利用』する事を『嫌だ』と考えるようになっていた。

「何故なのだ…」

 持って来た薄手のガウンを羽織りながら、深い溜息を吐く。
 城之内の絵が上達していくのを、心から感心しながら見守っていた。だがそれとは別の何かが胸の中で生まれつつあった事に、オレはもう気付き始めている。その『何か』の正体がもう少しで見えると思った矢先に、部屋の奥からオレの名を呼ぶ城之内の声で、見えかけた『何か』は綺麗に掻き消されてしまった。
 掴み損ねた答えにガックリしながらも、オレは再度呼ばれた声に誘われるように部屋へと戻っていった。


 ドアを開けると、いつもの八畳の板間に見慣れない家具が置かれているのに気が付いた。古ぼけた…だが結構趣味が良い布張りのソファーが部屋の中心にドンと置かれている。焦げ茶の布地に小さな赤い薔薇がいくつも咲いている模様だった。
 かなり流行遅れの模様だが、間違い無く品も質も良いソファーだ。

「中古家具屋で買ってきた」

 まだ何も言っていなかったのだが、オレの視線に気付いた城之内がそれを見越して先に答えを言って来る。

「じゃ、とりあえずガウン脱いでみてくれる?」
「は………?」
「だからガウン脱いで。身体を見たいから」
「っ………!!」
「今更恥ずかしがるなよ。モデルさん達はみんな、気持ち良いくらいにさっさと脱いでくれるぜ?」

 ヌードを晒す事を別に何でも無いように言われて、慣れていないオレは面喰らってしまう。
 そんな事を言われても、オレはプロのモデルじゃ無い! そんなに簡単に裸を晒せるか!!
 そうは思ったが文句を言うだけ無駄なような気がしたので、仕方無しに腰紐を緩めてガウンを肩から滑り落とした。薄い布地がパサリと床に落ちて、狭い八畳間にオレの裸体が露わになる。恥ずかしさに顔がカッと熱くなったが、目の前の城之内が少しも表情を変えないので何とか耐える事が出来た。

「うーん…」

 まるで居場所が無いように立ち尽くすオレに城之内は軽く唸って、頭の先から爪先までじっくりと見定めていった。そして再び視線を上の方に戻すと「ちょっと背中見せてくれる?」と軽い口調で言い放つ。
 言われた通りに振り返ると、今度は背中をしつこいくらいに見詰められてしまった。

「うん、よし。決めた」

 どのくらい時間が経ったのだろうか。突然ポンと手を打った城之内がそう言って、用意してあったソファーに近寄っていった。そしてガタガタとソファーの位置を直すと、オレの方を振り返ってクイッと顎を動かす。

「これ。ここに寝転がってくれる?」
「このソファーにか?」
「うん。背中をこっちに向けて、横向きで。つまりお前は背もたれ側に向く感じでな」
「背中…? 背中を描くのか?」
「そう。お前の背中を描く」

 正面からの絵では無い事に、ほんの少しだけホッとした。正面を向いていれば、必然的に城之内の視線が目に入ってくる事になる。今のオレには、その視線は耐えられないと思ったのだ。
 言われた通りに身体の左側を下にして、背中を城之内側に向けるようにして横たわった。「もうちょっとこっちに」とか「頭少し下げて」とかの微調整を行ない、やがて満足のいくポーズになったのか、城之内が「うん」と自信満々に頷く声が頭上から聞こえて来た。

「大丈夫? ポーズはキツクない?」
「平気だ。楽な姿勢で助かる」
「良かった。んじゃ、そのままじっとしててな」

 そう言って城之内は、今度は机の上から真新しい白いシーツを手に取った。それをますソファーの背に斜めに掛けて、オレの下半身へと垂らしていく。腰から下を覆うように感じた布地の感触に、オレは下半身が隠された事に心底安堵した。だが城之内は、その布地を少しずつずらしていく。

「おい…! それじゃ…」
「尻が見えるって? ヌードモデルなんだから、尻くらいで喚くなよ。安心しな、全部見せると却って下品になるからちょっとしか出さない」
「ちょ…っ。ちょっとって…お前…っ」
「ちょっとはちょっとだよ。あぁ、動くなってば。こう…尻の割れ目が見えるか見えないかくらいが丁度良いんだ」
「わ…割れ…っ!?」

 慣れないモデルとあからさまな発言に焦るオレを余所に、当初の位置より大分シーツをズラしながら、城之内は真剣な声色でそんな事を言っていた。何度かシーツを動かしていたが、やがて気に入った場所に落ち着いたらしい。残りの余った布地を床に落とし、わざと皺が寄るように広げながら「よし」と満足げに呟く。
 立ち上がり離れて行く城之内の気配に、オレは気付かれないように小さく嘆息した。
 オレ自身は城之内に背中を向けている為、彼の行動を直接見る事は出来ない。ただ、気配だけは手に取るように分かるのだった。
 立ち上がり、イーゼルの置かれた位置まで歩いて行く。椅子に座り、ポーズを取ったオレの背中を見詰める。暫く思い悩んで、やがて下書き用のクロッキーを動かし始めた。

「休憩は一時間に一回、十分な」
「あぁ」
「暇だったら喋っててもいいから」
「そんな余裕は無い。大体喋り掛けても、集中している時の貴様は受け答えしないだろう」
「あはは。確かに」

 最初はそんな事をのんびり言い合って。だがオレの言葉通り、その内集中し始めた城之内は一言も言葉を発しなくなっていった。布地のキャンパスにクロッキーを走らせている音だけが部屋に響く。
 何故だか妙な気分だった。それなのに、先程まで感じていた『利用されて嫌だ』という気持ちはどこかに行ってしまっていた。
 オレの裸体を見た城之内の態度が、余りにあっさりしていたからかもしれない。その事で、それまで感じていた緊張が緩和されたのは確かだった。

 利用されていても、別にいいじゃないか。
 城之内が真剣にオレの身体を描いているのは、紛れも無い事実なのだから…。

 呼吸音すら聞こえない程集中して絵を描いている城之内の気配を感じながら、オレはソファーの背もたれに咲く赤い薔薇の花を見続けていたのだった。

絵描き城海へようこそ!

| コメント(0)

城之内×海馬で、海馬の一人称。

この物語は、絵描きとしての才能に恵まれた城之内君と、そんな城之内君の才能に惚れ込んだ海馬の物語です。
長編カテゴリに入っていますが、そんなに長ったらしい物語ではありません。
淡々と流れる時間の中でゆっくりと愛情を深めていく城海を、どうぞお楽しみ下さいませ~!

才能ある城之内君と、そんな彼に協力する海馬が見たい方は、下の『額縁』からお入り下さい。

胃が辛い...w

| コメント(0)

胃もたれしている二礼です、こんばんは。

何だか色々と食べ過ぎて、胃もたれしていて苦しいです…w
先週の土曜日は、地元の仲間達と遠出してお花見に行ってきました。
とっても良いお天気の上ポカポカと温かくて、最高の花見だったのですが、如何せんご馳走を食べ過ぎましてね…w
普段は弁当や食べ物を持って来ない奴までゴッソリご馳走を持ってきた物ですから、それら全てを食べたら胃がオカシクなった訳です…(´∀`;
 

hanamibento.jpgのサムネール画像

参照~! ちなみにコレで、7人前です…w
右側に写っている白い袋にも、焼きたてパンがゴッソリ入っておりますw

お陰様で日曜日はほぼ何も食べられなかったのですが、珍しく午前中からお仕事していたので、夜には漸く胃が小慣れて来ました。
これで何とかなると思ったんですがね…;
今日の飲み会で、また飲み過ぎ&食べ過ぎまして、治りかけた胃がまたオカシクなってしまいました…orz
うぅ…; 胃が苦しい…;
もう暫くはご馳走とかいいです。
胃に優しい物を食べて過ごしたいと思います…w


短編に『漂う青き水の底で君を想う』の中編をUPしました。
ああ…あと一話で終わる気がしない…w
とりあえず中編として上げましたが、終わりきらずに長編になってしまったら…ゴメンナサイですw

以前日記内でも話題にしましたが、私は話を作る時、まず特徴的なシーンが脳裏に浮かんで来るんです。
そのシーンの前後に肉付けをしていく事によって一つの話を作るのですが、今回私の頭に浮かんだシーンは未だ出て来ていません。
…と言っても、今回のラストで一体どんなシーンが浮かんだかは…簡単に予想出来ると思いますがねw

何とかあと一話で終わるように努力はしますが…頑張っても無駄なような気がしてきましたなぁ…w
やっぱ長編に移行しないとダメかね…こりゃ。


以下は拍手のお返事になりますです~(*'-')


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(゜∇゜)

『漂う青き水の底で君を想う』と日記の感想をありがとです~v
一見ただのパトロンに見えますが、実は海馬は城之内の為に全くお金を出していないんですね。
ただ保証人が必要な書類に、サインをしてあげてるだけです。
そこが普通のパトロンと違うところで、全く城之内を甘やかしていないってのがミソかなぁ~と思いますw
ただ、城之内の絵に惚れ込んだのは確かなので、協力はしたいと思っているのは本当なんですけどね(´∀`)

海馬が才能有る人物が好きというのは、激しく同意します。
あと個人的に、海馬は努力や根性がある人間を好む傾向にあると思うんですよ~。
そういう点で、貧しいながらも自分の夢に真っ直ぐに突き進む城之内に惹かれているのは間違い無いでしょう!
今はまだ城之内の「才能」だけに惚れているだけかもしれませんが、Rosebank様の仰る通り、もしかしたらあの瞬間に「一目惚れ」していたのかもしれませんね(*'-')
海馬がこの先どうやって己の気持ちに気付いていくのかは…後編をお楽しみになさってて下さいませ~!
………。
まぁ…後編だけで纏まれば的な話ですが…w

『無限の黄昏 幽玄の月』と違って淡々と進むお話なので、書いている私も凄く新鮮に感じていますw
今後はこういった内面に迫る話も沢山書いて、もっと作品の質を高めたいなぁ~なんて思っております。
派手な描写が一切無いので、文字だけで表現するのは凄く難しいんですけどね~。
でも何とか、頑張りたいと思っています~!!

