2010年12月アーカイブ

今年もお疲れ様でした~!

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半分死んでた二礼です、こんばんは。

本日は久しぶりのお休みで、家でゆっくりと過ごしていました。
ていうかもう、生ける屍状態でしたけど…w
頭も身体も疲れているので、何かこう…シャッキリしないんですよねぇ~。
結局一日ボーッとしておりました…w
気が付いたらもう夜とか…無いわー。

これはイカンな!!
しっかりしないと!!
こんなダラダラした日記が、今年最後の更新とか…泣けるwww

本当はSSか何かを書こうかなぁ~とか思っていたのですが、余りの絶不調具合に泣く泣く断念致しました。
無理して書いても、面白いの書けないしね…(´・∀・`)
その分、年明けに頑張ろうと思います。

ていうかもう、年が明けちゃう!!
今年もあっという間だったなぁ…。
一年って早いよねぇ~www

今年はとにかく、自分の身の回りの環境がガラリと変わって大変な年でした。
まさか新年早々、5年間続けて来たコンビニのバイトが店の閉店により辞めなければいけない事になるとは、思いもしなかったよ…w
でもそのお陰で憧れの本屋さんに勤める事が出来たし、新しいオタ系の知り合いも一杯増えましたw (本屋さんには、やっぱりオタク系の人が多いのですよ…w)
お仕事は以前とは違って格段に忙しいのですが、楽しくお仕事させて頂けるので、とてもありがたいと思っております(*´ω`*)

でもそのお陰で、サイトの更新がかなり少なくなってしまった事に関しては、何よりも申し訳無く思っております。
本当にごめんなさいです!!
私としても、もっと沢山の小説を書いてUPしたいと思っているのですが、時間の調整が難しくてなかなか上手くいきそうにありません。
それでも今の時点ではサイトを辞める事は全く考えていませんし、今後も書いていきたい小説のネタとかも沢山あります。
時間を見付けて少しずつでも良いので、自分の萌えを更新し続けていこうと思っております。

そう言えば遊戯王関係でも、今年は大きな変化がありましたね~!
Twitterを始めた事でフォロワーさんが一気に増え、今まで接点の無かった方達と色んなお喋りを沢山楽しむ事が出来るようになりましたv
これは私にとっては本当に予想外な、そして嬉しい変化だったと思っています(*'-')
色んな人達の呟きを毎日見られて、それがちょっとした楽しみにもなってたりしますしね~w
Twitterに関しては良い面も悪い面もありますが、人付き合いが広がるという点では良い事なんだと思っています。

でもまぁ…アレですね。
自分の精神状態が余り宜しく無い時には、下手に呟かない方が良いですね…w
ついついマイナス感情が出ちゃいますから…。
反省しなければなりませんな(´∀`;

さてそれでは、今年最後の日記もこれにて終了とさせて頂きます。
今年も『小春日和』に遊びにいらっしゃって下さった皆々様方、本当にありがとうございました~!!
毎日押して下さる拍手やコメントがどれだけ嬉しく、そして元気付けられたか分かりません。
本当に心から感謝しております!
どうもありがとうございました~!!

これからも、お暇な時にでも『小春日和』に足を運んで頂き、ウチの小説で少しでも楽しんで頂ければ幸いに思います(*´∀`*)

来年もどうぞ宜しくお願い致します~!

それでは皆様、良いお年をお迎え下さいませ~!
ではまた~(・∀・)ノシ

メリークリスマス!!

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クリスマスの二礼です、こんばんは。

無事にクリスマスが終了致しました~!
いや~。今年のクリスマスはゆっくり楽しめず、ずっと忙しく過ごしていたので、本当にあっという間でした…w
仕事は楽しいから良いのですが、ちょっと…いやかなり疲れたな…w
まぁまだお仕事は28日まで残っているのですが、これで少し忙しさが軽減してくれればいいなぁ~と思っております(´∀`;

このまま平和に年が過ごせますように…(´人`)

今日は疲れてクタクタですので、短い日記で失礼致します。
明日(26日)は何とか休みをもぎ取ったので、もうちょっとちゃんとした日記を書きたいところ…!
今年はもう小説が書けないので、せめて日記くらいは書かないとね~!


以下は拍手のお返事になりま~す!(`・∀・´)


>ねこま様

こんばんはです~!
拍手とコメント、ありがとうございました~!(´∀`)

仕事と体調の事を気遣って下さり、本当にありがとうございました。
超嬉しかったです~(*´д`*)
ねこま様の応援のお陰で、クリスマスの忙しさを何とか乗り切る事が出来ました。
感謝感激でございます~v

クリスマス企画の方は、城之内君に優しい社長にキュンキュンして頂けて良かったですv
ウチの社長は総じて乙女ですが、この社長は特に乙女満載で、書いてて本当に楽しかったんですよね~!
もうどんだけ城之内君の事が好きなのかと小一時間…w
でもそんな社長が大好きなので、これからも独自に乙女社長を開拓しながら、サイトを続けて行きたいと思っています(*'-')
ねこま様も、お暇な時にはいつでも遊びに来て下さいませ~!
お待ち申し上げておりますv

それではこれで失礼致します。
ではまた~(・∀・)ノシ

クリスマス出来たー!

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決戦前の二礼です、こんばんは。

クリスマスが…近付いて来ましたねぇ…。
もう今からwktkが止まりません!
どんだけ忙しいんだろ…www ふひひw 超楽しみwww

いや、もう覚悟は決まっているので、煮るなり焼くなり好きにして下さい!
バッチコーイ!!

とまぁ…そんな風に半分壊れつつ、今年最後の小説書きを終了致しました。
本当はもっと書きたかったんですけど、クリスマスとか年末の忙しさでちょっと無理っぽいんです…。
本当に申し訳ありません。
それでも少し元気があったならSSくらいは上げたいところですけど、その辺は余り期待しないで下さいませ…;

でもそれじゃ寂しいので、26日は日記だけちょろっと上げようかなーなんて思っております。
24日か25日も日記が書ければいいなぁ~。
せっかくのクリスマスなのに勿体無いしなぁ~…。
何とか頑張ってみますね~…w


短編に『聖なる夜の優しい奇跡』の後編をUPしました。
無事にハッピーエンドで終わらす事が出来ました~!!
ふぃ~良かったぁ~!

城海のHシーンは、あっさり朝チュンで終わらすか、しっかり艶めかしく書くかで迷ったのですが、せっかくここまでほのぼの路線で進めて来たので、朝チュンで平和に終わらす事に致しました…w
たまには、あっさり風味でもいいですよね~?w

何はともあれ、今年もちゃんとクリスマス作品が書けて良かったです~!
これで心おきなく、仕事に集中する事が出来ます…(´∀`;

さてそれじゃぁ…お仕事…頑張ろうか…www

聖なる夜の優しい奇跡(後編)

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「まぁ、上がれよ」

 ニコニコと微笑んだままそう言う城之内に海馬はコクリと頷いて、眠ったままの克也を抱いたまま玄関に入った。靴を脱いでドアの向こうに消えていく城之内の背を追いかけると、台所と間続きになっている居間の真ん中に思いも掛けない物が置いてあるのが目に入ってくる。
 それは、古びたコタツであった。

「これは…」
「ん? コタツだけど…お前知らねーのか?」
「いや、それは知っているが…。随分と古臭いな」
「はい…?」

 海馬の台詞に城之内は一瞬目をパチクリと瞬かせたが、次の瞬間ににこりと笑みを零す。

「そうだろ。オレが子供の頃から使ってる奴だからな」
「子供の頃から?」
「うん。あの日…あのクリスマスの朝に目覚めた時も、このコタツの中にいたんだ」
「………なっ…」
「さ、いいからソイツをここに入れてやってくれよ」

 分厚いコタツ布団を持ち上げて、城之内が目で合図をする。それに頷いて同意を返し、海馬は跪いて克也をそこに寝かせた。腰から下を暖かいコタツの中に入れてやり、胸の辺りにコタツ布団を被せてやる。子供はどんなに動かされても目覚める気配がちっとも無く、絨毯の上でスヤスヤと気持ち良さそうに眠っていた。
 その寝顔を心配そうに眺めていると、大きな手が伸びてきて栗色の頭を優しく撫でられた事に気付く。顔を上げると、ニコニコと笑っている城之内と視線が合って海馬は目を瞠った。城之内は幸せそうな笑みを浮かべて、海馬の頭をワシワシと撫でている。

「ありがとな…海馬」
「え………?」
「コイツの相手をしてくれて。それから…ここに連れてきてくれて、ありがとう」
「………」
「まぁ、とにかくお前もコタツに入れよ。寒かっただろ?」

 確かに外の冷気で自分の身体が大分冷えている事に気付いた海馬は、城之内に促されるまま克也の隣部分のコタツ布団を上げて、その中に足を突っ込んだ。途端に何とも言えない、ふんわりとした暖かさに包まれてホッと一安心する。
 じわじわと身体が温まっていくのを感じながら眠ったままの克也を見詰めていると、目の前でそれを見ていた城之内がクスクスと笑い出した。そしてスッと立上がり、台所の方に足を進める。薬缶の中に水を貯め何らかの準備をしている城之内の背中を見詰め、海馬は恋人の名を呼んだ。

「城之内…?」
「今あったかいお茶煎れてやるからな。話はそれからしよう」

 肩越しに振り返って笑顔でそう言う城之内に、海馬はもうそれ以上何も言えなかった。ボッとガスの火が付けられる音を聞きながら、海馬は隣でグッスリ眠っている克也に視線を移す。どんなに見詰めても、そしてどんなにそのボサボサの頭を撫でても、子供が起きる気配は全く無かった。



 コトンとコタツ机の上に置かれたマグカップの音で、海馬は視線を元に戻した。そこには同じデザインのマグカップを持って、海馬とは反対側に座り込み、男らしい笑顔を浮かべている城之内がいる。マグカップからは暖かな湯気が立ち上り、フワリと紅茶の良い香りが辺りに広がっていった。

「とりあえず紅茶飲めよ。ウチには高級な茶葉なんて無いから、ティーパックの奴で悪いけどさ」
「いや、ありがとう」
「砂糖とか要らない? 大丈夫か?」
「このままでいい」

 城之内の申し出に海馬はフルリと首を横に振り、そのままマグカップに口を付けて暖かな紅茶を一口飲んだ。途端に身体の内が温まり、鼻に抜ける良い香りで心が落ち着いていくのが分かる。二口三口紅茶を飲んで、海馬はマグカップを机の上に置いた。コトリ…と小さな音が、静寂した空間によく響く。
 暖かいマグカップを両手で包み込むように持ちながら、海馬は黙って目の前の城之内を見詰めた。城之内はその視線を受けながら苦笑し、片手でマグカップを持ち上げて紅茶を少し飲む。そして海馬と同じようにカップを机の上に戻して、はぁー…と大きな溜息を吐いた。そして後頭部をガシガシ掻きながら、言葉を放つ。

「あぁ…やっぱりなぁ…。今年じゃないかと思ってたんだ」

 城之内のそんな言葉に、海馬は口を挟まないで黙って先を促す。じっと見詰めて来る青い視線に城之内は困ったように笑いながら、話を続けた。

「先月の中頃かな。オレが小さい頃、若い兄ちゃん風のサンタクロースに出会ったって話をした事があっただろ?」
「あぁ」
「実はな。あの話…つい最近まで綺麗サッパリ忘れてたんだよ」
「………なんだと?」
「小さい頃はちゃんと覚えてたんだ。だけどいつの間にかすっかり忘れちまっていた。だってさ、本当かどうか分からない事をいつまでも覚えていても仕方無いだろ?」
「まぁ…それは…確かにそうだが…」
「だけどあの日、急にそれを思い出したんだ。しかも今まで忘れていたとは思えない程、はっきりと。夢か現か分からなかった事が、完全に現実だと思えるくらいに」
「………」
「それがどんな意味なのかは分からなかったけど、何だか無性にお前に話して聞かせたくなってな。それであの時、ああいう話をしたんだよ」
「そう…だったのか…」
「で、その後自分で思った訳だ。もしかしたら今年のクリスマスに、『あの日』が来るんじゃ無いかってな。もしかしたら…いや、もしかしなくてもあの兄ちゃんは確かにいて、しかもそれは海馬なんじゃ無いかって…そう思ったんだ」
「…城之内」
「そしたら、ビンゴだったって訳」
「それでは…やはり…っ」
「あの話をお前にしていたから、きっと子供の頃のオレが現れても海馬が相手してくれるだろうと信じていた。更に、眠ってしまったオレを連れてお前がここに来るだろうという事も、何となく分かってた。次の日の朝にコタツで目覚めた事も言ってあったから、頭の良いお前の事だから絶対ここを選ぶだろうと思って、待ってたんだ」

 改めて告げられた話に海馬は驚き、ただただ目を瞠るばかりだった。そんな海馬に優しく微笑みかけて、城之内はマグカップを持ち上げて少し温くなってしまった紅茶に口を付ける。喉が渇いていたようでゴクリゴクリと一気に飲み干していき、やがて空になったマグカップをタンッと机の上に戻して、城之内は再び溜息を吐いた。そして、自分と海馬に挟まれる位置で眠りこけている幼き日の自分を見詰める。
 海馬のように子供に触れる事はしないが、その視線はどこまでも柔らかで穏やかだ。

「我ながら…ひでぇ格好だなぁ…」

 クスッ…と眉根を寄せて、城之内は苦笑する。

「あっちもこっちも傷だらけ。頭はボサボサだし、服もきたねぇし、爪も真っ黒だし、見られたもんじゃねーな」
「それは…コイツの所為では…っ」
「分かってるよ。そんな事、オレが一番よく分かっている。こうなったのはオレが悪い訳じゃねーんだ」
「………」
「でもな、今オレは嬉しいんだ。嬉しいっていうか、滅茶苦茶お前に感謝してるんだよ」
「…何がだ」
「こんなきたねぇ餓鬼を、よくあんなに優しく丁寧に世話してくれたなーって思って…な。当時の事思い出して、すげー嬉しくて堪らなくなってさぁ…」

 突然、机の上に投げ出していた手をキュッ…と優しく握り込まれて、海馬はハッと顔を上げた。目の前に本当に心から嬉しそうに微笑んでいる城之内の顔があり、その琥珀色の明るい瞳が涙で潤んでいるのが目に入ってくる。

「ありがとう…な、海馬。本当に…ありがとう…」
「城之…内…」
「コイツに代わって礼を言うよ。本当に幸せだったんだ。最高のクリスマスイブだった。こんなに幸せなクリスマスを迎えられて、オレは本当に本当に嬉しかったんだ」
「………っ! 城之内…っ!」
「ありがとな…っ。幸せだったよ…!」

 最後の方はもう涙声だった。城之内は両手で海馬の手を強く握り、涙をボロボロ零しながら泣いている。ただその顔が幸せそうに微笑んでいるのを見て、海馬も同じように涙ぐみながら「泣くな…馬鹿」と悪態を吐く事しか出来無かった。
 もう片方の手を城之内の両手の上に置き、ギュッ…と力を込めて握り締める。泣きながら笑みを浮かべると、城之内も同じように笑い返すのだった。



 それからは、二人は共にコタツに当たりながら、じっと克也の事を見守っていた。時計の針は真夜中をとうに過ぎ、朝の四時を指している。シンとした空間が二人を包み込んでいた。

「この子は…いつ帰るのだろうな?」

 城之内が煎れてくれた何杯目かの紅茶を飲みながら、海馬はポツリと言葉を漏らす。その声に城之内は視線を上げ、「さぁな」と一言返した。

「前にも言ったと思うけど、オレは自分がいつ帰ったのか分からないんだ。気が付いたら二十五日の朝で、ただコタツで寝てたってだけで…」
「そうか…」
「でも、もうすぐなんじゃねーかなぁ…。だってもう朝に…っ。あっ…」

