肩に置かれた手が無遠慮に動くのに、オレは慌ててソファーから立ち上がって城之内と距離を置いた。
マッサージなど飛んでも無い! そんな事を好き勝手にやらせていたら、いずれ襲われるのが目に見えている!
「やめろ! オレに触るな!!」
極力嫌そうに睨み付けながらそう言ったら、城之内は酷く悲しそうな顔をしてオレを見返した。オレに伸ばしかけた手は空中で固まり、眉は下がってその下の目は泳ぎ、何かを言いかけた口もポカンと中途半端に開けたままになっている。
その顔は何かに似ていた…。
そう…叱られた犬の表情そのものだ。
城之内に耳と尻尾が付いていたら、そのどちらもシュンと垂れ下がってしまっているだろう。
というか…。
そんな顔をするんじゃない!! そんな何かを訴えかけるるような悲しげな瞳でオレの事を見つめるな!!
何故か自分が悪い事をしたような気分になって、オレは無意識に小さく舌打ちをした。その舌打ちは城之内の耳にもしっかり届いたらしく、奴は更にしょぼくれた顔をしながらがっくりと項垂れる。
「別に…オレ…。お前に何かしようって思ってた訳じゃねーんだけどな…。いや、何かはしたいとは思ってたけど、そういう事じゃ無くて…。お前が今警戒してるような事をするつもりなんか全然無かったのに…」
すっかり落ち込んだ城之内は大きな溜息を吐いて、小さな声でオレにそう告げてきた。表情はくしゃりと歪んで、まるで泣く一歩手前の表情になっている。むしろ今にも泣きそうになっている。
そんな城之内の姿を見て、オレは改めて考えてみる事にした。
城之内を無駄に甘やかすのは趣味では無いが、本気で泣かれるのもまた困る。
やれやれ…。一体どうするべきか?