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

二枚目

| コメント(0)

 城之内から絵描きを目指しているという夢を聞いてから、オレ達は度々二人だけで過ごすようになっていった。天気の良い日は屋上で風景画を描き、天候が悪い時は放課後の教室でスケッチブックに人物画を描く日々。そのモデルは何故か、いつもオレだった。
 特に何かのポーズを取るという訳ではない。ただ椅子に座らされて「動かないで」と念を押される。そして黙って座っているオレの周りを移動しながら、城之内はスケッチブックに鉛筆でデッサン画を描いていた。静かな教室に、鉛筆が紙に擦れるシャッシャッという音だけが響いている。

「風景画ばかりじゃなくて、たまには人物も描けって先生に言われたんだ。でもオレ人間なんて書いた事無いから、下手くそでさ~」

 デッサン用に使っている濃い鉛筆のせいで、城之内の掌の横は真っ黒に汚れている。それでもそんな事は全く気にせずに、紙の上に浮かんだ鉛筆の芯の粉をフーッと吹き飛ばし、一旦スケッチブックを閉じて笑った。

「それでも最初の頃よりは、大分上手くなって来たんだ。見てみる?」

 約一時間近く黙って座っていた為に、オレも身体が凝り固まってしまった。グイッと伸びをして身体の筋肉を解していると、城之内がそう言って自分のスケッチブックを差し出して来る。オレはそれを受け取って、パラリとページを捲ってみた。
 最初の方に描かれているデッサン画は確かに酷いものだ。絵の経験が全く無いから仕方無いのかもしれないが。だが、途中から驚異的なスピードで絵が上達していっているのが分かる。
 最後の頁は少し俯き加減のオレのバストカット。長い間じっとしていた為に、少しだけ疲れを見せる顔。つい先程までのオレの姿だ。

「上手くなったな…」

 お世辞では無い。本当にそう思ったら、自然と褒め言葉が口をついて出た。城之内自身もそう思っているのだろう。オレの言葉を否定したりせずに、得意そうに笑ってみせる。

「十分休んだら、もう少しだけ描かせて。あと二~三枚でいいからさ」
「構わん」
「あっと…。仕事は大丈夫なんだよな? 引き留めてゴメン」
「仕事があったら最初からこんな事には付き合わない。変な事に気を使うな。どうせオレしか描く相手はいないんだろう?」
「描く相手っつーか、描く気が無いっつーか…」
「………? どういう事だ?」
「いや、こっちの話」

 オレの手からスケッチブックを取り上げながら、城之内はそう言って少し困ったように笑ってみせた。


 これがオレ達の高校での過ごし方だった。高校二年生の秋に再会してから、毎日のようにこうして城之内と付き合っている。
 季節はあれから一年以上が経ち、秋が終わり冬に入っている。暖房の消えた肌寒い教室の中、城之内がスケッチブックに鉛筆を走らせている音だけがいつまでも響いていた。



 オレが城之内の人物デッサンのモデルになるのは、高校を卒業してからも全く変わらなかった。
 高校卒業後、城之内は当初の予定通り学生ローンを組んで、美術系の専門学校に入った。入学と同時に一人暮らしも始め、週末や祝日はオレはそこの部屋に招かれる事になった。
 最寄り駅から徒歩十五分の、小さな平屋の木造アパート。部屋は八畳一間。古い家なので、キッチンとトイレバスは別々になっている。
 最初その部屋に足を踏み入れた時、八畳の板間の部屋はガランとしていた。家具は安いパイプベッドと箪笥が一棹。中古家具屋で買ってきた馬鹿でかくて丈夫な机が一つとパイプ椅子が二つ。それだけがその部屋の全てだった。
 だが、その部屋に物が溢れるのも時間の問題だった。二ヶ月も経たない内に八畳の部屋には様々な画材が置かれ、所狭しと並べられるようになり、狭い部屋が更に狭くなっていく。更に城之内は油絵を好んで描く為、その部屋はあっという間に油絵の具やベンジンなどの独特な臭いに占有される事になった。
 だがオレは、その臭いが嫌いでは無かった。むしろ好ましくさえ思っている。

「はい、じゃぁあっち向いて」

 今日も狭い八畳間に、城之内の声が響く。オレはその言葉に従って、首を少し傾けるポーズを取った。
 休日や時間がある時等はその部屋を訪ねて、二つあるパイプ椅子の一つに座ってただじっとしている事がオレの役目だった。そしてそんなオレを、城之内はいつものようにデッサンをする。
 素人目から見ても、城之内の絵は格段に上手くなった。高校の時と違って片手間では無く、あくまで専門的な事を集中して学んでいるせいだとは思うが、それにしたって上達が早過ぎるような気がする。
 こういう部分を見ると、やっぱりコイツには才能があったのだと思わずにはいられない。

「………」

 首を傾けた先に、描きかけの油彩画がイーゼルに立てかけて置いてあった。あのイーゼルや油絵の具のセットは、城之内が卒業祝いとして童実野高校の美術教師から譲り受けた物だ。それを使って、城之内は日々絵を描いている。課題も、個人的な絵も、全てあのセットで描いていた。
 他の画材は全部バイト代で稼いだお金で買ったり、もう画材を使わない学校の先輩や同級生達から安く譲り受けたりしているらしい。昼間は学校に行き絵の勉強をして、夜はバイトに精を出す。オレが尋ねる予定の無い休日も、全てバイトで埋まっていた。
 忙しくて全く気の休まらない毎日。だが城之内は、その生活を心から楽しんでいた。充実感があるのだと言う。
 一度だけ「後悔していないのか?」と尋ねた事がある。食うのにも困る生活。食費に回さなければならない金も、城之内が画材代に回していた事を知っていたのだ。苦しくない筈が無い。
 だがオレのそんな質問にも、城之内は直ぐさま首を横に振って応えてみせた。

「生活は大変だけど、オレは今凄く毎日が楽しいんだ。後悔なんかする筈が無い」

 少し痩せた頬。けれど満面の笑顔でそう言われれば、こちらとしてももう何も言う事は出来ない。
 それ以来オレは、城之内の生活の事に関して口を出す事を止めた。

 こうして最初の一年は無我夢中で過ごしていた城之内も、二年目となると流石に落ち着いてくる。油彩画を描く時やオレのデッサンをする時も、そのポーズが決まっているのだ。

「もう立派な絵描きだな、城之内」
「そう? オレはまだまだ勉強中の身なんだけどな」

 心から感心しながらそう言えば、城之内はシャリシャリと鉛筆を動かしながら何事も無いように答えた。
 季節は夏。この小さな部屋には冷房は無く、古い型の扇風機だけがブーンという音を起てて回っている。風はなるべくオレに当たるように調節され、自分はTシャツを汗びっしょりにしながら無心でデッサンをしていた。
 時折窓から入って来る生温い風が気持ちいい。近くの公園で遊ぶ子供達の声と、裏の雑木林から聞こえて来る蝉の鳴き声。時折目の前の道路を横切るスクーターのエンジン音と、どこかの家の軒先に吊されている風鈴の澄んだ音。
 ずっと遠くから聞こえて来る様々な音と生温い空気に、ついウトウトと眠くなってしまい、カクリと首を項垂れてしまった。慌てて姿勢を正すと、背後でクスクスと笑われて恥ずかしくなる。

「ちょっと、休憩しようか」

 そう言ってスケッチブックを閉じながら笑う城之内に、オレもコクリと頷いた。



 冷蔵庫の中に入っていた冷たい缶コーヒーを手渡され、プルトップを上げて中の冷たい液体を一口飲んだ。身体の中が一気に冷えていく感覚に、ホッと一息吐く。そして机の上に放られていたスケッチブックに手を伸ばしてみた。
 パラリと中を開いて見ると、繊細なタッチで描かれた様々なオレの姿が目に入ってくる。高校時代とはタッチが全然違う。これはまさに『絵描き』としてのデッサンだった。

「何か気に入ったのあった?」

 汗でビッショリ濡れたTシャツが気持ち悪かったのだろう。軽くシャワーを浴びて新しい黒のタンクトップに着替えてきた城之内は、オレに近付きながらそんな事を言う。

「気に入ったのあったらあげるよ」
「こんな物を貰ってどうする」
「額縁に入れて飾っておけば?」
「自分がデッサンされた姿をわざわざ飾っておくほど、オレはうぬぼれてはいない」

 まるで中身には全く興味が無いようにスケッチブックを閉じながらそう口にすると、城之内は「そりゃそうだ」と言いながらケラケラと面白そうに笑っていた。
 城之内にはそう言ったが、オレは実はその全ての絵を心から気に入っていたのだ。本当なら、貰えるものなら全ページ貰いたいくらいだ。別に描かれた自分の姿に陶酔している訳じゃ無い。流石のオレだってそこまで自意識過剰ではない。ただ純粋に城之内の絵が好きだと思っていただけだ。
 美しいタッチだった。まるで流れるような線で描かれたオレの姿。出来る事ならもっともっと描いて欲しいと感じさせる…そんな絵だった。
 そう…。出来る事ならこんなデッサンでは無く、あのイーゼルに置かれるキャンパスの上の…油彩画で。