 子供を見詰めながら言葉を放っていた城之内が、突然驚いた様に身を乗り出した。その様子に海馬も慌てて隣で眠っていた克也に視線を向ける。幸せそうにぐっすり眠っている子供の身体が淡く光を放っている事に気付き、海馬は驚きで目を瞠った。そして仄かな光に包まれながら、子供の輪郭が段々薄まっていくのもハッキリと確認出来た。

「あぁ…っ!」

 思わずその身体に手を伸ばそうとすると、その手が誰かの手に掴まれて留められてしまった。慌てて顔を上げると、いつの間にか自分の隣に移動して来ていた城之内と目が合う。

「城之内…っ!」
「触るな」
「だが…っ」
「多分、触っちゃいけないんだ。『オレ』は帰らないと…」

 城之内の言葉に、海馬は泣きそうにクシャリと顔を歪めた。
 帰って…帰って一体どうするというのだ。この子がこれからどんな辛い目に合い続けるのか、自分はよく知っている。こんな小さな身体で、これからも父親の理不尽な暴力を受け続けなければならない事を知っているのだ。
 だからこそ、海馬は克也を帰したくは無かった。何とかこの世界に留めようと腕を伸ばすが、その度に城之内に引き留められてしまう。恨みがましく睨み付けても、城之内はただ穏やかに笑っているだけだった。

「お前が今何を考えているのか…オレには分かるぜ? このまま『オレ』を帰らせたら駄目だと思ってるんだろ? オレが親父に虐待されてた事知ってるから、それから助け出そうとしてるんだろ? 違うか?」
「それが分かっているのだったら…!」
「確かに子供時代は辛かったよ。でもな、海馬。それだけじゃないんだ」
「………何…?」
「辛いだけじゃ無かった。もし今帰らなかったら、オレはきっと物凄く後悔する。だってそうだろ? 過去に戻らなければ、遊戯や本田達のような大事な友達にも会えなかったし、遊戯達と一緒に楽しくデュエルする事も出来無かった。それに…」
「それに…?」
「それに何より…お前に出会えなかった」
「………っ!!」
「お前に出会えて、喧嘩しつつも好きになって、やがて恋をして…。もし『あの時』元の世界に帰れなかったら、こうやって恋人同士になる事も出来無かったんだ。それを考えると、オレは凄く怖くなるよ」
「………城…之…内…っ」
「『あの時』…無事に帰って良かったよ。じゃなかったら、今のオレはいなかった。な、そうだろ?」
「城之内…っ!」
「確かに辛い日々はあったけど、それも全部無駄じゃなかったんだって思うぜ。だってオレは今…幸せだよ。物凄く、メチャクチャ幸せだ。なぁ…海馬…」
「………」
「『オレ』の幸せを、邪魔しないであげてくれねーかなぁ?」
「っ………!!」

 城之内はニッコリと微笑みながらそんな事を言い、その言葉に海馬はもう何も言う事は出来無かった。
 視界の端で光の塊が膨張し、パンッと弾けて消えたのがまるで合図だったかのように、突然城之内に唇を塞がれてしまう。海馬は目をギュッと強く瞑って涙を零した。

「んっ………むっ…ぅ!」

 ドサリと安っぽい絨毯の上に押し倒されて、のし掛かる身体を自ら抱き寄せた。男らしい広い背に腕を回して、城之内が着ていたパーカーを強く握り締める。薄く目を開いて克也が眠っていた辺りを見ても、もうそこに子供はいなかった。何の形跡すら残さず、消えてしまっていたのだ。

「泣くなよ、海馬」

 海馬の身体の上に乗り上げた城之内が優しく微笑みながら、海馬の眦に溜まった涙を指先でそっと拭ってくれる。その動作は至極思いやりに満ちていた。

「オレはここにいるだろ? 今こんなに…幸せなんだよ。それもこれも、全部お前がくれたんだ。ありがとな…」
「………城之…内…っ」
「海馬…愛してるよ。お前に出会えて…良かった」
「………あぁ…オレも…」
「ん?」
「オレも…お前に会えて良かった…城之内…っ」
「うん」
「好きだ…っ」
「うん」
「愛してる…っ!」
「うん。本当に…ありがとな、海馬」

 優しい言葉と共に、城之内の唇は海馬のそれに迫る。それを待ちきれず、自ら顔を上げて積極的に唇を押し付けながら、海馬は再び熱い涙を零した。
 その涙は、可哀想な子供を見送った時の哀しみの涙では無く、愛しい人と情を交わす事が出来る嬉しさの涙であった。



 城之内がいつも使っている安っぽい布団に裸体を横たえながら、海馬はそろりと寝返りを打った。久しぶりの情交で未だ熱を失わない身体に、ヒヤリとした木綿布団の冷たさが心地良い。
 城之内は朝早くからクリスマスのバイトに出掛け、今この団地の一室には海馬しかいない。父親は遠地に出稼ぎに行っているらしく、暫くは戻らないからゆっくりしてろと恋人は言っていた。
 城之内の父親が最近真面目に働き出している事を、海馬は城之内からの話で知っていた。未だにアルコール中毒の症状はあるものの以前程酷くもなく、何より自分で酒断ちをしている事は大きな進歩であった。幼い頃から悩まされ続けて来た理不尽な暴力から、城之内は漸く解放されていたのである。
 海馬の頭の中に、昨夜の城之内の言葉が甦って来る。

『確かに辛い日々はあったけど、それも全部無駄じゃなかったんだって思うぜ。だってオレは今…幸せだよ。物凄く、メチャクチャ幸せだ』

 そう海馬に言っていた時の城之内の顔は、本当に幸せそうに輝いていた。
 過去の世界に帰ってしまった克也を心配する気持ちは、確かに今もまだ消えてはいない。けれど、海馬は信じていた。あの小さな子供にも、この先とても大きな幸せが待ち受けている事を。そしてその幸せの為には、自分の存在が無くてはならないものだという事も…知ってしまったのだ。

「仕方が無いな…」

 誰もいない部屋で、恋人の匂いのする木綿布団にくるまりながら、海馬は一人幸せそうに笑う。

「オレはアイツの…サンタクロースだからな」

 小さなあの子には、一夜の優しい奇跡を。そして大きく成長した恋人には、永遠の幸せを。

「それがサンタクロースであるオレの…プレゼントだ、城之内」

 クスリと微笑んでそう口にして、海馬は疲れた身体を丸めて再び布団に潜り込んだ。そしてもう少しだけ眠る為に、瞼を閉じる。
 頭の中では、仕事を終えて帰って来た恋人の笑顔が浮かぶ。その笑顔に心からの幸せを感じながら、海馬は静かで充実したクリスマスを過ごしたのだった。

消えた新人さんwww

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クリスマスの予定に気が遠くなった二礼です、こんばんは。

私が働いている書店に、秋に入った新人さん。
まぁ…当初から地雷臭はしていたんですよ。
いつもニコニコして人当たりはいいけど、仕事に対する姿勢がちょっと違う。
メモを取らない。何度も同じミスをする。注意しても「スイマセ~ン☆」と謝るものの、それが次の日にはまた同じ事をする。遅刻が多い。休みも多い。
それでも少しずつ仕事を覚えてきて、クリスマスはこれで大丈夫だなと安心していました。

ところが…です。
この間その新人の連続ミスについにバイトチーフが耐えかねて(ブチ切れて)、本格的に注意をしておりました。
本格的な注意と申しましても、別にガミガミ怒鳴ったりしたとかじゃなくて「次からはちゃんと気を付けるように」程度だったのですが…。
新人さん…辞めちゃいました☆

もう全員「えええええっ!?」状態ですよw
クリスマス前の、このクソ忙しい時期に、なんで無責任にさっさと辞めてしまえるのかと小一時間www
「やっぱり私にはこの仕事は無理です…」とか何とか言い訳してたらしいけど、この位の小言、どこの職場でも普通に言われると思うんですけど?
道理で仕事を転々としていると思った…。
これで耐えられなければ、どこ行ったって長続き出来無いよ。

新しく始めた仕事で、ミスを全くしないってのは神様じゃ無ければ無理ですw
だからこそメモを取り、二度とやらないように気を付けなければならないんですよね~。
メモを取るのが苦手な人もいますけど、そういう人は逆に自分の頭と身体で完璧に覚えていくんですよね。
私はそんな器用な事出来無いので、メモ派ですけど…w

つまり何が言いたいのかと申しますと、クリスマスの忙しさが超絶望的になったという事でありまして…w
うはwww 今から死にそうwww
頑張りますwwwwww


短編に『聖なる夜の優しい奇跡』の中編をUPしました。
克也君の幸せなクリスマスイブ編でございます。
小さな克也君と海馬のほのぼの具合をどう表現するのかってのが、今回一番難しかったです。
頭ではほのぼのしてくれているのに、文章力が付いていってないのが辛いなぁ…。
でも書いてて楽しかったですよ~!
やっぱりほのぼのはいいよねぇ~(*´д`*)

この調子で後編も頑張りま~す!!


以下は拍手のお返事でございますです~(*´ω`*)


>ねこま様

こんばんは~! お久しぶりです!!
拍手とコメント、ありがとうございました~!!

社長と子供の組み合わせは、もう黄金タッグですよね~!!
私も大好きですv

小さい克也君は可哀想ですよね~。
私も原作を読んで城之内君の境遇を知ってからは、ずっと可哀想だと思っていました。
社長も可哀想だけど、城之内君も同じくらい可哀想です。
本当にこの二人は似ていますよね。
だからこそ、お互いに惹かれるのかな~なんて思っていますけどw
これが城海の魅力の一つなんでしょうね~v

せっかくのクリスマス企画なので、バッチリハッピーエンドで締めたいと思っています。
12月はリアルが忙しい事もあってなかなか更新出来ませんが、どうぞゆっくり見にいらっしゃって下さいませ~!

それではこれで失礼いたします。
ではまた~(・∀・)ノシ


>12月15日の13時頃にコメントをして下さった方へ

こんばんは~!
拍手とコメント、ありがとうございました~!

いつもウチの小説を読んで頂いて、ありがとうございます~!!
そしてクリスマス企画にも目を通して頂けて、凄く嬉しいですv

社長はやっぱり、小さい子供には凄く優しいと思うんですよね。
それが弟のモクバであったり、海馬ランドに来てくれる子供達であったり、世界中の恵まれない境遇の子供達であったりと色々ありますけど…。
そんな優しい社長が、子供時代の城之内君を可愛がらない筈は無いと思うんですよね~。
ましてや恋人同士なら尚更でしょう! という気持ちを込めて、この企画小説を書いてみましたw
久しぶりにデレデレ社長を書いたので、こっちもちょっと照れていますが、書いてて幸せだなぁ~と思えるので良しとしますw

12月はなかなか更新出来そうにありませんが、ノンビリと御覧になっていって下さいませ~!

それではこれで失礼致します。
ではでは~(・∀・)ノシ

聖なる夜の優しい奇跡(中編)

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 海馬邸の玄関前に滑るように駐まったリムジンから、海馬は小さな城之内克也の手を引いて降りてきた。大きな扉の前に立つと、克也は顔をポカンとさせて上を見上げる。

「すっげー…。コレがお兄ちゃん家?」
「そうだ」
「でっけー家。お城みたいだ」

 素直な感想を言う子供の克也に、海馬はクスリと笑みを零した。初めて恋人である城之内をこの屋敷に招いた時に、彼が言った台詞と酷似していたからだ。

『でっけー家だな。知ってたけど目の前で見ると、お城みたいだ』

 まるで小さな子供の様に漏らされた感想に、海馬はその時「何を下らない事を…」と呆れたように嘆息した。だが子供の頃から感性が全く変わっていなかったらしいという事に気付いて、ついつい感心してしまう。
 城之内はやはり城之内なのだ。こんな小さな頃から全く変わっていなかったという事実に、胸が温かくなる。

「さぁ、こっちだ」

 大きな屋敷に感心している克也の手を引いて、海馬は屋敷の中に入っていった。途端に沢山のメイドと弟のモクバに迎えられる。「お帰りなさい、瀬人様」とお辞儀をするメイド達の向こうから、小さな弟が走ってきたのを見て海馬は微笑んだ。

「お帰りなさい、兄サマ! …って、あれ? 子供?」
「ただいまモクバ」
「その子…あれ? 何だか…」

 何かを言いたそうにするモクバに、海馬はしーっと口元に人差し指を当てて諫める。キョトンとしているモクバの脇から、古株のメイドが一歩進んで子供の前に座り込んだ。そしてニコリと微笑んで口を開く。

「あらあら、随分小さなお客様ですこと。こんな薄着で…外は寒かったのではありませんか?」
「大分身体を冷やしている。何か子供が飲めるような温かい飲み物を持って来てくれ」
「畏まりました。ココアとかで宜しいでしょうか?」

 メイドが何気なく放った一言に、海馬はピクリと反応して思わずメイドの顔を凝視した。頭にあの日の城之内の言葉が甦って来る。確か城之内は、サンタクロースに暖かいココアを飲ませて貰ったと言っていなかっただろうか…と。
 言葉を無くした海馬を不思議そうに見詰め返し、メイド頭は首を傾げて「いけませんか?」と主人に問うて来た。その言葉に海馬は慌てて首を振る。

「いや、ココアでいいだろう。オレの部屋に持って来てくれ」
「畏まりました。直ちにご用意致します」

 海馬の言葉にメイドは深く頭を下げ、小さな克也にニッコリと微笑むとキッチンへと下がっていった。その姿を見送って、海馬は克也の手を引いたまま歩き出す。その後ろからモクバが付いて来るのに頷いて了承し、三人は海馬の自室までやって来た。
 大きな扉を開けると、部屋の中は空調が効いてすっかり暖かくなっていた。その心地良さに、克也の顔が嬉しそうに破顔する。

「うわー。あったけぇー!」

 漸く安心したような顔になった少年に海馬は微笑みかけ、部屋の中央に置かれた革張りのソファーを指差した。

「あそこに座って待っていろ。直に暖かい飲み物を持ってくるから」

 海馬の言葉に克也はコクリと頷き、素直にソファーまで近寄るとそこによじ登って座り込んだ。そして「すげー! ふかふかだー!」と一人喜んでいるのを目にしながら、海馬は背後で呆然としているモクバに話しかける。

「済まないな、モクバ。少し驚かせてしまったか」
「ううん…。それはいいんだけど…」

 兄の言葉にフルフルと首を横に振りながらモクバは答え、ほんの少し眉根を寄せながらボソボソと言葉を放つ。

「で…兄サマ、あの子は誰?」
「誰だと思う?」

 まるで謎かけのような海馬の言葉に、モクバはますます眉根の皺を深くした。
 何となく…何となくだが予想は付く。けれどその予想は、普段兄が口癖のように言う非ィ科学的現象に属し、モクバはそれを言い当てたくは無かった。出来る事ならば科学的に証明出来る、自然な理由にしたかったのである。
 知らず知らずの内に出て来た苦笑いを抑える事も出来無いまま、頬をひくつかせながらモクバは仕方無く口を開いた。

「えーと…物凄く『誰か』に似てると思うんだけど…」
「そうだな。そっくりだろう」
「そっくりだね…城之内に」

 弟の口から出た『城之内』という言葉に、海馬はニヤリと笑った。その笑顔を目の前で見て、モクバは背中に嫌な汗が流れるのを感じてしまう。
 海馬の弟であるモクバは、子供ながらに兄と城之内の関係がどのような物かという事に関して正確に把握していた。男同士でありながら恋人同士であり、しかも二人の関係は一時の遊び等では無く至極真剣なものであり、生涯を通じて連れ添っていく事を決意しているという事も知っている。
 弟として兄と城之内の関係に些か不安があるものの、モクバは反対はしなかった。海馬の気持ちも、そして城之内の気持ちも真剣である事を感じていたし、何よりその事で兄が常に幸せそうにしている事が、弟として心から嬉しかったからだ。

