城之内の言葉に素直になって、オレは快感で震える手で浴室のドアの鍵を開けた。途端に乱暴に開かれたドアの向こうから、複雑な表情をした城之内が顔を覗かせる。
オレを心配していながらも欲情を抑えきれないその顔は、もう真っ赤に染まっていた。
「海馬…。大丈夫か…?」
素っ裸のオレの身体を見ながらゴクリと生唾を飲み込むつつ、城之内は低い声でそう尋ねてきた。自分も明らかに興奮してしまっている癖に、オレの肩に触れる掌は至極優しく感じる。ただ、やはり微かに震えてしまっているようだったが。
城之内の質問には、オレは何とかコクリと頷く事で答えた。だが大丈夫では無いのは城之内にも分かっているのだろう。目線を下げて、すっかり形を変えているオレ自身をじっと見詰めていた。
そして徐ろに手を伸ばし、先端からぷくりと溢れて一筋流れ出した透明な粘液を指先でつっと拭われる。
「っ………!!」
「可哀想に…。こんなになっちゃって…」
「はっ…、あ…ぁ…っ」
「今楽にしてあげるから。ちょっとそこに座って…」
城之内に促されて浴槽の縁に腰掛けた。ガクガクと震える腰を支えてくれる城之内の掌の温度が、余計にオレの情欲を誘ってやまない。僅かに開かれた足の間に入り込んで、城之内は熱を持った掌でオレのペニスを握り込んだ。
「あっ…!!」
途端に背筋に走った快感にビクリと反応すると、慌てて城之内がオレの背後に手を回して反った背を支えてくれた。
「あぶね…っ!! あんま後ろに反り返るな。ひっくり返るぞ」
「はぁ…っ! 城…之…内…っ!!」
「ちょっと前屈みになってくれる? オレの肩掴んでていいから。そうそう、そのまま大人しくしてて」
城之内に言われたとおりに少し前に屈んで、奴の肩に両手を置いた。オレの体勢が変わったのを確認して、城之内は握り込んでいたオレのペニスに顔を寄せる。そしてそのまま熱い口内の奥深くまで含まれてしまった。
ぬるりとした感触に包まれて、一気に頭の中が白く染まっていく。
「あっ…んっ!」
耐えきれずに城之内の肩を強く握りしめたが、城之内は全く気にもせずにオレのペニスにゆるりと舌を這わせていた。身体をビクビク震わせて快感に耐えていたら、一旦口を離した城之内に「気持ちいい?」と聞かれ、その声に必死になって首を縦に振る。
余りの快感に、もうどうにかなってしまいそうだった。
「あ…はっ…! あぁっ…!」
「お? もうイキそう?」
「うっ…ふぅ…っ! も…っ…ダメ…っ!」
「うん、オッケー。飲んでやるからこのまま出しちゃいな」
「ふぁっ…!! あ…んっ…! いっ…あっ…!! あぁぁっ…!!」
オレの限界を見極めた城之内がペニスの根本を強く擦り、先端を甘噛みする。その刺激でオレはあっという間に達してしまい、城之内の口の中に欲望を全て放ってしまった。
城之内は一瞬眉を顰めたものの、瞳を細めて口内の精液を喉を鳴らして飲み込んでしまう。ゴクリ…という音が、妙に生々しく浴室の中に響いた。
その音で改めて恥ずかしくなってしまい、オレは顔を赤くして俯いてしまう。けれど城之内は優しく微笑みながらオレの顔を覗き込んできた。弧を描く口の端に白い液体が零れて付いているのを見て、居たたまれなくて仕様が無い。
「っ…と。随分と濃かったなぁ。暫くしてなかったし、もしかして溜まってた?」
「そ…そんな事を…聞くな…っ!!」
「あはは、照れてやんの。こんなん、いつもしてる事だろう?」
「それは…っ。そう…だ…が…」
「でもこれでちょっとマシになったかな。気持ち良かっただろ?」
ニコニコしながらオレを見詰める城之内に、オレはまたドクリと心臓が高鳴るのを感じていた。
確かに城之内の言う通り、大分『マシ』にはなった。でも、だからと言って決して満足している訳では無い。むしろ中途半端に触られたせいで、オレの欲情は先程より明らかに燃えてしまっていた。
未だに唇の端にオレの精液を付けたままの城之内をじっと見詰め、そしてオレは自らの欲求にしたがって顔を近付けた。
自らが放った白い液体をペロリと舐め取り、城之内の首に強く抱きつく。そして熱い吐息と共に囁いてやった。
オレの言葉に城之内は一瞬驚いたように目を瞠って、だが次の瞬間、ニヤリと厭らしく笑ってみせる。そして「ご主人様のご要望のままに…」と低い声で答えてくれた。
再びオレの身体に伸ばされる熱い掌に、高鳴る期待を隠しもせずに、オレは全てを任せる事にした。
END3『足りない。もっと欲しい…』
もう一度最初からやる?