「なぁ、海馬。一つ相談があるんだ」

 下らない…。まるで馬鹿な妄想だ…と、自分の頭に浮かんだ光景を否定した時だった。目の前の城之内が真剣な瞳でオレを見詰め、言葉を放つ。

「絵の…モデルになって欲しいんだ」
「モデル? モデルならいつでもなってやっているじゃないか。今だって…」
「違う違う。デッサンのモデルじゃ無くて、オレが言っているのは油彩画の人物モデルだ」

 まるでオレの頭の中を城之内に覗き見られたように感じる一言だった。
 オレが驚きに目を瞠っていると、続けて城之内が話を続けてくる。

「専門学校は二年で卒業なんだよ。だからオレもそろそろ卒業制作に取り掛からなきゃならない。実はその卒業制作に、人物が入っている油彩画を描きたいと思っているんだ。そのモデルに、オレはお前を起用したい。ダメか?」

 一言一言、まるでオレに言い聞かせるように放たれる言葉は夢物語のようだった。全く現実味が無い。だが、じっと見詰めて来る城之内の琥珀の瞳が、決して嘘を言っている訳では無い事だけは確かだとオレに教えていた。

「卒業制作は…得意の風景画を描くんじゃなかったのか?」

 何故か心臓がドキドキする。ただのモデルの筈なのに、本当に城之内が言い出したい事が分かるようだった。

「普段から得意としている物を描いたって、卒業制作としてはイマイチなんだよ。苦手な物を取り入れてこその卒業制作だと思わないか?」
「それは…そうだが…。だが、一体どんな絵を?」
「………」

 オレの質問に、城之内は一瞬黙り込んだ。部屋の中はシンと静まり返り、外から入ってくる遠い音だけが響き渡る。生温い風が吹き抜けて、オレと城之内の髪を揺らし、やがて城之内は小さく嘆息してから再び口を開いた。

「ヌードだ」
「え………?」
「お前にヌードモデルをやって欲しい」

 知っている筈の単語が、オレの中で認識されない。
 今度こそまるで本当の夢物語の様に、その単語はオレの耳に入ってきて通り抜けていった。

本日の更新

| コメント(0)

バイト先の本屋さんで、社員さんの移動が決定しました。
そのお別れ会が急遽決まりましたので、本日はこれから出掛けなければなりません。
一応頑張って更新するつもりですが、時間はかなり遅くなると思います…。
最悪明日とかになっちゃうかもしれませんので、余り期待なさらないで下さいませ…(´∀`;

自重するのも大変だw

| コメント(0)

頭が春モードな二礼です、こんばんは。

昨日のお仕事中(レジ)の事。
丁度疲れが溜って来て気を抜いた処に、サラリーマンのお兄さんが『遊戯王R』の4巻を持って来てくれました。
目の前に置かれた社長がどでかく描かれている表紙に、私の頬がどれだけ緩みそうになったか…。
そしてそれをどれだけの気力を持って我慢したか、アンタには分かるまい!!
サラリーマンのお兄さん。『遊戯王R』のお買い上げ、誠にありがとうございました~!www
直前に酷いクレーマー婆にぶち当たってウンザリしていたので、お兄さんと、凄く感じの良いおじさまの存在には救われましたよ…(´∀`)
お客様は神様だ的なノリで店員にいちゃもん付けてくる人は確かにいるのですが、こういう素敵な出会いもあるから販売員は止められないんですw
うん、つくづく自分に合ってるんだなって思いました~!


短編に『漂う青き水の底で君を想う』の前編をUPしました。
前回の『ブランチ』もそうだったのですが、最近ずっと派手なお話ばかりを書いていたもので、何かこう…甘ったるくて淡々とした話を書きたく仕方が無かったんですね。
で、かなり初期の頃に妄想していたネタを持って来たのですが…。
ゴメンナサイ、最初に言っておきます。
一応前中後編でやるつもりなんですが、プロットの量的に微妙なんですよ…w
もし三話分を超えても続くようなら、このまま短期集中連載として長編に移行しちゃいますw

さてさて…。
短編に収められれば良し。
でもなんか…収まらないような気がするなぁ…(´∀`;


以下は拍手のお返事でございます~♪


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(*'-')

『ブランチ』と日記の感想をありがとうございます~!
充分にイチャイチャしてましたか。良かった~v

結婚生活は恋人時代と違って、やっぱりどうしても地味なんですよね。
既に相手に対する恋心が極まっちゃってる状態なので、それ以上派手になりようが無いんです。
そういう状態を「ツマラナイ」と感じる人もいますが、私はそれこそ幸せの最終形態だと思っているんですよね。
別に本当に結婚してなくてもいいんです。恋人状態のままとかでも構いません。
私が求めているのは、相手に対する情熱が無くなった以降は、どうやって愛し合っていくかって事なんです。
それまでのように激しく求め合う事はしなくなるでしょうね。倦怠期に破局するカップルは、その事に不満を感じているのでしょう。
でもそれを無事に乗り越える事が出来た時の恋愛こそが、私の理想型なんですよ~!

という訳で、『ブランチ』の二人は私の理想カップルそのものを書き表したものでしたw
『鎮魂歌』を書いた時にもあの二人はかなり気に入っていたので、同じ世界観でラブラブの城海が書けて本当に良かったです(*´∀`*)
軽いスキンシップで照れ照れする城海…いいですよね!!

あと日記の感想もありがとでした。
多分軽いスランプ状態に陥っているんだと思いますが、そこまで深刻では無いのでノンビリやっていきたいと思いますw
それからコメントについてですが、顔の見えない相手に配慮するっていう事は大変難しい事なんですよね。
だけどやっぱり、ネットの海の向こうにいる人間の存在を忘れてはいけないんだと思います(*'-')

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

一枚目

| コメント(0)

 初めて城之内のその姿を見た時、余りに場違いな光景に何も言えなくなった。

 誰も居ない学校の屋上。どこまでも遠く澄み渡った秋空の下、少し冷たい風に吹かれて、城之内は空を見上げて立っていた。目の前にはキャンバスが置かれているイーゼル。左手には油絵の具が載ったパレットを持ち、右手には絵筆が握られている。
 秋の風に漂ってくる油絵の具の独特な匂いが、非現実的なその光景を現実だとオレに知らしめていた…。



 アメリカでの『世界海馬ランド計画』の基盤を固め、オレが日本に戻ってきたのは、休学してから三ヶ月後の事だった。事情が事情故に教師陣は何とか出席日数不足を補習等で補ってくれて、このまま真面目に学校に通えばオレはそのまま進級する事が出来ると伝えられた。いくら仕事の方が大事とは言え、流石に留年はしたくなかったので、オレはそれからは暇を見付けては真面目に登校するようになっていた。
 こうして三ヶ月前と同じような生活が再び始まった訳なのだが、何故だが居心地の悪さを感じてならない。最初はその原因に全く気付かなかった。だが暫く経ってから、漸く三ヶ月前との大きな違いに気付く事が出来た。
 三ヶ月前は日常的に行なわれていた光景。そして今は全く行なわれなくなった光景。それは城之内がオレに絡んでこなくなった事だった。

「………?」

 この三ヶ月の間に、城之内は随分変わってしまっていた。
 以前は授業中であろうが休み時間であろうが関係無く机に突っ伏して眠っていたというのに、今現在は結構真面目に授業を聞いてノートを取っていたりするのだ。オレの知らない間に頭でも打ったのかと心配したが、たまに授業をサボってどこかに行くのは変わらなかったので、結局はその程度かと余り気に止めなかった。


 ある日の事…。
 その日も城之内は四時限目の授業をサボってどこかに行ってしまったので、いつもの事かと呆れていたのだが、授業が始まってすぐに突然掛かって来た電話にオレも教室を出なくてはならない自体に陥った。
 胸ポケットから携帯電話を取り出しながら教室を出て、廊下で部下に簡単な指示を与える。通話を終えて携帯電話のフリップを閉じ、オレは溜息を吐きながら周りを見渡した。
 誰もいない静かな廊下。どこの教室も授業中故に、教師が喋っている声が微かに響いてくるだけだった。
 アメリカから帰って来て、出席不足を補う為に無理をしながら仕事と学校を両立する生活に、流石のオレも少し疲れていた頃だった。今から教室に戻って授業を受けるのも馬鹿らしくなって、たまには良いかとオレは足先を階段へと向ける。
 窓から見えた空は青空だった。今から屋上に行けばきっと気持ちが良いだろう。とにかく今は、仕事の事も学校の事も考えたくない。ただ、静かに休みたい。
 そう願いながら階段を上がりきって屋上に繋がる重い扉を開いた時に、その光景は目に入って来たのだった。


「貴様…。何をしている?」

 思わず零れたオレの言葉に、城之内は振り返ってニッコリと笑った。そしてただ簡潔に「絵を描いてる」とだけ答えた。
 未だ授業中なのにも関わらず、オレが屋上に現れた事に関して、城之内が何かを尋ねて来る事は無かった。普段からサボリ慣れている奴にとっては、別に大した事では無かったらしい。

「絵を描いているのは見れば分かる。何故貴様がそんな事をしているのか聞いているのだ」

 再びオレに背を向けてキャンバスに向き直ってしまった城之内に少し苛つきながらそう尋ねれば、城之内はクスリと笑って肩を竦めてみせた。そして筆を動かしながら「そんなにオレが絵を描いているのが不思議?」と聞き返してくる。「あぁ」と答えれば、城之内は忙しなく筆を動かしながら、可笑しそうに笑っていた。