「まさか…アレかな? 城之内の親戚の子…とか?」
「あんな小さな親戚など、城之内にいない事はお前もよく知っているだろう」
「じゃあ…年の離れた弟さんとかかなぁ?」
「あのアル中の父親に、そんな甲斐性があると思うか?」
「だよね…無いよね…。じ、じゃあ思いきって城之内の隠し子とか…!」
「モクバ…。思いきってって、何を思いきるのだ。年が合わんぞ。それに奴は…」
「分かってる。城之内は潔白だよ。言ってみただけだって…」

 海馬の恋人となった城之内はやがて海馬邸に入り浸るようになり、モクバも城之内から色々な話を聞くようになった。今では城之内の事に関しては、兄に次いで詳しいだろうとまで言われている。だからモクバには、城之内の身の回りにそんな小さな子供などいないという事は、よく分かっていた。
 ならばこの子は何だと言うのだろうか。ここまで本人にそっくりで、何の血の繋がりも無い筈は無い。はっきり言って、他人のそら似等というレベルでは無い。
 そこまで考えて、モクバは深く溜息を吐いた。先程から頭の中で、とある予想が頭角を現わし自分こそが正解だと主張している。兄曰く非ィ科学的現象を信じたく無かったのもあるが、モクバは兄程堅い頭の持ち主では無かった。
 半ば諦めたように、溜息混じりで正解を弾き出す。

「まさか…あれ、子供の頃の城之内とかなの?」

 モクバが吐き出した言葉に、海馬は笑顔を浮かべ「どうやらそのようだな」と答えを返した。

「どういう事…?」
「オレにも分からん。ただ…以前城之内にオレがサンタクロースだったのかもしれないという話をされてな」
「え? 何それ?」
「小さい頃に、こういう不思議な体験をしたのだそうだ。金持ちの若い青年に大きな屋敷に連れて行かれて、ご馳走をたんまり頂いたとな」
「誘拐?」
「サンタクロースだ」

 モクバの切り返しに、海馬は内心「流石兄弟だな…」と呆れつつも、その目は小さな克也から離れる事は無かった。
 子供の克也は、今はふかふかのソファーで気持ち良さそうに座っている。心持ち緊張しているのか、寝っ転がったり無駄にはしゃいだりする事はない。それがまた、初めてこの屋敷に招いた時の城之内と被って、海馬は知らず口元を緩め微笑みを浮かべていた。



 数刻後、メイド頭が持って来たココアを受け取って、海馬は克也の隣にゆったりと腰掛けた。そしてココアが入ったカップを、そっと小さな手に握らせる。

「熱いからな。口の中を火傷しないように、気を付けて飲みなさい」
「うん、大丈夫。ありがとー」

 克也はそう言って頷くと、フーフーとココアに息を吹きかけてズズ…と一口飲み込んだ。そしてほぅ…と息を吐いて、嬉しそうに顔を破顔させる。

「甘くて美味しい!」
「そうか。良かったな」

 小さな子供が嬉しそうに微笑むと、海馬も嬉しくなる。いきなり手を上げて怖がらせたりしないように、今度は気を付けてゆっくり手を伸ばし、ボサボサの頭をそっと撫でた。その感触に気付き、克也はココアのカップを持ったまま上目遣いで海馬を見詰めて来る。その視線に笑顔で応えると、子供は嬉しそうに微笑み返した。

「ココアなんて久しぶりに飲んだ。母さんがいた頃はよく作ってくれてたんだけど…」
「………そうか」

 コクリコクリとココアを飲む克也を優しく見守っていると、小さなお腹からぐーーーっという大きな音が鳴り響く。途端に真っ赤になって俯く克也に、海馬はその頭を撫でながら静かな声で優しく言葉を放った。

「お腹が空いたな」
「うん…。ちゃんと食べたんだけどな」
「何を食べたのだ?」
「カップ麺! でも半分食べたところで父さんが暴れ出しちゃって…。残して来ちゃったな…アレ。勿体無かったなぁー」

 せっかくのクリスマスイブだと言うのに、こんな小さな子供が食べるご馳走がカップ麺だとは…。海馬は知っていた事とは言え、余りの不遇な状況に胸が痛むのを感じた。
 子供というのは、この季節はもっと笑顔ではしゃいでいるのが当然だと思う。美味しいご馳走と、甘いケーキと、クリスマスプレゼント。手に入って当然のそれらが、この小さな子供には遠く無縁の物だったのだ。

「大丈夫。もうすぐ夕食が運ばれてくるから、一緒に食べよう」

 海馬の言葉に、克也は嬉しそうにキラキラと目を輝かせた。

「ほんと?」
「あぁ、本当だ。チキンやケーキもあるぞ」
「ケーキも!? やった!! ずっと食べたかったんだ!!」

 満面の笑顔でキャッキャと騒ぐ克也の姿に、隣に腰掛けていた海馬と、克也と一緒に遊べるようにと自室からボードゲームを持って来たモクバは、少し悲しそうに微笑んだのだった。



 暖かい部屋と熱々のココアで漸く子供の体温が戻った頃、クリスマスのご馳走が目の前に運ばれて来て、克也はそれらを目の前にして目を輝かせていた。

「これ…本当に食べてもいいの?」
「いいぞ。存分に食べるがいい」

 恐る恐る口に出した疑問に海馬が即答すると、克也は顔を紅潮させてご馳走に目を向けた。
 最初は一緒に並べられたフォークやナイフを一生懸命使おうとしていたのだが、海馬が「手で食べてもいいぞ」と言うとキョトンとした顔で海馬の顔を見返して首を傾げる。その態度に海馬が笑顔で頷けばニッコリと笑い、小さな手をチキンのグリルに伸ばした。そして骨に蒔かれた銀紙部分を掴んで大口を開けてがぶりと食いつき、至極幸せそうに微笑む。

「うめぇーっ!! こんなに美味しいご馳走初めてだ…」

 本当に幸せそうにチキンを頬張る克也を、隣に座っている海馬も向かいに腰掛けているモクバも、ただただ微笑ましく見守っている。ここまで来ると、モクバももうこの子供が城之内である事を認める他は無かった。というより、疑う余地が無い。
 チキンを食べ、野菜がたっぷり入ったコンソメスープを飲み、焼きたてのパンを夢中で食べてる姿を優しく見ているだけだ。

「口の周りがベタベタだな。こっちを向きなさい」

 チキンの油やソースで口元や頬をベタベタに汚した克也に、海馬はクスリと微笑んでその顔を自分の方に向けさせた。そしてこんな事もあろうかと用意させておいたおしぼりを使い、海馬は克也の汚れた口元や手を丁寧に拭ってあげる。子供はむーむー言いながらも、大人しくされるがままになっていた。
 そんな姿を笑顔で見詰めながら、モクバはクリスマスケーキを上手に切り分けて小皿に乗せ、克也の目の前にコトリと置いてやる。

「ケーキもあるんだぜぃ! ほら、食べていいよ」

 新鮮なフルーツが山盛りに載った生クリームのケーキを、克也は子供独特の大きな目でじーっと見詰めていた。そして何度かパチクリと瞬きをし、視線を上げて海馬を見る。

「ケーキ…食べてもいいの?」
「あぁ、構わないぞ」
「でもオレ…。まだちゃんと他のご飯食べてない」
「………?」
「ご飯をちゃんと食べないと、ケーキは食べちゃ駄目だって母さんが…」
「あぁ…なるほどな」

 父親が酒に溺れ、そんな父に愛想をつかした母親が家を出る前までは、城之内家とて普通にクリスマスイブを祝っていた筈だ。親子四人が揃って仲良くしていた頃の、小さくて懐かしい記憶。それが今の克也の言葉だった。
 再びズキリと痛む胸を何とか押さえて、海馬は笑顔のまま言葉を放つ。

「構わん。今日は特別だ。先にケーキを食べても良い」

 海馬の言葉に克也は安心したようにホッと息を吐き、そして笑顔でデザート用のフォークを掴んでケーキに刺した。フルーツと生クリームがたっぷり載ったケーキの破片を口に運び、パァッと明るい笑顔を見せる。

「甘いーっ!! うめぇーっ!!」

 心から幸せそうに笑ってご馳走やケーキを食べる克也に、海馬やモクバはただ笑ってそれを見守るだけだった。



 お腹が一杯になった後、克也はモクバと一緒にボードゲームで遊んでいた。「こんなゲーム、友達の家でしかした事ない!」とはしゃぐ克也にモクバは寂しげに微笑み、それでも年上として気を使いながら楽しそうにゲームを進めていった。だがやがて、克也はお腹が満腹になったのと暖かい部屋の居心地の良さと、そして大いにはしゃいだお陰で疲れてしまったらしく、気が付いたらウトウトと船を漕ぐようになってしまった。
 海馬が自分の膝の上に抱き上げてやると、その胸に縋り付くようにして本格的に眠ってしまう。その眠りは深く、スゥスゥ…と規則正しい寝息を立てて起きる気配も無い。薄い背を掌で撫で擦ってやりながら、海馬はこの先どうしたものか…と頭を悩ませていた。
 このままこの家に居させてやっても良いと思う。けれど、あの日の城之内の言葉が海馬の中で燻っていた。

『その後、そこの家に居た子供と一緒にボードゲームやったりさ…本当に楽しかった。でも、腹が膨れたら急に眠くなっちゃって…次に起きた時には二十五日の朝で、オレは自分家のコタツで眠っていたんだ』

 次の日の朝、この克也が目覚めた場所は海馬邸では無く、自宅のコタツの中だった。それがどうにも海馬の中で引っ掛かってならない。

「ねぇ…兄サマ。その子どうするつもり?」

 目の前に座って心配そうに克也を見詰めているモクバが、小さな声で尋ねて来る。海馬は弟の顔を見詰めて、ふぅ…と小さく嘆息しながら言葉を放った。

「そうだな…。ここには置いておけないだろうな」
「なんで? このまま泊めてあげようよ」
「それは出来無い。多分…コイツは今夜中には『帰って』しまうだろうからな」
「え? 何でそんな事分かるの…?」
「当の城之内がそう言っていたしな。本人の記憶がそうならば、そういう事なのだろう…」

 きゅっ…と少し力を込めて小さな身体を抱き締めると、子供の克也がむずがって「ん…」と顔を顰める。だが次の瞬間にはもう安らかな顔に戻って、クゥクゥと寝息を立て始めた。
 行かなければならない…と海馬は本能で感じる。この子供が帰る場所へ向かわなければならない…と。
 意を決して海馬は克也を抱いたまま立ち上がり、モクバに視線を向けた。

「モクバ。今すぐ車を玄関前に用意するように連絡してくれ」
「えぇっ!? こんな時間からどこ行くの!?」
「この子が帰る場所へ…」
「………え?」
「城之内の家に行く」

 兄の真剣な色の目を見た弟は、すぐにそれがどういう事かを理解した。サッと立上がると「うん、分かった」と頷いて早速行動を開始する。
 聡い弟の迅速な行動を嬉しく思い、海馬は克也の身体を優しく抱き締めた。腕に掛かる子供の重さが、悲しい程に心地良かった。



 城之内が住んでいる団地までは、車で二~三十分程度で着く。団地の前でリムジンを駐めて貰い、海馬は眠ったままの克也を抱いて車を降りた。
 どんなに動かしても克也の眠りは深く、全く目覚めようとはしなかった。これが自然な眠りなのかそうで無いのかは、海馬には分からない。ただ、もう二度とこの小さな克也と言葉を交わす事は無いだろうという事だけは理解していた。
 重さでずり落ちる身体をきちんと抱き締め直して、海馬は城之内が住む部屋の窓を見上げる。その部屋には既に明かりが付いていた。その窓を見遣って、海馬は階段を上り始める。
 連絡は全くしていない。何となく…しなくても別に問題無いような気がしていたのだ。
 カツンカツンと階段を上がり、城之内の部屋の前まで行く。すると、目の前のドアがキィ…という金属音を立てて開かれた。そして部屋の中から、荒れた金髪がひょっこり現れる。

「城之内…?」
「待ってた」
「え?」
「そろそろ来る頃だろうと思って待ってた」

 にこりと微笑み、そして海馬の腕の中の子供をじっと見詰める。特に驚いた様子もなく、城之内は至極穏やかだった。

ジ、ジ、ジンギスカ~ン♪

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クリスマスが近付いて来て憂鬱な二礼です、こんばんは。

いや、別にクリスマスが嫌いと言う訳では無いのです…。
ただ、ごっそり入っている仕事のシフトにウンザリ☆ってだけですw
おまけに最近、言う事やる事全て支離滅裂で、結局どうしたいのか分からず此方はポカーンとするしかないという現象に見舞われて、ちょっとゲンナリしていたんですよね…。
まぁ、自分的にはあまり関係の無い事だから、どうでもいいんですけどw

せっかくのクリスマス…ゆっくり過ごしたかったなぁ~…と、ウダウダ言っていても始まらないので、お仕事頑張ります!!w

そういう訳で今年は、少し早めの忘年会を昨日済ませてしまいました。
毎年身内でやっている忘年会なのですが、今年は遠くに引っ越してしまった友人とかもいて、少し寂しい忘年会になってしまいました…。
仕事関係で引っ越して行ってしまったので仕方無いっちゃー仕方無いのですが、やっぱり寂しい物ですね。
でもまぁ、今の時代はネットがありますからねーw
ネット上でコミュニケーションを取るには、距離とか全く関係ありませんものね!
本当に便利な世の中になったと思います…w
昔だったら何かな?
やっぱ文通なのかな…?
何か昔、可愛いレターセットとか大量に買い込んだ事を思い出しました…w
でも、文通もいいよね!
手書きの文字は暖かいし!
………メールに慣れちゃうと面倒臭いけどwww

ちなみに忘年会メニューは、ジンギスカンでしたv
美味しかったで~す!(´¬`)
ラム肉はヘルシーで美味しいんですよ~!
癖も無いので、超オススメです!


短編に『聖なる夜の優しい奇跡』の前編をUPしました。
2010年のクリスマス企画小説でございます!
今年はゆっくり小説を書く時間が無いので、仕方が無いからSSでも…と思っていたのですが、時間が無いならさっさと書き始めればいいじゃない! って事に気付き、やってみた次第ですw

大人の海馬が子供の城之内君をあやす(逆もまた然り)という話は、前からずっとやってみたいと思っていたネタだったのですが、色んなサイトで見るネタなのでなかなか出しにくかったんですよね~。
でもせっかくなので、これを期に思い切ってやってみる事にしました!
ネタ被りは承知の上ですwww ごめんなさいwww

クリスマスイブに起きた、ちょっと不思議な物語をお楽しみ下さいませ~!(´∀`)

聖なる夜の優しい奇跡(前編)

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2010年クリスマス企画の小説です!
城之内×海馬で、クリスマスイブに起きた、ちょっと不思議で優しい奇跡のお話をどうぞ~!

