何とか我慢して城之内のマッサージを受けていたが、身体はどんどん熱くなり、下半身も明らかに変化を見せるようになってしまった。
 城之内のマッサージは相変わらず普通に続けられていて、性的な接触は一切無い。だが、それがまた無駄に欲情を誘って、オレは完全にリラックスなど出来る状態ではなくなってしまう。
 せめて声だけは出さないように下唇を強く噛みながら身体を硬くしていたら、背後の城之内に「海馬…?」と声をかけられた。
 どうやらオレの様子がおかしいのに気付いたらしい。その声は酷く心配そうだった。

「どうした? 何か汗びっしょりになってるぞ…?」
「っ…! な、何でも無い…っ」
「でもお前、顔も真っ赤になってるし…。具合悪いんじゃないの?」
「いいから…っ。変な心配をするな…っ!!」
「ゴメン! オレがきっと無理させたから…っ!」
「違う!」

 もうこれ以上城之内に触れられているのが辛くて、何も考えずにその場で勢いよく起き上がった。
 背後にいた城之内を押しのけるように突き飛ばして、オレはソファーの上で座り込んで自らの身体を強く抱き締めた。身体の内側から「もっと城之内に触れて欲しい」という欲求が聞こえてくるような気がする。首を左右に振ってその欲求を何とか退けようとしていると、突き飛ばされて絨毯の上に尻餅を付いていた城之内が、目を丸くしてオレの事を見ていた。
 どうやら…、漸くオレがどういう状態に陥っているのか理解したらしい。

「海馬…。お前…」

 城之内が何かを言おうと口を動かしたのを見て、オレは慌てて立ち上がった。そしてそのまま浴室へと向かい、勢いよくドアを閉め鍵をかけてしまう。
 好きでこんな状態になっている訳じゃないのに、その事を城之内に揶揄される事だけは嫌だった。

 大体オレの身体がこんな風になってしまうのは、オレのせいではない! 城之内が…、城之内がそう作り上げたのでは無いか!!

 苛立つ気持ちと欲情する身体を鎮める為に、オレはシャワーを浴びようとその場で服を脱ぎだした。それと同時に浴室に繋がるドアが勢いよくノックされる。そこにいるのが誰かなんて考えるまでも無い。案の定、ドアの向こうから城之内の叫びが聞こえてきた。

「か…海馬! ちょっとここ開けて…っ! 顔見せて…っ! ていうか、そのままじゃお前が辛いだけだし…って、オレは何を言っているんだ!! もういいから!! ここ開けろよ!!」

 派手にノックされる扉を見詰めながら、オレは深く溜息を吐いた。自分の口から出たその吐息は熱くて、確かに自分一人だけでは辛いだけかもしれないが…。
 どうすれば良いというのだろうか…?
 



A・扉の鍵を開けて城之内を迎え入れる

B・とりあえず部屋で待っているように告げる