「そうだよなー。似合わないよな」
「やはりどこか頭を打っていたのか」
「何それ? 別にどこも怪我してないけど?」
「厭味も通じなくなったのか…」

 はぁ~っと呆れたように大きく嘆息してみせても、城之内は以前のように突っかかって来ない。三ヶ月前だったら絶対反論してきただろうに、今の城之内はただ穏やかに笑っているだけだ。ペタペタとキャンバスに絵の具を載せながら、城之内はのんびりした声でオレに向かって話しかけて来た。

「お前がアメリカに行ってすぐだったかな。美術で風景画を描く授業があったんだよ。油彩じゃなくて水彩画だったけど、どこでも好きな場所をって課題だったから、オレは自分が一番好きなこの屋上からの風景を描いて提出したんだ」

 鼻歌交じりでパレットの絵の具を混ぜながら、城之内は上機嫌で絵を描いている。こちらからは奴の背中しか見えないが、城之内が心から楽しんでいるのが伝わって来た。

「そしたら先生がすっげー褒めてくれてさ。『基礎がなってないから上手くは無いが、お前は絵の才能があるぞ』なーんて褒めてんだか貶してんだか分からない感想をくれて、『どうせお前は授業をサボるんだから、せっかくだからその間に絵でも描いてろ』って、でっかいスケッチブックとクロッキーと練り消しをくれたんだ」

 混ぜていた絵の具の色に満足したのだろう。城之内は新しい色を筆にたっぷりとつけ、キャンバスに載せながら話を続ける。

「とりあえず言われた通りにクロッキー使ってさ、空いてる時間に好きな風景画をごっそり描いてスケッチブックを埋めたんだ。そしたら先生がまた褒めてくれて、今度は水彩で良いから色を付けろと言うんだ。新しいスケッチブックも貰ったから、それも水彩画で埋めちまった。先生はそれも褒めてくれて、今度は自分の油彩セットを貸してくれたんだ。それがこの油絵の具とかパレットとかイーゼルとかなんだけど。それがまぁ…半月位前かな?」

 フンフンと如何にも楽しそうに、城之内は絵を描いていく。その作業を自分の言葉で邪魔するのは憚られて、オレはそのまま黙って絵を描く城之内の姿を見詰めていた。
 オレが完全に黙ってしまっても、城之内は全く気にも止めない。けれど暫くして、突然筆を休めてこちらに振り返った。そしてその顔を見て、オレは驚きに目を瞠る。
 そこにいたのはオレの知らない城之内だった。三ヶ月前には毎日のように見ていた、まだ無邪気な子供のような顔では無い。自分の生き方を見定めた、精悍な男らしい顔付きに変わっていた。
 瞳に宿る光が違う。オレはその光をよく知っていた。何故ならばそれは…『世界海馬ランド計画』を遂行しようと決意した時に自分の瞳に宿っていた光と全く同じだったからだ。

「高校卒業するまでまだ一年半あるけどさ…。オレ、卒業したら美術系の学校に通おうと思ってるんだ」

 涼やかな秋の空気の中で、その声は凛としてオレの耳に届く。

「金は無いから、昼間働きながら夜間で勉強する。本当は美大に行きたいけど、大学行くには今から勉強したって間に合わないしな。だから専門学校に通うつもりだ。その為の貯金ももう始めてるし、奨学金制度も利用するつもりでいる。今の家にいたら勉強なんて出来ないだろうから、家も出るつもりでいるしな」
「美術系は…金が掛かるぞ。分かっているのか」

 城之内の家が裕福では無い事を知っていた為、念の為そう聞いてみる。だがオレのその質問に関しても、城之内は顔色一つ変えずにコクリと頷いた。

「知ってる。だから頑張って貯金してる」
「無事に学校には入れても、そこから先が大変だぞ。一人暮らしもするんだろう? 楽な生活なんて出来る筈が無い」
「楽に暮らそうなんて思って無い。貧乏だって慣れっこだ」
「何もそこまで無理して苦難の道を選ばなくても良いのでは無いか? 世の中にはもっと賢い生き方というものが…」
「それをお前が言うのか?」

 ほんの少しだけ眉根を寄せて、困ったように笑う城之内の顔にオレは何も言えなくなってしまった。
 そうだ…。オレは知っている筈だ。目の前に広がる道がどれだけ困難でも、自分の信じた夢の道を進む事がどんなに大事な事なのか…。オレが一番良く知っている筈だったのに!
 真っ直ぐに、ただ真っ直ぐにオレを見詰めてくる城之内に、オレはそれ以上の言葉を紡げ無かった。その代わり、城之内の身体越しにチラリと見えたキャンバスの絵に、吸い寄せられるように近付いて行く。キャンバスの目の前に立ってじっと絵を見詰めるオレに、城之内は何も言わずに一歩足を引いて絵を見せてくれた。

「………」

 未完成の風景画。だが、その空の色にただただ感嘆した。青い青いどこまでも青い空が、キャンバス一面に広がっている。まだ塗りかけのその空が、オレの目には本当に美しく映った。絵の具で塗られたその空が『本物』だと思う程に。
 だからつい、城之内の可能性をもっと引き出してやりたくなったのだ。

「学校は昼間に行け」
「え?」
「学生ローンを組めばいい」
「簡単に言うけどなぁ…。お前と違ってオレには頼れる保証人がいないんだ」
「保証人にはオレがなる」
「はぁ?」

 まだ未完成の青い空。けれどオレはその空を…城之内が描く絵をもっと見たいと思っていた。

「オレの社会的地位を知らぬ訳ではあるまい」
「そりゃ知ってるけど…。オレはお前に金を借りるなんて嫌なんだけどな」
「何を勘違いしている。オレは金は一銭も貸さないし、勿論恵んでやる事もしない。学生ローンの返済は勿論お前自身がやる事だし、もし仮にオレが金を貸す事があったとしてもキチンと返して貰う。ただローンを組むのにはどうしても保証人がいるし、お前自身の力ではどうにもならない事を手助けしてやる事は出来る」

 矢継ぎ早に繰り出すオレの言葉に、城之内はポカンとした表情をしていた。オレが突然城之内に協力するような事を言っているのが信じられないのだろう。当たり前だ。オレだって自分の気持ちの変化が信じられない。
 だがオレがそうするだけの…、城之内の進路を応援したいだけの力が、あの空の絵にはあったのだ。

「何なら、一人暮らしをする時に借りる部屋の保証人にもなってやる。せっかく美術の教師に褒められた絵の才能だ。そのまま伸ばすが良い」
「ちょっ…! お前…一体何が目的なんだ?」

 訝しげにオレを覗き見る城之内に、オレは鼻で笑ってみせる。オレにさえ分かりかねている感情を答えられる筈が無い。

「目的か…。そうだな、強いて言えばもっとお前の描く絵が見たいのかもな」
「オレの絵を?」
「そうだ。その為にオレは保証人になってやろう。その代わり一つ条件がある」
「条件?」
「あぁ。呑めるか?」
「呑めるものであれば…な」
「条件は、この先も貴様が描いた絵をオレに見せる事だ」
「へ? それだけ?」
「それだけだ。どうだ?」

 オレの問い掛けに城之内は暫し「う~ん…」と悩み、ややあって答えを返してきた。

「分かった。それでオレに絵の勉強をさせて貰えるのならば…それでいい。ありがたく好意に甘えることにするよ」



 こうしてオレは城之内に協力し、城之内は絵の道へ進む事になった。城之内が描いたたった一枚の…未完成の空の絵が、オレ達の関係をガラリと変えてしまったのだ。
 そしてこれがオレ達が踏み出した最初の一歩になるなんて…その時は考えもしなかったのだ。

やる気が...ゼロwww

| コメント(0)

気が抜けた二礼です、こんばんは。

いや~…すっかり気が抜けてしまいましてね…w
気分は竜宮城から帰ってきた浦島太郎って感じです。
シャイニング・ウェーヴ!!(このネタ…分かる人いないだろうなぁ…w 分かる人だけ分かって…w)

約二ヶ月間に渡ってずーっとお祭り騒ぎだったので、逆に何も焦らなくても良いこの状況は、落ち着きが悪くていけませんw
本気で居心地悪っ!!
どうやら私は何かに追われていた方がやる気が出るタイプみたいですね…。
定年退職した後に突然自由な時間が増えて、何もする事が無くて逆に焦ってしまうオジサン達の気持ちが良く分かるなぁ~w
しかも今は長編連載もやっていないので、本当にどうやったらやる気さんが戻って来るのかが分かりません…(´∀`;
だけどこういう時期は、自分が本当に書きたい物を整理して考える良いチャンスなんですよね~!
せっかくの時間なので、新しい長編ネタでも纏めてみたいと思っています(*'-')

それからもうエイプリルフールから5日も経ったというのに、『春夢』に拍手等をして頂いて、本当にありがとうございます。
一生懸命作った合同サイトですので、こういった反応が頂けるとやっぱり嬉しいです~v
これからも末永く楽しんで下さいませ~!


短編に『ブランチ』をUPしました。
大人城海の何気ない日常の一コマを書いてみたくて、淡々と書き綴ってみました。

朝に弱くて寝惚ける&スーツをズルズル引き摺る社長のネタ提供者は、誰であろう散たんですw
普段はしゃっきりしていても、休日だけダラダラになる社長とか…可愛いですよね~!
ベッドの中でいちゃこらしたり、何気ないキスを頻繁にしていたりして、城之内と共にいる自分を完璧に受け入れている社長とか…考えただけで萌えまくります!!
これはそんな萌えを伝えてみたくて書いた短編でしたw

でも読み返してみたら、いちゃいちゃ感がイマイチだな…。
もっと精進しなくては!!