 




 それは十一月の中旬の頃だった。
 この頃既に海馬コーポレーションはクリスマス商戦で忙しくなり始め、そろそろ自由な時間は取りにくくなってきたある日の夜。海馬は恋人である城之内と甘い一夜を過ごしていた。クリスマスが終わるまでは自分は忙しい身だし、城之内も城之内でバイトで全く時間が取れなくなる。それが分かっていたからこそ、この日は時間を掛けてゆっくりと愛し合った。

「なぁ、海馬。サンタクロースって信じるか?」

 それは情事が終わり、ベッドの中で他愛の無いお喋り…つまりピロートークを繰り広げている最中に、唐突に城之内の口から吐き出された。
 逞しい腕に抱かれ、優しく髪を梳かれながらウトウトしていた海馬は、その一言でパッと目が覚める。そして訝しげに城之内の顔を見詰めた。

「何だ? 突然…」
「あ、その顔。今オレの事を馬鹿にしただろ」
「いや、そういう訳では無いが…」

 考えてみればクリスマスも近いので、強ち場違いな話でも無いのだろう。先程までお互いに「クリスマスは忙しい」という話をしていたから、海馬はその続きだろうと思って黙って耳を傾ける事にした。

「実はオレ、ちょっと信じてるんだ」

 続けて放たれた言葉に、海馬は目をパチパチと瞬かせ首を傾げる。
 サンタクロースの存在を信じるなど、高校生が真面目に言う事では無い。ましてや、今時の子は小学生だってそんな馬鹿げた話はしないだろう。だが海馬は、その話を馬鹿にしたり呆れたりする事は無かった。城之内の暖かい体温に包まれながら、その胸の上に頭を乗せ黙って耳を傾ける。

「サンタクロースっていうか…サンタクロース的な物をっていう方が正しいかもな」
「どういう意味だ…それは」
「うん。実は小さい頃にな、一度だけ会った事があるんだよ。サンタクロースみたいな人に」

 胸に擦り寄る海馬の身体をキュッと抱き締め、城之内はどこか夢現な表情で言葉を続けた。

「お袋が静香を連れて出て行ってから一年ちょっとって時だったかな。親父は酒飲んで荒れに荒れまくってて、ウチじゃクリスマスも正月も誕生日も全く関係無い生活をしていた。その年のクリスマスも親父は朝から酒飲んでて、ついに夜中に大暴れ。オレは理不尽な事で怒られて殴られて蹴られて…堪らなくなって家を飛び出した。玄関から転がるように逃げ出して走って走って走りまくって…。暫くしてジャンパーを着てくるのを忘れた事を思い出したけど、もうあの家に戻る気は全く無かったんだ」

 城之内の話を聞いている海馬がモゾリと身体を動かして、恋人の身体を抱き締める。その動きに城之内はクスリと微笑み、海馬の身体を強く抱き寄せて再び口を開いた。

「寒いけどジャンパーは無いし、お金も持ってないから何も買えないし、仕方無く繁華街の入り口にある公園に行って時間潰しする事にした。寒いし腹減ったし、ブランコに乗ってどうすっかなーって考えてたら、その人が目の前に現れた」
「その人…?」
「うん。オレのサンタクロース」

 海馬の質問に城之内は笑顔で答え、当時の事を懐かしむように目を閉じた。

「その人はオレの側に近寄って来て、こんなところで何をしているんだって尋ねて来た。当時のオレは、大人がそういう風に尋ねて来るのが苦手だったんだ。だって親父の事を話すとみんな『可哀想に』って同情だけはするけど、結局その後は何もしてくれないからな。こんな事、他人に言っても無駄なんだって気がしてたんだ」
「………」
「だけどその人は何か違った。寒さと空腹でどうでも良くなっていたのかもしれないけど、オレはその人に素直に親父の事を話す事が出来たんだ。そうしたらその人はただ一言『そうか』とだけ言って、少し困ったように微笑んだ。何かその反応が嬉しかったんだ」

 城之内は再び瞳を開き、どこか遠くを見るように目を細めた。その顔が何だか儚くて、海馬は城之内から目を離せなくなってしまう。じっと凝視する海馬に城之内は優しく微笑みかけ、言葉を続けていった。

「それが本当にあった事だったのかどうかは分からない。もしかしたらタダの夢だったのかもしれない。だけどオレにとってその人は、確かにいたんだよ」
「よく覚えていない…という事か?」
「そうだな。よく覚えていないんだ。だけどまだ覚えている事も一杯ある。その人は…オレの手を握って『冷たい手だな』と、悲しそうに言った。そしてオレの手を引いて車に乗せて、自分の家に連れて行ってくれたんだ」
「誘拐か?」
「違うっつーの! 何か金持ちの兄ちゃんだったんだよ。今のお前と同じくらいの年齢で、屋敷も…ここと似たような感じだったかな。凄くデカイ家だった事を覚えている」
「ほう…」
「そこで暖かいココア飲ませて貰ったり、美味しいご馳走食べさせて貰ったりしたんだ。今日はクリスマスイブだからってデッカイチキンのグリルとか、大きなクリスマスケーキとかも食わせて貰った。オレ、あんなに美味しいご馳走を食べたのは生まれて初めてだったから、本当に嬉しかったんだ」
「そうか」
「その後、そこの家に居た子供と一緒にボードゲームやったりしてさ…本当に楽しかった。でも、腹が膨れたら急に眠くなっちゃって…次に起きた時には二十五日の朝で、オレは自分家のコタツで眠っていたんだ」
「それは…」

 城之内の言葉に海馬が何かを言いかけようとすると、城之内は少し寂しそうな瞳で海馬を見据えてコクリと頷いた。まるで海馬の言いたい事が全て分かっているとでも言うように。

「そう…。そういう目覚め方をすると、やっぱ夢オチっぽいだろ? だからオレ自身も、夢か現か分からなくなっているんだよ。寂しいクリスマスを過ごす子供が、楽しいクリスマスを思い描いて見た夢に過ぎなかったのかもしれないってな。ハッキリと覚えている癖に、痕跡が何も残っていなかったんだ」
「城之内…」
「幸いその日は親父がいなくて、オレはずっとコタツの中で昨日の出来事をなぞっていた。何度思い返してみても、その人は確かに存在していて…。でもそれを証明する物が何一つ無い。だからオレはあの日、アレはサンタクロースだったんじゃないかな…と思うようになったんだ」
「それでサンタクロースか」
「うん。サンタクロースが若い兄ちゃんに姿を変えて、一晩だけ幸せなクリスマスイブをオレにプレゼントしてくれたのかもってな。そう考えると妙に納得出来て、オレはもうそれでいいと思った」
「………」
「今になって考えてみると、その人はただの気の良い金持ちの兄ちゃんってだけだったのかもしれない。でもその兄ちゃんがただの人間でもオレは構わない。オレに取ってはその人は確かにサンタクロースで、オレに幸せなイブをプレゼントしてくれたってのは間違い無いんだからさ」
「なるほど…な」
「だからオレは、サンタクロースをちょっと信じているんだ」

 そう言って城之内は海馬の顔を優しく見詰め、白い頬を指先でサラリと撫でた。愛しそうに目を細め、そして最後にこう言ったのだった。

「そう言えば…あの時の兄ちゃん、お前に良く似ていたかもしれない」



 そんな話を聞いていたからだろうか…。海馬は先程から何か胸騒ぎがしてならなかった。
 十二月二十四日。海馬コーポレーションの社長として完璧にクリスマス商戦の準備を行なった海馬は、イブからクリスマス当日に掛けては逆に時間を作る事に成功した。準備をしておくのは社長の努めだが、当日の戦争に参加するのは部下の努めだと熱弁され、社長である海馬と、副社長である弟のモクバは早々に屋敷に帰らせられる事になってしまったのである。
 とは言っても他にやるべき事も沢山あったので、海馬は先にモクバを帰らせ、そして自分は夜の九時過ぎに漸く会社を出る事になった。これでも例年のクリスマス時に比べれば、ずっと早い帰宅である。
 恋人である城之内は残念ながらバイト中で、今日は会う事が出来無い。ただ明日の夕方には時間が出来るという事で、若干遅いクリスマスパーティーを城之内宅で二人でやる約束になっていた。
 今夜はモクバと二人で、海馬邸でクリスマスを祝う事になっている。こんな風にゆっくりと、弟とクリスマスを祝うのも久しぶりだな…と海馬は至極幸せな気分でいた。
 だが、海馬を乗せたリムジンが繁華街に入った辺りで、その幸せな気持ちとは別の何か妙な胸騒ぎを感じてならなかったのだ。必死で自分に「気の所為だ」と言い聞かせても、胸のざわめきが止まらない。リムジンが道を進めば進む程胸の動悸が速くなり、いざ繁華街を抜けようとした時に、ついに海馬は我慢が出来無くなった。

「済まん。ちょっと車を駐めてくれ」

 社長の命令に車は緩やかに道路脇に停車し、気分が悪くなったのかと心配する運転手を宥めて、海馬はリムジンから外に出た。
 行く宛ては無い。というか、この辺りの地理には全く詳しく無いし、特に用事も無い筈だ。だが海馬の視線はとあるところを注視して、そこから外す事が出来無くなっていた。

「公…園…」

 繁華街の外れにある小さな公園。そこから聞こえる、キィ…キィ…という誰かがブランコを揺らす金属音。まるでその音に誘われるかのように、海馬の足はそちらに向いた。そして公園の入り口から中を覗くと、ポツンと光る街灯の下に、その少年がいるのを確認してしまう。
 ボサボサの髪、薄汚れたトレーナーに半ズボン。膝小僧には大きなガーゼが当てられていて、それが医療用テープで留められている。街灯の光に照らされる顔は、幼い顔に似合わずあちこちに大きな傷がある。唇の脇には絆創膏が貼られ、頬は赤く腫れ上がり、逆に目の上は青紫色の痣になっていた。
 そして俯いたまま寂しそうにブランコを漕ぐその子供がふと顔を上げた時、海馬は驚きに目を瞠った。

「城之…内…っ!」

 見慣れた琥珀色の瞳が、その小さな少年が恋人であるという事を物語っている。
 海馬の脳裏に、あの日の城之内の話が甦って来た。いや、まさか、そんな非ィ科学的な事は有り得ない! と自分の中で否定しようとするが、目の前の事実は揺らぐ事無く存在している。
 その事を確認して、海馬は深く嘆息して諦めた。理性ではどう否定しようと、心がそれを肯定しているのだ。もはやどんなに抗っても無駄であろう。
 仕方が無いな…ともう一度深く深呼吸をして、海馬はその少年に近付いて行った。
 ジャリジャリと公園の砂を踏んで、ブランコの側まで歩いて行く。海馬の気配に気付いた少年が顔を上げるのと同時に、海馬は優しく微笑んで声を掛けた。

「こんなところで何をしているのだ?」

 なるべく怖がらせないように声を掛けると、子供はパチパチと何度か瞬きをして、まるで相手を見定めるようにじっと海馬の顔を凝視する。それに何も言わずにただ微笑んで立っていると、子供は少し安心したようにふぅ…と小さな溜息を吐いた。

「父さん…に…怒られて…」
「お父さんに?」

 そう聞き返すと、子供はコクリと頷いて答える。

「酒飲んで暴れるんだ。だからオレ…怖くて逃げ出してきた」
「…そうか」

 ボソボソと、赤くなった頬を小さな掌で押さえながらそう言う少年に、海馬はただそれだけしか言えなかった。そして海馬は少年の側に膝を付き、目線を合わせてからその小さな手をそっと自らの掌で包み込む。その手は本当に酷く冷たく、まるで氷のようだと海馬は思った。
 海馬は、普段の城之内の手がとても温かい事を知っている。特に情事の時に触れられている時なんて、その手はまるで火を灯しているかのように熱いのだ。その事を告げると城之内はいつも嬉しそうに「あ、やっぱり熱い? オレ子供の時から体温高いんだよ」と言って、ケラケラ笑うのだった。
 大人になった城之内の手がそれだけ熱いのなら、小さい子供の手なら尚更だろう。子供特有の体温が酷く熱い事を、海馬は弟のモクバの事からもよく知っている。
 けれどこの少年の手の温度は、それとは全く逆だった。凍り付きそうな程に冷たくなっている手を、何とか温めようとギュッと握り込む。

「冷たい手だな」

 そう言うと、目の前の少年がハッと顔を上げる。海馬の反応に少し驚いているようだった。

「あ…うん。ジャンパー忘れちゃったから、ちょっと寒くて…」
「そうだな。この季節にその格好だと寒いだろう」

 良く見ると、子供は寒さでカタカタと震えている。海馬は自分が着ていた上着を脱いで、そっと少年の肩に掛けてやった。そしてボサボサの頭を撫でようとそっと手を上げた時だった。それまで大人しくしていた子供が突然ビクリと反応し、肩を竦めて自分の頭を庇うように身を縮めたのだ。
 その反応に驚いて目を瞠ると、少年はガタガタと震えながら泣きそうな声を出した。

「ご、ごめんなさい…! 謝るから…ぶたないで…っ!!」

 小さな子供の予想外の反応に、海馬は胸が締め付けられそうになる。
 城之内がそういう子供時代を過ごしていた事は、海馬も良く知っている。お互いの異常な幼少期を、何度かそういう風に真面目に話し合った事があるからだ。だが、大人になった城之内が話すのはあくまで過去の話であって、今現在の問題では無い筈だった。
 それなのに、今まさにそれが海馬の目の前にある。その事実に胸が苦しくなった。

「大丈夫だ…。オレは何もしない」

 怖がらせないようにゆっくりと手を伸ばし、震える頭を何度も撫でる。ボサボサの髪の毛に触れるとヒヤリと芯まで冷えていて、その事にズキリと胸が痛んだ。

「こんなところにいたら寒いだろう…。今日はクリスマスイブだ。オレと一緒にクリスマスを祝わないか? ん?」

 抱き寄せて、震えが止まるまで優しく頭や背中を撫でる。小さな子供に似つかわしくないツンとした消毒液の匂いが、余計に哀れだと海馬は思った。
 それからどれくらい時間が経ったであろうか。寒さと恐怖でガタガタ震えていた子供が大人しくなり、海馬の腕の中で顔を上げてふと…小さな声で呟いた。

「お兄ちゃんと…一緒に…?」
「そうだ」

 子供の問い掛けに頷いて即答すると、途端にその子の顔がパーッと明るくなる。嬉しそうに笑いながら「うん!」とハッキリとした声で頷き、キラキラと琥珀色の瞳を輝かせた。その明るい笑顔に漸く安心して、海馬はその子の手を引いて歩き出す。子供は何も抵抗する事無く、素直に海馬と共に歩き出した。
 公園を出て、道路脇に駐まっているリムジンを目指す。海馬の姿を確認した運転手がドアを開け、海馬は子供と共に車に乗り込んだ。主人が小さな子供を連れて帰って来た事に運転手は何も言わず、ただ「では、出発します」と一声を掛けアクセルを踏む。リムジンは至極滑らかに走り出した。
 車窓から流れる景色を物珍しそうに眺めている子供を、海馬はただ微笑ましく見守っていた。その視線に気付いた子供が振り返り「何?」と言うのにクスッと微笑んで、海馬は言葉を放つ。

「名前は?」
「克也! 城之内克也!」

 大きな声で明るく答えられた名前に、海馬は「やはりな…」と瞠目したのであった。

ヒートテック解禁!

