すっかりしょぼくれた城之内の側に、オレは苛立たしげに近寄っていった。そしてダラリと下がったその腕を取って、そのまま廊下に繋がる扉へと引き摺っていく。

「か、海馬…っ!?」

 慌てたように抵抗してくるその身体を廊下に押し出して、オレは勢いよく扉を閉めた。そしてそのまま鍵をかけてしまう。
 勿論そのまま城之内が本気で諦めるとは思っていない。案の定、廊下側から拳で激しく扉を叩き始めた。

「海馬…っ!! え…? ちょっと…っ!! ここ開けろよ!!」
「断わる!! 貴様を部屋に置いていたら一体何されるか分からん!!」
「別に変な事しようとしてる訳じゃないって言ったじゃんか!!」
「信用出来ん!!」
「そんな事言わずに信用してよ…っ!! オレ、お前の誕生日に何かしてあげたくて…っ!! ただお前の役に立ちたかっただけなんだ…!!」

 最初はただの怒鳴り声だった城之内の声も、段々と悲痛な叫びへと変わっていく。
 どうやらオレの為に何かをしたいという気持ちは本物らしい。
 でもだからといって簡単に城之内を部屋に入れてしまうと、何だかとても酷い事になるような気がしてならないのだ。いつもがいつもだから、オレのこの予想はほぼ100%の確率で当るだろう。
 更に言えば今日はオレの誕生日。一年に一度しかない誕生日に、そんな酷い目には合いたくなかった。
 だけれども…。

「海馬…っ!! 頼むよ…っ!! 開けてくれ…っ!!」

 扉の向こうから響いてくる必死な声に、オレの心は確実に揺さぶられていた。
 そうだ。オレだって城之内の事を愛しているのだ。心から愛している男を好き好んで悲しませたくは無い。ましてや城之内はオレの為を考えて色々な事をしようと考えていたのだ。その気持ちに嘘は無く、城之内なりの優しさを感じる事が出来る。

 ここはやはり…城之内を許すべきなのだろうか?
 



A・許して扉を開けてあげる

B・嫌な予感がするからやっぱり開けない