以下は拍手のお返事になります~(*'-')


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(´∀`)

『八年目の桜吹雪』の感想をありがとでした!
『七年目の~』の方はあそこで切るのが一番美しいと思って、城之内が海馬に会いに行く決意をする所でぶった切ってしまったのですが、いつか自分の頭の中で展開されていた再会シーンを書きたいなぁ~とずっと思っていました。
でも季節が移り変わったりしてなかなかチャンスが無かったので、そのままお蔵入りになってしまっていたんですよね…。
ところが何とかサイトを一年以上続けて、幸運な事にまた同じ季節が巡って参りました。
『七年目~』を書いた時は二月の終わりだったのですが、今回はちゃんと狙って桜の季節に続きを書く事が出来たのです。
頭の中にあった再会シーンもちゃんと書く事が出来て、個人的に凄く満足な出来になりましたw
細かい台詞等は今回考え直したものばかりですが、海馬の「遅いっ!!」だけは以前から決まっていて、これを海馬に叫ばせる事が出来ただけでも良かったと思っています(´∀`)

それからコメントについてですが、これは確かに難しい問題ですよね。
メールも読ませて頂きましたが(日曜日は終日出掛けていたので、気付いたのは夜中でした。ごめんなさい)、コメント慣れしていないと何がOKかNGかってのは、なかなか分かり辛いんですよね~。
ただこれだけはアドバイス出来るんですけど、コメントやメールを出す時は、まず相手の立場に立って物事を考えてみるのが良いと思います。
モニターの向こうにいるのは、人格や感情を持った自分と同じ人間ですからね。
何が嫌で何が喜ばれるというのは、「もし自分がこんなコメントを貰ったら~」と自分自身に置き換えてみるとすぐに分かる筈です。
相手に対する気遣いを忘れないっていうのが、一番大事な事なのかもしれませんね(*'-')

あと、私が『小春日和』内で書いた日記の感想に関しては、特に問題ありませんよ~w
『小春日和』の日記内で書いた内容は、『小春日和』としての書き物ですからね。
この辺がまた難しい処なんですけど…w
まぁ、今回は合同サイトでしたので仕方無いところもありますが、以後は余り他所様の名前を出さないように気を付けて頂ければ大丈夫だと思います。

それでは今日はこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

ブランチ

| コメント(0)

城之内×海馬。海馬の一人称。
別に続き物という訳ではありませんが、『鎮魂歌(前編)(後編)』と同じ世界観で書いてあります。
まったりとした何気ない日常のワンシーンをどうぞ~。

 




 ふと、隣でゴソゴソ動く気配に目が覚めた。
 何だかとても良い夢を見ていたような気がするので、ゆっくりと覚醒していくその感覚を勿体無いように感じてしまう。目を開けるつもりも無いまま不機嫌に眉根を寄せたら、今まで隣にあった熱が半身を起き上がらせてクスクスと笑い出した。

「何だ。朝から酷い顔だな」

 そう言ってそいつは、人差し指の腹でオレの眉間に寄った皺をサワサワと撫でて笑っていた。それが余りにしつこくてうざくなり、重い瞼を無理矢理開くと、妙に嬉しそうな顔をした城之内が目に入ってくる。

「おはよ、海馬。もう十時になるぞ」

 裸の半身でオレに半ば覆い被さりながら、城之内は優しい声でそう言った。大きくて熱い掌がサラリとオレの髪を梳く。それをうざったそうに手で払えば、今度はにこやかな笑顔のまま頬に口付けて来た。もう一度掌で前髪を掻き上げながら額にも一つキスを落とされ、次いで瞑った左右の瞼の上にも一つずつ…。

「お寝坊さんだな。ほら、起きて朝飯食おうぜ?」

 剥き出しの肩を揺さぶられて、それでもオレは眠たくて堪らなかったので掛布を被ってベッドに潜り込んだ。
 オレはまだ眠いんだ。いいから放っておいてくれ。
 余りの眠たさに声は出ないが態度でそう示すと、頭上から城之内が大きく嘆息した音が聞こえてくる。そして、奴は呆れたようにベッドから降りていった。

「とりあえず朝飯作ってやるから。あと三十分経ったらちゃんと起きるんだぞ?」

 返事をする代わりに、更に深く掛け布団の中に潜り込んで意思表示をする。そんなオレに城之内は笑いながら、落ちていた服をゴソゴソと身に着け、やがて寝室から出て行った。
 部屋の向こうでパタパタと歩き回る足音を聞きながら、オレは未だしつこく襲ってくる眠気に逆らわずにウトウトとする。だが、一度覚醒してしまった意識はもう眠りへとは向かわず、確実に目覚めていくだけだった。仕方なしにベッドの上で半身を起き上がらせて、暫しボーッとする。
 乱れてしまった髪の毛を手櫛で直しながら、未だボヤッとした目でベッドの下を覗き込んだ。そこには昨夜城之内に剥ぎ取られた白いパジャマや下着がグシャグシャになって落ちていたが、もうそれを取り上げて身に着ける気もしない。

「………」

 仕方無しにシーツを身体に巻き付けて、それをズルズルと引き摺りながら寝室のドアを開けた。とりあえず熱いシャワーを浴びないと完全には目が覚めないので、リビングを通り抜けて浴室へ向かおうとする。

「こら! お前はまたそんな格好で…!」

 黒いエプロンを身に着けて、何やらお鍋の中を掻き混ぜていた城之内が、オレの姿を見咎めて大きな声を出した。
 もうオレがどんな格好でいようが放っておいて欲しい。どうせこのシーツだって洗濯しなきゃいけないんだ。脱衣所に持って行ってやる事の何がいけないというのだ。
 だが城之内は、オレがどんなにムッとした顔をしてもひるまない。それどころかズカズカと近寄って来て、纏っていたシーツをひん剥かれてしまった。

「これは預かっておくよ。今日は雨だからこんな嵩張る物を脱衣所まで持って行かれても困るんだ」

 城之内の言葉に何となく窓の外に視線を移すと、いつもだったら明るい日差しが入って来るそこは酷く暗く陰鬱な感じを醸し出していた。耳を澄ますとサーサーという静かな雨の音も聞こえてくる。
 あぁ…道理で今朝は特に目覚めが悪い筈だ。暗い日差し、静かな雨の音、上がらない気温。いつまでもウトウトと眠っていたいような気怠さがそこにはあった。

「怠い…」

 窓を見詰めながら何気なくそうぼやくと、城之内がオレの顔を凝視してプッと吹き出した。
 本当に失礼な奴だな、コイツは…。寝起きの人の顔を見て笑い出すなんて。

「何がおかしい…」
「悪い悪い。別に何もおかしくないよ。ただちょっと可愛いなーと思っただけ」
「可愛い…?」
「うん、可愛い。普段はキッチリ朝早く目覚める癖に、どうして休日だけこんなに目覚めが悪いのかなーと思ったら、何だかお前の事が凄く可愛く思えたんだ」
「平日と休日のモードを切り替えているだけだ…。そういう貴様は…意外と朝が強いよな…」
「あぁ、そりゃそうだ。ずっと新聞配達の仕事してたもん」
「………」
「何でそんな不満そうな顔してんだよ。いいから早くシャワー浴びておいで。頭重いんだろ?」
「誰のせいだと思っている…」
「はいはい。お前が仕事で疲れてるっていうのに、久しぶりの休日だという事で明け方まで頑張っちゃったオレのせいですね。それはちゃんと謝るから、シャワーを浴びて朝飯にしようぜ? オレ腹減っちゃった」

 そう言って城之内は、オレの左手を持ち上げて薬指に嵌めている銀色の指輪にキスを落とした。更にすっかり素っ裸になってしまったオレの身体を抱き寄せて、軽く唇を合わせられる。舌は入れられなかったけど何度も啄むようなキスをされて、漸く解放された時には二人とも顔が真っ赤になっていた。
 城之内と『結婚』して一年が経つが、未だにこういう新婚さん的なノリには慣れない。男同士でセックスまでしていて何だが、こういう軽いスキンシップの方がより恥ずかしく感じるのだ。
 そう感じているのはどうやらオレだけでは無いらしくて、城之内も同じらしい。だが城之内は、敢えてそういう事をするのが好きだった。顔を真っ赤にしながらも、心から幸せそうに笑うのだ。そして困った事に、オレもそんな城之内の笑顔を見るのが大好きだった。

「も…もういい! シャワーを浴びてくる!」

 恥ずかしさのせいで頭は大分クリアになった。勢いに乗せて振り返りながらそう言ったら、背後から「行ってらっしゃい~」という暢気な声が聞こえてくる。その声に幸せを感じながら、オレは浴室のドアを開いた。



 熱いシャワーを浴びて漸くスッキリして、バスローブを羽織ってリビングに戻れば、そこにはもう既に食事が用意されていた。パンや卵の焼けた良い匂いや、珈琲の芳ばしい香りに、流石に食欲が刺激される。

「おかえり。そこに座ってて」

 城之内の勧めるままに、オレは自分の席に座って出された珈琲に手を伸ばした。そしてまだ熱い珈琲を一口啜って、ホッと一息吐く。
 休日のブランチを作るのは、城之内の役目だった。『結婚』して一緒に住み始めて、休日の朝は全く起きられないオレの様子を見た城之内が自分からやり出すようになったのだ。最初は頑張って起きて手伝おうとも思ったが、元から朝が強くて料理も上手な城之内にとって、寝惚けた状態で突っ立ったままのオレの存在は酷く邪魔だったらしい。「黙って椅子に座ってろ」と何度も言われる度に、オレもいつしか手伝う事を止めてしまった。

「あー! また朝からブラックで飲んでる! ミルク入れろって言っただろ? それからスープも飲め」

 城之内はエプロンを外しながら椅子に座り、オレの目の前にミルクを差し出した。その言葉に渋々珈琲にミルクを注ぎ入れ、スープカップに入っているとろみを付けた野菜スープに口を付ける。野菜の甘みがじんわりと口中に広がり、幸せな気分になった。