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寒さにガクブルな二礼です、こんばんは。

うわ~。何だか一気に寒くなってきちゃいましたね…。
これまでアンダーシャツは何とかタンクトップで頑張って来ましたけれど、長袖のヒートテック解禁ですw
つかもう無理! 若く無いんだし、無理禁物!!
ババシャツ馬鹿にすんなよ!!
暖かくて重宝するんだZE!!
………と言い訳しつつ、ババシャツを着込む二礼でした…w

しかしまぁ…若い子は元気だよね。
あんなミニスカート履いて素足丸出しで、よく我慢出来るな…と思いますよ。
ていうか、スカート短過ぎてパンツ見えてる子もいるけどね!!
どう考えても見せパンじゃなくて、普通のパンツな罠…。
どうせならもっと可愛いパンツならいいのに!(そういう話か…?w)


長編『Lesson』『番外編:I want you』の後編をUPしました。
久しぶりのエロエロだぁ~い!!ヽ(*´д`*)ノ
気合い入れて書いたら二日がかりになった上に、予定の容量を大幅にオーバーした罠…;
コレは酷い…www
でも書いている間は本当に楽しかったので、全く後悔はしておりませんw

ちなみにこのエロ話、私が一番書きたかったのは海馬のフェラーリです!
言い訳はしません!!
フェラーリが書きたかっただけです!!www

フェラーリってさ、完全受け身だと出来無いよね?
それなりに受けの方もやる気が無いと出来無いと思うんだ。
だからそれを想像すると、物凄く萌えるのですが…どうでしょう?
私だけかなぁ~?w

何はともあれ、無事にエロを書ききったので安心しておりますw
でもなぁ…クリスマスがあるんだよなぁ~。
マジでどうすんべ…(´_ゝ`;

番外編:I want you(後編)

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 ベッドの上で城之内に躙り寄って、オレは彼が着ていた服を全て脱がせてしまった。目の前に現れた逞しい胸板や腹筋にゴクリと生唾を飲み、その肌へ指先を触れさせていく。ぺたりと掌を熱い肌に合わせると、城之内がブルリと身体を震わせて苦笑した。

「どうした?」
「ふふっ…。お前の手…冷てぇよ…」

 返って来た答えに、なるほど…と思う。今オレの掌から伝わってくる城之内の体温は熱く感じる程だ。対してオレは普段から体温が低い。冷たい指先で暖かい身体に触れてしまったので、城之内もそれに反応してしまったのだろう。
 だがこればっかりはどうにもならない。手はすぐには暖かくならないだろうし、ここは城之内に我慢して貰う他無いのだ。

「済まん。ちょっと…我慢してくれ」

 そう言うと、城之内は眉根を寄せながらもコクリと頷いてくれた。その答えに安心して、オレは行為を続ける事にする。
 裸の身体を擦り寄せて、一度ピッタリと身体を合わせる。オレと違って太くしっかりとした首筋に唇を押し付けながら、掌をそろそろと下に降ろしていった。指先に触れた胸の飾りを擽って、キュッ…と摘んでみる。その途端、城之内がビクリと反応してクスクスと笑い出した。

「城之内…?」
「ゴメン。ちょっとくすぐったくて…」

 クックッ…と笑いながらくすぐったそうに身を捩る城之内を見て、オレはそう言えば…と思い出した。
 慣れていないと、男がここで感じるのは難しいと聞いた事がある。オレも幼少期はくすぐったいばかりで快感なんて全く感じられなかった事を思い出したが、いつの間にかそこへの快感に慣れてしまっていたので、その事をすっかり忘れてしまっていたのだ。
 指先がくすぐったいのなら仕方が無いと、オレは頭を下げて城之内の胸元にキスを落とした。そしてそのまま少し硬くなった乳首に吸い付く。薄い皮膚をペロリと舐め上げて、纏わり付いた唾液ごとチュッ…と吸い上げた。

「っ………」

 すると頭上から息を呑み込む音が聞こえ、城之内の身体がビクッと揺れる。今度はちゃんと感じてくれたらしい。調子に乗って逆側の乳首にも吸い付きつつ、先程までしゃぶっていたオレの唾液塗れの乳首を指先で転がした。先程はくすぐったがって笑っていた城之内も、今度は笑ったりしない。それどころか、息を詰めて快感を我慢している様が伝わってくる。
 チュピッ…と音を立てて乳首から口を離し、オレは城之内の顔を見上げた。

「気持ちいいか…?」

 そう尋ねれば、城之内は相変わらず眉根を寄せた表情のままコクリと頷いてみせた。

「うん。何か胸とか腰がジンジンする。気持ちいいよ…」
「本当か?」
「本当だよ。下…反応してるだろ?」

 城之内の言葉に視線を下方にずらせば、そこには硬く勃起している城之内のペニスがあった。迷わずそれに指を絡めれば、「くっ…」とまた城之内が息を詰めて身体を強ばらせる。

「いきなり握るなよ…」
「済まん…」

 謝りながらも、それから手は離さない。それどころか、オレはそれを握ったまま手を上下に動かしていた。先端から溢れて来た先走りの液が指に絡まって、すぐにニチャニチャとした粘ついた水音がそこから響いてくる。その音に誘われるようにオレは頭を下げ、握っていたそれに唇を近付けた。

「か…海馬!?」

 焦ったような城之内の声が頭上から聞こえたが、オレはそれを無視してペニスの先端に口付ける。チュッ…チュッ…と何度も軽いキスを繰り返していると、城之内の指先がまるで擽るようにオレの頬を撫でている事に気付いた。チラリと見上げると、熱に浮かれた琥珀色の瞳と視線が合う。城之内の明るい色の瞳は、今は快楽と欲望にゆらゆらと揺らめいていた。

「して…くれるの…?」

 発せられた声も、熱を持っているのが分かる。はぁー…という熱い吐息と共に吐き出されたその言葉に、オレはコクリと頷いてみせた。

「オレもお前を愛したいと…そう言っただろう?」
「うん…」
「これをする事によって…お前に引かれるかもしれないが、それでもオレはしたいと思っている」
「引いたりしないよ。お前がそう言うなら…好きにすればいいさ」
「あぁ」
「でも絶対無理だけはしないで。駄目だと思ったらすぐに止めていいんだからな?」
「分かっている。大丈夫だ」

 そう言ってオレは、大きく口を開いて熱い肉の塊を口内に招き入れた。

「ゆっくりでいいから…。焦らないで」

 心配そうな城之内の声が聞こえたけれど、オレは敢えてそれには反応せずに、熱いペニスに舌を絡ませる。だが、もう既に硬く勃起しているそれは、オレの口の中だけには収められない。仕方無く一度口を離して、根本から丁寧に舐め始めた。先端から留めようもなく溢れ流れ落ちてくる粘液を舌で舐め取り、少しずつ上に向かって移動していく。太い血管の上に舌を乗せると、舌先で城之内の血流が力強く脈打っているのが分かって嬉しくなった。たまに横向きに咥えてみたり、唇だけで皮を引っ張ってみたりもする。その間も指先を腿の内側に這わせて、大きな睾丸をコロコロと愛撫し続けていた。

「っ…うっ………!」

 頭上から、城之内が必死に快感を我慢している呻き声が漏れ出して来る。その声を聞きながらオレは丁寧に城之内のペニスに舌を這わせていき、やがて上部に辿り着いて、泉のように先走りの液を溢れさせる先端に舌先をグリッと抉り込ませた。

「ふっ…! 海…馬…っ!!」

 途端に城之内の口から喘ぎが漏れる。その声が嬉しくて嬉しくて堪らなくて…オレはどんどん調子に乗っていった。
 先端を綺麗に舐め取り、もう一度深くペニスを銜え込む。大きくて口の中が一杯になっても焦らずに、喉を開いてなるべく奥の方まで飲み込んだ。そのままペニスに舌を当てながら喉を動かすと、城之内の指がオレの頭に触れてくしゃりと髪の毛が握り締められる。その手が震えているのが頭皮から直に感じられて、その事でオレも興奮してくるのを実感した。
 あの頃、あの性的虐待を受けていた幼い日々…。汚い大人達に強制させられるこの行為が、死ぬ程嫌いだった。「いやらしい子だ」「淫乱だ」と揶揄される度に、自分の人格まで否定された気になってどうしようも無く泣きたくなった。
 違う! そうではない! 自分は淫乱なんかじゃない! …と、全身でそれを拒絶していたというのに、時が経つにつれて自分の身体はどんどん快感に慣れていき、本当はこんな事はしたくないというのに身体は正直に反応していった。

 だからこそ…オレは自分自身に幻滅したのだ。口では何と言おうとも、身体が反応している事は自分が一番良く分かっていたから。

 あの頃…誰に行為を強要されようとも、オレの耳には様々ないやらしい揶揄が飛び交っていた。相手はほぼ単体だったが、オレの耳には同時に複数の大人の声が聞こえていたのだ。

『何て淫乱な子なんだ』
『本当にお前はやらしい子だね』
『口では拒否しようとも、身体は正直だぞ』
『本当は感じている癖に』
『ほら…気持ち良いのだろう?』
『こんな物をお口に銜えてよがるなんて…将来有望だな』

 冷ややかな笑い声と共にオレに吹き込まれる汚い声…声…声。それが嫌で嫌で堪らなくて、やがてオレは感じる事を止めてしまった。この行為には…そう言った嫌な思い出がずっと付きものだった筈だった。

 それなのに、これは一体どういう事なのだろう。

 あの頃必ずと言っていい程聞こえていたあの汚い声が、今は一つも聞こえ無い。それどころかオレは、自分がこの行為をしているという事に酷く興奮し、身体を熱くしている。
 咥えている物は、他と対して変わらない筈だ。熱い肉の感触も、生臭い匂いも、全てはあの頃無理矢理口に突っ込まれたペニスと全く一緒の筈…。けれどそれが城之内のペニスだというだけで、どうしてこんなに興奮してしまうのだろう。嫌だなんて全く思えない。むしろもっと沢山したいくらいだ。

「んっ…んんっ…! ふっ…ぅ…」

 我慢が出来無い。自分の身体には全く触れられていない。むしろ今はオレが触る側であり、ただ相手のペニスをしゃぶっているだけだ。それなのにオレの身体は間違い無く、快感を感じていた。
 心臓はドクドクと高鳴り、身体は熱くなり、いつも城之内を受け入れている場所が疼き始める。今日は一度も触られていないというのに、自分のソコがヒクヒクと蠢きだしたのがハッキリと感じられた。
 足りない…。もっと感じたい。感じさせて欲しい。早く自分のそこに熱いコレを挿れて欲しい、コレに埋め尽くされたいと…そう願わずにはいられなかった。

「はっ…ふぅ…! んぐっ…んんっ!」

 頭に血が昇って、顔がカーッと熱くなっていくのが分かる。それでもオレは、その行為を止めようとは思わなかった。必死に城之内のペニスを舐めしゃぶりながら、いつの間にかオレも鼻に掛かった甘い喘ぎ声を出している。それが酷く恥ずかしかったけれど、声を我慢する事は出来無かった。

「ぁ…っ! 海馬…っ!」

 サラリと頭を撫でられ、そしてまた髪を強く掴まれる。城之内がオレの愛撫で感じてくれている事が、何より嬉しく感じられた。
 オレが顔を動かす度にグチュグチュと響く水音に、ドクドクと心臓が高鳴って興奮する。早くコレをイカせてあげたくて堪らない。この後吐き出されるであろう精液を飲みたいだなんて…そんな事、生まれて初めて思った。

「海馬…もうっ…!」

 城之内が限界を訴える。だがオレは口を離す事無く、ますます深くペニスを飲み込んでいった。

「もう出るから…口…離して…っ」

 必死さを増してきたその声に、オレは瞳を開けて上目遣いで城之内を見詰めた。そして視線だけで拒否の意志を告げる。顔を真っ赤にした城之内が大きく目を見開くのを確認して、オレは再び視線を閉じ、行為に没頭した。そして城之内がイキやすいように根本や睾丸を指で弄りつつ、銜え込んだペニスにほんの少しだけ歯を当てる。

「あっ…くっ…!!」

 その途端、それはオレの口の中で大きく弾けた。
 口内に流れて来た生温い精液を、オレはそのまま喉の奥に流して飲み込んでしまう。それが決して美味しく無い物だという事は知っているし、舌の上に載せて味わってしまえば余計に飲み込み辛くなってしまうからだ。
 コクリコクリと喉を鳴らして城之内が放った精液を飲み込み、そのまま口に銜えていたペニスの先端を強く吸い上げた。尿道に残っていた精液も残さず飲んで、そこでオレは漸く城之内のペニスから口を離す。てろりと粘ついた唾液が、オレの口と城之内のペニスの先端を繋いでいた。その様が如何にもいやらしくて、また興奮が増して来るのを感じる。

「はっ…あ…。城之…内…」

 ハァハァと荒い呼吸をしながら城之内の名を呼べば、オレの事をじっと見詰めていた城之内の顔がますます赤くなっていった。そして困った顔をしながら、オレの顔に手を伸ばしてくる。熱い掌で頬を包み、そのまま親指の腹でグイッと唇の端を拭われた。

「………?」
「…付いてた」
「………何が…?」
「オレの。その…出した奴が…」
「………あぁ」

 どうやら全てちゃんと飲み込んだつもりでいて、ほんの少しだけ零してしまっていたらしい。この行為自体が久しぶりだった為、上手く出来無かったらしい。まぁ…仕方無いかと思いながらペロリと舌で唇の端を舐めたら、それを見ていた城之内がますます困った顔をしていた。
 その顔を見て、流石にしまったと思った。
 こういう行為に慣れているという話はしていたが、いきなりここまでの事をしてしまうのはやり過ぎだったのかもしれない。やはり引かれてしまったのかと心配になる。

「じ、城之内…。その…これは…」
「………」
「す…済まん…。やはり…引いてしまった…か…?」
「………」

 手の甲で濡れた唇をゴシゴシと拭いながら謝罪しても、城之内は何の言葉も返さない。ただ赤い顔でオレの事をじっと見詰めているだけだ。
 流石に少し気不味くなってきたな…と思った時、それまで黙っていた城之内が口を開いた。

「お前…凄ぇよ…」
「………城之内…? 何…が…っんん!!」

 何の事を凄いと言われているのか分からなくて首を傾げれば、突然強く腕を引かれて城之内の胸に飛び込んでしまった。そしてそのまま顎を掴まれて、唇を奪われる。熱い舌が無理矢理入って来て、口内を縦横無尽に蹂躙された。

「ふっ…! んぐっ…! んっ…ん…ん!」

 舌を吸われて甘噛みされて、歯列を辿られ唾液を流し込まれた。それをコクリと飲み込みながら、久しぶりの乱暴なまでに激しいキスに酔う。無我夢中で自分も積極的に舌を絡ませていると、突然下半身に痛みと快感の両方が走って、その衝撃にブルリと身を震わせた。

「んっ…!? ん…ぅ…!!」

 視線を下方にずらして見れば、城之内の熱を持った掌がオレのペニスを握り締めている。いつもより強く握られている為に多少痛みを感じるが、それでも快感の方が何倍も上回っていた。
 城之内はオレのペニスを握り締めたまま、その手を上下に動かしている。

「ほんと…凄ぇよ…海馬。ここなんてもう…こんなにトロトロになってるじゃねぇか…」
「ぅ…はぁっ…!」

 城之内の声が震えている。この震えが性的興奮に寄るものだなんて事は、オレが一番よく知っている事だった。

「気持ちいい? オレの咥えて、そんなに興奮しちゃったの?」
「んっ…! はっ…ぅ…。あっ…!」
「オレの…美味しかった?」
「あっ…んぁっ。ぁ…美味し…かっ…た…」
「そっか。美味しかったのか。今日はまだ、どこにも全然触って無い癖に、ここをこんなにしちゃうくらい美味しかったんだな」

 城之内の声が熱を持っているのが分かる。その声に浮かされたように、オレはただ必死にコクコクと頷いて答えていた。
 気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい。城之内に触れられる全ての事が気持ちが良くて、気が狂ってしまいそうだ。