「美味い」
「そうだろう。オレが作ったスープだからな」

 得意そうな顔で答えて、城之内は自分のトーストにザリザリとバターとイチゴジャムを塗っていた。オレもオレンジママレードの瓶に手を伸ばして、キツネ色に焼けたトーストにたっぷりと甘苦いジャムを載せる。トーストの端っこをサクリと一口噛んで租借していると、その間にも城之内は目の前の料理を凄い勢いで平らげ始めた。
 バターとイチゴジャムがたっぷり塗られたトースト、お手製の野菜スープ、目玉焼きとカリカリに焼いたベーコン、蜂蜜を載せたヨーグルトに熱々の珈琲。
 それら全てを一気に食べて、「ご馳走様」と手を合わせた。

「相変わらず早いな…」

 余りのスピードに呆れて呟くと、城之内はキョトンとした顔を見せて「そう?」と口にした。

「オレが早いんじゃなくて、お前が遅いだけなんじゃないの?」
「いや…。お前も充分早い」
「まぁ、どうでもいいけどさ。冷めない内に早く食べちゃってよ。せっかく作ってあげたんだから」
「わ…分かっている」
「もう十一時かー。今日何しよう?」
「晴れたら買い物に出掛けたいと言っていたな」
「うん。新しい靴が欲しかったんだけどさー。でも雨降っちゃったしなぁ…。たまには家でゆっくりする?」
「それも良いんじゃないか? 観たい映画もあると言っていただろう」
「そうだな。じゃあ後で一緒に観よう。そんで今日はゴロゴロしてよう」
「貴様と一緒にゴロゴロすると、碌な事にならない」
「あはは。いいじゃん別に。『結婚』してるんだし」

 幸せそうにケラケラ笑う城之内に、オレは呆れたように深く溜息を吐いてみせた。だがオレが本気で嫌がっている訳では無い事を分かっているのだろう。城之内はにこやかな笑顔のままわざと左の方の手を伸ばして、テーブルの上に置かれていたオレの左手を握ってくる。カチリ…と結婚指輪同士がぶつかって、小さな音が響いた。
 男同士だから籍は入れられない。形だけの『結婚』。だがオレ達の間では、この『結婚』は紛れも無い本物だった。

「愛してるよ」

 ニコニコと最上の笑顔を浮かべつつ告げられた愛の言葉に、オレはまた顔を赤くし「ふん…」と鼻であしらいながら温くなった珈琲を啜った。



 これがオレ達の『結婚』生活。そして休日の過ごし方。最上のブランチを済ませた後は、ただゆっくりと流れる時間を楽しみながら寛ぐのだ。
 既にDVDのセッティングをし始めている城之内を横目に見ながら、オレはダイニングテーブルの椅子から立ち上がってリビングへと歩いていく。
 これから二人だけで映画を観る為に。そして城之内と優しい休日を過ごす為に…。

更新予定日

| コメント(0)

更新予定日表(只今休止中です)
 



○月の更新予定日です。
あくまで参考程度に…。急に予定が変わる事もありますので、ご注意下さいませ~。

※サイト主の生活環境が大きく変わった為に、只今休止中でございます。
本当に申し訳ありません~!!

 

予は満足じゃ~!!

| コメント(0)

やりきった感満載の二礼です、こんばんは。

エイプリルフールが終わって、すっかり気が抜けてしまいました…w
何はともあれ無事に企画が終了して、心から安心致しました。
本当に良かった~!

春夢』内のMEMOや『REMS』の散たんの日記からもわかるように、あのサイトのコンセプトは「普段はやらない事をやる!だったんです。
なので私も普段は書かないCPやシチュエーション、果ては下手くそなイラストまで展示させて頂いたのですが…如何でしたでしょうか?w
ていうか散たんは、やっぱりイラスト描き慣れてるなぁ~と思いました。パパッと描いてあのレベルですからね!
(ちなみに私のあの絵は、約8時間掛かりました…orz)
嘘っこ合同サイトなのですが、あの中に置いてある小説はどれも本物ばかりです。
跡地は残して置きますので、少しでも皆様に楽しんで頂ければ幸いに思います~(´∀`)

ちなみに『春夢』がどのように出来ていったかという流れは、『春夢』内のMEMOや散たんの日記を見て貰えれば分かると思いますので、私は少々『春夢』の裏話なんぞをバラす事にしましょうw


その①:二礼散子さんにはプロフィールがあった

散子さんには実はプロフィールがありました。
誕生日は4月1日。血液型はAO型です。好きな動物は、犬と猫と兎でした。
3月31日の21時頃までTOPページの下の方にこっそり載っていたのでですが、直前になって散たんの「何か白々しいので消した」の一言と共に闇に葬られる事になりました…w
そういう訳で、実はあの日は散子さんの誕生日だったんです。
皆さん、祝ってさしあげて下さいませw


その②:MEMOはもっと堅苦しい口調だった

最初、私達は嘘っこ管理人『二礼散子』さんをもっと全面に押し出すつもりでいました。
なので日記もわざと感情を抑えた堅苦しい口調だったのですが、企画を初めて二週間経った頃に突然散たんが「もう限界です」と白旗を上げ断念w
結果、MEMOはお互いに普段通りの口調で書く事になりました。
終わってから常々思うのですが、堅苦しいまま続けなくて良かったです…w
上手く言えないのですが、無茶苦茶不自然だったんだものw


その③:互いの作品にはノータッチ

作品に関しては、本当にお互いに全く何の相談も無しに書き連ねました。
だから、最後にシチュエーションやタイトルが微妙に被った時は、笑っちゃいましたね~w
逆に言えば、あんだけ沢山の作品を書いているのに全く被らないという方が凄い事なのかもしれませんが。
本当に色々と真逆の二人だと、ある意味感心しますw


とまぁ…こんな感じで『春夢』は出来ていきました。
今回一緒にこの企画をして、私は心底散たんの小説を書くスピードに感心しました。
とにかく物凄い集中力とスピードなんですよ!!
最初は時間のある私の方が頑張って作品数も上げようと思っていたのに、いつの間にやら抜かされ、そして差を広げられ…w
全く付いて行けませんでした。

サイトの雛形に関しても、とにかく散たんは仕事が早かった…っ!!
「こんな企画をやろう!」と話し合った次の日にはもう「こんな感じでどう?」と雛形を見せられましたからね…w
凄過ぎですw

そんな仕事が早い散たんに対して、ノロノロとしか小説を書けない私…;
サイトの設置やデザインに関しても全てお任せしてしまって、散たんには本当に申し訳無く思っています。
しかも3月に入って新しい仕事が始まり、自分のサイトで手一杯になった時期もあって、当初の予定よりずっと少ない作品数になってしまいました。
もっと沢山色んなネタがあったのに、それを小説として書けなかった事が一番心残りです。

ただ、この二ヶ月間は本当に楽しかったです~!!
4月1日が楽しみで楽しみで、「早く来ないかな~」なんてワクテカしていましたからw
まぁ…そんな気持ちも3月中盤を過ぎた辺りから全く無くなってしまいましたけどねーw むしろすっごく焦っていました…(´∀`;
何はともあれ、こんな楽しい企画を一緒にやってくれた散たんには、心からお礼を述べたいと思います。(もう赤字で叫んでやれ!)

本当にありがとうございました~!!

4月1日に、そして今後も『春夢』を楽しんでくれる人達にも、心から感謝致します!(*'-')
作品数が結構ありますので、ゆっくりお楽しみ下さいw
(それでも、たった一日で全ての作品(しかもMEMOまで!!)を御覧になった方もいらっしゃったんですよ~! 凄過ぎますw コメントを読んで感動しました…(*´д`*))
もし何か私達に伝えたい事があれば、『春夢』の拍手ページからコメントを書き込んで下さいませ。
『春夢』用の拍手ページは、散たんも私も両方見られるようになっていますので、ご意見ご感想など遠慮無くどうぞ~v


短編に『八年目の桜吹雪』をUPしました。
去年UPした、『七年目の桜吹雪』の続編です。
せっかくですので本サイトでもエイプリルフールネタで書いてみました…(´∀`)

城之内と海馬のあの再会シーンは、実は『七年目の桜吹雪』を書いた時点で既に頭に思い浮かんでいました。
ただあの話を書いた時にはどこにも入れられる場所が無く、またあの時点では続編を書くつもりも無かったので、メモだけして放っておいたんです。
それがまさか…役に立つとはねぇ…w

しかし古い作品を読み返すというのも、なかなか骨が折れるものですね…w
山程出て来た誤字脱字に、本気でビックリしましたよ!!
こっそり直しておきましたけど…捜せば多分まだ有るんだろうなぁ~;
(再会が再開になってた…w 再び開いてどうするんだw)


※追記…新しい仕事のシフトの関係で、今までのように規則正しく更新する事が難しくなりました。今後はTOPページに乗せてある更新予定日を参考になさって下さいませ~!


以下は拍手のお返事でございます~!(゜∇゜)


>Rosebank様

拍手とコメント、どうもありがとうございました~!(´∀`)

頂いたコメントは『春夢』にて返信してございます。
どうぞそちらを御覧下さいませ~!

八年目の桜吹雪

| コメント(0)

城之内×海馬。城之内の一人称です。
七年目の桜吹雪』の続編となりますので、まずはそちらを先に御覧下さいませ~(*'-')

 




 オレの携帯電話にアメリカにいる海馬から久しぶりのメールが届いたのは、四月一日の朝七時過ぎだった。

『今週末に日本に帰国する。これを最後にもうアメリカには戻らない。近い内に貴様と同居しようと思っているので、そのつもりでいろ。部屋探しをしておけ』

 何とも偉そうなメールだ。でも日本に帰って来てくれるのは素直に嬉しいし、海馬がオレと同居するつもりでいてくれたのも滅茶苦茶感動した。携帯片手にワンルームマンションで飛び上がって、そして偶然に目に入ってきた壁掛けのカレンダーを見てガックリ来てしまう。

「何だ…。エイプリルフールかよ…」

 今日の日付は四月一日。世間ではエイプリルフールと言われている。バレンタインデーやホワイトデーと違って、エイプリルフールは全世界的(特に欧米。イスラム諸国では禁止されているらしいけど)に有名なイベントだ。…うん、確かその筈。だから当然今アメリカに住んでいる海馬も、エイプリルフールの事は知っているって事だ。
 エイプリルフールってのは、ただ嘘を吐けば良いと言う訳では無い。一応『悪意や害が無い嘘』というルールがある。そう考えると確かに海馬が送って来たメールは、特に悪意は無いのかもしれない。ただし、オレ以外に取っては…だ。

「でもさー海馬ぁ…。オレにとっては害ありまくりだぜ?」

 何度見ても全く変わらない文面を見ながら、オレはぐしゃりと寝起きの頭を掻き上げた。



 高校三年生の卒業式の前日に、オレと海馬は一度別れた。そしてそんな海馬と再会したのは、去年の春の事だった。

 たった一人の大事な弟と、自分の夢を追い求めたい海馬。癌で倒れた親父を抱え、生活が困窮していたオレ。お互いに大好きだったのにも関わらず、その関係をそれ以上続ける事が出来なかった。お互いの存在より…目の前の事で必死だったからだ。
 オレ達はまだ子供だった。子供故に不器用だった。全てのものをまんべんなく愛するなんて器用な事は出来ず、ただ目の前に塞がる大きな壁に途方に暮れ、その時に自分が『一番』大事だと思う物以外は手放さなければ生きていけなかったんだ。
 ただ、海馬はオレの事を嫌いになった訳じゃ無かったし、オレだって海馬の事は大好きなままだった。だから別れる時に言ったんだ。

『もしオレが今よりずっと大人になって、生活も安定して、心もデカくなって…。お前の全てを受け止められると自信を持って言えるようになったら、お前を迎えに行ってもいいか?』

 って…。そうしたら海馬が『期待しないで待っていよう』と言ってくれたので、オレはその言葉を信じて生きていく事となった。


 そして別れてから七年目の春。つまり去年の春に、オレはわざわざアメリカまで海馬を迎えに行ったのだった。
 七年ぶりにオレと再会した時の海馬の顔は、今でも鮮明に思い出せる。
 最初オレは、海馬がいるという海馬コーポレーションのアメリカ支社に直接出向いた。拙い英語で受付嬢に理由を話しても、彼女は『社長は只今外出しております』とばかり言って全く相手にしてくれない。まぁ…そりゃそうだ。いきなりどこの誰かも分からない日本人の旅行者に『お宅の社長さんに会わせてくれ』と言われても、『はいそうですか』なんて簡単に会わせてくれる筈が無い。
 あんまりしつこくしても悪印象しか与えないから、ここは素直に諦める事にした。自動ドアから外に出ながら、さてどうしようか…などと考える。そして顔を上げて、そこに植えてあった一本の見事な桜の木に目を奪われた。


 海馬コーポレーションのアメリカ支社に続く大通りには、街路樹が整然と植えられている。ただそれは桜では無くハナミズキだった。日本でもハナミズキの木は見た事があったし、凄く可愛い花を咲かせるのも知ってたけど、やっぱり日本人としては桜が無いのが少し寂しいと思う。しかもまだ季節的に早くて、ハナミズキの花は残念ながらまだ咲いていなかった。
 来る時は久しぶりに海馬に会えるというドキドキ感で周りの景色を見る余裕なんて無く、オレはその桜の木に気付かなかった。ただ一旦用事を済ませてしまえば心に余裕が出来たらしく、支社ビルの脇に生えていたその美しい木に漸く気付く事が出来たのだった。

「うわ………」

 淡いピンク色の美しい花。その花が満開になっている。桜に心が奪われるなんて、オレもやっぱり日本人だったんだなぁ…なんて事を思いながら、暫し桜に見惚れていた時だった。

「っ………!」

 急に強いビル風が吹いて、桜の花びらがまるで吹雪のように散っていった。舞い散る花びらに視界を奪われて、片目を瞑りながら顔を上げた時だった。薄ピンク色の花吹雪の向こうに、オレがずっと恋い焦がれていた人が目を瞠って立ち尽くしている事に気付く。
 澄んだ青い瞳を限界にまで見開いて、呆然とした顔でオレの事を見ていた。

「海…馬…」

 薄いグレーの上品なスーツに身を包み、桜吹雪の中に立ち尽くす長身にオレはゆっくりと近付いて行く。そして目の前で足を止め、ぎこちなく笑いながら「海馬、迎えに来た」と伝えた。
 七年ぶりに会った海馬は、少し大人っぽくなっていた。元々同年代の少年達に比べればずっと大人っぽかった奴だったから、久しぶりに見てもあんまり違和感無かったけれど、それでもやっぱり以前よりシャープになった顔やしっかりとした身体付きから大人になったんだなぁ…と思う。
 そんな大人になった男は、今は大きく瞳を見開いて信じられないような顔をしてオレの事をじっと見詰めていた。

「海馬…。ゴメンな? 遅くなった」

そう言っても海馬は全く反応しない。ただ、久しぶりに見た綺麗な青い瞳がみるみる内に潤みだし、盛り上がった水滴が重力に負けてポロリと零れ落ちて、頬を伝って顎からポタポタと地面に落ちだした時は、流石のオレもちょっと焦った。
 真っ昼間のオフィス街の大通り。こんなところで天下の海馬コーポレーションの社長を泣かせているなんて、海馬がいつも引き連れている黒服SPにでも見付かったら厄介だ。

「お、おい…海馬…」

 慌ててその頬に手を伸ばそうとしたら、突然涙に濡れた瞳がカッと見開いた。そして硬く握り込んだ右拳で、思いっきり左頬をぶん殴られる。突然の事で全く受け身が取れなくて、オレは無様に地面に転がった。

「いって…っ」

 痛いというか熱く感じる左頬に手を当てて、オレはクラクラする頭を我慢しながら何とか半身を起き上がらせる。そしてもう一度海馬の顔を見上げた時に、物凄い怒声がオレの頭上から降って来たのだった。

「遅いっ!!」

 お…遅いってお前…。うん、確かに遅かったかもしれない。七年は時間掛かり過ぎだよな。でも暫くぶりに出会った元恋人に、いきなり殴りかかるのはチョット無いんじゃないだろうか…?
 そんな文句が心の中に生まれたけど、オレはそれを言う事が出来なかった。真っ昼間のオフィス街の大通り、そのど真ん中で自ら殴り倒した男に海馬が強く抱きつき泣き出したからだ。
 道行く人々がオレ達の事を物珍しそうに見ては、通り過ぎて行く。こんな目立つ場所で天下の海馬コーポレーションの社長さんが男に抱きついて泣いてるなんて…スキャンダルな事にならなきゃいいけど…と、オレは頭の片隅でまるで他人事のように冷静に思っていた。
 だけどそんな事を考えているのは脳の一部分だけで、その大部分は、海馬に会えて嬉しいとか、久しぶりの海馬の体温や質感に触れられて心から感動したとか、泣いてる海馬が可愛くて堪らないとか、撫でている髪の毛がやっぱりサラサラで気持ちいいとか、そんな事ばかり考えていた。

「遅くなって…ゴメン。本当にゴメン」

 あんまり海馬が泣くもんだから、オレも心底自分が悪い気になって真摯にそう謝った。栗色の髪の毛を宥めるように撫でながら、細く強ばった背をそっと抱き締める。すると海馬はオレの耳元で「そうだ…! 全部貴様が悪い!!」と涙声で文句を言っていた。
 最初に別れを切り出したのはコイツだってのに、本当に勝手な男だな。こういうところは全く変わって無いのな。困った奴だ。…なんて事を思いながらも、オレは逆にコイツが全く変わっていない事を嬉しく思っていたし、そんな海馬の存在を心から愛しく思った。
 愛しくて愛しくて堪らなくて、オレ達は暫くそのまま強く抱き合っていたのだった。



 とまぁ…こんな事があって、オレ達は恋人同士として再出発する事が出来た訳だ。ただその時は、海馬を日本に連れて帰る事には失敗していた。海馬が日本に帰るにはまだまだやらなければならない仕事が沢山あって、まずそれらを片付けなければいけなかったからだ。
 結局その年はオレ一人だけで日本に帰り、あの公園の桜も一人で眺めた。凄く寂しかったけれど、再びお付き合いが出来るようになっただけでも上々だ。久しぶりに身体を重ねる事も出来たし、余り欲深になってもいけない。
 頭ではそう分かっているものの、やっぱり寂しいという気持ちは消えなくて、満開の桜の木の前に立ってオレはボソリと言葉を放った。