「触って…くれ…もっと…」

 頭がボーっとなって何も考えられない。ただ今自分に出来るのは、欲望に忠実になる事だけだ。
 オレは自らの欲望に素直に従い、城之内の前で足を立て、ゆっくりと大きく左右に開いていった。普段はそこを見られるだけで恥ずかしくて堪らない場所が、城之内の目の前に晒されていく。今だって勿論恥ずかしいと思っている。だがそれ以上に…城之内にじっくり見られているという興奮の方が大きかった。

「奥…触って…」

 そう言って足を更に広げると、城之内がゴクリと喉を鳴らした。そしてゆるりと伸びてきた指が、そのまま体内に埋め込まれる。

「あっ…あっあっ!」

 城之内の節くれ立った指が、一気に三本入って来た。そんな事をされれば痛みを感じる筈なのだが、今のオレはそんな物を全く感じる事無く城之内の指を受け入れてしまう。むしろ三本しか無い指が物足りなく感じたくらいだった。

「すっげぇ…。ここもグズグズだ」

 驚いた様な声を出して、城之内が真剣な顔をしてオレの後孔を覗き込んでいた。特に何もしていない筈なのに、オレのソコはまるで女のように受け入れる体勢を整えてしまったのだ。
 とは言っても、流石に男の身体では潤滑液が足りない。城之内はその後、何度もローションを足しながらオレの中を慣らしていった。ただ、いつもよりずっとその時間は短かったが…。
 どれくらい時間が経ったのだろうか。オレの体内を慣らしていた指がチュプリ…という濡れた音と共に抜かれて、オレは余りの快感に脱力してベッドに沈み込んだ。息が整えられなくて苦しくて、ハァハァと大きく呼吸をしながら酸素を取り込もうとする。
 ふと…ベッドの横を見ると、城之内がサイドボードの引き出しから何か小さな物を取り出すのが目に入ってきた。薄いフィルムに包まれたそれは、考えなくても分かる代物で…。つまりは…そう、コンドームだ。
 オレはそれを確認すると、慌てて起き上がって城之内の腕を強く掴んだ。袋を破ろうとしていた城之内が、ギョっとした顔で振り返る。

「か、海馬!?」

 慌てたようにオレの名を呼ぶ城之内を、キッと睨み付ける。

「それは…いらない」
「………え?」
「それはいらないと言っている!!」

 そう言ってオレは城之内が手に持っていたそれを掴んで、ベッド下のゴミ箱に投げ入れてしまった。

「あーっ! お前…何するんだよ!! オレだってお前に挿れたいの! これ必要だろうが!」
「分かっている! オレだってお前に挿れて欲しい!」
「だったら…」
「でも、これはいらないのだ! 必要無い!」
「いらないって…。お前、何言ってるんだよ。これ無いと、お前腹壊すじゃんよ」
「ちゃんと処理をすれば大丈夫だ」
「最後までしたら、疲れてすぐ寝ちゃう癖に。はっきり言ってそんな余裕無いだろ?」
「っ………」
「後で苦しいのはお前なんだから、ちゃんとこれは付けようぜ?」

 な? とまるで子供に言い聞かせるように城之内は笑顔で言い、ゴミ箱の中に落ちたコンドームを拾い上げようとした。だがオレはその手をもう一度強く掴んで邪魔をする。

「海馬…お前なぁ…」
「嫌だ」
「嫌だって…お前…」
「嫌なんだ。もう…これを付けてセックスをするのは…嫌だ」
「だけど…海馬…」
「腹を壊してもいいのだ。そんな事で後悔はしない。むしろそんなゴム一枚で、お前の熱が遮断される方が嫌だ」
「ね、熱って…何言ってんのお前…!?」
「熱が欲しいのだ。城之内…お前の熱が欲しい。お前の熱さを直に感じたいのだ。頼む…そのまま挿れてくれ…」
「か、海馬…っ?」
「オレは…お前が…欲しいのだ…! 城之内…っ!!」

 真剣な声でそう訴えかければ、城之内は暫くオレの顔を凝視した後ふぅー…と大きな溜息を吐いた。そして困ったように、ガシガシと後頭部を掻いて項垂れる。
 そんな城之内の態度に、オレはまた不安になってきてしまった。
 幻滅されただろうか…? 今度こそ本当に、幻滅されてしまったのだろうか? もしそうだとしたら…オレは一体どうすればよいのだろう?
 コンドームを付けてセックスする事を許容すれば良いのだろうか? 確かにそれは、城之内がオレを労ってしてくれる事だ。受ける側のオレがそれを拒むのは、やはり少し…おかしいのだろう。けれどどんなに優しくされても、オレはもう嫌だったのだ。

 城之内の熱を感じたい…。ただそれだけなのに。

 どうせなら全て言ってしまおうと、オレは思いきって言葉を放つ事にした。

「実は…バックの体勢も…もう嫌なのだ。確かに楽だが、お前の顔が見えない。抱き合っている感じがしない。ちゃんと正面からお前と抱き合いたいのだ」
「………」
「抱き合って…熱を感じて…セックスがしたい。どんなに体勢が辛くても、痛みを感じても、苦しくても…構わない。オレはお前と、そういうセックスがしたい」
「………」
「駄目…だろうか?」
「めな…訳…だろうが…」
「城之内…?」
「駄目な訳…無いだろうが!」

 突然大きな声を出して、城之内はオレの腕を強く掴んできた。ハッとして思わず見上げた顔は真っ赤になっていて、情欲で潤んだ瞳が印象的だった。城之内は今、間違い無くオレに欲情している。それなのにオレの事を見詰める琥珀の瞳は、どこまでも真摯だった。
 その真剣な表情に何も言う事が出来ずにじっと見詰め返せば、城之内はクシャリと顔を歪め、そして掴んでいた腕を引き寄せてオレの身体を強く抱き締めて来た。裸の胸が重なって、ドクン…ドクン…という強い心音が伝わってくる。

「城之…内…っ」
「駄目な訳ないだろ…。この…馬鹿!」

 まるで泣く寸前のように声を震わせて、城之内は強く強く…オレを抱き締める。

「本当は…ずっとそう思ってた。もっと激しくお前とセックスしたいと…。無茶苦茶に抱き締めあって、お互いの全てを奪い合うような激しいセックスをしたいと…そう思っていた」
「………」
「だけどそんな事をしたらお前が元に戻っちまいそうで…。せっかく普通に感じるようになったってのに、また元に戻ってしまうかも…なんて考えたら、怖くて仕方が無かった。こんなにお前の事を愛しているオレ自身がお前の事を壊してしまわないか、毎回不安で堪らなかったんだ…」
「城之内…」
「自分の気持ちを抑えて、お前が感じてくれるだけで充分だと言い聞かせて。最後までセックス出来るようになったってのに、一体何が不満なんだと…ずっとそう思い込もうとしていた。そうやって乱暴な気持ちが湧き上がってくるのを、押さえ込んでいたんだ」
「城之内…お前…」
「体勢の事だって、本当はバックより正常位の方が好きなんだよ。でもよがってるお前の顔見てたら、我慢出来無くてがっついちゃいそうで…怖かったんだ。その事でお前がまたトラウマを起こしたりしたら、目も当てられねーじゃねぇか…」
「城…之…内…っ!」
「オレはお前が好きなんだ…愛しているんだよ! お前にとって辛かったり苦しかったり…無理だと思う事は何一つやりたくないんだ! でもオレは、本当はそれを求めていて…。もうどうしたら良いのか分からなくて…っ」

 ぎゅうぎゅうと抱き締めながらオレにそう告白する城之内を、オレは心から愛しく思った。
 この男はこうまでして自分を戒めながら、オレの事を一番に想って愛してくれていたんだ。今までも…そしてこれからも、オレの為に全ての我慢をするつもりだったんだ。その決意がしっかりと伝わって来て、オレは思わず泣きそうになってしまった。
 滲んでくる涙を城之内の首筋に擦りつけて、オレも自分から城之内の身体を強く抱き締める。この大馬鹿で愚かで、そして誰よりも愛しい男を手に入れる為に…。

「馬鹿だな…城之内」
「海馬…」
「お前の気持ちや優しさは嬉しい…。それは本当だ…。だがな、物には限度という物があるのだぞ?」
「………?」

 オレは泣きながら微笑んで、城之内の手を掴んだ。そしてそれを自らの下半身に誘導させて、ひくつく後孔に触れさせる。

「っ………!!」
「ほら、こんなになっているだろう…?」
「か、海馬…!?」
「ここがこんなになるほど、オレはお前の事が欲しいんだ…」
「………」
「挿れてくれ…そのままで。そしてオレの中でイッてくれ…。頼む…城之内」

 城之内の指先に触れられているだけで、ソコが熱く疼いてくる。早く挿れて欲しくて堪らない。城之内を愛しいと想う気持ちと、熱く昂ぶる身体の所為で、涙がボロボロと零れて止まらなかった。
 早く…早く…早く欲しい! そういう気持ちを込めて城之内を見詰めれば、琥珀の瞳が意志を決めたようにスッと細まった。そして城之内は無言のままオレの身体をベッドに押し倒し、スルリと足を持ち上げる。後孔に熱い熱が押し付けられたのを感じてオレは涙を流したまま瞼を閉じ、城之内の全てを享受する為に身体の力を抜いた。




「ひっ…! あっ…! あ…ぅ…ふあぁっ!!」

 ベッドの上で大きく足を開き、正常位で城之内を受け入れる。それは確かに、いつもより多くの苦痛をオレにもたらせた。だがそんな辛さも苦しさも、すぐに消えて無くなった。今オレが感じているのは、そのままの城之内がオレの体内を抉る快感だけだ。
 ピッタリと重ねられた胸、のし掛かる城之内の重さを心から愛しく感じる。汗を掻いた背中にしっかりと腕を回し、もう離したくないという意志を込めてギュッと強く抱き締めた。
 愛しい、愛しい、愛しい! オレの体内で感じる城之内の燃えるような熱が、本当に愛しい!

「くっ…ぅ…! あ…あっ! んっ…ぁ…城…之…内ぃ…!」
「海…馬…っ!!」

 オレが強く城之内の身体を抱き締めると、城之内も同じくらいの…いや、それ以上の力で抱き締め返して来る。オレに与えられる全ての情熱が…嬉しかった。熱くて頭が霞がかってハッキリしないが、このまま焼け死んでも構わないと思うくらい…その熱が気持ち良くて堪らなかった。

「大丈…夫…? 辛く…無い?」

 あれだけ言ったのに、城之内はまだオレの事を心配をしている。でも、それはもういいのだ。多分これが城之内の優しさ、そしてオレに対する気持ちの表れなのだろう。そんな事よりも、あれだけ激しい気持ちを持っていたのにも関わらず、オレの為を想って我慢出来ていたという方が凄い事なのだ。
 城之内は男としては普通の感覚を持っている。オレのように性的トラウマを持っている訳では無いから、本当だったらもっと自分の欲望をオレにぶつけたい筈だ。それなのに、自分の気持ちは抑えて全てオレの為を想って動いていた。
 それは並大抵の男に出来る事では無い。オレの事を本当に愛している城之内だからこそ…出来る事なのだろう。それがとても…泣きたくなる程嬉しかった。いや、実際に泣いていたのかもしれなかったが…。

「あっあっ…!  城之…内ぃ…っ!!」

 無我夢中で目の前の身体にしがみつき、自らゆらゆらと腰を揺らす。そして体内の熱を絞り上げるように、後孔を引き締めた。

「っ…う! 海馬…っ」
「あぅ…! あ…もっ…と…! もっと…城之内…!」
「でも…お前…」
「大…丈…夫…! 平気…だか…ら…もっとぉ…っ!」

 もっともっと奥まで突いて欲しい。オレの中を全てお前で充たして欲しい。それが出来るのは…城之内、お前だけなのだ。

「うくっ…! うぁっ…あっ! あぁっ!」
「あっ…! 海馬ぁ…っ!!」
「はっ…ひぁっ!! いぁっ…! もっ…もう…あぁぁっ!!」
「海馬…っ!!」
「っ…ひゃっ…ふぁっ…あああぁぁっ―――――――――――っ!!」

 一瞬で頭の中が真っ白になり、オレは自分の体内を抉っている城之内のペニスを絞り上げながら、背を弓形に反らせて達してしまった。ビクビクと身体全体を痙攣させると、城之内が一際強い力でオレの事を抱き締めて来る。

「うっ…くっ…! 海…馬…っ!!」
「あ…ぁ…ぁっ…」

 苦しげな声で耳元でオレの名を呼び、そして城之内もオレと同じように身体をブルッと震わせた。途端にオレの体内に収まっているペニスがビクリビクリと震え、次いでじわりとした熱が広がって行くのが分かる。その熱さえも快感になって、オレは再び身体を震わせて二度目の吐精をしてしまった。

 身体の奥が熱い…。熱くてとても気持ちがいい…。

 城之内が精を放った下腹部に掌を当て、そこをゆっくり撫でながらその熱が染み渡るのを感じていた。
 オレは女では無い。女では無いから、その熱が何かの実を結ぶという事は無い。処理をしてしまえば、体外に排出されてお終いだ。だけれども、今自分の体内に城之内の精液が収まっているという事実が、本当に嬉しかった。例えすぐに掻き出される物だとしても、それが身体の奥深くにまで染み渡るような気がしてならなかったのだ。
 うっとりと…身体も心も気持ちが良くて堪らない。下腹部を何度も撫でていると、その手を熱を持った大きな手でやんわりと握られた。

「お腹…気持ち悪い? 大丈夫か?」

 オレを労る心配そうな声に、フンと鼻で笑ってみせる。

「オレが…気持ちの悪そうな顔をしていると思うか?」
「いや…そうは見えない」
「そうだろう?」
「んじゃ…気持ちいい?」
「………そうだな…。気持ちが良くて…幸せだ」

 ふぅー…長く息を吐き出しながらそう言えば、城之内はやっと心配そうな顔から嬉しそうな顔に変わり、頬を染めてオレを強く抱き締めて来た。その広い背にオレも自らの腕を絡めながら、やっと本当に愛し合えた事に幸せを感じ…感謝をする。
 幼い頃から長く抱えていたトラウマは、城之内が長い時間を掛けて丁寧に治してくれた。そしてその所為で城之内が抱えてしまった恐れを、今やっと取り払う事が出来た。オレ達は今漸く、本当の意味で愛し合えるようになったのだ。
 オレはもう、城之内を愛する事を我慢しない。そして城之内も、もうオレを愛する事を我慢する事は無いだろう。それが本当の恋人同士という事なのだ。

「城之内…ありがとう」

 そう声に出して呟けば、城之内はフルリと首を横に振った。そして優しげに微笑みながら「お礼を言うのはこっちの方だ。ありがとう…海馬」と答えてくれる。
 何も言わなくても、その笑顔が教えてくれていた。もう恐れる事は何も無いのだと…。



 その日…オレ達は漸く本当の恋人としての第一歩を踏み出す事が出来たのだった。

ゲーマーなんですよ?

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積みゲー処理中な二礼です、こんばんは。

12月中盤以降はものっそい忙しい事が分かっている為、最近はずっと積みゲー処理していました。
昨日は漸く『ぼくのなつやすみ3』をクリアして、エンディングに不覚にも涙…w
あぁ…マジで良いゲームだよ…コレ。
1からずっとやってるけど、毎回毎回泣かせてくれるZE!!