「お前も海馬と一緒に眺めて欲しかったよなぁ…」

 そう言っても桜は何も答えはしない。だけど、ハラハラと舞い散る薄紅色の花びらがまるでオレを慰めているようだった。


 こうして遠距離恋愛を始めたオレ達だったが、それから海馬は一~二ヶ月に一回くらいは日本に帰って来てくれるようになった。滞在期間は二~三日。一回だけ一週間程いてくれた事もあったけど、大体はすぐにアメリカに戻っていってしまう。たった数日間の恋人としての逢瀬は、どうしたってやっぱり寂しくて堪らなかった。出来る事ならずっと日本にいて欲しいと思えてならない。
 ただ、オレももう大人になっていたから、そんな我が儘は言えなかった。海馬がアメリカでどれだけ大事な仕事をしているのかも、そしてその仕事に海馬がどれだけ自分の人生を掛けているのかって事も、嫌って言う程分かっていたから。それに別れていた時と違って、オレ達はもう恋人同士だ。例え二人の間にある距離が膨大であろうと、心の距離はゼロだと知っていたから、寂しさにも耐える事が出来た。
 だからと言って、寂しいと感じる事に変わりは無い。愛している人に会いたいと思った時にすぐに会えないというのは、結構でかいストレスとなる。こればっかりは、別れていた時の方がマシだったかもしれないと思う。人間ってのは欲深な生き物だから、何か一つ物事が好転すると、もっともっとと望んでしまうんだ。

 だからそんな時に送られて来た海馬の嘘メールは、オレの心に結構深いダメージを与えた。

 多分、今週末に日本に一時帰国するのは本当の事なんだろう。でもあの忙しいアメリカでの業務がある事を知っていると、こっちに完全に戻ってくるというのは信じられない。というか、多分嘘なんだろう。エイプリルフールだしな。
 世間の物事に疎かった海馬がエイプリルフールで遊べるようになるまで成長してくれたのは、オレとしてもとても嬉しいと思う。

「でもなぁ…。状況を考えてくれよ…」

 壁に掛かったカレンダーを見ながら、オレは深く深く溜息を吐いて項垂れたのだった。



 それから数日後。予告通り海馬は日本に帰って来た。いつものように空港まで出迎えに行って、帰国ゲートから出て来た長身の影に手を振ってみせる。
 これは再会してから知ったんだけど、海馬はいつもあのキチガイじみたブルーアイズジェットや、KCが持っている個人用旅客機を使っている訳では無いんだそうだ。アレは本当に特別な場合のみで、普段は普通に大手輸送会社の旅客機を利用しているらしい。ただ、勿論エコノミークラスなんかじゃないけどな!

「お疲れ様。仕事一段落したのか?」

 荷物を持ってやりながらそう尋ねれば、海馬は「あぁ」と笑顔で頷いてくれた。そのまま少し移動して、馴染みのコーヒーショップに入る。海馬が帰国したらまずこの店に入って、コーヒーを飲みながら一休みするのがオレ達の間の恒例となっていた。
 重い荷物を引き摺りながら店に入ると、幸運な事にお気に入りの席が空いている。これ幸いにとそこに座り、にこやかな笑顔でお冷やを持って来てくれたウェイトレスさんにいつものコーヒーを二つ頼んだ。
 注文を聞いたウェイトレスさんが戻っていくのを横目で見ながら、グラスを持ち上げてよく冷えた水を飲む。ふぅ…と一呼吸置くと、海馬も同じように水を飲んで安心した顔を見せていた。だからオレは、ついいつもと同じような質問をしてしまう。

「それで? 今度はいつまでいられるの?」

 いつもだったら穏やかな表情のまま「~日までだ」と答えてくれる筈なのに、その時海馬は何故か顔を引き攣らせてオレの事を凝視していた。その反応がオレとしては意外で、思わず首を捻ってしまう。それに対して海馬も同じように首を捻りながら、低い声を出した。

「いつって…。貴様、何を言っているのだ?」
「え? 何って?」
「メールを見ていないのか。もうアメリカには戻らないと言っているだろう?」
「だってそれ嘘なんだろ?」
「はぁ?」
「だから、嘘なんだろ? エイプリルフールの」

 小さなテーブルを挟んで、二人して首を捻りながらじっと見詰め合った。海馬の青い瞳がパチパチと忙しなく瞬きしている。ややあって…海馬が「はぁ~…」と長い溜息を吐き、オレに向かって手を差し出した。

「ん? 何?」
「携帯…」
「携帯?」
「貴様の携帯を貸してみろ」

 言われた通りに胸ポケットから携帯を取り出して海馬に手渡すと、海馬はフリップを開けてメールをチェックし始める。やがて自分が送ったメールの受信日を見て、再び大きな溜息と共にガックリと項垂れた。

「か…海馬…?」

 余りの落ち込みように慌てて海馬の名前を呼ぶと、海馬は如何にも呆れたような顔をしながら視線を上げて口を開いた。

「あぁ…スマン。これは確かにこちらのミスだ」
「え? 何が?」
「エイプリルフールの事は確かにオレの頭にもあった。ただ余りにアメリカでの生活が長かったから、時差の事などすっかり忘れていたのだ。『四月一日』にこんな話をしたんじゃ貴様が信じないだろうからと、急いで『三月三十一日』中にメールを送ったつもりだったのだがな…」
「は…?」
「アメリカではまだ三月でも、こちらでは既に四月になっていたのだな。本当にすまなかった」
「え…? そ、それじゃもしかして…? このメールってマジで…? え? えええええっ!?」

 テーブルに身を乗り出すようにそう叫んだオレを、海馬はばつが悪そうに見詰めている。オレの叫びで、周りの他の客やコーヒーショップの従業員の視線が注目している事にも気付かない。
 暫くして漸く自分達の存在が浮いている事に気付いて、オレは慌てて「スミマセンスミマセン」と周りにペコペコ頭を下げた。その事で漸く他の視線が元に戻っていくのを感じて、オレはもう一度深く椅子に座り直す。そしてグラスを持ち上げまだ冷たい水をグイッと飲んだ。乾いた喉が潤っていく事に安堵しながら、今度は声の大きさに気を付けながらヒソヒソと海馬に話しかける。

「お前…。コレ、マジで言ってたのか?」

 オレの言葉にムッとした表情を見せながらも、海馬は一応自分も悪いと思っていたらしくて、何の文句も言わないままオレに返答した。

「そうだ。悪いか」
「いや、悪くはないけど」
「それでどうなのだ。一緒に住む気があるのか無いのか。無いならオレはアメリカに戻るぞ!」
「うぇ!? ちょ、ちょっと待ってよ! 誰も無いなんて言ってないじゃん! 答えを急ぐなよ!」
「じゃあ、あるのか?」
「あるよ! ある! あります!! ただこれが本気のメールだとは思って無かったから、部屋探しとか全然してないぜ?」
「全く…役に立たん奴だ。帰って来たら速攻その部屋に案内して貰えると思っていたのに…」
「例えこのメールを本気にしてても、そりゃ無理だ。金持ちの感覚で考えるなよ。金の問題もあるし、部屋の間取りとか周りの環境とか、他にもオレやお前の好みとかもあるだろ? こういうのは自分の目でじっくり選ぶもんだよ」
「ふむ、いいだろう。だったら暫く貴様と一緒に部屋探しをしてやる。だがその部屋が決まるまで、オレはどこにいれば良いのだ?」
「海馬邸に帰ればいいじゃん…。モクバもいるんだしさ。言っておくけど、オレん家は無理だぜ? 1DKだからな」
「1DKでも寝る場所があれば充分だ。貴様の家で厄介になる」
「何でだよ! 兄弟仲良くしろよ!」
「充分仲良くしている。ただオレ達は、もうお互いに兄弟離れしているだけだ」

 海馬はそう言って、漸く運ばれて来た熱々のコーヒーを美味しそうに啜っていた。そんな海馬を見詰めながら、オレは先日見た新聞の記事を思い出す。海馬コーポレーションの副社長が、僅か二十一歳で結婚したって記事だった。

「あーそっか。もうあっちにはモクバの嫁さんがいるのか…」

 そう語りかけると、海馬は目だけで頷いていた。



 その後、海馬は宣言通りにオレが住んでいる狭い1DKに転がり込み、今も二人で新居探しをしている。
 この間、二人で不動産屋へ出掛けようとした時にたまたま例の公園の側を通りがかったので、あの桜を見に行く事にした。海馬の細くて少し冷たい手を引いて、椿と夾竹桃の間を潜り抜ける。すると目の前に一面のピンク色が広がった。
 海馬のお気に入りの桜の木は、今年も綺麗に花を開かせていた。

「凄い…。綺麗だ…」

 ボソリと…。誰に言うまでもなく呟かれた海馬の一言に、隣で聞いていたオレは至極満足する。
 そうだ。オレはこんな風に海馬と一緒にこの桜を眺めたかったんだ。その夢が漸く叶って、オレは心から幸せな気分になった。

「そういや昨日尋ねた不動産屋さんで、この公園の近くのマンションを紹介されたんだけど」
「何…?」
「今日、そこに行ってみる?」
「あぁ」
「まだ部屋が空いてるといいな。そんでもってオレもお前も気に入る部屋だといい」
「そうだな。更にこの公園を眺める事が出来る窓があれば申し分無いな」
「その部屋に住めたら、来年もまたここに来よう。それで二人でこの桜を眺めよう」
「あぁ…そうだな。そうしよう」

 絡めた指をギュッと強く握って、オレ達はいつまでもずっとその桜を眺めていた。
 来年も…再来年も…そのまた次の年も。こうやってコイツと一緒に桜を眺める事が出来ますように。
 突如吹いた強い風に薄紅色の花びらが舞い散る中、オレも…そして多分海馬も、同じように願っていたのだった。

エイプリルフール

| コメント(0)

嘘吐き二礼です、こんばんは。

やったったw エイプリルフール企画やったったw
約二ヶ月間の努力がたった一日限りの夢というのはチョット勿体無い気もしますが、まぁ…あくまでお遊びなのであしからずw

それにしたってこの二人、遊びに本気を出し過ぎである…w

土曜日の日記で詳しい流れなんぞを書こうかな~と思っています(*'-')
あー! 楽しかった!!www