こういう『基本的に何でもやって良いゲーム』は人を選ぶのですが、私は大好きです!
弟は余り好きじゃ無いんだよな…。
ゲームは攻略する事に意義があるらしいのでw
私なんかはダラダラとやれるゲームが大好きで、『ワールドネバーランド』とか延々とやっていたのになぁ~w
ゲーム世界で働いて、友人や恋人作って、結婚して、子供作って、年取ったら子供にバトンタッチして自分は死ぬんですw で、バトンタッチされた子供でそのままゲームが続けられると…。
エンディング? そんなものは無いです。
自分が飽きた時がエンディングですwww

そんなぬるゲーが好きな二礼ですが、『ぼくなつ3』が終わったので今度はPS3版の塊魂をやっています。
あぁ…このゲームもやっぱり面白い!!
面白いんですけど…3D酔いするのがちょっと問題で…w
やり過ぎ注意ですな!!
………ウェップ。


長編『Lesson』『番外編:I want you』の中編をUPしました。
今回はエロ無しですw
海馬と城之内君にちゃんと話し合いをさせていたら、思いの外容量を取る事になってしまいました…w
いやいや、話し合いは大事だよね!
特にこういう話はキチンとする事が大事だ、うん!!

そういう訳で、エロは次回に書きますです(*´д`*)
うへへ…w
海馬に何やらせるのかは、もうしっかり決まっているんだZE!!
今から書くのが楽しみです…www
うへへへへへ…wwwww

番外編:I want you(中編)

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 一週間悩みに悩んだ週末。今週もまた、城之内が泊まりに来た。
 夕食を終え、城之内が一人でテレビを見ている間にゆっくりと風呂に浸かりながら、オレはまだ迷っている自分の心と向き合っていた。
 城之内にオレの欲望を示すという事は、オレが持っている性的技術を全てさらけ出さないといけないという事だ。もし本当にそんな事をすれば、城之内がどんなに幻滅する事だろう…。考えれば考える程、恐ろしくなる。
 性的虐待を受けた幼い頃のあの日々に、汚い大人達に言われた言葉が脳裏に甦る。

『何て淫乱な子なんだ』
『本当にお前はやらしい子だね』

 そんな酷い言葉を投げ付けられる度に悲しくて…悔しくて、耳を塞いで必死に首を振って否定し続けた。違う違う、自分はそうじゃないんだ。絶対に違うんだと…。
 けれど大人達の言葉はしつこくてまるで催眠術のようで、いつの間にかオレは自らその言葉を受け入れ、そして事実として思い込むようになった。今考えるとオレがEDになってしまったのは、実際に性的虐待を受けたトラウマは勿論の事、自らを淫乱だと強く思い込んでいたその思考に問題があったのでは無いかと思う。
 その下らない思考を粉々に打ち砕き、恋人としてオレのトラウマを癒してくれたのが…城之内だった。どこまでも優しく、辛抱強く、オレが回復するのを待ってくれた彼は、オレが完全に元に戻った時なんて嬉しさの余り泣いてくれた程だった。オレはその事については、本当に心から城之内に感謝をしている。だからこそオレは、そんな城之内に自分の真の姿を見られるのが怖くて堪らないのだった。

 けれどもそれは…城之内も同じなんだという事に気付く。

 城之内が必要以上にオレに優しく接するのは、城之内自身が再びオレのトラウマにならないように…と気を使っているからだ。
 過去に性的虐待によってトラウマを持った恋人を持てば、男としてそれを気にするのは当然だと思う。ましてやオレはつい最近までそのトラウマによってEDであり、全く快感を感じる事が出来無かったのだ。それを治してくれたのは城之内だったが、だからこそ、再びそれがぶり返すのを一番怖がっているのも城之内だったのだ。
 あの優しさは、もしオレが再びトラウマを起こしたらどうしよう…という恐れの裏返しだ。オレがもう二度と性的な事に関して恐れを抱かないように…トラウマを再発する事のないようにと、まさに壊れ物を扱うようにしか触れられないのだ。
 その恐れは…多分オレが与えてしまったものだ。無意識だったとは言え、オレが城之内にその恐れを取り入れさせてしまった。だから城之内自身にその恐れを無くせとは言えない。いや、オレ自身が何とかしないとどうにもならない事なのだろう。
 その事に…漸く気付いた。

「恐れているのはオレでは無くて、お前の方だったのだな…城之内」

 ゆったりと湯船に浸かりながら、浴室で一人呟く。声は響いたが、湯気に揺らめいてすぐに消えてしまった。
 独り言のように呟いたその言葉が城之内に届く事は無い。届けたいのなら、オレが自分で勇気を示すしか無いのだ。

「………」

 静かな浴室の中で、オレは覚悟を決めていく。
 あの頃の自分と面と向き合うのは、やはりまだ…少し辛い。けれどこれ以上逃げる訳にはいかなかった。
 恋人である城之内は、自分のやるべき事をしっかりとやったのだ。残りの後始末はオレ自身の問題だ。自分で開けた箱は自分で閉じなければならない。それが一人の人間としてのケジメだからだ。
 城之内に甘えるのはもう止める。オレは完全に覚悟を決めて、湯船の中から立上がった。



 バスローブを羽織って部屋に戻ると、そこに城之内はいなかった。テレビは既に消されていて、代わりに寝室へ繋がる扉が開かれている。そっと近付いて覗き込むと、城之内はベッドに横になって何かの漫画雑誌を読んでいた。

「何を読んでいるのだ?」

 タオルで髪を拭きながら近寄れば、城之内は雑誌を閉じて顔を見せる。そしてオレと目が合うと、ニッコリと嬉しそうに微笑んだ。

「ただの週刊誌。もう全部読み終わってたけど、暇潰しに読んでただけだ」
「そうか」
「お風呂、気持ち良かった?」
「あぁ」
「こっちおいで。いい匂いしてるな」

 ヒラリヒラリと手招きされて、オレは素直に近寄ってベッド脇に腰掛ける。すると寝転がったままの城之内が近付いて来て、オレの腰にギュッと抱きついた。こういう仕草がたまに子供っぽくて可愛いと思う。
 スリスリと頭を擦り寄せて来たので、手を伸ばして荒れた金髪を梳くと、城之内は「へへっ…」とまた嬉しそうに笑った。

「オレ、風呂上がりのお前が好きだよ。だって身体がちゃんと暖かいんだもん」
「失礼な。いつもは冷たいと言わんばかりではないか」
「実際冷たいじゃん。たまに心配になるんだよ。こんな冷たくてちゃんと生きてんのかなーって」
「それこそ失礼だな。オレは死人では無い」
「あはは、そんなに怒らないでよ。ただ単に嬉しいだけなんだから」
「………」
「愛してるよ。大好き」

 腰をぐっと引っ張られるのを感じ、オレはそれに逆らわずにベッドに仰向けに寝転がった。城之内はそんなオレの上に乗りかかって、バスローブの紐を解いて合わせを開いてしまう。薄い胸に熱を持った掌が這わされるのを感じ、オレはふぅ…と溜息を吐いた。

「どうした? 溜息なんか吐いちゃって…。今日はやる気無い?」

 オレの溜息に気付いた城之内が顔を上げてそう問い掛けてくるが、オレはそれに首を横に振って答える。

「違う。そうでは無いのだ」
「じゃあ…アレか? 身体の調子悪い? やっぱ今日は止めとくか?」
「それも違う。ただ少し…お前に話しておかなければならない事がある」
「………? オレに…話?」

 キョトンとした表情で首を傾げる城之内を見詰めて、オレは胸の上に置かれたままだった熱い掌に自分の手を重ねてキュッ…と握り込んだ。

「城之内…。オレはお前に、感謝しているのだ」

 じっと…琥珀色の瞳を見詰めたままそう話し出すと、城之内はほんの少し微笑みを浮かべて「ん? 突然何?」と言葉を放った。その言葉に反応はしないまま、オレは自分の話を続ける事にする。

「オレが過去のトラウマでEDになってしまい、感じる事が出来無くなっていたあの頃。お前はそれを懸命に…少しずつ治してくれたな。なかなか結果が出なくてオレが焦っていた時も、お前自身は焦りを見せずにいつでもオレを慰めてくれていた。それがどんなに心強かったか…。お陰で心も身体も元に戻る事が出来て、お前には本当に感謝しているのだ」
「あぁ、いやそれは…。オレはお前の事が好きだし、やっぱりほら…セックスしたかったからさ。褒められるような事は何一つしてないぜ」
「お前はそう言うが、オレとしては本当にありがたかったのだ。オレだって…好きな相手と気持ち良くなりたかった…から…」
「う、うん…。改めてそう言われると…何か照れるな」

 顔を真っ赤にして「えへへ」と笑う城之内に、つられてオレも笑顔になる。けれど、オレの話はまだ終わってはいない。本題は…これからだ。

「けれど城之内…」
「ん?」
「お前はそこから先に進んでいないだろう?」
「………? え? 何が?」
「オレが感じるようになって…ちゃんとセックス出来るようになって。だけれども、そこまでで終わってしまっている。ここでゴールしてしまっていいのか? もっと先に、目指すべきものがあるのでは無いのか?」
「海馬…?」
「オレはそれが悔しくてならない。何故これで満足してしまっているのだ? 本当はもっと本気で愛し合いたい癖に…」
「ゴ、ゴメン…海馬。オレ…お前が何言ってるか分からな…」
「分からない筈が無いだろう。むしろお前はずっと考えていた筈だ。もっとオレを…滅茶苦茶に抱きたいと」
「………っ!?」
「思って無かったとは…言わせないぞ」

 そう言って少し強い視線で睨み付けると、城之内は赤い顔から青い顔へと移り変わる。如何にも図星を指されたかのようにギクッと顔を硬直させ、先程まで優しげに細められていた琥珀色の瞳は不安げに揺らめき出した。
 自分の中のやましい気持ちを見透かされた事に不安を感じ始めた城之内に、オレは安心させるように優しく微笑みかけてやる。そして腕を上げて、城之内の頬にピタリと掌を当てた。
 大丈夫だ…城之内。オレは決してお前を責めている訳では無い。オレはただ…愛されるだけの自分が嫌になっただけなのだ。愛されるだけでは無く、自分でも愛したくなった。それだけなのだ。

「怖いか? オレが…」
「………え?」
「オレが再びトラウマを起こし、快感を感じなくなるのが…怖いか?」
「そ…それは…っ!」
「城之内?」
「………それは…。う…うん…」

 オレの言葉に城之内は少し考え込み、けれどハッキリとそれを肯定した。
 やはりな…と思いつつも、オレは言葉を続ける。核心に近付くにつれて、自分の心臓がドキドキと高鳴っていくのが良く分かった。

「怖がるな…城之内。本当に怖いのは、このオレなのだ」
「………海馬?」

 怖い怖い怖い。真実を告げるのがこんなに怖いとは思わなかった。
 けれど…ここで立ち止まってはいけないのだ。怖いのは城之内も同じ。いや、オレよりももっと怖いだろう。真実を知っているオレより、真実を知らない城之内の方が圧倒的に不利だ。だったら…オレの方から歩み寄らなければいけない。
 勇気を示すのは…今だ!

「オレは…お前も知っての通り、過去に性的虐待を受けている。幸い最後まで犯される事は無かったが、それでも幼い子供には不釣り合いの技術を身に着けさせられてしまっている。オレはそれを…お前に知られるのが怖い」
「海馬…それは…!」
「分かっている。お前がそれをどう思っているか、よく知っている。それはオレの所為では無いと…汚い大人達がいけないんだと言いたいのだろう?」

 オレの問い掛けに、城之内は真面目な顔をしてコクリと頷いた。琥珀色の瞳が真摯な光を発している。その光が…本当に嬉しかった。
 城之内の気持ちが見える。城之内が…オレを心底愛している事が分かる。
 それさえ分かればもう充分だ。もう何も怖く無い。何を言っても…きっと受け入れて貰えるだろうから。
 コクリと生唾を飲んで、オレは次の言葉を吐き出した。

「オレは今でも、その時習った事をよく覚えている。一切やらなくなってしまったが、やれと言われれば出来る自信がある」
「い、いやそれは…! 無理してやる事じゃ…!」
「そうだな。無理してやる事では無いのかもしれない。実際オレも、あの頃はそれをするのが嫌で嫌で堪らなくて…やれと言われる度に逃げ出したくなった」
「うん…そうだよな」
「だけど今は、それをやりたいと思っている」
「分かるよ…うん…って、ええぇっ!?」
「やりたいのだ…城之内。お前を愛しているからこそ、お前にしたいと思っているのだ…」
「か、海馬…っ!?」
「お前が思っているより、オレはきっと…テクニックがある。もしかしたらそれをする事によって、お前は幻滅してしまうかもしれない…」
「………っ」
「それでもオレは…お前にしたいのだ」
「海馬…!!」

 仰向けに寝転がっていた体勢を、肘を突いて上半身を起き上がらせる。そしてオレと向かい合う体勢になった城之内の背に腕を回して、ギュッ…と抱きついた。直接会わせた胸から、トクトクトク…と強い心臓の音が響いてくる。その音がオレの心臓の音なのか、それとも城之内の物なのか、もしくは二人分の心臓を合わせた音なのかは分からなかった。それだけ強くその音は鳴り響いていたから…。

「城之内…。オレはお前を愛したい。お前にもオレを愛して貰いたい。もう…表面を撫で回すような優しいだけのセックスはいらない。もっときちんと…愛し合いたいのだ。恋人同士として」
「海馬…お前…っ」
「受け入れて貰えるか? オレの愛撫を。例えお前の想像と違っていても…幻滅してしまっても…オレはお前に受け入れて欲しいと…そう思っているのだ」

 真剣な顔をしてそう訴えかければ、城之内は少し戸惑ったような顔をしていた。けれど次の瞬間、キュッと唇を強く引き結んで…コクリと強く頷いてくれる。

「受け入れて貰えるか…だって? 愚問だな、海馬」

 先程まで見せていた戸惑いの表情は完全にどこかに消え、代わりに強い意志を宿した顔で城之内は微笑む。そして大きくて暖かな手で、オレの頭をゆるりと撫でてきた。熱を持ったその掌が気持ち良くて、オレはついウットリとしてしまう。

「オレはお前を愛しているんだぜ? お前を愛したその時に、お前の全てを受け入れる覚悟はしてある。今更だぜ、そんなの」
「城之内…」
「正直…オレもちょっと限界を感じていたんだ。でもそれもお前の為だと思って我慢してたのは…認めるよ」
「やはりな」
「怖かったんだよ。お前の言う通り、オレの所為でお前が元に戻っちまうのが怖かった。でもオレが少し我慢すれば、お前が再びトラウマを起こす事も無いし、何よりこの先もずっとこうやって愛し合っていける。だからそれで充分だって思ってたんだけど…」
「馬鹿だな…。その結果、オレまで物足りなくしてどうする」
「も、物足りないって…お前…!」
「物足りなかったぞ? もっともっと激しくお前と抱き合いたいと…最近はずっとそう思っていた」
「なっ…なっなっなっ…!!」
「だから…オレにもさせてくれ…城之内」

 城之内の目の前でバスローブをゆっくりと脱ぎ捨て、妖艶に微笑んでみせる。青冷めていた城之内の表情が再び真っ赤になって、喉仏が上下してゴクリと生唾を飲む音がこちらにまで聞こえて来た。

 本当はまだ怖い。自分の持っている技術を見せつける事に戸惑いを感じる。けれどもオレは、踏み止まろうとする自分の心を叱咤して先へ進む事を選んだ。
 大丈夫だ。城之内ならきっと大丈夫。彼ならオレの全てを受け入れてくれると…そう信じているから。

 オレは恐怖と緊張で震える手を持ち上げて、そっと恋人の…城之内の身体に這わせていった…。

お手々

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男並に手がデカイ二礼です、こんばんは。

この間ツイッターでお手々の話になりましてね。
色んな方が自分の手の写真をUPしたりしてたんですけど、私もそれに参加していましたw
以前の日記(6月くらいかな?)でも書きましたが、私の手はかなりデカイんですよ。
散たんと比べると、大人と子供くらいの違いがありますw
元々両親の手がデカかったのと、幼い頃に水泳とピアノをやっていた所為もあって、グングンと成長してしまい…ついに男並になってしまったって訳です…w
(ちなみに水泳は水を掻く為、そしてピアノは指を開いて鍵盤を弾く為)

ツイッターでワイワイ騒いでいた人達の殆どは、皆さん小さくて可愛い手の人ばかりでした。
くっそおおおおお!! 羨ましいZE!!
でもまぁ…小さくて可愛い手を羨んでも仕方無いので、デカイを最大限に利用して生きていこうと思っていますw

そんな訳で、私のデカイ手をお披露目させて頂きますね~!


とりあえず単品(笑)の写真を…。
大体四六判のコミックスと同じくらいですw

hand.jpg


ついでに相棒(178㎝)と手合わせしてみた。
相棒もかなりデカイ手をしているのですが、それと比べてみてもこのサイズ…w
私の手の大きさが分かるでしょうか?
しかしコイツ…小指長いな。いいなぁ~!!

hand2.jpgのサムネール画像



私は手(と腕と指)フェチなので、大きな手の男の人が大好きです!!
そういう意味ではやっぱり社長(186㎝)は、それなりにデカイ手をしてると思うんですよ~!
実際ドーマ編で、飛んで来たイナゴをパシッと掴むシーンがあるじゃないですか?
イナゴって大体4~5㎝くらいの大きさなんですけど、それをスッポリ掌で包めるって事は…どういう事だか分かりますよね?w
それから考えてみても、社長の手って相当な大きさだと思うんですよ。
まぁ、身長も186㎝もあるしね~!
そりゃ手も足もデカイだろうさ!
指が長くてスラッとしてて、それで男らしい大きな手とか…!!
それでカードをピッと出されたりなんかしたら…もう萌え滾っちゃうんですけどぉ~!!(*´д`*)ハァハァ

そういやニコ動にも、手や指や腕だけをピックアップしてる動画ありますよね~!
アレ本当に大好きですw
まさにオレ得動画ですよ!!

遊戯王はカード漫画だけあって(初期は違いますが…w)、やっぱりアニメでは手や指の動きなんかが重要になってくるんでしょうね。
私はこんなに手や指先の表現に力を入れたアニメを見た事がありません…w
素晴らしい!! 本当に素晴らしいよ、遊戯王!!

そんなこんなで、大きな手の社長に惚れ直した二礼でしたv
かっけぇ~!! マジかっけぇ~!!


長編『Lesson』『番外編:I want you』の前編をUPしました。
本編は城之内君の一人称でしたが、こちらの番外編は海馬の一人称です。

過去に性的虐待を受けてトラウマを背負い、EDになっていた海馬。
それを優しく根気強く労り続けて、元に戻してあげたのは城之内君です。
だから城之内君が必要以上に海馬に優しくしちゃうのは、当然っちゃー当然の事なんですよね。

海馬が快感を感じる事が出来るように導くのは、確かに城之内君の役割でした。
でもここから先は、海馬自身の問題なのです。
その事に気付いた海馬がちゃんと自身と向き合えるかどうか、そして勇気を持って自分の全てを城之内君にさらけ出せるかどうかは、今後の展開を見て頂ければ分かります(´∀`)

ちなみに『Lesson』自体は長編ですが、この話はあくまで番外編なので長くは続きませんw
すぐ終わりますので、ご安心下さいませ~!

*番外編:I want you(前編)

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城之内×海馬。海馬の一人称。
『Lesson』本編からすっかり仲良くなったお二人ですが、海馬の気持ちに変化が出始めました。
城之内をもっと愛したいと思う海馬の成長物語です。

 




 週末のオレの寝室…。次の日が休みの時は、必ず城之内が泊まりに来る。そしてこの部屋の空気は、いつもと全く変わってしまうのだ。
 灯りを落とした暗い部屋の中は、熱くて重い湿気を纏わり付かせた空気に満ちている。外はもうすっかり冬だというのに、この空間だけが暑くて仕方が無い。城之内が与えてくる快感に、オレは自らの体温が上がっていくのを嫌と言う程感じていた。

「ふっ…あ…っ! んっ…」

 頭の中が熱い。カッと血が昇ってきて、何も考えられなくなる。感じるのはただ、オレよりもずっと熱い城之内の体温と、その熱い手が施す優しい愛撫だけだ。

「っぅ…! あふっ…!」
「海馬…イキそ?」

 強い快感に身を強ばらせると、オレのペニスに指を絡めたままのし掛かってきた城之内が、耳元でボソリと囁いてきた。
 心臓はドクドクと高鳴り、気を抜けばすぐにでも達してしまいそうだったが、オレはその問い掛けにフルリと首を横に振って答える。

「まだ…大丈…夫…っ」
「そっか。このままイッてもいいけど、今日は先に慣らしちゃおうか」

 城之内はそう言うと、スッと身体を離してオレの身体に手を掛けた。そして仰向けで寝ていたオレを、ゆっくりと俯せ状態に移していく。上半身をシーツに沈められ、腰だけを高く上げさせられる格好にされてしまった。スルリと腰を撫でる掌の感触に、首を捻って肩越しに目を合わせると、オレの視線に気付いた城之内が微笑みながらも不思議そうな顔をして口を開いた。

「何? どしたの?」
「また…後ろなのか…?」
「うん。この体勢の方が楽だろ?」

 にこやかにそう言って、城之内はサイドボードからローションを手に取った。それをたっぷり掌の上に零して、ぬるつく指先をオレの後孔へと触れさせる。

「ひっ…んっ…!」

 ぬるりとした感触は、いつまで経っても慣れる事は無い。温感タイプのローションを使っている為に冷たくは無いが、それでもゾワッと肌が粟立ったのが自分でも分かった。思わず肩を竦めると、背後から「大丈夫?」というオレを心配している声が響く。「冷たかった?」という問い掛けにフルフルと首を横に振れば、小さな吐息と共に「良かった。少し我慢してな」と言葉が続けられた。
 体内に指が二本入って来て、指の腹で腸壁を撫でられるように優しく広げられていく。グチュグチュという粘ついた水音が下半身から響いてきて、その音にまた自分の体温が上がっていくのを感じていた。

「あっ…! ぅ…っ」
「慣れるの、早くなってきたな」

 うっとりと囁かれる男らしい城之内の声に、オレはもう何も考える事が出来無くなっていく。ただ体内の敏感な場所を探る指先に翻弄され、それだけじゃ物足りなくなって、もっと熱くて大きな物を自分の中に埋めて欲しくて堪らなくなった。

「はっ…ぁ…! あ…も、もう…!」

 ベッドのシーツをギュッと掴み、もう限界だと言う事を訴える。
 いつの間にか目からはボロボロと涙が零れ落ちていた。顔を押し付けていたシーツが冷たく濡れていて、その事でやっと自分が泣きながら喘いでいるんだという事に気付く。そんな自分の状態にも気付かない程、オレは城之内の愛撫に夢中になっていたのだ。
 ブルリと身体を震わせれば、背後からクスリと笑う城之内の吐息が聞こえる。そしてオレの体内で指がグルッと回されて、ズルリ…と引き出される。その感触にもまたゾワゾワとした快感を感じ、オレは背筋を痙攣させた。

「もう挿れても大丈夫そうだな」

 そんな言葉と同時に背後で城之内がゴソゴソと動く気配を感じ、暫くしてピチリ…と薄いゴムが肌に吸い付く音が耳に入ってきた。またコンドームを付けたのか…とオレが密かに嘆息するのと同時に、ひくつく後孔に熱い肉の塊が強く押し付けられる。「力抜いてろよ」という声にコクリと頷いて答えれば、それがグググッ…と力強く入り込んで来た。

「ひっ…! あっ…ぐぅっ…!」
「ゴメンな…。苦しいだろうけど、ちょっと我慢してくれよ」

 内臓が押し上げられる圧迫感に背筋を逸らせて呻けば、その背に硬い筋肉質の胸が強く押し付けられた。汗でじんわりと湿った、熱い体温がオレを包み込む。熱を持った掌が…指先が、オレの胸を撫で回し硬くなった乳首を捻って潰し、そして下半身に移動して放置されていたペニスに絡まった。途端に快感が強くなる。

「うぅっ…あ…あぁっ! あぅっ…!!」

 我慢出来無くて、大きな城之内の手にペニスを擦りつけるように腰を動かす。その度に、体内の物もグチグチと音を立てながら擦れて快感がどんどん倍増されていった。

「気持ちいい?」

 全く余裕の無い城之内の声。荒い息をしながら、男らしい低い声で耳元に囁かれる。その言葉に夢中でコクコクと頷けば、「良かった。オレも」と本当に嬉しそうな声が返って来た。
 オレの体内に収められている城之内のペニスは、やがて激しく動き始めた。一番感じる場所をグリグリと先端で突かれ、その度に例えようの無い強烈な快感が湧き上がり、背筋を駆け上がって頭を真っ白にする。
 涙どころか、喘ぐ事で開きっぱなしの口から飲み込めない唾液を零しつつ、オレはただ揺さぶられて半狂乱で喘ぐしか無い。

「やっ…! や…ぅ…!! ひぐっ…!! んっ…あぁっ!!」
「そろそろ…イク?」

 握られたペニスの先端にクッと爪が差込まれ、ビリビリとした快感で全身が硬直する。城之内の問い掛けに答えたくても、もう身体の自由は効かないし、何より頭の中が真っ白で言葉が出て来なかった。ただ片手でシーツを力強く握り締め、もう片方の手を自分のペニスを掴む城之内の手に重ねて爪を立てる。
 余りの快感に、何かに縋っていないと気が狂ってしまいそうだった。

「っ………!! いっ…あっ…ぁ…っ!!」
「海馬…海…馬…っ!」
「あっ…あぁっ…!! じ、城之内ぃ…っ!!」
「っ………!? うっ…!!」

 追い詰められて、高められて、ついに限界を迎えたオレは身体を硬直させながら達してしまった。城之内の手と、自分の手と、そしてベッドのシーツの上にトプトプと精液を零しながら、ビクリビクリと痙攣し続ける。
 そんなオレに導かれたように、オレを抱いていた城之内も同様に達した。自分の体内に埋め込まれた城之内のペニスが、ビクビクと跳ねるのを感じてカーッと身体が熱くなる。けれど…待ち望んだ熱が広がる事は一向に無かった。城之内が吐き出す精液は、全て彼が付けたコンドームの中で堰き止められてオレに届く事は無い。

 オレはそれが…酷く不満だった。

 城之内とのセックスは気持ちがいい。オレが過去のトラウマで快感を忘れ、感じるどころかEDだった頃から、城之内は優しかった。丁寧に根気強くオレに接し、そしてその結果…ついに結ばれる事が出来たのだ。
 あの時の…初めて結ばれた瞬間をオレは忘れる事が出来無い。どんなに痛くても、辛くても、苦しくても…あの日のセックスは最高だった。城之内の熱がオレの体内でじんわりと広がっていくあの瞬間、オレはまさに幸せに打ち震えていた。例え処理を忘れて、次の日に腹を壊す羽目になっても、それはそれで構わなかったのに。

「………」
「大丈夫か…海馬?」

 グッタリとベッドに倒れ込んだオレの頭を、城之内が優しく撫でてくる。指先で髪を梳き、頬に唇を押し付けられた。その感触にそっと視線をあげれば、ニッコリと優しく微笑む城之内と目が合う。城之内はオレの頭を抱きかかえ、今度は唇を合わせてきた。

「んっ………!」

 口内を確かめるように巡る舌に積極的に自らの舌を絡めながら、オレはやはり不満を感じていた。
 城之内は優しい。あの最初のセックスの時から…いや、オレがまだ感じる事が出来無かった時からずっと優しかった。
 愛撫はどこまでも優しく丁寧で、オレに何かをやらせたりする事も無く、無茶な事は何一つしてこない。体勢も必ずオレが楽であるようにバックにし、腹を壊した事を知ってからは毎回必ずコンドームを付け、オレの中に直接解き放つ事もしない。
 それは確かに、城之内のオレに対する優しさと労りの心なのだろう。オレの事を愛しているからこそ、そういう風に優しいセックスを続けているのだ。

 けれどオレは…それがとても物足りなかった。

 もっともっと熱く激しく、そう…それこそ最初のセックスの時のように無茶苦茶に抱き合いたい。城之内の熱を感じて、オレの熱も与えて、感じて…感じられて、共に高みに昇りたい。そんな事を考えてしまうのは…果たして贅沢な悩みなのだろうか?

「どこか痛くして無い? 身体…大丈夫だよな?」

 キスを終え、唾液で濡れたオレの口元を親指の腹で拭いながら、城之内が笑顔でそう問い掛ける。その問いにコクリと頷いてみせれば、城之内はますます安心したように微笑んだ。そしてオレから離れ、ベッドの端に腰掛けて自らの下半身に手を伸ばす。
 嵌めていたコンドームを外し、入り口を捻って結び、更には丁寧にティッシュに包んでゴミ箱に捨てていた。一連の作業をじっと見詰めていれば、オレの視線に気付いた城之内が真っ赤な顔で振り返る。

「あんま見るなよ…。恥ずかしいだろ?」
「…けな…て…のに…」
「ん? 何?」
「別に…毎回付けなくてもいいのに」

 オレの言葉に城之内は一瞬キョトンとし、だが次の瞬間破顔した。嬉しそうに裸のまま近寄って来て、掛け布団の上からオレをギュッと強く抱き締める。

「ありがと! そう言って貰えるの…マジで嬉しい!」
「なら…っ」
「でもオレが付けてやりたいって思ってんだから、お前がそんな風に気を効かせる事なんて無いんだぜ?」
「………。それは…オレが腹を壊したからか? そんなの、別にお前が気にする事では無いのに」
「いいんだよ。お前にそう言って貰えるのはありがたいけど、オレがお前の事を大事にしたいって思ってるだけなんだからさ」
「………」
「セックスするとやっぱ疲れるし、どうしても処理は後回しになっちまう。ただでさえ身体に不自然な事をしてるんだから、これくらいはしとかないとな」
「城之内…。だが…」
「オレはお前に、余り無理な事はさせたくないんだよ…。だから気にしないでくれ」

 笑顔を浮かべたまま、城之内はそんな事を言ってオレの身体を強く抱き締める。城之内がどれだけオレの事を愛しているのかという事が、身に染みて伝わって来た。
 その愛は嬉しい。純粋に泣きたくなる程嬉しいと感じる。だがそれでも…身体が感じている物足りなさを埋める事は出来無い。セックスは終わったというのに、オレの身体の奥は、未だ熱が燻ったままだった。



 分かっている。この状況を打破するには、自分で行動しないと何も変わらないという事はよく分かっている。
 だがオレは…怖かった。城之内に自分の本性を知られるのが怖かった。
 過去に受けた性的虐待の所為で感じる事を忘れてしまっても、教え込まれた技術まで忘れた訳では無い。多分オレは、城之内が思っているよりもずっと…その手の技に長けている。
 だけれども、もしそれが城之内に知られてしまったとしたら…と思うと、怖くて怖くて仕方が無かった。いや…正しくは知られると言うよりは、知られた結果「何だコイツ」と幻滅される事が怖いのだ…。
 だが本当に城之内が欲しいのなら、その恐れを捨てなければならない。嫌われるかもしれないという恐怖を捨てて、オレの方から城之内に迫る必要がある。それはもう…明白だった。

 勇気を出せるだろうか? 勇気を出して、己の本性を全て城之内に見せる事が出来るだろうか?

 城之内に強く抱き締められながら、オレはずっと自らの思惑と戦っていた。